(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記再構成部は、前記読み出された切削データに2つ以上のワーク選択コマンドが含まれている場合、2つ目以降のワーク選択コマンドをスキップするとともに、前記2つ目以降のワーク選択コマンドに係るコマンドに対して、それぞれ一時停止コマンドと、所定の再開条件が揃うと切削を再開する再開コマンドとを追加するように前記切削データを再構成する、
請求項1に記載の切削加工機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係る切削加工機10の斜視図である。
図2は、
図1の扉30を開けた状態の切削加工機10を示す斜視図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、切削加工機10の扉30側にいるユーザーから見た場合の左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、上記ユーザーが切削加工機10に近づく方を後方、遠ざかる方を前方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。本実施形態に係る切削加工機10は、相互に直交する軸をX軸、Y軸およびZ軸としたときに、X軸とY軸とで構成される平面に置かれるものとする。ここでは、X軸は、前後方向に延びる。Y軸は、左右方向に延びる。Z軸は、上下方向に延びる。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、切削加工機10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0013】
本実施形態に係る切削加工機10は、ユーザーがワーク200(
図4参照)を主動で交換するタイプの切削加工機である。即ち、自動のワークチェンジャーを備えず、1つのワークだけを切削することが可能な切削加工機である。
図1に示すように、切削加工機10は箱状に形成されている。本実施形態では、切削加工機10は、筐体20と、扉30とを備えている。筐体20は、ワーク200を保持する保持部材70(
図4参照)やツール210(
図3参照)を回転させる主軸60(
図3参照)などを収納する部材である。筐体20は、底面壁21と、前面壁22と、左側壁23と、右側壁24と、天面壁25と、背面壁26とを有している。筐体20の各部材はそれぞれ、鋼板などによって形成されている。底面壁21は、ここでは、XY平面に平行に設けられている。底面壁21は、切削加工機10全体の底面を構成している。底面壁21の左端には左側壁23が接続されている。左側壁23は、底面壁21の左端からZ方向に延びている。底面壁21の右端には右側壁24が接続されている。右側壁24は、底面壁21の右端からZ方向に延びている。底面壁21の後端には背面壁26が接続されている。背面壁26は、底面壁21の後端からZ方向に延びている。背面壁26の左端および右端は、それぞれ左側壁23の後端および右側壁24の後端と接続されている。天面壁25は底面壁21に平行に形成され、左側壁23の上端、右側壁24の上端、および背面壁26の上端と接続されている。底面壁21の前端には前面壁22が接続されている。前面壁22は、底面壁21の前端から斜め上方に延びている。詳しくは、後方に傾きながら上方に延びている。前面壁22の左端は左側壁23の前端と接続されている。前面壁22の右端は右側壁24の前端と接続されている。前面壁22は、左側壁23および右側壁24よりも高さが低い。そのため、筐体20には、前面に開口部20aが形成されている。このように、筐体20は、保持部材70や主軸60などを収容し、開口部20aを備えた箱状の部材である。
【0014】
筐体20の開口部20aには、扉30が設けられている。扉30は、開閉可能に構成されている。詳しくは、扉30は、筐体20に対し、左側壁23の前端および右側壁24の前端に沿って上下方向にスライド可能に取り付けられている。扉30が上下方向にスライドすることで、筐体20の前部の開口部20aを通じて筐体20の内部と外部を連通させることができる。なお、ここでは扉30は上下方向にスライドすることによって開閉するが、横開き等の種々の形態を取ることができる。扉30には、筐体20の内部を視認可能な窓部31が設けられている。
【0015】
図2に示すように、扉30の近傍には、扉30の開閉状態を検知する検知装置35が設けられている。検知装置35は、例えば、扉30が締め切られたときに扉30の一部によって押下されるスイッチを備えている。検知装置35は、このスイッチの押下の有無によって扉30の開閉状態を検知する。検知装置35は、例えば機械式のスイッチである。ただし、検知装置35はこのようなスイッチに限定されず、例えば光電センサや磁石を備えた近接式センサなどを好適に利用することができる。
【0016】
筐体20の内部は、内部壁によって複数のエリアに分割されている。
図3は、
図1のIII−III断面図である。
図2、
図3に示されるように、筐体20の内部には、内部壁として、下面壁41と、後方壁42と、仕切り壁43と、後方仕切り壁44とが設けられている。後方仕切り壁44は、筐体20内部の背面壁26に近い側に配置され、上下方向に延びている。後方仕切り壁44は、筐体20の内部を前方側のエリアと後方側のエリアに区切っている。後方仕切り壁44によって区切られた後方側の空間は、背面エリアA1を構成している。背面エリアA1には、制御装置100などが収容されている。後方仕切り壁44によって区切られた前方側の空間には、下面壁41と後方壁42とが配置されている。下面壁41は、筐体20の前面壁22の上端に、前面壁22と垂直に接続されている。前述したように前面壁22は後方に傾いて形成されており、前面壁22に垂直に配置された下面壁41もXY平面に対して傾斜して形成されている。詳しくは、下面壁41は、前方から後方にかけて下降傾斜している。下面壁41の後端には、後方壁42が、下面壁41と垂直に接続されている。
図3に示すように、後方壁42は、下面壁41との接続部から斜め上方に延び、後方仕切り壁44に接続している。下面壁41と、後方壁42と、後方仕切り壁44の後方壁42より上側部分とは、筐体20の内部に内部空間を構成している。上記内部空間は、下面壁41に対して垂直に配置された仕切り壁43によって、さらに加工エリアA2と、制御エリアA3とに仕切られている。
【0017】
図2に示されているように、仕切り壁43は、下面壁41と後方壁42と後方仕切り壁44とによって区切られた内部空間を、さらに左右に区切っている。そのうち左側の空間は、その内部でワーク200の切削加工が行われる加工エリアA2である。右側の空間は、後述する保持部材70やマガジン50の回転および移動を制御する駆動部などが収容された制御エリアA3である。制御エリアA3の前面には、制御エリアA3を外部と隔離するカバー45が取り付けられている。加工エリアA2は、制御エリアA3よりも広く構成されている。
【0018】
このように、加工エリアA2および制御エリアA3は、切削加工機10のX方向およびZ方向に対して後方に向かって下降傾斜して形成されている。そこで、以下では、加工エリアA2において、下面壁41に対して垂直な方向をZ1方向と称することとする。また、下面壁41に直交する前面壁22に対して垂直な方向をX1方向と称することとする。X1方向、Y方向、Z1方向は互いに直交している。さらに、このように互いに直交するX1方向およびZ1方向について、X1方向の前方をF1、後方をRr1、Z1方向の上方をU1、下方をD1とする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、切削加工機10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0019】
図3に示すように、加工エリアA2の内部には、保持部材70、回転機構80、マガジン50、主軸60、X1方向移動機構91、Y方向移動機構92、Z1方向移動機構93が配置されている。
図4は、保持部材70、回転機構80、およびマガジン50の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態では、ワーク200を保持する保持部材70と、保持部材70を回転させる回転機構80と、棒状のツール210を収容するマガジン50とが一体に組み付けられている。
【0020】
保持部材70は、ワーク200を保持する部材である。ここでは、ワーク200は円板状に形成されている。ワーク200は、例えば人工歯の材料である。保持部材70は、半円弧状に構成されている。本実施形態では、保持部材70は図示しないネジ等を備え、ユーザーがネジ等を締めることによりワーク200を固定する。保持部材70が保持できるワーク200の数は1つである。
【0021】
回転機構80は、保持部材70を支持している。回転機構80は、主軸60と保持部材70とを相対的に移動させる移動機構の一部である。回転機構80は、第1回転軸81と、第2回転軸82と、第3回転軸83と、支持部材84と、第1駆動部85と、第2駆動部86(
図4には図示せず、
図5参照)とを備えている。
図4に示すように、第1回転軸81および第2回転軸82は、それぞれF1方向およびRr1方向から保持部材70を回転可能に支持している。第1回転軸81は、保持部材70のF1方向に設けられた第1駆動部85に接続されている。第1駆動部85は、特に限定されないが、例えばモータである。第1駆動部85は、第1回転軸81を、X1軸を軸にして方向T1に回転させる。第1駆動部85の駆動によって、保持部材70は方向T1に回転する。保持部材70および第1駆動部85は、L字状に形成された支持部材84によって支持されている。支持部材84は、第1支持部84aと、第2支持部84bとを有している。第1支持部84aは、X1軸方向に延びた部材である。第2支持部84bは、第1支持部84aの後端から左方に延びた部材である。第1支持部84aの前端は、第1駆動部85を支持している。第2支持部84bは、第2回転軸82を支持している。また、第1支持部84aの中央部分には、第3回転軸83が接続されている。第3回転軸83は、保持部材70のX1軸方向の中心に対応する位置に接続されている。第3回転軸83は、
図4には図示しない第2駆動部86(
図5参照)に接続されている。この第2駆動部86が駆動することで、第3回転軸83は、支持部材84の第1支持部84aをY軸周りの方向T2に回転させる。支持部材84の方向T2への回転によって、保持部材70も方向T2に回転する。
【0022】
図4に示すように、マガジン50は、回転機構80の第3回転軸83および支持部材84を介して保持部材70を支持している。マガジン50は箱状に形成されている。マガジン50の上面50aには、穴状のストッカー55が複数形成されている。ストッカー55には、ツール210が収容される。本実施形態では、ストッカー55には、ツール210が上端部210aを露出した状態で挿入される。マガジン50にストッカー55が複数設けられていることによって、様々な種類のツール210をマガジン50に収容することができる。本実施形態では、マガジン50には、10個のストッカー55が設けられている。10個のストッカー55は、マガジン50に、X1軸方向に5個ずつ、Y軸方向に2列に亘って配列されている。
【0023】
マガジン50は、右方に配設されたX1方向移動機構91(
図4には図示せず、
図3参照)に固定されている。X1方向移動機構91も、主軸60と保持部材70とを相対的に移動させる移動機構の一部である。X1方向移動機構91の構成は特に限定されないが、例えば、モータとねじ送り機構等を備えている。X1方向移動機構91は、制御装置100に接続され、制御装置100によって制御されている。保持部材70は、X1方向移動機構91の駆動により、マガジン50と一体的にX1方向に移動する。その際、保持部材70に保持されたワーク200も、保持部材70とともにX1方向に移動する。
【0024】
ツール210は、ワーク200を切削する工具である。ここでは、棒状のツール210が用いられる。
図4に示すように、ツール210には、フランジ210bが設けられている。ここでは、フランジ210bは、穴状のストッカー55に対応した形状をしている。ツール210がストッカー55に収容される際、フランジ210bがストッカー55に嵌め込まれる。
図4に示すように、ツール210がストッカー55に挿入された状態において、フランジ210bよりも上方の上端部210aがストッカー55から突出する。この上端部210aが主軸60により把持される。フランジ210bよりも下方には刃物部が設けられている。本実施形態では、ツール210には、様々な形状の刃物部を有するものがある。主軸60がツール210を把持してZ1軸周りに回転することで、ツール210もZ1軸周りに回転する。回転状態にあるツール210の刃物部がワーク200に当接することで、ワーク200に対する切削加工が実施される。
【0025】
主軸60は、ツール210を回転させる部材である。
図3に示すように、主軸60は、スピンドル60aと駆動部60cとを備え、スピンドル60aは把持部60bを備えている。スピンドル60aは、Z1軸周りに回転する部材である。スピンドル60aの下端には把持部60bが設けられており、スピンドル60aが回転することにより、把持部60bはZ1軸周りに回転する。駆動部60cは、スピンドル60aを回転させる部材である。
【0026】
把持部60bは、ツール210を把持する部材である。把持部60bは、スピンドル60aの下端に設けられている。把持部60bは、例えば複数のチャックでツール210の上端部210aを挟むことで、ツール210を把持する。チャックは、例えば圧縮空気とスプリングの力によって開閉されている。圧縮空気は、主軸60に接続された外部のエアコンプレッサ等により供給される。把持部60bには、圧縮空気の供給および排気を制御するための電磁弁等が設けられている。上記電磁弁等は、制御装置100によって制御されている。ツール210は、把持部60bに把持された状態でスピンドル60aが回転することによりZ1軸周りに回転する。
【0027】
駆動部60cは、スピンドル60aを回転させる部材である。駆動部60cは、例えばモータである。駆動部60cは、制御装置100に接続され、制御装置100によって制御されている。駆動部60cは、制御装置100の制御により、スピンドル60aを所定のタイミングと所定の回転数で回転させる。
【0028】
図3に示すように、主軸60は、Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93により、それぞれY方向およびZ1方向に移動される。Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93も、主軸60と保持部材70とを相対的に移動させる移動機構の一部である。Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93の構成も特に限定されないが、例えば、それぞれモータとねじ送り機構等を備えている。Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93は、それぞれ制御装置100に接続され、制御装置100によって制御されている。主軸60は、Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93の駆動により、Y方向およびZ1方向に移動する。その際、把持部60bに把持されたツール210も、主軸60とともにY方向およびZ1方向に移動する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る切削加工機10は、筐体20の前面壁22に操作パネル110を備えている。操作パネル110は、ユーザーが切削加工機10の操作を行う部位である。操作パネル110は、制御装置100に電気的に接続されている。制御装置100は、背面エリアA1に設けられている。
図5は、本実施形態に係る切削加工機10のブロック図である。
図5に示すように、制御装置100には、検知装置35と、主軸60の把持部60bおよび駆動部60cと、回転機構80の第1駆動部85および第2駆動部86と、X1方向移動機構91と、Y方向移動機構92と、Z1方向移動機構93と、操作パネル110とが電気的に接続されている。また、制御装置100には、コンピュータ121と表示装置122とが通信可能に接続されている。
【0030】
コンピュータ121は、例えば、切削加工機10に実行させるための切削データを作成したり、作成した切削データを保管したり、切削データを切削加工機10に送信したりするためのコンピュータである。ただし、コンピュータ121の機能は上記したものに限られず、後述する制御装置100の機能の一部を担っていてもよい。所定の機能を切削加工機10に内蔵された制御装置100が果たすか、コンピュータ121が果たすかは限定されない。表示装置122は、コンピュータ121に接続された、操作画面などを表示するための装置である。
【0031】
操作パネル110は、スタートボタン111と、ブザー112とを備えている。スタートボタン111は、ユーザーが切削の開始等を指令する際に押下するボタンである。スタートボタン111は、例えば、機械式のボタンである。ただし、スタートボタン111は上記したようなハードウェアによるものである必要はなく、例えば、表示装置122に表示された画面上のボタンなどでもよい。さらには、機械式のボタンと画面上のボタンを両方備え、どちらからでも操作可能なように構成されていてもよい。ブザー112は、例えばエラーなど所定の場合に鳴動して、ユーザーの注意を喚起するための部材である。操作パネル110は、その他に機器状態を表示する表示器などを備えていてもよいが、それらについては説明を省略する。
【0032】
図5に示すように、制御装置100は、記憶部101と、読み出し部102と、再構成部103と、切削制御部104と、第1受信部105と、第2受信部106とを備えている。
【0033】
記憶部101は、切削データを記憶する部位である。記憶部101は、例えばコンピュータ121に記憶されている複数の切削データから実行すべき1つの切削データが送信されてきたとき、その切削データを一時的に記憶する。切削データには、使用するツール210を指令するコマンドや、X1方向移動機構91〜Z1方向移動機構93および回転機構80の動きを指令するコマンドなど各種のコマンドが含まれている。
【0034】
読み出し部102は、切削データを読み出す部位である。ここでは、読み出し部102は、切削加工の進行中、逐次、切削データ内のコマンドを読み出している。
【0035】
再構成部103は、読み出された切削データを再構成する部位である。再構成部103は、読み出し部102が読み出した切削データのコマンドを、所定の規則に基づいて再構成する。コマンドの再構成は、切削データのコマンドの中に本実施形態に係る切削加工機10のようなハードウェア構成の切削加工機において通常は実行不可能なコマンドが含まれていた場合に、当該コマンドを処理するために行われる。このコマンドの再構成については後述する。
【0036】
切削制御部104は、再構成部103において再構成された切削データに基づいて切削加工を行う部位である。切削制御部104は、主軸60の駆動部60cおよび把持部60b、X1方向移動機構91〜Z1方向移動機構93、回転機構80の第1駆動部85および第2駆動部86を制御してワーク200に対して切削加工を行う。
【0037】
第1受信部105は、扉30が開であること示す開信号と、扉30が閉であること示す閉信号とを検知装置35から受信する部位である。前述したように、検知装置35は、扉30が閉まっているかどうかを検知するスイッチ等を備えており、扉30の開閉状態を検知している。制御装置100は、検知装置35からの信号を第1受信部105で受信することによって、扉30の開閉状態を把握する。後述するが、本実施形態では、扉30が閉であることは切削加工を開始する条件の1つである。また、切削加工中に扉30が閉でなくなった場合には切削は中断される。
【0038】
第2受信部106は、スタートボタン111が押下されたことを示す押下信号を受信する部位である。本実施形態では、スタートボタン111が押下されることは切削加工を開始するための条件の1つである。なお、ここでのスタートボタン111は、一時停止された場合のリスタートボタンなども含み、最初の加工開始を指示するものに限られない。また、その名称は様々に設定されうる。
【0039】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。また、前述したように、制御装置100の各部の機能は必ずしも筐体20の内部に設けられたハードウェアによって全て実現される必要はなく、コンピュータ121がその機能の一部を担っていてもよい。
【0040】
本実施形態に係る切削加工機10においては、ユーザーによって保持部材70にワーク200がセットされ、コンピュータ121において実行すべき切削データが設定されると、以下のような手順で切削加工が行われる。まず、コンピュータ121から制御装置100の記憶部101に切削データが送信され、記憶部101はその切削データを記憶する。切削加工機10の側では、上記切削データが記憶されるとともに、扉30の閉信号の受信等、所定の条件が揃ったときに準備が完了となる。準備完了状態でスタートボタン111が押下されると切削加工が開始される。なお、コンピュータ121から記憶部101に切削データが送信されるタイミングは、スタートボタン111の押下の後でもよい。
【0041】
切削加工の開始が指示されると、制御装置100の読み出し部102は、記憶部101に記憶されたコマンドのうち1つ目のコマンドを読み込む。1つ目のコマンドは再構成部103によって再構成された上で、切削制御部104によって実行される。このとき、特に改変の必要のないコマンドであれば、再構成部103において改変されず、そのまま切削制御部104によって実行される。読み出し部102は、1つ目のコマンドが実行された後、または1つ目のコマンドの実行と平行して2番目のコマンドを読み出す。以下、最後のコマンドまで同様である。
【0042】
再構成部103で再構成されたコマンドを受けて、切削加工機10の各部はコマンドで指定された動作を行う。例えば使用するツール210を選択するコマンドに対しては、制御装置100は、X1方向移動機構91およびY方向移動機構92を制御して、把持部60bを指定のツール210が収納されたストッカー55のU1方向に移動させる。さらに、Z1方向移動機構93および把持部60bを制御して、把持部60bに指定のツール210を把持させる。このとき既に指定のツール210が把持部60bに把持されている場合には、この作業は省略されてもよい。また、別のツール210が把持されている場合には、当該別のツール210をストッカー55に戻す作業が先に行われてもよい。また、例えば切削のコマンドに対しては、制御装置100は、X1方向移動機構91、Y方向移動機構92、Z1方向移動機構93を制御して、ツール210とワーク200をコマンドで指定された位置に配置させ、回転機構80を制御してワーク200に指定の姿勢を取らせる。主軸60の駆動部60cに対しては、指定の回転数でスピンドル60aを回転させるように指令する。この後、ワーク200とツール210の位置関係およびワーク200の姿勢を(場合によってはスピンドル60aの回転速度も)変えながら連続的または断続的に切削加工が実施される。その途中で適宜、ツール210は指定のものに変更され、1つのワーク200に対する切削加工が完了する。
【0043】
ところで、前述のように、本実施形態に係る切削加工機10は、ワークチェンジャーを備えず、1つのワークだけを切削可能な切削加工機である。ここで、ワークチェンジャーを備え、複数のワークの切削加工が可能な切削加工機においては、例えば、ワークのストッカーに識別用の番号が振られ、切削データ中のワーク選択コマンドにおいて指定された識別番号のストッカーに収納されているワークが加工すべきワークとして選択される。切削データにおいて、ワーク選択コマンドは、少なくとも切削コマンドよりも先に書き込まれ、切削コマンドはワーク選択コマンドに紐づけされたコマンドとして認識される。ワーク選択コマンドには、補足的にワークの名称(例えば、ワークの材料名などが付される)等の情報が記載されている場合もある。このように、ワークの自動交換機能を有する切削加工機用に作成された切削データには、切削に係るコマンドより前にワーク選択コマンドが含まれている。本実施形態に係る切削加工機10のような1つのワークだけを切削可能な切削加工機に、このようなワーク選択コマンドが含まれた切削データを送信した場合、従来の技術では、当該切削加工機はエラーを発し、加工は開始されなかった。逆に言えば、従来の技術では、1つのワークだけを切削可能な切削加工機にも対応できるように切削データの改変(例えば、ワーク選択コマンドの削除)をしなければ、当該切削加工機では加工をすることができなかった。
【0044】
上記のような事情に鑑み、本実施形態に係る切削加工機10は、1つのワークだけを切削可能な切削加工機でありながら、ワーク選択コマンドが含まれた切削データが送信されても加工を行うことができるように構成されている。本実施形態に係る切削加工機10は、制御装置100に、コマンドを再構成する再構成部103を備えている。再構成部103は、読み出された切削データにワーク選択コマンドが含まれている場合、最初のワーク選択コマンドをスキップするように切削データを再構成する。そこで、切削データ中にワーク選択コマンドが含まれていても、切削加工を開始することができる。従って、ワーク選択コマンドを含む切削データであっても、少なくとも最初の切削加工を実行することができる。逆に言えば、本実施形態に係る切削加工機10に対しては、ワーク選択コマンドを含んだ切削データを改変なしに適用することができる。なお、ワーク選択コマンドを含むものの1つのワークに対するコマンドしか含まない切削データの場合には、切削データ内のコマンドを最後まで実行することができる。
【0045】
図6は、本実施形態に係る切削加工機10による切削加工のプロセスを示すフローチャートである。
図6に示されるように、本実施形態に係る切削加工機10では、ステップS01において、切削データを読み出している。続くステップS02では、読み出した切削データ内にワーク選択コマンドが含まれるかどうかが判定される。ステップS02は、実際には、ワーク選択コマンドを読み込むまで順次コマンドの読み込みと実行を行うことを意味している。ただし、ワーク選択コマンドは通常切削データの先頭にあり、含まれている場合には大抵最初に読み出される。ステップS02においてワーク選択コマンドが含まれている場合(即ち、ステップS02がYESの場合)、ステップはステップS03に進む。ステップS03では、切削データが再構成され、ワーク選択コマンドがスキップされる。そして、ステップS04では、ワーク選択コマンドの次のコマンドからコマンドが順次実行される。ここでのコマンドには、例えば、ツール210の選択や切削に係るコマンドなどが含まれる。ステップS02がNOの場合には、切削データは改変されず、そのまま実行されて(ステップS04A)終了する。
【0046】
ステップS04に続いては、ステップS05が実施される。ステップS05では、2番目のワーク選択コマンドが含まれるかどうかが判定される。ステップS05は、実際には、2番目のワーク選択コマンドを読み込むまで順次コマンドの読み込みと実行を行うことを意味している。ステップS05がNOの場合、即ち切削データに2番目のワーク選択コマンドが含まれていない場合は、そのまま切削加工は終了する。これは、ワーク選択コマンドを含むものの1つのワークに対するコマンドしか含まない切削データの場合である。ステップS05がYESの場合、2番目以降のワーク選択コマンドに係る切削加工は実行されず、ステップS06において、終了コマンドが発せられる。
【0047】
このように、本実施形態に係る切削加工機10は、ワーク選択コマンドを含む切削データが送信された場合には、最初のワーク選択コマンドをスキップするように切削データを再構成する再構成部103を備えている。従って、ワーク選択コマンドを含む切削データに対してもエラー停止することなく、最初の切削加工を実行することができる。逆に言えば、1つのワークだけを切削可能な切削加工機である本切削加工機10に対しても、ワーク選択コマンドを含む切削データをそのまま適用しうる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態は、切削データ内に含まれる複数の切削加工を全て行うことができるように構成された実施形態である。本実施形態は、制御装置100の構成を除いて第1実施形態と共通である。また、制御装置100の一部の部位については共通である。そこで、第2実施形態についても共通する部材、部位には共通の符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。
【0049】
図7は、本実施形態に係る切削加工機10のブロック図である。
図7に示すように、本実施形態に係る制御装置100は、報知部107と、表示制御部108とをさらに備え、再構成部103Aの仕様が第1実施形態に係る再構成部103とは異なっている。報知部107は、再構成部103Aが一時停止コマンドを追加し、その一時停止コマンドが実行されるとブザー112を動作させる部位である。再構成部103Aが追加する一時停止コマンドについては後述する。表示制御部108は、ワーク選択コマンドに記載されているワークの情報を表示装置122に表示させる部位である。ワーク選択コマンドに記載されているワークの情報とは、例えば、ストッカーの番号やワークに付された名称等である。
【0050】
本実施形態に係る再構成部103Aは、読み出された切削データに2つ以上のワーク選択コマンドが含まれている場合、2つ目以降のワーク選択コマンドをスキップするとともに、2つ目以降のワーク選択コマンドに係るコマンドに対して、それぞれ一時停止コマンドと再開コマンドとを追加するように切削データを再構成する。再開コマンドは、所定の再開条件が揃うと切削を再開するコマンドである。なお、本実施形態に係る再構成部103Aにおいても、第1実施形態と同様、最初のワーク選択コマンドはスキップされる。
【0051】
上記した再構成部103Aの機能から理解されるように、本実施形態に係る切削加工機10は、複数のワーク選択コマンドを含む切削データが送信された場合、2番目以降のワーク選択コマンドに係る動作のたびに一時停止する。この一時停止の間に、ユーザーはワークチェンジャーに代わってワークを交換することができる。そして、切削加工機10の側では、ワークが交換されたと推定できる所定の再開条件が揃えば再開コマンドが実行され、交換されたワークに対して切削加工が開始される。ワーク選択コマンドはスキップされるので、このときにはワーク選択コマンドに係るエラーは発生しない。本実施形態に係る切削加工機10によれば、切削データそのものを改変することなく、切削データ中の全ての切削加工を適切なワークに対して実施しうる。
【0052】
以下、具体的な実施プロセスについて説明する。
図8は、本実施形態に係る切削加工機10による切削加工のプロセスを示すフローチャートである。本実施形態においても最初のワークに対する切削加工は第1実施形態の場合と同じなので、
図8は、
図6のステップS05から後を図示している。
図8に示されるように、ステップS05において2番目のワーク選択コマンドに遭遇した場合(ステップS05がYESの場合)、ステップS06Aにおいて一時停止コマンドが実行され、切削加工機10は一時停止する。続くステップS07からS09では、再開条件が揃ったかどうかが判断される。ステップS07では、扉30の開信号が第1受信部105によって一度でも受信されたかどうかが判定される。ステップS07がNOのとき、即ち、一時停止後に一度も扉30が開されていないとき、ステップはステップS07の前に戻る。つまり、ステップは進行しない。これは実際には、例えば、扉30の開信号が一度受信されるとONし続ける制御装置100内の内部フラグの状態によって判定される。ステップS07がYESとなり、ステップS07を通過するとステップS08に進む。ステップS08では、扉30の閉信号が第1受信部105によって受信されているかどうかが判定される。ステップS07がNOのとき、即ち、その時点において扉30が閉じられていないとき、ステップはステップS08の前に戻る。つまり、ステップは進行しない。これは実際には、例えば、扉30の閉信号が受信されているときにだけONする制御装置100内の内部フラグの状態によって判定される。ステップS08を通過した状況は、少なくとも一度は扉30が開閉され、しかもその時点において扉30が閉まっているという状況である。
【0053】
上記ステップS07およびS08では、少なくとも一度は扉30が開かれてユーザーがワーク200を交換する機会があり、かつ、再開時において扉30が閉まっていることが確認されている。さらに、ステップS09では、再開条件として、さらにスタートボタン111の押下が課されている。ステップS09においてスタートボタン111が押下されると、ステップはステップS10に進み、2つ目のワーク選択コマンドがスキップされる。その後、ステップS11において次コマンドから順次実行される。即ち、第2のワークに対する切削加工が実行される。以下、3番目以降のワーク選択コマンドに係る切削加工についても同様である(
図8では省略)。なお、ステップS10のワーク選択コマンドのスキップは、例えばステップS05の直後に実行されてもよい。
【0054】
本実施形態に係る切削加工機10には、ユーザーのワーク交換作業を補助する機能が搭載されている。前述したように、本実施形態に係る制御装置100は、報知部107を備え、一時停止コマンドが実行されたときにブザー112を鳴動させるように構成されている。これにより、ユーザーはワーク交換のタイミングを知ることができる。なお、本実施形態ではユーザーに一時停止中であることを知らせる鳴動装置はブザーであったが、音声を発するものであればよく、特に限定されない。
【0055】
また、本実施形態に係る制御装置100は、表示制御部108を備え、ワーク選択コマンドに記載されたワークの情報を表示装置122に表示させるように構成されている。これにより、ユーザーはどのようなワークに交換すればよいかを知ることができる。なお、ワークの情報は外部に設置された表示装置122に表示される必要は必ずしもなく、例えば操作パネル110に設けられた表示装置などに表示されてもよい。その画面構成は、例えば一覧表示などが好適であるが、限定されない。切削加工が完了したワークの情報は、例えば画面から消えたり表示色が変わったりして視認できるように構成されていてもよい。
【0056】
このように、本実施形態に係る切削加工機10は、読み出された切削データに2つ以上のワーク選択コマンドが含まれている場合、2つ目以降のワーク選択コマンドをスキップするとともに、2つ目以降のワーク選択コマンドに係るコマンドに対して、それぞれ一時停止コマンドと、所定の再開条件が揃うと切削を再開する再開コマンドとを追加する再構成部103Aを備えている。そこで、ユーザーがワークを交換しながら複数のワークに対して所望の切削加工を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態に係る再構成部103Aは、第1受信部105が扉30の開信号を受信した後に扉30の閉信号を受信していることを含むように再開条件を設定している。従って、切削の再開にあたり、少なくとも一度は扉30が開かれてユーザーがワークを交換する機会があったことと、再開時点において扉30が閉まっていることとが確認されている。
【0058】
さらに、本実施形態に係る再構成部103Aは、第1受信部105が扉30の開信号を受信した後に扉30の閉信号を受信している状況において第2受信部106がスタートボタン111の押下信号を受信したことを含むように再開条件を設定している。この再開条件の設定によりユーザーの意思が確認され、誤操作がされにくいようになっている。
【0059】
なお、上記切削加工機10は、切削データ中に実行不要の切削加工が含まれている場合、その実行不要の切削加工全体をスキップできる機能を備えていてもよい。即ち、例えば一時停止コマンドの実行中に、表示装置122などに表示されたスキップボタンを押下する等の所定の作業を行うことにより、次のワーク選択コマンドまでスキップできるように構成されていてもよい。
【0060】
(第3実施形態)
第3実施形態は、切削データ中の任意の切削加工をユーザーが選択することができる実施形態である。本実施形態も、制御装置100の構成を除いて第1実施形態、第2実施形態と共通であるので、共通する部材、部位には共通の符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。
【0061】
図9は、本実施形態に係る切削加工機10のブロック図である。
図9に示されるように、本実施形態に係る制御装置100は、再構成部103Bに、選択部103B1と改変部103B2とを備えている。
【0062】
選択部103B1は、読み出された切削データに複数のワーク選択コマンドが含まれている場合、複数のワーク選択コマンドの中から1つまたは2つ以上の任意のワーク選択コマンドを選択可能に構成され、選択されたワーク選択コマンド以外のワーク選択コマンドに係るコマンドをスキップするように切削データを再構成する。即ち、選択部103B1は、選択されたワーク選択コマンド以外のワーク選択コマンドに係る切削加工を実行しないように切削データを再構成する。言い換えれば、選択されたワーク選択コマンドに係る切削加工だけを実行するように切削データを再構成する。
【0063】
改変部103B2は、選択されたワーク選択コマンドをスキップするとともに、2つ以上のワーク選択コマンドが選択されている場合には、2つ目以降のワーク選択コマンドに係るコマンドに対して、それぞれ一時停止コマンドと、所定の再開条件が揃うと切削を再開する再開コマンドとを追加するように切削データを再構成する。つまり、選択された1つまたは複数の切削加工について、第2実施形態と同様の対応を取るように設定されている。詳しくは、最初の切削加工についてはワーク選択のステップを除いて実行し、2つ目以降の切削加工についてはその実行の前に一時停止と再開作業とを差し挟む。
【0064】
選択部103B1は、例えば、第2実施形態における表示制御部108と同様に、表示装置122等にワークの情報を表示させる。ただし、選択部103B1が表示するのは単なる表示画面ではなく操作画面であり、画面から実行する切削加工を選択する。ここでは、選択されるべき切削加工は、ワーク情報として表示されている。ただし、表示される情報には、切削についての情報が付加されていてもよい。例えば、切削加工に対して付された名称等が表示されてもよい。ユーザーは、選択部103B1が表示させた画面を操作して、実行する切削加工を選択する。
【0065】
このように、本実施形態に係る切削加工機10によれば、ユーザーは実行する切削加工を任意に選択することができ、2つ以上の切削加工を選択した場合には、第2実施形態と同様に、ワークを交換する機会を得ることができる。
【0066】
以上、いくつかの実施形態に係る切削加工機について説明した。しかし、上記した実施形態は好適な例に過ぎず、ここに開示する切削加工機を限定するものではない。例えば、上記した第2実施形態では、切削加工の再開条件として、少なくとも一度は扉30が開かれたこと、再開時点において扉30が閉まっていること、および上記状態においてスタートボタン111が押下されたことの3つの条件が設定されていたが、切削加工の再開条件は必ずしも上記した3条件でなくともよい。例えば、再開条件からスタートボタン111の押下が外されてもよいし、さらに他の条件が追加されてもよい。
【0067】
また、上記した実施形態では、ツール210はY方向およびZ1方向に移動され、ワーク200はX1方向に移動されるとともにT1方向、T2方向の2方向に回転されたが、ツール210とワーク200の位置関係は相対的なものであり、どちらがどのように動くかは限定されない。
【0068】
さらに、ワークの形状やツールの形状は上記したものに限定されず、保持部材がワークを保持する方式等も限定されない。切削加工機は、切削加工によって生じる粉塵を回収する集塵装置などをさらに備えていてもよい。あるいは、上記した実施形態では切削加工機はドライ式であったが、クーラント等を使用するウエット式であってもよい。切削加工機の機械的な構成は特に限定されない。