特許第6892382号(P6892382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892382
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】電池電極用の電極材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20210614BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20210614BHJP
   C01B 32/977 20170101ALI20210614BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/36 C
   C01B32/977
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-526909(P2017-526909)
(86)(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公表番号】特表2018-502420(P2018-502420A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015076088
(87)【国際公開番号】WO2016078955
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年11月7日
(31)【優先権主張番号】102014116868.2
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509011329
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート・パーダーボルン
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】グルーリッヒ ウェーバー,ジークムント
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−171627(JP,A)
【文献】 特開平03−075209(JP,A)
【文献】 特開2011−076744(JP,A)
【文献】 特開平08−259213(JP,A)
【文献】 特開2002−056843(JP,A)
【文献】 特開2008−066128(JP,A)
【文献】 Ying Zheng et al.,Electrochimica Acta,2007年,52,5863-5867
【文献】 T. Sri Devi Kumari et al.,RSC Advances,2013年,3,15028-15034
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
C01B 32/977
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池用の電極材料を製造する方法であって、前記電極材料がナノ構造化炭化ケイ素繊維を含み、
a)ケイ素源、炭素源およびドーパントを含む、混合物を得るステップであって、少なくとも前記ケイ素源および前記炭素源が固形粒状体の粒子中に共通に存在し、前記固形粒状体中に炭素が、ケイ素に比べて等モル量より大きい量で存在するステップと、
b)ステップa)で得られた前記混合物を≧1400℃から≦2000℃の範囲内の設定温度で処理するステップであって、堆積面を備える反応器内で実行され、その堆積面の温度が、前記設定温度より≧30℃から≦200℃の範囲内で低くされるステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記電池がリチウムイオン電池であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)で得られた前記固形粒状体が、ゾル・ゲル・プロセスを使用することによって調製されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゾル・ゲル・プロセスが少なくとも以下の、
c)ケイ素源、炭素源、および任意選択でドーパントを含む前駆物質混合物を供給するステップであって、前記前駆物質混合物が溶剤中に存在するステップと、
d)前記前駆物質混合物を乾燥させながら、前記前駆物質混合物を22℃に比べて高温で処理するステップと、
e)任意選択で、前記ステップd)で処理された前駆物質混合物を≧800℃から≦1200℃の範囲内の温度まで加熱するステップと
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップd)における前記前駆物質混合物の処理中に、≧1μmから≦10μmの範囲のサイズの固体粒子が形成されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップd)における前記前駆物質混合物の処理中に、>10μmから≦2mmの範囲のサイズの固体粒子が形成されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
電池電極を製造するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項8】
リチウムイオン電池の電極を製造するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって製造されたナノ構造化炭化ケイ素繊維の表面に炭素膜を有することを特徴とする、電池電極用の電極材料。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって製造されたナノ構造化炭化ケイ素繊維の表面に炭素膜を有することを特徴とする、リチウムイオン電池電極用の電極材料。
【請求項11】
請求項9に記載の電極材料を含むことを特徴とする、電池電極。
【請求項12】
請求項10に記載の電極材料を含むことを特徴とする、リチウムイオン電池電極。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の電池電極を備えることを特徴とする、電池。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の電池電極が陽極として構成されることを特徴とする、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池電極用の電極材料と、特にリチウムイオン電池の陽極などの電池の電極とを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロ・モビリティ、および再生可能エネルギーの発生には、特に効率的な高性能エネルギー貯蔵を必要とすることが多く、特にリチウムイオン電池は、そのエネルギー密度が相対的に高いので、将来性がある手法を提供する。このことが、たとえば民生用電子機器、携帯用コンピュータ、ならびに電気駆動車両にリチウムイオン電池がよく使用され、また応用される理由である。
【0003】
たとえば、文献「Nano−porous Si/C composites for anode material of lithium−ion batteries」、Zhengら、Electrochimica Acta 52(2007)、5863〜5867頁により、元素のケイ素および炭素を含む複合材料からリチウムイオン電池の電極を製造することが知られている。
【0004】
特開2008−066128には、ポリシランおよび炭素源から出発し、炭素材料上に炭化ケイ素を含む複合材料が製造される、リチウムイオン電池の電極を製造する方法が記載されている。
【0005】
米国特許第8,734,674B1号には、炭化ケイ素のリチウムイオン容量を改善するための方法が記載されている。これを実現するために、この文献では、ドープされた炭化ケイ素の黒鉛化を不活性雰囲気中で規定温度処理によって実行することを教示しており、表面に付着するさらなる酸化物が除去されることになる。
【0006】
文献「Nano silicon carbide:a new lithium−insertion anode material on the horizon」、Kumarら、RCD Adv.,2013,3、15028〜15034頁にはさらに、リチウムイオン電池の陽極用の材料として炭化ケイ素を使用することが記載されている。ここには、3Cケイ素が化学気相成長によって生成されることが詳細に記載されており、ケイ素ナノ粒子がメタンと反応して炭化ケイ素を形成する。しかし、炭化ケイ素のドーピングは困難なようである。
【0007】
文献「Enhanced Lithiation of Doped 6H Silicon Carbide (0001) via High Temperature Vacuum Growth of Epitaxial Graphene」、Lipsonら、J.Phys.Chem.C2012,116、20949〜20957頁にはさらに、1350℃での温度処理を用いる表面黒鉛化による、陽極に適している炭化ケイ素の電気化学リチオ化容量の改善について記載されている。
【0008】
しかし、リチウムイオン電池などの電池の電極、特に陽極の製造には、なお改善の余地がある。特に、電極または電池の、容量またはエネルギー密度およびサイクル安定性の点でさらなる改善の余地があり、特に、費用効率の高い解決策が有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、十分な容量および/または良好なサイクル安定性を有する電池を費用効率の高い方法で実現できる解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を含む方法によって達成される。この目的はさらに、請求項8に記載の特徴を含む電池電極によって、また請求項12に記載の特徴を含む電池によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、説明、および実施例に開示されており、従属請求項、または説明、または実施例に記述または図示されているさらなる特徴は、反対のものが文脈から明らかでない限り、個々に、または任意の組合せで本発明の主題になり得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
電池電極の、特にリチウムイオン電池の電極材料を製造する方法が提案され、前記電極材料はナノ構造化炭化ケイ素を含む。この方法は、
a)ケイ素源、炭素源およびドーパントを含む、混合物を得るステップであって、少なくともケイ素源および炭素源が固形粒状体の粒子中に共通に供給されるステップと、
b)ステップa)で得られた混合物を≧1400℃から≦2000℃の範囲内、特に≧1650℃から≦1850℃の範囲内の温度で処理するステップであって、堆積面を備える反応器内で実行され、その堆積面の温度が、反応器の少なくとも1つの別の内面に比べて低くされるステップとを含む。
【0012】
上記の方法によって、電池の、特にリチウムイオン電池の電極材料を得ることができ、この電極材料はまた、ドープされた形で簡単に製造することもでき、さらに、高いサイクル安定性を可能にすることもできる。
【0013】
したがって、上記の方法は、電極用の電極材料を製造するのに役立つ。本明細書では、電極材料とは、従来のように、単独で、または任意選択で他の材料と一緒に集電体と接触させることができ、そうして集電体と一緒に電極を形成することができる材料を意味する。特に、上記の方法によって、リチウムイオン電池の陽極を形成することができる。
【0014】
ここで、ステップa)および/またはステップb)の全体または個々のものとしての以下の処理は、好ましくは、特にアルゴンなどの不活性ガスのもとで実行することができる。
【0015】
この目的のために、処理は、最初にステップa)により、ケイ素源、炭素源およびドーパントを含む、混合物を得るステップを含み、少なくともケイ素源および炭素源が固形粒状体の粒子の形態で共通に存在する。特に、こうして固形粒状体の粒子それぞれが炭素源およびケイ素源を含むことが好ましいことがある。ケイ素源および炭素源は別の処理で使用されて、炭素源とケイ素源の反応による炭化ケイ素の生成を可能にする。したがって、ケイ素源および炭素源は、これらが下記の条件で、特に以下の温度で、たとえば通常の圧力(1バール)で上記の方法によって炭化ケイ素を形成できるように、選択されなければならない。
【0016】
したがって、ケイ素源または炭素源の選択は、原則として限定されない。好ましいケイ素源にはテトラエチルオルソシリケート(TEOS)が含まれ得るのに対し、好ましい炭素源にはサッカロースなどの糖が含まれ得る。たとえば、エタノールに溶解した液体の糖とテトラエチルオルソシリケートとの混合物は、炭素源とケイ素源の混合物として供給することができ、ここで本発明は明らかに前述の例に限定されない。
【0017】
ドーパントに関して、これは所望のドーピングに基づいて選択することができる。本明細書では、1つまたは複数のドーパントは、可溶性化合物として、または任意選択で元素、たとえば金属として、固形粒状体の製造プロセスなどにおいて原則として自由に選択可能な形で加えることができる。すなわち、ドーパントはまた、固形粒状体の一部とすることもできる。別法として、たとえば繊維または3C炭化ケイ素ナノ結晶を形成するような、炭化ケイ素を形成するドーピングが、以下で詳細に説明されるように、熱処理中に気相を介して実施されることもまた考えられる。n形ドーピングのドーピング材料として、好ましくはリン(P)または窒素(N)を使用することができ、これは電極にとって非常に有利であり、あるいはpドーピングでは、ホウ素(B)またはアルミニウムを使用することができる。ドーピングによって、電極材料の十分な電気伝導率を調整することができる。
【0018】
ステップb)により、この方法はさらに、ステップa)で得られた混合物を≧1400℃から≦2000℃までの、特に≧1600℃の範囲内、たとえば≧1650℃から≦1850℃の範囲内の温度で、特に反応器内で処理するステップを含む。このステップで、炭化ケイ素が、固形粒状体の炭素源から、またはケイ素源からそれぞれ形成されることが可能になる。
【0019】
本明細書では、選択された正確な温度に応じて、生成される炭化ケイ素の個々の形態を制御することができる。詳細には、ステップb)で温度を約≧1650℃から約≦1700℃の範囲に、通常の圧力(1バール)で特に有利なように設定することで、炭化ケイ素のナノ構造化繊維を形成することができる。ここで、固形粒状体の材料が、温度が比較的高い位置で気相に移ることができるように、また、炭化ケイ素繊維を相対的に低い温度で堆積面などに堆積できるように、温度勾配の形成を有利にすることができる。
【0020】
すなわち、特に繊維状の炭化ケイ素の生成のために、前述の温度と比較して温度が低い堆積面を実現することができる。言い換えると、ステップb)が、堆積面を備える反応器内で実行され、その堆積面の温度が、反応器の少なくとも1つの別の内面に比べて低くされるようにしてもよい。たとえば、堆積面の温度は、反応器内で一般に設定される、≧1400℃から≦2000℃の、特に≧1600℃の範囲内、たとえば≧1650℃から≦1850℃の前述の範囲内の温度と比較して、≧50℃から≦100℃の範囲にある温度だけ下げることができる。特に、繊維状の電極材料には、機械的柔軟性が高いという利点があり、そのため、リチウム種の吸蔵または放出中の、たとえば電池の充電または放電過程中の損傷または過度の劣化が生じないことが期待される。こうして、このような電極は、それぞれ劣化の程度が非常に低い状態、またはサイクル安定性が非常に高い状態で作動させることができる。
【0021】
特に、堆積面を特に簡単な方法で備える、かつ複雑な機器を必要としない上記の実施形態によって、炭化ケイ素が、温度勾配を設けることによって、所望の方法で特に繊維の形態で気相から堆積されることが可能になる。堆積面との接触によって、炭化ケイ素を気相から直接、別の手段を必要とせずに堆積することができる。たとえば、反応器は、上部に向かって開いている円筒などの、上部に向かって開いている容器として実現することができ、その中で前駆物質が上記の温度まで加熱される。上部に向かって開いている開口部の上では、円形で回転可能な堆積面を容器の内部に向けて、気相が堆積面と接触できるようにしてもよく、それにより、ここに炭化ケイ素をたとえばナノ・スケール繊維の形態で堆積できることになる。
【0022】
反応器内で約>1700℃から約≦1850℃の範囲の温度が通常の圧力で設定される場合、微細なナノ構造化炭化ケイ素粒子を形成することができる。この実施形態では、ナノ構造化粒子の形態の炭化ケイ素が固形粒状体の位置でじかに形成されるか、またはそこで結晶化するので、それぞれ温度勾配を省略することができる。この実施形態に基づいて製造される電極材料は同様に、高いサイクル安定性を有し、そのため、このような電極材料もまた従来技術と比べて有利である。
【0023】
炭化ケイ素ナノ粒子の製造では、固形粒状体が非常に微細な粒径を有することが好ましいことがある。特に、≦10μmの範囲の、たとえば、≧1μmの範囲の粒子サイズが有利であることがあり、ここで、このサイズ範囲は特に光学的に、たとえばレーザ回折法によって決定することができ、これは原則として、対応するサイズ範囲に適用される。さらに、上記のサイズ仕様ならびに他の言及されたサイズ仕様は、たとえそれぞれ明示的に示されていなくても、それぞれD50値、たとえばD90値を指し得る。さらに、ナノ結晶3C−SiC粉末を製造するための基礎材料はしたがって、約30%の減容しか生じないので、ほぼ最終製造物のサイズを有し得る。
【0024】
繊維に関して、これは特に、長さと直径の比が少なくとも3:1以上である構造体とすることができるが、繊維に相対して粒子の長さと直径の比は3:1未満である。たとえば、本出願では、繊維の長さと直径の比は、特に10:1以上、特に100:1以上、たとえば1000:1以上とすることができる。
【0025】
たとえば、炭化ケイ素粒子の製造では、基礎材料は炭素とケイ素の高密度の混合物を含むことが有利であり、これらは単独のケイ素粒子および炭素粒子ではなく、炭素源およびケイ素源が各粒子中に存在する。これは、反応がSi−C粒子内の非常に限定された領域で起り得ることを特に有利に可能にする。
【0026】
繊維形成に関して、特定の状況下での固形粒状体中のケイ素と炭素の密接な混合により、SiCおよびSiCが気相ですでに存在し得ることが有利になることができ、これにより、温度勾配の別の位置でのSiCの形成が容易になる。すなわち、Si−Cガスがそのまま存在し得るが、他のガス成分も、当業者には明らかなように存在し得る。
【0027】
本明細書では、温度の調整によって、生成される炭化ケイ素が粒子の形態ならびに繊維の形態の両方でナノ結晶であることが可能になり、詳細には、炭化ケイ素の立方晶3C構造体が得られる。特に、炭化ケイ素(SiC)が炭化ケイ素単結晶として、好ましくは単結晶立方晶3C−SiCとして存在する場合、単結晶炭化ケイ素繊維または粒子は高い熱伝導率を併せ持ち、これは電池の熱管理、ならびに化学的および熱的安定性に関し有利であり得、特に繊維として、炭化ケイ素の柔軟性と共に長期安定性に関して有利であり、高いサイクル安定性に関して有利である。しかし、本発明の範囲内で、炭化ケイ素の多結晶の形態もまた考えられる。
【0028】
さらなる利点は、電極材料としての炭化ケイ素が高い容量を有することが可能なことであり、それにより、上記のように製造された電極材料がまた、優れた電池の性能をもたらすこともできる。
【0029】
さらに、炭素源およびケイ素源を含む固形粒状体にドーパントが存在せず、またステップa)による固形粒状体が、ステップb)による温度処理が行われる反応器に移される限り、ドーパントを反応器の中に、たとえばガスとして導入することができ、ここで、ステップa)による混合物は反応器内ですぐに、温度処理の前に形成することができる。これは、ドーパントがガスとして存在できる場合に、特に有利であり得る。たとえば、この場合にはガス状の窒素がドーパントとして機能することができる。
【0030】
ナノ構造化炭化ケイ素ナノ結晶粒子および繊維が、多数の性能向上の大きな潜在性を持つリチウムイオン電池またはリチウムイオン二次電池(LIA)の陽極材料として適している。この材料は、現在陽極として使用されている炭素材料(黒鉛)にそのまま取って代わることができ、対応する製造プラントでは大幅な変更の必要がない。すなわち、従来の製造プロセスを本質的に維持することができ、このことが、これら既存のプロセスまたはシステムにおいて、上記の方法の特に有利な実施を可能にする。使用可能な材料は、この特定の用途のために最適化することができ、製造プロセスは、適切な方法で大きな労力なしで適応させることができる。
【0031】
基本的に、上記の方法は、炭化ケイ素を含む電極、特に陽極が、従来の電極を備えるリチウムイオン二次電池よりも、約5倍から6倍高い容量を有することができ、また相当に大きいサイクル耐久性、またはより大きいサイクル安定性にすることができるという利点をもたらす。
【0032】
特に高い炭化ケイ素の熱伝導率はまた、充電および放電過程中の熱の形でのエネルギー損失を放散する助けになり得る。すなわち、上記の方法によって製造される電極は、電極の長期安定性をさらに向上させることができる効果的熱管理という利点を有する。
【0033】
上記の方法における重要な要素は、本明細書では、製造される炭化ケイ素材料のナノ・スケールである。これは、上記で詳述のように、ナノ繊維の使用によって、またはナノ粒子もしくは粒状炭化ケイ素の使用によってそれぞれ容易に実現することができる。本明細書では、ナノ構造化炭化ケイ素は特に、少なくとも1つの次元でナノメートル範囲の、特に100nm以下の最大空間寸法を有する炭化ケイ素を意味し、その下限は製造プロセスによって限定され得る。特に、ステップa)による固形粒状体の粒子のサイズは、元のサイズまたは固形粒状体の粒子のサイズの70%のサイズがここでは通常存在し得るので、炭化ケイ素の粒子サイズの下限を規定することができ、繊維の下限は、成長の場所の温度、設定温度勾配、および繊維の成長の時間によって決定され得る。
【0034】
上記の方法はまた、製造直後に製造された炭化ケイ素が電極材料として上記の用途にちょうど適しているので有利である。したがって、炭化ケイ素を電極製造の直前に製造することができ、いっそう容易に得ることができるので、炭化ケイ素の表面での酸化ケイ素層(SiO)の形成を防止することができる。その選択的な除去は、従来技術によるリチウムイオン二次電池の効果的な動作に重要であり、従来技術では、たとえば塩素化、またはフッ化水素酸の使用によって行われ、炭素堆積が後に続く。このような追加のステップは、プロセスを特に高い費用効率にすることができる本発明によれば、省略することができる。
【0035】
本発明により製造される電極材料とは対照的に、市販のSiC粉末は通常、純度が十分でなく、意図せずにドープされるにすぎない。これはまた、異なるSiCポリタイプの混合物を含むことが多い。しかし、Liイオン二次電池では、上記の方法を用いることによって特に製造可能である、nドープされた純粋な3C−Sicが特に有利である。
【0036】
要約すると、上記の方法は、簡単で費用効率の高い製造と高いサイクル安定性を組み合わせることを可能にする。
【0037】
上記の方法の好ましい実施形態では、ステップa)で得られる固形粒状体が、ゾル・ゲル・プロセスを使用することによって製造されるようにしてもよい。本明細書では、ゾル・ゲル・プロセスとは、知られているように、生成される化合物の基礎材料、いわゆる前駆物質が溶剤中に存在するプロセスを意味し、この混合物がゾルと呼ばれる。このプロセス中に、いわゆるゲルが乾燥またはエイジングによって形成され、このゲルから、さらなる処理、特に熱処理によって固体を生成することができる。この固体は、このように前駆物質の選択によって規定することができ、炭化ケイ素の形成のための炭素源およびケイ素源を含み、さらに任意選択で、ゾルの調製中にすでに加えることができる、炭化ケイ素のドーピングのためのドーパントを含むこともできる。
【0038】
ゾル・ゲル・プロセスもまた、不活性雰囲気中で、特にアルゴン雰囲気中で完全に、または少なくとも部分的に実行することができる。
【0039】
ゾル・ゲル・プロセスを用いることによる上記の方法の実施形態に特に関して、ゾル・ゲル・プロセスが少なくとも以下のステップ、すなわち、
c)ケイ素源、炭素源、および任意選択でドーパントを含む前駆物質混合物を供給するステップであって、この前駆物質混合物が溶剤中に存在するステップと、
d)前駆物質混合物を乾燥させながら、前駆物質混合物を、特に室温(22℃)に比べて高温で処理するステップと、
e)任意選択で、乾燥させた前駆物質混合物を≧800℃から≦1200℃の範囲の、特に≧900℃から≦1100℃の範囲の温度まで加熱するステップと
を含むようにしてもよい。
【0040】
すなわち、ステップc)により、まず、固体になるように処理される前駆物質を供給することができ、次にこれが、炭素源として、またはケイ素源としてそれぞれ機能することができる。さらに、もうすでにこのステップでドーパントを加えることもできる。ステップc)の非限定的な例として、液体の糖の混合物と、エタノール中のテトラエチルオルソシリケートとをゾルとして混合することができる。
【0041】
これは、ステップd)により、空気の排除下で、たとえば、エタノールを使用する場合でたとえば60〜70℃の範囲の、溶剤の沸点近くの温度範囲でゼラチン化またはエイジングすることができ、さらに、沸点を超える温度で乾燥させることもできる。ここでは、乾燥中に約≧1μmから≦2μmのサイズ範囲内の固体粒子が形成される場合に有利であり得、すでに上で示されたように、≧1μmから≦10μの範囲のサイズの粒子がナノ結晶炭化ケイ素粉末にとって有利であり、>10μmから≦2mmのサイズ範囲の粒子がナノ結晶炭化ケイ素繊維にとって有利である。ここで、前述のサイズ範囲には特に、繊維製造中の微細粒子の増加を防止するなどのプロセス技法上の利点がある。このような粒子サイズは、たとえば、乾燥処理中の撹拌処理によって可能にすることができ、粒子サイズは、たとえば、当業者には基本的に知られているように、使用される撹拌デバイス、回転速度、および撹拌処理の持続時間または強度によって調整可能にすることができる。
【0042】
次に任意選択で、ステップe)により、乾燥させた前駆物質混合物の、≧800℃から≦1200℃の範囲の、特に≧900℃から≦1100℃の範囲の温度までの、たとえば1000℃での加熱が行われる。このステップによって、生成された固体材料は特に不純物を除去することができ、これにより、生成された炭化ケイ素を特に純粋にすることが可能になる。このことが、製造される電極の特に高い品質を可能にする。加えて、このようにして気相からの炭化ケイ素の結晶化を改善することができる。
【0043】
ステップd)および任意選択でe)によって、ステップa)による混合物が得られ、または完成される。
【0044】
要約すると、このようにして一実施形態では、処理される各材料が一緒になってゲルの形態の混合物を形成してから乾燥されるゾル・ゲル・プロセスを使用することができ、炭素熱還元の別のステップで繊維の成長などの炭化ケイ素の結晶化が行われる。プロセスとしてそれ自体が知られているゾル・ゲル・プロセスは、本発明による電極材料の製造用の様々な基礎材料、またはその出発材料の製造のための、容易に管理できる、かつ広く変えられる可能性を提供する。
【0045】
ドーピング材料がゾル・ゲル合成の湿式化学部分に導入され、それによって熱処理中にドーパントが成長する繊維または粒子の中に取り込まれる場合に有利である。ここでは、ドーパントは、可溶性化合物として、または金属の形態で加えることができる。別法として、繊維を形成するドーピングが熱処理中に気相を介して行われることもまた考えられる。ドーパントとして、この場合もやはり好ましくは、リン(P)または窒素(N)またはホウ素(B)またはアルミニウム(Al)を使用することができる。
【0046】
特に繊維から形成された電極層の特性に影響を及ぼす別の可能性は、形成された繊維がさらなるゾル・ゲル・プロセスにおける後処理中に互いに連結される場合に得られる。このようにして、固体でなお柔軟性がある繊維の複合物が、個々のまたは複数の繊維の接触点の領域における連結によって、繊維を互いに織物加工ステップによって結合する必要なしに、個々の繊維から形成される。
【0047】
この方法の別の好ましい実施形態では、ステップa)で得られた固形粒状体中に炭素が、ケイ素に比べて等モル量より大きい量で存在するようにすることができる。言い換えると、炭素量は、すべてのケイ素が炭化ケイ素になる反応においてさらになお炭素が存在するように選択することができる。たとえば、炭素は、ケイ素に対してモル分率に基づいて≧1/1から≦1.5/1の量で存在することができる。特にこの実施形態では、プロセスは特に簡単に実行することができる。その理由は、炭化ケイ素繊維または炭化ケイ素粒子の表面の、炭素層または炭素膜を表面に形成することによってこのように実施された改質により、ケイ素の酸化すなわち酸化ケイ素の形成が、長期にわたって空気中に保管された場合でも、特に効果的に防止され得るからである。すなわち、特にこの実施形態では、リチウムイオン電池またはリチウムイオン二次電池の電極としての動作の際のリチウム化合物の効果的な吸蔵を可能にするために、酸化ケイ素層を除去する追加ステップが必要になることを効果的に防止することができる。すなわち、ゾル・ゲル・プロセス中の比較的簡単で複雑ではない化学量論比の修正によって、所望の酸化防止特性を有する保護層をこうして生成することができる。ここでは、追加ステップが不要であり、これによりプロセスは特に、費用効率が高く、かつ時間節約するものになる。
【0048】
生成されるべき炭化ケイ素の所望の形態に応じて、たとえば、ゾル・ゲル・プロセス中の乾燥処理において、撹拌などにより、固体材料の適正な粒子サイズは、ステップd)に関して上述したように調整されることが有利であり得る。たとえば、炭化ケイ素繊維を製造するために、≧25μmから≦70μmの範囲内などの、>10μmから≦2mmの範囲内の粒子サイズが得られる場合が好ましい可能性がある。炭化ケイ素粒子の製造では、≦5μmなど、<10μmの範囲内の、たとえば≧1μmである固体粒子が製造される場合がさらに有利であり得る。
【0049】
この方法の別の好ましい実施形態では、その堆積面の温度を、反応器の少なくとも1つの別の内面に比べて≧30℃から≦200℃の範囲内で、好ましくは≧50℃から≦100℃の範囲内で低くした温度にするようにしてもよい。この実施形態では、特に炭化ケイ素繊維の堆積を特に効果的に行うことができ、その上、このような温度差は処理技術により容易に調節可能である。
【0050】
上記の方法のさらなる利点および技法的特徴に関しては、本明細書により、使用、電池電極および電池についての説明および例に明示的に言及されており、逆も同様である。
【0051】
本発明の主題はまた、電池用、特にリチウムイオン電池用の電極材料を製造する方法の使用であり、前記電極材料は、この方法について詳細に上で説明されたように、電池電極の製造のための、特にリチウムイオン電池用の陽極を製造するための、ナノ構造化炭化ケイ素を含む。
【0052】
この目的のために、生成された電極材料すなわちナノ構造化炭化ケイ素は、たとえば、ポリマー・バインダーおよび任意選択で黒鉛などの導電性添加物と組み合わせて集合体を形成することができ、さらに電極集電体と結合すること、たとえばその上に付けることもできる。これらのステップは一般に当業者に知られており、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0053】
要約すると、電池用の電極を製造する上記の方法を使用することによって、簡単で費用効率の高い製造プロセスと高いサイクル安定性を組み合わせることが、このように可能になる。
【0054】
上記の使用のさらなる利点および技法的特徴に関しては、本明細書により、方法、電池電極、電池および例についての説明に明示的に言及されており、逆も同様である。
【0055】
本発明の主題はまた、ナノ構造化炭化ケイ素を含み、かつ詳細に上述した方法に従って製造された電極材料を含む電池電極である。
【0056】
このような電極、特にリチウムイオン電池の陽極はこうして、上記のように構成または生成されている炭化ケイ素を含む。この炭化ケイ素がその表面に炭素膜を有するようにすることができる。これにより、長期の安定性を向上できるように、材料の酸化を二酸化ケイ素の形成によって防止することが可能になる。
【0057】
さらに、ケイ素をドープすることができ、ドーパントの量は、炭化ケイ素または電極それぞれの所望の導電率によって決まり得る。適切なドーパントには、たとえば、窒素、リン、ホウ素およびアルミニウムが含まれる。
【0058】
たとえば、炭化ケイ素はナノ結晶とすることができ、かつナノ構造化結晶の繊維もしくは粒子、または繊維と粒子の混合物を構成することができる。炭化ケイ素は、たとえば、バインダー中に存在することができ、バインダー中にはさらに、黒鉛などの導電性添加物が存在し得る。
【0059】
要約すると、上記の電池電極を用いることによって、簡単で費用効率の高い製造と高いサイクル安定性を組み合わせることが可能になる。
【0060】
上記の電池電極のさらなる利点および技法的特徴に関しては、本明細書により、方法、使用、電池についての説明、および例に明示的に言及されており、逆も同様である。
【0061】
本発明の主題はさらに電池であり、この電池は、詳細に上述した少なくとも1つの電池電極を含む。
【0062】
上記の電池はリチウムイオン電池とすることができる。さらに、電池の陽極が上記のように構成されるようにすることができる。
【0063】
要約すると、上記の電池は、簡単で費用効率の高い製造と高いサイクル安定性を組み合わせることを可能にする。
【0064】
上記の電池のさらなる利点および技法的特徴に関しては、本明細書により、方法、使用、電池電極および例についての説明に明示的に言及されており、逆も同様である。
【0065】
以下では、本発明が、好ましい実施形態に関して例示的に説明され、下記の諸特徴はそれぞれ個別に、また組み合わせて本発明の一態様を表すことができ、また本発明は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0066】
下記の実施例は、ゾル・ゲル・プロセスを使用することによりリチウムイオン二次電池の陽極用の炭化ケイ素を生成することに関する。
【0067】
リチウムイオン二次電池の陽極には、3C−SiC(6H)SiCを好ましくは2つの形態で、すなわち、特に表面改質によって生成されるドープされた単結晶SiCナノ粉末として、または下記のようにやはり特に表面改質によって生成されるドープされた単結晶SiCナノ繊維として、使用することができる。
【0068】
以下では、まず、ゾル・ゲル・プロセスを使用することによる、ナノ結晶SiC粉末およびナノ結晶SiC繊維の製造プロセスについて説明する。
【0069】
ゾル・ゲルSi−C前駆物質の調製:以下の化学合成では、70℃から200℃での異なる乾燥ステップによるゾル・ゲル処理と、1000℃でのSi−C固形粒状体の最終獲得について説明する。
【0070】
液体の糖、テトラエチルオルソシリケートおよびエタノールがゾルとして混合され、空気の排除下で60〜70℃でゲル化される。配合物の組成は、(a)168.7gのエタノールにケイ素源として溶解させた135gのテトラエチルオルソシリケート(TEOS)のコロイド懸濁液、および(b)75gの蒸留水に炭素源として68gのサッカロース、このサッカロースに37.15gの塩酸(HCI)が転化糖を形成するための触媒として加えられる溶液であった。次に、溶液(a)と液体の糖(b)が撹拌下で混合された。別法として、溶液(b)の代わりに液体の糖(転化糖、122g70%)をそのまま使用することもできる。その場合、水を加えることなくで、塩酸が、これはゲル化処理を開始するためだけに必要であるので、非常に少量(5.2g)だけ加えられる。このゾルは50℃でエイジングされ、次に150〜200℃で乾燥される。
【0071】
SiC繊維の製造では、好ましくは粗い粒状体が必要とされ(およそ10μm)、それにより、エイジングおよび/または乾燥処理中に一時的な撹拌が行われる。ナノ結晶SiC粉末では、常時撹拌が200℃で行われる。それによって前駆物質粒状体は、ナノ結晶SiC粉末の製造に好ましい非常に微細な粉末に分解される。この粒状体または粉末は、残っている不要な反応生成物が1000℃において窒素またはアルゴンのガス流中で除去され、必要であれば、最後に粉砕される。
【0072】
ここで、SiCナノ繊維およびSiCナノ粉末のドーピングが目的のSiC前駆物質の改質を行うことができる。n形ドーピングをたとえば窒素(例示的な添加物:硝酸、塩化アンモニウム、硝酸カリウムまたはメラミン)で、またはリン(例示的な添加物:リン酸二水素カリウム、またはリン酸二水素ナトリウム)で、行うことができる。p型ドーピングをたとえばホウ素で(例示的な添加物:四ホウ酸二ナトリウム)、またはアルミニウムで(添加物:アルミニウム粉末)で行うことができる。ドーパントはゾルに加えられ、その量は個々の添加物および所望のドーピング濃度によって決まる。
【0073】
炭化ケイ素繊維製造については、得られる固体材料が高温反応器内で加熱され、粒状体は1400℃から、特に1600℃から気相に移り、単結晶炭化ケイ素繊維が回転基板上に、ある温度勾配下で堆積される。特に、Liイオン二次電池用途のナノ結晶繊維は、1650℃から1700℃までの気相で、または約50〜100℃だけ低温の堆積面で成長する。
【0074】
SiCナノ粉末製造については、やはり高温反応器内で操作が行われるが、温度勾配がなく、前駆物質粉末は単結晶3C−SiCに結晶化する。
【0075】
表面改質については、3C−SiCの中へのリチウムイオンの効果的な拡散を可能にするために、好ましくは以下の2つの条件、すなわち高いバルク・ドーピングおよび表面導電性、が満たされなければならない。バルク・ドーピングは、上記のようにSiC生成中に行われる。高純度ナノ粒子(結晶および繊維)の製造は、不活性雰囲気中で行うことができる。そして、リチウムイオン二次電池用の集電体のコーティング、たとえば金属箔などの、すべての後続の製造ステップは、表面の酸化を防止するために、数時間以内に、または完全な酸素の排除下で行うことができる。より実際的で電気的に意味のあるのは、電気伝導性の保護層、特に炭素含有保護層そのものでの表面改質を用いることによってSiCナノ粒子を製造することである。これは、ここでは前駆物質粒状体中の炭素とケイ素の比率が、炭素が数パーセントだけ高くなる変更によって実現される。これにより、製造プロセスがかなり簡単になる。