(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、スルホン酸塩系界面活性剤(B)を0.1〜10重量部と、可塑剤(C)10〜50重量部と、無機系抗ウイルス剤(H)1〜50重量部とを含有し、前記スルホン酸系界面活性剤(B)が無機充填剤(D)に担持された界面活性剤担持充填剤(E)として添加されていることを特徴とする抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳述する。
本発明の実施形態としては、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、スルホン酸塩系界面活性剤(B)を0.1〜10.0重量部と、可塑剤(C)10〜50重量部と、無機系抗ウイルス剤(H)0.1〜50重量部とを含有する抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物である。
【0009】
抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に使用するポリ塩化ビニル系樹脂(A)としては、塩化ビニルを主たる構成成分とする熱可塑性樹脂であるが、塩化ビニル以外の共重合成分を含んでもよい。塩化ビニル以外の共重合成分量としては、本発明に影響を及ぼさない範囲であれば特に限定はされないが、全単量体成分中、共重合単量体成分は0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることがさらに好ましい。具体的にはポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル系樹脂共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらポリ塩化ビニル系樹脂(A)を1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらポリ塩化ビニル系樹脂(A)の中でも加工性、価格の点でポリ塩化ビニルが好ましい。
【0010】
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度としては、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、平均重合度500〜2000の範囲が好ましく、平均重合度700〜1800の範囲がさらに好ましい。平均重合度500未満では溶融時の粘度が低いため加工し難く、平均重合度2000を超える場合は溶融時の粘度が高いため加工し難くなる可能性がある。
【0011】
スルホン酸塩系界面活性剤(B)は、スルホン酸塩系と硫酸塩系界面活性剤である。具体的にはラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。抗ウイルス性の効果が高いことからアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩がさらに好ましい。
本発明で使用されるスルホン酸塩系界面活性剤(B)の含有量はポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜10.0重量部が好ましく、1.0〜5.0重量部がさらに好ましく、2.0〜3.0重量部が特に好ましい。含有量が0.1重量部未満では抗ウイルス性の効果が乏しく、含有量が10重量部を超える場合、加工性に乏しく、ブリードにより表面状態が不良となり、汚染し易くなる可能性がある。
【0012】
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)にスルホン酸塩系界面活性剤(B)を添加して成形加工を行うと、ポリ塩化ビニル樹脂が着色する場合がある。
【0013】
上記問題に関しては、スルホン酸塩系界面活性剤(B)が予め添加されているペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)を用いるか、スルホン酸塩系界面活性剤(B)が担持されている無機充填剤を用いることで樹脂の着色を効果的に抑制することができる。
【0014】
ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)とは、主に乳化重合法やミクロ懸濁重合法により得られる、粒子径が0.02〜20.0μmである微細なポリマー粒子であり、可塑剤の添加によりペースト状になるのが一般的な特徴である。
【0015】
ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)の製造方法としては、本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)を得ることが可能であればいかなる製造方法を用いることが可能であり、最も一般的な方法としては、塩化ビニル系単量体を脱イオン水、乳化剤、水溶性重合開始剤と共に緩やかな攪拌下重合を行う乳化重合法、乳化重合法で得られた粒子をシードとして用い乳化重合を行うシード乳化重合法、塩化ビニル系単量体を脱イオン水、乳化剤、必要に応じて高級アルコール等の乳化補助剤、油溶性重合開始剤をホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな攪拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含有するシードを用い重合を行うシードミクロ懸濁重合法等により、重合温度30〜80℃にて重合し、得られたラテックスを噴霧乾燥後、粉砕することによりペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)を製造する方法を挙げることができる。
【0016】
ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)の製造には、噴霧乾燥後の粉砕を円滑に行えるようにするため、分散剤を用いる。この分散剤としてスルホン酸塩系界面活性剤(B)を用いることで、スルホン酸塩系界面活性剤(B)が微分散状態となるため、樹脂の着色を抑制することができる。
【0017】
スルホン酸塩系界面活性剤(B)の含有量はペースト用ポリ塩化ビニル系樹脂(Ab)中0.1〜15重量%が好ましく、0.7〜10重量%がさらに好ましく、1.0〜7.5重量%が特に好ましい。0.1重量%未満では内装シートにした場合の抗ウイルス性が乏しく、15重量%を超える場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)製造の生産性が乏しくなる。
【0018】
ペースト用ポリ塩化ビニル系樹脂(Ab)の平均重合度としては、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、平均重合度500〜2000の範囲が好ましく、平均重合度700〜1800の範囲がさらに好ましい。平均重合度500未満では溶融時の粘度が低いため加工し難く、平均重合度2000を超える場合は溶融時の粘度が高いため加工しにくくなる可能性がある。
【0019】
ペースト用ポリ塩化ビニル系樹脂(Ab)を用いた場合、ペースト用ポリ塩化ビニル系樹脂の特性から可塑剤等の液体が混在すると常温でペースト状となり、加工方法がコーティング法などに限定される。樹脂組成物を加熱溶融し混練して賦形後冷却固化する溶融賦形法により成形加工する場合には、サスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa)とブレンドすることが好ましい。
【0020】
ここで、サスペンジョン塩化ビニル系樹脂塩化ビニル系樹脂(Aa)とは、主に懸濁重合法により得られる、粒子径が50〜200μmでポーラスな不定形状の塩化ビニル系樹脂のことである。このポーラスな形状を有することで可塑剤等の液体を吸収できるため、ペースト状となることを防ぐことができる。
【0021】
ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)とサスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa)のブレンド比はスルホン酸塩系界面活性剤(B)が0.1〜10.0重量%を含有し、成形加工が問題なければ、特に制限されるものではないが、ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)が100〜1重量%、サスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa)0〜99重量%が好ましく、ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)が70〜10重量%、サスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Ab)30〜90重量%がさらに好ましく、ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)が50〜20重量%、サスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa)50〜80重量%が最も好ましい。
【0022】
また、サスペンジョンポリ塩化ビニル系樹脂(Aa)の平均重合度としては、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、平均重合度500〜2000の範囲が好ましく、平均重合度700〜1800の範囲がさらに好ましい。平均重合度500未満では溶融時の粘度が低いため加工し難く、平均重合度2000を超える場合は溶融時の粘度が高いため加工し難くなる可能性がある。
【0023】
スルホン酸塩系界面活性剤(B)を担持した界面活性剤担持充填剤(E)とは、無機充填剤(D)の表面にスルホン酸塩系界面活性剤(B)を表面処理したものである。
【0024】
スルホン酸塩系界面活性剤(B)を表面処理する無機充填剤(D)としては特に制限はなく、一般的なものが使用できる。例えば炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレー、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、それらを単独あるいは併用して用いることができる。コスト面および供給面から炭酸カルシウム、シリカが好ましく、中でも炭酸カルシウムがより好ましい。
また、無機充填剤(D)としては、合成樹脂との相溶性を向上させる目的で表面処理を施した無機充填剤(D)を用いてもよい。表面処理剤としては脂肪酸、珪酸、リン酸、シランカップリング剤などが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数6〜31、好ましくは炭素数12〜28の飽和または不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0025】
無機充填剤(D)にスルホン酸塩系界面活性剤(B)を担持する方法としては、スルホン酸塩系界面活性剤(B)の水溶液を無機充填剤(D)に吹き付け乾燥する方法や、スルホン酸系界面活性剤の水溶液に無機充填剤(D)を添加・混合して水分を飛ばし乾燥させ、残った固形分をボールミルのような公知の粉砕機ですり潰す方法などがある。
【0026】
スルホン酸塩系界面活性剤(B)と無機充填剤(D)との重量比B:Dは、1:20〜1:1であることが好ましく、1:10〜1:1であることがより好ましい。スルホン酸塩系界面活性剤(B)の比率が重量比B:Dの1:20より小さいと、スルホン酸塩系界面活性剤(B)が均一に担持されにくく添加した際に抗ウイルス性が十分に発揮されない可能性があり、スルホン酸塩系界面活性剤(B)の比率が重量比B:Dの1:1より大きいと無機充填剤(D)の表面に過剰に担持され、湿気により塊状となる為、分散性が悪くなり加工時に表面不具合となる可能性がある。
【0027】
次に、エンベロープの有無に関わらず抗ウイルス性を発現する上で、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、無機系抗ウイルス剤(H)0.1〜50重量部を含有することが重要である。
【0028】
スルホン酸塩系界面活性剤(B)を含有した抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、エンベロープを有するウイルスである鳥インフルエンザウイルス等のウイルスに対しては短時間で抗ウイルス効果を示すが、エンベロープを有さないウイルスであるネコカリシウイルス等のウイルスに対しては短時間で十分な性能を示し難い傾向がある。
一方、無機系抗ウイルス剤(H)はエンベロープを有さないウイルスであるネコカリシウイルスに対し短時間で抗ウイルス効果を示すが、エンベロープを有するウイルスである鳥インフルエンザウイルスに対しては短時間で十分な効果を示しにくい傾向にある。
【0029】
ここで、スルホン酸塩系界面活性剤(B)と無機系抗ウイルス剤(H)の両方を塩化ビニル製樹脂に添加する事でエンベロープの有無に関わらず、短時間で抗ウイルス性を発現する抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
無機系抗ウイルス剤(H)には、光触媒や金属化合物、無機化合物があり、光触媒としては酸化チタンや酸化タングステンなどに銅や鉄などを担持させた複合体が挙げられる。金属化合物としては銀イオン等を含む化合物や金属イオンとゼオライトやシリカゲル、珪藻土といった多孔性無機物を組み合わせたものが挙げられる。無機化合物としては、消石灰のような水酸化カルシウムやドロマイトなどが挙げられる。使用する無機系抗ウイルス剤(H)は単独で用いても複数の種類を複合して用いても良い。
【0031】
無機系抗ウイルス剤(H)の添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し0.1〜50重量部である。無機系抗ウイルス剤(H)の添加量が50重量部以上であると加工性が著しく低下したり、また0.1重量部より少ないと十分な抗ウイルス性がでないなどの不具合が生じる。抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物として満足できる加工性および抗ウイルス性が得られる添加量は0.1〜50重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。
【0032】
スルホン酸塩系界面活性剤(B)または無機系抗ウイルス剤(H)の添加量を増加させることで抗ウイルス性を高められ、エンベロープの有無にかかわらず高い抗ウイルス性を得られる可能性がある。しかし、スルホン酸塩系界面活性剤(B)の添加量を増加させすぎるとポリ塩化ビニル樹脂の加工中の熱安定性が低下したり、加工機へのプレートアウトといった不具合が生じやすくなる。また、無機系抗ウイルス剤(H)の添加量を増加させすぎるとポリ塩化ビニル樹脂組成物の加工性が低下したり、成形品の機械的物性や透明性等が所望の性能より劣るおそれがある。また、光触媒や銀系の無機系抗ウイルス剤(H)は一般的に高価であり、これらを添加したポリ塩化ビニル樹脂組成物のコストアップとなり好ましくない。
そこで、スルホン酸塩系界面活性剤(B)または無機系抗ウイルス剤(H)を高添加とするのではなく、スルホン酸塩系界面活性剤(B)と無機系抗ウイルス剤(H)とを併用することで、エンベロープの有無にかかわらず高い抗ウイルス性が得られる。
【0033】
可塑剤(C)は通常の可塑剤を使用できる。例えば、DOP(ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート)、DINP(ジイソノニルフタレート)、DIDP(ジイソデシルフタレート)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)などのフタル酸エステル系可塑剤や、DOA(ジ‐2‐エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)などのアジピン酸エステル系可塑剤、DOS(ジ‐2‐エチルヘキシルセバケート)などのセバシン酸エステル系可塑剤、DOZ(ジ‐2‐エチルヘキシルアゼレート)などのアゼライン酸エステル系可塑剤といった脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリス(イソプロピル化フェニル)リン酸トリス(ジクロロプロピル)などのリン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤などが挙げられる。塩化ビニル系樹脂との相溶性が良いフタル酸エステル系可塑剤や分子量の高いポリエステル系可塑剤などが挙げられる。可塑剤(C)は単独で用いても複数の種類を複合して用いてもよい。
【0034】
可塑剤(C)の添加量はポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対して10〜50重量部であることが好ましい。可塑剤(C)の添加量が50重量部を超えるとペースト状になり易く、樹脂組成物の加熱溶融前のハンドリング性に劣る場合が生じる。10重量部より少ないと加工が困難となる可能性がある。可塑剤(C)の添加量は10〜40重量部が好ましく、20〜40重量部がさらに好ましい。
【0035】
抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には加工性を向上する等の目的として充填剤(I)を添加することができる。充填剤(I)は炭酸カルシウム、シリカの他、タルク、マイカなどの板状フィラー、ベントナイト、焼成カオリンなどのクレー類、酸化マグネシウム、アルミナなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物などの無機系充填剤が使用できる。充填剤(I)には塩化ビニル系樹脂との親和性を高めるため、脂肪酸や変性脂肪酸などの各種表面処理が施されていてもよい。
【0036】
充填剤(I)の添加量としては、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対して1〜100重量部が好ましい。充填剤(I)の添加量が100重量部を超えると抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成型して得られるシート等の成型体の表面の平滑性に劣る場合が生じる。一方、1重量部より少ないと加工性向上の効果が得られない場合がある。充填剤(I)の添加量は5〜30重量部が好ましく、10〜20重量部がさらに好ましい。透明性が必要な場合の充填剤(I)の添加量は1〜5重量部であることが好ましい。
【0037】
内装シートには加工性を向上する目的としてアクリル系高分子加工助剤を添加することが好ましい。アクリル系高分子加工助剤としては、例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体などのメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体などのアクリル系高分子加工助剤が挙げられる。
アクリル系高分子加工助剤を添加することで、ロール成形やカレンダー成形時のバンク内の回転流動や脱気が良好となり、プレートアウトが抑制されることから外観の良好なシートが得られる。
【0038】
抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には加工時の着色をさらに防止するため、βジケトン類や周期律表の第13族、第15族及び第17族の元素を含む無機化合物のアニオンと、周期律表の第1族、第2族及び第12族の元素のカチオンとの組み合わせからなる着色防止剤を添加することが好ましく、これらの中でも過塩素酸塩系の着色防止剤が特に好ましい。
過塩素酸塩系の着色防止剤としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸アンモニウムなどが挙げられる。中でも過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムが好適に用いられる。これらの過塩素酸塩類は無水物でも含水塩でもよく、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアジペート等のアルコール系およびエステル系の溶剤に溶かしたものおよびその脱水物でもよい。また、ハイドロタルサイトを過塩素酸で処理した過塩素酸含有ハイドロタルサイトでもよい。
着色防止剤の添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜0.5重量部が好ましい。
【0039】
また、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、紫外線遮蔽剤、帯電防止剤、難燃剤、増粘剤、界面活性剤、蛍光剤、架橋剤、衝撃改良剤など、一般的に樹脂に添加される他の配合剤を添加してもよい。
【0040】
抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、公知の製造装置を用いてポリ塩化ビニル系樹脂(A)とスルホン酸塩系界面活性剤(B)と無機系抗ウイルス剤(H)とを混合する事で製造することができる。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)としてペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)とサスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa)と、スルホン酸塩系界面活性剤(B)と無機系抗ウイルス剤(H)とを高速撹拌機、低速撹拌機、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーなどで均一に混合する事で製造することができる。また、混合して得られた混合物をバッチ式混練ミキサー、バンバリーミキサー、コニーダ、押出機などで溶融混合し、直ちに成形してもよい。また、溶融混合した後、一旦ペレット化し、その後成形してもよい。なお、可塑剤(C)、安定剤、充填剤(I)などの添加剤はそれぞれの用途に応じて任意に添加することができる。
【0041】
ここで、ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)の製造段階においてスルホン酸塩系界面活性剤(B)を添加する場合においては、スルホン酸塩系界面活性剤(B)が添加されたペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab)とサスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa)と無機系抗ウイルス剤(H)とを混合する事で抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が得られる。
一方、スルホン酸塩系界面活性剤(B)を担持した界面活性剤担持充填剤(E)を用いる場合においては、サスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa)とスルホン酸塩系界面活性剤(B)を担持した界面活性剤担持充填剤(E)と無機系抗ウイルス剤(H)とを混合する事で抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が得られる。
また、上記と同様に溶解混合してもよいし、これをペレット化しても良い
【0042】
抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は溶融賦形する事により抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂成型体を得ることができる。例えばロール成形法、カレンダー成形法、押出成形法、プレス成形法などの溶融賦形法や、コーティング法などが挙げられる。スピードや、得られたシートの厚み精度の点から、溶融賦形法が好ましく、その中でもカレンダー成形法が好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例および比較例に使用した各配合剤の具体的な物質名は以下の通りである。
ポリ塩化ビニル系樹脂Aa−1:サスペンジョン塩化ビニル系樹脂(Aa) 平均重合度1000
(商品名;TH−1000、大洋塩ビ社製)
ポリ塩化ビニル系樹脂Ab−1:ペースト用塩化ビニル系樹脂(Ab) 平均重合度850
(アルキルベンゼンスルホン酸Na5.0重量%)
スルホン酸塩系界面活性剤B−1:アルキルベンゼンスルホン酸Na 純度90%
(商品名;NANSA HS90/S、ハンツマン・ジャパン社製)
可塑剤C−1:ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート
無機充填剤D−1:重質炭酸カルシウム
担持物E−1:B:D=1:3
安定剤F−1:Ba−Zn系金属石鹸
着色防止剤G−1:過塩素酸ナトリウム
(商品名;アデカスタブCPL−46、旭電化工業社製)
無機系抗ウイルス剤H−1:酸化チタン+銅化合物光触媒
(商品名;ルミレッシュCT−2、昭和電工社製)
無機系抗ウイルス剤H−2:銀イオン+ゼオライト複合体
(商品名;ゼオミック、シナネン社製)
無機系抗ウイルス剤H−3:銀イオン複合体
(商品名;PBM−H7、MIC社製)
無機系抗ウイルス剤H−4:水酸化カルシウム焼成体
(商品名;スカロー、抗菌研究所社製)
無機系抗ウイルス剤H−5:ドロマイト
(商品名;軽焼ドロマイト、吉澤石灰工業株式会社)
充填剤I−1:軽質炭酸カルシウム(脂肪酸処理)
(商品名;TP−111、奥多摩工業社製)
【0045】
界面活性剤担持充填剤(E)はスルホン酸塩系界面活性剤(B)の50wt%水溶液中に無機充填剤(D)を添加し撹拌後、水分を蒸発させて残った固形分を乳鉢によりすり潰して作製した。
【0046】
表1〜4に示した実施例及び比較例の配合物を150℃に設定したバッチ式ミキサーで5分混練した。その後、180℃に設定した二本ロールにて厚さ0.35mmのシート状に成形し、塩化ビニル系樹脂製シートを作製した。各塩化ビニル系樹脂製シートについて抗ウイルス性、加工性及び黄色度の評価を行った。
【0047】
<抗ウイルス性>
被検ウイルスJ−1:鳥インフルエンザウイルスA/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3)株。(エンベロープ有のウイルス)
被検ウイルスJ−2:ネコカリシウイルスF9株。(エンベロープ無しのウイルス)
【0048】
表1〜4記載の実施例及び比較例で作製した塩化ビニル系樹脂製シート5cm×5cmを、シャーレに置き、塩化ビニル系樹脂製シート表面に、試験用ウイルス液を0.2ml載せ、その上に4cm×4cmポリエチレンフィルムを被せ、シャーレに蓋をし、20℃に設定したインキュベーター内で任意の時間静置した。静置後、塩化ビニル系樹脂製シート表面のウイルス液を採取し、ウイルス力価を測定した。
【0049】
ウイルス力価測定は鳥インフルエンザウイルスに対する試験では上記ウイルス液を10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔内に0.1ml接種後、発育鶏卵を37℃で2日間培養した後、漿尿膜腔でのウイルス増殖の有無を赤血球凝集試験により判定した。抗ウイルス性はReed&Muenchの方法によって算出したウイルス力価(鶏胎児50%感染量( logEID50/0.2ml ))にて評価した。
ネコカリシウイルスに対する試験ではプラーク法により算出したウイルス力価(PFUlog/0.1ml)にて評価した。
またブランクとして試験前(塩化ビニル系樹脂製シートに接触させる前)の試験用ウイルス液のウイルス力価も各試験法と同様の手順で算出した。塩化ビニル系樹脂製シートの抗ウイルス性はウイルス力価減少値で評価する。ウイルス力価減少値は以下の式にて算出する。
「ウイルス力価減少値」=「試験前のウイルス力価」−「試験後のウイルス力価」
ここで、ウイルス力価減少値が大きいほど抗ウイルス性が強いことを示す。
【0050】
◎:ウイルス力価減少値=4以上
○:ウイルス力価減少値=3〜4
△:ウイルス力価減少値=1〜3
×:ウイルス力価減少値=1以下
【0051】
<加工性>
180℃に設定した二本ロールにてシートを成形した時のロール加工性を評価した。
◎:良好
○:問題なく加工できる
△:やや悪いが加工は可能
×:加工不可能
【0052】
<黄色度>
黄色度は、スガ試験機社製 「SMカラーコンピューター」を用い、JIS K 7373に準拠して求めた。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
上記の表1〜4から明らかなように、スルホン酸塩系界面活性剤(B)と無機系抗ウイルス剤(H)を同時に添加することにより、エンベロープの有無に関わらず抗ウイルス性が付与されていることがわかる。