【実施例1】
【0011】
本発明に係る自動車のリアシートベルトアンカ固定構造200(以下、リアシートベルトアンカ固定構造200とする。)は、駆動用バッテリBTを搭載する自動車AMに形成される。リアシートベルトアンカ固定構造200が形成される自動車AMの構造について、車両のリアシートRS付近を前方上方向から見た概略的斜視図を示す
図1、車両のリアシートRS付近を前方下方向から見た概略的斜視図を示す
図2、接続部103付近を車両前方から見た図を示す
図3を、及び、リアシートベルトアンカ固定補強部201の配置位置における断面を示す
図4を用いて説明する。なお、
図1を含む各図面においては、各構成要素を他の構成要素に接続、固定するために必要となる構造、例えばフランジ、については記載を省略している。以下における説明においては、車両前方に向かって左右方向を示す。
【0012】
図1に示すように、自動車AMは、駆動用バッテリBTを用いて駆動力を得る自動車である。駆動用バッテリBTを用いて駆動力を得る自動車としては、例えば、ハイブリッド型の自動車がある。自動車AMは、車両後方、リアシートRSの下からフロアパネルFPの間に形成される駆動用バッテリ配置空間BS(後述)に駆動用バッテリBTを搭載している。
【0013】
図2に示すように、自動車AMは、車両前後方向に沿って、車両の左右の端部付近にサイドメンバSMを有している。
図2に示すように、サイドメンバSMは、駆動用バッテリ配置空間BSの下面が配置されるフロアパネルFPの第5フロア面FP5(後述)よりも、車両上側に上面を有している。
【0014】
図1に示すように、自動車AMは、車両後方からリアシートRSの下まで、階段状のフロアパネルFPを有している。フロアパネルFPは、車両後方側から車両前方側に向かって連続的に位置する第1フロア面FP1、第2フロア面FP2、第3フロア面FP3、第4フロア面FP4、及び、第5フロア面FP5を有している。第1フロア面FP1は、水平面によって形成され、車両上下方向において最も高くに位置する。なお、第1フロア面FP1は、いわゆるトランクスペースの底面を形成する。第2フロア面FP2は、第1フロア面FP1から車両上下方向に対して斜め前下方に向かう斜面によって形成される。第2フロア面FP2には、所定の位置に2つのリアシートベルトアンカSAが取り付けられている。なお、フロアパネルFPは、車両後方側からフロアパネルサポート部材FPSによって支持されている(
図2参照)。フロアパネルサポート部材FPSの車両前側の端部は、サイドメンバSMに接続される。
【0015】
第3フロア面FP3は、車両前後方向に短い水平面によって形成される。第4フロア面FP4は、車両上下方向に沿う垂直面として形成される。第5フロア面FP5は、水平面によって形成され、車両上下方向において最も低くに位置する。なお、第5フロア面FP5は、いわゆる後席のフロア面を形成する。
【0016】
図1に示すように、リアシートベルトアンカSAは、駆動用バッテリ配置空間形成部101に対して車両上方に配置されるリアシートRSに対して車両後方直近に位置するフロアパネルFPの第2フロア面FP2に配置される。第2フロア面FP2には、車両水平方向に沿って2つのリアシートベルトアンカSAが配置される。
【0017】
第1 駆動用バッテリ保護構造100
駆動用バッテリ保護構造100は、
図1に示すように、駆動用バッテリ配置空間形成部101、サイドメンバ接続部103、及び、緩衝部105を有している。駆動用バッテリ配置空間形成部101は、天板部101a、フレーム部101b、及び、支持部101cを有している。
【0018】
天板部101aは、金属製の薄板により形成されており、平面視、変形の楕円形状を有している。天板部101aの車両上側には、リアシートRSが載置される。天板部101aは、中間天板部101a1、上側天板補強部101a3、及び、下側天板補強部101a5(
図4参照)を有している。中間天板部101aは、中央部分に、車両前後方向に沿ったビードが、中央部分の右側、及び、左側に、車両左右方向に沿ったビードが、それぞれ形成されており、ビードの深さに応じた所定の厚さを有している。なお、
図1においては、ビードの記載は省略している。上側天板補強部101a3は、中間天板部101a1の中央部分の車両上側に配置されている。同様に、下側天板補強部105a5は、中間天板部101a1の中央部分の車両下側に配置されている。このように、リアシートRSが載置される天板部101aを多層構造にすることによって、天板部101aの強度を上げている。また、上側天板補強部101a3、下側天板補強部105a5を中間天板部101a1に対して強度が必要な場所にのみ配置することによって、強度を確保しつつ、重量を低減することができる。
【0019】
フレーム部101bは、所定径のパイプにより形成されており、天板部101aの形状よりも大きめの形状に沿った変形の楕円形状を有している。フレーム部101bの上に、天板部101aが接続、固定されている。
図4に示すように、フレーム部101bは、第3フロア面FP3に接続、固定される。なお、フレーム部101bは、第3フロア面FP3に固定されるとともに、天板部101aとも一体的に固定される。フレーム部101bは、フロアパネルFPに対して、第3フロア面FP3、及び、支持部101cを介して第5フロア面FP5(後述)に固定されるため、強固に固定される。なお、天板部101a、及び、フレーム部101bによって、リアシート載置部が形成される。
【0020】
図1に示すように、支持部101cは、金属製の薄板によって形成され、矩形形状を有している。支持部101cは、車両前方のフレーム部101b、及び、フロアパネルFPの第5フロア面FP5に、車両上下方向に沿って接続される。支持部101cは、第5フロア面FP5に対してフレーム部101bを支持する。
【0021】
ここで、駆動用バッテリ配置空間BSは、天板部101a及びフレーム部101bによって形成される上面、支持部101cによって形成される前面、フロアパネルFPの第5フロア面FP5によって形成される下面、フロアパネルFPの第4フロア面FP4によって形成される後面によって、形成される。なお、駆動用バッテリ配置空間形成部101は、車両上下方向に沿って所定の力を作用させても、駆動用バッテリ配置空間BSに配置される駆動用バッテリBTの性能に影響がないように形成される。駆動用バッテリ配置空間形成部101に作用させる所定の力としては、例えば、駆動用バッテリ配置空間形成部101の車両上側に配置されるリアシートRSを介して、車両下方に向かって30kgfのダンベルを所定高さから落下させたときの力を設定する。
【0022】
接続部103は、金属製の薄板によって形成される。接続部103は、フレーム部101bの前方、右側の斜め右後方に向かう接続部配置領域R101bから、緩衝部105を接続するように配置される。なお、緩衝部105は、フレーム部101bの接続部配置領域R101bよりも車両右側の下側、つまり、車両外側の下側に位置しているため、接続部103は、緩衝部105からみて、斜め上方に沿ってフレーム部101bを支持するように配置される。
【0023】
緩衝部105は、金属製の薄板によって形成され、一つの頂点が車両上方に突出した突出部105aを有している。突出部105a(
図3参照)は、サイドメンバSMに対して車両内側に配置される。なお、緩衝部105は、車両前方側の前面に、サイドメンバSMの車両内側の端部に沿うように接続される。緩衝部105は、サイドメンバSM、及び、フロアパネルFPの第5フロア面FP5に固定される。緩衝部105は、自らの形状を変形させることによって、車両側方からの衝突に対してサイドメンバSMが受けた衝撃力を吸収する。突出部105aには、接続部103が接続、固定される。
【0024】
第2 駆動用バッテリ保護構造100の作用
図3に示すように、側突のように、車両に対して側面から力Fが作用した場合、力F1は、まず、サイドメンバSMに作用し、サイドメンバSMが変形する。さらに、力F1は、サイドメンバSMを介して、緩衝部105に作用する。緩衝部105は、自らの形状を変形させることによって力Fを吸収する。さらに、力F1は、緩衝部105を介して、緩衝部105に接続されている接続部103に作用する。接続部103は、車両内側、つまり、駆動用バッテリ配置空間BSに向かう力F1を、自身に沿って、つまり、緩衝部105から車両斜め上方(矢印a3方向)に伝達し、フレーム部101b、及び、天板部101aに作用する力F1‘とする。天板部101a及びフレーム部101bは、フロアパネルFPの第3フロア面FP3に強固に接続されているとともに、支持部101cによってフロアパネルFPの第5フロア面FP5に接続されているため、一部を変形させることによって力Fを吸収する。これにより、駆動用バッテリ配置空間BSを保護することができ、結果として、駆動用バッテリ配置空間BSに配置されている駆動用バッテリBTを保護することができる。
【0025】
第3 リアシートベルトアンカ固定構造200
図2に示すように、リアシートベルトアンカ固定構造200は、駆動用バッテリ保護構造100を有する自動車AMにおいて、リアシートRSの後方に位置する第2フロア面FP2に配置されるリアシートベルトアンカSAを強固に固定するための構造である。リアシートベルトアンカ固定構造200は、フロアパネルFP、リアシートベルトアンカSA、駆動用バッテリ保護構造100(
図1参照)、及び、シートベルトアンカ固定補強部201を有している。
【0026】
図4に示すように、リアシートベルトアンカ固定補強部201は、金属製の板状部材によって形成される。リアシートベルトアンカ固定補強部201は、フロアパネルFPの第2フロア面FP2及び第3フロア面FP3の車両下側に、つまり、リアシートベルトアンカSAが固定される面とは反対側の面に沿って配置される。リアシートベルトアンカ固定補強部201では、一端が第2フロア面FP2を介してリアシートベルトアンカSAに接続され、他の一端が、第3フロア面FP3を介して駆動用バッテリ配置空間形成部101のフレーム部101bに接続される。つまり、リアシートベルトアンカ固定補強部201は、第2フロア面FP2から第3フロア面FP3にかけて配置される。
【0027】
第4 リアシートベルトアンカ固定構造200の作用
リアシートベルトアンカ固定補強部201は、第3フロア面FP3及びフレーム部101bと一体的に固定されるため、車両衝突時において、リアシートベルトアンカSAに対して車両斜め前方に向かって作用する力F2を、フレーム部101bに作用する下方に向かう力F2‘として、フレーム部101b、ひいては、駆動用バッテリ配置空間形成部101に伝達する。駆動用バッテリ配置空間形成部101は、フレーム部101bを介してフロアパネルFPに固定されると共に、支持部101cを介してフロアパネルFPに対して固定されているため、強固な構造を有している。よって、リアシートベルトアンカ固定補強部201を介して作用する力F2’に対して、駆動用バッテリ配置空間形成部101は、わずかな変形で対抗できる。ひいては、リアシートベルトアンカSAの移動を低減できる。
【0028】
また、リアシートベルトアンカSAに近接して位置する駆動用バッテリ配置空間形成部101のフレーム部101bと共に、フロアパネルFPに接続することによって、自身の長さを短くすることができる。例えば、従来、リアシートRSに対して車両後方のより遠くに配置されていた他のクロスメンバに接続する場合に比して、リアシートベルトアンカ固定補強部201全体の長さを短くできるので、リアシートベルトアンカ固定補強部201の形成に必要な材料を低減できるとともに、リアシートベルトアンカ固定補強部201自体の重量も低減できる。
【0029】
[他の実施形態]
(1)緩衝部105:前述の実施例1においては接続部103を、緩衝部105を介してサイドメンバSMに接続したが、緩衝部105を配置せずに、直接的に、サイドメンバSMに接続するようにしてもよい。
【0030】
(2)天板部101a、フレーム部101bの形状:前述の実施例1においては、天板部101a、フレーム部101bを変形の楕円形状としたが、車両上方にリアシートRSを配置でき、車両下方に駆動用バッテリ配置空間BSを形成できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、天板部101a、フレーム部101bが矩形状であってもよい。
【0031】
(3)上側天板補強部101a3、下側天板補強部101a5:前述の実施例1においては、中間天板部101a1に対して、上下に、上側天板補強部101a3、下側天板補強部101a5を配置したが、いずれか一方を配置するようにしてもよい。また、いずれも配置しないようにしてもよい。さらに、上側天板補強部101a3、下側天板補強部101a5の配置位置については、中間天板部101a1の中央部部でなくとも、強度が必要な部分に配置するようにすればよい。
【0032】
(4)接続部103:前述の実施例1においては、接続部103を左右一方にのみ配置したが、左右両方に配置するようにしてもよい。
【0033】
(5)天板部101aの補強:前述の実施例1において、天板部101aを補強するために、他の補強部材、例えば、所定強度を有する平板を天板部101aの上面、下面のいずれか一方、または、両方に、配置するようにしてもよい。