特許第6892308号(P6892308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892308
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】食品用容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/02 20060101AFI20210614BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20210614BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20210614BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20210614BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20210614BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210614BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   B29C51/02
   B29C51/10
   B29C51/08
   B29C51/14
   B32B27/20 Z
   B32B27/00 H
   B65D1/26 120
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-73266(P2017-73266)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171876(P2018-171876A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】左近 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 侑哉
(72)【発明者】
【氏名】東 清久
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−251689(JP,A)
【文献】 特開平11−334715(JP,A)
【文献】 特開2013−180790(JP,A)
【文献】 特開2007−326630(JP,A)
【文献】 特開2002−273840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/02
B29C 51/08
B29C 51/10
B29C 51/14
B32B 27/00
B32B 27/20
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムを加工することによって食品用容器を製造する方法であって、
(1)基材フィルムに対し、a)酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化亜鉛の少なくとも1種の疎水性粒子及びb)酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化亜鉛の少なくとも1種の酸化物微粒子の表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を含む被覆層が形成されてなる複合粒子である疎油性粒子の少なくとも1種の付着防止性粒子を含む塗工液を塗布及び乾燥することにより、基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなる付着防止性フィルムを得る第1工程、及び
(2)押圧温度120℃超えかつ150℃未満、押圧圧力2kgf/cm以上15kgf/cm以下及び押圧時間5秒超えかつ10秒未満の条件下にて、付着防止粒子が付着した面を押圧しながら付着防止性フィルムを凹状に成形するに際し、上部金型及び下部金型を用いて付着防止性フィルムを押圧することにより当該フィルムを多段階で折り曲げながら成形することにより成形体を得る第2工程
を含むことを特徴とする食品用容器の製造方法。
【請求項2】
塗工液として、疎水性粒子又は疎油性粒子が溶媒中に分散した分散液の形態で使用する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第2工程において、成形体側面をヒダ状に加工する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記基材フィルムの材質は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及び紙の少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
第1工程に先立って、基材フィルムの塗工液を塗布する面に対し、充填粒子及び熱可塑性樹脂を含む下地層を予め形成する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
充填粒子が、平均粒径D50が10〜50μmであり、融点が150〜350℃である樹脂ビーズである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
樹脂ビーズの比重が0.93〜1.06である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
乾燥後の下地層の形成量が0.5〜10g/mとなるように下地層を形成する、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムから食品用容器を製造する方法に関する。特に、本発明は、カップ状に成形された食品用の成形容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケット等で販売されている弁当類、惣菜類、菓子類等の加工食品は、種々の包装体によって包装されている。この中でも、例えばみたらし団子の蜜(あん)、おはぎのあんこ等に代表されるように、水分が多く、しかも粘性の高い食材が表面に露出している食品は、それを取り出す際に包装体に付着して取り出しにくくなるため、予め成形容器(トレイ等)に載せた状態で包装体に充填されている。
【0003】
一般に、上記のような加工食品を収容する容器の一つとして、フィルム(又はシート)を熱加工することでカップ状に成形された容器が汎用されている。このタイプの容器は、比較的容易かつ低コストで大量生産できるうえ、しかも廃棄時には紙のようにコンパクトに折り畳むことができる。このような容器としては、例えば高密度ポリエチレンフィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる二層構造を有することを特徴とする食品用容器(特許文献1)等が知られている。ところが、これらの容器にみたらし団子等の加工食品を載せた場合、容器にその食材が多量に付着してしまう。
【0004】
これに対し、付着防止性を有する容器として、疎水性酸化物微粒子を含有するオレフィン系共重合体樹脂からなる撥水層を備えた容器(特許文献2)等が提案されている。また例えば、熱可塑性樹脂を含有する層の表面の少なくとも一部に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している積層体を包装材料として用いること(特許文献3)等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−326630号公報
【特許文献2】国際公開WO2014/087695公報
【特許文献3】特開2011−093315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のような容器は、その撥水層に樹脂成分が比較的多量に含まれるため、内容物と樹脂成分との接触が多くなる結果、例えば水分が多くて粘性の高い食材に対しては十分な付着防止効果が得られない。このため、内容物を容器から取り出しにくくなるほか、取り出せたとしても内容物の表面の一部が当該容器に付着して脱離し、食品の外観が悪くなってしまうという問題がある。また、内容物を取り出す際に内容物が容器に引っ付いて容器が大きく変形してしまい、摂食中に当該容器を皿代わりに使えなるという欠点もある。
【0007】
特許文献3に記載の包装材料は、高い付着防止効果が得られるものの、特許文献1に開示されているような保形性のある容器に成形し、粘性の高い食品と常時接触するような状態で当該容器中に収容された場合、経時的に食品が容器に付着しやすくなるため、さらなる改善の余地がある。
【0008】
従って、本発明の主な目的は、良好な保形性とともに、粘性の高い食材が常に接していても高い付着防止効果を発揮できる食品用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の製造工程を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の食品用容器の製造方法に係る。
1. 基材フィルムを加工することによって食品用容器を製造する方法であって、
(1)基材フィルムに対し、疎水性粒子及び疎油性粒子の少なくとも1種の付着防止性粒子を含む塗工液を塗布及び乾燥することにより、基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなる付着防止性フィルムを得る第1工程、及び
(2)押圧温度120℃超えかつ150℃未満、押圧圧力2kgf/cm以上15kgf/cm以下及び押圧時間5秒超えかつ10秒未満の条件下にて、付着防止粒子が付着した面を押圧しながら付着防止性フィルムを凹状に成形することにより成形体を得る第2工程
を含むことを特徴とする食品用容器の製造方法。
2. 第2工程において、上部金型及び下部金型を用いて付着防止性フィルムを押圧することにより当該フィルムを折り曲げながら成形する、前記項1に記載の製造方法。
3. 第2工程において、成形体側面をヒダ状に加工する工程を含む、前記項1又は2に記載の製造方法。
4. 前記基材フィルムの材質は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及び紙の少なくとも1種を含む、前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. 第1工程に先立って、基材フィルムの塗工液を塗布する面に対し、充填粒子及び熱可塑性樹脂を含む下地層を予め形成する工程をさらに含む、前記項1〜4のいずれか記載の製造方法。
6. 充填粒子が、平均粒径D50が10〜50μmであり、融点が150〜350℃である樹脂ビーズである、前記項5に記載の製造方法。
7. 樹脂ビーズの比重が0.93〜1.06である、前記項6に記載の製造方法。
8. 乾燥後の下地層の形成量が0.5〜10g/mとなるように下地層を形成する、前記項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な保形性とともに、粘性の高い食材が常に接していても高い付着防止効果を発揮できる食品用容器を提供することができる。特に、本発明では、付着防止性粒子として疎水性粒子及び/又は疎油性粒子を含む塗工液を塗布した後に特定の条件下で成形しているため、これらの粒子が基材フィルム表面に強固に固定された容器を製造することができる。これにより、少なくとも容器内面に高い付着防止性を付与できる。その結果、たとえ粘性の高い食品が常に接触するような状態で容器中に収容されたとしても、食品の容器内面への付着を効果的に抑制ないしは防止することができる。
【0012】
また。フィルムから成形された成形体であるにもかかわらず、フィルム状に戻ることなく、良好な保形性を有しており、内容物である食品をしっかり保持することができる。その一方で、フィルムから成形されているので、廃棄時には折り畳んだり、丸めたりすることで容易にコンパクト化することができる。
【0013】
このような特徴をもつ食品用容器は、食品を載せた状態で袋体に充填される製品に使用できるほか、例えば弁当のおかず用カップ、店頭販売での大福餅、みたらし団子、たこ焼き等のように食品を容器に載せてそのまま食するような用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】上部金型及び下部金型を用いて本発明の食品用容器を製造する工程の概要を示す図である。
図2】上部金型及び下部金型の一例を示す斜視図である。
図3】上部金型及び下部金型の断面構造を示す図である。
図4】本発明の食品用容器の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の食品用容器の断面構造を示す図である。
図6】基材フィルムを多段階で折り曲げ加工する手順の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.食品用容器の製造方法
本発明の製造方法は、基材フィルムを加工することによって食品用容器を製造する方法であって、
(1)基材フィルムに対し、疎水性粒子及び疎油性粒子の少なくとも1種の付着防止性粒子を含む塗工液を塗布及び乾燥することにより、基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなる付着防止性フィルムを得る第1工程、及び
(2)押圧温度120℃超えかつ150℃未満、押圧圧力2kgf/cm以上15kgf/cm以下及び押圧時間5秒超えかつ10秒未満の条件下にて、付着防止粒子が付着した面を押圧しながら付着防止性フィルムを凹状に成形することにより成形体を得る第2工程
を含むことを特徴とする。
【0016】
第1工程
第1工程では、基材フィルムに対し、疎水性粒子及び疎油性粒子の少なくとも1種の付着防止性粒子を含む塗工液を塗布及び乾燥することにより、基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなる付着防止性フィルムを得る。
【0017】
基材フィルムの材質としては、特に限定されず、樹脂製フィルムに限定されない。例えば、公知の食品用容器で採用されている各種の材料をいずれも採用することができる。本発明では、特に合成樹脂フィルム及び紙の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0018】
合成樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリブチレンテレフタレート系フィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン系フィルム(特に高密度ポリエチレン系フィルム等)、ポリプロピレン系フィルム等のポリオレフィン系フィルム等を挙げることができる。
【0019】
従って、本発明では、例えばポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリプロピレン系フィルム及び紙の少なくとも1種を含む基材フィルムを好適に用いることができる。これらは、いずれも公知又は市販のものを用いることもできる。
【0020】
上記のポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム等を構成するポリオレフィンとしては、オレフィン単量体の共重合体からなるコポリマーを好適に使用することができるが、本発明の効果を妨げない範囲内でオレフィン単量体以外のモノマー単量体との共重合体を含んでも良い。
【0021】
さらに、合成樹脂フィルムは、上記のような樹脂成分を主成分として(特に通常50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは95重量%以上)含むフィルムであれば良いが、本発明の効果を妨げない範囲内において他の成分(他の樹脂成分、フィラー、顔料等)が含まれていても良い。また例えば、他の樹脂成分が混合された混合樹脂フィルムのほか、ポリマーアロイフィルム等も用いることができる。
【0022】
また、基材フィルムは、未延伸フィルム又は延伸フィルムのいずれでも良いが、強度、耐熱性等の点において延伸フイルム(特に二軸延伸フィルム)が好ましい。本発明では、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム等を好適に用いることができる。
【0023】
基材フィルムは、単層タイプであっても良いし、複数の層が積層されてなる多層タイプであっても良い。多層タイプの場合、複数のフィルム又はシートが貼り合わせられた積層構造であると、より高い保形性が得られるという点で望ましい。
【0024】
多層タイプの基材フィルムとしては、合成樹脂フィルム又は紙の2枚以上が隣接して又は他の層を介して積層されてなる積層体を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリプロピレン系フィルム又は紙を芯材フィルムとし、その少なくとも一方の面に他の層が1層又は2層以上形成されてなる積層体を好適に用いることができる。他の層としては、特に限定されず、例えば印刷層、オーバーコート層、接着剤層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層等が挙げられる。従って、例えば基材フィルムが内容物と接する側の面とは反対の面、すなわち容器として成形された場合に外部に露出する側の面に印刷層、オーバーコート層等を形成したり、あるいは各種フィルム等を適宜積層することができる。また、多層タイプである場合、その基材フィルムの最表面又は中間層として印刷層を備えていても良い。
【0025】
特に、本発明において、基材フィルムとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを用いる場合も、単層タイプ又は多層タイプのいずれの形態でも使用することができる。特に、多層タイプのフィルムとしては、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを芯材とする場合、順に印刷層、接着剤層及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを含む積層体を基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0026】
層間を接合するために接着剤層を形成する場合、使用できる接着剤としては、特に食品用途で使用できるものであれば限定的ではなく、例えばドライラミネート接着剤等を好適に用いることができる。ドライラミネート接着剤の成分としては、例えばポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。また、性状も限定的でなく、溶剤型、無溶剤型、水性型等のいずれも使用することができる。例えば、本発明では、2枚以上のポリエチレンテレフタレート系フィルム(特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム)をポリウレタン系ドライラミネート接着剤層を介して積層されてなる積層体を基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0027】
基材フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、通常は9〜75μmであることが好ましく、特に12〜38μmであることがより好ましい。基材フィルムの厚みが9μm未満であると、食品用成形容器として保形し難くなることがあるほか、載せられた食品を保形できなくなるおそれがある。また、前記厚みが75μmを超える場合は、成形に時間がかかり、生産性を著しく低下させるおそれがある。なお、前記厚みは、基材フィルムが多層タイプである場合は、その合計厚みをいう。
【0028】
基材フィルムは、必要に応じて、成形工程で容器形状に成形しやすいように、塗膜形成工程の前又は後で特定の形状に加工(裁断等)を行っても良い。例えば、円形の底面及び側面からなる容器を成形する場合は、基材フィルムを円形にカットしておいても良い。
【0029】
基材フィルムに適用する塗工液としては、疎水性粒子及び疎油性粒子の少なくとも1種の付着防止性粒子を含む塗工液を用いる。これにより、食品用容器には撥水性及び/又は撥油性が付与され、水分が多くて粘性の高い食品であっても、食品の付着等をより効果的に抑制ないしは防止することができる。以下、前記塗工液によって形成される層を「付着防止層」という。
【0030】
これらの付着防止性粒子は、内容物の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、容器に載せる食品が、脂肪分が少なく、水分が比較的多い食品の場合には、基材フィルム表面に疎水性酸化物微粒子を塗工すれば良い。一方、容器に載せる食品が、脂肪分が比較的多い食品の場合には、酸化物微粒子表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を含む被覆層を備える複合粒子を疎油性粒子として基材フィルムに付与することが好ましい。
【0031】
疎水性粒子としては、特に制限されないが、食品用に適するという点より、疎水性酸化物微粒子を好適に用いることができる。疎水性酸化物微粒子としては、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の粒子(粉末)の少なくとも1種を用いることができる。より好ましくは、酸化ケイ素粒子であることが好ましい。
【0032】
これらの粒子は、撥水性等の見地より微粒子であることが好ましく、特に平均一次粒子径が5〜50nmであることがより好ましく、特に7〜30nmであることが最も好ましい。
【0033】
このようなナノレベルの粒子も公知又は市販のものを使用することができる。例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY50」、「AEROSIL NY50」、「AEROSIL RY200S」、AEROSIL RY300」「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R711」、「AEROSIL R7200」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)、「サイロホービック100」「サイロホービック200」「サイロホービック603」(以上、富士シリシア化学株式会社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
【0034】
この中でも、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。特に、より優れた付着防止効果が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0035】
また、疎水性粒子は、三次元網目状構造を有する多孔質層を形成していることが好ましい。すなわち、実質的に疎水性粒子からなる多孔質層を形成することにより、よりいっそう高い非付着性(撥水性9を得ることができる。この場合の多孔質層の厚みは0.1〜5μm程度が好ましく、0.2〜2.5μm程度がさらに好ましい。このようなポーラスな層状態で疎水性粒子が付着・固定されることにより、当該層に空気を多く含むことができ、より優れた非付着性を発揮することができる。
【0036】
なお、疎水性粒子の一次粒子平均径の測定は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を用いて実施することができる。より具体的には、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で撮影し、その写真上で200個以上の粒子の直径を測定し、その算術平均値を算出することによって求めることができる。
【0037】
疎油性粒子としては、限定的ではないが、特に酸化物微粒子の表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を含む被覆層が形成されてなる複合粒子を用いることができる。このような複合粒子により形成される塗膜(付着防止層)を基材フィルムに付与することにより、脂肪分が比較的多い内容物であっても、容器内面への内容物の付着を効果的に抑制することができる。
【0038】
上記複合粒子のコアとなる酸化物微粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の粒子(粉末)の少なくとも1種を用いることができる。これら粒子も、公知又は市販のものを使用することができる。酸化ケイ素としては、例えば製品名「AEROSIL 200」(「AEROSIL」は登録商標。以下同じ)、「AEROSIL 130」、「AEROSIL 300」、「AEROSIL 50」、「AEROSIL 200FAD」、「AEROSIL 380」(以上、日本アエロジル(株)製)等が挙げられる。酸化チタンとしては、例えば製品名「AEROXIDE TiO T805」(エボニック デグサ社製)等が挙げられる。酸化アルミニウムとしては、例えば製品名「AEROXIDE Alu C 805」(エボニック デグサ社製)等が挙げられる。このような酸化物微粒子表面に対して上記のような特定の樹脂からなる被覆層が形成されている複合粒子を用いることによって、酸化物微粒子との親和性に優れるがゆえに比較的密着性の高い強固な被覆層を当該粒子表面上に形成できるととともに、内容物に対する高い非付着性を発現させることができる。
【0039】
付着防止層中における付着防止性粒子の含有量は、所望の撥水性又は撥油性等に応じて通常は10〜100重量%の範囲内で設定することができる。通常は前記含有量を100重量%に近づければ(例えば99〜100重量%)それだけ高い撥水性及び撥油性を得ることができる。すなわち、付着防止層は、実質的に付着防止性粒子からなることが最も好ましい。
【0040】
塗工液に使用する溶媒は特に制限されず、水、エタノール等のように食品製造で使用されている溶媒を1種又は2種以上で使用することができる。この場合、塗工液としては、疎水性粒子又は疎油性粒子が溶媒中に分散した分散液の形態で使用することが好ましい。なお、塗工液中には、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて分散剤、着色剤、バインダー、脱泡剤等が含まれていても良い。
【0041】
塗工液中における疎水性粒子及び疎油性粒子の含有量は特に制限されないが、一般的には5〜200g/L(リットル)程度の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0042】
塗工液を基材フィルムに塗布する方法は、特に限定されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、刷毛塗り等の公知の方法を適宜採用することができる。なお、疎水性粒子及び/又は疎油性粒子は、分散媒中に混ぜられていると、均一に基材フィルムに塗工することができるため好ましい。
【0043】
塗布量(乾燥後重量)は、限定的ではないが、通常0.01〜10g/mとすることが好ましく、特に0.2〜1.5g/mとすることがより好ましく、さらに0.2〜1g/mとすることが最も好ましい。上記範囲内に設定することによって、より確実に付着防止性粒子からなる多孔質層を形成することができる結果、より優れた非付着性が長期にわたって得ることができる上、微粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。
【0044】
塗布後は、塗布面を乾燥することにより、基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなる付着防止性フィルムを得ることができる。乾燥方法は、特に制限されず、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱乾燥する場合は、通常は60〜190℃、特に80〜150℃とすれば良い。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は3〜30秒程度とすれば良い。
【0045】
付着防止性粒子を含む層(付着防止層)の撥水性は、通常は純水(25℃)の接触角が140度以上、特に150度以上であることが好ましい。また、撥油性については、食用油:オリーブ油(25℃、100℃)の接触角が130度以上、特に140度以上であることが好ましい。さらに、塗膜の落下角(オリーブ油)は限定的ではないが、通常は5〜20度とすることが好ましい。
【0046】
下地層形成工程
本発明では、第1工程に先立って、基材フィルムの塗工液を塗布する面に対し、充填粒子及び熱可塑性樹脂を含む下地層を形成する工程をさらに含む製造方法も包含する。このように、付着防止粒子と基材フィルムとの間に下地層を介在させることによって、比較的平滑な基材フィルム上に微細な凸凹を付与できる結果、食品と容器内面との接触面積を少なくすることができるので、より高い非付着性を得ることができる。
【0047】
下地層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば1)熱可塑性樹脂及び充填粒子を含む下地液を基材フィルムに塗布及び乾燥する工程を含む方法(第1方法)、2)充填粒子及び熱可塑性樹脂を含むフィルムを基材フィルムに積層する工程を含む方法(第2方法)等が挙げられる。
【0048】
第1方法
第1方法では、熱可塑性樹脂及び充填粒子を含む下地液を基材フィルムに塗布及び乾燥する工程を含む方法により下地層を形成する。
【0049】
下地液は、充填粒子及び熱可塑性樹脂を含むものであれば良い。例えば、有機溶剤に熱可塑性樹脂が溶解又は分散してなる溶液又は分散液中に充填粒子が分散した下地液を用いることができる。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、例えば公知の接着性の樹脂成分を含むものを使用することができる。例えば、公知のシーラントフィルムの構成成分のほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤に用いられる成分を採用することができる。
【0051】
より具体的には、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等の接着剤等を挙げることができる。より具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、アクリル−塩酢ビ共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリブテンポリマ−、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他の熱可塑性樹脂のほか、これらのブレンド樹脂、これらを構成するモノマーの組合せを含む共重合体、変性樹脂等を例示することができる。従って、例えばアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物等も好適に用いることができる。
【0052】
下地液中における熱可塑性樹脂の含有量は、限定的ではないが、通常は5〜40重量%程度とし、好ましくは10〜30重量%とすれば良い。
【0053】
充填粒子としては、有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子を採用することができる。
【0054】
無機成分としては、例えば1)アルミニウム、銅、鉄、チタン、銀、カルシウム等の金属又はこれらを含む合金又は金属間化合物、2)酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の酸化物、3)リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等の無機酸塩又は有機酸塩、4)ガラス、5)窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック等を好適に用いることができる。
【0055】
有機成分としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。
【0056】
充填粒子は、無機成分からなる粒子あるいは有機成分からなる粒子(粉末)のほか、無機成分及び有機成分の両者を含む粒子(粉末)を用いることができる。例えば、ステアリン酸カルシウム粒子等の有機酸塩の粒子を挙げることができる。
【0057】
これらの充填粒子の中でも、有機成分からなる充填粒子が好ましく、特に樹脂ビーズを用いることがより好ましい。特に、ポリエチレン系樹脂ビーズ、ポリプロピレン系樹脂ビーズ及びアクリル系樹脂ビーズの少なくとも1種を含むことが好ましい。さらには、アクリル系樹脂ビーズは、成形の際の熱及び圧力で変形し難いという点でより好ましい。
【0058】
また、樹脂ビーズの場合、その樹脂の融点としては、通常150〜350℃であることが好ましく、特に200〜300℃であることがより好ましい。融点が150℃未満であると成形時の熱により溶解してしまい、所望の凹凸形状による効果が得られなくなることがある。また、融点が350℃を超えると成形性を阻害する要因となるおそれがある。
【0059】
充填粒子の平均粒子径(レーザー回折式粒度分布計によって測定した体積平均の粒度分布に基づいて算出された50%累積時の平均粒径、D50)は0.5〜100μm程度であることが好ましく、1〜50μmであることがさらに好ましく、5〜30μmであることが最も好ましい。0.5μm未満では取扱い性、前述の隙間形成等の点で不向きである。他方、100μmを超える場合は、充填粒子の脱落、分散性等の点で不向きである。特に、樹脂ビーズの場合、例えば平均粒経D50が10〜50μmとし、特に15〜30μmとすることが好ましい。樹脂ビーズの平均粒径D50が10μm未満である場合、基材表面の凹凸形状による付着防止効果が低下する。また、樹脂ビーズの平均粒径D50が50μmを超えると、成形性が低下し、膜割れ等を引き起こすおそれがある。また、加工上の見地からも、例えば塗工ムラが発生しやすく、外観又は性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0060】
充填粒子の形状は限定的でなく、例えば球状、回転楕円体状、不定形状、涙滴状、扁平状、中空状、多孔質状等のいずれであっても良い。
【0061】
下地液中における充填粒子の含有量は、例えば充填粒子の種類、所望の物性等に応じて適宜変更できるが、一般的には固形分重量基準で5〜30重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。
【0062】
有機溶剤としては、用いる熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコール(エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルシクロヘキサン(MCH)、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤の中から適宜選択することができる。
【0063】
なお、下地液には、本発明の効果を妨げない範囲内で、必要に応じて他の添加剤を適宜配合することができる。例えば、分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤、脱泡剤等を配合することができる。
【0064】
下地層の形成量は、特に限定されないが、特に0.5〜10.0g/mとすることが好ましく、さらには1.0〜4.0g/mとすることがより好ましい。0.5g/m未満であると、撥水性又は撥油性の維持効果が低減したり、保形性の低下を起こすおそれがある。また10.0g/mを超えても、凹凸の効果が低減し、内容物が容器内面に付着するおそれがある。下地層の形成量は、例えば塗工・乾燥した後の成形包装体重量から基材フィルム重量を差し引いた重量(g)を面積(m)で除することにより求めることができる。
【0065】
下地層を形成させるに際しては、少なくとも基材シートに疎水性粒子及び/又は疎水性粒子が付与される面に下地液を塗布及び乾燥すれば良い。
【0066】
塗布する方法も、特に限定されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、刷毛塗り等の公知の方法をいずれも採用することができる。例えば、ロールコーティング等を採用する場合は、疎水性粒子を溶媒に分散させてなる分散液を用いてヒートシール層上に塗膜を形成することにより付着防止層形成工程を実施することができる。
【0067】
塗布後は、塗布面を乾燥することにより、下地層を得ることができる。乾燥方法は、特に制限されず、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱乾燥する場合は、通常は80〜200℃、特に140〜180℃とすれば良い。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は3〜30秒程度とすれば良い。
【0068】
第2方法
第2方法では、充填粒子及び熱可塑性樹脂を含むフィルム(下地用フィルム)を基材フィルムに積層する工程を含む方法により下地層を形成する。
【0069】
充填粒子及び熱可塑性樹脂ならびにその配合量等は、それぞれ第1方法と同様のものを使用することができる。
【0070】
下地用フィルムの作製方法は、特に限定されず、例えば1)溶融状態の熱可塑性樹脂と充填粒子とを含む混練物をフィルム状に製膜する方法、2)熱可塑性樹脂の溶液と充填粒子とを含む混合液をフィルム状に成形する方法等が挙げられる。
【0071】
下地用フィルムを基材フィルムに積層するにあたっては、例えばドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等の公知の方法を適宜採用して基材フィルムと貼り合わせることができる。
【0072】
第2工程
第2工程では、押圧温度120〜150℃、押圧圧力2〜15kgf/cm及び押圧時間5秒超えかつ10秒未満の条件下にて、付着防止粒子が付着した面を押圧しながら付着防止性フィルムを凹状に成形することにより成形体を得る。すなわち、底面及び側面から構成されるカップ状容器である成形体を得ることができる。
【0073】
第2工程では、特に、付着防止性フィルムが押圧による折り曲げ加工が施されることにより、所望の形状に成形される。
【0074】
上記の押圧による折り曲げは、1つの折り目を形成するに際し、1段階で形成しても良いし、多段階で形成しても良い。多段階の場合は、付着防止性フィルムを一定の角度で折り曲げた状態で加熱・押圧する工程をその折り目の水平面に対する角度を段階的に大きくしながら繰り返せば良い。より具体的には、例えば2段階の場合、付着防止性フィルムを水平面に対して角度θ度に折り曲げた状態で加熱・押圧した後、その折り目をさらに角度θ度(但し、θ及びθは、0<θ<θを満たす。θは、好ましくは80〜90度である。)に折り曲げた状態で加熱・押圧する工程を含む方法を採用すれば良い。3段階以上の場合も同様にして、θ<θ・・・<θ(但し、nは3以上の整数を示す。)というように繰り返すことにより実施することができる。
【0075】
本発明では、より確実に折り目をつけて良好な保形性が得られるという見地より、付着防止性フィルムを多段階で折り曲げることが好ましい。例えば、図6に示すように、付着防止性フィルム10(図6(a))を水平面Hに対して角度θ度(但し、0<θ<90)に折り曲げた状態で加熱・押圧した後(図6(b))、その折り目Aを水平面Hに対して角度90度に折り曲げた状態で加熱・押圧する(図6(c))工程を含む方法を好適に採用することができる。この場合の角度θは、所望の容器の形状、用途等に応じて適宜設定できるが、通常は20〜80度程度とし、好ましくは30〜60度とすれば良い。
【0076】
成形工程で使用する装置自体は、公知又は市販の成形装置、加工装置等を用いることができる。押圧方法としては、例えば金型による押圧、空気圧(真空引き等)による押圧等のいずれであっても良い。特に、本発明では、金型による押圧を好適に採用することができる。例えば、金型による押圧の場合、上部金型(例えば凸状上部金型)と下部金型(例えば凹状下部金型)で付着防止性フィルムを挟持しながら折り曲げを行う方法を好適に採用することができる。このような方法を実施する装置としては、例えばマッチモールド成形等で採用されている成形装置のように、雄型及び雌型を含む成形装置を用いることもできる。
【0077】
より具体的には、上部金型として、中心に貫通路を有する上部円錐状部材(上部円錐状金型)とその貫通路を挿通できる上部円柱状部材(上部円柱状金型)の2部構成からなる金型を採用することができる。これに対し、下部金型として、前記円錐状部材の円錐斜面の全面と接触できる斜面を上面に有し、かつ、前記の上部円柱状部材が挿通できる通路を有する下部円筒状部材(下部円筒状金型)を採用することができる。このような構成を有する金型を用いることにより2段階での折り曲げを効率的に行うことが可能となる。
【0078】
例えば、図1に示すような成形装置を使用できる。この装置は、a)中心に貫通路157を有する上部円錐状部材155とその貫通路157を挿通できる上部円柱状部材148とを有する上部金型117と、b)前記円錐状部材の円錐斜面155aの全面と対面(対向)できる斜面129aを上面に有し、かつ、前記の上部円柱状部材が挿通できる通路129bを有する下部円筒状部材129とを含む。なお、上記「円錐斜面155aの全面と対面できる斜面129a」とは、円錐斜面155aの全面と斜面129aの全面で非付着性フィルムを挟み込んで押圧できる状態を構成できれば良く、必ずしも完全に全面にわたって対面している必要はない。
【0079】
この成形装置によれば、(A)付着防止性フィルム49を上部円錐状金型155及びその貫通路Aに予め挿入された上部円柱状部材148からなる上部金型117と、下部金型129との間に配置する工程(図1(a))、(B)上部円錐状金型155及び上部円柱状部材148を下方に同時に移動させることにより、付着防止性フィルム49を上部円錐状部材の円錐斜面155aと下部円筒状部材の斜面129aとの間に挟持して一定時間保持する工程(図1(b))、上部円錐状金型155を静止させたままで上部円柱状部材148を下方に移動させて上部円柱状部材148を付着防止性フィルム49とともに下部円筒状部材129の通路Bに押し込む工程(図1(c))を含む方法により、成形工程を効率的に実施することができる。
【0080】
このような装置としては、例えば図2に示す金型を使用することができる。また、図2に示す金型の断面図を図3に示す。この装置は、下部円筒状部材129と、被成形物である付着防止性フィルム49を介して下部円筒状部材129に対向する上部金型117とから構成される。
【0081】
下部円筒状部材129は、中空柱体の1つである円筒形形状を有しており、その上壁は円筒体161の内部方向に傾斜し、かつ、その表面には円筒体161の中心軸から放射状に広がる第1の段溝119が形成されている。また、円筒体161の内壁121には、第2の段溝122が形成されており、第1の段溝119と第2の段溝122とは相互に接続されている。また、第1の段溝119の外縁には、縁部163が円筒体161の上に固着されている。
【0082】
上部金型117は、上部円柱状部材としての杵状押棒148と、その杵状押棒148がその中心部に形成された貫通路157に対して出し入れ自在となっている上部円錐状部材155とから構成される。杵状押棒148の先端は、テーパ部152が形成されており、その軸方向に平行にその周壁に歯車状溝147が形成されている。また、円錐状部材155の側面には、傘歯車状溝159が形成されている。歯車状溝147は、第1の型部材129の第2の段溝122の凸部分の数と位置とに対応するように形成されている。傘歯車状溝159は、第1の型部材129の第1の段溝119の凸部分の数と位置とに対応するように形成されている。すなわち、いずれの部材も、上下で両者が互いに噛み合うように設計されている。
【0083】
成形条件については、押圧温度は通常120℃超えかつ150℃未満程度とし、好ましくは125〜145℃とする。従って、例えば128〜142℃に設定することもできる。押圧温度が120℃以下の場合は、所望の保形性が得られなくなる。また、押圧温度が150℃以上である場合は、ブロッキング等が発生するほか、所望の付着防止効果が得られなくなる。押圧温度は、例えばヒーター付き金型を用いる場合、その金型の加熱温度の制御によって押圧温度を調整することができる。また、前記のように多段階で付着防止性フィルムの折り曲げを行う場合は、全段階にわたって上記加熱温度を維持すれば良い。
【0084】
押圧圧力は、通常2〜15kgf/cm程度とし、好ましくは2〜8kgf/cmとする。押圧圧力が2kgf/cm未満の場合は、所望の付着防止効果が得られなくなる。押圧圧力が15kgf/cmを超える場合は、ブロッキング等が発生する。また、前記のように多段階で付着防止性フィルムの折り曲げを行う場合は、全段階にわたって上記押圧圧力範囲を維持すれば良い。
【0085】
押圧時間は、通常5秒超えかつ10秒未満程度の範囲内とし、好ましくは6〜8秒とする。押圧時間が5秒以下の場合は、所望の保形性か得られなくなる。また、押圧時間が10秒以上である場合は、ブロッキングが発生したり、所望の付着防止効果が得られなくなる。また、押圧時間が長すぎると、生産性の低下の要因にもなる。上記押圧時間は、前記のように多段階で付着防止性フィルムの折り曲げを行う場合、全段階に要する合計時間を意味する。
【0086】
特に、前記のように2段階で折り曲げを行う場合、1段階目に要する時間を2段階目よりも長くすることが好ましい。例えば総押圧時間が10秒の場合、1段階目で6秒、2段階目で4秒というように設定することが好ましい。これにより、ブロッキング等を効果的に回避でき、より効率的に成形することが可能となる。
【0087】
上記の押圧が完了した後、成形装置から取り出された成形体は、通常は自然冷却される。なお、冷却方法は、自然冷却(放冷)に限定されるものではなく、例えば強制冷却であっても良い。このようにして、付着防止性フィルムが凹状に成形された成形体(カップ状成形体)を得ることができる。
【0088】
<成形工程の実施の形態>
本発明の成形工程(第2工程)の具体例を図1等に従って示す。実施の形態では、ヒダ付きカップ製造用金型・プレス加工機によって成形を行う。この装置は、付着防止性フィルムを加熱するヒーターを備えた下部筒状部材(雌型)129と、円錐状部材(雄型)155と上部円柱状部材(押出部)148からなる上部金型117とから構成される。この場合、上部金型117にもヒーターが備え付けられていても良い。
【0089】
下部筒状部材(雌型)129は、縦孔からなる通路129bと、前記縦孔の上端に連続して上向きに広がるテーパ状の型面が形成された斜面129aとを備え、その斜面表面にはヒダ付きカップ側面の外形状に対応した凹凸溝が放射状に形成されている。雄型となる上部円錐状部材155は、中央部に縦孔である貫通路157が形成され、雄型の型面にはヒダ付きカップ側面の内形状に対応した凹凸溝が放射状に形成されており、雌型縦孔129bと雄型縦孔157は、それぞれ中心が揃うように配置されている。また、押出部となる上部円柱状部材148は、雌型縦孔129bに対して挿抜可能なように雄型縦孔157内に配置されている。
【0090】
ヒダ付きカップ製造用金型と同プレス成型機を用いて、下記(a)〜(c)の工程にて容器状に成形する。
(a)付着防止性フィルム49を1枚で又は複数枚積み重ねた状態で、下部筒状部材129と上部金型117との間に配置する。
(b)上部金型127全体を下方に移動させ、付着防止性フィルムを下部筒状部材129の型面と上部金型117の型面とで挟持しながら両型面から付着防止性フィルムを一定時間加熱下で押圧する。これにより、付着防止性フィルムの付着防止性粒子が基材フィルム側に向かう方向の圧力を受ける。
(c)上部金型117の押出部148だけをさらに押し下げ、加熱・加圧された付着防止性フィルムを雌型縦孔129bの中に押し込み、ヒダ付き側面が底面と垂直に立ったヒダ付きカップ半成形品とした後、一定時間保持し、押出部148を雌型縦孔129bから抜いて引き上げる。
【0091】
具体的には、上述の成形において、120℃超え150℃未満の温度、2kgf/cm以上15kgf/cm以下の圧力で、5秒超え10秒未満の時間をかけて加圧成形によって、前記基材表面を押圧することにより、付着防止性フィルムを容器状に成形する。また、成形前に赤外線ヒーターにて付着防止性フィルムを予め加熱軟化させておいても良い。
【0092】
こうした加圧成形においては、基材を複数枚積層し、この積層体上面下面それぞれに保形補助ならびに金型への貼りつき防止用として厚紙を数枚重ね、これを所望の形状に打ち抜き、この打ち抜かれて積層された状態のものを、加熱された金型により、加圧成形されても良い。例えば付着防止性フィルムを1枚から200枚の範囲で適宜重ねて加圧成形しても良い。付着防止性フィルムを重ねる枚数等に応じて、押圧時の圧力を2.0kgf/cm以上15kgf/cm以下の範囲内で適宜設定することができる。
【0093】
成形する工程において、温度が120℃以下では所望とする容器形状が保形できないおそれがあり、150℃を超えると下地樹脂が変質することにより食品の付着防止性が低下するおそれがある。また、同様に、押圧が2kgf/cm未満又は15kgf/cmを超えたり、押圧時間が5秒以下又は10秒以上であったりすると、容器形状が保形できなかったり、下地樹脂が変質することにより食品の付着防止性が低下するおそれがある。
【0094】
また、成形する工程は、上述の実施の形態で示すように、側面がヒダを有するカップ状に成形する工程であることが好ましい。本発明の製造方法による容器、食品が付着にくいがゆえに滑り易く、容器から転がり落ちる場合もあり得るが、ヒダ状に成形することによりそのような現象を効果的に防止することができる。すなわち、側面にヒダを有するカップ状容器を採用することにより、例えば食品が容器から落下すること等を効果的に防止することができる。
【0095】
2.食品用容器
本発明は、本発明の製造方法により得られる食品用容器を包含する。すなわち、食品を収容するために用いられ、かつ、食品が付着しにくい容器を提供することができる。本発明における容器は、例えばトレイ、ケース等と呼ばれるものも含む。
【0096】
本発明の食品用容器としては、底面及び側面から構成されるカップ状容器を例示することができる。この容器の基本的な構成を図4に示す。図4のように、食品用容器140は、略円形状の底面142と、底面142の全周囲から立ち上がる側面141とから構成されている。側面141には、その全周にわたって複数のヒダ139が形成されている。このヒダ139の形成によって円形の付着防止性フィルムから図示した形状の容器を得ることができる。このような容器は、家庭では弁当のおかず入れとして、業務用では市販弁当のおかず入れとして、あるいはパンケーキ等の生地の下敷き容器等として、安価で使い易いために大量に生産されて使用することができる。
【0097】
そして、本発明の容器では、少なくとも食品と接触する面に付着防止性を有する塗膜が形成されている。図5にその構成を示す概略図を示す。食品用容器140は、基材フィルム11とその上に形成された付着防止性粒子からなる付着防止層12を含む付着防止性フィルム10から形成されており、容器内面において食品と接触するように付着防止層12が配置されている。付着防止層12は、複数の付着防止性粒子が固着して三次元網目上構造を有する多孔質層であることが好ましい。
【0098】
このような容器に内容物として食品が収容された場合において、その食品が容器内面に接触しても、付着防止層12が形成されているため、食品が容器内面に付着しにくくなる。これにより、食品が容器側に残さずに無駄なく食することができるほか、容器の洗浄等も省くことができる等のメリットが得られる。
【0099】
本発明に製造方法によって得られる食品用成形容器は、食品であれば用途は限定されず、既調理食品(例えば、洋生菓子、洋半生菓子、和生菓子、和半生菓子、お弁当用惣菜等)に好適に用いることができる。
【0100】
本発明でいう食品用容器は、主に食品を載せるための容器をいい、例えばカップ状(皿状を含む)の容器をいう。載せる対象となる食品は問わないが、みたらし団子、おはぎ等のように水分が多くて粘性の高い食品に好適に使用することができる。こうした容器は、食品の下に敷かれて使用され、食品の上部が露出して使用されることが想定されるが、食品用成形容器に食品を載せた状態で、さらに食品用成形容器ごと包装袋に充填されたものにも好適に使用できる。また、お弁当のおかずといった惣菜入れとしても好適に使用できる。
【0101】
特に、こうした容器は、良好な保形性を有するので、食品またはその一部が容器から転落もしくは漏れ出ることを防ぐことができる。また、大福餅、みたらし団子等のような水分を多く含み、かつ、軟らかい食品自体の形状を保つだけでなく、煮物等の水分の多い食品において汁等が漏れ出ることを防ぐためにも、容器自体の保形性は重要である。
【0102】
カップ状の成形容器としての形状は特に限定されないが、カップ状の容器の側面がヒダ状に成形された容器に好適に使用できる。本発明の食品用成形容器の製造方法は、こうしたヒダ状に成形された容器であっても当該ヒダ部に食品が付着しにくい。
【実施例】
【0103】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0104】
実施例1
(1)基材フィルムの作製
市販の厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(「PET」と略称)にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m;「D」と略称)を用いて、厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(「PET」と略称)の片面と貼り合わせ、「PET/D/PET」なる基材フィルムを作製した。基材フィルムの合計厚みは約27μmであった。
(2)下地コート剤の調製と塗工
充填粒子としてポリメタクリル酸メチルビーズ(製品名「MBX−20」積水化成品工業社製、平均粒径:20μm、融点:250〜270℃)15重量部を用い、これをポリエステル系熱可塑性樹脂(溶剤:トルエン 固形分:20wt%)に添加して30分間室温で攪拌して下地コート剤を調製した。このコート剤をバーコーター#8を用いて乾燥後重量で3.5g/mとなるように前記(1)で準備した基材フィルムの表面に塗工し、続いて160℃のオーブン中で10秒間加熱乾燥させてトルエンを蒸発させることにより、基材フィルム上に下地層を形成した。
(3)撥水コート液の調製と塗工
疎水性酸化物微粒子(製品名「AEROSIL R812S」エボニック デグサ社製、BET比表面積:220m/g、一次粒子平均径:7nm)2gをエタノール100mLに添加して30分間室温で攪拌して撥水コート液を調製した。このコート液を前記(2)で作製された下地層の表面に乾燥後重量で0.5g/mとなるようにバーコーター#3を用いて塗工し、続いて100℃のオーブン中で10秒間加熱乾燥させてエタノールを蒸発させることにより、付着防止性フィルムを得た。
(4)成形
前記付着防止性フィルム36枚積み重ね、これらの上面及び下面それぞれに、保形補助ならびに金型への貼りつき防止用として厚紙(大昭和紙工産業(株)製未晒しクラフト紙120g/m)を2枚重ね、これを直径140mmの円形状に打ち抜き、この打ち抜かれて積層された状態のものを成形機にて加圧成形した。
成形機は、ユニテック社製手動式成形機を使用し、図1に示す手順に従って成形した。下部金型温度130℃、圧力2.5kgf/cmとし、図1(b)の保持時間(つかみ時間)3.0秒、図1(c)の保持時間(加工加圧時間)3.0秒、総加圧時間6.0秒の成形条件とした。このようにして、図4に示すようなカップ状成形体を作製した。得られたカップ状成形体は、カップの底面が直径90mmの略円形であり、周囲の壁面(側面)の高さが25mmであり、当該壁面にはヒダが52個形成されていた。
【0105】
実施例2
実施例1の上記「(4)成形」の総加圧時間6.0秒を8.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0106】
実施例3
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を140℃として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0107】
実施例4
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を140℃とし、総加圧時間6.0秒を8.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0108】
実施例5
実施例1の上記「(4)成形」の圧力を3.4kgf/cmとして成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0109】
比較例1
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を120℃として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0110】
比較例2
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を120℃とし、総加圧時間6.0秒を8.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0111】
比較例3
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を120℃とし、総加圧時間6.0秒を10.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0112】
比較例4
実施例1の上記「(4)成形」の総加圧時間6.0秒を4.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0113】
比較例5
実施例1の上記「(4)成形」の総加圧時間6.0秒を10.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0114】
比較例6
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を140℃とし、総加圧時間6.0秒を4.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0115】
比較例7
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を140℃とし、総加圧時間6.0秒を10.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0116】
比較例8
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を150℃として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0117】
比較例9
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を150℃とし、総加圧時間6.0秒を8.0秒として成形したほかは実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0118】
比較例10
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を150℃とし、総加圧時間6.0秒を10.0秒として成形したほかは実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0119】
比較例11
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を160℃として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0120】
比較例12
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を170℃として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0121】
比較例13
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を180℃として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0122】
比較例14
実施例1の上記「(4)成形」の金型温度130℃を180℃とし、総加圧時間6.0秒を8.0秒として成形したほかは、実施例1と同様にして成形容器を得た。
【0123】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた成形容器について以下のとおり評価を行った。その結果を表1に示す。
【0124】
(1)成形状況の確認
各実施例及び比較例で得られた各サンプルの成形状態を目視で確認した。具体的には側面のヒダ状部分が金型の形で成形されているか否かを確認し、金型の形に綺麗に成形されているサンプルは「○」、保形されていないサンプルは「保形×」、ブロッキング(金型温度、総過熱時間過多で上下のサンプルが貼り付く現象)が発生したサンプルは「ブロッキング発生」と表記する。なお、ブロッキングが発生したものはそもそも製品として成り立たないが、剥がして後述のみたらし団子の付着有無の確認は行った。
【0125】
(2)みたらし団子の付着有無確認
市販の4玉×4本入りのみたらし団子を用意し、1玉を串から取り外した。これを箸で持ち、実施例及び比較例で得られた各成形容器の底面と側面との境界部に沿って2周し、みたらし団子をこすりつけた。その後、容器上に付着したみたらし団子のみつの数をカウントした。見た目にみたらし団子のみつの付着が気にならない程度として付着数が10点未満を「○」、10点以上を「×」として評価した。
【0126】
【表1】
【0127】
表1の結果からも明らかなように、本願発明の製造方法によって得られた食品用容器は、良好な保形性を有するとともに、水分が多くて粘性の高い食品に対しても高い付着防止効果を達成できることがわかる。
【0128】
このように、本発明の製造方法によって製造された食品用容器は、基材フィルムの表面に疎水性酸化物微粒子と、表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を含む被覆層を備える複合粒子の少なくともいずれかが塗工されているため、食品の付着を効果的に防止することが可能となる。さらに、これらの塗工物が120℃超え150℃未満の温度で2.0kgf/cm以上15kgf/cm以下、5秒超え10秒未満の範囲で加圧成形されることで、保形性を有しつつも当該塗工物が基材フィルムに強固に結着されるので、疎水性粒子又は疎油性粒子の欠落が抑制され、水分が多くて粘性の高い食品と常に接触していても容器に食品が付着することを効果的に抑制ないしは防止することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6