(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷電粒子マルチビーム処理装置(1)において、ターゲット(16)上に所望のパターンを露光する露光パターンを計算する方法であって、粒子ビーム(Ib、50)はパターン画定デバイス(4)に向けて照射し、該パターン画定デバイス(4)は、前記ターゲット上の画像領域内の複数の画素(px)を露光することによって前記所望のパターンを描画するために、前記粒子ビームが貫通する複数のブランキングアパーチャ(24、33、43)で構成されるアパーチャアレイ(26)を備え、
前記パターン画定デバイスにおいて、前記複数のブランキングアパーチャ(24、33、43)は、前記ブランキングアパーチャの相互の位置を画定する既定の配列で配置され、各ブランキングアパーチャは、各露光間隔中に前記ターゲット上に生成された相当するアパーチャ画像上に、各ブランキングアパーチャを通って露光する線量値に関して選択的に調節可能であり、前記線量値は離散グレースケールから選択された各値を有し、
前記所望のパターンの描画プロセス中に、一連の露光間隔(T1)が設けられ、各露光間隔で、前記ブランキングアパーチャが、前記ターゲット(16)上へ写像されるため、相当する複数のアパーチャ画像(b1、bi0、bi1)が生成され、
i)前記ターゲット上の画像領域上に、グラフィカル表示(72、101)として前記所望のパターンを与えることであって、前記グラフィカル表示(72、101)は既定の画素間隔の解像度を有し、前記画素間隔は前記画像領域内の前記画素の近接する位置間の公称距離より大きい、所望のパターンを与えることと、
ii)畳み込みカーネル(91、111)を与えることであって、前記カーネルは前記グラフィカル表示の要素から画素群へのマッピングを記述し、前記画素群は前記要素の公称位置を中心とする、畳み込みカーネル(91、111)を与えることと、
iii)前記畳み込みカーネル(91、111)による前記グラフィカル表示(72、101)の畳み込みによって、前記多数の画素上で画定された画素ラスターグラフィックス(ps)として公称露光パターンを算出することであって、前記公称露光パターンは前記ターゲット上に公称線量分布を作成するのに適切である、公称露光パターンを算出することと、を含み、
前記畳み込みカーネルは、前記荷電粒子マルチビーム処理装置によってエミュレートされた参照描画装置の点広がり関数を表す、方法。
前記描画プロセスによって、相互に重複するアパーチャ画像が生成され、前記アパーチャ画像は、前記ターゲット上に生成された近接するアパーチャ画像の画素位置間の距離(e)の倍数である公称幅(b)を有し、
iv)前記公称露光パターンから、アパーチャ画像の露光による前記描画プロセスによって前記所望のパターンを露光するのに適切な露光パターンを生成する、
さらなるステップを有する、請求項1に記載の方法。
ステップ(iii)の算出、および、存在する場合後続する算出は、リアルタイムで描画プロセス中に行われ、算出されるデータを永続的に記憶することなく、関連する算出を一時的に行う、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の方法。
前記畳み込みカーネル(111、151、153)は、画素値の離散マトリックス(112、152)として表され、ステップiiiの畳み込みは、離散畳み込みとして行われる、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法。
前記畳み込みカーネルは、エミュレートされる参照描画装置の時間依存の描画性質に相応する時間依存性(f(t))を有する時間依存値を含む、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の方法。
ステップiiiの前記畳み込みを、前記離散グレースケールの前記解像度よりも高い演算精度を有する演算値を使用して行う、請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の方法。
2つ以上の畳み込みカーネルが使用され、各カーネルは、前記画像領域内の複数のサブ領域の中の対応するサブ領域上で、および/または、前記パターン画定デバイスにおいて存在する複数のアパーチャアレイからの対応するアパーチャアレイで使用される、請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの荷電マルチビーム処理装置は従来技術において周知である。特に、本出願人は、荷電粒子光学部品、パターン画定(PD)デバイス、および、これらで用いられるマルチビーム描画方法に関して本出願人名義のいくつかの特許において記載された荷電粒子マルチビームデバイスを実現している。例えば、EUVリソグラフィのマスクおよびインプリントリソグラフィのテンプレート(1×マスク)の193nmの液浸リソグラフィのための最新の複雑なフォトマスクを実現することができる50keVの電子マルチビーム描画機が実装されている。当該50keVの電子マルチビーム描画機は、6インチのマスクブランク基板を露光する、eMET(電子マスク露光ツール)またはMBMW(マルチビームマスク描画機)と呼ばれている。さらに、PML2(投影マスクレスリソグラフィ)とも言うマルチビームシステムは、シリコンウエハ基板上の電子ビーム直接描画(EBDW)応用のために実装された。前記種類のマルチビーム処理装置は、以降、マルチビーム描画機、または、略してMBWと言う。
【0003】
MBWの典型的な実装形態として、本出願人は、基板において、81.92μm×81.92μmの寸法のビームアレイフィールド内に512×512(=262,144)のプログラム可能なビームレットを含む20nmの全ビームサイズを実装する50keV電子描画ツールを実現している。以降、「MBMWツール」と言われるこのシステムにおいて、基板は、典型的には、電子ビーム感応レジストで覆われた(6インチ×6インチ=152.4mm×152.4mmの領域および6インチ/4=6.35mmの厚さを有する)6インチのマスクブランクであり、また、マルチビーム描画は、同様に、レジストで覆われた150mmのSiウエハ上で可能となる。
【0004】
MBMWツールなど、典型的なMBWの電流密度は、20nmのビームサイズを使用する時、1A/cm
2より小さい。よって、全てのプログラム可能な262,144のビームレットが「オン」になる時、最大電流は1.05μAである。この実装形態では、MBWカラムの1シグマぼけは、実験的に実証されるように、およそ5nmである。
【0005】
ビームサイズは、例えば、20nmから10nmに変更可能である。このことは、200:1の縮率によるカラムに対して、4μm×4μmの開口サイズの代わりに2μm×2μmの開口サイズのアパーチャを有する異なるアパーチャアレイプレート(AAP)を使用することによって簡単明瞭である。本出願人による特許文献1において概説されるように、全サイズ、アパーチャの空間的配置、アパーチャ形状といった、様々な幾何学的パラメータの多数のアパーチャアレイを有するAAPの空間的調節によって、ビームサイズの変更をそのまま実現することもできる。
【0006】
10nmのビームサイズを使用し、4A/cm
2より小さい基板において電流密度を与える時、(全てのビームレットを「オン」とする)262,144のプログラム可能なビームレットの電流が再び最大1.05μAになる。よって、この場合でも、事実上、カラムを通る電流によって、カラムの1シグマぼけに変化はない。
【0007】
第1生成MBW生産機は、「オン」となった全ての262,144のプログラム可能なビームをおよそ1μAの電流までで与える20nmおよび10nmのビームを使用することを対象とする。MBW生産機の次の生成には、さらに小さいビームサイズ、例えば、8nmのものを使用し、同時に、基板において81.92μm×81.92μmのビームアレイフィールド内で例えば、640×640=409,600のビームレットを与えるというやり方がある。最大電流密度を4A/cm
2で保つことによって、(全てのビームレットを「オン」とする)最大電流が1.05μAであるように徹底される。例えば、5nmのビームサイズを使用することによって、基板における既述のビームアレイフィールド内で、例えば、1024×1024=1,048,576のプログラム可能なビームを与えることができ、再び、4A/cm
2の最大電流密度で、(全てのビームレットを「オン」とする)最大電流が1.05μAとなる。
【0008】
上記の種類のMBWセットアップとは対照的に、可変成形ビーム(VSB)マスク描画機の典型的な電流密度は2桁高くなる。電流密度は、EBM−8000のVSBマスク描画ツールといった典型的なVSBマスク描画機に対して指定される400A/cm
2と同じ大きさである。VSBマスク描画機において、形状サイズは、描画中、動的に可変である。これによって、射出サイズに応じて、カラムを通る電流量にかなり変動が生じる。400A/cm
2の電流密度によって、10nm×10nmを射出する電流は0.4nAである。EBM−8000のVSBマスク描画ツールに対して、最大形状サイズは0.35μm平方である。この射出サイズの400A/cm
2の電流密度によって、電流はおよそ0.5μAの大きさになり、これは、電流が3桁変動することになる。このことは、点広がり関数(PSF)、ひいては、VSBカラムのぼけが一定ではなく、VSBカラムを通る電流によって可変であることを暗示している。
【0009】
図8において、PSFプロファイルの2つの例が示されている。PSFプロファイル61は5nmの1シグマぼけのものであるのに対して、PSFプロファイル62は、20nmの1シグマぼけのものであり、VSBカラムを通る電流が増すことによってプロファイル62が低下しているのは明らかである。ぼけが無視される(「ゼロぼけ」)場合、
図9における、30nmの線幅を有する線の強度プロファイル63が示される。強度プロファイルの「0.5」レベルは、「明瞭にする線量」に相当し、レジスト現像につながる。「0.5」レベルは描画する線のエッジを画定するため、ぼけの影響によって、様々な線量寛容度、ひいては、公称の所望の位置から描画するエッジ位置の偏向が生じる場合がある。左側エッジおよび右側エッジそれぞれの所望の位置64および65には、ゼロぼけの強度プロファイル63が満たされる。5nmの1シグマぼけは、大方の場合、強度プロファイル66はこの条件を依然満たすことができるが、10nm、15nmおよび20nmの1シグマぼけそれぞれの強度プロファイル67、68および69にはますます偏向が生じていく。特に、
図9から、および、
図9aの拡大細部からわかるように、強度プロファイルの位置(すなわち、「0.5」レベルの交点)は、15nmおよび20nmの1シグマぼけの強度プロファイルによってそれぞれ、所望のエッジ位置64および65(それぞれ、左側エッジおよび右側エッジ)から低下したエッジ位置70および70’へと離れるようにずれていく。このことは、VSB描画機では、露光した線幅はぼけに左右されるが、これは、カラムを通る電流の関数であることを示す。限界寸法(CD)の厳しいターゲット条件を満たすために、VSBツールは、描画中に正しい線量および/またはサイズの補正を誘導する必要がある。
【0010】
上記のような、本出願人によるMBMWツールといったマルチビーム描画機セットアップは、VSB描画ツールまたは複数のレーザビーム描画機のような他の参照ツールと比較して、大きい重要な利点を有する。
【0011】
並行して、VSBマスク描画機などの複数のレーザビーム描画機および/または参照ツールを用いる市販用または自社専用マスクショップにおけるMBWタイプのデバイスを使用する時、マスクの描画時間の短縮、および/または、改良したマスクパターン品質の達成を実現する目的で、参照ツールによって描画するやり方によるマスクの実現化のためにも、ユーザは、MBWの使用を所望している。第3の目的は、ツール同士を比較するために、参照描画ツールと比較して同じ品質を有するMBWによってマスクを実現することである。
【0012】
従って、本発明の目的は、参照ツール、例えば、VSBマスク描画ツールに備えたデータセットをMBWタイプのデバイスに供給する方法、および、MBWタイプのデバイスを所望のタスクを行うことができるように適応させることである。
【0013】
特殊な場合、特定の性能の特徴を改変するための、例えば、特定の方向に線幅を変更するための、または、小さな正方形パターンの領域を変更するための、もしくは、特定の線の幅を変更するためのタスクがある時、参照ツールはMBWタイプのツールそのものであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
後述される本発明の実施形態は、基本的には既知のタイプであるが、後述されるように、本発明を収容するように適切に修正された、本出願人によるマルチビーム露光ツールのオン線のデータ経路において使用される、「畳み込みカーネルに適合する参照ツールに対するマルチビーム描画機」、略してMRMCカーネル、または、簡単に言えば「カーネル」を実装する。本発明は、以下で論じられる実施形態に制限されず、当該実施形態は本発明の適切な実装形態を表すに過ぎないことは理解すべきである。
【0034】
リソグラフィ装置
本発明の好ましい実施形態を用いるのに適切なリソグラフィ装置の全体像を
図1に示す。下記では、本発明の開示に必要とされるその細部のみを示し、明確にするために、
図1の範囲に示さない構成要素もある。リソグラフィ装置1の主要構成要素は、本例では、
図1において垂直方向に下行するリソグラフィビームlb、pbの方向に相当して、照明システム3、パターン画定(PD)システム4、投影システム5、および、基板16を有するターゲットステーション6である。装置1全体は、荷電粒子のビームlb、pbが当該装置の光軸cwに沿って妨げられずに確実に伝達されるように、高真空で保持された真空ハウジング2に収められている。荷電粒子光学システム3、5は、静電レンズおよび/または磁気レンズを使用して実現される。
【0035】
照明システム3は、例えば、電子銃7、抽出システム8、および、集光レンズシステム9を備える。しかしながら、電子の代わりに、一般に他の荷電粒子も使用することができる。電子は別として、これらを、例えば、水素イオンもしくはより重いイオン、荷電した原子集団、または、荷電分子とすることができる。
【0036】
抽出システム8は、粒子を、典型的には数keV、例えば、5keVの定められたエネルギーへと加速させる。集光レンズシステム9によって、光源7から放出された粒子は、リソグラフィビームlbとして機能する、幅広く、実質的にテレセントリックな粒子ビーム50に形成される。リソグラフィビームlbは、次いで、複数の開口部(アパーチャとも言う)を有する複数のプレートを備えるPDシステム4を照らす。PDシステム4は、リソグラフィビームlbの経路における特定の位置で保持されるため、複数のアパーチャおよび/または開口部を照らし、複数のビームレットに分裂する。
【0037】
アパーチャ/開口部の一部は、「スイッチを入れる」または「開放される」ことで、該アパーチャ/開口部の一部から伝導されるビームの部分を可能にし、すなわち、ビームレット51がターゲットに到達できるという意味で、入射ビームには透明とされ、他のアパーチャ/開口部は「スイッチが切られる」または「閉鎖され」、すなわち、相当するビームレット52はターゲットに到達できないため、実際上、これらのアパーチャ/開口部はビームに対する透明性がない(不透明である)。よって、リソグラフィビームlbは構造化されて、PDシステム4から出現するパターンビームpbになる。スイッチを入れたアパーチャのパターン、リソグラフィビームlbには透明なPDシステム4の一部のみが、荷電粒子感応レジスト17によって覆われた基板16上で露光されるパターンに従って選択される。アパーチャ/開口部の「スイッチを入れる/切る」ことは、通常、PDシステム4のプレートのうちの1つに設けられた適切なタイプの偏向手段によって実現される。「スイッチを切られた」ビームレット52は、(十分ではあるが非常に小さい角度で)その経路から偏向するため、ターゲットに到達することができず、リソグラフィ装置において、例えば、吸収プレート11のある場所で単に吸収される。
【0038】
次いで、パターンビームpbによって表されるパターンは、電気―磁気―光学投影システム5によって基板16上に投影され、ここでビームによって「スイッチを入れられた」アパーチャおよび/または開口部の画像が形成される。投影システム5は、2つのクロスオーバーc1およびc2により例えば200:1の縮小を実行する。基板16は、例えば、粒子感応レジスト層17で覆われた6インチのマスクブランクまたはシリコンウエハである。基板は、チャック15によって保持され、かつ、ターゲットステーション6の基板ステージ14によって位置付けられる。
【0039】
露光されるパターンに関する情報は、電子パターン情報処理システム18によって実現されるデータ経路によって、PDシステム4に供給される。データ経路については、「データ経路」のセクションにおいてさらに以下で説明する。
【0040】
図1に示される実施形態では、投影システム5は、複数の連続する電気−磁気−光学投影機ステージ10a、10b、10cで構成される。投影機10a、10b、10cは、静電レンズおよび/または磁気レンズ、ならびに、場合により他の偏向手段を含むことが好ましい。これらのレンズおよび手段は、それらの応用が従来技術において周知であるため、符号の形のみで示される。投影システム5は、クロスオーバーc1、c2を通して縮小結像を用いている。両ステージのための縮小因数は、数百の結果の全体的な縮小が、例えば200:1の縮率となるように選択される。この程度の縮小は、PDデバイスの小型化の問題を軽減するために、リソグラフィセットアップによって特に適切である。
【0041】
投影システム5全体では、レンズおよび/または偏向手段が、色収差および幾何学収差に関して広範囲にわたって補償されるようにする。全体として横方向に、すなわち、光軸cwに対して直角を成す方向に沿って画像をずらす手段として、偏向手段12a、12b、および、12cは集光器3および投影システム5に設けられる。偏向手段は、例えば、多重極電極システムとして実現可能である。当該多重極電極システムは、
図1におけるステージ偏向手段12cの場合のように、光源抽出システム12aの近くに、もしくは、偏向手段12bと共に
図1に示されるようにクロスオーバーのうちの1つの近くに、または、対応する投影機の最終レンズ10cの後のいずれかに位置付けられる。この装置において、多重極電極の配列が、偏向手段としてステージ動作との関連で画像をずらすために、かつ、荷電光学アライメントシステムと連動する結像システムの補正のために使用される。これらの偏向手段10a、10b、10cは、停止プレート11と連動するPDシステム4の偏向アレイ手段がパターンビームpdの選択されたビームレットのスイッチを「入れる」または「切る」ために使用されるため、該偏向アレイ手段と混同されることがないが、偏向手段10a、10b、10cは、全体として粒子ビームにのみ対処する。軸方向の磁場を設けるソレノイド13を使用してプログラム可能なビームの集団を回転させることも可能である。
【0042】
図2の部分的な詳細は、PDシステム4の1つの適切な実施形態を示す。PDシステム4は、連続した構成で積み重ねられた3つのプレート:「アパーチャアレイプレート」(AAP)20、「偏向アレイプレート」(DAP)30、および、「磁場境界アレイプレート」(FAP)40を備える。「プレート」と言う用語は、対応するデバイスの全体的な形状に言及するが、単一のプレート構成要素が通常、好ましい実装様式であるとしても、プレートが単一のプレート構成要素として実現されると、必ずしも示しているわけではない。なおかつ、ある実施形態では、アパーチャアレイプレートなどの「プレート」は、複数のサブプレートで構成されてよい。当該プレートは、Z方向(
図2の垂直軸)に沿った相互間の距離で、互いに平行に配列されるのが好ましい。
【0043】
AAP20の平坦な上面は、荷電粒子集光器光学部品/照明システム3に対する定められた電位界面を形成する。AAPを、例えば、薄い中央部分22を有する(およそ1mmの厚さの)シリコンウエハの正方形または矩形片から作ることができる。プレートは、導電性保護層23によって覆われてよい。導電性保護層23は、水素イオンまたはヘリウムイオン(特許文献2の一節)を使用する時に特に有利となる。電子または重イオン(例えば、アルゴンまたはキセノン)を使用する時、21および22それぞれの表面部分によってもたらされた層23はシリコンから作られてもよく、それによって、層23とバルク部分21、22との間に界面はない。
【0044】
AAP20は、薄くなった部分22を横断する開口部によって形成された複数のアパーチャ24を備える。アパーチャ24は、薄くなった部分22に設けられたアパーチャ領域内に既定の配列で配列されることで、アパーチャアレイ26を形成する。アパーチャアレイ26におけるアパーチャの配列は、例えば、千鳥配列、または、規則的な矩形もしくは正方形アレイ(
図4を参照)であってよい。示される実施形態では、アパーチャ24は、層23に加工された直線プロファイルと、開口部の下方出口25がアパーチャ24の主要部分よりも広くなるようにした、AAP20のバルク層における「逆行」プロファイルとを有するように実現される。直線プロファイルおよび逆行プロファイルは両方とも、反応性イオンエッチングといった現状技術の構造化技法によって加工可能である。逆行プロファイルは、開口部を通過するビームの反射鏡電荷効果を大きく低減させる。
【0045】
DAP30は、複数の開口部33を備えたプレートである。開口部33の位置は、AAP20におけるアパーチャ24の位置に相当し、開口部33には、開口部33をその対応する経路から選択的に通過する個々のビームレットを偏向するように構成された電極35、38が設けられている。DAP30は、例えば、ASIC回路構成を有するCMOSウエハの後処理を行うことによって加工可能である。DAP30は、例えば、正方形または矩形の形状を有する1片のCMOSウエハで作られ、薄くされている(が、22の厚さと比較すると適切に厚くなっている場合がある)中央部分32を保持するフレームを形成する肉厚部分31を含む。中央部分32におけるアパーチャ開口部33は、24と比較して(例えば、各側部でおよそ2μmずつ)広くなっている。CMOS電子機器34を設けて、MEMS技法によってもたらされる電極35、38を制御する。各開口部33に隣接して、「接地」電極35および偏向電極38が設けられる。共通の接地電位に接続された接地電極35は、電気的に相互接続され、荷電を防ぐための逆行部分36と、CMOS回路構成に対する不必要なショートカットを防止するための絶縁部分37とを含む。接地電極35は、シリコンバルク部31および32と同じ電位のCMOS回路構成34の接地電極部品に接続されてもよい。
【0046】
偏向電極38は、静電位が選択的に印加されるように構成され、かかる静電位が電極38に印加されると、これによって、公称経路から偏向させるような、相当するビームレットに対する偏向を引き起こす電界が生成されることになる。電極38は、同様に、荷電を回避するために逆行部分39を有することができる。電極38のそれぞれは、その低部分において、CMOS回路構成34内で対応する接触部位に接続される。
【0047】
接地電極35の高さは、ビームレット間のクロストーク効果を抑制するために、偏向電極38の高さより高い。
【0048】
図2に示されるDAP30を有するPDシステム4の配列は、いくつかの可能性のうちの1つに過ぎない。(図示されない)変形では、DAPの接地電極35および偏向電極38を、下流ではなく(上方に向けられた)上流に指向させることができる。さらに、例えば、接地電極および偏向電極が埋め込まれたDAP構成は、当業者によって考案可能である(特許文献3など、本出願人名義の他の特許を参照)。
【0049】
FAPとして機能する第3のプレート40は、下流で縮小する荷電粒子投影光学部品5の第1のレンズ部品に面する平面を有するため、画定された電位界面を投影光学部品の第1のレンズ10aにもたらす。FAP40の肉厚部分41は、薄くした中央部分42と共に、シリコンウエハの一部から作られた正方形または矩形フレームである。FAP40は、AAP20およびDAP30の開口部24、33に相当するが、それらと比較して広幅の複数の開口部43を備える。
【0050】
PDシステム4、特にその第1のプレート、AAP20は、幅広の荷電粒子ビーム50(本明細書において、「幅広の」ビームは、AAPにおいて形成されたアパーチャアレイの全領域を覆うためにビームが十分広幅であることを意味する)によって照らされ、それによって、アパーチャ24から伝導される時、何千ものマイクロメートルサイズのビームレット51に分割される。ビームレット51は、妨げられずにDAPおよびFAPを横断することになる。
【0051】
既に述べたように、偏向電極38がCMOS電子機器によって電力供給される時はいつでも、偏向電極と、相当する接地電極との間に電界が生成されることになり、それによって、対応するビームレット52が通過する際に小さいが十分な偏向がもたらされる(
図2)。偏向したビームレットは、開口部33および43それぞれが十分広幅に作られているため、妨げられずにDAPおよびFAPを横断することができる。しかしながら、偏向ビームレット52は、サブカラムの停止プレート11においてフィルターを通して除去される(
図1)。よって、DAPによる影響を受けないビームレットのみが基板に到達することになる。
【0052】
縮小荷電粒子光学部品5の縮小因数は、ビームレット、およびPDデバイス4におけるそれらビームレットの相互間の距離の寸法、ならびに、ターゲットにおける構造体の所望の寸法を考慮して適切に選択される。これによって、PDシステムにおけるマイクロメートルサイズのビームレットが可能になり、ナノメートルサイズのビームレットが基板上に投影される。
【0053】
AAPによって形成される(影響を受けていない)ビームレット51の集合体は、投影荷電粒子光学部品の所定の縮小因数Rによって基板に投影される。よって、基板において、幅BX=AX/RおよびBY=AY/Rそれぞれを有する「ビームアレイフィールド」(BAF)が投影される。式中、AXおよびAYは、X方向およびY方向それぞれに沿ったアパーチャアレイフィールドのサイズを示す。基板におけるビームレット(すなわち、アパーチャ画像)の公称幅は、bX=aX/RおよびbY=aY/Rそれぞれによって示される。式中、aXおよびaYは、DAP30のレベルにおいて、X方向およびY方向それぞれに沿って測定されるビームレット51のサイズを示す。
【0054】
図2に描写された個々のビームレット51、52が、2次元のX−Yアレイにおいて配列されたかなり多くの、典型的には何千ものビームレットを表すことに留意することは、意味のあることである。本出願人は、例えば、イオン、および、何千もの(例えば、262,144の)プログラム可能なビームレットを有する電子マルチビームカラムについてR=200の縮小因数によるマルチビーム荷電粒子光学部品を実現している。本出願人は、基板においておよそ82μm×82μmのビームアレイフィールドを有するようなカラムを実現している。これらの例は、例示の目的で述べられ、限定的な例として解釈されないものとする。
【0055】
図3を参照すると、PDシステム4によって画定されるパターン画像pmがターゲット16上に作られている。荷電粒子感応レジスト層17によって覆われたターゲット表面は、露光する1つまたは複数の領域r1を含むことになる。一般的に、ターゲット上に露光したパターン画像pmは、通常は、パターン化される領域r1の幅より十分小さい有限サイズy0を有する。従って、走査式ストライプ露光法が活用される。この場合、ターゲットは、入射ビーム下に移されることで、ターゲット上のビームの位置を永続的に変更し、ビームはターゲット表面上で効果的に走査される。本発明の目的として、ターゲット上のパターン画像pmの相対運動のみが妥当であることを強調する。相対移動によって、パターン画像pmを、幅y0の一連のストライプs1、s2、s3、・・・sn(露光ストライプ)を形成するように、領域r1上を移動させる。ストライプ一式は基板表面の全領域を覆う。走査方向sdは、ストライプ間で均一であるか一つおきであってよい。
【0056】
図5は、10×16=180画素のサイズの結像パターンの簡単な例を示す。ここで、露光領域のいくつかの画素p100を100%のグレーレベル401まで露光し、他の画素p50を完全グレーレベルの50%だけ露光する402。残りの画素を0%線量に露光する403(全く露光されない)。当然ながら、本発明の現実的な応用では、標準画像の画素数はもっと高いものになる。しかしながら、
図5において、画素数は、いっそう明確にするために180のみとなっている。また、一般に、さらに高いグレーレベルを、0%から100%までのスケール内で使用することになる。
【0057】
よって、パターン画像pm(
図3)は、複数のパターン画素pxで構成され、当該パターン画素pxは、露光される所望のパターンに従った線量値で露光される。しかしながら、有限数のアパーチャのみがPDシステムのアパーチャフィールドにおいて存在するため、画素pxのサブセットのみを同時に露光することができることは理解されるべきである。スイッチを入れたアパーチャのパターンは、基板上に露光されるパターンに従って選択される。よって、実際のパターンにおいて、十分な線量で全ての画素が露光されるわけではないが、いくつかの画素は実際のパターンに従って「スイッチを切られる」ことになり、任意の画素(または、同等に、画素を覆うビームレットごとに)、ターゲット上に露光または構造化されるパターンに応じて、画素の「スイッチを入れる」か「スイッチを切る」かに関わらず、画素露光サイクル間で露光線量を可変とすることができる。
【0058】
基板16を連続して移動させる間、ターゲット上のパターン画素pxに相当する同じ画像要素を、一連のアパーチャの画像によって何度も覆うことができる。同時に、PDシステムにおけるパターンは、PDシステムのアパーチャから少しずつずらされる。よって、ターゲット上のある場所の1画素を考慮すると、アパーチャ全てがその画素を覆う時にスイッチが入れられる場合、これによって、最高露光線量レベル:100%に相当する「白」の色調が生じることになる。「白」の色調に加えて、最低(「黒」)露光線量レベルと最高(「白」)露光線量レベルとの間に補間することになる、より低い線量レベル(「グレーの色調」とも呼ばれる)に従って、ターゲットにおける画素を露光することができる。グレーの色調は、例えば、1画素の描画に関わる場合があるアパーチャのサブセットのみのスイッチを入れることによって実現可能であり、例えば、16個のアパーチャのうち4つは25%のグレーレベルを示すことになる。別のアプローチは、関わるアパーチャのアンブランキング露光の継続期間を低減させることである。よって、1つのアパーチャ画像の露光継続期間は、グレースケールコード、例えば、整数によって制御される。露光したアパーチャ画像は、ゼロ、ならびに、最高露光継続期間および線量レベルに相当する一定数のグレーの色調のうち1つの明示である。グレースケールは通常、グレー値のセット、例えば、0、1/(n
y−1)&、i/(n
y−1)、&、1を定義する。ここで、n
yはグレー値の数で、iは整数(「グレー指数」、0≦i≦n
y)である。しかしながら、一般的に、グレー値は、等距離である必要はなく、0と1との間の非減少数列を形成する。
【0059】
図5は、基本的なレイアウトによる、PDデバイスのアパーチャフィールドにおけるアパーチャの配列を示し、また、以下で使用されるいくつかの量および略語を示す。濃い色調で示された、ターゲット上に投影されるアパーチャ画像b1の配列が示されている。主軸XおよびYは、ターゲット運動の進行方向(走査方向sd)、および、鉛直方向にそれぞれ相当する。各アパーチャ画像は、方向XおよびYそれぞれに沿った幅bXおよびbYを有する。アパーチャは、それぞれNXおよびNYとなる行および列において近接するアパーチャ間のオフセットで、それぞれMXおよびMYアパーチャを有する行および列に沿って配列される。結果として、各アパーチャ画像には、NX・bX・NY・bYの領域を有する概念上のセルC1が属し、アパーチャ配列は、矩形になるように配列されたMX・MYセルを含有する。以下では、これらのセルC1を「露光セル」と言う。ターゲット上に投影される完全なアパーチャ配列は、BX=MX・NX・bX、BY=MY・NY・bYの寸法を有する。以降の論述では、一般性を何ら制限することなくさらなる説明を全て行うために、矩形グリッドの特殊な場合として正方形グリッドを前提とし、b=bX=bY、M=MX=MY、および、N=NX=NYであり、ここでMは整数とする。よって、「露光セル」はターゲット基板上でN・b×N・bのサイズを有する。
【0060】
2つの近接する露光位置間の距離は、以下ではeと表示される。一般に、距離eを、アパーチャ画像の公称幅bと異ならせることができる。もっとも単純な場合では、b=eであり、これは、2×2露光セルC3の配列例として
図6aに示されており、1つのアパーチャ画像bi0は1画素(の公称位置)を覆う。
図6bに示される(ならびに、特許文献4および特許文献5の教示に沿った)別の興味深い例では、eはアパーチャ画像の幅bの分数b/oであってよく、ここで、o>1であり、これは、オーバーサンプリング因数とも言う整数であるのが好ましい(が必ずしもそうではない)。この場合、アパーチャ画像は、種々の露光の過程で空間的に重なり合い、それによって、パターンの配置のより高い解像度を展開することが可能になる。その後、アパーチャの各画像は、複数の画素、すなわち、o
2画素を一度に覆うようになる。ターゲットに結像されるアパーチャフィールドの全領域は、(NMo)
2画素を含むことになる。アパーチャ画像の配置の観点からすれば、このオーバーサンプリングは、ターゲット領域を単に覆うのに必要になるものと(空間的配置においてより優れているため)異なるいわゆる配置グリッドに相当する。
【0061】
図6bは、配置グリッドと組み合わせたo=2のオーバーサンプリング、すなわち、パラメータo=2、N=2を有する露光セルC4によるアパーチャアレイの画像の一例を示す。よって、各公称場所(
図6bにおける小正方形フィールド)上に、4つのアパーチャ画像bi1(破線)が印刷され、これは、X方向およびY方向双方においてピッチeごとの規則的なグリッド上のオフセットである。静止したアパーチャ画像のサイズは同じ値bであるが、配置グリッドのピッチeはここでb/o=b/2となる。前回の公称場所に対するオフセット(配置グリッドのオフセット)もb/2のサイズである。同時に、各画素の線量および/またはグレーの色調は、対応する画素を覆うアパーチャ画像にとって適切なグレー値を選択することによって、適応(低減)可能である。その結果、サイズaの領域は印刷されるが、より精細な配置グリッドによって、配置精密度が向上する。
図6bと
図6aとを直接比較することによって、アパーチャ画像の場所が、正に、以前よりも2倍(一般的に、o倍)精細な配置グリッド上に配列され、アパーチャ画像そのものが重ね合わされる。ここで、露光セルC4は、描画プロセス中に扱われる(No)
2の場所(すなわち、「画素」)、例えば、o
2の因数ごとに、以前よりも多い画素を含有する。それに応じて、アパーチャ画像のサイズがb×bの領域bi1は、
図6Bにおいてo=2であるオーバーサンプリング(「二重グリッド」とも呼ばれる)の場合、o
2=4画素に関連付けられる。当然ながら、oはまた、任意の他の整数値、特に4(「四重グリッド」、図示せず)もしくは8、または、2=1.414といった1より大きい非整数値も取ることができる。
【0062】
図7は、本発明に適切な画素の露光体系を示す。一連のフレームが示されており、ここでは、上(より早い)から下(より遅い)へと時間は増えている。本図におけるパラメータ値はo=1、N=2であり、また、矩形のビームアレイではMX=8およびMY=6を前提とする。ターゲットは左へ連続して移動するのに対し、ビーム偏向は、本図の左側に示されるシーソー関数によって制御される。長さT1の各時間間隔中に、ビーム画像は、(「配置グリッド」の位置に相当する)ターゲット上の位置において固定されたままである。よって、ビーム画像は、配置グリッドシーケンスp11、p21、p31を通り抜けるように示される。配置グリッドの1サイクルを、ターゲット運動vによって時間間隔L/v=NMb/v内で露光する。各配置グリッドにおける露光の時間T1は、「露光長」と呼ぶ、長さL
G=vT1=L/(No)
2=bM/No
2に相当する。
【0063】
ビームレットを、ターゲットと共に1セットの画像要素の露光中に、L
Gの距離にわたって移動させる。換言すると、全てのビームレットは、時間間隔T1中、基板の表面に対して固定された位置を維持する。距離L
Gに沿ってターゲットと共にビームレットを移動させた後、ビームレットを(非常に短い時間内で)即座に再配置して、次の配置グリッドの画像要素の露光を開始する。配置グリッドサイクルの位置p11・・・p31を通した全サイクル後、X方向(走査方向)に平行であるさらなる縦方向オフセットL=bNMによって、シーケンスが新たに開始される。ストライプの開始および終了時に、露光方法は、連続的な被覆をもたらさなくてもよいため、完全に充填しない長さLの余地があってよい。
【0064】
例えば、VSBマスク描画ツールといった、参照描画ツールとは対照的に、本発明の始点であるMBWセットアップは、同じスポットサイズ、例えば、20nm×20nmを均一に使用する。さらに、スポット間の重複部分を、選択された重複量で使用することができる。「二重グリッド」マルチビーム露光において、スポット間の重複部分は、X方向およびY方向におけるビームサイズの半分である。「四重グリッド」マルチビーム露光では、スポット間の重複部分は、X方向およびY方向におけるビームサイズの1/4である。ターゲット上に形成された単一のアパーチャ画像のサイズはaX/Rである。式中、aXはアパーチャアレイプレート(AAP)におけるアパーチャの開口幅であり、Rは荷電粒子投影光学部品の縮小因数である。各スポットは離散的な線量レベルで露光される。例えば、線量レベルをプログラミングするために4ビット使用する時、各スポットの線量レベルは、0、1、2、・・・14、または、15ユニットとなるように選択可能であり、ここで、15ユニットは100%の最高線量レベルを表している。
【0065】
図10は、ぼけがゼロという理想的な場合における幅30nmの線の理想の強度プロファイル71を示す。「四重グリッド」マルチビーム露光を使用する時、重複部分はビームサイズの4分の1である。よって、20nmのビームサイズの場合、物理的なグリッドサイズは5nmである。離散的な線量レベルを、選択された例では5nm×5nmである物理的なグリッドの各領域に割り当てることができ、
図10における線72は、30nmの線を生成するために画素位置に割り当てられた離散的な線量レベルで重複する露光スポットによって構成される時、強度の重ね合わせ(または、全線量)を示すのに対し、より良く視認するために、ぼけはゼロに設定されている(そうすることで、単一の露光スポットの線量分布は矩形になる)。ぼけが
図12に示されるような現実的な値を有する場合、矩形のエッジにおけるステップ関数は、ガウス関数で畳み込まれ、最終的にガウス形状に変容する。その意味で、線72を、ぼけゼロでのガウス関数の重ね合わせとして見ることができる。一般的な場合、線量レベルのヒストグラムは、左右エッジを所定の位置に位置付けるために対照的にはならない。
図11において、30.0nmの幅の線のシミュレーションが示され、左側エッジは0.0nmの所に位置付けられ、右側エッジは30.0nmの所で位置付けられる。シミュレーションでは、20nmのビームスポットを5.1nmの1シグマぼけ(すなわち、12.0nmのFWHMぼけ)で露光することを前提とした。露光スポット73、74および75のプロファイルを重ね合せることによって、強度プロファイル76が形成される。最左の露光スポット74の線量レベルは、30nmの線が所望の開始位置77、すなわち、0nmで開始するように調節される。最右の露光スポット75の線量レベルは、露光した線が30.0nmの位置78で終了するように調節される。
図11に見られるように、「四重グリッド」露光に従って、露光スポット73、74、75の重複部分は、ビームサイズの4分の1、すなわち、5nmである。
【0066】
図12aおよび
図12bは、本発明がどのようにして、MBWデバイスに、エッジを精確に画定させて線を描画できるようにするのかを示し、各図において、上フレームは、エッジ位置誤差対線幅を示し、中央フレームは強度プロファイルを示し、下フレームは10%ごとの露光線量対線幅を向上させる時のエッジ位置の偏向を示す。
図12aは、31.4nmの線幅を得た強度プロファイルを示し、
図12bは、40nmの線幅を得た強度プロファイルを示す。20nmのビームサイズおよび四重グリッド露光(5nmの物理的なグリッドサイズ)のMBWを使用して、露光によって生成された構造体の線幅を0.1nmずつ変更することができる。線量レベルが整数のため、0.1nmのアドレスグリッドからのわずかな偏向がある。これらの偏向は、30.0nm〜40.0nmで0.1nmずつで所望の線幅の関数として、「エッジ位置誤差」(上フレーム)として示される。見られるように、偏向は0.05nm以内である。さらに、線量を10%変更することによるエッジ位置の変更は、下フレームにおいて示される線幅の変更と共にほんのわずか変動するように、およそ1nmのみである。換言すると、線量は1%をさらに上回るようにMBWにおいて制御されるため、線量を1%変更することによるエッジ位置の変更は、およそ1原子層以内である。
【0067】
図13は、MBWの1つの利点、すなわち、線幅が事実上50%の線量閾値でぼけとは無関係であることを示す。
図13には、ぼけがゼロの強度プロファイル71、線量レベルヒストグラム72、および、それぞれ3.5nm、5.0nm、および、7.5nmの1シグマぼけで算出された、結果として生じる強度プロファイル81、82、83が示されている。生成された構造体のエッジ位置73および74は、ぼけがゼロの強度プロファイル71が「0.5」の強度レベルを交差する所にある。
図13aの拡大した細部は、左側フランクにおける位置73を中心にした範囲を示す。線量レベルの割り当て72は、5nmの物理的なグリッドサイズをもたらす、5nmの1シグマぼけおよび四重グリッドマルチビーム露光で20nmのビームサイズを使用するためのものである。
【0068】
従って、MBWを、本例においてはVSBマスク描画条件である参照ツール条件に合わせてカスタマイズするために、本発明は、MBWプロファイルを修正して、参照ツール(VSBマスク描画機)として同じ空中像(=ぼけを含む線量分布)を生成するようにすることを示唆する。
【0069】
MBWを参照ツール、例えば、VSB描画ツールに適合させる
MRMCカーネルによって、ラスター化されたビットマップデータといった、所望のパターンのグラフィカル表示の畳み込みによって、MBWのカスタマイズ化を本発明に従って成し遂げる。本発明によるこのカーネルは、元のベクトルデータが、参照ツール、例えば、VSBマスク描画ツールによって描画されたかのように、同じ線量分布を最終的に生成できるようにする。所望のパターンのグラフィカル表示は、現状技術において使用される種々のフォーマットのいずれかであってよい。
図8および
図10に関して論述された上記例において、線量レベルプロファイル72のような線量レベルパターンを使用することは適切である。
【0070】
図14は、本発明によるカーネル91の例を示す。この場合、カーネル91は、20nmのビームサイズ、および、四重グリッド露光(5nmの物理的なグリッドサイズ)のMBWを有し、20nmの1シグマぼけを有するVSB参照ツールを模倣する。カーネルは、実数値の整数の1次元アレイとしての表示と同等のヒストグラム表示90において示される。カーネルをどのように確定するかについての方法は以下で説明する。カーネルは、矩形(すなわち、有限区間内であるが他ではゼロの一定値とする(
図26aを参照))、もしくは、三角形(すなわち、ゼロからピーク値までの線形立ち上がり、および、その後、再びゼロまでの線形下降、他ではゼロである(
図26bを参照))といった単純な形状、または、適切な関数、例えば、sinc関数(いわゆるカーディナルサイン、sinc(x)=sin(x)/x(
図26cを参照))もしくはガウス関数(
図26dを参照)による他の形状を有することもできる。
図26a〜dのカーネル関数は、典型的には、参照ツールのぼけ値に相当するように選択される空間的範囲のパラメータ(矩形もしくは三角形の幅、最高値からの第1のゼロの距離、または、ガウス関数のFWHMパラメータ)を特徴とする。例えば、
図26aにおいて、ぼけの全範囲は、このカーネルを使用して参照ツールのぼけ性質を適合させる時の、ぼけの全幅半値のほぼ2倍になる。
図26cの示差的なカーネルの場合、一次のゼロ間の空間的距離は、フィルターを通して除去することによって生成される、または、特殊な場合、この長さと相関する特徴に対する選択度を生じさせる線量勾配の測定値である。特に、
図26cにおけるカーネルは、一次のゼロの近似距離である、サイズが30nmであるという特徴を明白にすることができる。
【0071】
図15は、30nmの線幅のMBW線量レベルの割り当て72によるカーネル91の畳み込みによって得られる線量レベル畳み込み92を示す。線量レベル割り当て92による20nmの露光スポットの5.0nmの1シグマぼけを前提にすると、符号94によって示される強度プロファイルは
図16に示されるように得られる。点線93は、20nmの1シグマぼけによるVSB描画機の強度プロファイル69(
図9)を表す。2つの強度プロファイル93および94が、
図16においてかろうじて可視の最低偏向のみと一致することに留意することは重要である。
図16はまた、30nmの線の、ぼけがゼロの強度プロファイル71を示す。強度プロファイル93および94は、CD=30nmよりかなり小さい線幅CD*の(露光した荷電粒子感応レジストの現像を確定する)「0.5」の線量レベルを上回る。よって、MBWは、参照ツール、この場合、VSBマスク描画機の性質に厳密に適合する形で畳み込みカーネルによって「低下」した。
【0072】
図17および
図18は、
図15および
図16に類似した図に示される線量レベルの割り当て101によるCD=40nmの例を示す。同じカーネル91を使用して線量レベル畳み込み102を生成し、それによって、事実上、参照ツール(VSB)描画機の強度プロファイル104と一致する強度プロファイル103がもたらされた。線105は40nmのターゲット線を示す。
【0073】
図19は、2つの描画機のタイプのΔCD=(CD*−CD)対CDの関係を示す。湾曲105は、MBW、この場合、5nmの1シグマぼけによる20nmのビームスポットでの四重グリッド露光の関係を示し、実際には偏向はなく、すなわち、平坦な関係105を有する。実際、理想の水平線からの湾曲105の偏向は、
図12bの上部分にしめされるように、0.05nmの最大エッジ位置誤差の2倍に相当する<0.1nmである。対照的に、参照ツール、例えば、20nmの1シグマぼけによるVSB描画機では、100nmを下回るCD値のより大きい偏向があり、これは、ΔCD(CD)の値106がCDを減少させる負の値まで低下するからである。例えば、CD=30nmでは、CD*は、およそ−11nmのΔCDに相当するおよそ19nm(
図16を参照)である。
【0074】
図19を参照すると、カーネル91によって畳み込まれたMBWには、事実上、参照ツール(VSB)106と同じ性能107がもたらされる。
図19aは、CDの関数として、ΔCDの湾曲107および106の値の間の差異を詳細に示す。30nm以上のCD値にとっての偏向は、0.25nmより小さい。これは、本発明による方法がCDといった重大なパラメータからのほんのわずかの小さな偏向によって非常に良好な程度まで参照ツールを模倣できることを示す。実際、(ii)MBWによるより小さなビームサイズを使用して、または、(iii)MBWにおけるターゲット上のより小さい物理的なグリッドを使用して、(i)カーネルをさらに適切に最適化することによって、偏向をさらに低減することができるはずである。
【0075】
上記の1次元の例に加えて、二次元のシミュレーションが行われた。これについて、
図20に示される等方性カーネル111を使用することができる。カーネル111はカーネル91(
図14)を回転させることによって生成された。カーネル111を、(例えば、整数または実数)値のマトリックスの形でも表すことができる。例えば、例えば、
図21は、整数マトリックス112としてのカーネル111の表示を示す。ここで、個々の値は、次の整数値に四捨五入され(例えば、212は211.765から四捨五入され)、値は、ΣK
k、l=1に正規化する必要はない。カーネル111は22×22のサイズを有するが、最も多い実装形態では、5×5、7×7または11×11のサイズなどのより小さいカーネルは、処理要件を満たすのに十分であるが、当然ながら、より大きいカーネルも適切である場合がある。
【0076】
カーネルは、任意のパターン算出の前に確定され、次いで、画素データに応用される。参照ツールに適合するMBWの画素データを得るように畳み込みによって算出が行われる。項目K
k、lを有するマトリックスカーネル112の例において、MBWの位置(i、j)(i−th列におけるj−th画素)で使用される各値P
oi、jの値の算出は次のようになる。
P
oi、j=Σ
k、l(P
i+k、j+l・K
k、l)/K
o (1)
式中、P
i、jは、元のパターンの位置(i、j)における画素値を示し、その合計は、カーネルマトリックスにおける指数一式に及び、定数K
oはカーネルの正規化である。
K
o=Σ
k、lK
k、l (2)
【0077】
図22a〜cは、5×5のサイズのカーネル(
図22b)の簡略化した例を示す。
図22cにおける畳み込まれたパターンP
oi、jにおける画素のうちの1つの値を得るために、カーネルは画素データに応用され、
図22aにおけるそれらの画素のみが、上記の式(1)に従って畳み込み算出において使用される符号P
i+k、j+lによって指定される(この場合、独立した合計におけるオフセット指数kおよびjは値−2および+2に及ぶ)。
【0078】
図23a〜cは、30nm幅を有する線の3つの2Dシミュレーションを示す。当該線の半分のみが示されているが、これは、残りの半分が対称的な画像であるためである。最大線量に対する45%、50%および55%の線量レベルの等高線図が示されており、点線の矩形は30nmの線のターゲット形状を示す。
図23aは、5nmの1シグマぼけによる20nmのビームサイズおよび四重グリッド露光(すなわち、5nmの物理的グリッドサイズ)を有するMBWを使用する時、長さが300nmの線のシミュレーションの結果を示す。50%の線量レベルは、(高いレジストのコントラスを前提とした)展開によって得られたレジストの外郭である。
図23bは、参照ツール、例えば、20nmの1シグマぼけによるVSB描画機の相当するシミュレーションの結果を示し、30nmの線幅を有する線では、
図23aに示されるMBWと比較して、線エッジが明確に短くなり、かつ、線量寛容度が低下することが結果として示されている。
図23cは、露光される30nmの線を参照ツールの線と適合させるために、ターゲットと共に、
図20のカーネル111によって畳み込まれたMBWによる(シミュレートされた)露光の結果を示す。
図23bのプロファイルとの適合が優良であることは明らかである。
【0079】
マルチビーム描画機のMRMCカーネル
本発明のさらなる態様は、参照ツールがMBWタイプ自体のものである場合である。例えば、いくつかのMBW機が設置されるマスクショップの場合、本発明は、場合により様々な結像パラメータを有する種々のMBWの性能を適合させるように適切に使用可能である。さらなる有用なタスクは、MBWを参照ツールのより古いバージョンに適合させることである。
【0080】
異方性カーネル、複数のカーネル、および、時間依存性
本発明によるカーネルは、XY平面内で等方性を有する必要はない。例えば、MBW機がマスクを描画し、計量による綿密な分析によって、マスク上で、X方向の線幅が匹敵するY方向の線幅とある程度まで異なっているという状況がある場合があり、別のMBWデバイスにおいてかかる状況を模倣するために、本発明の別の態様による1つの適切なアプローチは異方性カーネルを用いることである。異方性カーネルの例が
図24Aおよび
図24Bに示されている。特に、
図24Aは、Y方向に沿った線幅の約2倍である、X方向に沿った広い線幅を有する異方性カーネル151を示す。対照的に、
図24Bに描写されたカーネル153は、Y方向に沿ってより広い線幅による異方性を有する。
図24Cは、
図24aのカーネル151のマトリックス表示152を示す。ここでは、例えば、小数第2位で四捨五入した実数値として、(正規化されない)個々の値が示される。カーネルはX方向またはY方向の線に制限されないが、X/Y方向に対して随意の角度で指向された異方性にも応用可能であることに留意することは意味のあることである。
【0081】
一方では、異方性カーネルは、MBWデバイスまたは他のタイプの参照ツールにおける既知の異方性を補償する方法も提供し、例えば、X方向の方への異方性を、Y方向の方への異方性を有するカーネルを使用して補償することができ、その逆も同様に(または随意の鉛直方向の軸に対して)可能である。
【0082】
カーネルの上記例は、例示の目的のみのものであり、カーネルのさらなる実装形態およびかなりの重要性を有する他のタスクへの応用は当業者には自明であることに留意することも重要である。
【0083】
カーネルの多くの可能な変形のうちの1つは、時間依存値を含む。例えば、描画プロセス中の時間変動f(t)が理論的考察および/または実験データから既知であるとする場合、かかる時間変動を実装することができる。これによって、レジストのエージングといった時間依存プロセスを考慮することができる。レジスト感度の変形が時間関数f(t)として既知である場合、カーネルにおける関連項目を入力する追加因数として、この関数を使用することができる。すなわち、K
k、l=K’
k、l・f(t)であり、式中、(K’
k、l)は、最初の時間依存カーネル、例えば、露光プロセス開始に有効なカーネルである。代替的にはまたは組み合わせて、粒子ビームが時間によって変動する場合がある全電流を有する光源から生成される場合、時間依存性は、光源から放出された全電流のゆらぎ関数に相当する関数を含むことができ、このことは、算出プロセスの前に実験的に確定されている。
【0084】
本発明の別の態様は、1つの描画プロセス内で複数のカーネルを使用可能であることである。例えば、ターゲットの様々な領域に対して様々なカーネルを使用することができる。これは、参照ツールが、例えば、不均一な異方性といった、露光されるターゲット上の領域にわたる可変の結像性質を示す場合に有利である。また、既に述べたように、例えば、PDデバイス内の様々なアパーチャアレイ間を切り換えることによって、ビームサイズを、例えば、20nm〜10nmで、描画プロセス中に変更することができる(特許文献6を参照)。この場合、第1のカーネルは20nmのビームサイズによる露光に使用され、第2のカーネルは10nmのビームサイズによる露光に使用される。
【0085】
データ経路
図25は、本発明に照らして、データ経路170のフローチャートを示す。データ経路は、リアルタイムで描画ツールの処理システム18(
図1)において行われるのが好ましく、変形では、データ経路の算出の一部または全てを、例えば、適切なコンピュータにおいて、前もって行うことができる。
【0086】
完全なパターン画像は膨大な量の画像データを含むが、これは、そのデータの効率的な計算のために、好ましくはリアルタイムで、露光される画素データを生成する高速データ経路が適切であるからである。露光されるパターンは、典型的には、例えば、矩形、台形、または、大まかな多角形のような幾何学的形状を収集したものとして、ベクトルフォーマットで記載され、これによって、典型的には、より良いデータ圧縮が与えられ、従って、データ記憶に対する要件が低減する。従って、データ経路は3つの主要な部分から成る。
−ベクトルベースの物理的補正プロセス(ステップ160)
−ベクトルを画素データに翻訳するためのラスター化プロセス(ステップ161〜164)、および、
−描画プロセスでの一時的な記憶のために画素データをバッファに保留すること(ステップ165)。
【0087】
データ経路は、ステップ160で露光されるパターンPDATAが供給されると開始する。参照ツールが、例えば、VSB描画ツールと適合するものとする場合、例えば、
図23bに示されるように、線エッジが短くなると、特定の描画性質について補正するために、前回のステップ(図示せず)で既に修正されていてもよい。ステップ160において、一般的に、露光されるパターンPDATAは、場合によって幾何学形状の重複部分と共に、多数の小さなデータの塊に分裂する。ベクトルドメインにおいて応用することができる補正(例えば、近接効果の補正)を、場合によって並行に、全ての塊に対して独立して行うことができ、結果として得られるデータを、続くステップの計算速度を改善するようにソートしかつコーディングする。出力は、全ての塊が幾何学的形状の収集を含有する場合の、塊の収集である。
【0088】
段階161:ラスター化RAST。あらゆる塊の幾何学的形状をラスターグラフィックスアレイに変換する。この場合、画素グレーレベルは、相当するアパーチャ画像の物理的な線量を表す。完全に幾何学形状内にあるあらゆる画素に多角形の色が割り当てられ、それに対し、幾何学形状のエッジを交差する画素の色を、幾何学形状によって覆われた画素のわずかな領域ごとに重み付けする。この方法は、幾何学形状の領域とラスター化後の総線量との間の線的関係を暗示している。最初に、線量を浮動総数点数として算出し、その後にようやく、PDデバイスによってサポートされる線量値の離散集合に変換する。ラスター化の結果、画素データは、対応する画素の公称線量値Pを表す浮動小数点数のフォーマットのものになる。
【0089】
段階162:カーネル適合KERM。既定のMRMCカーネルを画素データに応用する。これは、上述のカーネルによる畳み込む画素データによって行われる。好ましくは、リアルタイムの処理速度を達成するために、十分な数の並列CPUおよびGPUが使用される。畳み込みカーネルは典型的には、数十ナノメートルのぼけの範囲に対して作用するため、効果的な方法で算出プロセスを並列化することができる。この場合、ビームアレイの画素データを様々なCPUおよび/またはGPU上で分散させる。
【0090】
段階163:アパーチャフィールド上でビーム50の均一な電流密度からの偏向の補償といった、他の画素ベースの補正CORR、および/または、DAP30における個々の欠陥のあるビーム偏向装置の補正。この種類の補正方法は、本発明の一部を形成せず、ここでは論じない。
【0091】
段階164:ディザリングDITH。ディザリングプロセスは、既定のグレー値スケールに基づいて、畳み込まれた、場合によって補正される線量値データP
oをグレー値データに変換する。これは、オーバーサンプリングと組み合わせて、単一のアパーチャに対して利用可能な線量値の離散集合よりもさらに精細な線量変動を可能にする近傍画素に対して丸め誤差が平均になることを徹底する、位置依存丸めプロセスであり、視像データを画素グラフィックスに変換するために既知のアルゴリズムによって実現可能である。実際の補正(例えば、欠陥のあるアパーチャの補正)に応じたディザリング直前または直後に、さらなる補正が画素ドメインにおいて応用可能であるとした場合、この段階で(本発明の一部ではない)このようなさらなる補正を応用することができる。
【0092】
段階165:画素パッケージング、PPACK。段階164から得られる画素画像は、配置グリッドシーケンスに従ってソートされ、描画ツールの処理システム18(
図1)において設けられた画素バッファPBUFに送信される。画素データは、十分なデータ量、典型的には、少なくとも、ストライプの露光を引き起こすストライプの長さが存在するまで、バッファに保留される(
図7を参照)。描画プロセス中にバッファからデータを取り出す。ストライプが描画された後に、上述したプロセスは、次のストライプなど、次の範囲のパターンデータを新たに開始する。
【0093】
適合する性能を満たすためのMRMCカーネルの較正
VSBツール、または、(一般に)参照ツールのデータ準備には通常、
図19と共に上述されるように、CD変化を線幅の関数として考慮するために補正関数を使用する。さらに、進歩的な半導体ユーザは、洗練された型を応用して、CD値、線端短縮およびコーナープルバック半径、ならびに、関連のパターン特性を測定するのに対し、ベクトル入力データ、基本的に、線量割り当ておよびオプションとして形状も修正することによって、意図した形状からの偏向を補償する。この最適化は、どれくらいの並列コンピュータを使用するかに応じて計算時間の多くの時間または日にちを要する場合が多い計算集中シミュレーションに基づいており、その算出は、特定のビーム、ならびに、線量分布(点広がり関数)、レジストぼけ(例えば、CAR、すなわち、化学増幅型レジストにおける酸拡散効果)、および、入力数としてのレジストコントラストといったプロセス特性に基づいている。最終的に、あるVSB描画パラメータ(またはより一般的には、該当の参照ツールの描画パラメータ)を前提とすると、ぼけ関連のCD誤差またはコーナー丸めといった非常に重要な補正は、データ修正によって行われる。最も単純な場合、ほんのより小さいぼけである可能性がある、異なる描画性質をMBWが有する場合、意図されたパターンは、VSBツール(参照ツール)のために準備されたデータによって直接的に得られることはない。一般的な場合、ぼけだけでなく、点広がり関数(線量分布関数の2Dプロファイル)は、荷電粒子光学システムにおける差異によって、著しく偏向する。
【0094】
実際の応用では、これは、VSBツールまたは他の参照ツールを使用して、同じ製品のマスクを作ることも望むツールユーザは、他の参照ツールがVSBの特定の誤差に適合しない限り、または、換言すると、リソグラフィ結果における差異を最小限に抑えることでVSM描画性質を模倣するようにするオン線補正が設けられていない限り、MBW機の生産性を高めることから利益を得ることはできない。このさらなる特徴によって、MBWは、VSB描画にも使用される同じデータに対して使用可能であり、これによって、VSBツールが依然使用される限り、MBWの有用性が非常に高まる。
【0095】
MRMCカーネルの確定
参照ツールの強度プロファイル、例えば、VSB描画機の強度プロファイル61、62は既知であり、例えば、実験的に確定されていることは、かなりありふれたことである。代替的には、参照ツールにとって線形グラフ(
図19)が既知である場合があり、当該線形グラフにより、強度プロファイルを算出することができ、または、データの実験セット、例えば、参照ツールによって印刷される、可変の線量または可変の設計幅の関数としての線幅のセットを初期データとして利用して、強度プロファイルを確定することができる。MRMCカーネルの確定/最適化のために、ここでは、強度プロファイルが既知であることを前提とする(数学的に、例えば、ぼけおよび他の結像アーチファクトを含む、デルタ関数のような無限に小さいパターン要素が、露光中基板上で生成する線量分布である点広がり関数)。
【0096】
MRMCの確定および最適化は典型的には反復プロセスであり、この場合、MRMCカーネルを表すある点の数が体系的におよび/または確率的に可変であることで、目的関数(性能指数)に関して最適化されるようにする。目的関数は、例えば、線形関数における差異の積分である可能性があり(
図19Aを参照)、または、
図24aおよび
図24bを参照して論じたように、指向性の線幅変動を最適化する場合、対象の線方向についての線幅間の差異である可能性がある。
【0097】
一般的に、このような最適化を、現状技術において周知の数学的原理を使用した従来のアルゴリズムで行うことができる。使用可能な1つの標準的な方法論は、傾斜法、または、線形回帰法である。開始関数として、例えば、単一のガウス関数の形で
図26dにおいて例として示される参照ツールの強度プロファイルが使用される。実際、多くの場合、強度プロファイルは既に、最終カーネルに対して適切に良好な近似を提示しており、さらなる最適化は、適合の精密度においてより高い要求に従うためだけに必要とされる。ぼけの差異が大きいほど、より良好に適合作業が行われ、より大きなぼけによって与えられる強度分布によってさらなるカーネル関数が支配されることになる。
【0098】
図26a〜dは、最適なカーネルを見つけるために、線形回帰算出に対して、開始関数として適切なカーネル関数の例を示す。あるいは、それらカーネル関数の例は、(後続の最適化を行わずに)直接的に行う複数のタスクには十分である場合がある。特に、
図26aに描写される矩形関数を使用して、例えば、「移動平均化」といったある目的を達成することもでき、
図26bの三角関数は、加重平均化を行うのに適切であり、または、
図26cにおいて描写されるsinc関数を使用して、「エッジ強調」または「パターン選択」フィルタリングを行うことができ、この場合、カーネルは差別化の効果を有し、最終的に、
図26dはガウス形状を示す。sinc形状のカーネルの負の値は、基板上の負の線量値を回避するために、ゼロといった非負のカットオフ値によって置き換えられる公称の負の線量がもたらされる場合がある。
【0099】
当然ながら、MBW自体は、(スポットの幅および点広がり関数によって)ぼけを有することになる。MBWのぼけは、通常、(少なくとも1.5、典型的には3またはそれ以上の因数で)ターゲット上に描画される線幅と比較すると非常に小さく、参照ツールのぼけと比較するとさらに一層小さい。従って、MBWのぼけを無視して、少なくとも第1の段階でほとんど損傷ないカーネルを確定することができる。反復アプローチにおいて、これは、反復がMBWのぼけの効果を暗黙のうちに考慮することになるため、安全な手順である。実際、通常、カーネルにおけるMBWのぼけを無視することによって取り入れられた偏向は、既に第1の段階で端にあるのみであることが分かった。