特許第6892343号(P6892343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892343
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】プライマー用硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/10 20060101AFI20210614BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210614BHJP
   C09D 143/04 20060101ALI20210614BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210614BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20210614BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20210614BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20210614BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20210614BHJP
【FI】
   C09D201/10
   C09D5/00 D
   C09D143/04
   B05D7/24 302Y
   C09D183/02
   C09D133/04
   C09D5/02
   C09D7/63
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-140692(P2017-140692)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-19262(P2019-19262A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】横井 宙是
(72)【発明者】
【氏名】園田 健
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−040874(JP,A)
【文献】 特開2005−095723(JP,A)
【文献】 特開2005−068356(JP,A)
【文献】 特開平09−208670(JP,A)
【文献】 特開2015−098557(JP,A)
【文献】 特開2013−014636(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0138356(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00、
101/00−201/10
B05D 7/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるイミノ基含有シラン化合物とアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質を含有することを特徴とするプライマー用硬化剤。
【化1】
(Rは炭素原子数2〜6の2価のアルキレン基又は窒素原子を含む炭素原子数2〜6の2価のアルキレン基、RおよびRは炭素原子数1〜4のアルキル基、Rは水素または炭素原子数1〜4の1価のアルキル基、Rは水素又は一般式(2)を表わし、aは3である。)
【化2】
(Rは水素又は1価のアルキル基、Rは1価のアルキル基を表わす。)
【請求項2】
一般式(1)で表わされる化合物が、下記構造を有する化合物群のいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のプライマー用硬化剤。
【化3】
【請求項3】
さらにオルガノシリケートおよび/またはその変性物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のプライマー用硬化剤。
【請求項4】
さらに分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー用硬化剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプライマー用硬化剤と、アルコキシシリル基含有合成樹脂エマルションを含有することを特徴とするプライマー用硬化性組成物。
【請求項6】
アルコキシシリル基含有合成樹脂エマルションが、アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルションであることを特徴とする請求項5記載のプライマー用硬化性組成物。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプライマー用硬化性組成物を使用することを特徴とする塗装方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載のプライマー用硬化性組成物を使用したことを特徴とする塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー用硬化剤、及びプライマー用硬化性組成物に関し、さらには、塗装方法、及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の外装に用いられるサイディングボード等の外壁材や塗料は、高機能化が進んでおり、耐候性向上を目的にしたふっ素系塗料や無機系塗料が使用されることが増えてきている。また、耐汚染性向上を目的にアルキルシリケートで変性したセラミック変性塗料や光触媒作用を利用した親水性表面処理剤等が用いられている。
【0003】
しかし、これら塗膜には通常塗り替えに用いる塗料やプライマーが付着しない場合が多い。塗り替え対象となる塗料や塗膜に対して、専用のプライマーは存在するものの、実際の塗り替え現場において塗り替え対象塗膜の種類を確認することは難しく、万能的に使えるプライマーが求められている。
【0004】
この目的を達成する手段として、オルガノシリケートおよびケトイミノ基含有アルコキシシラン化合物などのイミノ基含有シラン化合物からなる硬化性組成物を用いる方法が提案されている(特許文献1〜2参照)。
【0005】
しかし、文献記載の方法で用いられている硬化性組成物は長期保存した場合、黄変度が高く、透明な塗装(クリヤー)仕様ができないという点においてまだ改善の余地があった。
【0006】
また、硬化性組成物にケトイミノ基を有する化合物を用いて接着性を付与する文献は多数存在するが(特許文献3〜9)、何れも接着性に対する寄与のみに着目したものであり、貯蔵による黄変や、それに対する改善策についての言及はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−040874
【特許文献2】特開2012−250233
【特許文献3】特開平05-311141
【特許文献4】特開平07-102167
【特許文献5】特開平08-127712
【特許文献6】特開平09-208670
【特許文献7】特開2003−342547
【特許文献8】特開2005−068356
【特許文献9】特開2009−173919
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは前述の課題に対し鋭意検討した結果、長期保存した場合、イミノ基含有シラン化合物が黄変の原因であることを解明した。この点から解決しようとする課題は、着色を抑えられるイミノ基含有シラン化合物を開発し、長期保存した場合でも黄変がし難いプライマー用硬化剤、またそれを用いた硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、着色メカニズムを検討し、イミノ基含有シラン化合物の特定の部位が酸素により酸化され黄変することを解明した。そこで、イミノ基含有シラン化合物が酸化されない構造にすることで、着色し難いイミノ基含有シラン化合物が作成できることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0011】
[1]一般式(1)で表されるイミノ基含有シラン合物とアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質を含有することを特徴とするプライマー用硬化剤。
【0012】
【化1】
【0013】
(R1は炭素原子数2〜6の2価のアルキル基又は窒素原子を含む炭素原子数2〜6の2価のアルキル基、R2およびR3は炭素原子数1〜4のアルキル基、R4は水素または炭素原子数1〜4の1価のアルキル基、R5は水素又は一般式(2)を表わす。)
【0014】
【化2】
【0015】
(R6は水素又は1価のアルキル基、R7は1価のアルキル基を表わす。)
[2]一般式(1)で表わされる化合物が、下記構造を有する化合物群のいずれか1種であることを特徴とする[1]に記載のプライマー用硬化剤。
【0016】
【化3】
【0017】
[3]さらにオルガノシリケートおよび/またはその変性物を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のプライマー用硬化剤。
【0018】
[4]さらに分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のプライマー用硬化剤。
【0019】
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のプライマー用硬化剤と、アルコキシシリル基含有合成樹脂エマルションを含有することを特徴とするプライマー用硬化性組成物。
【0020】
[6]アルコキシシリル基含有合成樹脂エマルションが、アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルションであることを特徴とする[5]記載のプライマー用硬化性組成物。
【0021】
[7][5]または[6]に記載のプライマー用硬化性組成物を使用することを特徴とする塗装方法。
【0022】
[8][5]または[6]に記載のプライマー用硬化性組成物を使用したことを特徴とする塗装物品。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、長期保存した場合に着色し難いプライマー用硬化剤、またはそれを用いた硬化性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0025】
(プライマー用硬化剤)
本発明は、一般式(1)で表されるイミノ基含有シラン化合物とアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質を含有することを特徴とするプライマー用硬化剤である。
【0026】
【化4】
【0027】
(R1は炭素原子数2〜6の2価のアルキル基又は窒素原子を含む炭素原子数2〜6の2価のアルキル基、R2およびR3は炭素原子数1〜4のアルキル基、R4は水素または炭素原子数1〜4の1価のアルキル基、R5は水素又は一般式(2)を表わす。)
【0028】
【化5】
【0029】
(R6は水素又は1価のアルキル基、R7は1価のアルキル基を表わす。)
具体例としては以下のような構造を有する化合物がある。ただし、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0030】
【化6】
【0031】
これら化合物の製造方法として例えば、イソプロピルメチルケトンとアミノ化シラン化合物としてチッソ(株)製サラエースS330を反応させて得られる。
【0032】
(オルガノシリケートおよびその変性物)
本発明のプライマー用硬化剤は、さらにオルガノシリケートおよび/またはその変性物を含有することが好ましい。
【0033】
オルガノシリケートは、加水分解性珪素基を含有する化合物であり、一般式3として現される化合物および/またはその加水分解縮合物である。これをエマルションに添加することにより、得られた塗膜の無機系基材への付着性を向上させる。
(RO)4Si (一般式3)
(式中、Rは同じかまたは異なり、炭素数1〜4のアルキル基)。
【0034】
その具体的化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン及びそれらの部分加水分解・縮合物が例示できる。
【0035】
上記化合物は1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。また、同一分子中に異なったアルコキシシリル基を含有するオルガノシリケートも使用可能である。例えば、メチルエチルシリケート、メチルプロピルシリケート、メチルブチルシリケート、エチルプロピルシリケート、プロピルブチルシリケートなどである。これらの置換基の比率0〜100%の間で任意に変更可能であり、その比率を調整することで、エマルション中へ添加してからのポットライフを調整することができる。
【0036】
また、これらのシリケートの部分加水分解・縮合物も使用可能であると記述したが、縮合度は1〜20程度が好ましい。更に好ましい縮合度の範囲は、3〜15である。
【0037】
オルガノシリケートは、エマルションに対する混和性が低いため、予め界面活性のある物質で水中に乳化して添加するか、あるいは界面活性のある物質とオルガノシリケートとの混合物を直接添加する方法が好ましい。
【0038】
界面活性のある物質とは、分子中に親水基と疎水基とを有する物質で、オルガノシリケートおよび硬化触媒を水中に乳化分散させることのできるものである。具体的には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などであり、これらは単独使用でも、あるいは2種以上の併用でもよい。
【0039】
また、混和性を改善する別の方法として、ポリオキシアルキレン鎖やアミノ基等の親水性基を導入し、オルガノシリケートが水溶性あるいは自己水分散性になるように変性することもできる。
【0040】
(分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤)
本発明のプライマー用硬化剤は、さらに分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤を含有することが好ましい。
【0041】
分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤とは、反応性官能基を有する界面活性のある物質のことである。その界面活性能によりオルガノシリケートおよび硬化触媒をエマルション中に乳化分散させるとともに、反応性官能基がエマルション中に配合されている樹脂成分および/またはその他の配合剤、さらには反応性官能基自身で反応することで付着性、耐水性を向上させる。なお、反応性官能基は、親水基あるいは疎水基と同一であっても良い。具体的な反応性官能基として、(ブロック)イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、ヒドラジド基、アリル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0042】
なかでも、(ブロック)イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、アルコキシシリル基が無機系基材への付着性に有効であり、特に望ましい。
【0043】
(ブロック)イソシアネート基含有化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネートおよびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリアルキレンオキシド基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にしたものである。さらにこれらのイソシアネート基をブロック剤(フェノール・εカプロラクタム等)でマスクしたものでもよい。なかでも、耐候性の観点から無黄変または難黄変のイソシアネートを用いたものが好ましい。
【0044】
これらは一般に架橋剤として市販されており、例えば、住化バイエルウレタン(株)製バイヒジュール3100、バイヒジュール2336、バイヒジュールLS2150/l、バイヒジュールBL116、バイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235、バイヒジュールTPLS2186、バイヒドロールTPLS2153、三井ポリウレタン(株)製タケネートWD−220、タケネートWD−240、タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−726、タケネートWD−730、タケネートWB−700、タケネートWB−720、タケネートWB−730、タケネートWB−920、日本ポリウレタン工業(株)製アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210、アクアネート120、旭化成(株)製デュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWT20−100、デュラネートWT30−100などがあげられる。
【0045】
また、(ブロック)イソシアネート基有するビニル系単量体、親水性基含有ビニル系単量体およびその他のビニル系単量体との共重合体でもよい。
【0046】
(ブロック)イソシアネート基有するビニル系単量体としては、例えば、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリル酸−2−(O−[1´−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、m−イソプロペニル−α、αジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。
【0047】
親水性基含有ビニル系単量体としては、α、β−エチレン性不飽和カカルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート塩酸塩、2−アミノエチル(メタ)アクリラート塩酸塩、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体などがあげられる。
【0048】
α、β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フタル酸、シトラコン酸などがあげられる。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート塩酸塩としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミンエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびその塩酸塩があげられる。
【0049】
ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体に特に限定はないが、ポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましく、具体例としては、日本油脂(株)製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、AP−400、AP−550、AP−800、700PEP−350B、10PEP−550B、55PET−400、30PET−800、55PET−800、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、PME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、AME−400、50POEP−800B、50AOEP−800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP−600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC−A、MTG−A、130A、DPM−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、EHDG−A、日本乳化剤(株)製MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、MPG130−MA、AntoxMS−60、MPG−130MA、RMA−150M、RMA−300M、RMA−450M、RA−1020、RA−1120、RA−1820、新中村化学工業(株)製NK−ESTERM−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、LA、三洋化成(株)製エレミノールRS−30などがあげられる。
【0050】
エポキシ基含有化合物としては、多くのものが市販されており、例えば、ナガセケムテック(株)製デナコールEX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−301、EX−313、EX−314、EX−321、EX−211、EX−810、EX−811、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−921、EX−931、EX−145、EX−171、EX−701、共栄社化学(株)製エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト100MF、坂本薬品工業(株)製SR−NPG、SR−16H、SR−TMP、SR−TPG、SR−4PG、SR−2EG、SR−8EG、SR−8EGS、SR−GLG、SR−DGE、SR−4GL、SR−4GLS、日本油脂(株)製エピオールBE−200、G−100、E−100、E−400、E−1000、P−200、NPG−100、TMP−100、エピオールOHなどが上げられる。
【0051】
また、エポキシ基有するビニル系単量体、親水性基含有ビニル系単量体およびその他のビニル系単量体との共重合体でもよい。
【0052】
エポキシ基を有するビニル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学工業(株)製M−GMA、CyclomerM−100、CyclomerA−200、CyclomerM−101、セロキサイド2000などがあげられる。
カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、特開平8−59303号記載の水溶性又は自己乳化型カルボジイミド化合物などがあげられる。
【0053】
これは、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート等の多官能イソシアネート類の1種または2種以上を脱二酸化炭素縮合反応させることにより、カルボジイミド化し、末端の残存イソシアネート基を親水性基で封止したものである。
【0054】
封止する親水基としては、アルキルスルホン酸塩の残基、ジアルキルアミノアルコールの残基の四級塩、アルコキシ基末端を封鎖されたポリオキシアルキレンの残基などがあげられる。
なお、これらは、水性樹脂架橋剤として市販されており、例えば、日清紡製カルボジライトV−02、V−04、V−06、V−02−L2、E−01、E−02、E−03、E−04、E−05などがある。
【0055】
また、水を含まないものとしてV−02B、V−04B、V−04K、ElastostabH01などがある。
【0056】
アルコキシシリル基含有化合物しては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製A−1230、MAC−2101、MAC−2301などがある。
【0057】
また、ポリオキシアルキレンの末端のヒドロキシ基にイソシアネート系シランカップリング剤を反応させても得られる。ポリオキシアルキレンは末端に1個以上のヒドロキシ基を有しているものであれば、特に限定されない。
【0058】
イソシアネート系シランカップリング剤としては、例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製SILQUESA−1310、Y−5187、信越化学工業製KBE−9007などがあげられる。
【0059】
また、前記、エポキシ基を有する化合物にアミノ系シランカップリング剤を反応させて得ることもできる。
【0060】
アミノ系シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、市販品としては信越化学工業(株)製KBE−9103、KBM−575、KBM−6123、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製SILQUESTA−1120、A−1122、A−1170、A−1110、Y−9669などがあげられる。
【0061】
さらに、アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体、親水性基含有ビニル系単量体およびその他のビニル系単量体との共重合体でもよい。
【0062】
アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体としては、具体例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等があげられる。
【0063】
オキサゾリン基含有化合物は、水性架橋剤として市販されており、例えば、日本硬化触媒(株)製エポクロスWS−500、K−2010E、K−2020E、K−2030E、K−1010E、K−1020E、K−1030Eなどがあげられる。
【0064】
ヒドラジド基含有化合物は、例えば、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、アミノポリアクリルアミドなどがあげられる。
これら分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤とオルガノシリケートおよび硬化触媒をあらかじめ混合しておき、塗装直前にエマルションに混合すると、非常に良好な分散性を示す塗膜が得られる。
【0065】
(プライマー用硬化性組成物)
本発明のプライマー用硬化性組成物は、プライマー用硬化剤と、アルコキシシリル基含有合成樹脂エマルションを含有することが好ましい。
【0066】
本発明に使用可能なアルコキシシリル基含有合成樹脂エマルションとしては、アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルション、アルコキシシリル基含有ウレタン樹脂エマルション、アルコキシシリル基含有ふっ素樹脂エマルション、アルコキシシリル基含有エポキシ樹脂エマルション、アルコキシシリル基含有ポリエステル樹脂エマルション、アルコキシシリル基含有アルキド樹脂エマルション、アルコキシシリル基含有メラミン樹脂エマルションなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。これらの中でコスト、樹脂設計の自由度の高さなどからアルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルションが有利である。
【0067】
アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルションは、(A)アクリル系単量体、(B)アルコキシシリル基含有単量体及び(C)これらと共重合可能な単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0068】
(A)アクリル系単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどが上げられる。
【0069】
特に炭素数4以上のアルキル基および/又はシクロアルキル基を有するメタクリル酸エステルをエマルション樹脂固形分100重量%中に60重量%以上使用するとエマルションの貯蔵安定性が大きく向上する。
【0070】
(B)アルコキシシリル基含有単量体は、(b1)式R12(3-n)SiXn(式中、R1は重合性二重結合を有する1価有機基、R2は炭素数1〜4のアルキル基、Xは炭素数1〜4のアルコキシル基、nは2又は3)で示される有機けい素化合物で、2又は3個のアルコキシル基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシランなどが上げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができる。なかでも、エマルションの保存安定性の観点から、Xは炭素数2〜4が特に好ましい。
【0071】
これらをコア/シェル型エマルションにおけるシェル部100重量部に対してに0.5〜30重量部、好ましくは1〜15重量部用いることによって、シェル部が高度に架橋し、耐候性、耐水性が向上させるとともに、無機系基材への付着性も向上する。
【0072】
また、(b2)式R34(3-a)SiYa(式中、R3は重合性二重結合を有する1価有機基、R4は炭素数1〜4のアルキル基、Yは炭素数1〜4のアルコキシル基、aはa<nの関係を有する1又は2の整数)で示される有機けい素化合物は、1又は2個のアルコキシル基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。その具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルブトキシシランなどが上げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0073】
これらをコア/シェル型エマルションにおけるコア部100重量部に対してに0〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部用いることによって、コア部に緩やかな架橋構造が導入され、柔軟性を損なうことなく、耐水性、塗膜強度を向上させることができる。
【0074】
(b1)および(b2)のアルコキシル基の炭素数X、Yは、X>Yの関係を有することが、付着性、タック性、可とう性、保存安定性の面で好ましい。
【0075】
(C)成分は、(A)、(B)とは異なり、これらと共重合可能なものであれば、特に限定はされない。その具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシスチレン、アロニクス5700(東亜合成化学(株)製)、placcelFA−1、placcelFA−4、placcelFM−1、placcelFM−4(以上、ダイセル化学(株)製)、HE−10、HE−20、HP−10、HP−20(以上日本触媒化学(株)製)、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーNKH−5050、ブレンマーGLM(以上日本油脂(株)製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどの水酸基含有ビニル系単量体;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物、ビニルメチルエーテル、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0076】
更に、親水性を有するビニル系単量体も使用可能である。使用可能な親水性基を有するビニル系単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体に限定はないが、ポリオキアルキレン鎖を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましく、具体例としては日本油脂(株)製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、AP−400、AP−550、AP−800、700PEP−350B、10PEP−550B、55PET−400、30PET−800、55PET−800、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、PME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、AME−400、50POEP−800B、50AOEP−800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP−600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC−A、MTG−A、130A、DPM−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、EHDG−A、日本乳化剤(株)製MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、MPG130−MA、AntoxMS−60、MPG−130MA、RMA−150M、RMA−300M、RMA−450M、RA−1020、RA−1120、RA−1820、新中村化学工業(株)製NK−ESTERM−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、LAなどがあげられる。
【0077】
また、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体を使用することも可能である。この場合、生成した粒子内部に架橋を有する構造となり、形成した塗膜の耐水性が向上する。
【0078】
更に、トリフルオロ(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどのふっ素含有ビニル系単量体を使用することにより高度な撥水・撥油を付与することも可能である。
【0079】
また、ダイアセトンアクリルアミド、メチルビニルケトン等のカルボニル基含有ビニル系単量体を用い、ヒドラジンおよび/またはヒドラジド基を含有する化合物を配合することにより、架橋性を付与することも可能であり、形成した塗膜の耐水性が向上する。
【0080】
特に、水酸基含有ビニル系単量体および/またはポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体をエマルション粒子の0.5〜20重量%に相当する量を用いると、アルコキシシリル基の安定性を損なうことなく、無機系基材との付着性を向上させ、更にエマルションの機械的安定性、化学的安定性を向上させることができる。なかでも、末端に水酸基を持つポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が特に有効である。使用量が0.5重量%未満では、機械的安定性、化学的安定性が劣り、20重量%を越えると耐水性が低下する。特に好ましくは1〜5重量%である。
【0081】
次にエマルションの製造方法について説明する。(A)、(B)、(C)成分からなる混合物を公知の乳化重合法で乳化重合して得られる。
【0082】
また、コア/シェル型エマルションの製造は、まず、(A)、(b2)、(C)成分からなる混合物を第1段として公知の乳化重合法で、乳化重合し、得られてコア成分の存在下に、(A)、(b1)、(C)からなる混合物を乳化重合し、シェル成分を導入する。なお、コア部、シェル部各成分内の重合は、何回かに分割して行ってもよい。また、コア成分が、シェル成分に対して十分に疎水性である場合には、シェル成分の重合を先に行っても、目的とする組成物が得られる。
【0083】
乳化重合に際しては、通常用いられるイオン性または非イオン性の界面活性剤を用いることができる。
【0084】
本発明においては、界面活性剤として1分子中に重合性二重結合を有する反応性界面活性剤を用いることが耐水性、耐候性の点で好ましい。また、特に分子内にポリオキシアルキレン基を有する反応性界面活性剤を用いた場合には、機械的安定性を向上させることができる。
【0085】
前記界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができ、その使用量は、単量体全量100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.5〜8重量部である。
【0086】
重合開始剤としては、特に限定はないが、重合をより安定に行なうために、重合開始剤としてレドックス系を用いることが望ましい。また、重合中の混合液の安定性を保持し、重合を安定に行なうためには、温度は70℃以下、好ましくは40〜65℃であり、pHは5〜9に調整することが好ましい。
【0087】
前記重合開始剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.01〜10部、好ましくは0.05〜5重量部である。かかる重合開始剤の使用量が0.01重量部未満である場合には、重合が進行しにくくなることがあり、10重量部を超える場合には、生成する重合体の分子量が低下する傾向がある。
【0088】
また、重合開始剤の触媒活性を安定的に付与するために、硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート化剤を用いてもよい。かかるキレート化剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部である。
【0089】
重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤の添加も可能である。
【0090】
アルコキシシリル含有アクリル樹脂エマルション中の樹脂固形分濃度は、20〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%となるように調整する。かかる樹脂固形分濃度が70重量%を超える場合には、系の粘度が著しく上昇するため、重合反応に伴なう発熱を除去することが困難になったり、重合器からの取り出しに長時間を要するようになる傾向がある。また、樹脂固形分濃度が20重量%未満である場合には、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂量が少なく、経済面で不利となる。
【0091】
得られたエマルション組成物に、必要に応じて、通常塗料に用いられる顔料(二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、カーボン、弁柄、黄土、シアニンブルーなど)や成膜助剤、コロイダルシリカ、可塑剤、溶剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、凍結防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの通常塗料に用いられる添加剤を添加することもできる。
【0092】
アルコキシシリル基含有ウレタン樹脂エマルションの具体例としては、三井化学ポリウレタン(株)製タケラックWS−7000、WS−5000、WS−5070X、WS−5100、WS−4000等が挙げられる。
【0093】
アルコキシシリル基含有エポキシ樹脂エマルションの具体例としては、(株)ADEKA製アデカレジンEM−0477、EM−0487等が挙げられる。
【0094】
また、その他の樹脂系においても、各種官能基にシランカップリング剤を反応させることによって得られる。例えば、グリシジル基含有樹脂、カルボキシル基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂にアミノ系シランカップリング剤を反応させる方法、水酸基含有樹脂、アミノ基含有樹脂、カルボキシル基含有樹脂にエポキシ系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤を反応させる方法などがあげられる。これらは、あらかじめエマルション化された樹脂に反応させても良いし、反応終了後にエマルション化しても良い。
【0095】
本発明のプライマー用硬化性組成物としては、イミノ基含有シラン化合物の添加量は、エマルション樹脂の固形分100重量部に対して、0.1〜20重量部添加することが好ましく、0.5〜10重量部が更に好ましい。イミノ基含有シラン化合物の添加量が0.1重量部未満では十分な付着性が確保できず、得られた塗膜の外観が低下することがある。イミノ基含有シラン化合物の添加量が20重量部超では、ポットライフが短くなるなどの作業性が悪化することがある。
【0096】
本発明のプライマー用硬化性組成物としては、オルガノシリケートおよび/またはその変性物の添加量はエマルション樹脂固形分100重量部に対して、0.1〜50重量部添加することが好ましい。0.1重量部未満では、十分な付着性が確保できず、また、50重量部を越えると塗膜が脆くなる傾向がある。更に好ましいオルガノシリケートおよびまたはその変性物の添加量は1〜40重量部であり、特に好ましい添加量は5〜30重量部である。
【0097】
本発明のプライマー用硬化性組成物としては、分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤の添加量は、(III)オルガノシリケートおよび/またはその変性物100重量部に対して、5〜200部であることが好ましい。5重量部未満では、オルガノシリケートおよび/またはその変性物が水性塗料中に均一に分散せず、形成した塗膜の光沢値が低下する。また、200重量部以上用いた場合、形成した塗膜の初期タックが生じたり、硬度が低下する。更に好ましくは、10〜100部である。
【0098】
(アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質)
本発明におけるアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質(以下硬化触媒という)としては、有機金属化合物、酸性触媒、塩基性触媒が使用される。特に、有機錫化合物が好ましい。
【0099】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩、オクチル酸錫などが挙げられる。
【0100】
なかでも、水中での安定性の観点からジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩などのメルカプチド系のものが好ましい。
【0101】
添加方法は、特に限定されないが、予め界面活性のある物質と混合してから添加する方法が、エマルションへの混和性、塗膜の光沢発現の観点で好ましい。
【0102】
硬化触媒の添加量はエマルションの固形分100重量部に対し、0.01〜10重量部配合することが好ましく、特に0.05〜5重量部が好ましい。0.01重量部未満では、硬化活性が低く、10重量部を超えると塗料の可使時間が短くなり、また、塗膜の耐水性、耐候性が低下する。
【0103】
(塗装方法)
本発明において基材に硬化性組成物を塗布する方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば刷毛で塗布する方法、ローラーで塗布する方法、スプレーする方法などが挙げられる。無機系基材に硬化性組成物を塗布した後、さらに塗料を塗り重ねても良い。このような塗装方法により、アルコキシシリル基含有合成樹脂エマルション、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質、および 一般式(1)で表されるイミノ基含有シラン化合物を含有する硬化性組成物から得られる塗膜が基材上に形成された塗装物品を得ることができる。
【実施例】
【0104】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0105】
(合成例I−1)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水160重量部、Newcol−707SF(日本乳化剤(株)製)1.4重量部、5%炭酸水素ナトリウム水溶液1.0重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。昇温後、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液2.0重量部、20%BruggoliteFF−6水溶液1.1重量部、硫酸第一鉄・7水和物(0.10%)/エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(0.40%)混合水溶液1.4部を添加し、表1(E−1)のコア部に示すモノマー混合物200重量部にアデカリアソープSR−1025((株)ADEKA製:有効成分25%)12重量部、アデカリアソープER−20((株)ADEKA製:有効成分75%)1.9重量部、および脱イオン水71重量部を加え乳化したモノマー乳化液を200分かけて等速追加した。その間、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液2.2重量部および2.5%BruggoliteFF−水溶液1.8重量部を3回に分けて添加した。モノマー乳化液追加終了後、1時間後重合を行った。さらに、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.6重量部、2.5%BruggoliteFF−水溶液2.2重量部および硫酸第一鉄・7水和物(0.10%)/エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(0.40%)混合水溶液1.4部を添加した後、表1(E−1)のシェル部に示すモノマー混合物200重量部にアデカリアソープSR−1025・12重量部、アデカリアソープER−20・1.9重量部、および脱イオン水71重量部を加え乳化したモノマー乳化液を200分かけて等速追加した。その間、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液2.4重量部および2.5%BruggoliteFF−6水溶液3.4重量部を4回に分けて添加した。モノマー乳化液追加終了後、1.5時間後重合を行った。得られた合成樹脂エマルジョンに5%炭酸水素ナトリウム水溶液22部を添加後、脱イオン水で固形部50%に調整した(E−1)。表1に合成樹脂エマルジョン作成に用いたモノマー組成を示す。
【0106】
【表1】
【0107】
(主材塗料の作製)
合成した樹脂エマルジョン(E−1)を用い、表2に示す配合処方で主材塗料を作成した。表2に主剤塗料配合を示す。
【0108】
【表2】
【0109】
(一般式(1)の構造を有するイミノ基含有シラン化合物の合成)
(合成例III−1)
窒素置換したディーンスターク装置にイソプロピリメチルケトン100重量部とアミノ化シラン化合物としてチッソ(株)製サラエースS330を300重量部を93度で反応させた後、蒸留によりN−(1,2−ジメチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを得た。
【0110】
(硬化剤の製造例)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた容器に表3に示す成分を(VII)、(VI)、(V)、(IV)、(II)、(III)の順序で撹拌しながら、投入した。投入終了後、室温で60分間撹拌し、硬化剤を得た(硬化剤1から5)。表3に硬化剤配合を示す。
【0111】
【表3】
【0112】
(黄変性評価)
表3に記載の各硬化剤を全量85.5mlのビンに20mlずつ入れ、50℃で二週間貯蔵した後、色差計を用いてガードナー着色度とYI値により各黄変度合いを判定した。表4に黄変性評価結果を示す。
【0113】
【表4】
【0114】
イミノ基含有シラン化合物であるチッソ(株)製サラエースS340を用いた硬化剤(硬化剤1、硬化剤2)の場合はガードナー着色度が6以上であったが、本発明により合成した合成例III−1のイミノ基含有シラン化合物を用いた硬化剤(硬化剤3、硬化剤4)ではガードナー着色度が4まで低減した。また、硬化剤1と硬化剤2の比較および硬化剤3と硬化剤4の比較から、メルカプタンを増量することで着色が抑えられることが分かった。
【0115】
(付着性評価基材)
フッ素表面処理基材としてMAW5322V37 雅石アイスホワイト(KMEW製)、無機塗料表面処理基材としてモエンエクセラード プラチナコート(ニチハ製)、表面に親水化処理を施した基材としてEF4071GK QFリフル アクア ホワイト(KMEW製)、光触媒表面処理基材としてET4143GK QFエストレモ チタン ブラック(KMEW製)を用いて付着性の評価を行った。
【0116】
(付着性評価)
プライマーを塗装後、23℃、50%RHで1日養生し、トップコートを塗装して、23℃、50%RHで7日養生して評価用の塗膜を作成する。
【0117】
標準付着として塗膜にカット(2mm×2mm、計25マス)処理を行い、その上にセロハンテープを貼り付け、剥がした時の状態を観察した。
【0118】
耐水付着試験として、40℃温水に評価用塗膜を7日間浸漬し、取り出し後、23℃、50%RHで1日乾燥・養生して塗膜にカット(2mm×2mm、計25マス)処理を行い、その上にセロハンテープを貼り付け、剥がした時の状態を観察した。
判定基準を次に示す。
◎塗膜の剥がれが全く見られない。
○一部に塗膜の剥がれが見られ、その剥離は全体の15%未満である。
△一部に塗膜の剥がれが見られ、その剥離は全体の15%以上、50%未満である。
×一部に塗膜の剥がれが見られ、その剥離は全体の50%以上である。
【0119】
【表5】
【0120】
メルカプタンを増量した場合、黄変が抑えられるという結果であったが(黄変評価)、付着性評価の結果から付着性は悪くなるということが分かった。このことから、今回発明したイミノ基含有シラン化合物は付着性を維持したまま、黄変を抑制するという点で優れている。