(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、添付図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態に係る搬送装置1は、
図1に示すように、楕円形の周回軌道を有する搬送路10と、搬送路10に沿って移動する複数のグリッパ20と、グリッパ20の走行を制御するコントローラ70と、を備える。搬送装置1は、グリッパ20の一対の把持爪25A,25Bで物品としての袋状の容器80の幅方向の両端を掴みながら搬送路10に沿って搬送するものであり、一対の把持爪25A,25Bで容器80を把持したままで直線路11から反転路15へ、反転路15から直線路11へと搬送できることを特徴とする。
以下、搬送装置1の構成を説明した後に、搬送装置1が奏する効果について説明する。
【0015】
[搬送路10]
搬送路10は、
図1に示すように、搬送路10の主体をなす互いに平行な直線路11,13と、直線路11と直線路13の一方端同士を繋ぐ円弧状の反転路15と、直線路11と直線路13の他方端同士を繋ぐ円弧状の反転路17と、を備える。
直線路11と直線路13は幅方向Wに所定の間隔をあけて対向して配置され、また、反転路15と反転路17は長手方向Lに所定の間隔をあけて対向して配置されている。
【0016】
搬送路10は、直線路11、反転路15及び直線路13の順に、
図1における反時計回りに容器80を搬送する。
搬送路10は、直線路11で受け取った容器80を、直線路11、反転路15、直線路13の順で搬送し、直線路11の処理領域A及び直線路13の処理領域Bでそれぞれ所定の処理を行う。処理領域Bで処理を終えた容器80は、反転路17に到る前に直線路13から下流側に受け渡される。
【0017】
搬送路10は、直線路11,13及び反転路15,17からなる周回軌道上に、リニアモータの一方の要素である電磁コイルが設けられている。リニアモータの他方の要素である永久磁石は、それぞれのグリッパ20の可動子21A,21Bに設けられており、搬送路10とグリッパ20によりリニアモータが構成される。
【0018】
搬送路10は、直線路11を搬送されてきた容器80を、グリッパ20で把持したままで反転路15を搬送することができる。これを可能にするのは、グリッパ20が反転路15に到るとグリッパ20に付随する傾転機構30が動作するからである。
【0019】
[グリッパ20]
グリッパ20は、容器80を掴みながら搬送路10を移動して、容器80を搬送する。
図1に示すように、搬送装置1は搬送路10に沿って複数のグリッパ20が設けられており、それぞれのグリッパ20が搬送路10とともにリニアモータを構成しているので、それぞれのグリッパ20は、搬送路10を独立して移動が制御される。
【0020】
グリッパ20は、
図1及び
図2に示すように、一対の可動子21A,21Bと、それぞれの可動子21A,21Bに設けられるアーム23A,23Bと、それぞれのアーム23A,23Bに設けられる把持爪25A,25Bと、を備える。
【0021】
可動子21A,21Bは、搬送路10に沿って移動するものであり、それぞれがリニアモータの要素である永久磁石を備える。したがって、可動子21Aと可動子21Bは、容器80を搬送するときには動作をともにするが、それぞれが独立して移動速度の制御がなされる。例えば、コントローラ70は、可動子21Aを可動子21Bよりも速く走行させることができるし、この逆に可動子21Aを可動子21Bよりも遅く走行させることもできる。
【0022】
可動子21A,21Bは、直線路11、直線路13、反転路15及び反転路17を通じて、搬送路10に対する姿勢が一定で搬送路10を走行する。具体的には、可動子21A,21Bは、搬送路10に対する直交の姿勢を維持して搬送路10を走行する。このことが、反転路15における容器80の把持不良を招く要因になるが、第1実施形態はグリッパ20を傾ける機能を有するために、反転路15においても、グリッパ20が容器80を把持したまま走行できる。
【0023】
アーム23A,23Bは、その根元部分が可動子21A,21Bに対して揺動可能に設けられ、その先端部分に一対の把持爪25A,25Bが設けられる。
アーム23A,23Bは、それぞれが可動子21A,21Bの走行に伴って搬送路10に沿って走行し、把持爪25A,25Bを介して容器80を搬送する。アーム23A,23Bは、搬送路10の中の直線路11,13を走行するときには直線路11,13に対してその軸線方向が直交し互いに平行をなしている。ところが、アーム23A,23Bは、反転路15を走行するときには、互いに対向する内側に傾く。
【0024】
把持爪25A,25Bは、それぞれが容器80の幅方向の両端を把持する。
把持爪25A,25Bは、図示を省略する駆動源により開閉が制御され、閉じたときに容器80を把持し、開くと把持を解いて例えば他の搬送装置に受け渡す。
【0025】
[傾転機構30]
傾転機構30は、カム機構を備え、グリッパ20が直線路11から反転路15へ移動するときに、アーム23A,23Bを内側に傾かせることで、グリッパ20で容器80を把持する部分の間隔を直線路11のときと同じに維持する。以下、
図2及び
図3を参照して傾転機構30を説明する。
【0026】
傾転機構30は、
図2に示すように、反転路15に沿って設けられる円弧状をなすカムレール45とカムフォロア35A,35Bが相互に作用することにより、アーム23A,23Bを内側に傾かせる。傾転機構30は、
図3(c),(d)に示すように、2本のカムレール45が、鉛直方向Vに所定の間隔を隔てて設けられている。なお、グリッパ20が容器80を把持しない反転路17においては、グリッパ20は容器80を把持しないので、アーム23A,23Bを傾かせる必要がないので、反転路17にはカムレール45が設けられていない。
【0027】
傾転機構30は、アーム23A,23Bのそれぞれに対応するブラケット31A,31Bを備える。ブラケット31A,31Bは、可動子21A,21B及びアーム23A,23Bを支持するとともに、カムレール45に係合される。
ブラケット31A,31Bは、それぞれがカム支持板32A,32Bを備える。カム支持板32A,32Bは、それぞれがカムフォロア35A,35Bを回転可能に支持する。ブラケット31Aのカム支持板32Aは鉛直方向Vの下側に設けられ、ブラケット31Bのカム支持板32Bは鉛直方向Vの上方に設けられる。
【0028】
ブラケット31A,31Bは、それぞれがガイド板33A,33Bを備える。ガイド板33A,33Bは、グリッパ20が直線路11,13を走行するときに、つるまきばね37A,37Bの影響により、アーム23A,23Bの間隔が必要以上に拡がるのを阻止するために設けられる。
ガイド板33A,33Bは、アーム23A,23B及びブラケット31A,31Bに位置が変わらないように固定され、それぞれがストッパ41A,41Bに突き当たることで、アーム23A,23Bの間隔が拡がるのを阻止する。
【0029】
ブラケット31A,31Bは、それぞれが可動子21A,21Bに回転軸34A,34Bを介して揺動可能に設けられている。ブラケット31A,31Bは、回転軸34A,34Bを中心にして、直線路11,13を走行するときと反転路15,17を走行するときで、可動子21A,21Bに対する姿勢を変える。
【0030】
カムフォロア35A,35Bは、グリッパ20が反転路15を走行するときにカムレール45,45に接するとともに外力を受ける。この外力がそれぞれのカム支持板32A,32Bに回転モーメントMを与えることで、アーム23A,23Bを内側に傾かせる。
【0031】
つるまきばね37A,37Bは、
図3(c),(d)に示すように、それぞれが可動子21A,21Bに一体的に固定されるばね支持突起39A,39Bとアーム23A,23Bに一体的に設けられるばね支持突起38A,38Bとの間に架けられる。
つるまきばね37A,37Bが架けられたアーム23A,23Bは、回転軸34A,34Bよりも外側につるまきばね37A,37Bが配置されているため、
図3(a)に示すように、互いに離れる向き、つまり外側に向けて回転モーメントMが生じている。しかし、ガイド板33A,33Bがストッパ41A,41Bに接することで、アーム23A,23Bが互いに平行をなす位置から外側に傾かないように規制されている。これにより、アーム23A,23Bは、把持爪25A,25Bが定められた間隔で容器80を把持できる。
【0032】
カムレール45は、
図2に示すように、直線路11,13に対応する領域46に比べ、反転路15に対応する領域47は幅が広く形成されている。傾転機構30のカムフォロア35A,35Bは、領域46ではカムレール45に接することなく離れているが、領域47に到ると、カムレール45に突き当たる。
【0033】
以上の構成を有する傾転機構30は以下のように動作する。
図2に示すように、直線路11,13を走行するグリッパ20は、直線路11,13にはカムレール45がないので、アーム23A,23Bは互いに平行をなしている。アーム23A,23Bは、それぞれが外側に向けた回転モーメントMを受けるが、ガイド板33A,33Bがストッパ41A,41Bに突き当たることで、アーム23A,23Bはそれ以上に外側には拡がらない。
一方で、
図2に示すように、反転路15を走行するグリッパ20は、カムフォロア35A,35Bがカムレール45に突き当たり、アーム23A,23Bは回転モーメントMに抗して内側に傾く。
【0034】
直線路11,13を走行するグリッパ20と反転路15を走行するグリッパ20の間隔について言及する。
図7に示すように、直線路11の走行ラインL
Mにおける可動子21A,21Bの間隔を間隔P1とし、反転路15の走行ラインL
Mにおける可動子21A,21Bの円周上の間隔を間隔P2とする。また、直線路11,13を走行するときの把持爪25A,25Bの間隔をQ1、反転路15,17を走行するときの把持爪25A,25Bの間隔をQ2とする。
【0035】
第1実施形態は、傾転機構30を用いて反転路15を走行するときにアーム23A,23Bを内側に傾かせる。したがって、把持爪25A,25Bの間隔を、直線路11を走行するとき及び反転路15を走行するときで等しく、Q1=Q2に維持できる。これにより、アーム23Aとアーム23Bは、反転路15を走行するときにも、互いに平行な状態を維持できる。
また、回転軸34A,34Bの間隔、つまりアーム23A,23Bの反転路15上における間隔も、直線路11を走行するとき及び反転路15を走行するときで等しくP1=P2に維持できる。
【0036】
反転路15を走行するグリッパ20が直線路11,13に移動すると、カムフォロア35A,35Bがカムレール45から離れるので、傾転機構30によるアーム23A,23Bの内側への傾きは解かれる。
【0037】
[第1実施形態の効果]
以上説明したように、搬送装置1は、グリッパ20が直線路11から反転路15に移動すると、傾転機構30が働いて一対のアーム23A,23Bは内側に傾いて、容器80を把持する把持爪25A,25Bの間隔が直線路11のときと同じに維持される。こうして、搬送装置1によれば、直線路11に引き続いて反転路15においても、容器80を把持したまま搬送を続けることができる。
したがって、搬送装置1によれば、直線路11と直線路13の両方に容器80に所定の処理を実行する処理領域Aと処理領域Bを設けることができるので、搬送装置をもう一台設けるのに比べて、設置スペースを省くことができるとともに、コストを抑えることができる。また、一台の搬送装置1により処理領域Aと処理領域Bで連続的に処理できるので、受け渡し動作が必要なもう一台の搬送装置を設けるのに比べて、処理能力が高くなる。
【0038】
しかも、搬送装置1によれば、反転路15においてもアーム23A,23Bが平行をなすので、把持爪25A,25Bと容器80が一直線上に並び、容器80に折れ曲がりを生じさせない。
【0039】
なお、以上では、把持爪25A,25Bの間隔を維持する例を示したが、直線路11のときの間隔よりも狭くても容器80の把持を継続できる。したがって、本発明は、容器80の把持を継続できる限り、把持爪25A,25Bの間隔を維持してもよいし、狭くしてもよい。
また、以上では、アーム23A,23Bの反転路15上における間隔を維持する例を示したが、容器80の把持を継続できる限り、当該間隔を維持してもよいし、狭くしてもよい。
【0040】
[第1実施形態の変形例]
アーム23A,23Bを傾ける機構は、
図2及び
図3に示したものに限らず、
図4及び
図5に示す傾転機構を用いることができる。
図4及び
図5に示す例もカムを用いてアーム23A,23Bに外力を加える傾転機構50を備える点で第1実施形態と共通する。なお、
図4はグリッパ20が直線路11を走行する様子を示し、
図5はグリッパ20が反転路15を走行し、アーム23A,23Bが内側に傾いている様子を示している。
【0041】
変形例に係る傾転機構50は、偏心カム51A,51Bを用い、アーム23A,23Bをカムフォロアとして機能させる。
偏心カム51A,51Bはアーム23A,23Bのそれぞれに対応して設けられる。偏心カム51A,51Bは、外形が円形の部材の一部を切り欠いて平面52A,52Bを形成する。アーム23A,23Bが直立しているときには、
図4に示すように、平面52A,52Bがアーム23A,23Bに取り付けられた板状のフォロア53A,53Bの表面に突き当てられる。
【0042】
傾転機構50は、偏心カム51A,51Bを支持し、偏心カム51A,51Bの中心を回転軸55A,55Bとする揺動アーム54A,54Bを備える。それぞれの揺動アーム54A,54Bは、回転軸55A,55Bから離れる先端側に押圧ロール56A,56Bを備える。押圧ロール56A,56Bが図示を省略するアクチュエータにより外力Fを受けると、揺動アーム54A,54Bは回転軸55A,55Bをそれぞれ時計回り、反時計回りに所定角度だけ回転する。
【0043】
アーム23A,23Bは、後端近傍に傾転軸57A,57Bを備え、この傾転軸57A,57Bを中心に揺動する。
回転軸55Aと傾転軸57Aを支持する支持ブロック62Aが、また、回転軸55Bと傾転軸57Bを支持する支持ブロック62Bが設けられている。支持ブロック62Aは可動子21Aに固定され、支持ブロック62Bは可動子21Bに固定されている。
また、アーム23A,23Bは、後端近傍につるまきばね59A,59Bの一端を支持する支持端58A,58Bを備える。つるまきばね59A,59Bの他端は可動子21A,21Bに設けられる固定端61A,61Bに固定される。
つるまきばね59A,59Bは、アーム23A,23Bが直立していると、支持端58A,58Bと固定端61A,61Bの間に引張力を付与する。
【0044】
さて、グリッパ20が直線路11を走行している間は、押圧ロール56A,56Bは図示を省略するアクチュエータから外力Fを受けない。したがって、アーム23A,23Bは、支持端58A,58Bがつるまきばね59A,59Bからの引張力を受けるので、
図4に示すように、把持爪25A,25Bが設けられる先端側が開く向きに力を受ける。ただし、フォロア53A,53Bが偏心カム51A,51Bで支持されるので、アーム23A,23Bは互いに平行な状態を維持される。
【0045】
グリッパ20が反転路15に移動すると、押圧ロール56A,56Bは図示を省略するアクチュエータから外力Fを受けて、
図5に示すように、図中の上向きに回転する。そうすると、フォロア53A,53Bが回転して変位する偏心カム51A,51Bによりアーム23A,23Bが内側に押し込まれるので、把持爪25A,25Bの間隔を回転軸55A,55Bの間隔よりも狭くできる。
【0046】
以上の通りであり、変形例においても傾転機構50が働いてアーム23A,23Bが内側に傾くので、変形例においても上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
第1実施形態及び変形例において、二つの傾転機構30,50を説明したが、本発明における傾転機構はこれに限るものではなく、アーム23A,23Bのそれぞれに直接的又は間接的に外力を加え、内側に傾かせる機構を広く適用できる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明による第2実施形態にかかる搬送装置2を説明する。
搬送装置2は、反転路15,反転路17において、アーム23A,23Bを可動子21A,21Bに対して傾けるのではなく、可動子21A,21Bの間隔、つまりアーム23A,23Bの間隔を狭くすることで、グリッパ20で容器80を把持したままで直線路11から反転路15まで走行できる。
搬送装置2は、搬送路10とグリッパ20によりリニアモータを構成しており、このリニアモータを利用してアーム23A,23Bの間隔を狭くする。ただし、第2実施形態において、アーム23A,23Bの間隔を狭くするとは、容器80を把持する把持爪25A,25Bの間隔は直線路11から反転路15まで維持するが、可動子21A,21Bの間隔、つまり直線路11上におけるアーム23A,23Bの間隔を狭くすることを意味する。
【0049】
搬送装置2は、搬送装置1が備える構成要素をそのまま踏襲できるので、以下では搬送装置1との相違であるグリッパ20の動作を中心にして第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態の傾転機構30を備えることもできるし、可動子21A,21Bのそれぞれに対してアーム23A,23Bを固定することもできる。
【0050】
さて、
図6及び
図7に示すように、グリッパ20は、直線路11を走行するときには、アーム23Aとアーム23Bは平行をなしているとともに、アーム23A,23Bはその軸線方向が直線路11に直交する。
【0051】
また、グリッパ20が直線路11を走行するときの、可動子21Aと可動子21Bの走行ラインL
M上の間隔をP1とし、把持爪25Aと把持爪25Bの間隔をQ1とする。グリッパ20は、コントローラ70からの指示にしたがって、この間隔P1,Q1を維持したままで直線路11を走行する。可動子21A,21Bのそれぞれの走行速度をV
A1,V
B1とすると、直線路11においては走行速度V
A1と走行速度V
B1が等しい。
【0052】
次に、グリッパ20は、
図6及び
図7に示すように、反転路15においては、アーム23Aとアーム23Bの平行が解かれ互いに傾く。反転路15における可動子21Aと可動子21Bの間隔をP2とし、把持爪25Aと把持爪25Bの間隔をQ2とする。可動子21A,21Bのそれぞれの走行速度をV
A2,V
B2とすると、反転路15においても走行速度V
A2と走行速度V
B2が等しい。
【0053】
以上の直線路11におけるグリッパ20の動作制御と反転路15におけるグリッパ20の動作制御は、可動子21A,21Bの走行速度を制御する制御αと、可動子21A,21Bの位置を制御する制御βと、がある。以下、制御α、制御βの順に説明する。
【0054】
[制御α]
いま、
図7に示すように、直線路11を走行するグリッパ20が反転路15に移動する。
グリッパ20は、直線路11において、可動子21AがV
A1で走行し、可動子21BがV
B1で走行している。なお、V
A1とV
B1は等しい。
グリッパ20は、反転路15に移動すると、グリッパ20で容器80を保持するために、間隔P2を間隔Q2よりも狭くする。このグリッパ20は、可動子21AがV
A2で走行し、可動子21BがV
B2で走行するが、間隔P2を間隔P1よりも狭くするには、直線路11で同じ速度で走行している可動子21Aと可動子21Bの一方又は双方の走行速度を調整すればよい。具体的には、以下の選択肢がある。
【0055】
[第1パターン]:可動子21Aの走行速度を遅くする。
先行して搬送路10を走行する可動子21Aが直線路11から反転路15に移動するときに、以下に示すように走行速度を遅くすることで、可動子21Aと可動子21Bの間隔P2を狭くする。つまり、以下が成り立つように可動子21A,21Bの走行を制御する。
走行速度V
A1>走行速度V
A2
【0056】
後続の可動子21Bは、直線路11から反転路15に移動するときに、走行速度を維持してもよいし、走行速度を速くしてもよい。つまり、以下が成り立つように可動子21A,21Bの走行を制御する。
走行速度V
B1≦走行速度V
B2
【0057】
[第2パターン]:可動子21Bの走行速度を速くする。
可動子21Aの後に続いて搬送路10を走行する可動子21Bが直線路11から反転路15に移動するときに走行速度を速くすることで、可動子21Aと可動子21Bの間隔を狭くする。つまり、以下が成り立つように可動子21A,21Bの走行を制御する。
走行速度V
B1<走行速度V
B2
【0058】
このとき、先行する可動子21Aは、直線路11から反転路15に移動するときに、走行速度を維持してもよいし、走行速度を遅くしてもよい。つまり、以下が成り立つように可動子21A,21Bを制御する。
走行速度V
A1≧走行速度V
A2
【0059】
第1パターン,2における可動子21A,21Bの以上の制御は、容器80を把持する把持爪25A,25Bの間隔を直線路11から反転路15まで維持することを前提としており、この前提が実現できるように間隔P1,間隔P2を制御する。より具体的な制御する手順については、制御βの説明の後に行う。
【0060】
[制御β]
次に、可動子21A,21Bの位置を制御する制御βについて、
図7を参照して説明する。
いま、
図7に示すように、直線路11における可動子21A,21Bの原点位置Oを基準とする走行ラインL
M上の位置をX
A1,X
B1とする。また、反転路15に移動した後の可動子21A,21Bの原点位置Oを基準とする走行ラインL
M上の位置をX
A2,X
B2とする。
【0061】
直線路11の走行ラインL
Mにおける可動子21Aと可動子21Bの間隔P1と反転路15の走行ラインL
Mにおける可動子21Aと可動子21Bの円周上の間隔P2は、以下のとおりである。
間隔P1=X
A1−X
B1 P1=一定
間隔P2=X
A2−X
B2 P2=一定
【0062】
そして、直線路11から反転路15に移動するのに際し、可動子21Aと可動子21Bの間隔を狭くするために、間隔P1より間隔P2を小さくする。つまり、以下が成立するように可動子21Aと可動子21Bの動作を制御する。
間隔P1>間隔P2
【0063】
[可動子21A,21Bの間隔制御例]
次に、制御α及び制御βにおいて、可動子21A,21Bの間隔をどの程度に狭くするかの一つの基準について
図7を参照して説明する。
【0064】
図7に示すように、搬送路10において、可動子21A,21Bが走行する軌跡を走行ラインL
Mとし、グリッパ20に把持される容器80が走行する軌跡を走行ラインL
Wとする。
反転路15において、曲率の中心から走行ラインL
Mまでの距離(半径)をrとし、曲率の中心から走行ラインL
Wまでの距離(半径)をRとする。
【0065】
直線路11の走行ラインL
Mにおける可動子21A,21Bの間隔を間隔P1とし、反転路15の走行ラインL
Mにおける可動子21A,21Bの円周上の間隔を間隔P2とする。
直線路11及び反転路15の走行ラインL
Wにおける把持爪25A,25Bの間隔Q2は、間隔Q1と等しいか、又は、間隔Q1より狭く維持される。
【0066】
以上の前提の下、直線路11から反転路15にグリッパ20が移動するときに、先行する可動子21Aが反転路15に達すると、以下の式(1)を満足するように、可動子21Aと可動子21Bの間隔を制御α又は制御βのいずれかで調整する。
P2≦2r×sin
−1(P1/2R)…(1)
【0067】
以上の式(1)を満足するように可動子21Aと可動子21Bの動作を制御しながらグリッパ20は反転路15を走行し続けるが、後続の可動子21Bが反転路15を抜け出るまで、式(1)の制御を続ける。可動子21A及び可動子21Bの両者が直線路13に達すると、可動子21Aと可動子21Bの間隔を元に戻す。
【0068】
[第2実施形態の効果]
以上説明したように、搬送装置2は、可動子21Aと可動子21Bの間隔を調整することにより、直線路11に引き続いて、円弧状の搬送路を有する反転路15においても、容器80を把持したまま搬送を続けることができる。よって、搬送装置2によれば、直線路11の処理領域Aと直線路13の処理領域Bの両方で容器80に処理を実行できる。
したがって、搬送装置2においても、搬送装置をもう一台設けるのに比べて、設置スペースを省くことができるとともに、コストを抑えることができる。また、一台の搬送装置1により処理領域Aと処理領域Bで連続的に処理できるので、受け渡し動作が必要なもう一台の搬送装置を設けるのに比べて、処理能力が高くなる。
【0069】
しかも、搬送装置2は、リニアモータを構成する可動子21Aと可動子21Bの間隔を調整するだけで、反転路15でも容器80の把持を継続できるので、カムなどの機械的な要素を設ける必要がない。したがって、搬送装置2は、装置の構成が簡易であり、製造コストを抑えることができるとともに、メンテナンスの負担が軽くてすむ。
【0070】
以上、本発明の好ましい形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明は、機械的な要素によりアーム23Aとアーム23Bを内側に傾ける第1実施形態と、リニアモータにより可動子21A,21Bの動作を制御することでアーム23Aとアーム23Bの間隔を調整する第2実施形態を組み合わせることができる。