(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態の地熱コンバインド発電システムを構成する各部に関して、
図1を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、地熱コンバインド発電システムにおいて、汽水分離器11(セパレータ)は、生産井10から地熱流体F10が供給される。ここでは、熱水と蒸気との二相流が地熱流体F10として生産井10から汽水分離器11に導かれる。そして、汽水分離器11は、その地熱流体F10を蒸気F11a(高圧蒸気)と熱水F11b(ドレン)とに分離する。
【0015】
フラッシャー22は、汽水分離器11によって分離された熱水F11bが供給される。そして、フラッシャー22は、その熱水F11bを減圧することによって、蒸気F22a(低圧蒸気)と熱水F22bとに分離する。フラッシャー22で分離された蒸気F22aは、汽水分離器11で分離された蒸気F11aよりも圧力が低く、フラッシャー22で分離された熱水F22bは、たとえば、還元井(図示省略)に還元される。
【0016】
蒸気タービン30は、高圧タービン31と低圧タービン322とを含む。高圧タービン31は、汽水分離器11によって分離された蒸気F11aが高圧蒸気加減弁V11を介して、作動媒体として供給される。低圧タービン322は、フラッシャー22によって分離された蒸気F22aが低圧蒸気加減弁V22を介して作動媒体として供給される。
【0017】
高圧蒸気加減弁V11は、たとえば、油圧式の弁駆動機M11によって開度Kが調整されるように構成されており、高圧タービン31に作動媒体として供給される蒸気F11aの流量が高圧蒸気加減弁V11の開度Kに応じて制御される。同様に、低圧蒸気加減弁V22は、たとえば、油圧式の弁駆動機M22によって開度Kが調整されるように構成されている。低圧タービン322に作動媒体として供給される蒸気F22aの流量が低圧蒸気加減弁V22の開度Kに応じて制御される。
【0018】
蒸気タービン30においては、高圧タービン31と低圧タービン322とのそれぞれに作動媒体が供給されてロータシャフトが回転することによって、発電機300を駆動させる。高圧タービン31から排出された蒸気F31は、熱交換器40に導入される。これに対して、低圧タービン322から排出された蒸気F322は、最終的には、還元井に還元される。発電機300で発電された電力は、電力系統(図示省略)に供給される。
【0019】
熱交換器40は、高圧タービン31から排出された蒸気F31が供給されると共に、水よりも沸点が低い低沸点媒体G50(たとえば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などの代替フロン、ブタンなどの炭化水素)が供給される。そして、熱交換器40では、高圧タービン31から排出された蒸気F31と、低沸点媒体G50との間において熱交換が行われる。この熱交換によって、低沸点媒体G50が加熱される。つまり、熱交換器40においては、高圧タービン31から排出された蒸気F31が熱媒として用いられることによって、低沸点媒体G50の加熱が行われる。
【0020】
媒体タービン50は、熱交換器40で加熱された低沸点媒体G40が作動媒体として供給される。媒体タービン50は、作動媒体の供給でロータシャフトが回転することによって、発電機500を駆動させる。媒体タービン50から排出された低沸点媒体G50は、熱交換器40に戻り、熱交換器40で加熱される。発電機500で発電された電力は、電力系統に供給される。
【0021】
制御装置80は、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kを負荷L(電力需要)に応じて制御する。制御装置80は、たとえば、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって負荷制御(出力制御)を行うように構成されている。制御装置80は、負荷Lの設定に関する指令が入力信号SLとして入力される。そして、制御装置80は、その入力信号SLに基づいて、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを制御する指令を出力信号S11として弁駆動機M11に出力すると共に、低圧蒸気加減弁V22の開度Kを制御する指令を出力信号S22として弁駆動機M22に出力する。これにより、高圧蒸気加減弁V11の開閉動作が負荷Lに応じて行われ、高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が高圧蒸気加減弁V11によって調整される。これと共に、低圧蒸気加減弁V22の開閉動作が負荷Lに応じて行われ、低圧タービン322に供給される蒸気F22aの流量が低圧蒸気加減弁V22によって調整される。その結果、目標とした負荷Lに対応するように、発電機300の出力が調整される。
【0022】
負荷L(%)と高圧蒸気加減弁V11の開度K(%)との関係、および、負荷L(%)と低圧蒸気加減弁V22の開度K(%)との関係に関して、
図2を用いて説明する。
図2において、太い実線は、高圧蒸気加減弁V11の場合を示し、太い破線は、低圧蒸気加減弁V22の場合を示している。また、二点鎖線は、負荷Lと、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開度Kとの関係に関して、従来の場合を示している。重複部分は、太い実線のみを表示している。なお、横軸に示す負荷L(%)の値は、制御装置80に入力される入力信号SLの信号値に実質的に相当し、縦軸に示す開度K(%)の値は、制御装置80が出力する出力信号S11,S22の信号値に実質的に相当する。
【0023】
図2に示すように、従来(二点鎖線を参照)においては、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kとのそれぞれは、負荷Lの増加に伴って両者が同じ一定の割合で大きくなるように制御される。高圧蒸気加減弁V11と低圧蒸気加減弁V22との間は、負荷Lの全範囲に渡って互いに開度Kが同じ値で推移する。たとえば、高圧蒸気加減弁V11と低圧蒸気加減弁V22との両者は、負荷Lが0%であるときに開度Kが0%(K=0)であり、負荷Lが100%(L=L3)であるときに開度Kが100%(K=K2)になるように、負荷Lの増加に応じて開度Kが大きくなる。
【0024】
本実施形態では、負荷Lがゼロと第1の負荷L1(L1>0%)との間の負荷範囲H0である場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、従来の場合と同様である。
【0025】
具体的には、この負荷範囲H0では、負荷Lの増加に伴って、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全閉状態の開度(K=0%)から第1の開度K1(K1>0%)へ互いに同じ割合で大きくなるように、制御装置80が制御を行う。また、負荷Lの減少に伴って、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1から全閉状態の開度へ互いに同じ割合で小さくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0026】
しかしながら、本実施形態では、負荷Lが第1の負荷L1と第2の負荷L2(L2>L1)との間の負荷範囲H1である場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、従来の場合と異なる。
【0027】
具体的には、この負荷範囲H1では、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが第1の開度K1から第2の開度K2(K2>K1)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。たとえば、第2の開度K2は、全開状態の開度(K=100%)であって、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが全開状態の開度になる。
【0028】
この負荷範囲H1において負荷Lが第2の負荷L2であるときには、従来の場合、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、第1の開度K1と第2の開度K2との間の開度KJである。このため、本実施形態では、高圧蒸気加減弁V11の開度Kは、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、従来の場合よりも大きい第2の開度K2になるように制御される(K2>KJ)。つまり、この負荷範囲H1において高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合の方が、従来の場合よりも大きい。換言すると、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H1の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも大きい。
【0029】
これに対して、低圧蒸気加減弁V22の開度Kについては、この負荷範囲H1では、負荷Lの変動に関わらずに、第1の開度K1に保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K1)。
【0030】
低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、従来の場合よりも小さい第1の開度K1を保持するように制御される(K1<KJ)。つまり、この負荷範囲H1において低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合にはゼロであるので、本実施形態の場合の方が従来の場合よりも小さい。換言すると、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H1の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも小さい。また、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも小さい。
【0031】
本実施形態では、負荷Lが第2の負荷L2と第3の負荷L3との間の負荷範囲H2である場合も、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作が、従来の場合と異なる。
【0032】
具体的には、この負荷範囲H2では、負荷Lの増加に伴って、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1から第2の開度K2へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。第2の開度K2は、たとえば、全開状態の開度(K=100%)であって、第3の負荷L3は、たとえば、100%の負荷(L=100%)である。このため、この場合には、負荷Lが100%であるときに、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全開状態の開度になる。
【0033】
つまり、この負荷範囲H2において低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合の方が従来の場合よりも大きい。また、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H2の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも大きい。
【0034】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H2では、負荷Lの変動に関わらずに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを第2の開度K2に保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K2)。たとえば、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、全開状態の開度を保持させる。
【0035】
つまり、この負荷範囲H2において高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、本実施形態の場合にはゼロであるので、本実施形態の場合の方が従来の場合よりも小さい。また、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、負荷範囲H2の場合の方が、負荷範囲H0の場合よりも小さい。ここでは、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも小さい。
【0036】
以上のように、本実施形態では、負荷Lが負荷範囲H1である場合には、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなるように制御すると共に、低圧蒸気加減弁V22の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに、一定に保持するように制御する。これに対して、負荷範囲H1よりも負荷Lが大きい負荷範囲H2に負荷Lがある場合には、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する。
【0037】
このため、この負荷範囲H2では、高圧蒸気加減弁V11を介して高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が一定であるので、高圧タービン31から排出された後に熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も一定である。すなわち、蒸気タービン30の負荷Lが第3の負荷L3(たとえば、L=100%)から第3の負荷L3よりも小さい負荷(たとえば、L=90%)に変更された場合であっても、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが変化せずに同じ状態であるので、高圧タービン31から熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も同じ状態を保持する。その結果、この負荷範囲H2では、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定に保持されるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である。
【0038】
したがって、本実施形態では、蒸気タービン30の出力が変化しても高圧タービン31の排気量が変化しないので、媒体タービン50の出力が変化しないため、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記したように、負荷Lが負荷範囲H1である場合には、低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、負荷Lに関わらずに、一定である。このため、制御装置80のアルゴリズムを簡略化することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、第2の開度K2が全開状態の開度(K=100%)である場合について説明したが、これに限らない。たとえば、第2の開度K2が90%等であってもよい。
【0041】
<第2実施形態>
第2実施形態の地熱コンバインド発電システムに関して
図3を用いて説明する。本実施形態では、
図3に示すように、低圧蒸気加減弁V22の開度Kを負荷Lに応じて制御装置80が制御する動作が、第1実施形態の場合と異なる。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様であるため、重複部分については、適宜、説明を省略する。
【0042】
負荷Lがゼロと第1の負荷L1b(L1b>0%)との間の負荷範囲H0bである場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合(二点鎖線を参照)との間で同様である。つまり、負荷Lの増加に伴って、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全閉状態の開度(K=0%)から第1の開度K1b(K1>0%)へ互いに同じ割合で大きくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0043】
負荷Lが第1の負荷L1bと第2の負荷L2b(L2b>L1b)との間の負荷範囲H1bである場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合との間で異なる。
【0044】
具体的には、この負荷範囲H1bでは、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1bから第2の開度K2b(K2b>K1b)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0045】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H1bでは、負荷Lの増加に伴って、第1の開度K1bから第2の開度K2bよりも大きい第3の開度K3b(K3b>K2b)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。たとえば、第3の開度K3bは、全開状態の開度(K=100%)であって、負荷Lが第2の負荷L2であるときに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが全開状態の開度になる。ここでは、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも大きい。
【0046】
負荷Lが第2の負荷L2bと第3の負荷L3bとの間の負荷範囲H2bである場合も、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合との間で異なる。
【0047】
具体的には、この負荷範囲H2bでは、負荷Lの増加に伴って、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第2の開度K2bから第3の開度K3bへ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。第3の開度K3bは、たとえば、全開状態の開度(K=100%)であって、第3の負荷L3bは、たとえば、100%の負荷(L=100%)である。このため、この場合には、負荷Lが100%であるときに、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全開状態の開度になる。
【0048】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷範囲H2bでは、負荷Lの変動に関わらずに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを第3の開度K3bに保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K3b)。たとえば、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、全開状態の開度を保持させる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、負荷Lが負荷範囲H2bである場合には、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する(たとえば、全開状態の開度で一定)。このため、この負荷範囲H2bでは、高圧蒸気加減弁V11を介して高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が一定であるので、高圧タービン31から排出された後に熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も一定である。その結果、この負荷範囲H2bでは、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定であるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である(
図1参照)。
【0050】
したがって、本実施形態では、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。なお、本実施形態では、負荷Lが負荷範囲H1bである場合には、低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、第1実施形態の場合と異なり、一定でない。本実施形態においては、負荷範囲H1bでは、低圧蒸気加減弁V22の開度Kは、負荷Lの増加に伴って、大きくなる。このため、負荷範囲H1b(低負荷帯)で低圧蒸気加減弁V22が、常時、開閉動作を行うため、スケール等による固着が低圧蒸気加減弁V22において生ずることを防止できる。
【0051】
<第3実施形態>
第3実施形態の地熱コンバインド発電システムに関して
図4を用いて説明する。本実施形態では、
図4に示すように、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kを負荷Lに応じて制御装置80が制御する動作が、第1実施形態の場合と異なる。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様であるため、両者の重複部分については、適宜、説明を省略する。
【0052】
負荷Lがゼロと第1の負荷L1c(L1b>0%)との間の負荷範囲H1cである場合には、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合(二点鎖線を参照)との間で異なる。
【0053】
具体的には、この負荷範囲H1cでは、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全閉状態の開度(K=0)から第1の開度K1c(K1c>0)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。
【0054】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H1cでは、負荷Lの増加に伴って、全閉状態の開度(K=0)から第1の開度K1bよりも大きい第2の開度K2c(K2c>K1c)へ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。たとえば、第2の開度K2cは、全開状態の開度(K=100%)であって、負荷Lが第2の負荷L2cであるときに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが全開状態の開度になる。ここでは、高圧蒸気加減弁V11の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合は、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが負荷Lの増加に応じて大きくなる割合よりも大きい。
【0055】
負荷Lが第1の負荷L1cと第2の負荷L2cとの間の負荷範囲H2cである場合も、高圧蒸気加減弁V11および低圧蒸気加減弁V22の開閉動作は、本実施形態の場合と従来の場合との間で異なる。
【0056】
具体的には、この負荷範囲H2cでは、負荷Lの増加に伴って、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが第1の開度K1cから第2の開度K2cへ大きくなるように、制御装置80が制御を行う。第2の開度K2cは、たとえば、全開状態の開度(K=100%)であって、第2の負荷L2cは、たとえば、100%の負荷(L=100%)である。このため、この場合には、負荷Lが100%であるときに、低圧蒸気加減弁V22の開度Kが全開状態の開度になる。
【0057】
これに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、この負荷範囲H2cでは、負荷Lの変動に関わらずに、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを第2の開度K2cに保持するように、制御装置80が制御を行う(K=K2c)。たとえば、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、全開状態の開度を保持させる。
【0058】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、負荷Lが負荷範囲H2cである場合には、負荷Lの増加に伴って低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する(たとえば、全開状態の開度で一定)。このため、この負荷範囲H2cでは、高圧蒸気加減弁V11を介して高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が一定であるので、高圧タービン31から排出された後に熱交換器40に供給される蒸気F31の流量も一定である。その結果、この負荷範囲H2cでは、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定であるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である(
図1参照)。
【0059】
したがって、本実施形態では、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。なお、本実施形態では、負荷Lが負荷範囲H1cである場合には、高圧蒸気加減弁V11の開度Kは、第1実施形態の場合と異なり、負荷Lの増加に伴って、一定の割合で大きくなる。このため、負荷範囲H1c(低負荷帯)において、媒体タービン50の出力を第1実施形態の場合(
図2参照)よりも上げれるので、プラント熱効率を向上可能である。
【0060】
<第4実施形態>
第4実施形態の地熱コンバインド発電システムに関して
図5を用いて説明する。
【0061】
図5に示すように、本実施形態の地熱コンバインド発電システムは、フラッシャー22(
図1参照)に代わって、一次フラッシャー21と二次フラッシャー22bとを備える。また、本実施形態では、蒸気タービン30は、高圧タービン31および低圧タービン322の他に、中圧タービン321を更に含む。そして、本実施形態では、高圧蒸気加減弁V11の開度Kと低圧蒸気加減弁V22の開度Kとの他に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを制御装置80が負荷Lに応じて制御する。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様であるため、両者の重複部分については、適宜、説明を省略する。
【0062】
本実施形態において、一次フラッシャー21は、汽水分離器11によって分離された熱水F11bが供給される。そして、一次フラッシャー21は、その熱水F11bを減圧することによって、蒸気F21a(中圧蒸気)と熱水F21bとに分離する。一次フラッシャー21で分離された蒸気F22aは、汽水分離器11で分離された蒸気F11aよりも圧力が低い。
【0063】
二次フラッシャー22bは、一次フラッシャー21によって分離された熱水F21bが供給される。そして、二次フラッシャー22bは、その熱水F21bを減圧することによって、蒸気F22a(低圧蒸気)と熱水F22bとに分離する。二次フラッシャー22bで分離された蒸気F22aは、一次フラッシャー21で分離された蒸気F21aよりも圧力が低く、二次フラッシャー22bで分離された熱水F22bは、たとえば、還元井(図示省略)に還元される。
【0064】
蒸気タービン30において、中圧タービン321は、一次フラッシャー21によって分離された蒸気F21aが作動媒体として中圧蒸気加減弁V21を介して供給される。低圧タービン322は、二次フラッシャー22bによって分離された蒸気F22aが作動媒体として低圧蒸気加減弁V22を介して供給される。中圧蒸気加減弁V21は、たとえば、油圧式の弁駆動機M21によって開度Kが調整されるように構成されている。中圧タービン321に作動媒体として供給される蒸気F21aの流量が中圧蒸気加減弁V21の開度Kに応じて制御される。
【0065】
蒸気タービン30においては、高圧タービン31と中圧タービン321と低圧タービン322とのそれぞれに作動媒体が供給されてロータシャフトが回転することによって、発電機300を駆動させる。高圧タービン31から排出された蒸気F31は、第1実施形態の場合と同様に、熱交換器40に導入される。中圧タービン321から排出された蒸気F321、および、低圧タービン322から排出された蒸気F322は、最終的には、還元井に還元される。
【0066】
制御装置80は、入力信号SLに基づいて、高圧蒸気加減弁V11の開度Kを制御する指令を出力信号S11として弁駆動機M11に出力し、低圧蒸気加減弁V22の開度Kを制御する指令を出力信号S22として弁駆動機M22に出力すると共に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを制御する指令を出力信号S21として弁駆動機M21に出力する。これにより、高圧タービン31に供給される蒸気F11aの流量が高圧蒸気加減弁V11によって調整され、低圧タービン322に供給される蒸気F22aの流量が低圧蒸気加減弁V22によって調整されると共に、中圧タービン321に供給される蒸気F21aの流量が中圧蒸気加減弁V21によって調整される。その結果、目標とする負荷Lに対応するように、発電機300の出力が調整される。
【0067】
本実施形態では、制御装置80は、第1実施形態(
図2参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを負荷Lに応じて制御する。
【0068】
具体的には、負荷範囲H0の場合には、高圧蒸気加減弁V11の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kと同様に、負荷Lの増加に伴って中圧蒸気加減弁V21の開度Kが同じ割合で大きくなるように制御が行われる。
【0069】
負荷範囲H1の場合には、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなるように制御する。これと共に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに、一定に保持するように制御する。
【0070】
そして、負荷範囲H2の場合には、負荷Lの増加に伴って中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御する。これと共に、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する(
図2参照)。
【0071】
このため、本実施形態においては、第1実施形態の場合と同様に、負荷範囲H2では、熱交換器40から媒体タービン50へ作動媒体として供給される低沸点媒体G40の状態が一定であるので、媒体タービン50による出力は、変化せずに一定である。
【0072】
したがって、本実施形態では、地熱コンバインド発電システムで構成された発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、第1実施形態(
図2参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に中圧蒸気加減弁V21の開度Kを調整する場合について説明したが、これに限らない。
【0074】
第2実施形態(
図3参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを調整してもよい。具体的には、負荷Lが負荷範囲H1bである場合には、中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kの両者について、本実施形態の場合と異なり、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなる割合よりも小さい割合で大きくなるように制御する。この場合においても、第2実施形態の場合と同様に、発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0075】
この他に、第3実施形態(
図4参照)に示した低圧蒸気加減弁V22と同様に、中圧蒸気加減弁V21の開度Kを調整してもよい。具体的には、負荷Lが負荷範囲H1cである場合には、中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kの両者について、負荷Lの増加に伴って高圧蒸気加減弁V11の開度Kが大きくなる割合よりも小さい割合で大きくなるように制御する。そして、負荷範囲H1cよりも負荷Lが大きい負荷範囲H2cの場合には、負荷Lの増加に伴って中圧蒸気加減弁V21の開度Kおよび低圧蒸気加減弁V22の開度Kが大きくなるように制御するのに対して、高圧蒸気加減弁V11の開度Kについては、負荷Lの増加に関わらずに一定に保持するように制御する。この場合においても、第3実施形態の場合と同様に、発電プラント全体の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。