(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸受部材は、内管と、外管と、前記内管と前記外管の間に挟まれたリング部材と、を備え、前記内管は、前記長尺状のチューブに接続され、前記外管は、前記処置部材の前記拡張部に接続されている請求項2に記載の医療用デバイス。
管状支持部材をさらに備え、前記管状支持部材は、前記処置部材の先端側の前記長尺状のチューブ部材の外表面に接続した請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
前記長尺状のチューブの外面と前記処置部材の前記拡張部の先端用ハウジングの内面との間に空間を備え、前記ハウジングの外面は前記軸受部材に接続されている請求項2に記載の医療用デバイス。
前記拡張部が前記管状の駆動シャフトによって回転可能に駆動され、複数の間隙を備えつつ網状かつ管状に形成され、その少なくとも一部が前記切削部の径方向内側に位置し、回転軸に沿う方向の中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である請求項2に記載の医療用デバイス。
前記軸受部材は、内管と、外管と、前記内管と前記外管の間に挟まれたリング部材と、を備え、前記内管は、前記直動シャフトに接続され、前記外管は、前記支持部に接続されている請求項10に記載の医療用デバイス。
前記直動シャフトの外面と前記支持部の先端用ハウジングの内面との間に空間を備え、前記ハウジングの外面は前記軸受部材に接続されている請求項10〜13のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明を容易にするため、図面内の寸法の比率は強調してあるので、場合によっては実際の比率とは異なる場合もある。
【0011】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態による医療用デバイス10は、血管内のプラーク、血栓などに起因する狭窄部または閉塞部を切削する治療(処置)に使用できる。この説明では、血管に挿通されるデバイス側を「先端側」、そして操作の手元側を「基端側」と称する。
【0012】
図1に示すように、本開示の第1実施形態による医療用デバイス10には、狭窄部または閉塞部を切削する処置デバイス20と、狭窄部または閉塞部から切削され、落下するデブリ(物体)を収集するフィルタデバイス30を設けることができる。
【0013】
図1及び2に示すように、処置デバイス20は、径方向外方に伸縮可能な切削部40と、切削部40を支持する支持部50と、切削部40を回転させる駆動シャフト60と、切削部40の変形量を調整する直動シャフト70と、直動シャフト70の先端側に連結される先端チューブ75と、切削部40を収容することができる外シース80と、操作用に手元側に配設される操作部90とを備えることができる。
【0014】
切削部40は、
図3Aから6に示すように、駆動シャフト60の回転軸Xに沿って延びる少なくとも1本(本実施形態では4本)のストラット41と、全てのストラット41の先端側でストラット41と一体的に形成される管状の先端側固定端42と、全てのストラット41の基端側でストラット41と一体的に形成される管状の基端側固定端43とを備えることができる。ストラット41は、略直線状となっている収縮状態(
図3B、
図5を参照)から、先端側固定端42及び基端側固定端43を互いに近づけることで、径方向外側へ撓むように変形して拡張状態(
図3C、
図6A及び6Bを参照)となることができる。
【0015】
ストラット41は、基端側に、収縮した状態において回転軸Xに対して傾斜するように湾曲する傾斜部44が形成され、先端側に、外周面から内周面に貫通する複数の開口部45が形成される。ストラット41は、隣接する部位よりも周方向(回転方向Y)への幅が相対的に広い幅広部46を有し、この幅広部46の各々に開口部45が形成されている。開口部45はそれぞれ幅広部46に形成されている。開口部45は、ストラット41の延在方向に沿って複数(本実施形態では4つまたは5つ)形成される。開口部45の内縁部が、狭窄部または閉塞部を切削する刃47として機能する。ストラット41の刃47が形成される位置は、拡張状態においてストラット41の外径が最大となる部位(回転軸Xに沿う方向の略中央部)よりも先端側に位置している。例示の実施形態によると、ストラット41の開口部45の刃47を形成する内側縁部以外の縁部は面取りするのが好ましい。
【0016】
内部に4つの開口部45が形成されたストラット41と、内部に5つの開口部45が形成されたストラット41とは、周方向に交互に配置される。このため、1つの管体からレーザー加工や機械加工等により切削部40を切り出す際に、4つの開口部45と5つの開口部45を交互にずらして配置することができ、開口部45の適切な幅を確保することが可能である。さらに、周方向に隣接するストラット41の刃47がずれて配置されることで、所定の部位が偏って削り取られることを抑制することが可能である。これにより、狭窄部または閉塞部を有効に切削できる。
【0017】
ストラット41は、拡張状態となると、刃47が内部に形成される部位の外周面が、回転方向Y側ほど径方向内側に傾くように変形する(
図6Bを参照)。このため、ストラット41が拡張状態で回転する際に、ストラット41は、接触対象にストラット41の径方向内側に傾いている側から滑らかに接触することになる。これにより、生体組織への過度な損傷を低減できる。さらに、ストラット41は、拡張状態における径よりも小径の管体から切り出されて形成されているため、ストラット41の外周面の曲率半径は、拡張状態における回転軸Xからストラット41の外周面までの距離よりも小さい。よって、ストラット41の縁部が、接触対象にさらに接触し難くなる。これにより、生体組織への過度な損傷をさらに低減できる。
【0018】
例えば、切削部40の構成材料として、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレスなどが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系合金、Cu−Al−Ni系合金、Cu−Zn−Al系合金、またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。
【0019】
支持部50は、切削部40の径方向内側に切削部40を支持するように配置されており、複数のワイヤ51を編組することによって、ワイヤ51の間に間隙52を有するように管状に形成される。支持部50の先端側端部54は、複数のワイヤ51が管状に集合して、ストラット41の先端側固定端42の内側面及び直動シャフト70の外周面に固定されるように構成されている(
図4を参照)。支持部50の基端側端部55は、複数のワイヤ51が管状に集合して、ストラット41の基端側固定端43の内周面に固定されるように構成されている。
【0020】
先端側固定端42及び基端側固定端43が互いに近づくと、支持部50は、略均一の外径の管状となっている収縮状態(
図3Bを参照)から、支持部50の中央部が径方向外側へ撓むように変形する拡張状態(
図3C、
図4を参照)となることができる。
【0021】
拡張状態において支持部50の最も外径が大きい最大拡張部53は、拡張状態においてストラット41の間の間隙が大きくなるために、ストラット41の間で径方向外側へ突出する(
図6Aを参照)。このため、拡張状態においてストラット41の最も外側へ広がって生体組織と接触しやすい部位が、支持部50の最大拡張部53よりも径方向内側に位置する。これにより、ストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制できる。
【0022】
そして、ストラット41の刃47の近傍の部位は、回転軸Xからの距離が短く(径が小さく)、かつ幅広部46が形成される。これにより、ストラット41の間の間隙が狭くなる。このため、刃47の近傍に位置する支持部50は、ストラット41の間の部分から径方向外側への突出が抑制される。よって、支持部50に阻害されずに刃47を接触対象に接触させることができる(
図6Bを参照)。
【0023】
ワイヤ51は、好ましくは、接触する生体組織を損傷させないように、ストラット41よりもワイヤ51の剛性が低く、かつ断面において角部が曲率を有するようにワイヤ51を形成し、より好ましくは、ワイヤ51の断面は円形である。
【0024】
ワイヤ51の外径は、ワイヤ51の材料や適用条件等により適宜選択可能であるが、例えば0.05mm〜0.15mmである。
【0025】
ワイヤ51の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましい。例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系合金、Cu−Al−Ni系合金、Cu−Zn−Al系合金、またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。複数の材料を組み合わせた構造としては、例えば、造影性を付与するためにPtからなる芯線にNi−Ti合金を被覆した構造や、Ni−Ti合金からなる芯線に金メッキを施した構造が挙げられる。
【0026】
切削部40の収縮状態における内径は、適用される生体管腔の内径等に応じて適宜選択可能であるが、例えば、0.9mm〜1.6mmである。一例として、内径は1.4mmとすることができる。切削部40の収縮状態における外径は、適用される生体管腔の内径等に応じて適宜選択可能であるが、例えば、1.1mm〜1.8mmである。一例として、内径は1.7mmとすることができる。切削部40の回転軸Xに沿う方向の長さは、適用により適宜選択可能であるが、例えば、10〜30mmである。一例として、長さは20mmに設定できる。
【0027】
切削部40の拡張状態における最大外径は、適用される生体管腔の内径等により適宜選択可能であるが、例えば、3.0mm〜8.0mmである。一例として、最大外径は7.0mmとすることができる。
【0028】
拡張状態における支持部50の最大拡張部53の、ストラット41から径方向外側への突出長さは、適宜選択可能であるが、例えば、0.05mm〜0.5mmである。一例として、長さは0.2mmに設定できる。
【0029】
図1から4に示すように、駆動シャフト60は、管状に形成されて、駆動シャフト60の先端側が切削部40の基端側固定端43に固定されており、駆動シャフト60の基端側に従動歯車61が固定されている。駆動シャフト60の基端部は、操作部90のケーシング91に回転可能に連結されている。
【0030】
駆動シャフト60は柔軟である。しかも、駆動シャフト60は、基端側から作用する回転の動力を先端側に伝達可能な特性を持つ。例えば、駆動シャフト60は、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、またはこれらの組み合わせにワイヤなどの補強部材が駆動シャフト60に埋設されたもので構成されている。
【0031】
駆動シャフト60の内径は、適宜選択可能であるが、例えば、0.7mm〜1.4mmである。一例として、内径は1.2mmとすることができる。駆動シャフト60の外径は、適宜選択可能であるが、例えば、0.8mm〜1.5mmである。一例として、外径は1.35mmとすることができる。
【0032】
直動シャフト70は、切削部40及び支持部50を拡張及び収縮させるために、駆動シャフト60に対して回転軸Xの方向へ相対的に移動可能な管体である。直動シャフト70は、駆動シャフト60、切削部40及び支持部50を貫通している。直動シャフト70において、直動シャフト70の先端側は、ワイヤ51の先端側端部54に固定されており、直動シャフト70の基端側が、直動シャフト70を回転軸Xに沿って直線的に移動させる移動機構部92に接続されている。直動シャフト70の内部には、ガイドワイヤが挿通可能なルーメン72が形成されている。
【0033】
直動シャフト70の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましい。例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系合金、Cu−Al−Ni系合金、Cu−Zn−Al系合金、またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。さらに、直動シャフト70は、複数の材料、もしくはワイヤなどの補強剤を内部に埋設して構成してもよい。
【0034】
直動シャフト70の内径は、適宜選択可能であるが、例えば、0.5mm〜1.2mmである。一例として、内径は0.95mmとすることができる。直動シャフト70の外径は、適宜選択可能であるが、例えば、0.6mm〜1.3mmである。一例として、外径は1.05mmとすることができる。
【0035】
外シース80は、駆動シャフト60の外側に被さる管体であり、駆動シャフト60に対して、回転軸Xに沿う方向へ移動可能かつ回転可能である。外シース80は、基端部を把持して操作可能である。外シース80は、先端側へ移動させることで、収縮状態の切削部40及び支持部50を内部に収容可能である。外シース80を基端側へ移動させることで、切削部40及び支持部50を外部へ露出させることができる。
【0036】
外シース80の構成材料は、特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、などが好適に使用できる。さらに、外シース80は、複数の材料、もしくはワイヤなどのような補強剤を内部に埋設して構成してもよい。
【0037】
外シース80の内径は、適宜選択可能であるが、例えば、1.2mm〜1.9mmである。一例として、内径は1.8mmとすることができる。外シース80の外径は、適宜選択可能であるが、例えば、1.3mm〜2.0mmである。一例として、外径は2.0mmとすることができる。
【0038】
先端チューブ75は、直動シャフト70の先端側に固定されている。先端チューブ75の内部にはルーメン76が形成されている。ルーメン76は、直動シャフト70のルーメン72と連通している。
【0039】
先端チューブ75の構成材料は、特に限定されない。しかしながら、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。
【0040】
操作部90は、
図1、2に示すように、ケーシング91と、駆動シャフト60に回転力を付与する駆動機構部93と、直動シャフト70を回転軸Xに沿って移動させる移動機構部92とを備えることができる。
【0041】
駆動機構部93は、従動歯車61に噛み合う駆動歯車94と、駆動歯車94が固定される回転軸95を備える駆動源であるモータ96と、モータ96へ電力を供給する電池などのバッテリー97と、モータ96の駆動を制御するスイッチ98とを備えることができる。スイッチ98を入れてモータ96の回転軸95を回転させることで、駆動歯車94と噛み合う従動歯車61が回転し、駆動シャフト60が回転する。駆動シャフト60が回転すると、駆動シャフト60の先端側に固定されている切削部40、支持部50、及び先端チューブ75が回転する。
【0042】
移動機構部92は、操作者が指で回転させることが可能なダイヤル100と、ダイヤル100に同軸的に連結されて回転可能な送りねじ101と、送りねじ101により直動的に移動可能な移動台102と、移動台102に固定されて直動シャフト70を回転可能に保持する軸受部103と、を備えることができる。
【0043】
ダイヤル100は、ケーシング91内に回転可能に保持されているとともに、ダイヤル100の外周面はケーシング91内に形成された開口部104から露出している。ダイヤル100は、外周面を指で操作することによって回転可能である。送りねじ101がケーシング91内部に回転可能に保持されている。移動台102は、送りねじ101が螺合する雌ねじが形成され、ケーシング91に対して非回転的かつ回転軸Xに沿って直動的に移動可能である。移動台102に固定される軸受部103は、移動台102の移動に伴って直動シャフト70に移動力をかける。これにより、軸受部103は、スラスト力を受け止めることが可能なスラスト軸受を使用することが好ましい。
【0044】
フィルタデバイス30は、
図1、7に示すように、フィルタとしての機能を備えるフィルタ器具110と、フィルタ器具110を収納可能なシース120とを備えることができる。
【0045】
フィルタ器具110は、複数の素線112を編組することで得られるフィルタ部111と、フィルタ部111を貫通してフィルタ部111に連結される長尺なシャフト部113とを備えることができる。
【0046】
フィルタ部111は、シース120内に収容されることで収縮も可能であり、シース120から放出されることで、自己拡張力により拡張可能である。フィルタ部111では、先端側が閉じた籠状となってシャフト部113に連結されており、基端側が、複数の素線112が撚り集められてシャフト部113に連結されている。
【0047】
素線112の外径は、素線112の材料や用途等により適宜選択可能である。しかしながら、例えば、外径は20μm〜100μmとすることができる。一例として、外径は40μmとすることができる。
【0048】
素線112の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましい。例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系合金、Cu−Al−Ni系合金、Cu−Zn−Al系合金、またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。複数の材料を組み合わせた構造としては、例えば、造影性を付与するためにPtからなる芯線にNi−Ti合金を被覆した構造や、Ni−Ti合金からなる芯線に金メッキを施した構造が挙げられる。
【0049】
シャフト部113の構成材料は、特に限定されない。しかしながら、例えば、ステンレス、形状記憶合金などが好適に使用できる。
【0050】
シース120は、管体121と、ハブ122と、耐キンクプロテクタ123とを備えることができる。管体121は、フィルタ器具110を収容可能なルーメン124を備えることができ、先端側端部に形成される管体開口部126において開口している。ハブ122は、管体121の基端側端部に固定されており、ルーメン124と連通するハブ開口部125を備えることができる。耐キンクプロテクタ123は、管体121及びハブ122の間の連結部位を覆う柔軟な部材であり、管体121のキンクを抑制するのを助けることができる。
【0051】
管体121の構成材料は、特に限定されない。しかしながら、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。
【0052】
次に、本実施形態に係る医療用デバイス10の使用方法を、血管内の狭窄物を切削する場合を例として説明する。
【0053】
まず、血管の狭窄部Sよりも上流側(基端側)において血管内へ経皮的にイントロデューサー用シース(図示せず)を挿通させる。ガイドワイヤ130は、このイントロデューサー用シースを介して、血管内へ挿通させる。次に、ガイドワイヤ130を押し進め、
図8Aに示すように、狭窄部Sの基端側まで到達させる。この後、体外に位置するガイドワイヤ130の基端側端部をガイディングカテーテル140の先端側のカテーテル開口部141に挿通させる。
図8Bに示すように、ガイドワイヤ130に沿ってガイディングカテーテル140を血管内に挿通させて、狭窄部Sの基端側まで到達させる。
【0054】
次に、体外に位置するガイドワイヤ130の基端側端部をサポートカテーテル150の先端側のカテーテル開口部151に挿通させて、サポートカテーテル150を狭窄部Sの基端側まで押し進める。
図9Aに示すように、サポートカテーテル150及びガイドワイヤ130を狭窄部Sよりも先端側まで到達させる。この後、サポートカテーテル150を血管内に残した状態で、ガイドワイヤ130をそこから抜去する。
【0055】
次に、フィルタ器具110をシース120内に収容したフィルタデバイス30を準備する。フィルタ部111は、シース120の管体121の先端側端部に近い位置に配置され、フィルタ部111は、収縮状態で形状が拘束されている。次に、
図9Bに示すように、サポートカテーテル150を介してフィルタデバイス30を血管内に挿通させ、狭窄部Sよりも先端側まで到達させる。この後、サポートカテーテル150をそこから抜去する。
【0056】
次に、シース120をフィルタ器具110に対して基端側へ相対的に移動させ、フィルタ部111を管体121から先端側に突出させる。これにより、
図10Aに示すように、フィルタ部111が自己の復元力により拡張状態となる。籠状となったフィルタ部111の外周部が、血管の内壁面に接触する。このとき、フィルタ部111は、上流側(基端側)の狭窄部Sに向かって開いている。この後、フィルタ器具110を残して、シース120をそこから抜去する。
【0057】
次に、切削部40及び支持部50を収縮させて外シース80内に収容した状態の処置デバイス20を準備する。先端チューブ75の先端側開口部にシャフト部113の基端側端部を挿通させる。
図10Bに示すように、シャフト部113の基端側端部を、ガイディングカテーテル140を介して血管内に到達させる。次に、
図11Aに示すように、外シース80を基端側へ移動させ、切削部40及び支持部50を血管内で露出させる。なお、この状態では、切削部40及び支持部50は収縮した状態である。この後、
図2に示すように、ダイヤル100を回転させると、送りねじ101が回転して移動台102が基端側へ移動し、移動台102に連結された直動シャフト70が基端側へ移動する。直動シャフト70が基端側へ移動すると、切削部40の先端側固定端42が基端側固定端43に近づくように移動する。
図11Bに示すように、切削部40及び支持部50が径方向外側へ拡張した状態となる。そして、切削部40及び支持部50の大きさは、ダイヤル100の回転量によって任意に調節可能である。このように、拡張時の径が規定されるバルーンの外表面に研磨材等を付着させた回転体を用いて切削する場合と比較して、切削部40は、拡張時の大きさを望ましい大きさに任意に調節可能であり、効果的な切削が可能である。
【0058】
次に、操作部90のスイッチ98を入れると、モータ96の駆動力が駆動歯車94から従動歯車61へ伝わり、従動歯車61に連結されている駆動シャフト60が回転して、駆動シャフト60に連結されている切削部40及び支持部50が回転する。切削部40及び支持部50が回転すると、先端側でこれらに連結されている直動シャフト70も回転する。直動シャフト70の基端部は、軸受部103により支持されている。これにより、回転しても、切削部40及び支持部50の拡張状態を維持できる。
【0059】
次に、切削部40及び支持部50を回転させた状態で、
図12Aに示すように、処置デバイス20を押し進める。これにより、切削部40に形成されている刃47が、狭窄部Sと、切削した狭窄物に接触する。狭窄物がデブリDとなって先端側(下流側)へ流れる。先端側へ流れたデブリDは、先端側に位置するフィルタ部111の内部に入り込み、フィルタ部111によって濾し取られるように捕集される。このようにして、デブリDが末梢血管へ流れることを抑制できる。これにより、末梢血管における新たな狭窄部の発生を抑制できる。
【0060】
そして、狭窄部Sを切削する際に、支持部50の最も外径が大きい最大拡張部53が、ストラット41の間で径方向外側へ突出している。ストラット41の最も外側へ広がって生体組織と接触しやすい部位が、最大拡張部53よりも径方向内側に位置している(
図6Aを参照)。これにより、ストラット41よりも生体組織への影響が小さい支持部50の最大拡張部53が、生体組織に接触する。これにより、ストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制でき、安全性を高めることができる。さらに、ストラット41の最も外側へ広がって生体組織と接触しやすい部位には、刃47が形成されていないため、正常な生体組織の損傷を抑制でき、安全性を高めることができる。さらに、ストラット41の刃47の近傍の部位は、回転軸Xからの距離が短く(径が小さく)、かつ幅広部46が形成される。これにより、支持部50がストラット41の間から径方向外側へ突出し難くなる。したがって、支持部50に阻害されずに刃47を狭窄部Sに接触させることができる。
【0061】
さらに、ストラット41は、刃47が内部に形成される部位の外周面が、回転方向Y側ほど径方向内側に傾くように変形する(
図6Bを参照)。したがって、ストラット41は、狭窄部Sや生体組織などの接触対象に、ストラット41の径方向内側に傾いている側から滑らかに接触する。これにより、生体組織への過度な損傷を低減できる。さらに、ストラット41は、拡張状態における径よりも小径の管体から切り出されて形成されているため、ストラット41の外周面の曲率半径は、拡張状態における回転軸Xからストラット41の外周面までの距離よりも小さい。したがって、ストラット41の縁部が、対象物にさらに接触し難くなる。これにより、生体組織への過度な損傷をさらに低減できる。
【0062】
さらに、ストラット41の内側に支持部50が設けられている。これにより、ストラット41の間に、脱落した硬いデブリDが挟みこまれ難くなり、ストラット41が外側へ捲れ上がらない。したがって、ストラット41の損傷や破断を抑制できる。
【0063】
さらに、刃47が内部に形成されるストラット41は、支持部50により支持されることで、ラジアルフォース(半径方向へ作用する力)が増加する。これにより、拡張及び収縮可能な構造にも関わらず、高い切削能力を発揮できる。さらに、ストラット41の間隙が支持部50によって補われる。これにより、ストラット41及び支持部50によって全体として断面が略円形となり、切削部40を適切な位置にセンタリングすることができる。さらに、ストラット41の刃47で切削されて発生したデブリDの一部を、支持部50内に回収することもできる。
【0064】
狭窄物の切削が完了した後には、スイッチ98を切って駆動シャフト60の回転を停止させる。次に、ダイヤル100を、切削部40及び支持部50を拡張させた際とは逆回転に回転させると、
図1に示すように、送りねじ101が回転して移動台102が先端側へ移動し、移動台102と連結された直動シャフト70が先端側へ移動する。直動シャフト70が先端側へ移動すると、切削部40の先端側固定端42が基端側固定端43から離れるように移動し、切削部40及び支持部50が径方向内側に収縮した状態となる。この後、外シース80を先端側へ移動させる。
図12Bに示すように、外シース80内に切削部40及び支持部50を収容し、ガイディングカテーテル140を介して処置デバイス20をそこから抜去する。
【0065】
次に、シース120(吸引用カテーテル)の管体開口部126にシャフト部113の基端側端部を挿通させる。
図13Aに示すように、ガイディングカテーテル140を介してシース120を血管内に挿通させる。この状態で、シース120のハブ開口部125と連通するようにYコネクター(図示せず)をシース120に接続し、Yコネクターのシャフト部113が挿通されない方の開口部にシリンジを接続する。この後、シリンジの押し子を牽引して吸引力を作用させると、先端側から基端側まで延びるルーメン124内で負圧が発生する。これにより、フィルタ部111内のデブリDを管体開口部126からルーメン124内に引き込むことができる。シリンジによりデブリDを吸引する際には、必要に応じて、管体121を進退移動させる。このようにして、デブリDを効果的に吸引することができる。上記のように、フィルタ部111内のデブリDの一部または全てを吸引してルーメン124内に引き込むことで、フィルタ部111が収縮しやすい状態となる。なお、デブリDを吸引する器具(吸引用カテーテル)は、シース120とは異なるカテーテルであってもよい。また、吸引力を作用させる器具は、シリンジに限定されず、例えば吸引力は、ポンプであってもよい。
【0066】
次に、シース120に対してシャフト部113を相対的に先端側へ移動させると、
図13Bに示すように、フィルタ部111がシャフト部113に牽引されて管体121のルーメン124内に移動する。
【0067】
この後、フィルタ器具110をシース120とともにそこから抜去する。ガイディングカテーテル140及びイントロデューサー用シースをそこから抜去して、ここで、ユーザは手技を完了する。フィルタ器具110を、シース120に収容しなくてもよい。シース120を用いる代わりに、フィルタ器具110は、直接的にガイディングカテーテル140内に収容してもよい。この場合、デブリDは、吸引してそこから取り除かなくてもよい。
【0068】
上記のように、第1実施形態に係る医療用デバイス10は、生体管腔内の物体を切削するためのデバイスである。医療用デバイス10は、回転可能な駆動シャフト60と、駆動シャフト60の先端側に回転可能に連結されて、回転軸Xに沿って延在するとともに中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である少なくとも1つのストラット41と、駆動シャフト60の先端側に連結されて回転可能であり、複数の間隙を備えて網状かつ管状に形成されて少なくとも一部がストラット41の径方向内側に位置し、回転軸Xに沿う方向の中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である支持部50と、を有することができる。このため、ストラット41及び支持部50を生体管腔内への搬送を容易としつつ拡張させることで、適切な切削範囲を確保できる。さらに、医療用デバイス10は、支持部50がストラット41を径方向内側から支持する。これにより、ストラット41の縁部による生体組織への過度な損傷を低減しつつ、ストラット41の間隙に物体が挟みこまれることを抑制できる。よって、デバイスの損傷または破損を抑制できる。
【0069】
ストラット41は、拡張した状態において径方向外側へ最も拡張する部位よりも先端側の位置に物体を切削する刃47が形成されるように構成されている。これにより、刃47を生体組織に接触し難くして安全性を確保できる。狭窄部Sヘストラット41を押し込み、刃47を生体管腔内の物体へ接触させることで、物体を効果的に切削することができる。
【0070】
さらに、拡張した状態における支持部50の径方向外側へ最も拡張する最大拡張部53は、ストラット41の間の部分から当該ストラット41よりも径方向外側へ突出している。これにより、ストラット41よりも生体組織への影響が小さい支持部50の最大拡張部53が生体組織に接触する。よって、ストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制でき、安全性を高めることができる。
【0071】
さらに、拡張した状態におけるストラット41は、刃47が内部に形成される部位の外周面が、回転方向Y側ほど径方向内側に傾斜している。よってストラット41は、接触対象に、ストラット41の径方向内側に傾いている側から滑らかに接触する。これにより、ストラット41による生体組織への過度な損傷を低減できる。
【0072】
さらに、ストラット41は、周方向の幅が隣接する部位よりも相対的に広い幅広部46を有し、当該幅広部46には刃47が内部に形成されている。これにより、支持部50の径方向外側への突出が幅広部46により抑制される。したがって、支持部50により阻害されずに刃47を接触対象へ良好に接触させることができる。
【0073】
拡張した状態における最大拡張部53がストラット41から径方向外側へ突出する長さは、幅広部46が内部に配置される部位におけるストラット41の間の部分から支持部50が径方向外側へ突出する長さよりも大きい。これにより、最大拡張部53を生体組織に接触させて、ストラット41による正常な生体組織の損傷を抑制するのを助ける。そうである一方、ストラット41の刃47を生体管腔内の物体へ効果的に接触させる。これにより、物体は良好に切削できる。
【0074】
ストラット41は、収縮した状態において回転軸Xに対して傾斜する傾斜部44を有するように構成されている。これにより、拡張した状態において、傾斜部44の形状の非対称性によって、ストラット41の外周面を望ましい角度に傾くように設定することができるので、設計の自由度が向上する。このため、ストラット41を、生体組織に損傷が生じ難く、かつ生体管腔内の物体を切削しやすい角度に設定することができる。さらに、ストラット41の基端側に傾斜部44を設ける。このようにして、ストラット41の基端側の部位が広い面積を利用して支持部50に接触する。これにより、支持部50のストラット41に対する位置ずれを抑制できる。
【0075】
さらに、本開示によると、生体管腔内の物体を切削するための処置方法も開示している。処置方法は、回転可能な駆動シャフトと、駆動シャフトの先端側に連結されて回転可能であり、回転軸に沿って延在するとともに、中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である少なくとも1つのストラットと、駆動シャフトの先端側に回転可能に接続され、複数の間隙を備えて網状かつ管状に形成され、少なくとも一部がストラットの径方向内側に位置し、回転軸に沿う方向の中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である支持部と、を有する医療用デバイスを使用して行われる。そして、当該処置方法は、(i)ストラット及び支持部を収縮させた状態で生体管腔内へ挿通させるステップと、(ii)ストラット及び支持部を拡張させるステップと、(iii)ストラット及び支持部を駆動シャフトにより回転させて生体管腔内の物体を切削するステップと、(iv)ストラット及び支持部を収縮させるステップと、(v)ストラット及び支持部を生体管腔内から抜去するステップと、を有することができる。本処置方法によれば、ストラット及び支持部を生体管腔内へ挿通させるため、生体管腔内への搬送を容易とすることによって、適切な切削範囲を確保できるように助ける。さらに、当該処置方法によれば、支持部によってストラットを径方向内側から支持しつつ、ストラットを回転させて物体を切削する。これにより、ストラットの縁部による生体組織への過度な損傷を低減することができ、ストラットの間隙に物体が挟みこまれることを抑制する。したがって、装置の損傷や破断を抑制できる。
【0076】
さらに、上述の処置方法によれば、ストラット及び支持部を拡張させるステップにおいて、支持部から径方向外側へ最も拡張する最大拡張部を、ストラットの間の部分から当該ストラットよりも径方向外側へ突出させてもよい。このようにして、ストラットよりも生体組織への影響が小さい支持部の最大拡張部が、生体組織に接触する。これにより、ストラットの縁部による正常な生体組織の損傷を抑制でき、よって、安全性を高めることができる。
【0077】
さらに、上述の処置方法によれば、生体管腔内の物体を切削するステップの前に、フィルタ部を生体管腔内に設置するステップを有し、生体管腔内の物体を切削するステップの後に、生体管腔内の物体をフィルタ部により捕集するステップと、フィルタ部を生体管腔内から抜去するステップと、を有してもよい。このように、ストラットの刃により削り取られて発生した物体(デブリ)を、フィルタ部によって捕集して取り除くことができる。これにより、デブリが末梢血管へ流れることによって新たな狭窄部や閉塞部が末梢血管に発生することを抑制できる。
【0078】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る医療用デバイス200では、特に、切削部40、外シース80、及び操作部90の構成が、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0079】
本開示の第2実施形態に係る医療用デバイス200は、
図14に示すように、狭窄部または閉塞部を切削する処置デバイス210と、狭窄部または閉塞部から削り取られて脱落したデブリ(物体)を捕集するフィルタデバイス30と、を備えている。
【0080】
処置デバイス210は、
図14、15に示すように、径方向外側へ拡張及び収縮が可能な切削部220と、切削部220を支持する支持部230と、切削部220を回転させる駆動シャフト240と、切削部220の変形量を調節する直動シャフト250とを備えることができる。さらに、処置デバイス210は、直動シャフト250の先端側に連結される先端チューブ260と、切削部220を収容可能な外シース270と、直動シャフト250の内部に配置される内管280と、手元側に設けられて操作するための操作部290とを備えることができる。さらに、処置デバイス210は、駆動シャフト240の駆動を制御する制御部300と、駆動シャフト240に取り付けられる押し引き抵抗計測部310(検知部)と、駆動シャフト240及び直動シャフト250の基端部を相互に連結させる連結部320と、切削抵抗が閾値を超えたことを通知する通知部400とを備えることができる。
【0081】
切削部220は、駆動シャフト240の回転軸Xに沿って延びる少なくとも1つ(本実施形態では4つ)のストラット41と、全てのストラット41の先端側でストラット41と一体的に形成される管状の先端部221と、全てのストラット41の基端側でストラット41と一体的に形成される管状の基端側固定端43とを備えることができる。先端部221は、支持部230及び直動シャフト250に固定されることなく、支持部230及び直動シャフト250に対して、軸方向へ相対的に移動可能となっている。先端部221は、直動シャフト250が切削部220に対して基端方向へ移動することで、直動シャフト250に連結された先端チューブ260の基端部と接触する(
図19A及び19Bを参照)。
【0082】
支持部230は、切削部220の径方向内側に切削部220を支持するように配置されており、複数のワイヤ231を編組することによって、ワイヤ231の間に間隙232を有するように管状に形成される。支持部230の先端側端部234は、複数のワイヤ231が管状に集合して、切削部220の先端部221の内側面に固定されることなく、直動シャフト250の外周面に固定されている。支持部230の基端側端部235は、複数のワイヤ231が管状に集合して、ストラット41の基端側固定端43の内周面に固定されている。
【0083】
複数のワイヤ231の一部は、X線造影性材料により構成されたワイヤである。このようにして、支持部230及び切削部220の位置及び拡張径を、X線透視法を使って的確に把握することが可能となり、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウム、あるいはそれらの合金等が好適に含まれる。なお、支持部230ではなく、切削部220の一部が、X線造影性材料で構成されてもよい。例えば、切削部220の内周面を、メッキ加工によりX線造影性材料で被覆してもよい。このようにして、支持部230及び切削部220の位置及び拡張径を、X線透視法を使って的確に把握することが可能となり、手技がより容易なものとなる。
【0084】
先端側端部234及び基端側端部235を互いに近づけると、支持部230は、支持部230が略均一の外径の管状となっている収縮状態(
図15を参照)から、支持部230の中央部が径方向外側へ撓むように支持部230が変形する拡張状態(
図19A及び19Bを参照)となることができる。支持部230の中央部が径方向外側へ撓むと、先端側端部234が先端チューブ260へ徐々に接近しつつ、支持部230の外側に配置されているストラット41が、支持部230によって径方向外側へ押圧されて拡張する。先端チューブ260が先端側端部234に接触するまでは、
図19Aに示すように、先端部221は、支持部230及び直動シャフト250に固定されない。これにより、先端部221及び基端側固定端43の間に軸方向への力はほとんど作用しない。切削部220は、支持部230から受ける径方向外側への力のみで拡張する。したがって、ストラット41及びワイヤ231の間に間隙が生じ難くなり、ストラット41及びワイヤ231の間に狭窄物やデブリが挟まらない。これにより、ストラット41の損傷を抑制でき、かつストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制できる。直動シャフト250とともに移動する先端チューブ260が先端部221に接触すると、
図19Bに示すように、先端部221は、先端チューブ260から基端方向に力を受け、軸方向に先端部221を収縮する力が先端部221に作用する。このように、ストラット41は、支持部230から受ける径方向外側への力のみならず、収縮力によっても拡張することになる。したがって、ストラット41及びワイヤ231の間に間隙が生じ難くなった望ましい状態を維持しつつ、必要以上に支持部230により切削部220を押圧することを抑制できる。
【0085】
駆動シャフト240は、
図15、16に示すように、管状に形成される。先端側が切削部220の基端側固定端43に固定されており、基端側に従動歯車61が固定されている。駆動シャフト240の少なくとも一部に、流体が循環可能な複数の孔部241が、内周面から外周面に貫通して形成されている。駆動シャフト240の基端部の外周面の一部には、操作部290内で第1シール部355と摺動可能に接触することにより、摩擦力を低減するための被覆部242が被覆されている。
【0086】
被覆部242の構成材料は、低摩擦材料であることが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂材料である。駆動シャフト240の孔部241は、
図17に示すように、管体に設けられる複数の貫通孔として機能するよう構成されてもよい。または、
図18に示すように、孔部241は、ワイヤ243を編組みした編組体に形成される間隙を含むよう構成されてもよい。さらに、駆動シャフト240をコイルで構成し、孔部241は、コイルの間隙であってもよい。孔部241は、駆動シャフト240の全体に形成されてもよく、または部分的に形成されてもよい。編組体やコイルを用いて、孔部241が所定の範囲にのみ設けられる駆動シャフト240を形成する場合、間隙を有する編組体やコイルに、樹脂等の材料を部分的に被覆できる。このようにして、駆動シャフト240を容易に形成することができる。
【0087】
図15及び16に示すように、直動シャフト250は、切削部220及び支持部230を拡張及び収縮させるために、駆動シャフト240に対して回転軸Xの方向へ相対的に移動可能な管体である。直動シャフト250は、駆動シャフト240、切削部220、及び支持部230を貫通する。直動シャフト250では、直動シャフト250の先端側がワイヤ231の先端側端部234に固定されており、先端側端部234の基端側が、直動シャフト250を回転軸Xに沿って直線的に移動させる移動機構部340に接続されている。直動シャフト250の基端側は、駆動シャフト240よりも基端側に突出している。流体が循環可能な複数の孔部251が、直動シャフト250の少なくとも一部の内周面から外周面に貫通して形成されている。駆動シャフト240の孔部241と同様に、直動シャフト250の孔部251を、管体に配置された複数の貫通孔として機能するように構成してもよい。あるいは、孔部251は、ねじ山部やコイルの間隙により構成されてもよい。
【0088】
連結部320は、直動シャフト250の基端部と駆動シャフト240の基端部とを互いに連結する管状の伸縮可能な部材であり、連結部320の直径は、基端方向に向けてテーパ状に縮径している。連結部320は、直動シャフト250と駆動シャフト240に対して液密に連結されている。連結部320は、操作部290における直動シャフト250及び駆動シャフト240の間の液密状態を維持しつつ、直動シャフト250の駆動シャフト240に対する軸方向への移動を許容する。伸縮可能な連結部320により、相対的に移動する直動シャフト250及び駆動シャフト240が互いに連結されている。これにより、Oリング等の摩擦を生じさせるシール構造を採用する必要がなくなる。駆動力の損失を生じさせずに、直動シャフト250及び駆動シャフト240の間の液密状態を維持できる。さらに、連結部320は、捩れることで直動シャフト250と駆動シャフト240の回転方向の位置合わせを可能にする。
【0089】
連結部320の構成材料は、伸縮可能であれば特に限定されない。しかしながら、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレンーブタジエンゴム等の各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーなどが好適に使用できる。
【0090】
外シース270は、駆動シャフト240の外側に被さる管体であり、回転軸Xに沿う方向へ移動可能である。外シース270は、基端部を把持して操作可能である。外シース270は、先端側へ移動させることで、収縮状態の切削部220及び支持部230を内部に収容可能である。外シース270を基端側へ移動させることで、切削部220及び支持部230を外部へ露出させることができる。
【0091】
内管280は、直動シャフト250の内部に配置されるとともに、内部にフィルタデバイス30やガイドワイヤ等が挿通可能なルーメン281が形成される管体である。内管280は、直動シャフト250に対して、回転軸Xに沿う方向へ移動可能である。流体が循環可能な複数の孔部282が、内管280の少なくとも一部の内周面から外周面に貫通して形成されている。駆動シャフト240の孔部241と同様に、内管280の孔部282を、管体に配置された複数の貫通孔として機能するように構成してもよい。あるいは、孔部282は、ねじ山部やコイルの間隙により構成されてもよい。
【0092】
先端チューブ260は、直動シャフト250の先端側に固定されている。内管280は、先端チューブ260の内部に配置される。複数の凸部261は、先端チューブ260の外周面に形成することができる。凸部261は、例えば、エンボス加工により形成したり、複数の孔を設けたりすることで形成できる。あるいは、凸部261は、微細な金属粉等を先端チューブ260の表面に付着させたり、先端チューブ260の材料に微細な金属粉等を混合したりすることで形成できる。金属粉の材料は、例えば、ステンレス等を好適に使用できる。
【0093】
押し引き抵抗計測部310(検知部)は、
図14に示すように、切削部220及び支持部230を狭窄部へ押し込む際及び引き戻す際に駆動シャフト240に作用する押し引き抵抗(軸方向の抵抗)を検出するためのセンサ311と、センサ311からの信号を受けて押し引き抵抗を算出する計測装置312とを備えることができる。センサ311は、例えば、押し引き抵抗を受け止める第1軸受部331の近傍に取り付けられる歪ゲージである。計測装置312は、センサ311から受信する信号から押し引き抵抗を算出し、結果を制御部300へ送信することができる。センサ311が取り付けられる部位は、駆動シャフト240の押し引き抵抗を検出できるのであれば、特に限定されない。
【0094】
操作部290は、
図14、16に示すように、駆動シャフト240に回転力を付与する駆動機構部330と、直動シャフト250を回転軸Xに沿って移動させる移動機構部340と、外シース270内へ生理食塩水等を送液する送液部350とを備えている。
【0095】
送液部350は、外シース270が嵌合する第1ハウジング351と、生理食塩水を収容した収容バッグ352と、収容バッグ352を加圧するための加圧バッグ353と、収容バッグ352及び第1ハウジング351を互いに接続する接続チューブ354と、第1ハウジング351内に配置される第1シール部355と、第1シール部355を固定するための固定部358とを備えることができる。
【0096】
第1ハウジング351は、管状の部材であるとともに、第2ハウジング333に対して軸方向に沿って移動可能である一方、モータ96が収容される第2ハウジング333に形成される第2誘導溝335に摺動可能に嵌合する第2誘導部356が、第1ハウジング351の外周面に形成されている。第1ハウジング351には、先端側から外シース270が嵌合して固定されている。第1シール部355は、例えば、OリングやXリングであり、第1ハウジング351の基端部の内部に配置され、外シース270の内部を通って第1ハウジング351内に入り込む駆動シャフト240の外周面の被覆部242に摺動可能に接触する。第1シール部355は、第1ハウジング351に基端側から捩じ込まれる固定部358によって固定されている。第1シール部355は、駆動シャフト240の回転及び軸方向への移動を許容しつつ、駆動シャフト240及び第1ハウジング351の間の液密状態を維持する。
【0097】
さらに、収容バッグ352から延びる接続チューブ354が接続されるポート部357が、第1ハウジング351に形成される。収容バッグ352から供給される生理食塩水が、ポート部357を通って第1ハウジング351内に流入可能である。第1ハウジング351内に流入した加圧された生理食塩水は、第1シール部355によって基端側への流れが規制されるので、先端側の外シース270内に流入可能である。
【0098】
駆動機構部330は、従動歯車61に噛み合う駆動歯車94と、駆動歯車94が固定される回転軸95を備える駆動源であるモータ96と、モータ96への電流の供給を制御する制御部300と、直動シャフト250を回転可能に支持する第1軸受部331及び第2軸受部332を備えることができる。さらに、駆動機構部330は、モータ96を収容する第2ハウジング333と、第2ハウジング333と連結されるとともに、第1軸受部331及び第2軸受部332を保持する枠体334とを備えている。
【0099】
上記のように、第2ハウジング333は、モータ96を収容する箱状の部材である。第2ハウジング333の外面に、第1ハウジング351の第2誘導部356が摺動可能に嵌合する第2誘導溝335が形成されている。
【0100】
枠体334は、互いに平行な第1隔壁336及び第2隔壁337を備えることができる。先端側の第1隔壁336に第2ハウジング333が固定され、基端側の第2隔壁337に、移動機構部340が固定されている。
【0101】
第1隔壁336には、第2ハウジング333内のモータ96から延びる回転軸95が貫通し、第1隔壁336及び第2隔壁337の間に、駆動歯車94が配置されている。さらに、第1隔壁336に、第1軸受部331が配置され、第1ハウジング351から延びる駆動シャフト240が第1軸受部331に回転可能に保持されている。駆動シャフト240に固定された従動歯車61は、第1隔壁336及び第2隔壁337の間に位置し、駆動歯車94と噛み合っている。第2隔壁337に、駆動シャフト240を回転可能に支持する第2軸受部332が配置されている。
【0102】
ケーブル301を介してモータ96へ電力を供給し、モータ96の回転軸95を回転させると、駆動歯車94と噛み合う従動歯車61が回転し、第1軸受部331及び第2軸受部332に支持された駆動シャフト240が回転する。駆動シャフト240が回転すると、駆動シャフト240の先端側に固定されている切削部220、支持部230、及び先端チューブ260が回転する。支持部230の先端側端部234が直動シャフト250に接合されている。これにより、支持部230が回転すると、直動シャフト250も支持部230に追従して回転する。
【0103】
移動機構部340は、操作者が指で回転させることが可能なダイヤル360と、ダイヤル360の回転により直動的に移動可能な移動台370と、移動台370に固定されて直動シャフト250を回転可能に保持する第3軸受部341と、第2シール部342と、第2シール部342を固定する基端側固定部380とを備えることができる。さらに、移動機構部340は、移動台370を収容する第3ハウジング390を備えることができる。第3ハウジング390の内面には、移動台370に形成される突出した第1誘導部371が摺動可能に嵌合する第1誘導溝391が形成されている。
【0104】
ダイヤル360は、枠体334の基端側に配置される筒状の部材であり、外周面を指で操作することで回転可能である。ダイヤル360では、先端部の一部が第3ハウジング390の内部に位置している。ダイヤル360の外周面には、周方向に延びる溝部362が形成されている。第3ハウジング390の基端部に形成されるフック部392が溝部362に嵌合して、軸方向へのダイヤル360の移動が制限される。ダイヤル360は、第3ハウジング390に対して回転可能に保持されている。ダイヤル360の内周面には、移動台370に形成されるねじ溝372と螺合する送りねじ361が形成されている。ダイヤル360には、プライミング時に内部の空気を抜くための排出孔366が形成されている。排出孔366は、ストッパ367により開閉可能である。
【0105】
移動台370には、第3ハウジング390の第1誘導溝391に嵌合する第1誘導部371が形成されるとともに、送りねじ361が螺合するねじ溝372が形成されている。よって、送りねじ361が回転すると、移動台370は、第3ハウジング390に対して非回転的であり、かつ回転軸Xに沿って直動的に移動可能である。移動台370に固定される第3軸受部341は、移動台370の移動に伴って直動シャフト250に移動力を作用させる。これにより、軸方向の力(スラスト力)を受け止めることが可能な軸受を使用することが好ましい。第3軸受部341の基端側に、他のシール部材が設けられてもよい。
【0106】
第2シール部342は、ダイヤル360の直動シャフト250が貫通する貫通孔363をダイヤル360の基端側に囲むように形成される凹部364に、収容可能である。第2シール部342は、第2シール部342の内部に位置する直動シャフト250の基端部の外周面に接触する環状の部材である。
【0107】
基端側固定部380は、ダイヤル360の凹部364に形成されるねじ溝365に螺合するように捩じ込み可能なボルト状の部材である。基端側固定部380の内部には、内管280が配置される貫通孔381が形成されている。基端側固定部380は、ダイヤル360の凹部364に捩じ込まれることで、第2シール部342を変形させて内管280を押圧している。このように、基端側固定部380は、ダイヤル360と内管280の間の液密状態を維持し、内管280を保持する。
【0108】
制御部300は、ケーブル301を介してモータ96へ電流を供給するとともに、供給する電流の変化を検知する検知部としても機能し、モータ96により回転駆動される切削部220における切削抵抗(回転方向の抵抗)を検出できる。さらに、制御部300は、計測装置312から、駆動シャフト240に作用する押し引き抵抗(軸方向の抵抗)の計測結果を受信する。制御部300は、切削抵抗が予め設定された閾値を超える場合に、モータ96の回転を停止させ、通知部400に、切削抵抗が閾値を超えたことを表示させる。なお、切削抵抗が閾値を超える場合に、制御部300は、モータ96の回転を停止させるのではなく、回転数を低下させてもよい。さらに、押し引き抵抗が予め設定された閾値を超える場合に、制御部300は、モータ96の回転を停止させ、通知部400に、切削抵抗が閾値を超えたことを表示させる。押し引き抵抗が閾値を超える場合に、制御部300は、モータ96の回転を停止させるのではなく、回転数を低下させてもよい。
【0109】
通知部400は、制御部300に通信可能に接続されるモニター401及びスピーカ402を備えることができる。モニター401は、切削抵抗または押し引き抵抗が閾値を超えたことを表示して操作者へ通知する。スピーカ402は、切削抵抗または押し引き抵抗が閾値を超えたことを、音により操作者へ通知する。なお、制御部300は、切削抵抗または押し引き抵抗が閾値を超える場合に、モータ96の回転を停止させず、通知部400により操作者へ通知させるのみであってもよい。この場合、操作者が、通知部400からの通知を視覚や聴覚により受ける。このようにして、操作者は、モータ96を停止させたり、押し込みや引き戻しを停止させたり、ダイヤル360を回転させて切削部220の径を変更したりすることができる。
【0110】
次に、第2実施形態に係る医療用デバイス200の使用方法を、血管内の狭窄物を切削する場合を例として説明する。フィルタ器具110を設置するまでは、第1実施形態において説明した方法と同様である。
【0111】
まず、第1実施形態において説明した方法と同様に、血管の狭窄部Sよりも上流側(基端側)において血管内へ経皮的にイントロデューサー用シース(図示せず)を挿通させる。このイントロデューサー用シースを介して、ガイドワイヤ130を血管に挿通させ、狭窄部Sの基端側まで到達させる。この後、
図8Bに示すように、ガイドワイヤ130に沿ってガイディングカテーテル140を血管内に挿通させて、狭窄部Sの基端側まで到達させる。
【0112】
次に、ガイドワイヤ130に沿ってサポートカテーテル150を狭窄部Sの基端側まで押し進める。その後、
図9Aに示すように、サポートカテーテル150及びガイドワイヤ130を狭窄部Sよりも先端側まで到達させる。この後、サポートカテーテル150を血管内に残した状態で、ガイドワイヤ130をそこから抜去する。
【0113】
次に、フィルタ器具110をシース120内に収容したフィルタデバイス30を準備する。フィルタ部111は、シース120の管体121の先端側端部に近い位置に配置され、フィルタ部111は、収縮状態で形状が拘束されている。次に、
図9Bに示すように、サポートカテーテル150を介してフィルタデバイス30を血管内に挿通させ、狭窄部Sよりも先端側まで到達させる。この後、サポートカテーテル150をそこから抜去する。
【0114】
次に、シース120をフィルタ器具110に対して基端側へ相対的に移動させ、フィルタ部111を管体121から先端側に突出させる。これにより、
図10Aに示すように、フィルタ部111が自己の復元力により拡張状態となる。籠状となったフィルタ部111の外周部が、血管の内壁面に接触する。このとき、フィルタ部111は、上流側(基端側)の狭窄部Sに向かって開いている。この後、フィルタ器具110を残して、シース120をそこから抜去する。
【0115】
次に、切削部220と支持部230が収縮し、外シース270内に収容された状態の処置デバイス210を準備する。収容バッグ352を加圧バッグ353により加圧し、収容バッグ352から接続チューブ354を介して第1ハウジング351内に生理食塩水を供給する。第1ハウジング351内に流入した生理食塩水は、
図20に示すように、第1シール部355により基端方向への移動が制限されるので、外シース270内を通って先端方向へ移動する。外シース270内に流入した生理食塩水は、駆動シャフト240の孔部241が形成される領域に到達すると、生理食塩水の一部が孔部241を通って駆動シャフト240内に流入する。駆動シャフト240内に流入した生理食塩水は、直動シャフト250の孔部251が形成される領域に到達すると、生理食塩水の一部が孔部251を通って直動シャフト250内に流入する。直動シャフト250内に流入した生理食塩水は、内管280の孔部282が形成される領域に到達すると、生理食塩水の一部が孔部282を通って内管280のルーメン281内に流入する。
【0116】
そして、
図21に示すように、外シース270内、駆動シャフト240内、直動シャフト250内、及び内管280内に流入した生理食塩水は、外シース270、駆動シャフト240、直動シャフト250、及び内管280の先端側の開口部から放出される。さらに、
図22に示すように、駆動シャフト240内に流入した生理食塩水は、駆動シャフト240及び直動シャフト250の基端部に連結される連結部320により、移動が制限される。直動シャフト250内に流入した生理食塩水は、基端方向へ流れて移動台370内を通り、ダイヤル360内に流入する。ダイヤル360内に流入した生理食塩水は、排出孔366を通って外部に排出される。移動台370内及びダイヤル360内の空気が抜けた後、ストッパ367により排出孔366を塞ぐことができる。内管280内に流入した生理食塩水は、基端方向へ流れて基端側の開口部から外部に排出される。このようにして、プライミングが完了する。プライミングが完了した後も、収容バッグ352からの送液は、処置デバイス210による手技が完了するまで継続される。さらに、処置デバイス210のプライミングは、加圧バッグ353を用いずに行ってもよい。
【0117】
次に、内管280の先端側開口部にシャフト部113の基端側端部を挿通させる。
図23Aに示すように、処置デバイス210の先端部を、ガイディングカテーテル140を介して血管内に到達させる。そして、処置デバイス210の先端部を、X線透視法を使って、狭窄部Sの基端側に位置させる。処置デバイス210には、収容バッグ352により生理食塩水が常に供給されているため、外シース270、駆動シャフト240、直動シャフト250、及び内管280内への血液の流入が抑制される。
【0118】
次に、
図24に示すように第1ハウジング351を第2ハウジング333に対して基端側へ移動させると、
図23Bに示すように外シース270が基端側へ移動し、切削部220及び支持部230が血管内に露出される。なお、この状態は、切削部220及び支持部230が、狭窄部Sよりも基端側で収縮した状態であることを示す。
【0119】
次に、X線透視法を使って、狭窄部Sの間隙の大きさを検出する。狭窄部Sの間隙の大きさは、X線撮像された映像から目視により検出したり、X線撮像された映像における狭窄部Sの間隙を、例えば処置デバイス210の寸法がわかっている部位(例えば、ストラット41または支持部230)と比較することにより検出したりすることができる。さらに、血管内超音波診断装置(IVUS:IntraVascularUltraSound)、光干渉断層診断装置(OCT:OpticalCoherenceTomography)、または光学振動数領域画像化法(OFDI:OpticalFrequencyDomainImaging)を利用して、狭窄部Sの間隙の大きさをより詳細に検出することもできる。
【0120】
この後、
図24に示すように、ダイヤル360を回転させると、送りねじ361が回転して移動台370が基端側へ移動し、移動台370に連結された直動シャフト250が、駆動シャフト240に対して基端側へ移動する。直動シャフト250が基端側へ移動すると、先端側端部234及び基端側端部235が互いに近づく。
図19A、
図19B、及び25Aに示すように、支持部230の中央部が径方向外側へ撓むように変形して拡張状態となる。支持部230の中央部が径方向外側へ撓むと、支持部230の径方向外側に配置されているストラット41が、支持部230によって径方向外側へ押圧されて拡張する。このとき、少なくとも拡張の初めにおいて、切削部220の先端部221が支持部230及び直動シャフト250に固定されていない。これにより、先端部221及び基端側固定端43の間に軸方向への力は作用しない。
図19Aに示すように、支持部230から受ける径方向外側への力のみで切削部220は拡張する。このため、ストラット41及びワイヤ231の間に間隙が生じ難い。直動シャフト250が駆動シャフト240に対して基端側へ移動すると、
図24に示すように、直動シャフト250の基端部及び駆動シャフト240の基端部を連結する連結部320が伸張し、これにより、液密状態が維持される。したがって、直動シャフト250及び駆動シャフト240の間の部分に流入した生理食塩水が漏出しない。
【0121】
そして、切削部220及び支持部230の大きさは、ダイヤル360の回転量によって任意に調節可能である。したがって、切削部220は、拡張時の大きさを望ましい大きさに任意に調節可能であり、効果的な切削が可能である。
【0122】
ダイヤル360を回転させて支持部230及び切削部220を拡張させる際には、X線透視法を使って、切削部220の拡張径を狭窄部Sの間隙と比較しつつ、切削部220の拡張径を狭窄部Sの間隙よりも大きく拡張させる。この場合、切削部220及び支持部230の最も大きく広がる部位の外径は、両者を最も収縮させた最小収縮状態及び両者を最も拡張させた最大拡張状態の間の大きさである。
【0123】
次に、制御部300がモータ96へ電流を供給してモータ96を回転させると、モータ96の駆動力が駆動歯車94から従動歯車61へ伝わり、従動歯車61に連結されている駆動シャフト240が回転して、駆動シャフト240に連結されている切削部220及び支持部230が回転する。切削部220及び支持部230が回転すると、先端側で支持部230に連結されている直動シャフト250も回転する。さらに、直動シャフト250は、基端側において、連結部320により駆動シャフト240に連結されている。これにより、直動シャフト250は、基端側からも回転力を受ける。このため、直動シャフト250は、駆動シャフト240に対して遅れずに追従して回転しやすくなり、直動シャフト250の捩れを抑制できる。そして、直動シャフト250の捩れを抑制できることで、直動シャフト250を捩るための作業が必要なくなる。駆動力を直動シャフト250に効果的に伝達可能となり、低トルクでの駆動が可能となる。さらに、連結部320は、手技の際に体外に位置するため、連結部320が万一破損しても、安全性を確保できる。
【0124】
駆動シャフト240は、第1軸受部331及び第2軸受部332により回転可能に支持されているため、駆動シャフト240は円滑に回転することができる。第1ハウジング351内では、第1シール部355が駆動シャフト240の外周面に設けられる被覆部242に接触しており、駆動シャフト240が回転することで、被覆部242が第1シール部355に対して摺動する。しかしながら、被覆部242が低摩擦材料により形成されているため、駆動シャフト240の回転は、ほとんど妨げられない。さらに、直動シャフト250は、基端部が第3軸受部341により回転可能に支持されているため、円滑に回転することができる。
【0125】
次に、切削部220及び支持部230を回転させた状態で、
図25Bに示すように、処置デバイス210を押し進める。このように、切削部220に形成されている刃47及び先端チューブ260に形成される凸部261(
図21を参照)が、狭窄部Sに接触して狭窄物を切削する。狭窄物が削られてデブリDとなって先端側(下流側)へ流れる。先端側へ流れたデブリDは、先端側に位置するフィルタ部111の内部に入り込み、フィルタ部111によって濾し取られ捕集される。このようにして、デブリDが末梢血管へ流れることを抑制できる。これにより、末梢血管における新たな狭窄部の発生を抑制できる。
【0126】
そして、狭窄部Sを切削する際には、支持部230は、ストラット41の間で径方向外側へ突出している。これにより、ストラット41よりも生体組織への影響が小さい支持部230が、生体組織に接触する。よって、ストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制でき、安全性を高めることができる。
【0127】
さらに、切削部220の先端部221が支持部230及び直動シャフト250に固定されておらず、拡張の始めにおいて、切削部220は、支持部230から受ける径方向外側に作用する力により拡張している。これにより、ストラット41及びワイヤ231の間に間隙が生じ難くなっている。このように、ストラット41及びワイヤ231の間に脱落した硬いデブリDや狭窄物が挟まり難い。このため、ストラット41が外側へ捲れ上がらず、ストラット41の損傷や破断を抑制でき、かつストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制できる。
【0128】
処置デバイス210を押し進める際には、切削部220を押し進めて狭窄部Sを切削した後、切削部220が狭窄部Sを完全に通過する前に、処置デバイス210を引き戻すことができる。そして、処置デバイス210の押し込み及び引き戻しを繰り返すことで、狭窄部Sに対して切削部220を徐々に押し進め、狭窄部Sを少しずつ切削することができる。これにより、切削部220に過剰な力が作用することを抑制し、切削部220の損傷や破断を抑制できる。
【0129】
切削部220に過剰な切削抵抗(回転方向の抵抗)が作用すると、モータ96を駆動する電流に変化が生じる。この電流の変化を、制御部300が検知する。制御部300は、検知した電流から切削抵抗を特定する。この切削抵抗が予め設定された閾値を超えると、制御部300は、モータ96の回転を停止させる。そして、制御部300は、切削抵抗が閾値を超えたことを、モニター401に表示させ、かつスピーカ402によって音で通知する。
【0130】
さらに、切削部220に過剰な押し引き抵抗(軸方向の抵抗)が作用すると、過剰な押し引き抵抗が押し引き抵抗計測部310により検出され、制御部300に通知される。制御部300は、押し引き抵抗が予め設定された閾値を超える場合に、モータ96の回転を停止させる。そして、制御部300は、押し引き抵抗が閾値を超えたことを、モニター401に表示させ、かつスピーカ402によって音で通知する。
【0131】
切削部220に生じる過剰な切削抵抗または押し引き抵抗を検出した際に制御部300がモータ96を停止させると、制御部300は、切削部220に損傷や破断が生じる前に、切削部220による切削を停止できる。モータ96の回転が停止した後には、
図26Aに示すように、処置デバイス210をそこから引き戻し、制御部300を操作してモータ96を再び回転させ、処置デバイス210による切削を再開することができる。制御部300は、切削抵抗や押し引き抵抗が閾値を超える場合に、モータ96の回転を停止させるのではなく、回転数を低下させてもよい。さらに、制御部300は、モータ96の回転を停止させず、通知部400により使用者にモータ96の停止を促すのみであってもよい。
【0132】
図26Bに示すように、切削部220が狭窄部Sを通過した後に、処置デバイス210をそこから引き戻す。
図27Aに示すように、切削部220を狭窄部Sの基端側に移動させ、駆動シャフト240の回転を停止させる。次に、ダイヤル360を再び回転させ、
図27Bに示すように、切削部220をさらに拡張させる。そして、上述の操作と同様に、切削部220を回転させ、処置デバイス210の押し込み及び引き戻しを繰り返す。切削抵抗や押し引き抵抗が閾値を超える際には、制御部300が回転を停止させる。
図28A、
図28Bに示すように、狭窄部Sを少しずつ切削する。切削部220が狭窄部Sを通過した後には、処置デバイス210をそこから引き出し、切削部220を狭窄部Sの基端側に移動させ、駆動シャフト240の回転を停止させる。そして、切削部220を徐々に拡張させ、切削部220の狭窄部Sに対する押し込み及び引き戻しを繰り返して、狭窄部Sを切削する。上記のように、切削部220を徐々に拡張させつつ狭窄部Sを切削する。このように、切削部220に過剰な力が作用することを抑制することによって、切削部220の損傷や破断を抑制できる。
【0133】
切削部220による狭窄部Sの切削が完了した後、ダイヤル360を、切削部220及び支持部230を拡張させた際とは逆回転に回転させる。このように、
図16に示すように、送りねじ361が回転して移動台370が先端側へ移動し、移動台370に連結された直動シャフト250が先端側へ移動する。直動シャフト250が先端側へ移動すると、
図15に示すように、支持部230の先端側端部234が基端側端部235から離れるように移動し、切削部220及び支持部230が径方向内側に収縮した状態となる。次に、第1ハウジング351を第2ハウジング333に対して先端側へ移動させると、外シース270が先端側へ移動する。
図29Aに示すように、外シース270内に切削部220及び支持部230が収容される。この後、ガイディングカテーテル140を介して処置デバイス210を体外へ抜去する。
【0134】
この後、
図29Bに示すように、ガイディングカテーテル140を介してシース120を血管内に挿通させ、フィルタ部111内のデブリDをシース120内に吸引する。そして、シース120内に、フィルタ部111を収容する。この後、フィルタ器具110をシース120とともにそこから抜去する。ガイディングカテーテル140及びイントロデューサー用シースをそこから抜去して、手技が完了する。
【0135】
そして、手技の間、処置デバイス210は、収容バッグ352により生理食塩水が常に処置デバイス210に供給されているため、外シース270、駆動シャフト240、直動シャフト250、及び内管280内への血液の流入が抑制される。これにより、処置デバイス210内での血液の凝結が抑制される。したがって、血液の凝結による処置デバイス210の操作性の低下を抑制できる。また、凝結した物体が血管内に流れることをも抑制できるので、安全性が向上する。さらに、処置デバイス210を介した血液の外部への流出を抑制できるため、安全性を向上できる。
【0136】
上記のように、第2実施形態に係る医療用デバイス200は、駆動シャフト240が管体であり、かつ、駆動シャフト240の内部に配置されて駆動シャフト240に対して相対的に軸方向へ移動可能であって、駆動シャフト240とともに回転可能な直動シャフト250をさらに有している。そして、支持部230は、駆動シャフト240及び直動シャフト250の相対的な軸方向への移動により生じる軸方向へ作用する力を受けて径方向外側へ拡張可能である。ストラット41では、先端側が、駆動シャフト240及び直動シャフト250に対して軸方向への移動が拘束されない。当該ストラット41は、支持部230の径方向外側への拡張により押圧されて径方向外側へ拡張する。したがって、ストラット41を拡張させる際に、ストラット41及び支持部230の間に間隙が生じ難くなり、ストラット41及び支持部230の間に狭窄物やデブリが挟まり難くなる。これにより、医療用デバイス200は、ストラット41の損傷を抑制でき、かつストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制できる。
【0137】
さらに、医療用デバイス200は、駆動シャフト240の内部に配置される管体であり、駆動シャフト240及び直動シャフト250に対して回転が拘束されない内管280をさらに有している。したがって、医療用デバイス200では、駆動シャフト240及び直動シャフト250が回転しても、内管280は回転せず、内管280に挿入されるフィルタ器具110やガイドワイヤに回転力が作用しない。例えば、回転する管体にフィルタ器具110やガイドワイヤを直接挿入すると、フィルタ器具110やガイドワイヤが管体の内壁面と摺動して摩耗したり、フィルタ器具110やガイドワイヤが回転して抜き難くなったりする場合がある。これに対し、医療用デバイス200は、回転しない内管280に、フィルタ器具110やガイドワイヤを挿入できる。これにより、フィルタ器具110やガイドワイヤの摩耗を抑制し、かつフィルタ器具110やガイドワイヤが回転して抜き難くなることを抑制できる。さらに、管体が回転すると、その内部に血液等の流体を引き込みやすくなる。しかしながら、内管280は回転しないため、内管280のルーメン281内に血液が引き込まれ難くなる。これにより、ルーメン281内での血液の凝結の発生を抑止することによって、操作性の低下を抑制できる。さらに、フィルタ器具110やガイドワイヤ等が挿入される管体が回転すると、管体の内壁面との摩擦によりフィルタ器具110やガイドワイヤ等が軸方向へ移動する。その結果、場合によっては血管を損傷する可能性が生じる。しかしながら、医療用デバイス200では、フィルタ器具110やガイドワイヤ等が挿入される内管280が回転しない。したがって、フィルタ器具110やガイドワイヤ等が軸方向へ移動することによる血管の損傷を抑制できる。
【0138】
さらに、医療用デバイス200は、ストラット41または支持部230の一部に、X線造影性材料からなる造影部を有する。これにより、X線透視法を使ってストラット41または支持部230の位置または拡張径を的確に把握することが可能となり、手技がより容易なものとなる。
【0139】
加えて、医療用デバイス200は、ストラット41よりも先端側に、管状であって外周面に複数の凸部261が形成された先端チューブ260をさらに有する。これにより、先端チューブ260によっても狭窄部Sを切削可能となり、狭窄部Sを迅速に切削できる。
【0140】
さらに、生体管腔内の物体を切削するための処置方法(治療方法)をも開示する。処置方法は、回転可能な駆動シャフトと、駆動シャフトの先端側に連結されて回転可能であり、回転軸に沿って延在するとともに中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である少なくとも1つのストラットと、駆動シャフトが駆動されて回転可能であり、複数の間隙を備えて網状かつ管状に形成されて、少なくとも一部がストラットの径方向内側に位置し、回転軸に沿う方向の中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である支持部と、を有する医療用デバイスを使用して行われる。当該処置方法は、(i)ストラット及び支持部を収縮させた状態で生体管腔内へ挿入するステップと、(ii)生体管腔内の物体の間の間隙の大きさを検出するステップと、(iii)ストラット及び支持部を狭窄部よりも基端側で狭窄部の間隙よりも大きく拡張させるステップと、(iv)ストラット及び支持部を駆動シャフトにより回転させて狭窄部の間隙に押し込み狭窄物を切削するステップと、(v)ストラット及び支持部を収縮させるステップと、(vi)ストラット及び支持部を生体管腔内から抜去するステップと、を有することができる。上記のように構成した処置方法は、ストラット及び支持部を狭窄部よりも基端側で狭窄部の間隙よりも大きい適切な大きさに拡張させた後に、狭窄部の物体を切削できる。これにより、狭窄部の物体を効果的に切削することができる。なお、狭窄部とは、閉塞部をも含む意味であり、閉塞部は、狭窄部の一形態である。
【0141】
さらに、上述の処置方法によると、ストラット及び支持部を拡張させるステップ及び狭窄部の物体を切削するステップを、ストラット及び支持部を徐々に大きく拡張させつつ少なくとも一回繰り返してもよい。このように、狭窄部の物体を少しずつ切削できるので、ストラットに作用する負荷が低減される。これにより、ストラットの損傷や破断を抑制しつつ、物体をより確実に切削できる。
【0142】
さらに、上述の処置方法によると、ストラット及び支持部を拡張させるステップにおいて、ストラット及び支持部を、最大拡張状態よりも小さい大きさに拡張させてもよい。例えばバルーンで狭窄部を拡張させる場合、バルーンは、予め設定される最大拡張状態とすることで狭窄部を拡張させる。しかしながら、本処置方法では、最大拡張状態よりも小さい大きさのストラットで狭窄部の物体を切削できる。これにより、望ましい切削条件に設定することが容易である。
【0143】
さらに、上述の処置方法は、狭窄部の間隙の大きさを検出するステップにおいて、X線透視法を使ってストラットまたは支持部の一部に設けられるX線造影性材料からなる造影部を観察することで、間隙の大きさを検出してもよい。このようにして、ストラットまたは支持部の位置及び拡張径を、X線透視法を使って狭窄部の間隙と比較しつつ的確に調節することが可能となり、手技がより容易なものとなる。
【0144】
さらに、本開示は、生体管腔内の物体を切削するための他の処置方法(治療方法)も提供する。当該処置方法は、回転可能であって管状の駆動シャフトと、駆動シャフトを収容可能な管状の外シースと、駆動シャフトの先端側に連結されて回転可能であり、回転軸に沿って延在するとともに中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である少なくとも1つのストラットと、駆動シャフトの内部に配置されて駆動シャフトに対して相対的に軸方向へ移動することでストラットを拡張させる直動シャフトと、外シースと駆動シャフトの間の部分、及び駆動シャフトと直動シャフトの間の部分のどちらか一方に液体を供給する送液部と、を有する医療用デバイスを使用する。当該処置方法は、(i)ストラットを収縮させた状態で生体管腔内へ挿入するステップと、(ii)直動シャフトを駆動シャフトに対して移動させてストラットを拡張させるステップと、(iii)ストラットを駆動シャフトにより回転させて生体管腔内の物体を切削するステップと、(iv)医療用デバイスを生体管腔内に挿入した状態において、外シースと駆動シャフトの間の部分、及び駆動シャフトと直動シャフトの間の部分のどちらか一方に先端方向へ流れるように送液部により液体を供給するステップと、(v)ストラットを収縮させて生体管腔内から抜去するステップと、を有することができる。上記のように構成した処置方法によると、外シースと駆動シャフトの間、及び駆動シャフトと直動シャフトの間の少なくとも一方で液体が先端方向に流れる。これにより、血液が外シースと駆動シャフトの間、及び駆動シャフトと直動シャフトの間の少なくとも一方に流入し難くなる。したがって、血液は、処置デバイス内での凝結が抑制され、各管体の間の相対的な移動を適切に維持される。これにより、操作性の低下を抑制できる。さらに、医療用デバイスを介した血液の流出を抑制できるため、安全性を向上できる。
【0145】
さらに、本開示は、生体管腔内の物体を切削するためのさらに他の処置方法(治療方法)をも提供する。当該処置方法は、回転可能な駆動シャフトと、駆動シャフトの先端側に連結されて回転可能であり、回転軸に沿って延在するとともに中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である少なくとも1つのストラットと、駆動シャフトが駆動されて回転可能であり、複数の間隙を備えて網状かつ管状に形成されて、少なくとも一部がストラットの径方向内側に位置し、回転軸に沿う方向の中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である支持部と、ストラットに作用する回転方向抵抗及び軸方向抵抗の少なくとも一方を含む抵抗を検知する検知部と、を有する医療用デバイスを使用して行われる。当該処置方法は、(i)ストラット及び支持部を収縮させた状態で生体管腔内へ挿入するステップと、(ii)ストラット及び支持部を拡張させるステップと、(iii)ストラット及び支持部を駆動シャフトにより回転させて生体管腔内の物体に対して押し込み及び引き戻しを繰り返しつつ物体を徐々に切削するステップと、(iv)検知部により抵抗を検知するステップと、(v)抵抗が予め設定された閾値を超える場合にストラット及び支持部の回転を停止するか、または抵抗が閾値を超えたことを通知するステップと、(Vi)ストラット及び支持部を収縮させて生体管腔内から抜去するステップと、を有することができる。上記のように構成した処置方法によれば、抵抗が予め設定された閾値を超える場合に、ストラット及び支持部の回転を停止するか、または抵抗が予め設定された閾値を超えたことを通知する。これにより、ストラットに過剰な抵抗が作用する場合に、ストラットの破損や破断を抑制するための対処を施すことが可能となり、安全性が向上する。
【0146】
さらに、上述の処置方法は、ストラット及び支持部の回転を停止するか、または抵抗が閾値を超えたことを通知するステップの後、ストラット及び支持部を収縮するか、または軸方向に沿って移動させるステップをさらに有してもよい。このように、ストラットによる切削を再開する際に、ストラットに作用する抵抗が低減される。これにより、ストラットの破損や破断を抑制できる。
【0147】
さらに、上述の処置方法は、ストラット及び支持部を縮径または軸方向に沿って移動させるステップにおいて、ストラット及び支持部を基端方向へ移動させて物体から離間させてもよい。このように、切削を再開する際に、ストラット及び支持部を基端側から物体に対して押し込むことができるので、物体を効果的に切削できる。
【0148】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、第1実施形態では、ストラット41の先端側にのみ刃47が形成されている。しかしながら、刃47は、ストラット41の基端側に形成されてもよく、先端側及び基端側の両方に形成されてもよい。
【0149】
さらに、第1実施形態によると、1つのストラット41には、内部に複数の開口部45が形成されている。しかしながら、
図30に示すように、1つのストラット160に、当該ストラット160の延在方向へ長い開口部161が1つのみ形成され、この開口部161の内縁部が刃として機能するものでもよい。前述した実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0150】
さらに、第1実施形態によると、ストラット41の開口部45の内縁部が刃47となっている。しかしながら、ストラットの外側の縁部が刃として機能するものでもよい
さらに、医療用デバイス10が挿入される生体管腔は、血管に限定されず、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等も含まれる。
【0151】
さらに、切削部40及び支持部50の少なくとも一方が、
図31に示す第1実施形態に係る他の変形例のように、親水性材料からなる被覆層170により被覆されてもよい。このような構成によれば、切削部40及び支持部50の少なくとも一方と生体組織の間が滑りやすくなる。これにより、正常な生体組織の損傷を抑制して安全性を高めることができる。上記の実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0152】
例えば、親水性材料としては、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテルー無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレートージメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0153】
さらに、ストラットに形成される刃は、ストラットの外表面に付着されるダイヤモンド粒子などの研磨材であってもよい。
【0154】
さらに、第1実施形態によると、ストラット41の径方向内側に、支持部50が配置されている。しかしながら、支持部を構成するワイヤの一部が、ストラットの外側に配置されてもよい。この構成によると、ストラットの生体組織に接触させたくない部位がワイヤで覆われる。よって、正常な生体組織の損傷を低減させることができる。
【0155】
さらに、上述した第1実施形態によると、切削部40及び支持部50は、操作部90における操作によって任意の大きさに拡張させることができる。しかしながら、切削部40及び支持部50は、任意の大きさに拡張可能でなくてもよい。あるいは、切削部及び支持部は、自己復元力により拡張する構造であってもよい。
【0156】
さらに、上述した第1実施形態によると、支持部50は、複数のワイヤ51を編組して形成されている。しかしながら、支持部は、1つの部材に複数の開口部を形成して網状となるように形成されてもよい。
【0157】
さらに、上述した第1実施形態では、直動シャフト70を移動させるために、送りねじ機構を用いている。しかしながら、直動シャフト70を移動させることが可能であれば、構造はそれに限定されない。
【0158】
さらに、上述した第1実施形態では、駆動シャフト60を回転させるために、モータ96を用いている。しかしながら、それに限定されることなく、駆動源は、例えば窒素ガス等の高圧ガスによって回転するガスタービンであってもよい。
【0159】
さらに、切削部及び支持部の少なくとも一部は、材料中にX線造影性材料が含まれて形成されていてもよい。このように、X線透視法を使って位置を的確に把握することができることにより、手技がより容易なものとなる。例えば、X線造影性材料としては、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適である。
【0160】
さらに、
図32に示す第2実施形態の変形例は、切削部410の先端側端部411が、支持部230の先端側端部234に固定されていてもよく、切削部410の基端側端部412が、支持部230の基端側端部235及び駆動シャフト240に固定されていてもよい。これにより、切削部410の基端側端部412は、支持部230の基端側端部235及び駆動シャフト240に対して、軸方向へ相対的に移動可能となっている。支持部230の基端側端部235は、駆動シャフト240に固定されており、支持部230の先端側端部234は、直動シャフト250に固定されている。このような構成であっても、支持部230の先端側端部234及び基端側端部235が移動して互いに近づく。このように、軸方向への力は、切削部410の先端側端部411及び基端側端部412の間に作用しない。切削部410のストラット41は、支持部230から受ける径方向外側への力のみで拡張させることができる。前述した実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0161】
さらに、
図33に示す第2実施形態の他の変形例のように、直動シャフト250の基端部及び駆動シャフト240の基端部を連結する伸縮可能な連結部420は、蛇腹状に形成されてもよい。連結部420が蛇腹状であれば、連結部420の軸方向への伸縮がより容易となる。前述した実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0162】
さらに、
図34に示す第2実施形態のさらに別の変形例のように、送液部430の第1ハウジング431に外シース270が連結されておらず、第1ハウジング431に設けられるポート部357よりも先端側に、第3シール部432が設けられてもよい。そして、駆動シャフト440には、第1シール部355と第3シール部432との間に孔部441が形成されている。駆動シャフト440の外表面には、第3シール部432と摺動可能に接触し、摩擦力を低減するための第2被覆部442が被覆されている。このような構成により、外シース270と駆動シャフト440の間の部分には、収容バッグ352から生理食塩水を供給せず、孔部441を介して、駆動シャフト440と直動シャフト250の間の部分に生理食塩水を流入させることができる。駆動シャフト440内に流入した生理食塩水は、直動シャフト250の孔部251を通って直動シャフト250内に流入可能である。直動シャフト250内に流入した生理食塩水は、内管280の孔部282を通った後、内管280のルーメン281内に流入可能である。前述した実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0163】
図35Aは、例示の実施形態による処置デバイス20の先端側端部を示す長手方向の断面図である。
図35Aに示すように、処置デバイス20は、径方向外方に伸縮可能な切削部(または切断部)40と、切削部40を回転させる駆動シャフト60と、切削部40の変形量を調整する直動シャフト(または長尺状のチューブ)70と、直動シャフト70の先端側に接続された先端部材500(または先端チューブ)を備えることができる。例示の実施形態によると、切削部40と支持部(または拡張部)50(
図35B)は、処置部材502を形成する。
【0164】
例示の実施形態によると、
図35Aに示すように、軸受部材510が切削部40と支持部50より先端側に載置されていることから、直動シャフト70を切削部40と駆動シャフト60の回転から離間させることができる。これにより、血管の管腔が、長尺状のチューブまたは直動シャフト70のルーメン72内に挿通されたガイドワイヤ(図示せず)の回転によって傷がついたり損傷したりしないように防ぐことができる。さらに、軸受部材510は、ガイドワイヤ(図示せず)を処置デバイス20から抜去しやすくすることができる。また、軸受部材510を使って処置部材502の先端側と、長尺状のチューブまたは直動シャフト70のルーメン72との間の抵抗を低減することもできる。
【0165】
図35Bは、例示の実施形態による処置デバイス20の先端側端部を示す長手方向の断面図である。
図35Bに示すように、処置デバイス20は、径方向外方に伸縮可能な切削部40と、切削部40を支持する支持部50と、切削部40を回転させる駆動シャフト60と、切削部40の変形量を調整する直動シャフト70と、直動シャフト70の先端に接続された先端部材500(または先端チューブ)を備えることができる。
【0166】
図36は、例示の実施形態による処置デバイス20の伸長状態の先端側端部を示す長手方向の断面図である。
図36に示すように、上記のような伸長状態(または拡張状態)では、支持部50は、駆動シャフト60及び直動シャフト(または長尺状のチューブ)70の相対的な軸方向への移動により生じる軸方向への力を受けて、径方向外側へ拡張可能である。
【0167】
図37Aは、例示の実施形態による処置デバイス20の先端側端部を示す断面図である。
図37Aに示すように、支持部(または拡張部)50の先端側は、軸受部材510の外管514に接続される。例示の実施形態によると、軸受部材510は、内管512と、外管514と、内管512と外管514の間に挟持されたリング部材(または軸受)516とを備える。内管512は、直動シャフト(または長尺状のチューブ)70に接続可能であり、外管514は、拡張可能な支持部50に接続可能である。リング部材516は、例えば、回転素子軸受、玉軸受、及び/または、ころ軸受など、任意の適した軸受でよい。
【0168】
例示の実施形態によると、内側支持部材(または補強部材)518を軸受部材510と直動シャフト70の間に配置し、さらに直動シャフト70と先端部材500の間に配置してもよい。内側支持部材(または補強部材)518は、好ましくは、軸受部材510の基端側から軸受部材510の先端側まで延在する。さらに外側支持部材519は、軸受部材510の外側部分上に設けることが可能である。外側支持部材519は、軸受部材510の外側部分と、直動シャフト70から離間する支持ハウジング530の外側部分に接続可能である。図示のごとく、軸受部材510は、内側支持部材518と外側支持部材519の間に挟持することができる。例示の実施形態によると、内側支持部材518と、軸受部材510と、外側支持部材519は管状支持部材540を形成することができる。
【0169】
例示の実施形態によると、処置部材502の先端側では、間隙または空間520が支持部50の内側522と直動シャフト(または長尺状のチューブ)70の外側524の間に配置される。開示のごとく、駆動シャフト60(
図37Aには示していない)によって回転可能に駆動され、例えば、網状かつ管状に形成され、複数の間隙を有し、その一部が少なくとも1本のストラット(図示せず)の径方向内側に位置し、回転軸に沿う方向の中央部が撓むことで径方向外側へ拡張可能である支持部50が設けられる。
【0170】
図37Aに示すように、先端では、支持部50を直動シャフト70から離間した支持ハウジング530内に収容することができる。例示の実施形態によると、支持ハウジング530の先端側が軸受部材510を含む管状支持部材540に接続されている。支持ハウジング530は、支持部50の先端を受容するように構成することができる。例示の実施形態によると、管状支持部材540は、支持ハウジング530の先端側から軸受部材510まで延在できる。
【0171】
図37Bは、例示の実施形態による処置デバイスの先端側端部を示す断面図である。
図37Bに示すように、例示の実施形態によると、間隙または空間560が支持部50の内側562と、処置部材502の基端側の直動シャフト(または長尺状のチューブ)70の外側564の間に配置される。さらに、支持部(あるいは拡張部)50は、処置部材502の基端側の切削部(切断部)40の内縁542に接続される。
【0172】
図38Aは、例示の実施形態による処置デバイスの先端側端部を示す長手方向の断面図である。
図38Aに示すように、処置デバイス20は、径方向外方に伸縮可能な切削部40と、切削部40を回転させる駆動シャフト60と、切削部40の変形量を調整する直動シャフト70と、直動シャフト70の先端側に接続された先端部材500(または先端チューブ)を備えることができる。切削部40及び切削部40を支持する支持部50は、処置部材502を形成する。
【0173】
図38Bは、例示の実施形態による処置デバイス20の伸長状態の先端側端部を示す長手方向の断面図である。
図38Bに示すように、上記のような伸長状態(または拡張状態)では、支持部50は、駆動シャフト60及び直動シャフト70の相対的な軸方向への移動により生じる軸方向への力を受けて径方向外側へ拡張可能である。
【0174】
図39は、例示の実施形態による処置デバイス20の先端側端部を示す断面図である。例示の実施形態によると、切削部40の先端574は、間隙または空間570を形成する支持部材(または拡張部)50の先端572から径方向に離間する。
図39に示すように、支持部50の先端572は、切削部40の径方向の力を支持させることができる処置ユニット502の切削部40の先端574の先端側に載置される。さらに、切削部40の先端574から支持部材50の先端572を離間させることにより、切削部40のストラット41(
図4)に対する損傷や損壊を回避できる。例示の実施形態によると、支持部50は、先端側に延在して先端チューブ75内に入る。例示の実施形態によると、先端チューブ75を直動シャフト70の先端側に固定することができる。
【0175】
例示の実施形態によると、回転可能な管状の駆動シャフト60と、駆動シャフト60の先端側に接続された処置部材500と、駆動シャフト60を通って延在する長尺状のチューブ70と、処置部材500の先端側と長尺状のチューブ70を接続する軸受部材510と、を備える医療用デバイスを使うことによって、生体管腔内の物体を切削するための処置方法が開示される。処置方法は、収縮した状態にある処置部材500を生体管腔内に挿通させることと、生体管腔内の物体の間の間隙の大きさを検出することと、物体の間の間隙からさらに基端側において、処置部材500を物体の間の間隙より大きくなるように拡張することと、駆動シャフト60を回転させて処置部材500を物体の間の間隙に押し込むようにすることによって物体を切削することとを含むことができる。
【0176】
上記の詳細な説明は、医療用デバイス及び処置方法について説明している。しかしながら、本発明は上記の精細な実施形態や変形例に限定されない。添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、修正、及び均等物が当業者によって実施され得る。特許請求の範囲に含まれる全てのそのような変更、修正、及び均等物は、特許請求の範囲に包含されることは明らかである。