【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の安全管理システムを示す機能ブロックである。
ネットワーク12には管理端末装置14と作業者側端末16と現場管理端末18とが接続されている。管理端末装置14は管理センターに据え付けられており、管理対象となる多数の作業現場の作業者20が所持する作業者側端末16と接続してデータの収集をしている。この図面では作業者側端末16を1台だけ例示したが、ネットワーク12を通じて、多数の作業者側端末16と接続することができる。作業者側端末16は、作業者20が身に付けている位置センサ43や加速度センサ44や温湿度センサ46や脈拍計48やマイク49等からデータを取得する機能を持つ。
【0018】
管理端末装置14は、作業者側端末16からデータを取得して分析し必要な判定を行う機能を持つ。これを実行するために、管理端末装置14は、演算処理装置26と記憶装置34を備えている。演算処理装置26は、データ収集手段28と作業者毎危険度判定手段29と地域毎危険度判定手段30と通報手段32と初期値設定手段45とを備えている。記憶装置34は現場管理データベース36と作業場所管理画面38と危険箇所登録画面40と作業者毎安全管理データ42と状態判定基準データ58と危険度予測管理データ62とを記憶している。
【0019】
安全管理担当者24が所持する現場管理端末18には管理端末装置14が収集したデータに基づく様々な情報が表示される。安全管理担当者24は作業者20の安全管理をし、例えば危険を知らせる情報を取得した場合には、安全管理担当者24が現場責任者22に通知して、適切な処置を施すことができる。
【0020】
図2は作業場所管理画面38の一例を示す説明図である。
この画面には、広域ネットワークを通じて地図データが表示される。この地図データ上に、作業者の作業場所を表示する。さらに、作業者が移動する場合には、作業開始から作業終了までの移動経路も表示することができる。この画面は、作業者ごとにまた作業の種類ごとに作成されて現場管理データベース36に登録される。
【0021】
図3は危険箇所登録画面40の一例を示す説明図である。
この図は、例えば作業場所管理画面38と共に表示される。環境情報50は作業者側端末16の温湿度センサ46や気象情報から地域毎危険度判定手段30が生成して表示する。気象情報と作業環境から、熱中症になる危険性が高いと判断されると、通報手段32による通報が行われる。
【0022】
状態情報52は作業者側端末16の温湿度センサ46が出力するデータから生成される。このデータを監視し一定の基準と比較することによって、作業者の熱中症の危険度を判定できる。この処理を作業者毎危険度判定手段29が実行する。また、作業者端末16から取得した情報により、作業者20が歩行しているか転倒しているかなどを判断することができる。そして状態情報52が異常と判断されると、通報手段32による通報が行われる。
【0023】
また、例えば、対象者の位置を位置センサ43で検出して、動線と移動距離を監視し、危険エリアへの接近や進入があれば、通報手段32が作業者の所持する作業者側端末16を通じて警告することもできる。
【0024】
図4は、危険箇所登録画面40の一例を示す説明図、
図5は作業場所登録データ56の一例を示す説明図である。
この図に示すように、管理対象となっている作業領域を一定の広さの領域に区切る。そして、各領域について危険度を判定して危険度に応じた色付けをする。その結果を安全管理担当者24の所持する現場管理端末18に表示することによって、注意を喚起することができる。
【0025】
領域ごとの危険度には、例えば、風が通り難く熱中症になりやすい場所とか、ビル風によって物が飛びやすい場所とか、交通渋滞が激しく空気が汚れがちな場所といった環境をレベル付けしたものを含めることができる。すなわち、この実施例では熱中症についての危険度を中心に説明したが、それ以外の危険度についてもそれぞれ設定しておいて作業の安全を確保することが好ましい。
【0026】
上記の作業場所管理画面38と危険箇所登録画面40とにより、作業者毎の作業の種別と作業場所に応じた危険度が現場管理データベース36に登録される。作業者の所持する作業者側端末16から取得した状態情報52と事故情報54とは、作業者毎安全管理データ42に登録される。
【0027】
図1に示したデータ収集手段28は、作業者側端末16から状態情報52と事故情報54を収集し、広域ネットワーク12を通じて気象情報を含む環境情報を取得する機能を持つ。地域毎危険度判定手段30は、データ収集手段28の取得した情報を使用して地域毎の危険度を判定し、該当する危険度を示す作業場所管理画面38を生成する。
【0028】
図6は作業者側端末16から取得したデータから作業者20の状態を判定するための状態判定基準データ58の一例を示す説明図である。
このデータは、作業者側端末16の加速度センサ44や脈拍計48によって取得されたデータから、作業者20の歩行距離や疲労度を判定するための閾値などを設定したデータである。これらのデータは、作業者20が一定以上の衝撃を受けたかどうか、過労が懸念されるような距離を歩行したかどうか、異常な状態が発生して転倒したかどうかを、自動的に判定できるものであれば良く、その値や形式は自由である。
【0029】
図7は作業者20の作業場所や作業環境や作業者20の状態の危険度を示すデータの内容を示す説明図である。
このデータは作業者ごとに作成される。そして、作業者側端末16から取得される加速度、気温、湿度、状態、脈拍などが、作業者毎安全管理データ60に含められる。暑さ指数は気象情報や作業者側端末16の温湿度センサ46のデータから計算し危険度を算定する。脈拍計48によって、機器の計算式を用いて消費されたカロリー計算ができる。
【0030】
図6に示したような判定基準を設けることにより、地域毎危険度判定手段30が、作業者側端末16の位置センサ43により作業者の移動量と休憩時間を検出して、過労に起因する危険度を示す作業場所管理画面38を生成して表示することができる。
【0031】
また、通報手段32は、作業者側端末16の脈拍計48により取得した作業者の脈拍から計算した消費カロリーにより作業者の疲労度に起因する危険度を求めて、安全管理担当者の所持する現場管理端末に通報を発することができる。
【0032】
さらに、通報手段32は、作業者側端末16のマイク49により取得した作業者の周辺の騒音レベルから、作業者の疲労度に起因する危険度を求めて、安全管理担当者の所持する現場管理端末に通報を発することができる。
【0033】
また、通報手段32は、作業者側端末16の加速度センサ44により取得した作業者に加わった衝撃レベルから作業者の負荷に起因する危険度を求めて、安全管理担当者の所持する現場管理端末に通報を発することができる。
【0034】
加速度センサは重力加速度の向きを検出することができる。そこで、作業者は加速度センサを装着して正常な姿勢の状態で、重力加速度の向きを検出するための操作をする。その向きを初期値として記憶装置に記憶させておく。その後、作業者が転倒等をすると、加速度センサが検出する重力加速度の向きと初期値との差分が生じる。この差分の程度により、作業者がどのような姿勢でいるかを判定できる。この処理を可能にするために、作業者端末16を作業者20のベルト等に揺れないように確実に固定する。そして、作業者の安全監視を開始するために作業者端末16のスタートボタンを操作したとき、自動的に加速度センサにより、重力加速度の向きを検出して初期値とする処理を初期値設定手段45に実行させるとよい。
【0035】
上記の状態判定基準データ58と危険度予測管理データ62とは、作業者の作業の種別や作業場所の性質から、適切な値に設定しておくとよい。そして、通報手段32は、収集した作業者毎安全管理データ42の内容から、作業者の危険性を予測する。その結果を、安全管理担当者24の所持する現場管理端末18に表示し、危険性に応じた通報を発するようにする。
【0036】
これにより、事故を未然に防止することができる。さらに、万一、事故が発生した場合には、データ収集手段28が収集した現場管理データベース36や作業者毎安全管理データ42を参照する。そして、その結果を現場管理端末18等に表示する。従って、安全管理担当者24や通報手段32は、事故原因や作業者への衝撃の度合い等を正確に推定できる。もちろん、迅速な救護や事故収拾対策も可能になる。
【0037】
図8は、熱中症に関する危険度を予測するためのパラメータを示す説明図である。
作業者側端末16の温湿度センサ46が取得したデータと作業者側端末16の位置センサ43により取得された作業場所の位置座標を使用して計算をする。気象協会から提供される予測気温や予測湿度といったデータを含めた計算をして、作業者20の作業場所の環境を予測する。例えばこの場所で熱中症発生の危険性が高くなるような予想がされた場合には、安全管理担当者24の現場管理端末18に対し注意を促すように通報が発せられる。
【0038】
地域毎危険度判定手段30は、例えば、データ収集手段28の取得した気象通報と作業者側端末16の温湿度センサ46により計算をした、作業者の周辺環境の危険度を示す作業場所管理画面38を生成して、現場管理端末18に表示することができる。こうして、気象条件の変化に応じた対応(熱中症予防等)を促すことができる。
【0039】
暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防するために、人体の熱収支に与える影響の大きい湿度と日射・輻射(ふくしゃ)などの熱環境と気温とを取り入れた指標である。地域毎のWBGTが気象協会から公表される。作業者20の所持する温湿度計の測定値を使って公表されたWBGTを補正すると、作業場所の正確なWBGTを算出できる。これにより、熱中症危険度を判定して、通報手段32が作業者20や安全管理担当者24に通報すれば、熱中症予防ができる。
【0040】
また、熱中症は早めに気づいて手当てをすればほとんど回復するが、対処が遅れると生命に関わる。作業者毎の固有の熱環境に基づく熱中症危険度を判定するので、通報の信頼性が高く、熱中症予防効果が高い。さらに、加速度センサ44により作業者が転倒したことをすみやかに検知して、現場管理者に通報され、位置センサ43により作業者の位置を把握できるので、作業者の迅速な救助に繋がる。
【0041】
通報手段32は、作業者側端末16や現場管理端末18に対して、その表示装置に表示される作業場所管理画面38や危険箇所登録画面40を送信することにより、通報処理を実行する。さらに、警報音やパイプレーションや警報メール等で、作業者20や現場責任者22が表示装置を見ていない状態でも、警報を認識できるように通報をすることが好ましい。
【0042】
また、作業者が作業場所を移動するようなとき、作業に適さない危険な領域があると、その領域への移動を阻止するように通報をする。このために、作業者場所を複数の領域に区切って、作業者の位置と動きを監視する。これらの領域は、予め地図上で任意の多角形で指定できるようにするとよい。即ち、地図を表示して、マウス等で多角形を描画し、その多角形の属性データに、領域識別記号と危険度とを設定するとよい。
【0043】
上記の地域毎危険度判定手段30は、予め地域毎の熱中症危険度を判定して表示する以外に、気温以外の原因による危険度も、作業者20や現場責任者22に通知することが好ましい。例えば、事故が発生し易い危険な施設や設備が存在する箇所とか、過去の経験から、事故が発生したことのある箇所とか、爆発物とか危険物が貯蔵されている箇所といった場所を危険度の高い場所として、危険箇所登録画面40に登録しておく。そして、その場所に向かって作業者が移動することを検出した場合には、通報手段32は、警報音や警報メール等で危険を通報するとよい。さらに、まさに事故が発生していて、この事故に巻き込まれるおそれのある場所についても、進入を阻止するように通報を発することが好ましい。
【0044】
上記の実施例で説明したように、本発明のシステムは、作業者が予め設定した領域内にいるかどうかを判断したり、危険度の高い領域に移動するのを阻止するように、警報を通知する。この判断には、作業者端末16の位置センサ43の出力する位置座標と、作業場所の地図データとを使用する。作業場所が市街地であれば、住居表示で領域を区切ることができる。作業者の位置は10番地とか15番地というように判定できる。
【0045】
図9は、領域設定例を示す説明図である。
作業場所が広大な野原や林地等の場合には、仮想的な境界線を設定する必要がある。このとき、3角形あるいは
図7(c)の例のように4角形以上の多角形で領域を区切る。ここで、例えば、
図7(a)に示すように、作業者の位置座標を(x0,y0)としたとき、その位置座標が多角形の内部の点か外部の点かを判断するには、例えば、多角形の辺とY=y0の直線との交点(x1,y0)及び(x2,y0)と、多角形の辺とX=x0の直線との交点(y1,x0)及び(y2,x0)を求める。そして、(x1<X<x2)であって、(y1<Y<y2)のとき、位置座標(x0,y0)は多角形の内部にあると判断する。
【0046】
このような判断をする場合に、領域を定める多角形が
図9(b)のような凹多角形だと、多角形の辺とX=x0の直線の交点が4個以上になり、演算処理が複雑になる。従って、全ての領域を凸多角形で区切ることが好ましい。実際の領域が凹多角形の場合は、領域を複数の凸多角形に分割することで領域内外判定が可能である。