特許第6892405号(P6892405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892405
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】地熱コンバインド発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/10 20060101AFI20210614BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   F01D17/10 C
   F01K25/10 R
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-49881(P2018-49881)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-157840(P2019-157840A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】川口 尭
(72)【発明者】
【氏名】杉田 裕人
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−070223(JP,A)
【文献】 特開2013−079587(JP,A)
【文献】 特開昭59−113215(JP,A)
【文献】 特開昭57−093608(JP,A)
【文献】 特開2002−070506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/14
F01D 17/10
F01K 23/10
F01K 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱流体を蒸気と熱水とに分離する汽水分離器と、
前記汽水分離器によって分離された熱水を蒸気と熱水とに分離するフラッシャーと、
前記汽水分離器によって分離された蒸気が作動媒体として高圧蒸気加減弁を介して供給される高圧タービン、および、前記フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として低圧蒸気加減弁を介して供給される低圧タービンを含む蒸気タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気を熱媒として用いることによって、水よりも沸点が低い低沸点媒体を加熱する熱交換器と、
前記熱交換器で加熱された低沸点媒体が作動媒体として供給される媒体タービンと、
前記高圧蒸気加減弁の開度、および、前記低圧蒸気加減弁の開度を、負荷に応じて制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、
前記負荷がゼロと第1の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って、前記高圧蒸気加減弁の開度および前記低圧蒸気加減弁の開度が全閉状態から第1の開度へ互いに同じ割合で大きくなるように制御を行い、
前記負荷が前記第1の負荷と前記第1の負荷よりも大きい第2の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って、前記高圧蒸気加減弁の開度が前記第1の開度から第2の開度へ大きくなるように制御するのに対して、前記負荷に関わらずに、前記低圧蒸気加減弁の開度を前記第1の開度に保持するように制御し、
前記負荷が前記第2の負荷と前記第2の負荷よりも大きい第3の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って、前記低圧蒸気加減弁の開度が前記第1の開度から前記第2の開度へ大きくなるように制御するのに対して、前記負荷に関わらずに、前記高圧蒸気加減弁の開度を前記第2の開度に保持するように制御する、
地熱コンバインド発電システム。
【請求項2】
地熱流体を蒸気と熱水とに分離する汽水分離器と、
前記汽水分離器によって分離された熱水を蒸気と熱水とに分離するフラッシャーと、
前記汽水分離器によって分離された蒸気が作動媒体として高圧蒸気加減弁を介して供給される高圧タービン、および、前記フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として低圧蒸気加減弁を介して供給される低圧タービンを含む、蒸気タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気を熱媒として用いることによって、水よりも沸点が低い低沸点媒体を加熱する熱交換器と、
前記熱交換器で加熱された低沸点媒体が作動媒体として供給される媒体タービンと、
前記高圧蒸気加減弁の開度、および、前記低圧蒸気加減弁の開度を、負荷に応じて制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、
前記負荷がゼロと第1の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って、前記高圧蒸気加減弁の開度および前記低圧蒸気加減弁の開度が全閉状態から第1の開度へ互いに同じ割合で大きくなるように制御を行い、
前記負荷が前記第1の負荷と前記第1の負荷よりも大きい第2の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って前記低圧蒸気加減弁の開度が前記第1の開度から第2の開度へ大きくなるように制御するのに対して、前記負荷の増加に伴って前記高圧蒸気加減弁の開度が前記第1の開度から前記第2の開度よりも大きい第3の開度へ大きくなるように制御し、
前記負荷が前記第2の負荷と前記第2の負荷よりも大きい第3の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って前記低圧蒸気加減弁の開度が前記第2の開度から前記第3の開度へ大きくなるように制御するのに対して、前記負荷に関わらずに前記高圧蒸気加減弁の開度を前記第3の開度に保持するように制御する、
地熱コンバインド発電システム。
【請求項3】
地熱流体を蒸気と熱水とに分離する汽水分離器と、
前記汽水分離器によって分離された熱水を蒸気と熱水とに分離するフラッシャーと、
前記汽水分離器によって分離された蒸気が作動媒体として高圧蒸気加減弁を介して供給される高圧タービン、および、前記フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として低圧蒸気加減弁を介して供給される低圧タービンを含む、蒸気タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気を熱媒として用いることによって、水よりも沸点が低い低沸点媒体を加熱する熱交換器と、
前記熱交換器で加熱された低沸点媒体が作動媒体として供給される媒体タービンと、
前記高圧蒸気加減弁の開度、および、前記低圧蒸気加減弁の開度を、負荷に応じて制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、
前記負荷がゼロと第1の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って前記低圧蒸気加減弁の開度が全閉状態から第1の開度へ大きくなるように制御するのに対して、前記負荷の増加に伴って前記高圧蒸気加減弁の開度が全閉状態から前記第1の開度よりも大きい第2の開度へ大きくなるように制御し、
前記負荷が前記第1の負荷と前記第1の負荷よりも大きい第2の負荷との間の負荷範囲である場合には、前記負荷の増加に伴って前記低圧蒸気加減弁の開度が前記第1の開度から前記第2の開度へ大きくなるように制御するのに対して、前記負荷に関わらずに前記高圧蒸気加減弁の開度を前記第2の開度に保持するように制御する、
地熱コンバインド発電システム。
【請求項4】
前記汽水分離器によって分離された熱水を蒸気と熱水とに分離する一次フラッシャーと、
前記一次フラッシャーによって分離された熱水を蒸気と熱水とに分離する二次フラッシャーと
を前記フラッシャーに代えて備えており、
前記蒸気タービンは、前記一次フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として中圧蒸気加減弁を介して供給される中圧タービンを更に備え、
前記低圧タービンは、前記二次フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として前記低圧蒸気加減弁を介して供給され、
前記制御装置は、前記低圧蒸気加減弁の開度と同様に、前記中圧蒸気加減弁の開度を負荷に応じて制御する、
請求項1から3のいずれかに記載の地熱コンバインド発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、地熱コンバインド発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地熱発電システムとして、フラッシュ発電システムが主に利用されている。フラッシュ発電システムにおいては、熱水と蒸気との二相流である地熱流体を蒸気と熱水とに分離する。そして、その分離された蒸気を作動媒体として蒸気タービンに供給することによって、発電が行われる。フラッシュ発電システムは、地熱流体のエンタルピーが高く、地熱流体において蒸気(フラッシュ蒸気)が占める割合が約20%以上である場合に、商用の発電システムとして好適に利用される。
【0003】
これに対して、地熱流体のエンタルピーが低い場合には、バイナリーサイクル発電システムが好適に利用される。バイナリー発電システムにおいては、たとえば、地熱流体から分離された熱水を熱媒として用いて、水よりも沸点が低い低沸点媒体を加熱して気化させる。そして、その低沸点媒体を作動媒体として媒体タービン(バイナリタービン)に供給することによって、発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−221961号公報
【特許文献2】特開2014−199047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フラッシュ発電システムとバイナリーサイクル発電システムとを組合せた地熱コンバインド発電システムが提案されている。地熱コンバインド発電システムでは、たとえば、蒸気タービンから排出された蒸気を熱媒として用いて、低沸点媒体をガス化し、媒体タービンに供給する。地熱コンバインド発電システムでは、地熱流体を分離した蒸気と熱水とのそれぞれのエネルギーを利用して発電を行うので、地熱エネルギーの利用効率が高まり、発電量を増加させることができる。
【0006】
地熱コンバインド発電システムにおいては、たとえば、ダブルフラッシュ方式やトリプルフラッシュ方式が採用されている。ダブルフラッシュ方式では、地熱流体を汽水分離器で蒸気と熱水とに分離すると共に、汽水分離器で分離された熱水をフラッシャーで蒸気と熱水とに分離する。汽水分離器によって分離された蒸気は、作動媒体として高圧タービンに高圧蒸気加減弁を介して供給される。フラッシャーで分離された蒸気は、作動媒体として低圧タービンに低圧蒸気加減弁を介して供給される。ここでは、たとえば、高圧タービンから排出された蒸気と低沸点媒体との間の熱交換が熱交換器で行われ、その熱交換で加熱された低沸点媒体が作動媒体として媒体タービンに供給される。
【0007】
トリプルフラッシュ方式では、地熱流体を汽水分離器で蒸気と熱水とに分離すると共に、汽水分離器で分離された熱水を一次フラッシャーで蒸気と熱水とに分離する。更に、一次フラッシャーで分離された熱水を二次フラッシャーで蒸気と熱水とに分離する。汽水分離器によって分離された蒸気は、作動媒体として高圧タービンに高圧蒸気加減弁を介して供給される。一次フラッシャーで分離された蒸気は、作動媒体として中圧タービンに中圧蒸気加減弁を介して供給される。二次フラッシャーで分離された蒸気は、作動媒体として低圧タービンに低圧蒸気加減弁を介して供給される。トリプルフラッシュ方式においてもダブルフラッシュ方式の場合と同様に、高圧タービンから排出された蒸気と低沸点媒体との間の熱交換が熱交換器で行われ、その熱交換で加熱された低沸点媒体が作動媒体として媒体タービンに供給される。
【0008】
上記の地熱コンバインド発電システムにおいては、負荷(電力需要)の変動に対応するために、各蒸気加減弁(高圧蒸気加減弁、中圧蒸気加減弁、低圧蒸気加減弁)の開度が調整される。従来においては、負荷が大きくなるに伴って各蒸気加減弁の開度が同じ割合で大きくなり、負荷が小さくなるに伴って各蒸気加減弁の開度が同じ割合で小さくなるように、各蒸気加減弁の開閉動作が制御される。
【0009】
このため、上記の場合には、高圧蒸気加減弁の開度は、負荷の全範囲に渡って負荷に応じて変動する。これに伴って、高圧タービンから排出される蒸気の流量も同様に、負荷の全範囲に渡って負荷に応じて変動する。つまり、熱交換器に熱媒として供給される蒸気の流量が負荷に応じて変動するので、熱交換器から媒体タービンに作動媒体として供給される低沸点媒体の状態が変動する。その結果、媒体タービンの出力が変動するため、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になる。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる地熱コンバインド発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の地熱コンバインド発電システムは、汽水分離器とフラッシャーと蒸気タービンと熱交換器と媒体タービンと制御装置とを有する。汽水分離器は、地熱流体を蒸気と熱水とに分離する。フラッシャーは、汽水分離器によって分離された熱水を、蒸気と熱水とに分離する。蒸気タービンは、高圧タービンと低圧タービンとを含む。高圧タービンは、汽水分離器によって分離された蒸気が作動媒体として高圧蒸気加減弁を介して供給される。低圧タービンは、フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として低圧蒸気加減弁を介して供給される。熱交換器は、高圧タービンから排出された蒸気を熱媒として用いることによって、水よりも沸点が低い低沸点媒体を加熱する。媒体タービンは、熱交換器で加熱された低沸点媒体が作動媒体として供給される。制御装置は、高圧蒸気加減弁の開度、および、低圧蒸気加減弁の開度を負荷に応じて制御する。ここでは、制御装置は、負荷がゼロと第1の負荷との間の負荷範囲である場合には、負荷の増加に伴って、高圧蒸気加減弁の開度および低圧蒸気加減弁の開度が全閉状態から第1の開度へ互いに同じ割合で大きくなるように制御を行う。制御装置は、負荷が第1の負荷と第1の負荷よりも大きい第2の負荷との間の負荷範囲である場合には、負荷の増加に伴って、高圧蒸気加減弁の開度が第1の開度から第2の開度へ大きくなるように制御するのに対して、負荷に関わらずに、低圧蒸気加減弁の開度を第1の開度に保持するように制御する。制御装置は、負荷が第2の負荷と第2の負荷よりも大きい第3の負荷との間の負荷範囲である場合には、負荷の増加に伴って、低圧蒸気加減弁の開度が第1の開度から第2の開度へ大きくなるように制御するのに対して、負荷に関わらずに高圧蒸気加減弁の開度を第2の開度に保持するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る地熱コンバインド発電システムを模式的に示す系統図である。
図2図2は、第1実施形態に係る地熱コンバインド発電システムにおいて、負荷L(%)と、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開度Kとの関係を示す図である。
図3図3は、第2実施形態に係る地熱コンバインド発電システムにおいて、負荷L(%)と、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開度Kとの関係を示す図である。
図4図4は、第3実施形態に係る地熱コンバインド発電システムにおいて、負荷L(%)と、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開度Kとの関係を示す図である。
図5図5は、第4実施形態に係る地熱コンバインド発電システムを模式的に示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態の地熱コンバインド発電システムを構成する各部に関して、図1を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、地熱コンバインド発電システムにおいて、汽水分離器11(セパレータ)は、生産井10から地熱流体F10が供給される。ここでは、熱水と蒸気との二相流が地熱流体F10として生産井10から汽水分離器11に導かれる。そして、汽水分離器11は、その地熱流体F10を蒸気F11a(高圧蒸気)と熱水F11b(ドレン)とに分離する。
【0015】
フラッシャー22は、汽水分離器11によって分離された熱水F11bが供給される。そして、フラッシャー22は、その熱水F11bを減圧することによって、蒸気F22a(低圧蒸気)と熱水F22bとに分離する。フラッシャー22で分離された蒸気F22aは、汽水分離器11で分離された蒸気F11aよりも圧力が低く、フラッシャー22で分離された熱水F22bは、たとえば、還元井(図示省略)に還元される。
【0016】
蒸気タービン30は、高圧タービン31と低圧タービン322とを含む。高圧タービン31は、汽水分離器11によって分離された蒸気F11aが高圧蒸気加減弁V11を介して、作動媒体として供給される。低圧タービン322は、フラッシャー22によって分離された蒸気F22aが低圧蒸気加減弁V22を介して作動媒体として供給される。
【0017】
高圧蒸気加減弁V11は、たとえば、油圧式の弁駆動機M11によって開度Kが調整されるように構成されており、高圧タービン31に作動媒体として供給される蒸気F11aの流量が高圧蒸気加減弁V11の開度Kに応じて制御される。同様に、低圧蒸気加減弁V22は、たとえば、油圧式の弁駆動機M22によって開度Kが調整されるように構成されている。低圧タービン322に作動媒体として供給される蒸気F22aの流量が低圧蒸気加減弁V22の開度Kに応じて制御される。
【0018】
蒸気タービン30においては、高圧タービン31と低圧タービン322とのそれぞれに作動媒体が供給されてロータシャフトが回転することによって、発電機300を駆動させる。高圧タービン31から排出された蒸気F31は、熱交換器40に導入される。これに対して、低圧タービン322から排出された蒸気F322は、最終的には、還元井に還元される。発電機300で発電された電力は、電力系統(図示省略)に供給される。
【0019】
熱交換器40は、高圧タービン31から排出された蒸気F31が供給されると共に、水よりも沸点が低い低沸点媒体G50(たとえば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などの代替フロン、ブタンなどの炭化水素)が供給される。そして、熱交換器40では、高圧タービン31から排出された蒸気F31と、低沸点媒体G50との間において熱交換が行われる。この熱交換によって、低沸点媒体G50が加熱される。つまり、熱交換器40においては、高圧タービン31から排出された蒸気F31が熱媒として用いられることによって、低沸点媒体G50の加熱が行われる。
【0020】
媒体タービン50は、熱交換器40で加熱された低沸点媒体G40が作動媒体として供給される。媒体タービン50は、作動媒体の供給でロータシャフトが回転することによって、発電機500を駆動させる。媒体タービン50から排出された低沸点媒体G50は、熱交換器40に戻り、熱交換器40で加熱される。発電機500で発電された電力は、電力系統に供給される。
【0021】
制御装置80は、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kを負荷L(電力需要)に応じて制御する。制御装置80は、たとえば、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって負荷制御(出力制御)を行うように構成されている。制御装置80は、負荷Lの設定に関する指令が入力信号SLとして入力される。そして、制御装置80は、その入力信号SLに基づいて、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを制御する指令を出力信号S11として弁駆動機M11に出力すると共に、低圧蒸気加減弁V22の開度Kを制御する指令を出力信号S22として弁駆動機M22に出力する。これにより、高圧蒸気加減弁V11の開閉動作が負荷Lに応じて行われ、高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が高圧蒸気加減弁V11によって調整される。これと共に、低圧蒸気加減弁V22の開閉動作が負荷Lに応じて行われ、低圧タービン322に供給される蒸気F22aの流量が低圧蒸気加減弁V22によって調整される。その結果、目標とした負荷Lに対応するように、発電機300の出力が調整される。
【0022】
負荷L(%)と高圧蒸気加減弁V11の開度K(%)との関係、および、負荷L(%)と低圧蒸気加減弁V22の開度K(%)との関係に関して、図2を用いて説明する。図2において、太い実線は、高圧蒸気加減弁V11の場合を示し、太い破線は、低圧蒸気加減弁V22の場合を示している。また、二点鎖線は、負荷Lと、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開度Kとの関係に関して、従来の場合を示している。重複部分は、太い実線のみを表示している。なお、横軸に示す負荷L(%)の値は、制御装置80に入力される入力信号SLの信号値に実質的に相当し、縦軸に示す開度K(%)の値は、制御装置80が出力する出力信号S11,S22の信号値に実質的に相当する。
【0023】
図2に示すように、従来(二点鎖線を参照)においては、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kとのそれぞれは、負荷Lの増加に伴って両者が同じ一定の割合で大きくなるように制御される。高圧蒸気加減弁V11と低圧蒸気加減弁V22との間は、負荷Lの全範囲に渡って互いに開度Kが同じ値で推移する。たとえば、高圧蒸気加減弁V11と低圧蒸気加減弁V22との両者は、負荷Lが0%であるときに開度Kが0%(K=0)であり、負荷Lが100%(L=L3)であるときに開度Kが100%(K=K2)になるように、負荷Lの増加に応じて開度Kが大きくなる。
【0024】
本実施形態では、負荷Lがゼロと第1の負荷L1(L1>0%)との間の負荷範囲H0である場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、従来の場合と同様である。
【0025】
具体的には、この負荷範囲H0では、負荷Lの増加に伴って、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全閉状態の開度(K=0%)から第1の開度K1(K1>0%)へ互いに同じ割合で大きくなるように、制御装置80が制御を行う。また、負荷Lの減少に伴って、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1から全閉状態の開度へ互いに同じ割合で小さくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0026】
しかしながら、本実施形態では、負荷Lが第1の負荷L1と第2の負荷L2(L2>L1)との間の負荷範囲H1である場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、従来の場合と異なる。
【0027】
具体的には、この負荷範囲H1では、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが第1の開度K1から第2の開度K2(K2>K1)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。たとえば、第2の開度K2は、全開状態の開度(K=100%)であって、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが全開状態の開度になる。
【0028】
この負荷範囲H1において負荷Lが第2の負荷L2であるときには、従来の場合、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、第1の開度K1と第2の開度K2との間の開度KJである。このため、本実施形態では、高圧蒸気加減弁V11の開度Kは、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、従来の場合よりも大きい第2の開度K2になるように制御される(K2>KJ)。つまり、この負荷範囲H1において高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合の方が、従来の場合よりも大きい。換言すると、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H1の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも大きい。
【0029】
これに対して、低圧蒸気加減弁V22の開度Kについては、この負荷範囲H1では、負荷Lの変動に関わらずに、第1の開度K1に保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K1)。
【0030】
低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、従来の場合よりも小さい第1の開度K1を保持するように制御される(K1<KJ)。つまり、この負荷範囲H1において低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合にはゼロであるので、本実施形態の場合の方が従来の場合よりも小さい。換言すると、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H1の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも小さい。また、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも小さい。
【0031】
本実施形態では、負荷Lが第2の負荷L2と第3の負荷L3との間の負荷範囲H2である場合も、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作が、従来の場合と異なる。
【0032】
具体的には、この負荷範囲H2では、負荷Lの増加に伴って、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1から第2の開度K2へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。第2の開度K2は、たとえば、全開状態の開度(K=100%)であって、第3の負荷L3は、たとえば、100%の負荷(L=100%)である。このため、この場合には、負荷Lが100%であるときに、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全開状態の開度になる。
【0033】
つまり、この負荷範囲H2において低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合の方が従来の場合よりも大きい。また、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H2の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも大きい。
【0034】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H2では、負荷Lの変動に関わらずに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを第2の開度K2に保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K2)。たとえば、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、全開状態の開度を保持させる。
【0035】
つまり、この負荷範囲H2において高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合にはゼロであるので、本実施形態の場合の方が従来の場合よりも小さい。また、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H2の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも小さい。ここでは、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも小さい。
【0036】
以上のように、本実施形態では、負荷Lが負荷範囲H1である場合には、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなるように制御すると共に、低圧蒸気加減弁V22の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに、一定に保持するように制御する。これに対して、負荷範囲H1よりも負荷Lが大きい負荷範囲H2に負荷Lがある場合には、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する。
【0037】
このため、この負荷範囲H2では、高圧蒸気加減弁V11を介して高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が一定であるので、高圧タービン31から排出された後に熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も一定である。すなわち、蒸気タービン30の負荷Lが第3の負荷L3(たとえば、L=100%)から第3の負荷L3よりも小さい負荷(たとえば、L=90%)に変更された場合であっても、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが変化せずに同じ状態であるので、高圧タービン31から熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も同じ状態を保持する。その結果、この負荷範囲H2では、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定に保持されるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である。
【0038】
したがって、本実施形態では、蒸気タービン30の出力が変化しても高圧タービン31の排気量が変化しないので、媒体タービン50の出力が変化しないため、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記したように、負荷Lが負荷範囲H1である場合には、低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、負荷Lに関わらずに、一定である。このため、制御装置80のアルゴリズムを簡略化することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、第2の開度K2が全開状態の開度(K=100%)である場合について説明したが、これに限らない。たとえば、第2の開度K2が90%等であってもよい。
【0041】
<第2実施形態>
第2実施形態の地熱コンバインド発電システムに関して図3を用いて説明する。本実施形態では、図3に示すように、低圧蒸気加減弁V22の開度Kを負荷Lに応じて制御装置80が制御する動作が、第1実施形態の場合と異なる。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様であるため、重複部分については、適宜、説明を省略する。
【0042】
負荷Lがゼロと第1の負荷L1b(L1b>0%)との間の負荷範囲H0bである場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合(二点鎖線を参照)との間で同様である。つまり、負荷Lの増加に伴って、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全閉状態の開度(K=0%)から第1の開度K1b(K1>0%)へ互いに同じ割合で大きくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0043】
負荷Lが第1の負荷L1bと第2の負荷L2b(L2b>L1b)との間の負荷範囲H1bである場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合との間で異なる。
【0044】
具体的には、この負荷範囲H1bでは、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1bから第2の開度K2b(K2b>K1b)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0045】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H1bでは、負荷Lの増加に伴って、第1の開度K1bから第2の開度K2bよりも大きい第3の開度K3b(K3b>K2b)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。たとえば、第3の開度K3bは、全開状態の開度(K=100%)であって、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが全開状態の開度になる。ここでは、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも大きい。
【0046】
負荷Lが第2の負荷L2bと第3の負荷L3bとの間の負荷範囲H2bである場合も、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合との間で異なる。
【0047】
具体的には、この負荷範囲H2bでは、負荷Lの増加に伴って、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第2の開度K2bから第3の開度K3bへ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。第3の開度K3bは、たとえば、全開状態の開度(K=100%)であって、第3の負荷L3bは、たとえば、100%の負荷(L=100%)である。このため、この場合には、負荷Lが100%であるときに、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全開状態の開度になる。
【0048】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷範囲H2bでは、負荷Lの変動に関わらずに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを第3の開度K3bに保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K3b)。たとえば、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、全開状態の開度を保持させる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、負荷Lが負荷範囲H2bである場合には、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する(たとえば、全開状態の開度で一定)。このため、この負荷範囲H2bでは、高圧蒸気加減弁V11を介して高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が一定であるので、高圧タービン31から排出された後に熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も一定である。その結果、この負荷範囲H2bでは、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定であるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である(図1参照)。
【0050】
したがって、本実施形態では、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。なお、本実施形態では、負荷Lが負荷範囲H1bである場合には、低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、第1実施形態の場合と異なり、一定でない。本実施形態においては、負荷範囲H1bでは、低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、負荷Lの増加に伴って、大きくなる。このため、負荷範囲H1b(低負荷帯)で低圧蒸気加減弁V22が、常時、開閉動作を行うため、スケール等による固着が低圧蒸気加減弁V22において生ずることを防止できる。
【0051】
<第3実施形態>
第3実施形態の地熱コンバインド発電システムに関して図4を用いて説明する。本実施形態では、図4に示すように、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kを負荷Lに応じて制御装置80が制御する動作が、第1実施形態の場合と異なる。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様であるため、両者の重複部分については、適宜、説明を省略する。
【0052】
負荷Lがゼロと第1の負荷L1c(L1b>0%)との間の負荷範囲H1cである場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合(二点鎖線を参照)との間で異なる。
【0053】
具体的には、この負荷範囲H1cでは、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全閉状態の開度(K=0)から第1の開度K1c(K1c>0)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0054】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H1cでは、負荷Lの増加に伴って、全閉状態の開度(K=0)から第1の開度K1bよりも大きい第2の開度K2c(K2c>K1c)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。たとえば、第2の開度K2cは、全開状態の開度(K=100%)であって、負荷Lが第2の負荷L2cであるときに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが全開状態の開度になる。ここでは、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも大きい。
【0055】
負荷Lが第1の負荷L1cと第2の負荷L2cとの間の負荷範囲H2cである場合も、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合との間で異なる。
【0056】
具体的には、この負荷範囲H2cでは、負荷Lの増加に伴って、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1cから第2の開度K2cへ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。第2の開度K2cは、たとえば、全開状態の開度(K=100%)であって、第2の負荷L2cは、たとえば、100%の負荷(L=100%)である。このため、この場合には、負荷Lが100%であるときに、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全開状態の開度になる。
【0057】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H2cでは、負荷Lの変動に関わらずに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを第2の開度K2cに保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K2c)。たとえば、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、全開状態の開度を保持させる。
【0058】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、負荷Lが負荷範囲H2cである場合には、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する(たとえば、全開状態の開度で一定)。このため、この負荷範囲H2cでは、高圧蒸気加減弁V11を介して高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が一定であるので、高圧タービン31から排出された後に熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も一定である。その結果、この負荷範囲H2cでは、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定であるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である(図1参照)。
【0059】
したがって、本実施形態では、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。なお、本実施形態では、負荷Lが負荷範囲H1cである場合には、高圧蒸気加減弁V11の開度Kは、第1実施形態の場合と異なり、負荷Lの増加に伴って、一定の割合で大きくなる。このため、負荷範囲H1c(低負荷帯)において、媒体タービン50の出力を第1実施形態の場合(図2参照)よりも上げれるので、プラント熱効率を向上可能である。
【0060】
<第4実施形態>
第4実施形態の地熱コンバインド発電システムに関して図5を用いて説明する。
【0061】
図5に示すように、本実施形態の地熱コンバインド発電システムは、フラッシャー22(図1参照)に代わって、一次フラッシャー21と二次フラッシャー22bとを備える。また、本実施形態では、蒸気タービン30は、高圧タービン31および低圧タービン322の他に、中圧タービン321を更に含む。そして、本実施形態では、高圧蒸気加減弁V11の開度Kと低圧蒸気加減弁V22の開度Kとの他に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを制御装置80が負荷Lに応じて制御する。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様であるため、両者の重複部分については、適宜、説明を省略する。
【0062】
本実施形態において、一次フラッシャー21は、汽水分離器11によって分離された熱水F11bが供給される。そして、一次フラッシャー21は、その熱水F11bを減圧することによって、蒸気F21a(中圧蒸気)と熱水F21bとに分離する。一次フラッシャー21で分離された蒸気F22aは、汽水分離器11で分離された蒸気F11aよりも圧力が低い。
【0063】
二次フラッシャー22bは、一次フラッシャー21によって分離された熱水F21bが供給される。そして、二次フラッシャー22bは、その熱水F21bを減圧することによって、蒸気F22a(低圧蒸気)と熱水F22bとに分離する。二次フラッシャー22bで分離された蒸気F22aは、一次フラッシャー21で分離された蒸気F21aよりも圧力が低く、二次フラッシャー22bで分離された熱水F22bは、たとえば、還元井(図示省略)に還元される。
【0064】
蒸気タービン30において、中圧タービン321は、一次フラッシャー21によって分離された蒸気F21aが作動媒体として中圧蒸気加減弁V21を介して供給される。低圧タービン322は、二次フラッシャー22bによって分離された蒸気F22aが作動媒体として低圧蒸気加減弁V22を介して供給される。中圧蒸気加減弁V21は、たとえば、油圧式の弁駆動機M21によって開度Kが調整されるように構成されている。中圧タービン321に作動媒体として供給される蒸気F21aの流量が中圧蒸気加減弁V21の開度Kに応じて制御される。
【0065】
蒸気タービン30においては、高圧タービン31と中圧タービン321と低圧タービン322とのそれぞれに作動媒体が供給されてロータシャフトが回転することによって、発電機300を駆動させる。高圧タービン31から排出された蒸気F31は、第1実施形態の場合と同様に、熱交換器40に導入される。中圧タービン321から排出された蒸気F321、および、低圧タービン322から排出された蒸気F322は、最終的には、還元井に還元される。
【0066】
制御装置80は、入力信号SLに基づいて、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを制御する指令を出力信号S11として弁駆動機M11に出力し、低圧蒸気加減弁V22の開度Kを制御する指令を出力信号S22として弁駆動機M22に出力すると共に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを制御する指令を出力信号S21として弁駆動機M21に出力する。これにより、高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が高圧蒸気加減弁V11によって調整され、低圧タービン322に供給される蒸気F22aの流量が低圧蒸気加減弁V22によって調整されると共に、中圧タービン321に供給される蒸気F21aの流量が中圧蒸気加減弁V21によって調整される。その結果、目標とする負荷Lに対応するように、発電機300の出力が調整される。
【0067】
本実施形態では、制御装置80は、第1実施形態(図2参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを負荷Lに応じて制御する。
【0068】
具体的には、負荷範囲H0の場合には、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kと同様に、負荷Lの増加に伴って中圧蒸気加減弁V21の開度Kが同じ割合で大きくなるように制御が行われる。
【0069】
負荷範囲H1の場合には、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなるように制御する。これと共に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに、一定に保持するように制御する。
【0070】
そして、負荷範囲H2の場合には、負荷Lの増加に伴って中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御する。これと共に、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する(図2参照)。
【0071】
このため、本実施形態においては、第1実施形態の場合と同様に、負荷範囲H2では、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定であるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である。
【0072】
したがって、本実施形態では、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、第1実施形態(図2参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に中圧蒸気加減弁V21の開度Kを調整する場合について説明したが、これに限らない。
【0074】
第2実施形態(図3参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを調整してもよい。具体的には、負荷Lが負荷範囲H1bである場合には、中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kの両者について、本実施形態の場合と異なり、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなる割合よりも小さい割合で大きくなるように制御する。この場合においても、第2実施形態の場合と同様に、発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0075】
この他に、第3実施形態(図4参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを調整してもよい。具体的には、負荷Lが負荷範囲H1cである場合には、中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kの両者について、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなる割合よりも小さい割合で大きくなるように制御する。そして、負荷範囲H1cよりも負荷Lが大きい負荷範囲H2cの場合には、負荷Lの増加に伴って中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する。この場合においても、第3実施形態の場合と同様に、発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10…生産井、11…汽水分離器、21…一次フラッシャー、22…フラッシャー、22b…二次フラッシャー、30…蒸気タービン、31…高圧タービン、40…熱交換器、50…媒体タービン、80…制御装置、300…発電機、321…中圧タービン、322…低圧タービン、500…発電機、V11…高圧蒸気加減弁、V21…中圧蒸気加減弁、V22…低圧蒸気加減弁
図1
図2
図3
図4
図5