(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリスチレン系樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂の200℃における溶融張力が100mN以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
前記ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの平均気泡径に対する、前記樹脂層積層側の表面側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径の比が0.5以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
前記ポリスチレン系樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂のスチレン二量体及びスチレン三量体の合計含有量が2500ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
前記ポリスチレン系樹脂発泡層の片面に前記ポリスチレン系樹脂層が共押出により積層されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
請求項6に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの前記ポリスチレン系樹脂層が積層された面とは反対側の面に、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂層が押出ラミネートにより積層されてなることを特徴とするポリスチレン系樹脂多層発泡シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートについて詳細に説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、単に積層発泡シートともいう。)は、ポリスチレン系樹脂発泡層(以下、単に発泡層ともいう。)の片面又は両面に、ポリスチレン系樹脂層(以下、単に樹脂層ともいう。)が共押出により積層されてなるものである。該共押出によれば、後述するように、発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出用ダイ内にて積層して、筒状に押出発泡させて筒状積層発泡体として引取る際に、筒状積層発泡体の樹脂層積層側からの冷却を強めることなく、樹脂層積層側の表面膜の厚みを適度に厚くすることができると共に、樹脂層積層側の表層部の残留歪みを小さくすることができる。
【0012】
本発明の積層発泡シートにおいて、該発泡層を構成するポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリメチルスチレン、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物や、これら2種類以上の混合物などが挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂におけるスチレン成分の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。上記ポリスチレン系樹脂の中でも、成形性や成形体としたときの剛性等に優れることから、ポリスチレンを用いることが好ましい。
【0013】
樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂としては、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂と同様のものが挙げられ、ポリスチレン系樹脂の中でも、ポリスチレンを用いることが好ましい。但し、樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂の200℃における溶融張力は30mN以上であることを要する。
該溶融張力が小さすぎる場合、熱成形時において積層発泡シートが金型に引き込まれる際に、積層発泡シートの表層部が引き伸ばされる力に耐え切れず、ナキや中割れが生じやすくなる。そのため、積層発泡シートの熱成形が可能な加熱時間範囲(以下単に「成形範囲」ともいう。)が狭くなり、深絞り成形性が低下するおそれや、深絞り形状の成形体を得ること自体困難となるおそれがある。この観点から、溶融張力は100mN以上であることが好ましく、150mN以上であることがより好ましく、200mN以上であることがさらに好ましい。
また、溶融張力の上限は、本発明の所期の目的を達成することが可能であれば特に限定されるものではないが、概ね1500mNであることが好ましく、750mNであることがより好ましく、600mNであることがさらに好ましく、450mNであることが特に好ましい。
【0014】
前記溶融張力は、例えば、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定できる。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃とし、ポリスチレン系樹脂試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、10秒で引取速度が0m/分から5m/分に達するように一定の増速で引取速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取る。引取速度が5m/分に到達した後、溶融張力のデータの取り込みを開始し、30秒後にデータの取り込みを終了する。この30秒の間に得られたテンション荷重曲線から得られたテンション最大値(Tmax)とテンション最小値(Tmin)の平均値(Tave)を求める。ここで、上記Tmaxとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたピーク(山)値の合計値を検出された個数で除した値であり、上記Tminとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたディップ(谷)値の合計値を検出された個数で除した値である。
この測定を計10回行い、10回で得られた平均値の最も大きな値から順に3つの値と、平均値の最も小さな値から順に3つの値を除き、残った中間の4つの平均値を相加平均して得られた値を本発明方法における溶融張力(mN)とする。
なお、引取速度が5m/分に到達する前に紐状物が破断した場合においては、紐状物が破断する直前の張力の値をその測定における溶融張力(mN)とする。
【0015】
本発明において、積層発泡シートの樹脂層積層側の表面膜の平均厚みは10〜70μmである。該表面膜の平均厚みが薄すぎる場合には、熱成形時に表層部が伸びにくく、ナキや中割れが生じやすくなるため、深絞り成形性が低下するおそれや、深絞り形状の成形体を得ること自体困難となるおそれがある。また、得られる成形体の強度が低下するおそれがある。かかる観点から、表面膜の平均厚みは20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。一方、表面膜の平均厚みが厚すぎる場合には、得られる成形体の軽量性が損なわれるおそれがある。また、積層発泡シートの表面状態が悪化し、熱成形により良好な成形体が得られなくなるおそれがある。かかる観点から、表面膜の平均厚みは60μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
なお、積層発泡シートの樹脂層積層側の表面膜とは、厚み方向において、樹脂層積層側の表面から該表面に最も近い位置に存在する気泡までの部分を意味する。
【0016】
また、積層発泡シートの樹脂層積層側の表面膜の厚みの変動係数は、13%以下であることが好ましい。厚みの変動係数を上記範囲とすることで、表面膜が均質なものとなり、積層発泡シートの深絞り成形性をさらに向上させることができる。上記観点から、厚みの変動係数は12%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは11%以下であり、特に好ましくは10%以下である。
【0017】
前記表面膜の平均厚みは、次のようにして測定される値である。
まず、積層発泡シートを押出方向に対して垂直に切断し、切断面(幅方向垂直断面)の拡大写真を撮影する。そして、垂直断面に、積層発泡シートの樹脂層積層側の表面から他方の表面に向かって、厚み方向に沿って等間隔に10本の直線を引き、樹脂層積層側の表面から該表面に最も近い位置に存在する気泡までの、これらの直線と交差する部分である表面膜の厚みを計測する。この測定を積層発泡シートの無作為に選択した5箇所以上に対して実施し、各表面膜の厚みの算術平均値を積層発泡シートの樹脂層積層側の表面膜の平均厚みとする。
【0018】
また、積層発泡シートの樹脂層積層側の表面膜の厚みの変動係数は次のようにして測定される値である。
まず、測定した表面膜の厚みの標準偏差を求め、該標準偏差を表面膜の平均厚みで割算し、さらに100をかけ算することにより、表面膜の厚みの変動係数(%)が求められる。
また、厚みの標準偏差Vは下記式によって求められる。
V={Σ(T
i−T
av)
2/(n−1)}
1/2 (1)
(1)式においてT
iは前記50点以上の個々の厚みの測定値を、T
avは前記表面膜の平均厚みを、nは測定数をそれぞれ表し、Σは個々の測定値について計算した(T
i−T
av)
2を全て足し算することを示す。
【0019】
本発明の積層発泡シートにおいては、積層発泡シートの樹脂層積層側の表面から厚み方向に200μmまでの表層部について、昇温速度10℃/minで室温から160℃まで昇温する熱機械分析により測定される熱機械分析(TMA)曲線における押出方向及び幅方向の加熱収縮率の最大値がともに0〜10%であることを要する。
該加熱収縮率の最大値が大きすぎる場合、表層部の残留歪みが大きく、熱成形時にナキや中割れが生じやすくなる。そのため、積層発泡シートの成形可能範囲が狭くなり、深絞り成形性が低下するおそれや、深絞り形状の成形体を得ること自体困難となるおそれがある。この観点から、押出方向及び幅方向の加熱収縮率の最大値は5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、特に好ましくは0%である。ここで、加熱収縮率の最大値とは、TMA曲線において、160℃以下に現れる加熱収縮による変位のピークの値(以下、TMA最大収縮率ともいう。)をいう。なお、加熱収縮率の最大値が0%であるとは、TMA曲線において、表層部が実質的に加熱収縮せず(変位がマイナスの値にならず)、加熱膨張による変位のみが測定されることを意味する。
【0020】
本明細書におけるTMAの測定は次のようにして行う。
積層発泡シートにおける樹脂層積層側の表面から厚み方向に200μmまでの部分である表層部をスライスして、長さ12mm、幅5mm、厚さ200μmの試験片を作成する。次に、
図1に示すように、支持管と検出棒によって、チャック間距離(A)10mm、初期荷重1.0gとして、加熱前の変位が0となるように試験片を固定する。この際、押出方向(MD)のTMA最大収縮率を測定する時は、その試験片の長さ方向を積層発泡シートの押出方向と一致させる。一方、押出方向と直交する幅方向(TD)のTMA最大収縮率を測定するときは、その試験片の長さ方向を積層発泡シートの幅方向と一致させる。その後、電気炉により試験片を25℃から160℃まで昇温速度10℃/minで加熱しながら、検出部によって、試験片の収縮によって生じた寸法変化を検出し、横軸を温度、縦軸を寸法変化の変位としてグラフ化する。
TMA曲線の一例を
図2(MD)、
図3(TD)に示す。
【0021】
得られたTMA曲線より、160℃以下に現れる加熱収縮による変位のピークの値を求め、この値をTMA最大収縮率とする。なお、TMA曲線において、加熱収縮による変位はマイナス(−)で示され、加熱膨張による変位はプラス(+)で示される。また、TMA最大収縮率の測定は、MD、TDともにN=3で実施し、その算術平均値を採用することとする。
【0022】
TMA測定条件
島津製作所(株) 熱機械分析装置 TMA―50使用
試験片:5mm×12mm、チャック間:10mm、チャックオフセット:3.0g、初期荷重:1.0g、昇温速度:10℃/min
【0023】
本発明の積層発泡シートにおいては、発泡層の片面又は両面に、揮発性可塑剤を含む樹脂層を共押出により積層するので、押出時において、樹脂層積層側からの冷却を強めることなく、樹脂層積層側の表面膜の平均厚みを比較的厚くすることができ、さらに表層部のTMA曲線における押出方向及び幅方向の加熱収縮率の最大値を小さくし、表層部の残留歪みを小さくすることができる。そのため、展開倍率が3倍を超える深絞り形状の成形体を熱成形する場合であっても、熱成形時に積層発泡シートの表層部が十分に伸びることができるため、ナキや中割れの発生を抑制することができる。これに加え、樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂の溶融張力が特定値以上であることで、熱成形時の金型の引き込みによる力に十分に耐えることができ、ナキや中割れの発生がさらに抑制されるため、深絞り成形においても成形可能温度範囲の広い積層発泡シートを得ることできる。
【0024】
本発明においては、積層発泡シート全体の平均気泡径に対する前記樹脂層積層側の表面側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径の比が0.5以上であることが好ましい。平均気泡径の比が上記範囲内であれば、表層部の気泡膜が過度に薄くなることを防止できると共に、表層部の気泡径と発泡層内部の気泡径との差が小さくなるため、熱成形時に積層発泡シートが適度に伸び、ナキや中割れの発生をさらに抑制することができる。上記観点から、該平均気泡径の比は0.6以上であることがより好ましい。
【0025】
なお、該比が0.5以上であることは、樹脂層積層側の表面側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径が比較的大きいことを意味する。前記したように、本発明の積層発泡シートは、押出時において発泡層の片面又は両面に、揮発性可塑剤を含む樹脂層が共押出により積層されると共に、樹脂層積層側からの過度な冷却が抑制され、樹脂層積層側の表面付近の気泡の成長を十分に進ませることができるので、該部分の気泡径を大きくすることができるものと考えられる。
【0026】
積層発泡シート全体の平均気泡径は次のように測定する。
まず、積層発泡シートを押出方向に対して垂直に切断し、積層発泡シートの幅方向において等間隔な10箇所についての切断面(幅方向垂直断面)の拡大写真を撮影する。次に、各々の断面写真について積層発泡シートの厚み方向(押出方向に対して垂直な方向)の長さを測定する。次に、各断面写真の厚み方向に直線を引き、直線と交わる積層発泡シート中の全ての気泡数を計測し、厚み方向の気泡数を求める。次に、各測定箇所における、厚み方向の気泡数を積層発泡シートの厚み方向の長さで除することで厚み方向の平均気泡径を求め、10箇所における厚み方向の平均気泡径の算術平均値を、積層発泡シート全体の平均気泡径とする。
【0027】
また、樹脂層積層側の表面側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径は次のように測定する。
まず、積層発泡シートを押出方向に対して垂直に切断し、積層発泡シートの幅方向において等間隔な10箇所についての切断面(幅方向垂直断面)の拡大写真を撮影する。次に、各々の断面写真について、各断面写真の厚み方向に等間隔に10箇所以上直線を引く。次に、該直線と交わる気泡のうち、樹脂層積層側の表面に最も近い位置に存在する各気泡の垂直フェレ径を求める。次に、各測定箇所において測定した各気泡の垂直フェレ径を算術平均して平均垂直フェレ径を求め、これを樹脂層積層側の表面側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径とする。
上記樹脂層積層側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径を上記積層発泡シート全体の平均気泡径で除することで、上記積層発泡シート全体の平均気泡径に対する樹脂層積層側の表面側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径の比を求めることができる。
【0028】
本発明においては、溶媒としてヘプタンを用いた抽出試験により、熱成形後の成形体から抽出されるスチレン二量体及びスチレン三量体の量を低減する観点から、前記樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂のスチレン二量体及びスチレン三量体(以下、オリゴマーともいう。)の合計含有量は概ね2500ppm以下であることが好ましく、2400ppm以下である事がより好ましく、さらに好ましくは2300ppm以下である。
【0029】
前記スチレン二量体及びスチレン三量体の含有量は、溶媒としてヘプタンを用いた抽出試験により、以下のようにして求められる。
【0030】
ポリスチレン系樹脂0.1gをテトラヒドロフラン10mlに溶解させ、23℃のヘプタン約250ml中に滴下して樹脂を析出させる。樹脂を濾別した濾液に内部標準としてトリフェニルメタンを加えた後、約20mlまで濃縮し、ガスクロマトグラフ質量分析計で測定する。なおガスクロマトグラフ質量分析の測定条件は次の通りである。
使用機器:島津製作所製ガスクロマトグラフ質量分析計 GC/MS QP5050A、カラム:J&W Scientific製DB−5MS 0.25mm×30m(固定相…5%ジフェニル−95%ジメチル−ポリシロキサン)、キャリアガス:ヘリウム、カラム流量:1.6ml/min、試料注入量:1μL。
【0031】
発泡層の片面又は両面に、樹脂層が共押出により積層された積層発泡シートの見掛け密度は0.05〜0.30g/cm
3である。該見掛け密度が小さすぎると、強度が低下し、熱成形性が低下するおそれがある。一方、該見掛け密度が大きすぎると、軽量性が失われ、断熱性が低下するおそれがある。かかる観点から、見掛け密度は0.07g/cm
3以上であることが好ましく、0.09g/cm
3以上であることがより好ましい。また、見掛け密度は0.25g/cm
2以下であることが好ましく、0.21g/cm
3以下であること事がより好ましい。
【0032】
発泡層の片面又は両面に、樹脂層が共押出により積層された積層発泡シートの厚みは1〜3mmである。該厚みが薄すぎると、強度や断熱性が失われるおそれがある。一方、該厚みが厚すぎると、成形体のロースタック性が失われるおそれがある。かかる観点から、積層発泡シートの厚みは1.4mm以上であることが好ましく、1.8mm以上であることがより好ましい。また、積層発泡シートの厚みは2.8mm以下であることが好ましく、2.6mm以下であることがより好ましい。
【0033】
熱成形性やコスト性、軽量性、得られる成形体の強度の観点から、発泡層の片面又は両面に、樹脂層が共押出により積層された積層発泡シートの坪量は、概ね150〜550g/m
2であることが好ましく、より好ましくは200〜450g/m
2であり、さらに好ましくは220〜400g/m
2であり、特に好ましくは240〜350g/m
2である。
【0034】
本発明においては、前記発泡層の片面に前記ポリスチレン系樹脂層が共押出により積層されてなることが好ましい。また、前記発泡層の片面に、前記ポリスチレン系樹脂層が共押出により積層された積層発泡シートの、前記ポリスチレン系樹脂層が積層された面とは反対側の面に、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂層(以下、耐衝撃性樹脂層ともいう。)が積層された多層発泡シートとすることができる。耐衝撃性樹脂層を有する多層発泡シートは成形性や強度に優れているため、熱成形により得られた成形体は、カップや丼などの容器として好適に使用できるものである。深絞り成形性や、得られる成形体の強度と軽量性とのバランス等の観点から、耐衝撃性樹脂層の坪量は70〜200g/m
2であることが好ましく、より好ましくは80〜180g/m
2であり、更に好ましくは90〜160g/m
2である。
【0035】
耐衝撃性樹脂層を構成する基材樹脂としては、特に限定されるものではないが、スチレン成分とゴム成分とからなり、両者の総和を100重量%とした場合、スチレン成分65〜98重量%、ゴム成分35〜2重量%とからなる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂を好ましく用いることができる。上記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂としては、例えば次のものが挙げられる。
(1)スチレン成分とゴム成分とからなるランダム共重合体樹脂、ブロック共重合体樹脂、グラフト共重合体樹脂、又はこれら共重合体樹脂の2種以上の混合物。
(2)上記(1) の樹脂とスチレン単独重合体との混合物。
(3)スチレン単独重合体とゴム( 熱可塑性エラストマーも含む) との混合物。
(4)上記(1) の樹脂又は(2) の樹脂と、ゴム(熱可塑性エラストマーを含む)との混合物。
上記耐衝撃性樹脂層における耐衝撃性ポリスチレン成分の含有量は、概ね80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。
【0036】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂層を積層する方法に制限はないが、例えば、加熱したロール等により積層発泡シートと耐衝撃性樹脂層とを熱融着させる熱ラミネート方式や、押出機等により加熱溶融した耐衝撃性樹脂を押出し、積層発泡シートに積層接着させる押出ラミネート方式が挙げられ、これらのうち、発泡シートと耐衝撃性樹脂層との接着性の観点から、押出ラミネートにより耐衝撃性樹脂層を積層することが好ましい。
【0037】
次に、本発明の積層発泡シートの製造方法について説明する。
本発明の積層発泡シートは、発泡層形成用押出機の出口に共押出用ダイが取り付けられ、その共押出用ダイに樹脂層形成用押出機が連結された装置を用いて、発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出用ダイ内にて積層し、押出発泡させる共押出発泡法により製造される。
【0038】
共押出発泡法によりシート状の積層発泡シートを製造する方法には、共押出用フラットダイを用いてシート状に共押出し、積層発泡シートとする方法や、共押出用環状ダイを用いて共押出し、筒状の積層発泡体を得て、次いで該筒状発泡体を切り開いてシート状の積層発泡シートとする方法等がある。これらの中では、共押出用環状ダイを用いる方法が、幅が1000mm以上の幅広の積層発泡シートを容易に製造することができるので、好ましい。
【0039】
以下、本発明の積層発泡シートの製造方法の一例として、前記環状ダイを用いた共押出発泡法により本発明の積層発泡シートを製造する場合について詳細に説明する。
まず、発泡層形成用押出機に発泡層形成用のポリスチレン系樹脂と必要に応じた気泡調整剤等の添加剤を供給して加熱、溶融、混練した後、物理発泡剤を圧入して更に混練し、発泡適正温度に調整して発泡層形成用樹脂溶融物とする。
その一方で、樹脂層形成用押出機に樹脂層形成用のポリスチレン系樹脂を供給して加熱、溶融、混練した後、揮発性可塑剤を圧入して更に混練し、押出適正温度に調整して樹脂層形成用樹脂溶融物とする。
次に、発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを、共押出用環状ダイに導入して合流させ、発泡層形成用樹脂溶融物に樹脂層形成用樹脂溶融物を積層した後、該ダイから大気中に共押出して発泡層形成用樹脂溶融物を筒状に発泡させる。この筒状積層発泡体を筒状の冷却装置(以下、マンドレルともいう。)に沿わせて引取りながら冷却すると共に、切り開いてシート状にすることで、発泡層の片面又は両面に樹脂層が積層接着された積層発泡シートを得ることができる。
【0040】
樹脂層形成用樹脂溶融物には揮発性可塑剤が添加されている。揮発性可塑剤を樹脂溶融物に添加することにより、ポリスチレン系樹脂の溶融粘度を適度に低下させることができるので、積層発泡シートを共押出する際に、樹脂層形成用樹脂溶融物の押出温度を発泡層形成用樹脂溶融物の押出温度に近づけることができる。これにより、共押出時に樹脂層の熱によって発泡層の表層部の気泡が破壊されることを防止することができ、熱成形時の表層部の伸びに優れる積層発泡シートとなる。また、揮発性可塑剤の添加により、樹脂層の溶融伸びを著しく向上させることができるため、共押出時の発泡による発泡層の伸びに該樹脂層の伸びが追随しやすくなり、樹脂層積層側の表面膜の厚みが比較的厚いと共に、均質な表面膜を有する積層発泡シートを得ることができる。
【0041】
前記揮発性可塑剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、又はメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル等の脂肪族エーテル等から選択される1種、又は2種以上で構成されるものが好ましく用いられ、特にノルマルブタン、イソブタン又はこれらの混合物を主成分とするものを好適に用いることができる。
【0042】
揮発性可塑剤は、樹脂層形成用のポリスチレン系樹脂100重量部に対して2〜10重量部となるように添加することが好ましい。
【0043】
前述したように、本発明の積層発泡シートは、樹脂層積層側の表面膜の平均厚みが比較的厚いと共に、表層部のTMA曲線における押出方向及び幅方向の加熱収縮率の最大値が小さく、表層部の残留歪みが小さいものである。このような積層発泡シートは、揮発性可塑剤を含む樹脂層を共押出により積層すると共に、共押出用ダイの内部で発泡層形成用樹脂溶融物に樹脂層形成用樹脂溶融物が積層された積層樹脂溶融物を適度に冷却することや、ダイから押出された筒状積層発泡体をマンドレルに沿わせて引き取る過程において、樹脂層積層側の表面に吹付ける冷却エアーの温度や風量を調整することで製造することができる。
【0044】
積層樹脂溶融物をダイ内部で冷却する方法としては、ダイ温度よりも低温の冷却媒体により、ダイ外周やダイの内部に位置するダイシャフト(心金)をダイ温度よりも低温に温度調節する方法等が挙げられる。この場合の冷却媒体としては、オイルや水などが挙げられる。この場合、樹脂の流路における壁の温度は樹脂溶融物の温度よりも10〜40℃低めに設定することが好ましい。これにより、積層発泡シートの表層部の残留歪みを低減させることができる。
【0045】
また、ダイから押出された筒状積層発泡体をマンドレルに沿わせて引き取る過程の筒状積層発泡体の冷却においては、樹脂層積層側の表面(筒状発泡体の外側)に吹付ける冷却エアーの温度を5〜40℃、より好ましくは5〜30℃とし、冷却エアーの風量を0.1〜1m
3/min、より好ましくは0.1〜0.8m
3/minとすることが好ましい。揮発性可塑剤を含む樹脂層を共押出により積層すると共に、冷却エアーによる筒状積層発泡体の冷却条件を上記範囲とすることで、筒状積層発泡体の樹脂層積層側の表層部の冷却が穏やかになり、表層部が急激に冷却されることを防止することができる。そのため、樹脂層積層側の表面膜の厚みが比較的厚いと共に、樹脂層積層側の残留歪みが低減され、TMA曲線における加熱収縮率の最大値の小さい積層発泡シートを得ることができる。
【0046】
一般的に、熱成形により丼等の成形体の内側となる面の発泡シートの表面膜の厚みを厚くし、熱成形時における表層部の伸びを良くすることで、ナキや中割れの発生を抑制することができるものと考えられる。その一方で、表面膜の厚みを厚くするためには、ダイから押出された筒状積層発泡体をマンドレルに沿わせて引き取る過程で冷却エアーを吹付ける等により、発泡シートを冷却する必要があるが、この冷却により、発泡シートの表層部には大きな残留歪みが生じることになる。そのため、従来の技術では、表面膜が適度に厚いと共に、表層部の残留歪みが小さいシートを得ることが困難であり、展開倍率が3倍を超える深絞り形状の成形体を熱成形することは困難であった。
本発明においては、揮発性可塑剤を含む樹脂層を共押出により積層することで、表面膜の厚みを適度に厚くすることができる。さらに、表面膜の厚みを厚くするために冷却エアー等による冷却を強める必要がないため、表層部が過度に冷却されることを抑制することができる。そのため、本発明の製造方法で製造された積層発泡シートは、表面膜が適度に厚いと共に、表層部の残留歪みが小さいものとなり、深絞り成形性に優れるものとなることに加え、深絞り形状の成形体の多数個取りが可能なものとなる。
【0047】
なお、特に発泡性に優れることから、発泡層形成用のポリスチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜10g/10分であることが好ましい。また、樹脂層形成用のポリスチレン系樹脂のMFRは0.5〜5g/10分であることが好ましい。
【0048】
また、樹脂層形成用樹脂溶融物には、本発明の目的を阻害しない範囲において該溶融物を形成する樹脂に各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、抗菌剤等が挙げられる。その場合の添加量は添加剤の目的、効果に応じて適宜定められるが、前記樹脂溶融物100重量部に対して各々10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が特に好ましい。
【0049】
前記発泡層形成用樹脂溶融物に添加される物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等の有機系物理発泡剤、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系物理発泡剤が挙げられる。前記した物理発泡剤は、2種以上を混合して併用することが可能である。これらのうち、特にポリスチレン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0050】
物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見掛け密度に応じて調整する。また気泡調整剤の添加量は、目的とする気泡径に応じて調節する。例えば、発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%とのブタン混合物を用いて前記見掛け密度範囲の積層発泡シートを得るためには、ブタン混合物の添加量は、基材樹脂100重量部当たり1〜10重量部、好ましくは1.5〜8重量部、より好ましくは2〜5重量部である。
【0051】
前記発泡層形成用樹脂溶融物に添加される添加剤の主要なものとして、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることもできる。
気泡調整剤の添加量は、基材樹脂100重量部当たり0.01〜3重量部、好ましくは0.03〜1重量部である。
【0052】
前記共押出環状ダイ、押出機等の製造装置は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
【0053】
本発明の積層発泡シートは、従来公知の成形方法によって成形することができ、特に深絞り成形性に優れている。成形方法としては、真空成形、圧空成形や、これらの応用として、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースロード成形等やこれらを組合せた方法等が採用される。
【0054】
本発明の積層発泡シートが熱成形されてなる成形体の展開倍率は、特に限定されるものではないが、深絞り成形が可能である観点から、概ね2〜5倍が好ましく、3〜5倍がより好ましく、3.5〜5.0倍がさらに好ましい。なお、成形体の展開倍率とは、成形体の開口面積に対する成形体内面の表面積の比である。この際、成形体内面の表面積は、成形体から直接測定する方法や、3D形状測定機により測定する方法等により求めることができる。
【0055】
本発明の積層発泡シートを用いて成形される成形体としては、深絞り形状の丼、カップ等が挙げられる。ただし、浅型のトレイ、弁当箱等にも用いることもできる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例、比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0057】
実施例、比較例において使用した、ポリスチレン系樹脂を次に示す。
(1)略称「PS1」:PSジャパン(株)製「G0002」(オリゴマー含有量1056ppm、溶融張力(200℃)154mN、MFR1.6g/10min)
(2)略称「PS2」:PSジャパン(株)製「1G1635」(オリゴマー含有量2300ppm、溶融張力(200℃)334mN、MFR1.7g/10min)
(3)略称「PS3」:DICプラスチック(株)製「HP780AN」(オリゴマー含有量3500ppm、溶融張力(200℃)283mN、MFR1.0g/10min)
(4)略称「PS4」:PSジャパン(株)製「GX156」(オリゴマー含有量2200ppm、溶融張力(200℃)306mN、MFR1.8g/10min)
(5)略称「PS5」:PSジャパン(株)製「680」(オリゴマー含有量17810ppm、溶融張力(200℃)41mN、MFR7.0g/10min)
(6)略称「PS6」:PSジャパン(株)製「G120」
(オリゴマー含有量14712ppm、溶融張力(200℃)16mN、MFR22g/10min)
前記メルトフローレートは、JIS K7210−1999に基づき、条件H(200℃、荷重5kg)で測定された値である。
【0058】
物理発泡剤及び揮発性可塑剤として、ノルマルブタン70重量%とイソブタン30重量%とからなる混合ブタンを用いた。
【0059】
気泡調整剤として、ポリスチレンをベースレジンとし、タルク(松村産業株式会社製商品名「ハイフィラー#12」)を35重量%含む気泡調整剤マスターバッチを用いた。
【0060】
発泡層形成用の押出機として、直径90mmの第一押出機と直径120mm第二押出機からなるタンデム押出機を用い、樹脂層形成用の押出機として直径40mm、L/D=50の第三押出機を用いた。更に、共押出用環状ダイに、第二押出機と第三押出機の夫々の出口を連結し、夫々の樹脂溶融物を共押出用環状ダイ内で積層可能にした。
【0061】
実施例1〜9、比較例1〜5
表1に示す種類のポリスチレン系樹脂と、該ポリスチレン系樹脂100重量部に対して1.6重量部の気泡調整剤マスターバッチとをタンデム押出機の第一押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃の樹脂溶融物とした。次に、該樹脂溶融物に、2.7重量部の混合ブタンを圧入し、次いで前記第一押出機の下流側に連結された第二押出機に樹脂溶融物を供給した。次に、押出樹脂温度を165℃に調節して発泡層形成用樹脂溶融物とし、該発泡層形成用樹脂溶融物を表1に示す吐出量で前記の共押出用環状ダイに導入した。
【0062】
同時に、表1に示す種類のポリスチレン系樹脂を第三押出機に供給して加熱混練し、揮発性可塑剤として混合ブタンをポリスチレン系樹脂100重量部に対して3.5重量部圧入した。その後、樹脂を更に混練し、押出樹脂温度を170℃に調節して樹脂層形成用樹脂溶融物とした。次に、該樹脂層形成用樹脂溶融物を表1に示す吐出量で共押出用環状ダイに導入した。
【0063】
共押出用環状ダイ内で筒状に流動する発泡シート形成用樹脂溶融物の外側に、樹脂層形成用樹脂溶融物を積層し、溶融物の積層体をリップ径90mmのダイから大気中に押出した。押出された樹脂層/発泡層からなる2層構成の筒状積層発泡体を拡幅(ブローアップ比3.0)し、マンドレルに沿わせて引き取り、切開くことで、発泡層の片面(マンドレルにより冷却されていない面)に樹脂層が積層接着された積層発泡シートを得た。なお、共押出用環状ダイを出た直後の筒状積層発泡体の外側(樹脂層積層側)に風量0.4m
3/min(10℃)で冷却エアー(外エアー)を吹付けると共に、筒状積層発泡体の内側(樹脂層非積層側)に風量0.6m
3/min(10℃)で冷却エアーを吹付けることで、積層発泡シートを冷却した。なお、実施例5、比較例2〜5においては、樹脂層積層側に吹付ける外エアー風量を表1に示す風量に変更した。
【0064】
次に、耐衝撃性樹脂として、PSジャパン(株)製(475D)を別の押出機に供給し、加熱、溶融、混練した。その後、Tダイを通して押出された耐衝撃性樹脂溶融物を、実施例1〜8、比較例1〜4で得られた積層発泡シートの樹脂層が積層された面とは反対側の面(マンドレルにより冷却された面)に坪量120g/m
2で積層することにより、耐衝撃性樹脂層が押出ラミネートにより積層接着された多層発泡シートを得た。
得られた積層発泡シートの諸物性を表2、表3に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
表2、表3における積層発泡シート(発泡層の片面に樹脂層が積層された積層発泡シート)の厚みの測定は、まず、積層発泡シートを押出方向(MD)に100mmの長さとなるように、押出方向と直交する幅方向(TD)に亘って切り出し、さらに幅方向(TD)の両端部を25mmずつ切除することで、積層発泡シートの幅方向中央部800mmの部分を試験片として切り出した。この試験片をさらに幅方向に10等分し、その中央付近の厚みをマイクロメータにより測定した。各測定点における厚みを算術平均した値を積層発泡シートの厚みとした。
積層発泡シートの全体坪量は、上記試験片の質量を測定し、その質量を試験片の面積(具体的には、800mm×100mm)で除し、g/m
2に単位換算して求めた。
また、樹脂層の坪量は、前記全体坪量をもとに、発泡層と樹脂層との吐出量の比から求めた。
積層発泡シートの見掛け密度は、積層発泡シートの全体坪量を積層発泡シートの厚みで割算し、単位換算することにより求めた。
なお、単層の発泡シートである比較例4、5においては、発泡シートに対して測定を行った。
【0069】
TMA最大加熱収縮率は、前記方法により求めた。なお、比較例4、5においては、マンドレルにより冷却されていない面の発泡シートの表層部に対して測定を行った。また、比較例4の表層密度(マンドレルにより冷却されていない面の発泡シートの表面から厚み方向に200μmまでの密度)は、0.32g/cm
3であった。
【0070】
積層発泡シートの平均気泡径に対する樹脂層積層側の表面側の最外方の位置に存在する気泡の平均気泡径の比は、前記方法により求めた。なお、比較例4、5においては、マンドレルにより冷却されていない面の発泡シートの表層部に対して測定を行った。
【0071】
積層発泡シートのポリスチレン系樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂の200℃における溶融張力は、前記の方法により求めた。
【0072】
ポリスチレン系樹脂のスチレン二量体及びスチレン三量体の含有量は、前記の方法により求めた。
【0073】
熱成形性の評価は次の基準で行った。なお、実施例、比較例で得られた積層発泡シートを25℃の温度で21日間養生した後、下記の熱成形を行った。
熱成形機(浅野研究所製:品番「FKS-0631-10」)を使用し、マッチモールド真空成形により、樹脂層が積層された面(マンドレルにより冷却されていない面)が成形体の内側になるようにして、ヒータ温度300℃で積層発泡シートを所定秒数加熱した後、口径97mm、展開倍率4.5倍の成形体を9個取りすることができるカップ状の成形金型A(3列×3段)を用いて熱成形を行った。加熱時間を変化させ、9個取り金型の中央部に位置する金型により成形された成形体に対して、良好な成形体を得ることができる加熱時間範囲を測定し、次の基準で熱成形性を評価した。なお、実施例9、比較例5においては、口径140mm、展開倍率2.6倍の成形体を9個取りすることができるカップ状の成形金型B(3列×3段)を用いた。
なお、中央部に位置する金型により成形される成形体は、周囲の成形体に比べて、熱成形時に積層発泡シートが引き込まれにくく、成形が難しいものである。
【0074】
熱成形性の評価基準(成形可能な加熱時間)
A:良好な成形体を得ることができる加熱時間が7秒以上である。
B:良好な成形体を得ることができる加熱時間が5秒以上7秒未満である。
C:良好な成形体を得ることができる加熱時間が3秒以上5秒未満である。
D:良好な成形体を得ることができる加熱時間が3秒未満である。
X:良好な成形体を得ることができない(成形可能加熱時間範囲0)。
なお、良好な成形体を得ることができる加熱時間が5秒以上であれば、連続成形においても安定した成形が可能となる。さらに、良好な成形体を得ることができる加熱時間が7秒以上であれば、成形体の安定した商業生産が可能となる。
また、中央部に位置する金型により良好な成形体が得られた場合は、その他の8個の成形体についても良好な成形体が得られた。
【0075】
成形体強度の評価基準(リップ強度)
株式会社イマダ製ロードセルDPUを用いて、成形体の開口部周縁に形成されたフランジ部を、成形体の外側から速度300mm/minで10mm圧縮した際の最大荷重を測定し、これをリップ強度とした。
A:リップ強度が2.5N以上である。
B:リップ強度が2.0N以上2.5N未満である。
C:リップ強度が2.0N未満である。