(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを互いに隣接させて溶着ビード層を形成し、該形成された溶着ビード層に次層の溶着ビード層を繰り返し積層して造形する積層造形物の製造方法であって、
前記溶着ビードの長手方向に直交する断面において、既に形成された少なくとも3つの前記溶着ビードにより形成される一つの凹部を埋めるように、新たな溶着ビードを形成するビード形成工程を含み、
前記ビード形成工程は、
前記溶着ビードを形成するときに、前記溶着ビードの形成位置よりもビード形成方向の前方で、前記凹部の周囲の形状を形状検出センサにより検出する工程と、
検出された前記凹部の形状検出データを用いて、前記新たな溶着ビードの前記凹部が埋まるビードサイズを推定する処理を、前記検出された凹部が前記溶着ビードの形成位置に到達するまでの時間内に行う工程と、
推定された前記ビードサイズの前記新たな溶着ビードを前記凹部に形成する工程と、
を有する、
積層造形物の製造方法。
前記ビード形成工程は、前記溶加材を支持して該溶加材の先端を溶融させるトーチのトーチ軸方向を、前記目標位置に設定された境界において、前記境界で隣接する一対の溶着ビードの一方の接線と他方の接線とがなす角の二等分線に合わせて前記溶着ビードを形成する請求項2に記載の積層造形物の製造方法。
溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを互いに隣接させて溶接ビード層を形成し、該形成された溶着ビード層に次層の溶着ビード層を繰り返し積層して造形する積層造形物の製造装置であって、
前記溶加材を支持して該溶加材の先端を溶融させるトーチと、
前記トーチの姿勢と位置を変更するトーチ移動機構と、
前記溶着ビードを形成する位置の周囲の形状を検出する形状検出センサと、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の積層造形物の製造方法に基づいて前記溶着ビードを形成させる制御部と、
を備える積層造形物の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の積層造形物を製造する製造装置の概略構成図である。
本構成の積層造形物の製造装置100は、積層造形装置11と、積層造形装置11を統括制御する造形コントローラ13と、電源装置15と、を備える。
【0012】
積層造形装置11は、先端軸にトーチ17が設けられた溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部21とを有する。なお、溶接ロボット19の先端軸には、積層造形物となる材料の形状を検出する形状検出センサ23が設けられていてもよい。形状検出センサ23としては、レーザセンサ、CCD/CMOSイメージセンサ等、各種公知のセンサが利用できる。
【0013】
溶接ロボット19は、多関節ロボットであり、ロボットアームの先端軸に取り付けたトーチ17には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0014】
トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。アーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物に応じて適宜選定される。
【0015】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ17は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、トーチ17を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、ベースプレート51上に溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶着ビード53が形成される。
【0016】
なお、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビームやレーザにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、積層構造物の更なる品質向上に寄与できる。
【0017】
造形コントローラ13は、CAD/CAM部31と、軌道演算部33と、記憶部35と、これらが接続される制御部37と、を有する。
制御部37は、電源装置15や溶接ロボット19を駆動する駆動部41と、詳細を後述する凹部検出部43、トーチ姿勢設定部45、ビードサイズ変更部47とを備える。
【0018】
CAD/CAM部31は、作製しようとする積層造形物の形状データ(CADデータ等)を入力又は作成し、軌道演算部33と協働して、積層造形物の造形手順を表す溶着ビードの積層モデルを生成する。つまり、形状データを複数の層に分割して、各層の形状を表す層形状データを生成する。そして、生成された積層モデルの層形状データに基づいてトーチ17の移動軌跡を決定する。CAD/CAM部31は、生成された層形状データやトーチ17の移動軌跡等のデータに基づいて、トーチ17を移動させて溶着ビードを形成する溶接ロボット19及び電源装置15の駆動プログラムを生成する。生成された駆動プログラム等の各種データは記憶部35に記憶される。
【0019】
制御部37は、記憶部35に記憶された駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19や電源装置15等を駆動する。つまり、溶接ロボット19は、造形コントローラ13からの指令により、軌道演算部33で生成されたトーチ17の軌道軌跡に沿ってトーチを移動させるとともに、溶加材Mをアークで溶融させて、ベースプレート51上に溶着ビード53を形成する。
【0020】
なお、ベースプレート51は、鋼板等の金属板からなり、基本的には積層造形物の底面(最下層の面)より大きいものが使用される。なお、ベースプレート51は、板状に限らず、ブロック体や棒状等、他の形状のベースであってもよい。
【0021】
溶加材Mとしては、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0022】
上記構成の積層造形物の製造装置100は、
図2に一例を示すように、ベースプレート51上に複数の線状の溶着ビード53を互いに隣接させて溶着ビード層55を形成する。この溶着ビード層55の上に、更に次層の溶着ビード層を積層することを繰り返すことで、積層造形物を造形する。
【0023】
ベースプレート51上に形成される初層の溶着ビード層55は、複数列の溶着ビード53から構成される。溶着ビード53は、
図2に模式的に示すように、概ね上方に膨らむ断面形状を有する。溶着ビード53は、互いに所定幅Wを離間させて線状に形成されるため、溶着ビード53同士の間には、溶着ビード53の頂部から窪んだ狭隘部57が形成される。
【0024】
溶着ビード53同士の間に狭隘部57が存在すると、上層の溶着ビード層を積層する際、新たに形成する溶着ビード53内に未溶着部が生じやすくなる。そのため、完成した積層造形物にブローホールが生じることがある。
【0025】
そこで、本構成の積層造形物の製造装置100においては、既に形成した溶着ビード層55の上に、新たに溶着ビード層を形成する際に、特に狭い狭隘部が生じないように、溶着ビードのサイズを変更する。これにより、次層の溶着ビード層の形成時には、狭隘部による未溶着部が生じなくなり、積層造形物にブローホール等の欠陥が発生することを未然に防止できる。
【0026】
ここで、上記した狭隘部における未溶着を解消しつつ溶着ビードを形成する手順を詳細に説明する。
<第1の積層造形物の造形手順>
図3は第1の積層造形物の造形手順を示すフローチャートである。以下、
図3のフローチャートに基づいて本手順を順次説明する。
まず、
図1に示す制御部37に、積層造形物の形状データ(CADデータ等)を入力する(S11)。制御部37は、入力された形状データに基づいて、積層造形物の造形手順を表す溶着ビードの積層モデルを生成する。
【0027】
図4は形状データから生成される積層モデル61の一例を示す模式的な説明図である。積層モデル61は、図中矢印で示すように、下層から上層に向けて順次に溶着ビード(ビード仮想線65)を配置し、図中点線で示す積層造形物の外形線63を内含するように、溶着ビードを積層させたモデルである。この積層モデル61は、入力された形状データから、その形状、材質、入熱量等の諸条件に基づいて、効率よく積層できるように、適宜なアルゴリズムに基づいて解析的に求められる。これにより、トーチ17の軌道(移動軌跡)が求められる(S12)。
【0028】
そして、CAD/CAM部31は、求めたトーチ17の軌道、溶着ビードの形成開始位置や終了位置、種々の溶接条件等、各種データに基づいて、駆動プログラムを生成する(S13)。
【0029】
制御部37は、生成された駆動プログラムを実行して溶接ロボット19や電源装置15等の各部を駆動し、溶着ビードを形成させる(S14)。なお、駆動プログラムは、上記のように造形コントローラ13で生成する以外にも、造形コントローラ13にケーブルや通信、又は記録媒体を介して接続される他のコンピュータ装置によって生成したものであってもよい。
【0030】
図5はベースプレート51の初層の溶着ビード層55の上に2層目の溶着ビード54を形成する様子を示す模式的な工程説明図である。
制御部37は、駆動プログラムに従って、まず、ベースプレート51上に溶着ビード53を互いに隣接させて複数列状に形成する。これにより、初層の溶着ビード層55が形成される。
【0031】
次いで、駆動プログラムに従って、トーチ17を位置と姿勢を制御するとともに、シールドガスGを供給しながらアークを発生させ、初層の溶着ビード層55の上に溶着ビード54を形成する。図示例の場合は、初層の溶着ビード層55の狭隘部57を目標位置として溶着ビード54を形成している。
【0032】
2層目の溶着ビード54を形成する際、溶接ロボット19の先端軸に設けた形状検出センサ23により、次に溶着ビードを形成する位置の周囲の形状を検出する(S15)。
【0033】
図6は
図5の溶着ビードにより形成された凹部66を示す概略拡大図である。
溶着ビード54は、初層の溶着ビード層55における、隣接する一対の溶着ビード53A,53B同士の間の狭隘部57を目標位置にして形成される。このとき、制御部37は、形状検出センサ23から検出された形状検出データにより、既に形成された3つの溶着ビード54,53B,53Cにより形成される一つの凹部66の形状を認識(S16)する。そして、この凹部66を埋めるように、新たな溶着ビードのビードサイズと、トーチ17の姿勢とを必要に応じて変更する(S17)。次いで、ビードサイズの設定やトーチ17の姿勢を適宜変更した新たな溶着ビード54A(
図7参照)を形成する(S18)。
【0034】
なお、図示例の凹部66は、3つの溶着ビード54,53B,53Cにより形成されるが、更に他の溶着ビードを含んで形成された凹部であってもよい。
【0035】
ここで、凹部66を埋める新たな溶着ビード54Aは、具体的には次のようにして形成する。
図6に示すように、溶着ビード54の外表面と溶着ビード53Bの外表面との境界をPc(溶着ビード54の図中右側の境界)とし、境界Pcにおける溶着ビード53Bの外表面の接線をL1、境界Pcにおける溶着ビード54の外表面の接線をL2とする。また、接線L1とL2とのなす角をθとし、角θの二等分線をNとする。
【0036】
溶着ビード54に隣接させて形成する次の溶着ビードは、境界Pcを目標位置として形成する。
図7は次の溶着ビード54Aを形成する様子を模式的に示す工程説明図である。
図7に示すように、次の溶着ビードを形成する際、トーチ17のトーチ軸線の向きは、トーチ姿勢設定部45(
図1参照)によって、直線Nと同じ方向に設定される。トーチ軸線は、直線Nと完全に一定しなくてもよく、例えば、境界Pcを中心に直線Nから±40°、好ましくは±20°、更に好ましくは±10°の範囲とすることもできる。この範囲内であれば、トーチ17が周囲の溶着ビード等と干渉することなく、良好な溶着ビードを形成できる。なお、溶着ビード54Aを形成する目標位置は、境界Pcにすることに限らず、溶着ビード53Bと溶着ビード53Cとの間の狭隘部57A(
図6参照)にしてもよい。つまり、既に形成された3つの溶着ビード54,53B,53C同士のいずれかの境界を、新たな溶着ビード54Aを形成する目標位置にすればよい。
【0037】
また、制御部37は、ビードサイズ変更部47により、新たな溶着ビード54Aのビードサイズを必要に応じて変更する。
図8Aは積層途中の積層造形物であって、新たに形成する溶着ビード54Aのビードサイズが過小である状態の断面図、
図8Bは積層途中の積層造形物であって、新たに形成する溶着ビード54Aのビードサイズが適正である状態の断面図である。
【0038】
図8Aに示す溶着ビード54Aの場合、溶着ビード54Aの外表面が溶着ビード53Bに接する位置で、溶着ビード54Aと溶着ビード53Cとの間に狭隘部67が生じる。この狭隘部67は、溶着ビード54A,53Cの外表面が接近しており、特に狭窄された窪みとして形成される。この狭隘部67を残したまま次の溶着ビードを隣に形成すると、狭隘部67が未溶着部となりやすく、完成した積層造形物にブローホールを生じさせるおそれがある。
【0039】
そこで、
図8Bに示すように、溶着ビード54Aを、溶着ビード53Bの表出した外表面を完全に覆い、隣の溶着ビード53Cに到達するまで形成する。これによれば、
図8Aに示す狭隘部67が溶着ビード54Aによって埋められる。その場合、溶着ビード54Aと溶着ビード53Cとの間に狭隘部69が生じるが、狭隘部69は、前述の狭隘部67と比較すると狭窄度合いが緩和され、初層の溶着ビード層55に形成された狭隘部57と同程度のものになる。したがって、溶着ビード54Aに隣接させて次の溶着ビードを形成しても、未溶着部を生じることなく、良好な溶着ビードを形成できる。
【0040】
溶着ビード54Aを
図8Bに示すビードサイズまで形成するには、例えば、溶加材Mの供給速度や溶接電圧等を増加させること、トーチ17の移動速度を低下させること等の溶接条件を変更すればよい。制御部37は、この溶接条件を、凹部検出部43による凹部形状の認識結果に基づいて、
図8Aに示す狭隘部67が確実に埋められるように、予め定めたテーブルや演算式を用いて推定する。そして、推定されたビードサイズで溶着ビード54Aを形成する。
【0041】
このビードサイズ変更の制御は、基本的にフィードフォーワード制御であるが、形状検出センサ23の検出部位をビード形成方向の前方に設け、凹部形状の検出位置が溶着ビードの形成位置に到達するまでの時間内で処理すれば、実質的にリアルタイムで溶着ビードのビードサイズの変更が行える。
【0042】
以上のS14〜S18までの工程を、全軌道が終了するまで繰り返し行う(S19)。全軌道を終了したら、溶着ビームの形成を停止して、溶接ロボット19を初期の待機位置まで移動させる。これにより、溶着ビードを常に適正なビードサイズにして形成した、未溶着部のない、高品位な積層造形物が得られる。
【0043】
図9は積層造形物の製造装置により造形される積層造形物の概略断面図である。
本構成の積層造形物の製造装置100によれば、
図9に一例として示すように、特に狭窄度合いの高い狭隘部(
図8Aの狭隘部67)が形成されることがない。よって、溶着ビード層にはベースプレート51側の最下層から最上層まで、ブローホールが発生することなく、良好な積層造形物71が得られる。したがって、積層造形物71は、強度低下の抑制された、均質な機械的特性となる良好な造形物となり、特に強度が必要な機械構造部品に対しても、適用可能となる。
【0044】
また、本構成によれば、形状検出センサ23により形状を検出しながら溶着ビームを形成するため、既に形成された溶着ビームに設計上予期できない形状変化が生じていても、形状変化後の形状に基づいて新たな溶着ビームのビームサイズやトーチ姿勢を設定する。そのため、常に適正な溶着ビームを形成でき、高品位な積層造形物を安定して造形できる。
【0045】
<積層造形物の第2の造形手順>
次に積層造形物の第2の造形手順を説明する。
図10は積層造形物の第2の造形手順を示すフローチャートである。
まず、
図1に示す制御部37に、積層造形物の形状データ(CADデータ等)を入力する(S21)。制御部37は、入力された形状データに基づいて、積層造形物の造形手順を表す溶着ビードの積層モデルやトーチ17の移動軌跡を、前述した第1の造形手順と同様に生成する(S22)。
【0046】
そして、制御部37は、生成した積層モデルから、溶着ビードを形成する目標位置の周囲における溶着ビード形状を認識する。つまり、
図6に示すように、既に形成された3つの溶着ビード54,53B,53Cにより形成される凹部66の形状を、初層の溶着ビード層55より上の2層目以降における全軌道に対して認識する(S23)。
【0047】
この凹部66を埋めるように、新たな溶着ビードのビードサイズと、トーチ17の姿勢とを必要に応じて変更する(S24)。そして、ビードサイズやトーチ17の姿勢を適宜変更して新たな溶着ビードを想定し、積層モデルを再生成する(S25)。
【0048】
次に、制御部37は、再生成された積層モデルに基づいて、駆動プログラムを生成し(S26)、この駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19や電源装置15等の各部を駆動し、溶着ビードを形成させる(S27)。
【0049】
以上のS27の工程を、全軌道が終了するまで繰り返し行う(S28)。全軌道を終了したら、溶着ビームの形成を停止して、溶接ロボット19を初期の待機位置まで移動させる。これにより、溶着ビードを常に適正なビードサイズにして形成した、未溶着部のない、高品位な積層造形物が得られる。
【0050】
この造形手順によれば、生成された積層モデルから、形成される凹部の形状を推定し、推定された凹部形状が溶着ビードで埋められるように、溶着ビードのビードサイズが必要に応じて変更される。そのため、逐一、溶着ビードの形状を検出する必要がなくなり、予め設定された通りに溶接ロボット19や電源装置15の制御するだけになる。よって、溶着ビードの形成がバッチ処理で簡単に行え、高効率で積層造形物を製造できる。
【0051】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを互いに隣接させて溶着ビード層を形成し、該形成された溶着ビード層に次層の溶着ビード層を繰り返し積層して造形する積層造形物の製造方法であって、
前記溶着ビードの長手方向に直交する断面において、既に形成された少なくとも3つの前記溶着ビードにより形成される一つの凹部を埋めるように、新たな溶着ビードを形成するビード形成工程を含む積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、既に形成された少なくとも3つの溶着ビードにより形成される一つの凹部における、隣接するビード間の特に狭窄された部位が、新たな溶着ビードによって確実に埋められる。これにより、次に溶着ビードを形成する際に、未溶着部が生じることを防止でき、積層造形物の品質を向上できる。
【0052】
(2) 前記ビード形成工程は、前記新たな溶着ビードのビードサイズを、前記凹部が埋まるように変更する(1)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、新たな溶着ビードのビードサイズを変更することにより、1回の溶着ビードの形成で凹部を確実に埋めることができる。
【0053】
(3) 前記ビード形成工程は、前記既に形成された少なくとも3つの溶着ビード同士のいずれかの境界を、前記新たな溶着ビードを形成する目標位置にする(1)又は(2)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、新たな溶着ビードを、凹部の溶着ビード層同士のいずれかの境界を目標位置にして形成するため、凹部の底部から効率よく溶着ビードを形成でき、凹部を偏りなく均等に埋めることができる。
【0054】
(4)前記ビード形成工程は、前記溶加材を支持して該溶加材の先端を溶融させるトーチのトーチ軸方向を、前記目標位置に設定された境界において、前記境界で隣接する一対の溶着ビードの一方の接線と他方の接線とがなす角の二等分線に合わせて前記溶着ビードを形成する(3)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、トーチのトーチ軸方向を接線同士のなす角の二等分線にすることで、トーチとの干渉を防止しつつ、ビード形成が効率よく行える。
【0055】
(5) 前記凹部の周囲の形状を、形状検出センサにより検出する工程と、
検出された前記凹部の形状検出データを用いて、前記新たな溶着ビードの前記凹部が埋まるビードサイズを推定する工程と、
を有し、
前記ビード形成工程は、推定された前記ビードサイズの前記新たな溶着ビードを前記凹部に形成する(1)〜(4)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、形状検出センサにより検出された凹部の周囲の形状から、ビードサイズを推定するため、既に形成された溶着ビードの形状に適切なビードサイズが得られる。
【0056】
(6) 前記積層造形物の形状データを入力する工程と、
前記形状データに基づいて、前記積層造形物の造形手順を表す前記溶着ビードの積層モデルを生成する工程と、
前記積層モデルから前記凹部を抽出する工程と、
前記凹部に形成される溶着ビードの前記凹部が埋まるビードサイズを推定し、当該溶着ビードを前記推定したビードサイズにして前記積層モデルを再生成する工程と、
を有し、
前記ビード形成工程は、再生成された前記積層モデルに基づいて前記溶着ビードを形成する(1)〜(4)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、積層モデルから解析的にビードサイズを求めるため、溶着ビードの形成を予め決定したバッチ処理で行え、ロボット制御等が簡単に行える。
【0057】
(7) 溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを互いに隣接させて溶接ビード層を形成し、該形成された溶着ビード層に次層の溶着ビード層を繰り返し積層して造形する積層造形物の製造装置であって、
前記溶加材を支持して該溶加材の先端を溶融させるトーチと、
前記トーチの姿勢と位置を変更するトーチ移動機構と、
(1)〜(6)のいずれか一項に記載の積層造形物の製造方法に基づいて前記溶着ビードを形成させる制御部と、
を備える積層造形物の製造装置。
この積層造形物の製造装置によれば、既に形成された少なくとも3つの溶着ビードにより形成される凹部における、隣接するビード間の特に狭窄された部位が、新たな溶着ビードによって確実に埋められる。これにより、次に溶着ビードを形成する際に、未溶着部が生じることを防止でき、積層造形物の品質を向上できる。
【0058】
(8) 前記トーチ移動機構は、多軸ロボットである(7)に記載の積層造形物の製造装置。
この積層造形物の製造装置によれば、多軸ロボットによりトーチを任意の方向に向けることができ、溶着ビードの形成自由度が向上する。