(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
人体におけるコラーゲンの比率は、細胞外マトリックスの構造形成に関与する線維性コラーゲンについて最も多い。I型コラーゲンは、支持組織、血管、真皮、腱及び靭帯、角膜、及び骨に多く存在する。よって、その止血特性、低免疫原性、及び細胞挙動における関連性により、組織代替物の天然重合体成分の第一候補で残っている。それゆえ、現状では、コラーゲンに基づいた異なる種類の代替物の産業上の利用がこれまでに提案されている。コラーゲンの調製については、文献において多くの方法が提案されているが(Friess et al., Eur. J. Pharma. Biopharma. 1998, 45, 113-136)、一般的に、これらのマトリックスではコラーゲンが低濃度である。
【0003】
濃縮コラーゲン性材料を得る手段として、酸可溶性コラーゲンからのコラーゲン粒子の使用が、多くの方法により提案されてきた。Morson(GB2274458)は、発酵飲料の清澄化において使用可能な粒子の取得のために、酸可溶性コラーゲンを噴霧乾燥できることを示した。それにもかかわらず、この出願で特定された作業条件、特に120℃の乾燥温度は、コラーゲンの三重螺旋の変性に関与する。
【0004】
別の方法(EP2599820)では、エタノール、アセトン、ジエチルエーテルなどの親水性有機溶媒の使用によるコラーゲンを沈殿させる方法が提案されている。この方法を用いて、著者らは、ミクロンサイズのコラーゲン粒子を沈殿させることができた。それにもかかわらず、有機溶媒の使用により、より詳しくは、得られた材料における微量のこれらの化合物の存在が、製剤の注射における毒性の問題を引き起こす。
【0005】
また、タンパク質の未変性条件における、水/油混合液(Hsu et al., Biomaterials, 1999, 20, 1931-1936)中の、又は水/有機溶媒混合液(US4565580)中のエマルション技術に基づくビーズ状の製剤も提案されている。しかし、微量の油又は溶媒が、形成されたビーズと結合する。代替法として、溶液の液滴を液体窒素の浴中に導入した後、凍結乾燥工程を行う熱誘起相分離法(TIPS)がある(Keshaw, et al., Acta. Biomater. 2010, 6, 1158-1166)。いかなる場合でも、形成されたコラーゲンビーズの脆弱性により、毒性問題が生じる化学薬品(アルデヒド、カルボジイミド)による架橋工程に繋がる。実際、これらの方法では、I型コラーゲンの分子は、酸性pHにて低濃度(約1mg/ml)で溶液中に存在する。
【0006】
よって、本発明の1つの目的は、インビボで高濃度コラーゲンマトリックスを形成するコラーゲン懸濁液の提供である。
【0007】
本発明の別の目的は、時間経過しても安定で、特に時間経過してもコラゲナーゼに耐性のある、インビボでコラーゲンマトリックスを形成するコラーゲン懸濁液の提供である。
本発明の別の目的は、レオロジー特性により注入が容易な高い濃度のコラーゲン懸濁液の提供である。
本発明の別の目的は、処置後に植込み可能な高濃度コラーゲンマトリックスを形成するコラーゲン懸濁液の提供である。
本発明の別の目的は、非変性且つ非架橋のコラーゲンの懸濁液の提供であって、該懸濁液においては、溶媒、乳化剤又は化学試薬などの混入物がない。
【0008】
したがって、本発明は、非変性且つ非架橋のコラーゲンで本質的に形成される固体の球状又はスフェロイド状粒子であって、
かかる粒子の直径が、0.05〜20μmであり、特に0.25〜10μmであり、より詳しくは0.4〜3μmである、前記粒子に関する。
【0009】
用語「スフェロイド」とは、球体の形状に類似する形状の固体を意味する。
用語「直径」とは、球体の直径、又はスフェロイドの最大直径を意味する。
例えば、この直径は、電子顕微鏡又は動的光散乱により測定可能である。
【0010】
「コラーゲンで本質的に形成される」との表現は、90質量%を超えるコラーゲンを意味し、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%を超えるコラーゲンを含む粒子を意味する。
【0011】
用語「非変性」とは、α三重螺旋の二次構造が保存されているコラーゲンを意味する。
コラーゲンの非変性又は変性の性質は、例えば熱量測定分析で観察できる。変性コラーゲンは、組織化された高分子領域の兆候を伴わない、変性タンパク質(ゼラチン)の熱量測定プロファイル特性を有する(
図3)。
【0012】
用語「非架橋」とは、結合がグルタルアルデヒド処理などの化学的修飾、又は物理的修飾の結果であっても、化学架橋結合のないコラーゲンを意味する。
架橋の欠如は、例えば電気泳動法で測定可能である。
【0013】
本発明の特別の実施形態では、本発明は、有機溶媒、乳化剤又は化学試薬などの混入物、特に架橋剤を含まない粒子に関する。
【0014】
用語「架橋剤」とは、好ましくは、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、グルタルアルデヒド(GAD)、またカルボジイミド1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又はN‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などのカルボジイミドを意味する。
【0015】
コラーゲンの供給源は無関係である。
特に、コラーゲンは次のプロトコールにより得ることができる:I型コラーゲンの溶液をウィスターラット尾腱から調製する。ラミナーフローキャビネットでの切除後、腱を滅菌リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄する。そして、残存する完全な細胞を取り除き、かつ高分子量のタンパク質の一部を沈殿させるために、腱を4M NaClの溶液中に浸す。リン酸緩衝生理食塩水による洗浄後、腱を滅菌500 mM酢酸溶液中で可溶化する。得られた溶液を41000 gで2時間の遠心分離により清澄化する。コラーゲン以外のタンパク質を、300 mM NaClの水溶液中で選択的に沈殿させ、41000 gで3時間の遠心分離により取り除く。600 mM NaClの溶液中での沈降と、その後の3000 gで45分間の遠心分離により、上清からコラーゲンを回収する。得られたペレットを500 mM酢酸の水溶液中で可溶化し、NaClイオンを除去するために同じ溶媒中で透析する。溶液は4℃に保持し、使用前に41000 gで4時間、遠心分離する。
上記のプロトコールは、別の型のコラーゲンにも適用できる。
【0016】
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲンが分子量200〜450 KDaを有する上記の粒子に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲンがI、II、III、V、XI、XXIV、XXVII型のコラーゲン及びそれらの混合物から選択される、上に定義した粒子に関する。
【0017】
有利な実施形態によると、本発明は、上に定義した粒子であって、コラーゲンが、少なくとも一部が原線維の形態で、好ましくは横紋を有するコラーゲン原線維の形態で存在し、これはコラーゲン三重螺旋で形成され且つその周期性が67 nmであり、かかる原線維においては、原線維が長距離で、例えば200 nm、500 nm、1μm、又は5μmより長い距離で優先方向に整列されているドメイン、及び/又は配列されていない等方性ドメインを形成する、前記粒子に関する。
【0018】
用語「原線維」とは、異方性構造の形成を生じるコラーゲン分子の規則的配列を意味する。
用語「横紋を有する原線維」とは、酢酸ウラニルなどの造影剤の添加後に透過型電子顕微鏡で観察される、しまの反復パターンを有する原線維を意味する。
【0019】
有利な実施形態によると、本発明は、溶媒、具体的には酢酸を10質量%未満、特には9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.1%未満で含む、上に定義した粒子に関する。
【0020】
粒子の濃度は、分子間距離が10 nm未満で、好ましくは5nm未満で、特に2nm未満である非架橋コラーゲン分子の集合により特徴づけられる。
【0021】
有利な実施形態によると、本発明は、粒子が複屈折である、上に定義した粒子に関する。
複屈折信号は、例えば偏光顕微鏡で観察できる。
【0022】
本発明はまた、上に定義した粒子を含むか又はこれからなる粉末状組成物に関する。
用語「粉末状組成物」とは、上に定義した本発明の粒子で形成される粉末を意味する。
有利な実施形態によると、本発明は、乳化剤、特に界面活性剤又はオイルのない、上に定義した粉末状組成物に関する。
本発明の特別の実施形態では、本発明は、有機溶媒乳化剤、又は化学試薬などの混入物、特に架橋剤を含まない、上に定義した粉末状組成物に関する。
【0023】
本発明はまた、粉末状組成物を得るため、約40℃より低い温度で、特に39℃、38℃又は37℃より低い温度にて、非変性且つ非架橋のコラーゲンの酸性溶液を噴霧する工程を含む、上に定義した粉末状組成物の調製方法に関する。
この噴霧工程中に、コラーゲン溶液の噴霧によりエアロゾルが形成され、これが乾燥して粉末状組成物が形成される。
【0024】
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲン溶液の濃度が0.1〜10 mg/mlである、上に定義した方法に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、酸が酢酸である、上に定義した方法であって、
かかる水溶液が、特に水、酸、及び非変性且つ非架橋のコラーゲンで形成され、
酸性コラーゲン溶液が、特に0.01〜1000 mMの酢酸濃度を有する、前記方法に関する。
【0025】
本発明の粉末状組成物は、別法として、以下でさらに定義される、水溶液中の懸濁液、酸性コラーゲン溶液、又はベシクルの懸濁液中に置くことができる。
【0026】
本発明はまた、水溶液中に、上に定義した粉末状組成物を含むか又はこれからなる懸濁液に関する。
驚くべきことに、本発明の懸濁液は、高いコラーゲン濃度であっても、すなわち懸濁液ml当たり10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100 mgを超えるコラーゲン濃度であっても、27、30又は32ゲージの注射針で組織に容易に注入できる。
水溶液は、特にリン酸緩衝生理食塩水である。
【0027】
有利な実施形態によると、本発明は、かかる水溶液が酸可溶性コラーゲンの溶液である、上に定義した懸濁液に関する。
用語「酸可溶性コラーゲンの溶液」とは、pHが7未満である任意のコラーゲン溶液を意味し、特に、コラーゲン及び酢酸を含む水溶液である。
それゆえ、この場合、本発明の粉末状コラーゲン組成物は、コラーゲンを含む溶液自体の中の懸濁液に置かれる。
かかるコラーゲン懸濁液は、コラーゲン粒子が添加されたコラーゲン溶液よりも高いコラーゲン濃度を有する。
【0028】
有利な実施形態によると、本発明は、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むベシクルをさらに含む、上に定義した懸濁液であって、
ベシクルの水相及び懸濁液の水溶液が、特に同種類であり、具体的には同一である、前記懸濁液に関する。
【0029】
かかるコラーゲン懸濁液は、コラーゲン粒子が添加された、以下にさらに定義するベシクルの懸濁液よりも高いコラーゲン濃度を有する。
【0030】
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲン濃度が懸濁液ml当たり0.1〜200 mg、特に懸濁液ml当たり1〜200 mg、特別には懸濁液ml当たり10〜200 mg、より特別には懸濁液ml当たり10〜75 mgである、上に定義した懸濁液に関する。
【0031】
用語「コラーゲン濃度」とは、懸濁液の総コラーゲン濃度を意味し、つまり、粒子の総コラーゲン濃度、及び、場合によっては水溶液又はベシクルの総コラーゲン濃度である。
【0032】
有利な実施形態によると、本発明は、27、30又は32ゲージの注射針で組織に容易に注入できる、上に定義した懸濁液に関する。
【0033】
本発明はまた、上に定義した懸濁液又は上に定義した粉末状組成物を含む化粧用組成物に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、麻酔薬、ヒアルロン酸、エラスチン、ビタミン及び多血小板血漿、イオン、無機相の前駆物質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン及び非線維性コラーゲン型から選択される1つ以上の添加物をさらに含む、上に定義した化粧用組成物に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、かかる懸濁液が、酸可溶性コラーゲンの水溶液中の、上に定義した粉末状組成物を含むか又はこれからなる懸濁液である、化粧用組成物に関する。
【0034】
本発明はまた、活性物質として、上に定義した懸濁液又は上に定義した粉末状組成物を含む医薬組成物に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、かかる懸濁液が、酸可溶性コラーゲンの水溶液中の、上に定義した粉末状組成物を含むか又はこれからなる懸濁液である、医薬組成物に関する。
本発明の化粧用及び医薬組成物は、特に非免疫原性であるか又は弱い免疫原性である。
【0035】
本発明はまた、上に定義した懸濁液のpHを7より大きい値のpHにできる条件下におく工程を含む、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスの調製方法に関する。
【0036】
用語「線維性マトリックス」とは、横紋を有するコラーゲン原線維により形成される物理的ゲルを意味する。
用語「高濃度線維性マトリックス」とは、特に複屈折線維性マトリックスを意味する。
【0037】
加えて、高濃度線維性マトリックスは、分子間距離が10 nm未満、好ましくは5nm未満、特に2nm未満であり、とりわけ分子間距離が1.2〜1.8 nmであるコラーゲン分子の集合により特徴づけられる。
【0038】
複屈折信号は、例えば偏光顕微鏡で観察できる。
【0039】
有利な実施形態によると、本発明は、上に定義した方法であって、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスが、コラーゲン三重螺旋で形成され且つその周期性が67 nmである横紋を有するコラーゲン原線維を含み、かかる原線維においては、原線維が長距離で優先方向に整列されているドメイン及び/又は配列されていない等方性ドメインを形成し、
かかる非変性且つ非架橋のコラーゲンが特にI型コラーゲンである、前記方法に関する。
【0040】
驚くべきことに、周期性が67 nmである原線維を含む線維性マトリックスは、低いコラーゲン濃度を有する懸濁液からでも、例えば懸濁液ml当たり7mgのコラーゲンを含む懸濁液からでも得られる。
【0041】
本発明はまた、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスの調製方法であって、上に定義した懸濁液を、該懸濁液のイオン力が、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスが形成される値まで増加できる条件下におく工程、例えば生理学的媒体と、特に細胞外液と接触させることを含む、前記方法に関する。
【0042】
本発明はまた、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスの調製方法であって、上に定義した懸濁液を、前記懸濁液のpHが7より大きい値まで増加でき、且つ、該懸濁液のイオン力が、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスが形成される値まで増加できる条件下におく工程、例えば生理学的媒体と、特に細胞外液と接触させることを含む、前記方法に関する。
【0043】
本発明はまた、上に定義した方法により取得できるゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスに関する。
本発明はまた、上に定義したゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスを含む、生理学的に適合性のある吸収性又は非吸収性の枠組みに関する。
本発明のゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックス及び枠組みは、特に非免疫原性であるか又は弱い免疫原性である。
【0044】
本発明はまた、皺の美容充填のための、上に定義した懸濁液の使用に関する。
本発明はまた、上に定義した懸濁液を被検者に対して投与、特に注射により投与することを含む、被検者の皺の美容処置方法に関する。
【0045】
本発明はまた、組織修復において使用するための、上に定義した懸濁液又は上に定義した粉末状組成物に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、軟骨又は椎間板の修復において使用するための、上に定義した懸濁液又は上に定義した粉末状組成物に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、関節の修復において使用するための、上に定義した懸濁液又は上に定義した粉末状組成物に関する。
【0046】
有利な実施形態によると、本発明は、特に形成外科手術、女性泌尿器科手術、喉頭形成術、又は経皮的手術後における充填材として使用するための、上に定義した懸濁液又は上に定義した粉末状組成物に関する。
【0047】
本発明はまた、上に定義したゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックス、又は上に定義した枠組みを含むか又はこれからなる植込み型医療用具に関するものであり、前記用具は、特に椎間板の人工器官である。
【0048】
本発明はまた、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むか又はこれからなるベシクルであって、
かかるベシクルの直径が0.1〜10μm、特に0.2〜5μm、特別には0.5〜2μmで、より特別には約1μmである、前記ベシクルに関する。
【0049】
用語「ベシクル」とは、柔軟な液滴を意味する。
用語「ATP」とは、中性形か又はその荷電形のいずれか1つの形態にあるアデノシン‐5'‐三リン酸を意味する。
【0050】
用語「直径」とは、球体の直径、又はスフェロイドの最大直径を意味する。
この直径は、例えば電子顕微鏡により、又は動的光散乱により測定可能である。
【0051】
用語「非変性」とは、α三重螺旋の二次構造が保存されているコラーゲンを意味する。
コラーゲンの非変性又は変性の性質は、例えば熱量測定分析で観察できる。変性コラーゲンは、組織化された高分子領域の兆候を伴わない、変性タンパク質(ゼラチン)の熱量測定プロファイル特性を有する(
図3)。
【0052】
用語「非架橋」とは、結合がグルタルアルデヒド処理などの化学的修飾、又は物理的修飾の結果であっても、化学架橋結合のないコラーゲンを意味する。
架橋の欠如は、例えば電気泳動法で測定可能である。
【0053】
本発明の特別の実施形態では、本発明は、有機溶媒、乳化剤又は化学試薬などの混入物、特に架橋剤を含まない粒子に関する。
【0054】
用語「架橋剤」とは、好ましくは、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、グルタルアルデヒド(GAD)、またカルボジイミド1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又はN‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などのカルボジイミドを意味する。
【0055】
コラーゲンの供給源は無関係である。
特に、コラーゲンは次のプロトコールにより得ることができる:I型コラーゲンの溶液をウィスターラット尾腱から調製する。ラミナーフローキャビネットでの切除後、腱を滅菌リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄する。そして、残存する完全な細胞を取り除き、かつ高分子量のタンパク質の一部を沈殿させるために、腱を4M NaClの溶液中に浸す。リン酸緩衝生理食塩水による洗浄後、腱を滅菌500 mM酢酸溶液中で可溶化する。得られた溶液を41000 gで2時間の遠心分離により清澄化する。コラーゲン以外のタンパク質を、300 mM NaClの水溶液中で選択的に沈殿させ、41000 gで3時間の遠心分離により取り除く。600 mM NaClの溶液中での沈降と、その後の3000 gで45分間の遠心分離により、上清からコラーゲンを回収する。得られたペレットを500 mM酢酸の水溶液中で可溶化し、NaClイオンを除去するために同じ溶媒中で透析する。溶液は4℃に保持し、使用前に41000 gで4時間、遠心分離する。
上記のプロトコールは、別の型のコラーゲンにも適用できる。
【0056】
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲンが分子量200〜450 KDaを有する上に定義したベシクルに関する。
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲンがI、II、III、V、XI、XXIV、XXVII型のコラーゲンから選択される上に定義したベシクルに関する。
【0057】
有利な実施形態によると、本発明は、上に定義したベシクルであって、水相が酸性であり、
かかる水相は、特に水と酸で形成され、
かかる水相は、特に0.00001 M〜1Mの濃度で、特に酢酸を含み、
かかる水相のpHは、2.0〜5.5、好ましくは2.0〜4.0である、前記ベシクルに関する。
【0058】
用語「水相」とは、pHが7未満である水相を意味する。
【0059】
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲンがセグメント長間隔(SLS)の形態にある、上に定義したベシクルに関する。
用語「セグメント長間隔の形態」(SLS形態)とは、横向きの凝集物が生成される、コラーゲンの積層パターンを意味する。それぞれの凝集物は約300 nmの長さがあり、コラーゲン分子はすべて整列している。
【0060】
有利な実施形態によると、本発明は、複屈折である上に定義したベシクルに関する。
例えば、複屈折信号は偏光顕微鏡で観察できる。
【0061】
本発明はまた、水溶液中の、上に定義したベシクルを含むか又はこれからなる懸濁液に関する。
それゆえ、懸濁液中のベシクルは、かかる水溶液における懸濁液中のコアセルベートである。コアセルベートは、コラーゲン濃度が、かかる水溶液の濃度の少なくとも2倍である柔軟な液滴である。
【0062】
有利な実施形態によると、本発明は、上に定義した懸濁液であって、かかる水溶液が酸性であり、
かかる水溶液は、特に水と酸で形成され、
かかる水溶液は、特に0.00001 M〜1Mの濃度で、特に酢酸を含み、
かかる水相のpHは、2.0〜5.5、好ましくは2.0〜4.0である、前記懸濁液に関する。
【0063】
用語「酸性溶液」とは、pHが7未満である溶液を意味する。
【0064】
有利な実施形態によると、本発明は、ベシクルの水相及び懸濁液の水溶液が同種類であり、特に同一である、上に定義した懸濁液に関する。
【0065】
有利な実施形態によると、本発明は、乳化剤、特に界面活性剤又はオイルがない、上に定義した懸濁液に関する。
【0066】
有利な実施形態によると、本発明は、非変性且つ非架橋のコラーゲンで本質的に形成される、固体の球状又はスフェロイド状粒子をさらに含む、上に定義した懸濁液であって、
かかる粒子の直径は0.05〜20μmであり、特に0.25〜10μmであり、より詳しくは0.4〜3μmである、前記懸濁液に関する。
【0067】
固体の球状又はスフェロイド状粒子は、上に定義したとおりである。
かかるコラーゲン懸濁液は、固体の球状又はスフェロイド状粒子のない懸濁液よりも高いコラーゲン濃度を有する。
【0068】
有利な実施形態によると、本発明は、コラーゲン濃度が、懸濁液ml当たり0.1〜200 mg、特に懸濁液ml当たり1〜200 mg、特別には懸濁液ml当たり10〜200 mg、より特別には懸濁液ml当たり40〜200 mgである、上に定義した懸濁液に関する。
【0069】
用語「コラーゲン濃度」とは、懸濁液の総コラーゲン濃度を意味し、つまり、ベシクルの総コラーゲン濃度、水溶液の総コラーゲン濃度、及び場合によっては固体の球状又はスフェロイド状粒子の総コラーゲン濃度である。
【0070】
有利な実施形態によると、本発明は、粘度が、懸濁液ml当たり1.45から28 mgまでのコラーゲン濃度のそれぞれに対応する1.7から253 mPa・sまでである、上に定義した懸濁液に関する。
【0071】
粘度は、25℃かつ大気圧中で、円錐−平面形状を用いる回転粘度計モードにおけるAnton Parr MCR 302レオメータで50 Hzにて測定可能である。この測定に使用される、せん断速度は50 s
-1ある。
【0072】
驚くべきことに、本発明の懸濁液は、高いコラーゲン濃度であっても、すなわち懸濁液ml当たり10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100 mgを超えるコラーゲン濃度であっても、27、30又は32ゲージの注射針で組織に容易に注入できる。
【0073】
有利な実施形態によると、本発明は、接触の工程中、コラーゲン/ATP比が0.1〜10である、上に定義した懸濁液に関する。
【0074】
有利な実施形態によると、本発明は、27、30又は32ゲージの注射針で組織に注入できる上に定義した懸濁液に関する。
【0075】
本発明はまた、かかる懸濁液を得るために、非変性且つ非架橋のコラーゲンの水溶液とATPとを撹拌して接触させる工程を含む、上に定義した懸濁液を調製する方法に関する。
ATPは、遊離型又は対応する塩の型で、例えばATPの二ナトリウム塩で提供できる。
有利な実施形態によると、本発明は、接触の工程中、コラーゲン/ATP質量比が0.1〜10である、上に定義した方法に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、撹拌が特に5〜60秒間、毎分200〜2400回転の速度で行われる、上に定義した方法に関する。
【0076】
有利な実施形態によると、本発明は上に定義した方法であって、接触させる工程後に、特に懸濁液の遠心分離を行って沈殿及び上清を取得し、次に、懸濁液の遠心分離の終了時に得た上清の全部又は一部を取り除いて、濃縮された懸濁液を取得することにより、懸濁液を濃縮する工程を含む、前記方法に関する。
【0077】
有利な実施形態によると、本発明は、以下の工程:
- かかる懸濁液を得るために、非変性且つ非架橋のコラーゲンの水溶液とATPとを撹拌して接触させる工程;
- 接触させる工程後に、特に懸濁液の遠心分離を行って沈殿及び上清を取得し、次に、懸濁液の遠心分離の終了時に得た上清の全部又は一部を取り除いて、濃縮された懸濁液を取得することにより、懸濁液を濃縮する工程
を含む、上に定義した方法に関する。
【0078】
本発明はまた、水溶液中の非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むベシクルの懸濁液を含み、
ベシクルの直径が特に0.1μm〜10μmである、化粧用組成物に関する。
【0079】
有利な実施形態によると、本発明は、麻酔薬、ヒアルロン酸、エラスチン、ビタミン及び多血小板血漿、イオン、無機相の前駆物質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、又は非線維性コラーゲン型から選択される1つ以上の添加物を含む、上に定義した化粧用組成物に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、かかる懸濁液が、非変性且つ非架橋のコラーゲンで本質的に形成される固体の球状又はスフェロイド状粒子をさらに含み、
かかる粒子の直径が、0.05〜20μm、特に0.25〜10μm、より詳しくは0.4〜3μmである、化粧用組成物に関する。
【0080】
本発明はまた、活性物質として、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むベシクルの懸濁液を含み、
特にベシクルの直径が0.1〜10μmである、医薬組成物に関する。
【0081】
有利な実施形態によると、本発明は、かかる懸濁液が、非変性且つ非架橋のコラーゲンで本質的に形成される固体の球状又はスフェロイド状粒子をさらに含み、、
かかる粒子の直径が、0.05〜20μmであり、特に0.25〜10μmであり、より詳しくは0.4〜3μmである、医薬組成物に関する。
【0082】
本発明の化粧用組成物及び医薬組成物は、特に非免疫原性であるか又は弱い免疫原性である。
【0083】
本発明はまた、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むベシクルの懸濁液を、前記懸濁液のpHを7より大きい値にできる条件下におく工程を含み、ベシクルの直径が特に0.1〜10μmである、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスを調製する方法に関する。
【0084】
用語「原線維」とは、異方性構造の形成を生じるコラーゲン分子の規則的配列を意味する。
用語「横紋を有する原線維」とは、酢酸ウラニルなどの造影剤の添加後に透過型電子顕微鏡で観察される、しまの反復パターンを有する原線維を意味する。
用語「高濃度線維性マトリックス」とは、特に複屈折線維性マトリックスを意味する。
複屈折信号は、例えば偏光顕微鏡で観察できる。
【0085】
加えて、高濃度線維性マトリックスは、分子間距離が10 nm未満、好ましくは5nm未満、特に2nm未満であり、とりわけ分子間距離が1.2〜1.8 nmであるコラーゲン分子の集合により特徴づけられる。
【0086】
有利な実施形態によると、本発明は、上に定義した方法であって、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスが、コラーゲン三重螺旋で形成され且つその周期性が67 nmである横紋を有するコラーゲン原線維を含み、かかる原線維においては、原線維が長距離で、例えば200 nm、500 nm、1μm、又は5μmを超える距離で優先方向に整列されているドメイン、及び/又は配列されていない等方性ドメインを形成し、
かかる方法は、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、特に線維性コラーゲン、好ましくはI型コラーゲン、ATP及び水相を含むベシクルの懸濁液を、前記懸濁液のpHを7より大きい値にできる条件下におく工程を含む、前記方法に関する。
【0087】
驚くべきことに、周期性が67 nmである原線維を含む線維性マトリックスが、SLSの形態にあるコラーゲンを含むコラーゲンのベシクルが得られた。
【0088】
本発明はまた、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスの調製方法であって、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むベシクルを含む懸濁液を、該懸濁液のイオン力が、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスが形成される値まで増加できる条件下におく工程、例えば生理学的媒体と、特に細胞外液と接触させることをを含み、
ベシクルの直径が特に0.1〜10μmである、前記方法に関する。
【0089】
本発明はまた、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスの調製方法であって、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むベシクルを含む懸濁液を、該懸濁液のpHが7より大きい値まで増加でき、且つ、該懸濁液のイオン力が、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスが形成される値まで増加できる条件下におく工程、例えば生理学的媒体と、特に細胞外液と接触させることを含み、
ベシクルの直径が特に0.1〜10μmである、前記方法に関する。
【0090】
本発明はまた、上に定義した方法により取得することができる、ゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスに関する。
本発明はまた、上に定義したゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックスを含む、生理学的に適合性のある吸収性又は非吸収性の枠組みに関する。
本発明のゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックス及び枠組みは、特に非免疫原性であるか又は弱い免疫原性である。
【0091】
発明はまた、皺の美容充填のための、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むか又はこれからなるベシクルの懸濁液の使用であって、
ベシクルの直径が特に0.1〜10μmである、前記使用に関する。
【0092】
本発明はまた、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むか又はこれからなるベシクルの懸濁液を被検者に対して投与、特に注射により投与することを含む、被検者の皺の美容処置方法であって、
ベシクルの直径が特に0.1〜10μmである、前記方法に関する。
【0093】
本発明はまた、組織修復において使用するための、水溶液中の、非変性且つ非架橋のコラーゲン、ATP及び水相を含むか又はこれからなるベシクルの懸濁液であって、
ベシクルの直径が特に0.1〜10μmである、前記懸濁液に関する。
【0094】
有利な実施形態によると、本発明は、軟骨又は椎間板の修復において使用するための、上に定義した懸濁液に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、関節の修復において使用するための、上に定義した懸濁液に関する。
有利な実施形態によると、本発明は、特に形成外科手術、女性泌尿器科手術、喉頭形成術、又は経皮的手術後における充填材として使用するための、上に定義した懸濁液に関する。
【0095】
本発明はまた、上に定義したゲル状の高濃度コラーゲン線維性マトリックス、又は上に定義した枠組みを含むか又はこれからなる植込み型医療用具に関するものであり、前記用具は、特に椎間板の人工器官である。
【実施例】
【0097】
実施例1: 噴霧、及び酸可溶性コラーゲンの溶液(2mg/mL)中への分散により得られた、コラーゲン微粒子の注入可能な懸濁液(50 mg/mL)
【0098】
1.1 酸可溶性コラーゲンの溶液の取得
I型コラーゲンの溶液をウィスターラット尾腱から調製する。ラミナーフローキャビネットでの切除後、腱を滅菌リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄する。そして、残存する完全な細胞を取り除き、かつ高分子量のタンパク質の一部を沈殿させるために、腱を4M NaClの溶液中に浸す。リン酸緩衝生理食塩水による洗浄後、腱を滅菌500 mM酢酸溶液中で可溶化する。得られた溶液を41000 gで2時間の遠心分離により清澄化する。コラーゲン以外のタンパク質を、300 mM NaClの水溶液中で選択的に沈殿させ、41000 gで3時間の遠心分離により取り除く。600 mM NaClの溶液中での沈降と、その後の3000 gで45分間の遠心分離により、上清からコラーゲンを回収する。得られたペレットを500 mM酢酸の水溶液中で可溶化し、NaClイオンを除去するために同じ溶媒中で透析する。溶液は4℃に保持し、使用前に41000 gで4時間、遠心分離する。
【0099】
1.2 非変性コラーゲンからの乾燥粉末の調製
7mg/mLの濃度のコラーゲン溶液を超純水(18.2 MΩ/cmより大きい抵抗率)で希釈し、71 mM酢酸の水溶液中に溶解された1mg/mL濃度のコラーゲン溶液を得る。このようにして得られた溶液をアトマイザー(「スプレードライヤー」Buchi B290)で乾燥する。1ml/分に制限されているコラーゲン溶液の注入速度は、乾燥機のノズルに接続された自動シリンジポンプで制御される。ノズル温度は36℃に保たれ、乾燥塔と粒子捕集サイクロンとの間で測定されるシステムの内部温度は、全過程を通じて26〜31℃に維持される。ノズル出口での液滴のせん断に関与する空気の流れは、1時間当たり1052 Lである。ノズル出口とコレクタとの間の液滴の乾燥を制御する吸引力は、乾燥システムの最大容量の75%に固定する(1時間当たり30 m
3)。このようにして形成された粒子は、高性能サイクロンにより収集される。
【0100】
1.3 酸可溶性コラーゲンの溶液中へのコラーゲン粉末の分散により得られる懸濁液の調製
このようにして得られた質量5.0 mgの粉末のフラクションを、2mg/mLの初期濃度で100μLの酸可溶性コラーゲンの溶液中に分散する。懸濁液の最終コラーゲン濃度は52 mg/mLである。最初の手動の撹拌と30秒のボルテックス撹拌(毎秒2400回転)の後に得られた懸濁液は、27ゲージ注射針を備えたシリンジで吸引できる。懸濁液は白色であり、肉眼で見る限り均一の外見である。
【0101】
実施例2: 噴霧乾燥、及び酸可溶性コラーゲンの溶液(7mg/mL)中への分散により得られた、コラーゲン微粒子の注入可能な懸濁液(7mg/mL)
【0102】
2.1 非変性コラーゲンの乾燥粉末の調製
コラーゲン溶液は7mg/mLの濃度で実施例1.1に基づいて得られる。この溶液をアトマイザー(「スプレードライヤー」Buchi B290)で乾燥する。1ml/分に制限されているコラーゲン溶液の注入速度は、乾燥機のノズルに接続された自動シリンジポンプで制御される。ノズル温度は36℃に保たれ、乾燥塔と粒子捕集サイクロンとの間で測定されるシステムの内部温度は全過程を通じて26〜31℃に維持される。ノズル出口での液滴のせん断に関与する空気の流れは、1時間当たり1052 Lである。ノズル出口とコレクタとの間の液滴の乾燥を制御する吸引力は、乾燥システムの最大容量の75%に固定する(1時間当たり30 m
3)。このようにして形成された粒子は、高性能サイクロンにより収集される(
図1)。
【0103】
2.2 酸可溶性コラーゲンの溶液中へのコラーゲン粉末の分散により得られる懸濁液の調製
このようにして得られた質量7.0 mgの粉末のフラクションを、7mg/mLの初期濃度で1mLの酸可溶性コラーゲンの溶液中に分散する。懸濁液の最終コラーゲン濃度は14 mg/mLである。最初の手動の撹拌と30秒のボルテックス撹拌(毎秒2400回転)の後に得られた懸濁液は、27ゲージ注射針を備えたシリンジで吸引できる。懸濁液は白色であり、肉眼で見る限り均一の外見である。
【0104】
2.3 アンモニア蒸気への暴露により誘導される原線維形成
懸濁液を密閉PDMSモールドに注入した後、集合体をアンモニア蒸気に曝露させて原線維形成を促進させる。24時間経過後、このようにして形成されたゲルは、有意な体積変化もなく、脱型される。
【0105】
実施例3: 噴霧、及びリン酸緩衝生理食塩水中への分散により得られた、コラーゲン微粒子の注入可能な懸濁液(7mg/mL)
【0106】
3.1 リン酸緩衝生理食塩水中へのコラーゲン粉末の分散により得られる懸濁液の調製
乾燥コラーゲン粉末は実施例2.2に基づいて得られる。このようにして得られた質量7.0 mgの粉末のフラクションを、1mLのリン酸緩衝生理食塩水中に分散する。懸濁液の最終コラーゲン濃度は7mg/mLである。最初の手動の撹拌と30秒のボルテックス撹拌(毎秒2400回転)の後に得られた懸濁液は、27ゲージ注射針を備えたシリンジで吸引できる。懸濁液は白色であり、肉眼で見る限り均一の外見である。次に、懸濁液を、70μLの円筒形PDMSモールドに注入する。
【0107】
3.2 アンモニア蒸気への暴露により誘導される原線維形成
懸濁液を密閉PDMSモールドに注入した後、集合体をアンモニア蒸気に曝露させて原線維形成を促進させる。24時間経過後、このようにして形成されたゲルは、有意な体積変化もなく、脱型される。
【0108】
実施例4: 噴霧、及びリン酸緩衝生理食塩水中への分散により得られた、コラーゲン微粒子の注入可能な懸濁液(40 mg/mL)
【0109】
4.1 リン酸緩衝生理食塩水中へのコラーゲン粉末の分散により得られる懸濁液の調製
コラーゲン微粒子の懸濁液は実施例3.2に基づいて得られる。このようにして得られた質量40 mgの粉末のフラクションを、1mLのリン酸緩衝生理食塩水中に分散する。懸濁液の最終コラーゲン濃度は40 mg/mlである。
【0110】
4.2 懸濁液を密閉PDMSモールドに注入した後、集合体をアンモニア蒸気に曝露させて原線維形成を促進させる。24時間経過後、このようにして形成されたゲルは、有意な体積変化もなく、脱型される。
【0111】
実施例5: 2.1 mg/mLの濃度の酸可溶性コラーゲンの溶液からの、噴霧によるコラーゲン微粒子の取得
【0112】
5.1 非変性コラーゲンの乾燥粉末の調製
コラーゲン溶液は7mg/mLの濃度で実施例1.1に基づいて得られる。この溶液を500 mM酢酸で希釈し、2.1 mg/mLの最終濃度を得る。この溶液をアトマイザー(「スプレードライヤー」Buchi B290)で乾燥する。1ml/分に制限されているコラーゲン溶液の注入速度は、乾燥機のノズルに接続された自動シリンジポンプで制御される。ノズル温度は36℃に保たれ、乾燥塔と粒子捕集サイクロンとの間で測定されるシステムの内部温度は全過程を通じて28〜32℃で維持される。ノズル出口での液滴のせん断に関与する空気の流れは、1時間当たり1052 Lである。ノズル出口とコレクタとの間の液滴の乾燥を制御する吸引力は、乾燥システムの最大容量の75%に固定する(1時間当たり30 m
3)。このようにして形成された粒子は、高性能サイクロンにより収集される(
図2)。
【0113】
実施例6: 0.7 mg/mLの濃度の酸可溶性コラーゲンの溶液からの、噴霧により得られた非変性及び変性コラーゲンの微粒子の分析
【0114】
6.1 本発明に基づく非変性コラーゲンの乾燥粉末の調製
コラーゲン溶液は7mg/mLの濃度で実施例1.1に基づいて得られる。この溶液を500mM酢酸で希釈し、0.7 mg/mLの最終濃度を得る。この溶液をアトマイザー(「スプレードライヤー」Buchi B290)で乾燥する。1ml/分に制限されているコラーゲン溶液の注入速度は、乾燥機のノズルに接続された自動シリンジポンプで制御される。ノズル温度は36℃に保たれ、乾燥塔と粒子捕集サイクロンとの間で測定されるシステムの内部温度は全過程を通じて28〜32℃で維持される。ノズル出口での液滴のせん断に関与する空気の流れは、1時間当たり1052 Lである。ノズル出口とコレクタとの間の液滴の乾燥を制御する吸引力は、乾燥システムの最大容量の75%に固定する(1時間当たり30 m
3)。このようにして形成された粒子は、高性能サイクロンにより収集される。
【0115】
6.2 本発明の一部を構成しない変性コラーゲンの乾燥粉末の調製
ノズル温度を55℃に維持することを唯一の相違点として、実施例6.1のコラーゲン溶液を実施例6.1に基づいて乾燥する(
図3)。
【0116】
実施例7: ATPの二ナトリウム塩の存在下で得られたコラーゲンコアセルベートの注入可能な溶液
【0117】
7.1 コアセルベートの注入可能な溶液の取得
50 mMアデノシン三リン酸の二ナトリウム塩水溶液250μLを、実施例1.1に基づいて得られた7mg/mLの濃度の1mLのコラーゲン溶液に添加する。このようにして得られた混合液を毎分2400回転で30秒間ボルテックス撹拌する。このようにして得られた濁った懸濁液を、70μLのPDMSモールドに注入する。
【0118】
7.2 アンモニア蒸気への暴露により誘導されるコ、アセルベートの懸濁液の原線維形成
懸濁液を密閉PSMSモールドに注入した後、集合体をアンモニア蒸気に曝露させて原線維形成を促進させる。24時間経過後、このようにして形成されたゲルは、有意な体積変化もなく、脱型される(
図4及び5)。
【0119】
実施例8: ATPの二ナトリウム塩の存在下で得られたコラーゲンコアセルベートの注入可能な懸濁液
【0120】
8.1 濃度が28 mg/mLであるコアセルベートの注入可能な懸濁液の取得
50 mMアデノシン三リン酸の二ナトリウム塩水溶液200μLを、実施例1.1に基づいて得られた7mg/mLの濃度の1mLのコラーゲン溶液に添加する。このようにして得られた混合液を毎分2400回転で30秒間ボルテックス撹拌する。このようにして得られた濁った懸濁液を、1700 gで2分間、遠心分離する。950μLの体積の上清を除去し、このようにして得られたペレットをボルテックス撹拌して、最終濃度が28 mg/mLのコアセルベートを得る。このようにして得られたコアセルベートは、PDMSモールドに注入できる。
【0121】
8.2 濃度が14 mg/mLであるコアセルベートの注入可能な懸濁液の取得
50 mMアデノシン三リン酸の二ナトリウム塩水溶液200μLを、実施例1.1に基づいて得られた7mg/mLの濃度の1mLのコラーゲン溶液に添加する。このようにして得られた混合液を毎分2400回転で30秒間ボルテックス撹拌する。このようにして得られた濁った懸濁液を、1700 gで2分間、遠心分離する。700μLの体積の上清を除去し、このようにして得られたペレットをボルテックス撹拌して、最終濃度が14 mg/mLのコアセルベートを得る。このようにして得られたコアセルベートは、PDMSモールドに注入できる。また、得られた懸濁液は、リン酸緩衝液中に10質量%で溶解されたA型ゼラチンゲル(300 Bloom)に注入できる。
【0122】
8.3 濃度が5.8 mg/mLであるコアセルベートの注入可能な懸濁液の取得
50 mMアデノシン三リン酸の二ナトリウム塩水溶液200μLを、実施例1.1に基づいて得られた7mg/mLの濃度の1mLのコラーゲン溶液に添加する。このようにして得られた混合液を毎分2400回転で30秒間ボルテックス撹拌する。このようにして得られた濁った懸濁液は、最終濃度が5.8 mg/mLである。
【0123】
8.4 濃度が2.9 mg/mLであるコアセルベートの注入可能な懸濁液の取得
500μLの500 mM酢酸及び250μLの50 mMアデノシン三リン酸の二ナトリウム塩水溶液を、実施例1.1に基づいて得られた7mg/mLの濃度の500μLのコラーゲン溶液に添加する。このようにして得られた混合液を毎分2400回転で30秒間ボルテックス撹拌する。このようにして得られた濁った懸濁液は、最終濃度が2.9 mg/mLである。
【0124】
8.5 濃度が1.46 mg/mLであるコアセルベートの注入可能な懸濁液の取得
750μLの500 mM酢酸及び200μLの50 mMアデノシン三リン酸の二ナトリウム塩水溶液を、実施例1.1に基づいて得られた7mg/mLの濃度の250μLのコラーゲン溶液に添加する。このようにして得られた混合液を毎分2400回転で30秒間ボルテックス撹拌する。このようにして得られた濁った懸濁液は、最終濃度が1.46 mg/mLである。
【0125】
8.6 得られたコアセルベートの粘度と、酸可溶性コラーゲンのコアセルベート化してない溶液の粘度の分析
実施例8.1〜8.5に基づいて得られたコアセルベートの懸濁液の粘度を、円錐−平面形状を用いる回転粘度計モードにおけるAnton Parr MCR 302レオメータで測定した。粘度は、1から100 s
-1までのせん断速度で測定した。50 s
-1のせん断速度におけるコアセルベートの懸濁液の粘度は、1.45から28 mg/mlまでのコラーゲン濃度のそれぞれに対応する1.7から253 mPa・sとして測定した。また、1から7mg/mLまでの濃度の酸可溶性コラーゲン溶液の粘度も測定した。同一の分析条件で得られた粘度の値は、1mg/mLのコラーゲン濃度の場合の16.8 mPa・sと、7mg/mLのコラーゲン濃度の場合の217 mPa・sとの間で変化する。
図6は、500 mM酢酸に溶解されたコラーゲン溶液及びコラーゲンコアセルベートについてのコラーゲン濃度の関数として粘度データを併せて示す。
【0126】
実施例9: ATPの二ナトリウム塩の存在下で得られたコラーゲンコアセルベートの懸濁液
【0127】
9.1 濃度が0.83 mg/mLであるコアセルベートの注入可能な懸濁液の観察
50 mMアデノシン三リン酸の二ナトリウム塩水溶液100μLを、実施例1.1に基づいて得られた0.35 mg/mLの濃度の1mLのコラーゲン溶液に添加する。このようにして得られた混合液を毎分2400回転で30秒間ボルテックス撹拌する。このようにして得られた濁った懸濁液は、最終濃度が0.32 mg/mLであり、Zetasizer Nano S.装置で動的光散乱により分析する。連続5回の測定後、強度として測定された粒子の直径分布は837 nmを中心とし、標準偏差が21 nmである(
図7)。
【0128】
実施例10: インビボでの研究
本発明の懸濁液から得られたゲル(例えば実施例2.3、4.2又は7.2)を、小動物(ウィスターラット)においてインビボで皮下移植する。
以下の項目を評価した:
a) 移植の統合(炎症の不存在、及び、特に内皮細胞の存在に繋がる宿主細胞によるコロニー形成);
b) 参照インプラントと比較した制限された吸収率(特に、希釈されたコラーゲン及びヒアルロン酸)
【0129】
例えば移植後15日、30日及び60日において、移植したゲルの体積に変化が無い場合、ゲルは安定であること、特にコラゲナーゼについて安定であることを示す。