【実施例】
【0021】
A.低次酸化チタンの製造方法:
実施例1
水4500gが入った容器中に無定形の二酸化チタン(TiO
2)500gを撹拌しながら投入し、10wt%二酸化チタンスラリーを調整した。水2350gが入った容器の中にポリビニルアルコール(PVA)150gを撹拌させながら投入後、90℃の温度で1時間保持後、冷却することで6wt%ポリビニルアルコール水溶液を調整した。10wt%二酸化チタンスラリー500gに6wt%ポリビニルアルコール水溶液250gを撹拌しながら混合し、二酸化チタン−PVA混合スラリーを調整した。その混合スラリーを噴霧式乾燥機(MDL−50B,藤崎電機社製)で乾燥し、低次酸化チタンの前駆体を得た。得られた前駆体20gをアルミナ製ルツボへ投入後、前駆体が入ったアルミナルツボをタンマン管式雰囲気焼成炉(NLT−2035D−SP モトヤマ製)の中へ入れ、窒素雰囲気下、焼成条件1000℃×3時間の条件で焼成することにより実施例1の低次酸化チタンを得た。
【0022】
実施例2
10wt%二酸化チタンスラリーと混合する6wt%ポリビニルアルコール水溶液の添加量を250gから340gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2の低次酸化チタンを得た。
【0023】
実施例3
10wt%二酸化チタンスラリーと混合する6wt%ポリビニルアルコール水溶液の添加量を250gから420gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例3の低次酸化チタンを得た。
【0024】
実施例4
10wt%二酸化チタンスラリーと混合する6wt%ポリビニルアルコール水溶液の添加量を250gから700gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例4の低次酸化チタンを得た。
【0025】
実施例5
10wt%二酸化チタンスラリーと混合する6wt%ポリビニルアルコール水溶液の添加量を250gから100gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例5の低次酸化チタンを得た。
【0026】
実施例6
焼成温度を950℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例6の低次酸化チタンを得た。
【0027】
実施例7
焼成温度を1150℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例7の低次酸化チタンを得た。
【0028】
実施例8
10wt%二酸化チタンスラリーと混合する6wt%ポリビニルアルコール水溶液の添加量を250gから200gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例8の低次酸化チタンを得た。
【0029】
比較例1
二酸化チタン5gをアルミナ製ルツボに入れ、焼成条件1170℃×2時間、窒素90%−水素10%混合雰囲気下で焼成し、比較例1の低次酸化チタンを得た。
【0030】
比較例2
二酸化チタン5gと金属チタン1g混合した粉末をキャリアガスであるアルゴンガスでプラズマトーチへ搬送し、アルゴン雰囲気下約4MHz、約80kVAの高周波電圧を印加した条件で高周波熱プラズマ処理し、比較例2の低次酸化チタンを得た。
【0031】
比較例3
比較例2の低次酸化チタン2gと導電性カーボンであるアセチレンブラック0.08gを自転・公転ミキサー(あわとり練太郎(登録商標)AR−100,シンキー社製)で20分混合し、比較例3の低次酸化チタンとアセチレンブラック混合粉末を得た。
【0032】
B.粉体物性測定:
[X線回折分析]
X線回折分析は、実施例及び比較例で得た粉末状のサンプルを加圧成型した後、X線回折装置(X’Pert PRO,スペクトリス社製)により、CuKα線を用いて印加電圧45kV,印加電流40mAの条件で測定を行った。また、Ti
4O
7の純度は、X線回折分析により得られたデータをリートベルト解析(解析ソフト名:X’Pert High Score Plus)による結晶構造解析を行うことにより決定した。
【0033】
[比表面積]
BET法を使用し、Macsorb HM−1208(マウンテック社製)で測定を行った。
【0034】
[粉体抵抗率測定]
粉体抵抗測定システムMCP−PD−51(三菱アナリティカル社製)を用い測定を行った。測定方法は、粉体専用プローブ(4探針、リング電極)を具備した容器にサンプルを投入後、10kNの圧力をかけた時の粉体抵抗と厚みを測定し、下記の式で粉体抵抗率を算出した。
・粉体抵抗率(Ω・cm)=抵抗(Ω)×厚み(cm)×抵抗率補正係数(RCF)
【0035】
[カーボン量測定]
サンプルを秤量し容器に入れ、有機元素分析装置(MACRO CORDER JM1000CN,ジェイ・サイエンス・ラボ社製)で測定を行った。
【0036】
[一次粒子径]
1次粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)から100個の一次粒子についてその粒子径を計測し、計測値を算術平均し算出した。
【0037】
図1には、本発明の低次酸化チタンの代表的な例として、実施例1で得られた低次酸化チタンのX線回折パターンが示されており、
図2には、比較例の低次酸化チタンの代表的な例として、比較例1で得られた低次酸化チタンのX線回折パターンが示されている。
【0038】
また、
図3,4には、本発明の低次酸化チタンの代表的な例として、実施例1で得られた低次酸化チタンのSEM写真(×10k,×100k)が示されており、
図5には、比較例の低次酸化チタンの代表的な例として、比較例1で得られた低次酸化チタンのSEM写真(×10k)が示されている。
【0039】
実施例1〜8の低次酸化チタンおよび比較例1〜3の低次酸化チタンのX線回折分析を行った結果、得られたピークパターンより、いずれもTi
4O
7に帰属することが確認された。また、実施例6ではTi
4O
7の低次酸化チタンの他にTi
5O
9やTi
6O
11の低次酸化チタンが生成されており、実施例7ではTi
3O
5の低次酸化チタンが生成されていることが確認された。
【0040】
また、実施例1の低次酸化チタンのSEM写真と比較例1の低次酸化チタンのSEM写真とを比較すると、比較例1の低次酸化チタンは表面が滑らかな不規則形状をしているのに対して、実施例1の低次酸化チタンは表面に無数の凹凸を有する不規則形状をしている。このため、実施例1の低次酸化チタンは、比較例1の低次酸化チタンに対して極めて高い比表面積を有していることが確認される。
【0041】
実施例1〜8の
低次酸化チタンおよび比較例1〜3の低次酸化チタンの比表面積と粉体抵抗率の測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例1と比較例2の結果より、比表面積と粉体抵抗率はトレードオフの関係となっており、各々の特性を両立することが困難であることが確認された。また、比較例3では、比較例2に導電性カーボンであるアセチレンブラックを混合し粉体抵抗率の低減効果を確認したが、無添加の比較例2よりも粉体抵抗率が低減したが、実施例1〜8に示した粉体抵抗率までには至らなかった。ところが、実施例1〜8で得られた低次酸化チタンの場合、高い比表面積を有するにも拘らず粉体抵抗率の上昇が抑制されており、従来の製造方法では達成し得なかった高い比表面積と低い粉体抵抗率を両立させることが可能であることが判った。
【0044】
C.蓄電デバイス評価(キャパシタ評価)
実施例9
実施例1の低次酸化チタン80wt%、アセチレンブラック(電気化学工業社製)10wt%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製)10wt%と適量のN−メチルピロリドン(キシダ化学社製)を加え、混練機で十分に混練してスラリーを作製した。そのスラリーをアルミニウム箔にドクターブレードで塗布、乾燥して評価用電極を得た。
評価用電極と対極との間に、ポリプロピレン製セパレーターを介して電極を構成し、コイン型の電池容器に入れた後、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)が容量比で1:2に混合されている混合溶媒中に電解質である1MのLiPF
6を溶解させた電解液を注入後、電池容器を封口することで、実施例9のキャパシタ評価用電池を作製した。
【0045】
測定条件は電圧を1.0〜2.5V、電流密度を0.1C、1Cと変更した条件で充放電を行い、測定を行った。電池評価は下記の式を用いて放電率を算出し、効果の確認を行った。
・放電率(%)=(1C放電容量/0.1C放電容量)×100
【0046】
比較例4
実施例1の低次酸化チタンを比較例1の低次酸化チタンへ変更した以外は実施例9と同様の操作を行い、比較例4のキャパシタ評価用電池を作製し、評価を行った。
【0047】
実施例9と比較例4のキャパシタ評価用電池の測定結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例9と比較例4のキャパシタ評価用電池の測定結果より、実施例9のキャパシタ評価用電池の方は大幅な放電率の向上を示す結果となった。このことから、本発明で得られた低次酸化チタンは、キャパシタのみならず、燃料電池やリチウム電池等の蓄電デバイスへの適用可能であることが示唆される。