(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892301
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】無線通信システム、移動局および基地局
(51)【国際特許分類】
H04W 16/02 20090101AFI20210614BHJP
H04W 4/42 20180101ALI20210614BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20210614BHJP
H03K 5/00 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
H04W16/02
H04W4/42
H04W56/00 110
H03K5/00 T
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-63522(P2017-63522)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-166293(P2018-166293A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 英嗣
【審査官】
石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−318448(JP,A)
【文献】
特開2016−034147(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/072205(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
H03K 5/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する第1基地局と第2基地局とを含む複数の基地局と、
前記複数の基地局に接続される中央制御装置とを有し、
前記複数の基地局のそれぞれは、前記中央制御装置からの通信データを4値FSK変調して移動局に送信する無線通信装置を有し、
前記第1基地局の前記無線通信装置は第1マッピングに基づき4値FSK変調を行い、前記第2基地局の前記無線通信装置は前記第1マッピングと異なる第2マッピングに基づき4値FSK変調を行い、
前記第1基地局及び前記第2基地局の前記無線通信装置は、それぞれ前記通信データを前記移動局へ送信し、
4値FSK変調は、4つのシンボルに対してそれぞれ第1〜第4周波数のいずれかを割り当て、
前記第1マッピング及び前記第2マッピングは、4つのシンボルに対してそれぞれ前記第1〜第4周波数のうち異なる4つの周波数を割り当てるとともに、
少なくとも1つのシンボルには、前記第1マッピングにより割り当てられる周波数と前記第2マッピングにより割り当てられる周波数との間に、これらと異なる前記第1〜第4周波数のいずれかの周波数を含む無線通信システム。
【請求項2】
互いに隣接する第1基地局と第2基地局とを含む複数の基地局と、
前記複数の基地局に接続される中央制御装置とを有し、
前記複数の基地局のそれぞれは、前記中央制御装置からの通信データを4値FSK変調して移動局に送信する無線通信装置を有し、
前記第1基地局の前記無線通信装置は第1マッピングに基づき4値FSK変調を行い、前記第2基地局の前記無線通信装置は前記第1マッピングと異なる第2マッピングに基づき4値FSK変調を行い、
前記第1基地局及び前記第2基地局の前記無線通信装置は、それぞれ前記通信データを前記移動局へ送信し、
前記移動局は、
アンテナと、
前記アンテナで受信した高周波信号を中間周波数帯受信信号にダウンコンバージョンする高周波回路と、
前記高周波回路から出力される中間周波数帯受信信号を4値FSK復調する復調部とを有し、
前記復調部にて2つの周波数が検出された場合に、検出された2つの周波数の組み合わせに基づき1つのシンボルに復調する無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記複数の基地局のそれぞれは、遅延調整回路を有し、
前記無線通信装置及び前記遅延調整回路は、前記中央制御装置からの網クロック信号に同期するクロック信号に同期して動作し、
前記第1基地局及び前記第2基地局の前記無線通信装置は、それぞれ前記通信データとして同報通信データを前記移動局へ送信し、
前記第1基地局及び前記第2基地局の前記遅延調整回路の遅延量はそれぞれ、前記第1基地局の送信タイミングと前記第2基地局の送信タイミングとが同期するよう定められている無線通信システム。
【請求項4】
4値FSK変調された高周波信号の送受信を行う移動局であって、
アンテナと、
前記アンテナで受信した高周波信号を中間周波数帯受信信号にダウンコンバージョンする高周波回路と、
前記高周波回路から出力される中間周波数帯受信信号を4値FSK復調する復調部とを有し、
前記復調部にて2つの周波数が検出された場合に、検出された2つの周波数の組み合わせに基づき1つのシンボルに復調する移動局。
【請求項5】
請求項4において、
前記高周波信号は、複数の基地局から移動局への同報通信であって、第1基地局にて第1マッピングに基づき4値FSK変調された送信信号と前記第1基地局と隣接する第2基地局にて前記第1マッピングと異なる第2マッピングに基づき4値FSK変調された送信信号との合成信号である移動局。
【請求項6】
請求項5において、
前記復調部にて1つの周波数が検出された場合に、前記高周波回路から出力される中間周波数帯受信信号が前記第1マッピングにてマッピングされているか、前記第2マッピングにてマッピングされているかを判定する移動局。
【請求項7】
中央制御装置に接続される基地局であって、
前記中央制御装置から同報通信データを4値FSK変調して移動局に送信する無線通信装置と、
遅延調整回路とを有し、
前記無線通信装置及び前記遅延調整回路は、前記中央制御装置からの網クロック信号に同期するクロック信号に同期して動作し、
前記無線通信装置はあらかじめ定められた第1マッピングまたは第2マッピングのいずれかに基づき4値FSK変調を行い、
前記無線通信装置は、前記中央制御装置からの網タイミング信号をあらかじめ定められた遅延量だけ遅延させたタイミングにより前記同報通信データを送信し、
4値FSK変調は、4つのシンボルに対してそれぞれ第1〜第4周波数のいずれかを割り当て、
前記第1マッピング及び前記第2マッピングは、4つのシンボルに対してそれぞれ前記第1〜第4周波数のうち異なる4つの周波数を割り当てるとともに、
少なくとも1つのシンボルには、前記第1マッピングにより割り当てられる周波数と前記第2マッピングにより割り当てられる周波数との間に、これらと異なる前記第1〜第4周波数のいずれかの周波数を含む基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に隣接する基地局からの信号同士の干渉を回避する無線通信システムおよびそれに用いる移動局、基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
列車無線システムでは、線路に沿って同一の周波数を使用する複数の基地局が配置され、無線エリアが構築されている。線路上を移動する複数の列車それぞれに搭載された無線通信装置(「車上局」と称する)では、同報的に基地局からの信号を受信する。列車無線システムでは、隣接する基地局からの無線電波の到達範囲が重なるように配置されている。これは、車上局が線路上のどこにあっても基地局からの電波が受信できるようにするためである。しかしながら、複数の基地局からの電波がそれぞれ良好に受信できるように配置すると、複数の基地局からの電波が互いに干渉するエリアが生じてしまう。このような干渉が発生している場所では、車上局で受信したデータが正確に再生できなくなるという問題すなわち同一波干渉やビート干渉と呼ばれる問題が発生する。
【0003】
特許文献1は、列車無線システムに関するものであり、複数の基地局の各々では、時空間ブロック符号(STBC)または差動時空間ブロック符号(DSTBC)を用いて送信対象となる共通のデータ列から互いに直交する複数のデータ列を生成する。基地局ではそれぞれのデータ列に対して指向性のあるアンテナを割り当てることにより、隣接する基地局の中間に位置する移動局は異なる符号化列の送信波を受信するようにすることで、干渉が生じても元の送信データ系列を再生可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−34147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では単一の周波数を用いて複数の基地局から信号を送信する同報型無線システムにおいて、互いに直交する複数のデータ列を生成する特殊な符号化方法を適用することにより干渉の防止を図っている。
【0006】
これに対し、このような無線通信システムにおいて、4値FSK(Frequency Shift Keying)変調を適用することを検討する。ビート干渉は、隣接する2つの基地局から送信された同じ周波数の区別できない同一の変調波が位相差をもって合成され打ち消し合う現象であり、これにより移動局では受信不能になる。
【0007】
一方、隣接する2つの基地局から送信された変調波が異なっていれば、すなわち一方の基地局から送信される変調波が周波数f1であり、他方の基地局から送信される変調波が周波数f2であれば、2つの基地局からの合成された無線信号からそれぞれの周波数成分を分離でき、復調することができる。しかし、周波数の有効利用や割り当ての規制などの事情により、隣接する基地局からの変調波の周波数が同一であるシステムを構築する場合が多く、ビート干渉の問題を回避できない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
互いに隣接する第1基地局と第2基地局とを含む複数の基地局と、複数の基地局に接続される中央制御装置とを有し、複数の基地局のそれぞれは、中央制御装置からの通信データを4値FSK変調して移動局に送信する無線通信装置を有し、第1基地局の無線通信装置は第1マッピングに基づき4値FSK変調を行い、第2基地局の無線通信装置は第1マッピングと異なる第2マッピングに基づき4値FSK変調を行い、第1基地局及び第2基地局の無線通信装置は、それぞれ通信データを移動局へ送信する。
【発明の効果】
【0009】
4値FSK(Frequency Shift Keying)変調を用いた無線通信システムにおいて、基地局間のビート干渉による受信断を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】隣接する基地局間で干渉を回避する方式を説明する図である。
【
図4】基地局間で送信同期する方法を説明する図である。
【
図6】Aマッピング、Bマッピングにおける周波数割り当ての一例である。
【
図7】車上局が2つの基地局からの信号を受信する場合の周波数の組み合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に実施例である列車無線システムの概要図を示す。中央制御装置120は光ファイバのような伝送媒体140により複数の基地局101(ここでは代表して、基地局A101a、基地局B101bを示している)に接続されている。基地局101には無線通信装置102が搭載されている。また、列車110に車上局111が搭載されており、車上局111には無線通信装置112が搭載されている。これにより、車上局111は基地局101と無線通信を行う。ダウンリンク141は基地局101から車上局111に向かう下り回線であり、その無線(搬送)周波数はF1である。アップリンク142は車上局111から基地局101に向かう上り回線であり、その無線(搬送)周波数はF2である。
【0012】
無線通信装置102,112の変調方式としては4値FSK(Frequency Shift Keying)を適用する。4値FSKは1シンボルに対して2ビットのデータを伝送する方式であり、4の周波数偏移に対して、それぞれデータ「00」「01」「10」「11」が割り当てられる。
【0013】
中央制御装置120は、車上局111へ送信するデータを伝送媒体140を介して基地局101に伝送する。ここで、データは通信卓130からの音声データ信号やその他のデジタルデータ信号である。また、基地局101と車上局111とが通信を行うための制御信号も伝送媒体140を介して中央制御装置120から基地局101に伝送される。
【0014】
また、列車無線システムにおいては車上局111からの発信(無線送信)タイミングは基地局101側から制御されており、複数の車上局が同じタイミングで発信することはない。このためアップリンク142においては複数の車上局からの信号が干渉することはない。これに対して、無線電波の到達範囲が重なるように配置された複数の基地局101は、車上局111に対して中央制御装置120から伝送されたデータ信号を同報する。本実施例は、基地局A101aからのダウンリンク141aと基地局B101bからのダウンリンク141bとが干渉により車上局111で受信ができなくなるのを回避するよう構成される。
【0015】
図2を用いて、本実施例における隣接する基地局間で干渉を回避する方式について説明する。基地局は線路200に沿って線状に配置されている。このため、線路上に存在する車上局111が受信可能な基地局は、隣接する2つの基地局からのみとなる。本実施例では、隣接する基地局同士で、4値FSKにおける4の周波数偏移に割り当てるデータ(これを「マッピング」という)を異ならせる。
図2の例では基地局A101a、基地局C101cはAマッピングを適用し、基地局B101b、基地局D101dはBマッピングを適用している。また、各基地局が車上局に発信(無線送信)するタイミングを正確に同期させるため、中央制御装置120から各基地局に網クロックを供給し、各基地局には遅延調整回路201が設けられている。
【0016】
基地局Aと基地局Bとの間に存在する車上局を例に説明する。
図2に示すように、隣接する基地局Aと基地局Bとは同期して車上局への信号を発信する。隣接する基地局では使用するマッピングが異なっており、かつ基地局から車上局への発信は同報通信であるから、基地局Aからの発信信号の周波数(ここではf1とする)と基地局Bからの発信信号の周波数(ここではf2とする)とは必ず異なる。また、基地局からの信号を車上局で受信する受信信号強度は、基地局から離れるほど小さくなる。
【0017】
基地局Aよりの地点Xに位置する車上局111aでは、周波数f1の信号が大きな受信信号強度で受信され、周波数f2の信号は受信されない、または受信されたとしても周波数f1の信号に比べてはるかに微弱である。そのような場合においては、周波数f1の信号を受信し、この信号がAマッピングによる変調か、Bマッピングによる変調かを判定すればよい。一方、基地局Aと基地局Bとの中間近傍の地点Yに位置する車上局111bでは、周波数f1の信号と周波数f2の信号とがほぼ同等の受信信号強度で受信される。この場合は、周波数f1の信号と周波数f2の信号の双方が受信され、その組み合わせに相当するデータは一意に定まることを利用して復調する。
【0018】
図3に基地局101の機能ブロック図を示す。なお、本実施例に関係する主要な機能のみのブロック図であり、その他は省略している。基地局101は中央制御装置120から伝送媒体140を介して音声信号、データ信号、網クロック信号、網タイミング信号を受信する。これらの信号はそれぞれの入力端子321〜324に入力される。基地局101では網クロック信号に同期したクロック信号が基地局の内部回路である無線通信装置102や遅延調整回路201に分配され、これらの回路はクロック信号に同期して動作する。基地局内部のクロック信号は、受信した網クロックを再生、増幅して使用してもよいし、基地局101に高安定水晶を設け、高安定水晶によって発生させた発振信号を適宜逓倍し、受信した網クロックと同期させて、クロック信号として内部回路に分配してもよい。このようなクロック信号の生成、分配は、PLL(Phase Locked Loop)回路やDLL(Delay Locked Loop)回路によって実現できることはよく知られているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0019】
まず、送信機能について説明する。入力された音声信号はオーディオインタフェース部301において、アナログ信号からデジタル信号に変換する。音声信号のもつ広いダイナミックレンジを圧縮するためμ-lawアルゴリズムを用いてデジタル変換を行うとよい。音声圧縮部302はデジタル化された音声信号を圧縮符号化する。符号化・復号化部304では、音声圧縮部から出力される音声データ信号または中央制御装置120からのデータ信号に対して誤り訂正符号化、さらにインターリーブを行い、無線フレームを構築する。シリアルビット配列化された無線フレームを構成するデジタルデータに対して、4値FSK処理部306または4値FSK処理部307にて、データ「00」「01」「10」「11」に対して所定の周波数データを付与する。VCO(Voltage-controlled Oscillator)309では無線フレームを構成するデジタルデータに付与された周波数データに合わせて中間周波数帯送信データを生成する。具体的にはVCOが電圧・周波数変換を行うことにより、データ系列に合わせて周波数が変化する中間周波数帯送信データが生成される。高周波回路310では入力された中間周波数帯送信データに無線周波数帯(F1)の信号を付加することにより高周波増幅し、アンテナ311に出力する。高周波回路310は無線周波数帯送信データを増幅するためのパワーアンプを有している。本実施例ではFSK変調であるため、増幅効率のよいC級アンプを用いることができる。制御部300は、無線通信装置102の機能ブロックに対して所定の制御を行う。
【0020】
図2に示したように、本実施例では基地局は4値FSK変調をAマッピングまたはBマッピングを用いて行う。このため、Aマッピングに基づく4値FSK変復調を行う4値FSK処理部306とBマッピングに基づく4値FSK変復調を行う4値FSK処理部307とを有しており、選択・分配部305,308により、信号の入出力の切り替えを設定できるようになっている。信号の入出力の切り替えは制御部300によって行う。基地局101が設置された段階で、当該基地局の送信データの変調にAマッピングを用いるか、Bマッピングを用いるかは固定される。なお、選択・分配部305,308、4値FSK処理部306,307、VCO309を含んで変調・復調部312が構成される。
【0021】
また、基地局からの発信は、中央制御装置120に接続される複数の基地局が中央制御装置120からの網タイミング信号に同期して行う。
図4を用いて説明する。
図4には、クロック信号波形401(基地局A,B共通)、基地局Aで受信される網タイミング信号波形402、基地局Aが発信する発信タイミング波形403、基地局Bで受信される網タイミング信号波形404、基地局Bが発信する発信タイミング波形405を示している。中央制御装置120から基地局の発信タイミングを制御するための信号である網タイミング信号は、中央制御装置120から基地局それぞれへの伝搬距離の相違等に起因して、各基地局で受信されるタイミングに位相差が生じる。このため、基地局にはこの位相差を除去して各基地局が同期して下り信号を発信するように遅延調整回路201を設けられている。すなわち、基地局Aの遅延調整回路201は受信した網タイミング信号を遅延時間D
A遅延させ、基地局Bの遅延調整回路201は受信した網タイミング信号を遅延時間D
B遅延させることにより、基地局Aの発信タイミングと基地局Bの発信タイミングとを同期させることができる。各基地局において、網タイミング信号を遅延させる遅延量は、基地局が設置された段階で網タイミング信号の各基地局の遅延量を計測し、設定しておけばよい。
【0022】
次に、受信機能について説明する。アンテナ311で受信された無線周波数帯(F2)の信号を高周波回路310にて中間周波数帯受信信号にダウンコンバージョンする。変調・復調部312では、VCO309にて中間周波数帯受信信号を周波数・電圧変換を行い、4値FSK処理部306または4値FSK処理部307にて周波数検出し、データ「00」「01」「10」「11」への割り付けを行うことで、シリアルビット配列化された無線フレームに変換する。シリアルビット配列化された無線フレームを符号化・復号化部304にて逆変換(デインターリーブ、誤り復号化)することで、受信データを得られる。受信データが音声データである場合には、音声解凍部303で復号化し、さらにオーディオインタフェース部301でアナログ音声信号へ変換する。
【0023】
車上局は同時に発信しないので、車上局が送信信号を4値FSK変調するにあたり、Aマッピングを用いるかBマッピングを用いるかはあらかじめ、列車無線システムにおいて決定しておく。このため、受信信号は、車上局が使用しているマッピングに対応する4値FSK処理部306または4値FSK処理部307に入力されるよう、選択・分配部305,308により、信号の入出力の切り替えを設定できるようになっている。
【0024】
図5に、車上局111の機能ブロック図を示す。基地局の無線通信装置102と車上局の無線通信装置112の送受信のための信号処理は同等であり、同等の機能ブロックについては
図3と同じ符号を付して、説明は省略する。基地局と機能面で相違するのは、基地局と異なり中央制御装置からの制御信号に同期する必要がないので、関連する機能ブロックがないことと、2つの基地局間の干渉エリアにおいても基地局からの信号を正確に受信するために固有の制御を行う制御部500を有する点である。
【0025】
車上局111からの送信は、基地局により指定されたタイミングで、また列車無線システムであらかじめ定められたマッピングによって4値FSK変調を行うことによりなされる。制御部500により、送信信号があらかじめ定められたマッピングに対応する4値FSK処理部306または4値FSK処理部307に入力されるよう、選択・分配部305,308の切り替えが設定される。
【0026】
車上局111における基地局からの信号の受信について説明する。まず、車上局111が
図2に示した地点Xに位置している場合について説明する。この場合、車上局では受信信号強度の強い基地局Aからの信号だけがVCO309で周波数・電圧変換されて、選択・分配部308に流される。この段階では車上局は、この信号がAマッピングで変調されたものか、Bマッピングで変調されたものか不明であるため、復調された受信信号は4値FSK処理部306及び4値FSK処理部307の双方に入力される。受信信号がどちらのマッピングで変調されたものかを早期に確定するため、無線フレームのヘッダ部に無線フレームがAマッピングで変調されたものか、Bマッピングで変調されたものかについての変調情報を含めておくことが望ましい。制御部500は、ヘッダ部を解読し、どちらかのマッピングで変調されたものか判定すると、対応する4値FSK処理部306か4値FSK処理部307かのいずれかに受信データが入力されるよう、選択・分配部305,308を切り替える。
【0027】
次に、車上局111が
図2に示した地点Yに位置している場合について説明する。
図6にAマッピング61、Bマッピング62の例を示す。4値FSKマッピングの周波数としてf1〜f4を使用するものとする。4値FSKマッピングの周波数として、例えば、ARIB STD−T102に規定されているマッピングにしたがうならば、f1の周波数偏移を+990Hz、f2の周波数偏移を+330Hz、f3の周波数偏移を-330Hz、f4の周波数偏移を-990Hzとなるように周波数を設定する。
図6に示すようなマッピングを採用している場合、地点Yに位置する車上局では2つの周波数の信号が受信され、2つの基地局は同期して同じ信号を発信しているため、車上局で受信される周波数信号の組み合わせは、
図7に示されるように、(f1、f4)、(f2、f3)、(f1、f3)、(f2、f4)に限定される。なお、2つの基地局が同期して同じ信号を発信していても、車上局とそれぞれの基地局との距離が異なると、車上局で受信される段階では信号に位相差が生じる。しかしながら、2つの周波数の信号を同時受信するのは車上局が基地局間の中間付近にある場合に限られ、車上局と2つの基地局との距離は互いにほぼ等しい。このため、2つの周波数の信号に位相差が生じたとしても僅かであり、僅かな位相差であれば、車上局は2つの周波数の信号をそれぞれ適正に復調できる、すなわち同じシンボルに対する周波数の信号を検波することができる。
【0028】
車上局111の無線通信装置112の制御部500は、
図7に示したような車上局で受信される周波数信号の組み合わせテーブルを保有する。
図6、7に示した例では、変調・復調部312で、(f1、f4)の組み合わせが検出されればデータ「01」に、(f2、f3)の組み合わせが検出されればデータ「00」に、(f1、f3)の組み合わせが検出されればデータ「10」に、(f2、f4)の組み合わせが検出されればデータ「11」に変換することにより、シリアルビット配列化された無線フレームに変換する。シリアルビット配列化された無線フレームは符号化・復号化部304に入力され、それ以降の処理は同じである。
【0029】
4値FSKマッピングは
図6、
図7に示したものに限定されないが、車上局で受信される2つの受信信号の周波数ができるだけ離れていることが望ましい。少なくとも1つのシンボルは隣接する周波数とならないように設定することが望ましい。
図7の例では、4つのシンボル(データ「01」「00」「10」「11」に対応)のうち3つにおいて隣接する周波数とならないように設定されている。車上局で受信される2つの受信信号の周波数が離れているほど、よりロバストな通信が可能になる。
【0030】
列車無線システムを例にして本実施例を説明したが、列車無線以外の無線通信システムにも適用可能なものである。この場合は、車上局は広く移動局と読み替えられる。
【0031】
また、上述した実施例では、複数の基地局が中央制御装置の網クロック信号に同期するように構成したが、複数の基地局間の同期方式はこれに限定されるものではなく、種々の方式を採用してもよい。例えば各基地局がGPS(Global Positioning System)受信機を備え、GPSからの1ppm信号や時刻情報に基づいて同期を取っても良い。さらに、本発明によれば基地局間が高精度に同期を取っていなくてもよく、この場合でも、複数の基地局間の干渉エリアにおいて移動局がより確実に受信できる。
【符号の説明】
【0032】
101:基地局、102:無線通信装置、110:列車、111:車上局、112:無線通信装置、120:中央制御装置、130:通信卓、140:伝送媒体、200:線路、201:遅延調整回路、300,500:制御部、301:オーディオインタフェース部、302:音声圧縮部、303:音声解凍部、304:符号化・復号化部、305,308:選択・分配部、306,307:4値FSK処理部、309:VCO、312:変調・復調部、310:高周波回路、311:アンテナ。