(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892221
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20210614BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20210614BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20210614BHJP
H01L 27/14 20060101ALI20210614BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/06 102A
H01L27/14
H01L31/10 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-42297(P2016-42297)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-157788(P2017-157788A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月11日
【審判番号】不服2020-13649(P2020-13649/J1)
【審判請求日】2020年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】二木 俊郎
【合議体】
【審判長】
恩田 春香
【審判官】
小田 浩
【審判官】
小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−027748(JP,A)
【文献】
特開2005−294554(JP,A)
【文献】
特開2014−154793(JP,A)
【文献】
特開2015−109343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 21/8234
H01L 27/06
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子形成領域とMOSトランジスタ形成領域とを有するシリコン基板表面にMOSトランジスタのゲート酸化膜となる第一の熱酸化膜を形成する第一の工程と、
前記第一の熱酸化膜上にポリシリコン膜を形成する第二の工程と、
前記ポリシリコン膜をパターニングして、前記MOSトランジスタ形成領域に前記MOSトランジスタのゲート電極を形成する第三の工程と、
前記第一の熱酸化膜のうち前記ゲート電極の下部以外の前記第一の熱酸化膜を除去する第四の工程と、
前記第一の熱酸化膜が除去された前記シリコン基板表面に第二の熱酸化膜を形成する第五の工程と、
前記第二の熱酸化膜を通して前記受光素子形成領域に不純物をイオン注入して浅い接合を構成する不純物領域を形成する第六の工程と、
前記不純物領域の形成後に、前記第二の熱酸化膜上に絶縁膜を形成する第七の工程と、
前記受光素子形成領域の前記絶縁膜上にマスク層を形成した状態で異方性エッチングを行い、前記MOSトランジスタのゲート電極の側面上に前記絶縁膜からなるサイドウォールを形成するとともに前記受光素子形成領域上に前記絶縁膜を残存させる第八の工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第二の熱酸化膜は、前記ゲート電極の上面及び側面にも形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記イオン注入により前記MOSトランジスタ形成領域にも前記不純物が注入され、前記MOSトランジスタのLDD領域が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
受光素子形成領域とMOSトランジスタ形成領域とを有するシリコン基板表面にMOS
トランジスタのゲート酸化膜となる第一の熱酸化膜を形成する第一の工程と、
前記第一の熱酸化膜上にポリシリコン膜を形成する第二の工程と、
前記ポリシリコン膜をパターニングして、前記MOSトランジスタ形成領域に前記MOSトランジスタのゲート電極を形成する第三の工程と、
前記第一の熱酸化膜のうち前記ゲート電極の下部以外の前記第一の熱酸化膜を除去する第四の工程と、
前記第一の熱酸化膜が除去された前記シリコン基板表面に第二の熱酸化膜を形成する第五の工程と、
前記第二の熱酸化膜を通して前記受光素子形成領域に不純物をイオン注入して浅い接合を構成する不純物領域を形成する第六の工程と、
前記不純物領域の形成後に、前記第二の熱酸化膜上に、前記第二の熱酸化膜に接して第一の絶縁膜を形成する第七の工程と、
前記第一の絶縁膜上に第二の絶縁膜を形成する第八の工程と、
前記第一の絶縁膜をエッチングストッパとして異方性エッチングを行い、前記MOSトランジスタのゲート電極の側面上に前記第二の絶縁膜からなるサイドウォールを形成する第九の工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記不純物領域の前記シリコン基板の最表面における不純物濃度が1019cm−3以上であり、前記不純物領域の不純物濃度が1017cm−3以下となる前記シリコン基板表面からの深さが100nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第二の熱酸化膜の厚さが30nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、紫外線のような短波長の光を検出するための半導体受光素子とMOSトランジスタを同一シリコン基板上に形成する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体受光素子には様々な種類があるが、その中でもシリコン基板を用いた受光素子は、MOSトランジスタなどを用いた集積回路を同一基板上に作製することにより、受光から信号処理まで一つのチップ上で行うことができるため、多くの用途で使用されている。
【0003】
しかし、シリコンにおける光の浸入深さ(シリコンに入射した光の強度が吸収により1/eに減衰する深さ)は、
図7のような波長依存性をもっており、紫外線(UVA:320〜400nm、UVB:280〜320nm)の場合、数nm〜数十nmの領域で大部分の光が吸収されてしまう。このような特徴をもつシリコンを用いて紫外線を検出するための構造は、特許文献1や非特許文献1に示されている。
【0004】
具体的には、紫外線照射により発生した電子・正孔対を光電流として検出するために、pn接合の深さを数十〜100nm程度に浅くする。また、シリコン最表面の不純物濃度を10
19cm
-3以上にし、且つ、深さ方向に対して濃度が徐々に低下する不純物プロファイルにすることで濃度勾配による電界を生じさせ、電子・正孔対を効率的に分離させて光電流が得られるようにする。
【0005】
さらに、このようなシリコン受光素子構造では、非特許文献2に記載されているように、紫外線照射によってシリコン上の絶縁膜に電荷がトラップされると、pn接合のバンド構造に影響が及んで、受光素子の感度特性が変動してしまうことが懸念される。このためシリコン表面に接する絶縁膜は電荷トラップの少ないシリコン熱酸化膜にする必要がある。シリコン最表面の不純物濃度を高濃度にすることは、絶縁膜中の固定電荷の影響を遮蔽するという利点もある。
【0006】
一方、シリコンを用いた紫外線受光素子をMOSトランジスタと一緒に形成する従来の方法は、例えば特許文献2に開示されている。
図8及び
図9は、従来の製造方法を工程順に示す断面図である。図において、PDは受光素子を形成する受光素子形成領域、TRはPMOSトランジスタを形成するMOSトランジスタ形成領域を表す。
【0007】
まず、
図8(a)に示すように、p型のシリコン基板101の表面にNwell領域102、素子分離領域103を形成し、必要に応じてトランジスタの閾値電圧を調節するためのイオン注入を行った後、ゲート酸化膜104を熱酸化により形成する。
次に、
図8(b)に示すように、ゲート電極材料であるポリシリコン膜105を堆積し、エッチングによりパターニングして、ゲート電極106を形成する(
図8(c))。
【0008】
その後、受光素子形成領域PD上を第1のフォトレジスト膜(図示せず)でマスクした状態で、MOSトランジスタ形成領域TRにイオン注入を行い、LDD(Lightly Doped Drain)領域109を形成する(
図8(d))。
【0009】
第1のフォトレジスト膜を除去した後、全面に絶縁膜110を堆積し(
図9(a))、受光素子形成領域PD上のゲート酸化膜104が除去されないように、受光素子形成領域PDを第2のフォトレジスト膜(図示せず)でマスクした状態で異方性エッチングを行う。これにより、ゲート電極106の側面にサイドウォール111が形成されるとともに、受光素子形成領域PDにはゲート酸化膜104と絶縁膜110が残存する(
図9(b))。
【0010】
続いて、MOSトランジスタ形成領域TRにイオン注入を行い、ソース・ドレイン領域112を形成する(
図9(c))。
その後、受光素子形成領域PDに浅い接合を形成するためのイオン注入を行い、不純物領域108を形成する(
図9(d))。
【0011】
このように、従来の製造方法によれば、シリコンを用いたpn接合を有する紫外線受光素子とMOSトランジスタとを同一シリコン基板に一緒に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5692880号公報
【特許文献2】特開2014−154793号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ITE Trans. On MTA Vol.2 No.2 pp.123−130 (2014)
【非特許文献2】SPIE−IS&T/Vol. 8298 82980M−1〜8(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、
図8及び
図9に示した従来の製造方法では、受光素子形成領域PDのシリコン基板表面に直接接する絶縁膜は、熱酸化膜ではあるものの、ゲート電極形成のためのパターニング後に残ったゲート酸化膜104であることから、ゲートパターニング時のエッチングダメージなどによる膜質低下が懸念される。上述のとおり、受光素子の感度特性の変動を抑制するには、シリコン表面に接する絶縁膜は電荷トラップの少ないシリコン熱酸化膜である必要があるため、膜質の低下したゲート酸化膜104がシリコン表面に接している受光素子は、信頼性が低いものとなってしまう。
【0015】
また、サイドウォール111形成のために堆積する絶縁膜110は、一般的にゲート酸化膜104より厚い(例えば特許文献2では、ゲート酸化膜厚10nm〜50nm、サイドウォール用絶縁膜厚200nm〜500nm)ため、ゲート酸化膜104とサイドウォール用絶縁膜110の積層膜を通して受光素子形成領域PDにイオン注入を行い、不純物領域108を所望の濃度とするためには、10
16cm
-2を超えるドーズ量が必要となる。このドーズ量を一度の注入で行うとレジストが焼きついてしまうなどの製造上の障害が懸念されるため、通常は二回以上に分けて注入することになり、スループットが低下する。また、接合深さも200nm程度となってしまい、本来紫外線を感度よく検出するために必要な100nm以下の浅い接合を実現するのは難しい。さらに、シリコン最表面の不純物濃度を10
19cm
-3以上にすることも困難である。
【0016】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、信頼性の高い受光素子とMOSトランジスタとを同一シリコン基板に一緒に形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、受光素子形成領域とMOSトランジスタ形成領域とを有するシリコン基板表面にMOSトランジスタのゲート酸化膜となる第一の熱酸化膜を形成する第一の工程と、前記第一の熱酸化膜上にポリシリコン膜を形成する第二の工程と、前記ポリシリコン膜をパターニングして、前記MOSトランジスタ形成領域に前記MOSトランジスタのゲート電極を形成する第三の工程と、前記第一の熱酸化膜のうち前記ゲート電極の下部以外の前記第一の熱酸化膜を除去する第四の工程と、前記シリコン基板表面に第二の熱酸化膜を形成する第五の工程と、前記第二の熱酸化膜を通して前記受光素子形成領域に不純物をイオン注入して不純物領域を形成する第六の工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ゲート電極の下部以外の第一の熱酸化膜を除去した後、新たに第二の熱酸化膜を形成するため、受光素子形成領域のシリコン基板表面に直接接する絶縁膜をポリシリコン膜のパターニングによるエッチングダメージを受けていない良質な熱酸化膜にすることができる。また、第二の熱酸化膜の膜厚は、ゲート酸化膜の膜厚と関係なく自由に設定可能である。したがって、電荷トラップの少ない良質な第二の熱酸化膜を適切な厚さ(例えば厚さ30nm以下)で形成し、かかる第二の熱酸化膜を通して受光素子形成領域にイオン注入を行って不純物領域を形成することにより、イオン注入のドーズ量を低く抑えることができ、且つ不純物領域のシリコン基板の最表面における不純物濃度が10
19cm
-3以上で、不純物領域の不純物濃度が10
17cm
-3以下となるシリコン基板表面からの深さが100nm以下であるような浅い接合を有する信頼性の高い受光素子を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一の実施形態の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図4】本発明の第三の実施形態の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図5】膜厚10nmの熱酸化膜を通してBF
2を注入したときのボロンの濃度プロファイルを示す図である。
【
図6】膜厚30nmの熱酸化膜を通してBF
2を注入したときのボロンの濃度プロファイルを示す図である。
【
図7】シリコンに光が入射したときに光が浸入する深さの波長依存性を示す図である。
【
図8】従来の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図9】従来の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一の実施形態]
図1及び
図2は、第一の実施形態の半導体装置の製造方法を工程順に示した断面図である。
図において、PDは受光素子を形成する受光素子形成領域、TRはPMOSトランジスタを形成するMOSトランジスタ形成領域を表す。
【0021】
まず、
図1(a)に示すように、p型のシリコン基板1の表面にNwell領域2、素子分離領域3を形成し、必要に応じてトランジスタの閾値電圧を調節するためのイオン注入を行う。
その後、シリコン基板1の全面を熱酸化することによりゲート酸化膜(「第一の熱酸化膜)ともいう)4を形成する。ゲート酸化膜の厚さは、例えば10nmである。
【0022】
次に、ゲート電極材料であるポリシリコン膜5を堆積し(
図1(b))、これをエッチングによりパターニングして、ゲート電極6を形成する。ここで、エッチング後に残った異物などを取り除くため、ウエット処理を行い、ゲート電極6の下部以外の領域のゲート酸化膜4を除去する(
図1(c))。
【0023】
その後、全面を熱酸化することにより、シリコン基板1の表面、ゲート電極の側面及び上面上に熱酸化膜(「第二の熱酸化膜)ともいう)7を形成する(
図1(d))。この熱酸化膜7の厚さは、例えば受光素子形成領域PD上で10nmである。なお、この工程において、ゲート電極の側面を熱酸化することは、ゲート電極パターニング時のエッチングダメージの除去、後の工程のソース・ドレイン領域形成用のイオン注入におけるゲート電極の突き抜け防止などの役割を担う。
【0024】
次に、熱酸化膜7を通して受光素子形成領域PDのNwell領域2にp型不純物のイオン注入を行い、p型不純物領域8を形成する(
図1(e))。この注入条件は、例えばBF
2,10keV,5.0×10
13cm
-2である。これにより、浅いpn接合が形成される。ここで、熱酸化膜7は、ゲート酸化膜(第一の熱酸化膜)4ではなく、ゲート酸化膜4を除去した後、新たに形成した熱酸化膜であることから、エッチングダメージ等を受けていない。さらに、熱酸化膜7の上に他の絶縁膜が形成されていない状態でイオン注入を行うことができる。
【0025】
したがって、イオン注入のドーズ量を上記のように低く抑えることができ、且つ不純物領域のシリコン基板の最表面における不純物濃度が10
19cm
-3以上で、不純物領域の不純物濃度が10
17cm
-3以下となるシリコン基板表面からの深さが100nm以下であるような浅い接合を有する信頼性の高い受光素子を形成することが可能となる。
続いて、MOSトランジスタ形成領域TRにp型不純物のイオン注入を行い、LDD(Lightly Doped Drain)領域9を形成する(
図2(a))。
【0026】
次に、全面に絶縁膜10を堆積する(
図2(b))。この絶縁膜10の厚さは例えば300nmである。続いて、受光素子形成領域PDをレジストからなるマスク層Rで覆った状態で異方性エッチングを行い、ゲート電極6の側面にサイドウォール11を形成する(
図2(c))。この時、MOSトランジスタ形成領域TRのLDD領域9表面は熱酸化膜7まで除去されるが、受光素子形成領域PDはマスク層Rで覆われているため絶縁膜10が残存し、これにより、シリコン基板表面に直接接している熱酸化膜7にエッチングダメージが入りにくくなる。
【0027】
その後、
図2(d)に示すように、MOSトランジスタ形成領域TRにp型不純物のイオン注入を行い、ソース・ドレイン領域12を形成する。そして、受光素子形成領域PDの浅い接合が損なわれないよう、例えば950℃、1秒といった高温短時間の活性化アニールを行う。
【0028】
上記のようにして形成された受光素子形成領域PDのボロンの濃度プロファイルを
図5に示す。上述のとおり、受光素子形成領域PD上の熱酸化膜7の厚さは10nm、イオン注入条件は、BF
2,10keV,5.0×10
13cm
-2である。
【0029】
図5に示すように、シリコン最表面のボロン濃度は2×10
19cm
-3、ボロン濃度が10
17cm
-3以下となるシリコン表面からの深さは55nmであり、紫外線を高感度で検出するために必要な不純物プロファイルが実現できている。
【0030】
このように、本実施形態によれば、不純物領域8形成のためのイオン注入のドーズ量は10
13cm
-2台であるため、従来の製造方法において生じるような製造上の障害をともなうことなく、MOSトランジスタの製造工程と整合した製造方法により、
図5に示すような不純物プロファイルを有する信頼性の高い受光素子をMOSトランジスタと一緒に形成することが可能となる。
【0031】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態の製造方法を説明するための工程断面図を
図3に示す。
図3(a)は
図1(d)と同一の工程を示しており、この工程までは第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。ただし、本実施形態では、熱酸化膜7の厚さを第一の実施形態よりも厚く、30nmとしている。
【0032】
かかる状態で、
図3(b)に示すように受光素子形成領域PDに浅い接合形成用のイオン注入を行う。イオン注入条件は、例えばBF
2,15keV,5.3×10
14cm
-2である。このイオン注入は、MOSトランジスタ形成領域TRにも同時に行われてLDD領域9が形成される。
図3(b)の工程の後は、
図2(b)以降と同じ工程を経ることにより、PMOSトランジスタと受光素子を同一シリコン表面上に形成することができる。
【0033】
本実施形態の手法を用いると、受光素子形成領域PDの不純物領域8の形成、すなわち浅い接合形成用のイオン注入がMOSトランジスタのLDD領域9形成用のイオン注入を兼ねるため、第一の実施形態と比べて工程数を削減することができる。
【0034】
本実施形態における受光素子形成領域PDのボロンの濃度プロファイルを
図6に示す。上述のとおり、受光素子形成領域PD上の熱酸化膜7の厚さは30nm、イオン注入条件はBF
2,15keV,5.0×10
14cm
-2である。
【0035】
図6に示すように、シリコン最表面のボロン濃度は2×10
19cm
-3、ボロン濃度が10
17cm
-3以下となるシリコン表面からの深さは65nmであり、紫外線を高感度で検出するために必要な不純物プロファイルが実現できている。
【0036】
図5及び
図6からわかるように、酸化膜を通してイオン注入を行う場合、酸化膜厚を10nmから30nmに変えると、シリコン最表面のボロン濃度を10
19cm
-3以上にするために、注入ドーズ量を一桁大きくする必要がある。また酸化膜を厚くすると注入エネルギーも上げる必要があり、浅い接合を制御性良く形成することが困難となる。このため酸化膜の厚さは30nm以下にすることが望ましい。
【0037】
[第三の実施形態]
本発明の第三の実施形態の製造方法を説明するための工程断面図を
図4に示す。
図4(a)は
図2(a)と同一の工程を示しており、この工程までは第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
次に、
図4(b)に示すように、サイドウォール形成用の絶縁膜10a及び10bを堆積する。ここで、絶縁膜10aは厚さ20nmのシリコン窒化膜、絶縁膜10bは厚さ280nmのシリコン酸化膜である。また、受光素子形成領域表面上の熱酸化膜7の厚さは30nm以下である。
【0039】
続いて、
図4(c)に示すように、異方性エッチングを用いてゲート電極の側面上に絶縁膜(シリコン酸化膜)10bからなるサイドウォール11bを形成する。この時、酸化膜のエッチングレートは速く、窒化膜のエッチングレートは遅いエッチング条件を用いることにより、絶縁膜(シリコン窒化膜)10aはエッチングストッパとして残る。このようにすることで、受光素子形成領域PDのシリコン表面に直接接している熱酸化膜7に対するエッチングダメージを低減することができる。サイドウォール11b形成後はイオン注入を行ってソース・ドレイン領域12を形成する(
図4(d))。
以上により、同一シリコン基板上にMOSトランジスタと受光素子を一緒に形成することができる。
【0040】
本実施形態の手法を用いると、サイドウォール11b形成時に、受光素子形成領域PD上の絶縁膜をレジストで覆う必要がないので、工程数を削減することができる。なお、本実施形態では窒化膜10aと酸化膜10bの積層構造を用いているが、窒化膜がシリコン表面近くに存在すると、電荷トラップとして作用し、受光素子特性やMOSトランジスタ特性に影響を及ぼす場合がある。そのような場合は、酸化膜/窒化膜/酸化膜のような三層以上の構造にすることも可能である。
【0041】
また受光素子形成領域PD上に存在する窒化膜と酸化膜との積層構造は、それぞれの膜厚を最適設計することにより、特定の光の波長に対して選択的に透過率を高くすることができるので、特定の波長に高い感度をもつ受光素子を作製することも可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記各実施形態においては、Nwell領域にPMOSトランジスタと最表面がp型となる受光素子を作製する例を示したが、Pwell領域にNMOSトランジスタと最表面がn型となる受光素子を作製することももちろん可能である。この場合、砒素、リン、アンチモンなどのイオン種を浅いpn接合を形成するためのイオン注入に用いる。
また、上記各実施形態では、イオン注入のイオン種にBF
2を用いたが、ボロン単体やボロンを含むクラスターイオン等をイオン注入に用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 シリコン基板
2 Nwell領域
3 素子分離領域
4 ゲート酸化膜
5 ポリシリコン膜
6 ゲート電極
7 熱酸化膜
8 不純物領域
9 LDD領域
10,10a,10b 絶縁膜
11,11b サイドウォール
12 ソース・ドレイン領域
R マスク層