(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892332
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】テンションカットロール装置及びその清掃方法
(51)【国際特許分類】
B65H 23/26 20060101AFI20210614BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
B65H23/26
B65H27/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-117811(P2017-117811)
(22)【出願日】2017年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-1609(P2019-1609A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(72)【発明者】
【氏名】工藤 晨
(72)【発明者】
【氏名】福山 貴裕
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−288756(JP,A)
【文献】
特開2002−255383(JP,A)
【文献】
特開2010−047393(JP,A)
【文献】
特開2012−131061(JP,A)
【文献】
特開2007−106508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B65H 23/00−23/16
B65H 23/24−23/34
B65H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するウエブを抱き角θで抱いて回転するテンションカットロールと、
前記テンションカットロールの表面を清掃する清掃部と、
走行する前記ウエブによって回転し、かつ、前記テンションカットロールの上流にある第1ガイドロールと、
前記第1ガイドロールを通過する前記ウエブの第1張力T1を検出する第1検出部と、
走行する前記ウエブによって回転し、かつ、前記テンションカットロールの下流にある第2ガイドロールと、
前記第2ガイドロールを通過する前記ウエブの第2張力T2を検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した前記第1張力T1の所定の第1検出時間内の第1変動幅が第1設定幅以上になったとき、又は、前記第2検出部が検出した前記第2張力T2の所定の第2検出時間内の第2変動幅が第2設定幅以上になったときに、前記ウエブと前記テンションカットロールとの間の静止摩擦係数が基準動摩擦係数まで下がったと判断し、前記清掃部を動作させる制御部と、
を有するテンションカットロール装置。
【請求項2】
前記清掃部は、ブラシロールである、
請求項1に記載のテンションカットロール装置。
【請求項3】
前記清掃部は、粘着ロールである、
請求項1に記載のテンションカットロール装置。
【請求項4】
前記清掃部は、超音波クリーナである、
請求項1に記載のテンションカットロール装置。
【請求項5】
前記テンションカットロールの表面は、ハードクロムメッキ或いは梨地加工である、
請求項1に記載のテンションカットロール装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記清掃部による清掃を前記テンションカットロールが1周又は2周するまで行う、
請求項1に記載のテンションカットロール装置。
【請求項7】
走行するウエブを抱き角θで抱いて回転するテンションカットロールと、
前記テンションカットロールの表面を清掃する清掃部と、
走行する前記ウエブによって回転し、かつ、前記テンションカットロールの上流にある第1ガイドロールと、
前記第1ガイドロールを通過する前記ウエブの第1張力T1を検出する第1検出部と、
走行する前記ウエブによって回転し、かつ、前記テンションカットロールの下流にある第2ガイドロールと、
前記第2ガイドロールを通過する前記ウエブの第2張力T2を検出する第2検出部と、
を有したテンションカットロール装置の清掃方法であって、
前記第1検出部が検出した前記第1張力T1の所定の第1検出時間内の第1変動幅が第1設定幅以上になったとき、又は、前記第2検出部が検出した前記第2張力T2の所定の第2検出時間内の第2変動幅が第2設定幅以上になったときに、前記ウエブと前記テンションカットロールとの間の静止摩擦係数が基準動摩擦係数まで下がったと判断し、前記清掃部を動作させる、
テンションカットロール装置の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンションカットロール装置
及びその清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状のウエブを搬送しながら加工する場合に、例えば加熱装置などから搬出されたウエブの張力を調整する必要がある。そのため、乾燥装置などの出口側にはテンションカットロールが設けられている。
【0003】
このテンションカットロールは、このテンションカットロールの前方のウエブの張力と、後方の張力とを変化させるために、テンションカットロールは、ウエブを所定の抱き角で抱くことにより、テンションカット(張力差を調整)を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−211784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようなテンションカットロールの表面が汚れてくると、目的とした張力差の調整を行うことができなくなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、テンションカットロールの表面が汚れてきたことを検出して、その表面を清掃できるテンションカットロール装置
及びその清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走行するウエブを抱き角θで抱いて回転するテンションカットロールと、前記テンションカットロールの表面を清掃する清掃部と、
走行する前記ウエブによって回転し、かつ、前記テンションカットロールの上流にある第1ガイドロールと、前記第1ガイドロールを通過する前記ウエブの第1張力T1を検出する第1検出部と、走行する前記ウエブによって回転し、かつ、前記テンションカットロールの下流にある第2ガイドロールと、前記第2ガイドロールを通過する前記ウエブの第2張力T2を検出する第2検出部と、前記第1検出部が検出した前記第1張力T1の所定の第1検出時間内の第1変動幅が第1設定幅以上になったとき、又は、前記第2検出部が検出した前記第2張力T2の所定の第2検出時間内の第2変動幅が第2設定幅以上になったときに、前記ウエブと前記テンションカットロールとの間の静止摩擦係数が基準動摩擦係数まで下がったと判断し、前記清掃部を動作させる制御部と、を有するテンションカットロール装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テンションカットロールの表面が汚れてきたことを検出して、その表面を清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態を示すテンションカットロール装置の説明図である。
【
図2】変更例1のテンションカットロール装置の説明図である。
【
図3】変更例2のテンションカットロール装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のテンションカットロール(以下、「カットロール」という)12を有するテンションカットロール装置(以下、「本装置」という)10について
図1に基づいて説明する。本装置10において搬送される長尺状のウエブWは、例えば、フィルム、金属箔、布帛、紙などである。
【0011】
(1)本装置10の構成
本装置10について
図1を参照して説明する。本装置10は、ウエブWを熱処理して加熱する熱処理装置の出口側、熱処理装置の入口側、ウエブWの巻取り装置の入口側、ウエブWの巻出し装置の入口側、ウエブWに塗工液を塗工する塗工装置の入口側、又は、塗工装置の出口側に設けられている。
【0012】
本装置10は、カットロール12、カットロール12の上流に配された第1ガイドロール14、カットロール12の下流に配された第2ガイドロール16を有している。
【0013】
カットロール12は、鋼鉄製の円柱状であり、その表面にハードクロムメッキ或いは梨地加工が施されている。カットロール12は、トルク制御と回転数の制御が可能なモータ18によって回転する。そして、カットロール12は、
図1に示すようにウエブWを抱き角θで抱いて回転させる。
【0014】
第1ガイドロール14は、ウエブWの走行によって回転する。また、このときのウエブWの張力(以下、「第1張力T1」という)を検出するための第1検出部20が設けられている。第1検出部20は、テンションピックアップ装置であり、第1ガイドロール14にかかった張力をバネなどの弾性体により検出したり、作動トランス式、すなわち、作動変圧器を用いて検出するものである。なお、この第1検出部20は、第1ガイドロール14の外部に設けられているだけでなく、例えば第1ガイドロール14の回転軸内部にアクティブフォースセンサを設けて、第1張力T1を測定してもよい。
【0015】
第2ガイドロール16は、カットロール12を通過したウエブWの走行によって回転する。このときのウエブWの張力(以下、「第2張力T2」という)を検出する第2検出部22が設けられている。この第2検出部22も、第1検出部20と同様にテンションピックアップ装置などからなる。
【0016】
カットロール12の表面外方には、清掃部24が設けられている。清掃部24は、ブラシロール26とそのブラシロール26を上下動させて、カットロールの表面に接触させる上下動装置28を有する。
【0017】
モータ18、第1検出部20、第2検出部22、清掃部24の上下動装置28は、コンピュータよりなる制御部30に接続されている。制御部30は、モータ18によってカットロール12を所定の回転速度で回転させ、第1張力T1と第2張力T2を検出する。そして、制御部30は、カットロール12の上流側の第1張力T1とカットロール12を通過した下流側の第2張力T2が、予め定めた目的の張力差ΔTになるように、清掃部24を動作させる。
【0018】
(2)清掃部24の動作状態
次に、制御部30が清掃部24を動作させる状態について
図1を参照して説明する。
【0019】
制御部30は、モータ18によって、カットロール12を所定の回転速度で回転させウエブWを走行させている。このとき、カットロール12は、ウエブWを抱き角θで抱き、上流側の第1張力T1と下流側の第2張力T2との間に張力差ΔTがあるように回転している。また、第1検出部20と第2検出部22は、それぞれ第1張力T1と第2張力T2をリアルタイム(例えば、1秒間に5回)に検出している。さらに、清掃部24のブラシロール26は、カットロール12の表面が正常な状態ではカットロール12から離れた位置に待機している。
【0020】
ΔTに関する式を下記に記載する。静止摩擦係数μ0について詳しく説明する。
ΔT=T2−T1=T1*{exp(μθ)−1} ・・・(1)
但し、μ0は静止摩擦係数である、μは基準動摩擦係数であり、μ<μ0である。基準動摩擦係数μとは、カットロール12が回転しながらウエブWを走行させ、ΔTの張力差を得られる実際の動摩擦係数であり、T1、T2、θを予め設定して(1)式から予め求めておく。
【0021】
ここで静止摩擦係数μ0とは、カットロール12の全周面の領域の静止摩擦係数の平均値を意味している。すなわち、カットロール12の全周面において、周面の各領域で全く同じ静止摩擦係数の値ではなく、汚れや表面形状の違いなどでその値にばらつきがある。そこで、これら各領域の静止摩擦係数の代表して、周面の全ての領域の静止摩擦係数の値の平均値を、静止摩擦係数μ0と呼ぶ。
【0022】
また、基準動摩擦係数μについても同様に、カットロール12の周面の領域の基準動摩擦係数の平均値を基準動摩擦係数μと呼ぶ。
【0023】
そして、平均的な基準動摩擦係数μと平均的な静止摩擦係数μ0が同じであっても、各領域の静止摩擦係数の値にはばらつきがあるため、カットロール12の一部の領域では、μ=μ0でなく、μ0<μになったり、μ0>μになり、この違いによりウエブWが走行する場合に滑りや擦れが発生して、張力差ΔTにばらつきが生じることとなる。
【0024】
ところで(1)式に示すように、ΔTが一定になるためには、基準動摩擦係数μが静止摩擦係数μ0より小さい必要がある。しかし、カットロール12の表面が汚れ、ウエブWとカットロール12の間に滑りが発生して静止摩擦係数μ0が小さくなり、基準動摩擦係数μに近づいたり、等しくなると、上記したように、カットロール12の一部の領域では、μ=μ0でなく、μ0<μになったり、μ0>μになり、この違いにより張力差ΔTにばらつきが生じる。したがって、カットロール12の表面の汚れを落として、静止摩擦係数μ0を上げる必要がある。
【0025】
張力差ΔTの変動は、(1)式に示すように、第1張力T1又は第2張力T2の変動で発生する。例えば、第1張力T1に関して、基準第1張力=50N(ニュートン)を設定しているとする。このときに、カットロール12の表面が汚れておらず正常な場合には、検出する第1張力T1は、50Nとなる。
【0026】
しかし、カットロール12の表面が汚れてくると、検出する第1張力T1に変動が生じてくる。例えば、検出した第1変動幅が、第1検出時間(例えば、5秒間)の間で第1設定幅(例えば、1〜2N)より大きく変動する。このときに制御部30は、清掃部24を動作させる。
【0027】
清掃部24は、上下動装置28によってブラシロール26をカットロール12の表面に接触させ、カットロール12の表面を清掃する。この場合にカットロール12が1周又は2周分だけブラシロール26を通過するまで行う。清掃部24は、カットロール12が1周又は2周する時間に対応した時間だけ清掃するように設定されている。カットロール12の表面が清掃されると、静止摩擦係数μ0が再び上昇して、検出する第1張力が基準第1張力になる。
【0028】
また、第2検出部22によって検出した第2張力T2の第2時間内の第2変動幅が第2設定幅よりも大きくなった場合にも、制御部30は、カットロール12の表面が汚れていると判断して清掃部24を動作させる。
【0029】
なお、制御部30は、第1検出部20の検出した第1張力T1、又は、第2検出部22が検出した第2張力T2の変動幅のどちらか一方が所定時間内に所定幅変動した場合に清掃部24を動作させる。
【0030】
(3)効果
本実施形態によれば、カットロール12の表面の汚れを、ウエブWとカットロール12の間の静止摩擦係数に着目し、この静止摩擦係数が低下した場合を第1張力T1又は第2張力T2の所定時間内の変動幅で検出する。すなわち、この変動幅が設定幅以上になった場合には、カットロール12の表面が汚れているとして、清掃部24でカットロール12の表面を清掃し、再び必要な張力差が得られるようにできる。
【0031】
また、清掃部24は、ブラシロール26によって清掃するため、静電除去を行うことができ、また、カットロール12の表面が汚れてきたときのみ清掃を行うため、ウエブWの走行の障害にならず、確実に清掃できる。
【0032】
(4)変更例1
上記実施形態では、清掃部24の清掃手段としてブラシロール26を用いたが、これに代えて、
図2に示すような粘着ロール32、34を用いてもよい。この場合には、上下動装置28は粘着ロール32、34を一体に上下動させる。そして、清掃時には粘着ロール32をカットロール12の表面に接触させて汚れを除去し、この粘着ロール32の汚れは粘着ロール34によって清掃する。これによって、汚れた粘着ロール32が再びカットロール12の表面に接触することがない。
【0033】
(5)変更例2
上記実施形態では、清掃部24は、ブラシロール26で清掃したが、これに代えて
図3に示すように超音波クリーナ36でカットロール12の表面を清掃させてもよい。この場合には、上下動装置28で超音波クリーナ36を上下動させるのでなく、制御部30は、清掃のタイミングになると、超音波クリーナ36を動作させる。
【0034】
(6)その他
上記実施形態では、カットロール12の表面は平らであったが、これに代えて螺旋状の溝が設けられていてもよい。
【0035】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・テンションカットロール装置、12・・・カットロール、14・・・第1ガイドロール、16・・・第2ガイドロール、18・・・モータ、20・・・第1検出部、22・・・第2検出部、24・・・清掃部、26・・・ブラシロール、28・・・上下動装置、30・・・制御部