(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高さに応じて異なる型番が割り当てられた枕ユニットを用いて形成される枕に関し、ユーザーが使用する枕の形成に用いられる前記枕ユニットの型番を、採用型番として決定する情報処理方法であって、
前記ユーザーの頭部位置情報および頭部重量情報を含むユーザー情報を取得するユーザー情報取得ステップと、
前記頭部位置情報に基づく前記枕ユニットの基準高さの値に、前記頭部重量情報の値および前記枕ユニットに充填する枕素材の変形しやすさの値を乗じて、前記枕ユニットの目標高さを算出する算出ステップと、
前記目標高さに基づいて前記採用型番を決定する決定ステップと、を含むことを特徴とする情報処理方法。
前記枕ユニットとして、仰臥位の寝姿勢において前記ユーザーの後頭部を支持する第1枕ユニットと、当該寝姿勢において前記ユーザーの頸椎部を支持する第2枕ユニットとが用いられ、
前記ユーザー情報は、
前記頭部位置情報として、自然体における前記ユーザーの背面垂線と後頭部との距離に関連づけられた第1頭部位置情報と、自然体における前記ユーザーの背面垂線と頸椎部との距離に関連づけられた第2頭部位置情報と、を含み、
前記算出ステップは、
前記ユーザー情報に含まれる第1頭部位置情報に基づいて、第1枕ユニットの前記基準高さを算出する処理と、
前記ユーザー情報に含まれる第2頭部位置情報に基づいて、第2枕ユニットの前記基準高さを算出する処理と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態として、第1実施形態および第2実施形態を例に挙げ、以下に図面を参照しながら説明する。
【0025】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る枕1の構成図(斜視図)である。また、
図2は枕1の形成に用いられるカバー2の構成図であり、
図3は枕1の形成に用いられる第1〜第3の各枕ユニット6a〜6c(以下、「枕ユニット6」と総称することがある)の構成図(斜視図)である。なお枕1についての上下の方向は、
図1に示すとおりである。枕1は、
図12等に示すように、寝姿勢をとるユーザーの頭を上側に乗せた形態で使用される。
【0026】
一つの枕1の形成において、第1枕ユニット6aと第2枕ユニット6bは一つずつが用いられ、第3枕ユニット6cは二つが用いられる。枕1は、織物または編物の生地で形成される略長方形のカバー2と、カバー2に取付けられるタグ5と、詰物を充填した袋またはクッションで形成される枕ユニット6とを含む。
【0027】
カバー2は、中央部に設けられた折り目2aにて折り曲げ可能であり、カバー2の外周部にはファスナー2bが設けられている。カバー2は、折り目2aでの折り曲げによって、上下を覆う収納スペースを形成した状態となる。この収納スペースに枕ユニット6を収納した状態でファスナー2bを閉めることにより、枕1が形成される。カバー2は枕ユニット6の高さ(上下方向寸法)に比べて十分薄くなっているため、枕1の各部分の高さは、その部分に対応する枕ユニット6の高さと同等と見ることが出来る。
【0028】
カバー2の内部(上記の収納スペース)には、枕ユニット6a〜6cそれぞれが収納される各エリアA〜Cが設けられる。エリアCは二箇所設けられており、それぞれの箇所に第3枕ユニット6cが一つずつ収納される。カバー2の内部側において、エリアAの位置には第1枕ユニット6aを固定させるための面ファスナー3が設けられ、エリアBの位置には第2枕ユニット6bを固定させるための面ファスナー3が設けられ、エリアCの位置には第3枕ユニット6cを固定させるための面ファスナー3が設けられている。枕ユニット6には、カバー2側の面ファスナー3と係合可能な面ファスナー(不図示)が設けられており、これらの面ファスナーを利用して、枕ユニット6をカバー2へ着脱自在に固定することが出来る。
【0029】
また枕ユニット6a〜6cそれぞれは、平面形状(上方視による形状)が同じで高さを変えた複数のパターンが用意されており、当該パターンそれぞれに固有の型番が割り当てられている。すなわち枕ユニット6a〜6cそれぞれは、高さに応じて異なる型番が割り当てられている(後述の表1〜表3を参照)。高さの異なる枕ユニット6を枕1の部品として採用することにより、枕1における当該枕ユニット6に対応する部分の高さを変えることが可能である。後述の説明から明らかなとおり、本実施形態では枕ユニット6を利用して、ユーザーの体型情報等に基づいて部分ごとに高さが調節された枕1を製造し、個々のユーザーに適した枕1を提供することが可能である。
【0030】
枕1は、上方視点により略長方形の形状となっており、概ね、長手方向に3等分した場合の両端側の二つのエリアがエリアCである。また、これらに挟まれた内側のエリアに、エリアAとエリアBが設けられている。より具体的には、当該内側のエリアを短手方向に3等分した場合に、一端側のエリアがエリアBであり、その余のエリア(他端側と内側のエリアを合わせたもの)がエリアAである。
【0031】
ユーザーが枕1のほぼ中央部に頭を乗せて仰臥位の寝姿勢をとるとき、枕1におけるエリアAの部分がユーザーの後頭部を支持し、エリアBの部分がユーザーの頸椎部を支持する格好となる(
図11を参照)。一方、例えばこの状態からユーザーが寝返りをして、横臥位の寝姿勢をとるとき、枕1におけるエリアCの部分がユーザーの側頭部を支持する格好となる(
図13参照)。枕1は、このような使われ方を考慮して適切な枕ユニット6を用いて形成され、ユーザーに適合した枕となるように配慮されている。
【0032】
なお本実施形態では、枕ユニット6をカバー2に固定する方法として面ファスナーを使用しているが、当該固定の方法は特に限定されない。例えば、枕ユニット6をカバー2に縫い付ける方法や、枕ユニット6をホックなどでカバー2に固定する方法が採用されても良く、カバー2のエリアA〜Cに対応する位置に予め収納室を設けておき、その中に枕ユニット6に相当する詰物を入れる方法が採用されても良い。
【0033】
また本実施形態では、一つの枕1について3種類(計4個)の枕ユニット6を用いているが、本発明の主旨を逸脱しない限り、枕ユニット6の個数や種類などは限定されない。例えば、枕ユニット6の個数を多くしても良く、第1枕ユニット6aの平面面積を大きくして、その上に他の枕ユニット6b、6cを載せて多層化構造にしても良い。
【0034】
また本実施形態では、枕1の平面形状(上下方向に見た形状)を長方形としているが、これに限定されることはなく、楕円形や逆クラウン形状などが適宜選択できる。また枕ユニット6に充填する詰物やクッション等の素材(以下、単に「枕素材」と称することがある)としては、そばがら、ヒノキチップ、パイプ、ポリエチレンビーンズ、羽毛、わた、或いはファイバーボールなどが使用できる。またカバー2の生地としては、綿、絹、麻、ナイロン製の布、或いはダブルラッセルメッシュ生地などが使用できる。
【0035】
次に、枕1の製造に関する情報処理を行う情報処理システムについて、
図4A〜
図4Cを参照しながら説明する。
図4Aは、当該情報処理システムの全体的な概略構成を示すブロック図である。また
図4Bは、ユーザー情報入力装置10の概略構成を示すブロック図であり、
図4Cは、枕組立指示装置20の概略構成を示すブロック図である。当該情報処理システムは、ユーザー情報入力装置10および枕組立指示装置20を有しており、これらはインターネット回線INT(通信回線の一形態)を介して情報通信が可能である。
【0036】
ユーザー情報入力装置10は、ユーザー情報UF(主に、枕1を使用するユーザーに関する情報)の入力を受付けて、取得したユーザー情報UFを枕組立指示装置20へ送信する役割を果たす。ユーザー情報入力装置10は複数個が設けられても良く、ユーザーが来店し易い各地の店舗(例えば枕の販売店)などに設置されることが望ましい。
【0037】
枕組立指示装置20は、ユーザ情報入力装置10から受信したユーザー情報UFを用いて、枕1の製造に役立つ情報を提供する役割を果たす。枕組立指示装置20は複数個が設けられても良く、枕1を製造する各地の工場や作業場などに設置されることが望ましい。
【0038】
ユーザー情報入力装置10は、ユーザー情報送受信部11、タッチパネル12、中央演算処理装置(CPU)13、RAM(ランダムアクセスメモリ)14、ROM(リードオンリーメモリ)15、およびハードディスク(プログラム記憶部)16を有する。またハードディスク16には、ユーザー体型情報取得プログラム17と、ユーザー名等情報取得プログラム18とが格納されている。
【0039】
ユーザー情報送受信部11は、ユーザー情報を枕組立指示装置20へ送信する処理(
図5のS7を参照)等を実行する。タッチパネル12は、タッチ操作による各種情報の入力受付に用いられる。中央演算処理装置(CPU)13は、情報を記憶する各部(14〜16)と連携し、各種処理を実行する。
【0040】
ユーザー体型情報取得プログラム17には、後頭部距離Daの入力に関わる後頭部距離入力部51、頸椎部距離Dbの入力に関わる頸椎部距離入力部52、側頭部距離Dcの入力に関わる側頭部距離入力部53、体重Wの入力に関わる体重入力部54、頭部重量Whの算出に関わる頭部重量算出部55、および肩部重量Wbの算出に関わる肩部重量算出部56が含まれる。またユーザー名等情報取得プログラム18には、ユーザーの名前の入力に関わるユーザー名入力部61、ユーザーの住所の入力に関わるユーザー住所入力部62、枕素材の選択入力に関わる枕素材選択部63、およびマットレスの反発力の選択入力に関わるマットレス反発力選択部64が含まれる。これらのプログラムは、中央演算処理装置(CPU)13によって適宜実行され、ユーザー情報入力装置10による各処理が実現される。
【0041】
枕組立指示装置20は、ユーザー情報送受信部21、中央演算処理装置(CPU)22、RAM(ランダムアクセスメモリ)23、ROM(リードオンリーメモリ)24、ハードディスク(プログラム記憶部)25を有する。またハードディスク25には、ユーザー体型情報処理プログラム26、採用型番決定プログラム27、および枕組立指示プログラム28が格納されている。
【0042】
ユーザー情報送受信部21は、ユーザー情報UFをユーザ情報入力装置10から受信する処理(
図5のS8を参照)等を実行する。中央演算処理装置(CPU)22は、情報を記憶する各部(23〜25)と連携し、各種処理を実行する。
【0043】
ユーザー体型情報処理プログラム26には、後述する肩部沈み量d1の算出に関わる仰臥位肩部沈み量算出部71、後述する肩部沈み量d2の算出に関わる横臥位肩部沈み量算出部72、後述する目標高さUaの算出に関わる後頭部ユニット高さ算出部73、後述する目標高さUbの算出に関わる頸椎部ユニット高さ算出部74、および後述する目標高さUcの算出に関わる側頭部ユニット高さ算出部75が含まれる。型番決定プログラム27には、後述する採用型番AScの決定に関わる後頭部ユニット採用型番決定部81、後述する採用型番ASbの決定に関わる頸椎部ユニット採用型番決定部82、および後述する採用型番AScの決定に関わる側頭部ユニット採用型番決定部83が含まれる。枕組立指示プログラム28には、枕ユニット6の配置の指示(表示)に関わる枕ユニット配置指示部91、およびタグ5の印刷に関わるタグ印刷部92が含まれる。これらのプログラムは、中央演算処理装置(CPU)22によって適宜実行され、枕組立指示装置20による各処理が実現される。
【0044】
次に、本実施形態の情報処理システムを利用した枕1の製造方法について、
図5に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0045】
まずステップS1の工程として、ユーザーの後頭部距離Da、頸椎部距離Db、および側頭部距離Dcを測定し、これにより得られた測定値をユーザー情報入力装置10へ入力する工程が行われる。当該測定および入力の作業は、店舗の作業員等が行っても良く、ユーザーが行っても良い。本工程が行われる際、ユーザー情報入力装置10は、当該測定値の入力を受付ける状態となっており、例えばタッチパネル12を利用して当該測定値の入力が可能である。なお、後頭部距離Da、頸椎部距離Db、および側頭部距離Dcの測定手法については改めて説明する。また、当該測定および入力の少なくとも一方が、自動化されていても良い。
【0046】
次にステップS2の工程として、体重計でユーザーの体重Wを測定し、これにより得られた測定値をユーザー情報入力装置10へ入力する工程が行われる。当該測定および入力の作業は、店舗の作業員等が行っても良く、ユーザーが行っても良い。本工程が行われる際、ユーザー情報入力装置10は、当該測定値の入力を受付ける状態となっており、例えばタッチパネル12を利用して当該測定値の入力が可能である。また、当該測定および入力の少なくとも一方が、自動化されていても良い。
【0047】
次にステップS3の工程として、ユーザー情報入力装置10が、ユーザーの頭部重量Whと肩部重量Wbを体重Wの測定値(ステップS2での測定値)から算出する工程が行われる。
【0048】
次にステップS4の工程として、ユーザーの名前U1とユーザーの住所U2(枕1の配達先)の情報をユーザー情報入力装置10へ入力する工程が行われる。当該入力の作業は、ユーザーが行っても良く、店舗の作業員等が代行して行っても良い。本工程が行われる際、ユーザー情報入力装置10は、当該情報の入力を受付ける状態となっており、例えばタッチパネル12を利用して当該情報の入力が可能である。
【0049】
次にステップS5の工程として、ユーザー情報入力装置10へ、ユーザーが希望する枕素材U3の選択入力を行う工程が行われる。当該入力の作業は、ユーザーが行っても良く、店舗の作業員等が代行して行っても良い。本工程が行われる際、ユーザー情報入力装置10は、例えばタッチパネル12に各種の枕素材の選択肢を表示し、何れかの選択肢の選択入力を受付ける(タッチされた選択肢の枕素材を、入力された枕素材と認識する)状態となる。
【0050】
次にステップS6の工程として、ユーザー情報入力装置10へ、ユーザーが枕1とともに使用するマットレスの反発力(マットレスのタイプ)U4の選択入力を行う工程が行われる。当該入力の作業は、ユーザーが行っても良く、店舗の作業員等が代行して行っても良い。本工程が行われる際、ユーザー情報入力装置10は、例えばタッチパネル12に各種のマットレスの反発力の選択肢を表示し、何れかの選択肢の選択入力を受付ける(タッチされた選択肢の反発力を、入力された反発力と認識する)状態となる。
【0051】
次にステップS7の工程として、ユーザー情報入力装置10は、ユーザー情報UFを、インターネット回線INTを通じて枕組立指示装置20へ送信する工程が行われる。このユーザー情報UFには、ステップS1〜S6の各工程で取得された各情報(後頭部距離Da、頸椎部距離Db、側頭部距離Dc、体重W、頭部重量Wh、肩部重量Wb、名前U1、住所U2、枕素材U3、および反発力U4)が含まれる。
【0052】
次にステップS8の工程として、枕組立指示装置20によって、ユーザー情報入力装置10から送信されたユーザー情報UFを受信する工程が行われる。次にステップS9の工程として、枕組立指示装置20によって、仰臥位時の肩部沈み量d1、および横臥位時の肩部沈み量d2を算出する工程が行われる。
【0053】
次にステップS10の工程として、枕組立指示装置20によって、第1枕ユニット6a(後頭部を支持する枕ユニット)の基準高さHa、第2枕ユニット6b(頸椎部を支持する枕ユニット)の基準高さHb、および第3枕ユニット6c(側頭部を支持する枕ユニット)の基準高さHcを算出する工程が行われる。
【0054】
次にステップS11の工程として、枕組立指示装置20によって、第1枕ユニット6aの目標高さUa、第2枕ユニット6bの目標高さUb、および第3枕ユニット6cの目標高さUcを算出する工程が行われる。次にステップS12の工程として、枕組立指示装置20によって、第1枕ユニット6aの採用型番ASa、第2枕ユニット6bの採用型番ASb、および第3枕ユニット6cの採用型番AScを決定する工程が行われる。次にステップS13の工程として、枕組立指示装置20によって、ステップS12において決定された各採用型番ASa〜AScを表示する工程が行われる。
【0055】
次にステップS14の工程として、表示された各採用型番ASa〜ASc、および印刷されたタグ5を利用して枕1を製造する工程が行われる。より具体的に説明すると、表示された各採用型番ASa〜AScの枕ユニット6a〜6cを、それぞれ枕カバー2上に配置して固定する工程が行われる。この配置および固定の作業は、全て作業員等によって行われても良く、一部又は全部が自動化されていても良い。その後、枕カバー2のファスナー2bを閉じる工程が行われる。更に、枕組立指示装置20がユーザーの名前U1と各採用型番ASa〜AScをタグ5に印刷し、作業員等が当該印刷済みのタグ5をカバー2に取り付ける工程が行われる。
【0056】
以上の一連の工程(ステップS1〜S14)によって、枕1が製造される。その後、製造された枕1を梱包し、ユーザーの住所へ発送することにより、ユーザーは自分の体型に合った枕1を取得することができる。
【0057】
なお、先述したステップS1の処理に関し、後頭部距離Daおよび頸椎部距離Dbについて、より詳細に説明する。
図6は、ユーザーの直立姿勢を横から見た図であって、後頭部距離Daおよび頸椎部距離Dbを示す概念図である。本実施形態において、後頭部距離Daは、直立姿勢におけるユーザーの背面に接する背面垂線と後頭部(
図6に示す点P1)との水平距離のことであり、頸椎部距離Dbは、直立姿勢におけるユーザーの背面に接する背面垂線と頸椎部(
図6に示す点P2)との水平距離のことである。
図6において、点P1は、後頭部近傍において背面垂線に最も近い点(極小点)であり、点P2は、頸椎部近傍において背面垂線から最も遠い点(極大点)である。後頭部距離Daおよび頸椎部距離Dbの情報は、後述するとおり、仰臥位における寝姿勢が自然体を保つための枕ユニットの基準高さ(枕のパラメータ)に反映される。
【0058】
また、上述したステップS1の処理に関し、側頭部距離Dcについて、より詳細に説明する。
図7は、ユーザーの直立姿勢を前から見た図であって、側頭部距離Dcを示す概念図である。本実施形態において、側頭部距離Dcは、直立姿勢におけるユーザーの肩端面に接する肩端面垂線と側頭部(
図7に示す点P3)との水平距離のことである。
図7において、点P3は、側頭部近傍において肩端面垂線に最も近い点(極小点)である。側頭部距離Dcの情報は、後述するとおり、横臥位における寝姿勢が自然体を保つための枕ユニット基準高さ(枕のパラメータ)に反映される。側頭部距離Dcを実際にメジャーで測定する場合は、まずユーザーの肩幅Dsと頭幅Dhを測定し(
図8を参照)、下記(1)式から側頭部距離Dcを算出することが好ましい。
側頭部距離Dc=(肩幅Ds−頭幅Dh)÷2 ・・・・・ (1)
【0059】
なお、実際にユーザが横臥位となった状態における肩幅は、ユーザーの自重により圧縮されて、直立姿勢時の肩幅より短くなる。そこで側頭部距離Dcを測定する際には、ユーザーの肩部重量程度の力で、両肩を2枚の板B1、板B2とで軽く挟み込んだ状態としておき、当該圧縮の有無による測定値の違いが極力補正されるようにしておくことが好ましい(
図8を参照)。
【0060】
図9は、後頭部距離Da、頸椎部距離Db、および側頭部距離Dcを、3Dカメラ211を用いて測定する方法の例を示す概念図である。
図9に示す測定方法では、ユーザーの直立姿勢における体型を3Dカメラ211で撮影し、その撮影データ(3D画像データ)から後頭部距離Da、頸椎部距離Db、および側頭部距離Dcが算出される。なお先述のとおり、横臥位においてはユーザーの肩幅は直立時より短くなるので、3D画像データから算出される直立姿勢時の肩幅に所定の係数(例えば0.8)を掛けて算出した値を、横臥位における肩幅として用いるのが好ましい。
【0061】
また先述したステップS3の処理に関し、頭部重量Whの値としては、測定されたユーザーの体重Wに、所定の係数(例えば0.15)を掛けて算出した値が採用される。但し、頭部重量Whの求め方はこれに限られるものではなく、例えば
図10に示すように、頭部の重量を重量計WTを用いて直接測定し、この測定値を頭部重量Whとしても良い。
【0062】
また、上述したステップS9およびステップS10の処理に関し、各肩部沈み量d1、d2、および3種類の枕ユニット6の基準高さHa〜Hcについて、より詳細に説明する。
【0063】
図11は、仰臥位の寝姿勢であるユーザーの頭部と枕1との位置関係を上方視点により概略的に示した図であり、
図12は、
図11に示すA−A断面の矢視図である。また
図13は、横臥位の寝姿勢であるユーザーの頭部と枕1との位置関係を上方視点により概略的に示した図であり、
図14は、
図13に示すB−B断面の矢視図である。
【0064】
図12に示すように、後頭部を支持する第1枕ユニット6aの基準高さHaは、仰臥位での寝姿勢が自然体を保った状態(ユーザの重みにより第1枕ユニット6aが圧縮されている)における、エリアA(後頭部を支持するエリア)の枕1の高さに相当する。また頸椎部を支持する第2枕ユニット6bの基準高さHbは、仰臥位での寝姿勢が自然体を保った状態(ユーザの重みにより第2枕ユニット6bが圧縮されている)における、エリアB(頸椎部を支持するエリア)の枕1の高さに相当する。また
図14に示すように、側頭部を支持する第3枕ユニット6cの基準高さHcは、横臥位での寝姿勢が自然体を保った状態(ユーザの重みにより第3枕ユニット6cが圧縮されている)における、エリアC(側頭部を支持するエリア)の枕1の高さに相当する。
【0065】
エリアAに対応する第1枕ユニット6aの基準高さHaは、後頭部距離Daから仰臥位時の肩部沈み量d1を引いた値(=Da−d1)として算出される。なお、ユーザーの体重が軽い場合など、肩部沈み量d1の影響が少ない場合は、d1=0として基準高さHaを算出してもよい。また、エリアBに対応する第2枕ユニット6bの基準高さHbは、頸椎部距離Dbから肩部沈み量d1を引いた値(=Db−d1)として算出される。なお、ユーザーの体重が軽い場合など、肩部沈み量d1の影響が少ない場合はd1=0として基準高さHbを算出してもよい。更に、エリアCに対応する第3枕ユニット6cの基準高さHcは、側頭部距離Dcから横臥位時の肩部沈み量d2を引いた値(=Dc−d2)として算出される。なお、ユーザーの体重が軽い場合など、肩部沈み量d2の影響が少ない場合は、d2=0として基準高さHcを算出してもよい。
【0066】
ここで肩部沈み量d1(仰臥位時)は、実際にユーザーが枕1とともに使用するマットレスを用いて測定するのが好ましい。但しこれに限定されるものではなく、本実施形態(表1を参照)においては、測定されたユーザーの体重Wに所定の係数(0.2)を掛けた値を肩部重量Wbとして算出し、算出した肩部重量Wbに標準マットレスを用いて予め実験により求めた係数(1.2)を掛けることにより、肩部沈み量d1が算出される。
【0067】
また肩部沈み量d2(横臥位時)も同様に、実際にユーザーが枕1とともに使用するマットレスを用いて測定するのが好ましい。但しこれに限定されるものではなく、本実施形態においては、測定されたユーザーの体重Wに所定の係数(0.2)を掛けた値を肩部重量Wbとして算出し、算出した肩部重量Wbに標準マットレスを用いて予め実験により求めた係数(2.6)を掛けることにより、肩部沈み量d2が算出される。
【0068】
なお、上記の肩部沈み量d1または肩部沈み量d2を求める際、ユーザーが枕1とともに標準マットレスと異なる硬さ(反発力)のマットレスを使用する場合は、その使用するマットレスの硬さ(反発力)に合わせて、上記の係数(1.2または2.6)を調節するのが好ましい。マットレスの種類毎に当該係数が予め求められていれば、このような係数の調節が容易となる。
【0069】
上述したステップS11の処理に関し、3種類の枕ユニット6の目標高さUa〜Ucについて、より詳細に説明する。
【0070】
エリアAに対応する第1枕ユニット6aの目標高さUaは、非荷重状態(枕1の未使用時の状態)における第1枕ユニット6aの高さの計算上の理想値であり、今回の枕1の形成に用いる第1枕ユニット6aの高さの目標値に相当する。エリアBに対応する第2枕ユニット6bの目標高さUbは、非荷重状態における第2枕ユニット6bの高さの計算上の理想値であり、今回の枕1の形成に用いる第2枕ユニット6bの高さの目標値に相当する。エリアCに対応する第3枕ユニット6cの目標高さUcは、非荷重状態における第3枕ユニット6cの高さの計算上の理想値であり、今回の枕1の形成に用いる第3枕ユニット6cの高さの目標値に相当する。
【0071】
第1枕ユニット6aの目標高さUaは、第1枕ユニット6aの基準高さHa、頭部重量Whおよび高さ補正係数Mを用いて、下記の(2)式により算出される。
Ua=Ha×M×(Wh/10) ・・・・・ (2)
第2枕ユニット6bの目標高さUbは、第2枕ユニット6bの基準高さHb、頭部重量Whおよび高さ補正係数Mを用いて、下記の(3)式により算出される。
Ub=Hb×M×(Wh/10) ・・・・・ (3)
第3枕ユニット6cの目標高さUcは、第3枕ユニット6cの基準高さHc、頭部重量Whおよび高さ補正係数Mを用いて、下記の(4)式により算出される。
Uc=Hc×M×(Wh/10) ・・・・・ (4)
【0072】
なお高さ補正係数Mは、枕素材の変形しやすさ(圧縮変形しやすい素材ほど大きくなる)を示す値である。高さ補正係数Mは、素材の種類ごとに予め実験などにより求められている。本実施形態において高さ補正係数Mは、円筒状プラスチック材の場合は1.0、中空球状プラスチック材の場合は1.1、高反発クッションの場合は1.2、羽毛の場合は1.5、低反発クッションの場合は1.6に設定されている。これにより、例えば、枕素材U3が「中空球状プラスチック材」である場合は、高さ補正係数Mは1.1とされる。
【0073】
また、上述したステップS12の処理に関し、3種類の枕ユニット6の型番について、より詳細に説明する。
【0074】
エリアAに対応する第1枕ユニット6aは、高さ(厚み)に応じて異なる型番Sa1〜Sa10が設定されている。目標高さUaと、適合する第1枕ユニット6aの型番および高さ(厚み)との対応関係は、表1に示すとおりである。表1によれば、例えば目標高さUaが25mm以上であって35mm未満であれば、型番Sa3(高さが30mm)の第1枕ユニット6aが適合することになる。ステップS12の処理では、第1枕ユニット6aについては表1の対応関係に従って、各型番Sa1〜Sa10の何れか一つが採用型番ASaとして決定される。このように目標高さUaに基づいて、採用型番ASaが決定される。
【表1】
【0075】
エリアBに対応する第2枕ユニット6bは、高さ(厚み)に応じて異なる型番Sb1〜Sb10が設定されている。目標高さUbと、適合する第2枕ユニット6bの型番および高さ(厚み)との対応関係は、表2に示すとおりである。表2によれば、例えば目標高さUbが25mm以上であって35mm未満であれば、型番Sb3(高さが30mm)の第2枕ユニット6bが適合することになる。ステップS12の処理では、第2枕ユニット6bについては表2の対応関係に従って、各型番Sb1〜Sb10の何れか一つが採用型番ASbとして決定される。このように目標高さUbに基づいて、採用型番ASbが決定される。
【表2】
【0076】
エリアCに対応する第3枕ユニット6cは、高さ(厚み)に応じて異なる型番Sc1〜Sc10が設定されている。目標高さUcと、適合する第3枕ユニット6cの型番および高さ(厚み)との対応関係は、表3に示すとおりである。表3によれば、例えば目標高さUcが25mm以上であって35mm未満であれば、型番Sc3(高さが30mm)の第3枕ユニット6cが適合することになる。ステップS12の処理では、第3枕ユニット6cについては表3の対応関係に従って、各型番Sc1〜Sc10の何れか一つが採用型番AScとして決定される。このように目標高さUcに基づいて、採用型番AScが決定される。
【表3】
【0077】
一例として、第1枕ユニット6aの目標高さUaが32mm、第2枕ユニット6bの目標高さUbが53mm、および、第3枕ユニット106cの目標高さUcが78mmであったと仮定する。この場合、第1ユニット6aについての採用型番ASaは、Sa3(高さ30mm)に決定される。また、第2枕ユニット6bについての採用型番ASbは、Sb5(高さ50mm)に決定される。また、第3枕ユニット6cについての採用型番AScは、Sc8(高さ80mm)に決定される。以上のように、算出された枕ユニット6の目標高さ(Ua〜Uc)は、表1〜表3に示す対応関係に従って、最適な枕ユニットの採用型番(ASa〜ASc)に変換されることになる。
【0078】
また
図15は、第2枕ユニット6bの変形例(形状を変えた例)に相当する第2枕ユニット6bxを示す斜視図である。本図に示すように、第2枕ユニット6bxにおいては、中央部の周囲長L1が両端部の周囲長L2より短くなっており、上側の中央部がやや窪んだ状態となっている。これにより第2枕ユニット6bxは、ユーザーの首によりフィットした形態で頸椎部を支持することができ、体圧分散性をより良好にすることが可能である。
【0079】
以上に説明したとおり、本実施形態に係る情報処理システムが行う情報処理方法は、高さに応じて異なる型番が割り当てられた枕ユニット6を用いて形成される枕1に関し、ユーザーが使用する枕1の形成に用いられる枕ユニット6の型番を、採用型番として決定する方法である。この情報処理方法は、枕1を使用するユーザーの頭部位置情報を含むユーザー情報UFを取得するユーザー情報取得ステップ(主にステップS1〜S6)と、ユーザー情報UFに含まれる前記頭部位置情報に基づいて前記採用型番を決定する決定ステップ(主にステップS9〜S12)と、を含む。
【0080】
これにより、頭部付近の体型が異なる複数のユーザーに対して、個々のユーザーに適合した枕(本実施形態では、自然体に近い寝姿勢が得られる枕)を、より確実かつ効率的に製造することが容易である。
【0081】
一般的に、ユーザーにとって最適な枕を提供しようとすると、サイズの異なる多種類の枕を販売店で準備しておく必要があり、在庫コストがかさむといった課題がある。この点、本実施形態のように、枕ユニットを用いて枕を製造するようにすれば、ユーザーにとって最適な枕を効率的に製造することができ、多種類の枕を準備しておく必要も無いため在庫コストは抑えられる。このように枕ユニットを用いて枕を製造するにあたり、本実施形態に係る情報処理方法を利用すれば、決定された採用型番に基づいて個々のユーザーに適した高さの枕ユニットを簡単に識別することができ、枕の製造が容易となる。
【0082】
なお、ユーザーが何種類かの枕を試して選ぶ場合は、適切な枕を選択するのに時間がかかる。また、1cm程度の枕の高さの違いを見極めるのはユーザーにとっては容易ではなく、ユーザーが適切な高さの枕を確実に選択するのは現実的に難しい。この点、本実施形態に係る情報処理方法によれば、ユーザーの頭部位置情報に基づいて採用型番が決定されるため、ユーザーに適合した枕をより確実に製造し、提供することが容易となる。
【0083】
また本実施形態では、枕ユニット6として、仰臥位の寝姿勢においてユーザーの後頭部を支持する第1枕ユニット6aと、当該寝姿勢において前記ユーザーの頸椎部を支持する第2枕ユニット6bとが用いられる。ユーザー情報UFは、前記頭部位置情報として、自然体におけるユーザーの背面垂線と後頭部との距離に関連づけられた後頭部距離Da(第1頭部位置情報)と、自然体におけるユーザーの背面垂線と頸椎部との距離に関連づけられた頸椎部距離Db(第2頭部位置情報)と、を含む。更に、前記決定ステップは、ユーザー情報UFに含まれる後頭部距離Daに基づいて、第1枕ユニット6aの採用型番ASaを決定する処理と、ユーザー情報UFに含まれる頸椎部距離Dbに基づいて、第2枕ユニット6bの採用型番ASbを決定する処理と、を含む。これにより、仰臥位の寝姿勢をとるユーザーの後頭部と頸椎部を適切に支持する枕を、より確実かつ効率的に製造することが容易である。
【0084】
また本実施形態では、枕ユニット6として、横臥位の寝姿勢においてユーザーの側頭部を支持する第3枕ユニット6cも用いられる。ユーザー情報UFは、前記頭部位置情報として、自然体におけるユーザーの肩端面垂線と側頭部との距離に関連づけられた側頭部距離Dc(第3頭部位置情報)も含む。更に、前記決定ステップは、ユーザー情報UFに含まれる側頭部距離Dcに基づいて、第3枕ユニット6cの採用型番AScを決定する処理も含む。これにより、横臥位の寝姿勢をとるユーザーの側頭部を適切に支持する枕を、より確実かつ効率的に製造することが容易である。
【0085】
また本実施形態における情報処理方法は、通信回線(インターネット回線)を介してユーザー情報UFを送信する送信ステップ(ステップS7)を含む。これにより、ユーザー情報入力装置10と枕組立指示装置20が離れた場所にあっても、決定ステップを適切に実行することが可能である。
【0086】
また本実施形態における情報処理方法は、前記頭部位置情報に基づいて枕ユニット6の目標高さUa〜Ucを算出する算出ステップを含み、前記算出ステップは、目標高さUa〜Ucに基づいて採用型番ASa〜AScを決定する。
【0087】
またユーザー情報UFは、ユーザーの肩部重量情報と、マットレスの反発力情報とを含み、前記算出ステップは、前記肩部重量情報と前記反発力情報にも基づいて、目標高さUa〜Ucを算出する。これにより、ユーザーの肩部重量に加え、ユーザーが枕1とともに使用するマットレスの反発力も考慮して、より適切な採用型番ASa〜AScを決定することが容易である。
【0088】
またユーザー情報UFは、ユーザーの頭部重量情報を含み、前記算出ステップは、前記頭部重量情報にも基づいて、目標高さUa〜Ucを算出する。これにより、ユーザーの頭部重量も考慮して、より適切な採用型番ASa〜AScを決定することが容易である。
【0089】
またユーザー情報UFは、枕ユニット6の素材情報を含み、前記算出ステップは、前記素材情報にも基づいて、目標高さUa〜Ucを算出する。これにより、枕ユニット6の素材も考慮して、より適切な採用型番ASa〜AScを決定することが容易である。
【0090】
また本実施形態に係る枕の製造方法は、上記の情報処理方法により決定された採用型番ASa〜AScの枕ユニット6を用いて、枕1を形成する方法である。そのため、本実施形態に係る情報処理方法の利点を活かして、枕1を製造することが可能である。また本実施形態に係る情報処理システムは、上記の情報処理方法を実行するようになっている。
【0091】
また本実施形態に係るプログラムは、高さに応じて異なる型番が割り当てられた枕ユニット6を用いて形成される枕1に関し、ユーザーが使用する枕1の形成に用いられる枕ユニット6a〜6cの型番を、コンピュータに採用型番ASa〜AScとして決定させるプログラムである。また当該プログラムは、ユーザーの頭部位置情報を含むユーザー情報UFを取得するユーザー情報取得ステップと、ユーザー情報UFに含まれる前記頭部位置情報に基づいて採用型番ASa〜AScを決定する決定ステップと、を含む処理を前記コンピュータに実行させるプログラムである。なお前記決定ステップは、ユーザー情報UFに含まれる後頭部距離Daに基づいて、第1枕ユニット6aの採用型番ASaを決定する処理と、ユーザー情報UFに含まれる頸椎部距離Dbに基づいて、第2枕ユニット6bの採用型番ASbを決定する処理と、を含む。
【0092】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する部分については説明を省略することがある。
【0093】
図16は、第2実施形態に係る枕101の構成図(斜視図)である。また、
図17は枕101の形成に用いられるカバー102の構成図であり、
図18は枕101の形成に用いられる各枕ユニット106D1〜106D9(以下、「枕ユニット106」と総称することがある)の構成図(斜視図)である。なお一つの枕101について、9個の各枕ユニット106D1〜106D9が用いられる。枕101は、織物または編物の生地で形成される略長方形のカバー102と、カバー102に取付けられるタグ105と、詰物を充填した袋またはクッションで形成される枕ユニット106とを含む。
【0094】
カバー2は、中央部に設けられた折り目102aにて折り曲げ可能であり、カバー102の外周部にはファスナー102bが設けられている。カバー102は、折り目102aでの折り曲げによって、上下を覆う収納スペースを形成される。この収納スペースに枕ユニット106を収納した状態でファスナー102bを閉めることにより、枕101が形成される。
【0095】
カバー102の内部(上記の収納スペース)には、枕ユニット106D1〜106D9それぞれが収納される各エリアD1〜D9が設けられる。カバー2の内部側において、エリアDx(xは1から9までの整数)の位置には枕ユニット106Dxを固定させるための面ファスナーが設けられている。枕ユニット106には、カバー102側の面ファスナーと係合可能な面ファスナー(不図示)が設けられており、これらの面ファスナーを利用して、枕ユニット106をカバー102へ着脱自在に固定することが出来る。
【0096】
枕ユニット106D1〜106D9は、エリアD1〜D9のいずれの位置にも配置することができるように、平面形状およびサイズ(上方視による形状およびサイズ)が同一にされている。これにより、同じ枕ユニット106を、各枕ユニット106D1〜106D9の何れとしても利用することが可能であり、在庫として保管される枕ユニット106の種類を極力少なくすることが可能である。
【0097】
なお、エリアD2とエリアD5を合わせたエリアは、第1実施形態におけるエリアA(後頭部を支持するエリア)に相当し、このエリアに配置される各枕ユニット106D2、106D5は、全体として第1実施形態における第1枕ユニット6aに相当する。エリアD8は第1実施形態におけるエリアB(頸椎部を支持するエリア)に相当し、このエリアに配置される枕ユニット106D8は、第1実施形態における第2枕ユニット6bに相当する。エリアD1、エリアD4、およびエリアD7を合わせたエリアは、第1実施形態におけるエリアCに相当し、このエリアに配置される各枕ユニット106D1、106D4、106D7は、全体として第1実施形態における第3枕ユニット6cに相当する。また、エリアD3、エリアD6、およびエリアD9を合わせたエリアも、第1実施形態におけるエリアCに相当し、このエリアに配置される各枕ユニット106D3、106D6、106D9は、全体として第1実施形態における第3枕ユニット6cに相当する。
【0098】
次に、枕101の製造に関する情報処理を行う情報処理システムについて、
図19A〜
図19Eを参照しながら説明する。
図19Aは、当該情報処理システムの全体的な概略構成を示すブロック図である。この情報処理システムは、体型情報入力装置110、採用型番決定装置120、ユーザー通信端末130、および枕組立指示装置140を有しており、これらはインターネット回線INT(通信回線の一形態)を介して情報通信が可能となっている。
【0099】
図19Bは、体型情報入力装置110の概略構成を示すブロック図である。
図19Cは、採用型番決定装置120の概略構成を示すブロック図である。
図19Dは、ユーザー通信端末130の概略構成を示すブロック図である。
図19Eは、枕組立指示装置140の概略構成を示すブロック図である。
【0100】
体型情報入力装置110はウェブサーバーであり、ユーザーの体型情報の入力を受付けて、当該体型情報を取得する役割を果たす。体型情報入力装置110は複数個が設けられても良く、ユーザーが来店し易い各地の店舗(例えば枕の販売店)などに設置されることが望ましい。
【0101】
採用型番決定装置120は、上記の体型情報等に基づいて枕ユニットの採用型番(枕101に適用するものの型番)を決定する役割を果たす。ユーザー通信端末130は、ユーザーが所持する通信端末(例えばパーソナルコンピュータ)である。
【0102】
枕組立指示装置140は、決定された採用型番等を表示し、枕101の製造に役立つ情報を提供する役割を果たす。枕組立指示装置140は複数個が設けられても良く、枕140を製造する各地の工場や作業場などに設置されることが望ましい。
【0103】
体型情報入力装置110は、情報送受信部111、タッチパネル112、中央演算処理装置(CPU)113、RAM(ランダムアクセスメモリ)114、ROM(リードオンリーメモリ)115、およびハードディスク(プログラム記憶部)116を有する。またハードディスク116には、体型情報取得プログラム117と、ユーザー名等情報取得プログラム118とが格納されている。
【0104】
情報送受信部111は、他の装置との情報の送受信を実行する。タッチパネル112は、タッチ操作による各種情報の入力受付に用いられる。中央演算処理装置(CPU)113は、情報を記憶する各部(114〜116)と連携し、各種処理を実行する。
【0105】
体型情報取得プログラム117には、後頭部距離入力部151、頸椎部距離入力部152、側頭部距離入力部153、体重入力部154、頭部重量算出部155、および肩部重量算出部156が含まれる。ユーザー名等情報取得プログラム118には、ユーザー名入力部161、および、ユーザーの電子メールアドレスの入力に関わる電子メールアドレス入力部162が含まれる。これらのプログラムは、中央演算処理装置(CPU)113によって適宜実行され、体型情報入力装置110による各処理が実現される。
【0106】
採用型番決定装置120は、情報送受信部121、中央演算処理装置(CPU)122、RAM(ランダムアクセスメモリ)123、ROM(リードオンリーメモリ)124、およびハードディスク(プログラム記憶部)125を有する。ハードディスク125には、ユーザー情報記憶部127が設けられている。またハードディスク125には、ユーザーの識別番号の付与に関わるユーザー識別番号付与プログラム126と、体型情報処理プログラム128と、採用型番決定プログラム129とが格納されている。情報送受信部121は、他の装置との情報の送受信を実行する。中央演算処理装置(CPU)122は、情報を記憶する各部(123〜125)と連携し、各種処理を実行する。
【0107】
体型情報処理プログラム128には、仰臥位肩部沈み量算出部171、横臥位肩部沈み量算出部172、後頭部ユニット高さ算出部173、頸椎部ユニット高さ算出部174、および側頭部ユニット高さ算出部175が含まれる。また採用型番決定プログラム129には、後頭部ユニット採用型番決定部181、頸椎部ユニット採用型番決定部182、および側頭部ユニット採用型番決定部183が含まれる。これらのプログラムは、中央演算処理装置(CPU)122によって適宜実行され、採用型番決定装置120による各処理が実現される。
【0108】
ユーザー通信端末130は、情報送受信部131、タッチパネル132、中央演算処理装置(CPU)133、RAM(ランダムアクセスメモリ)134、ROM(リードオンリーメモリ)135、およびハードディスク(プログラム記憶部)136を有する。またハードディスク136には、電子メールプログラム137と、枕の注文に関わる枕注文プログラム138とが格納されている。情報送受信部131は、他の装置との情報の送受信を実行する。タッチパネル132は、タッチ操作による各種情報の入力受付に用いられる。中央演算処理装置(CPU)133は、情報を記憶する各部(134〜136)と連携し、各種処理を実行する。
【0109】
電子メールプログラム137は、電子メールに関する処理の実行時に用いられる。枕注文プログラム138には、ユーザーの識別番号の入力に関わるユーザー識別番号入力部201、枕素材選択部202、マットレス反発力選択部203、ユーザー住所入力部204、および枕の注文決定の処理に関わる枕注文決定部205が含まれる。これらのプログラムは、中央演算処理装置(CPU)133によって適宜実行され、ユーザー通信端末130による各処理が実現される。
【0110】
枕組立指示装置140は、情報送受信部141、中央演算処理装置(CPU)142、RAM(ランダムアクセスメモリ)143、ROM(リードオンリーメモリ)144、およびハードディスク(プログラム記憶部)145を有する。またハードディスク145には、枕組立指示プログラム146が格納されている。情報送受信部141は、他の装置との情報の送受信を実行する。中央演算処理装置(CPU)142は、情報を記憶する各部(143〜145)と連携し、各種処理を実行する。枕組立指示プログラム146には、枕ユニット配置指示部191、およびタグ印刷部192が含まれている。これらのプログラムは、中央演算処理装置(CPU)142によって適宜実行され、枕組立指示装置140による各処理が実現される。
【0111】
次に、本実施形態の情報処理システムを利用した枕101の製造方法について、
図20に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0112】
まずステップS101の工程として、ユーザーの後頭部距離Da、頸椎部距離Db、および側頭部距離Dcを測定し、これにより得られた測定値を体型情報入力装置110へ入力する工程が行われる。次にステップS102の工程として、体重計でユーザーの体重Wを測定し、これにより得られた測定値を体型情報入力装置110へ入力する工程が行われる。次にステップS103の工程として、体型情報入力装置110が、ユーザーの頭部重量Whと肩部重量Wbを体重Wの測定値(ステップS102での測定値)から算出する工程が行われる。なおステップS101〜S103の各工程は、第1実施形態のステップS1〜S3の各工程に準じたものである。
【0113】
次にステップS104の工程として、ユーザーの名前U1およびユーザーの電子メールアドレスEMの情報を体型情報入力装置110へ入力する工程が行われる。電子メールアドレスEMは、直接的または間接的に、当該ユーザーが所有するユーザー通信端末130への情報送信を可能とする情報である。本工程での入力の作業は、ユーザーが行っても良く、店舗の作業員等が代行して行っても良い。本工程が行われる際、体型情報入力装置110は、当該情報の入力を受付ける状態となっており、例えばタッチパネル112を利用して当該情報の入力が可能である。
【0114】
次にステップS105の工程として、体型情報入力装置110が、ユーザー情報UFを、インターネット回線INTを通じて採用型番決定装置120へ送信する工程が行われる。このユーザー情報UFには、ステップS101〜S104の各工程で取得された各情報(後頭部距離Da、頸椎部距離Db、側頭部距離Dc、体重W、頭部重量Wh、肩部重量Wb、名前U1、および電子メールアドレスEM)が含まれる。
【0115】
次にステップS106の工程として、採用型番決定装置120によって、体型情報入力装置110から送信されたユーザー情報UFを受信する工程が行われる。次にステップS107の工程として、採用型番決定装置120がユーザー識別番号をユーザー情報UFに割り当てる工程が行われる。このユーザー識別番号は、ユーザーごとに異なるように決定される番号であり、ユーザを識別可能とするID情報として機能する。次にステップS108の工程として、採用型番決定装置120がユーザー識別番号とユーザー情報UFをハードディスク125(ユーザー情報記憶部127)へ保存する工程が行われる。次にステップS109の工程として、採用型番決定装置120がユーザー識別番号をユーザー通信端末130へ送信する工程が行われる。当該送信は、電子メールアドレスEMを利用して実施可能である。
【0116】
次にステップS110の工程として、ユーザー通信端末130がユーザー識別番号を受信する工程が行われる。次にステップS111の工程として、ユーザー通信端末130がクラウド上から枕注文プログラムをダウンロードして起動するとともに、ユーザー通信端末130へユーザー識別番号を入力する工程が行われる。なお、枕注文プログラムのダウンロードおよび起動は、ユーザーによるユーザー通信端末130の所定操作に応じて行われても良く、ユーザー識別番号を受信したことに応じてユーザー通信端末130により自動的に行われても良い。当該起動により、ユーザー通信端末130は、後述する各種情報の入力を受付ける状態となる。またユーザー識別番号の入力は、受信されたユーザー識別番号に基づいてユーザー等が手入力で行っても良く、ユーザー識別番号を受信したことに応じてユーザー通信端末130により自動的に行われても良い。
【0117】
次にステップS112の工程として、ユーザー通信端末130へ枕素材の選択入力を行う工程が行われる。本工程が行われる際、ユーザー通信端末130は、例えばタッチパネル12に各種の枕素材の選択肢を表示し、何れかの選択肢の選択入力を受付ける(タッチされた選択肢の枕素材を、入力された枕素材と認識する)状態となる。
【0118】
次にステップS113の工程として、ユーザー通信端末130へ、ユーザーが枕1とともに使用するマットレスの反発力の選択入力を行う工程が行われる。本工程が行われる際、ユーザー情報入力装置10は、例えばタッチパネル12に各種のマットレスの反発力の選択肢を表示し、何れかの選択肢の選択入力を受付ける(タッチされた選択肢の反発力を、入力された反発力と認識する)状態となる。
【0119】
次にステップS114の工程として、ユーザー通信端末130へ、ユーザーの住所(配達先)を入力する工程が行われる。なおステップS112〜S114の工程における入力の作業は、ユーザーが行っても良く、その他の者が代行して行っても良い。本実施形態では、これらの入力をユーザー通信端末130を使って行うことが出来るため、ユーザーにとって非常に便利である。次にステップS115の工程として、枕の注文を決定する工程が行われる。この工程は、例えば、タッチパネル132に「注文確定」ボタンが表示されるようにし、ユーザーがこれにタッチすることによって実現される。
【0120】
次にステップS116の工程として、ユーザー通信端末130が採用型番決定装置120へ、ユーザー識別番号と枕注文情報を送信する工程が行われる。この枕注文情報には、ステップS112〜S115の工程においてユーザー通信端末130へ入力された各情報が含まれる。
【0121】
次にステップS117の工程として、採用型番決定装置120によって、仰臥位時の肩部沈み量d1、および横臥位時の肩部沈み量d2を算出する工程が行われる。次にステップS118の工程として、採用型番決定装置120によって、後頭部を支持する枕ユニット106の基準高さHa、頸椎部を支持する枕ユニット106の基準高さHb、および側頭部を支持する枕ユニット106の基準高さHcを算出する工程が行われる。
【0122】
次にステップS119の工程として、採用型番決定装置120によって、後頭部を支持する枕ユニット106の目標高さUa、頸椎部を支持する枕ユニット106の目標高さUb、および側頭部を支持する枕ユニット106の目標高さUcを算出する工程が行われる。次にステップS120の工程として、型番決定装置120によって、後頭部を支持する枕ユニット106の採用型番ASa、頸椎部を支持する枕ユニット106の採用型番ASb、および側頭部を支持する枕ユニット106の採用型番AScを決定する工程が行われる。
【0123】
なおステップS117〜S120の各工程は、第1実施形態のステップS9〜S12の各工程に準じたものである。但し第2実施形態では、何れの位置に配置される枕ユニット106についても平面形状および平面サイズが同じであるため、配置される位置によって枕ユニットの型番を区別する必要が無い。そこで枕ユニット106は、配置される位置に関わらず、高さ(厚み)に応じて異なる型番Sd1〜Sd10が設定されている。
【0124】
図21は、型番ごとの枕ユニット106の概略形状(斜視図)を示す。型番によらず枕ユニット106の平面形状は同等であるが、型番ごとに枕ユニット106の高さは変化している。また、目標高さUx(UxはUa〜Ucのうちの任意)と、適合する枕ユニット106の型番および高さとの対応関係は、表4に示すとおりである。
【表4】
【0125】
表4によれば、例えば目標高さUaが25mm以上であって35mm未満であれば、目標高さUaに対応する枕ユニット106(枕ユニット106D2と枕ユニット106D5)については、型番Sd3(高さが30mm)の枕ユニット106が適合することになる。ステップS120の処理では、何れの位置に配置される枕ユニット106についても、表4の対応関係に従って、各型番Sd1〜Sd10の何れか一つが採用型番(ASa、ASb、又はASc)として決定される。換言すれば、算出された枕ユニット106の目標高さUx(Ua〜Uc)は、表4に示す対応関係に従って、最適な枕ユニットの採用型番ASa〜AScに変換される。
【0126】
一例として、後頭部を支持する枕ユニット106の目標高さUaが32mm、頸椎部を支持する枕ユニット106の目標高さUbが53mm、および、側頭部を支持する枕ユニット106の目標高さUcが78mmであったと仮定する。この場合、エリアD2とエリアD5(第1実施形態のエリアAに対応する)に配置される各枕ユニット106D2、106D5についての採用型番ASaは、Sd3(高さ30mm)に決定される。また、エリアD8(第1実施形態のエリアBに対応する)に配置される枕ユニット106D8についての採用型番ASbは、Sd5(高さ50mm)に決定される。また、エリアD1、エリアD4、エリアD7、エリアD3、エリアD6、およびエリアD9(第1実施形態のエリアCに対応する)に配置される各枕ユニット106D1、106D4、106D7、106D3、106D6、106D9についての採用型番AScは、Sd8(高さ80mm)に決定される。
【0127】
次にステップS121の工程として、採用型番決定装置120が枕組立指示装置140へ、ユーザー情報と各採用型番ASa〜AScの情報を送信する工程が行われる。次にステップS122の工程として、枕組立指示装置140によって、ステップS120において決定された各採用型番ASa〜AScを表示する工程が行われる。
【0128】
次にステップS123の工程として、表示された各採用型番ASa〜ASc、および印刷されたタグ105を利用して枕101を製造する工程が行われる。なおステップS122〜S123の各工程は、第1実施形態のステップS13〜S14の各工程に準じたものである。
【0129】
上述した一連の工程(ステップS101〜S123)によって、枕101が製造される。その後、製造された枕101を梱包し、ユーザーの住所へ発送することにより、ユーザーは自分の体型に合った枕101を取得することができる。
【0130】
3.その他
以上に説明した枕の製造方法によれば、予め定められた方法によりユーザーの頭部付近の体型情報(頭部体型データ)を取得し、予め定められた換算式に基づいて、枕の形状に関する複数のパラメータを導きだし、そのパラメータを用いてユーザーの体型にあった枕を製造することができる。そのため、体型の異なる複数のユーザーそれぞれに対し、自然体に近い寝姿勢が得られる枕を、同一の手順により効率的に製造することができる。また、分割した体重情報の取得手順やそれに基づく製造手順を社内標準化することが可能であり、ユーザー個々の好みに対応した、受注から生産まで一貫して行うことのできる個別オーダーシステムを構築することができる。
【0131】
また、以上に説明した情報処理システムによれば、一度取得されたユーザーの体型情報が保存される。そのためユーザーの自宅など、任意の場所からユーザーに最適な形状の枕をいつでも注文できるので、同じ枕の再発注や、素材を変えた枕の発注などをスムーズに行うことが可能である。またユーザーは、使用中のものより高いサイズの枕を再注文する際や、使用中のものより圧縮変形量の大きな素材の枕を再注文する際に、使用中の枕の高さや素材を基準にして再注文をすることができるので、再注文を繰り返すうちにユーザーに最適な高さの枕を選べるようになる。また更には、ホテルなどの宿泊施設において、宿泊客の頭部体型情報を予め予約時等に伝えておくことにより、宿泊当日に宿泊客に最適な枕を提供することができる。
【0132】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。