(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
FXRにより活性化される疾患または病態を治療または予防するための組成物であって、有効量の請求項1に記載の化合物を含み、前記組成物は、それを必要とする対象に投与されることを特徴とし、FXRにより活性化される前記疾患または病態が、心血管疾患、慢性肝疾患、脂質疾患、胃腸疾患、腎疾患、代謝疾患、がん、および神経疾患から選択される組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、化合物1が、ファルネソイドX受容体(FXR)の強力で選択的なアクチベーターであるという発見に基づいている。FXRは、コレステロール恒常性、トリグリセリド合成、および脂質生成の主要調節因子として作用する核内受容体である(Crawley,Expert Opinion Ther.Patents 2010,20,1047−1057)。この受容体は種々の器官で発現され、肝疾患、肺疾患、腎疾患、腸疾患、および心疾患を含む多くの疾患および病態ならびにグルコース代謝、インスリン代謝、および脂質代謝などの生物学的プロセスに関与していることが示された。
【0013】
定義
本明細書で使用する場合、「化合物1」または「本発明の化合物」は、以下の化学構造を有する7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン−24−酸を指す。
【化2】
【0014】
本発明は、同位体標識された化合物1またはその薬学的に許容できる塩もしくはアミノ酸抱合体も包含するが、それらは、1つ以上の原子が、天然に最も通常にみられる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子に置き換えられている以外、上記の構造に説明されたものと同一である。本発明の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはアミノ酸抱合体に組み込むことができる同位元素の例には、
3H、
11C、
14C、および
18Fなど、水素、炭素、窒素、フッ素の同位元素がある。
【0015】
トリチウム化された、すなわち
3H、および炭素−14、すなわち
14C、同位元素は、その調製の容易さおよび検出可能性のために使用され得る。さらに、重水素、すなわち
2Hなど、より重い同位元素による置換は、より高い代謝安定性、例えばインビボ半減期の増加、または用量要件の減少から生じる特定の治療的な利点を与えることができ、そのため、いくつかの状況で使用され得る。同位体標識された化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはアミノ酸抱合体は、一般的に、すぐに入手できる同位体標識された試薬を同位体標識されていない試薬の代わりにすることにより、スキームおよび/または実施例に開示された手順を実施することにより調製できる。しかし、当業者は、すべての同位元素が同位体標識されていない試薬の置換により含められ得るわけではないことを認識するだろう。一実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容できる塩もしくはアミノ酸抱合体は同位体標識されていない。一実施形態において、重水素化された化合物1またはその薬学的に許容できる塩もしくはアミノ酸抱合体は、生物分析アッセイに有用である。別の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容できる塩もしくはアミノ酸抱合体は放射標識されている。
【0016】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容できる塩」は、親化合物がカルボン酸部分の塩の形成により修飾されている化合物1の誘導体を指す。薬学的に許容できる塩の例には、Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、およびNH
4+などのカチオンがあるがこれらに限定されず、これらは薬学的に許容できる塩に存在するカチオンの例である。好適な無機塩基には、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムがある。塩は有機塩基を使用しても調製でき、一級、二級、および三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、ならびにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジンなどを含む環状アミンの塩などである。
【0017】
「薬学的に許容される担体」は、当技術分野において認知されており、例えば、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、添加剤、溶媒またはカプセル化材料を含み、これらは任意の対象組成物を、1つの器官または身体の部分から別の器官または身体の部分へ運搬または輸送することに関与する。各担体は、対象組成物の他の成分と適合性があり、患者に有害でないという意味で「許容される」。一定の実施形態では、薬学的に許容される担体は非発熱性である。薬学的に許容される担体の役目をすることができる材料の一部の例として、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース、デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン、セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、)添加剤、例えば、カカオ脂および坐剤用ワックス、油、例えば、ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油、グリコール類、例えばプロピレングリコール、ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール、エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、カンテン、緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェン不含水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸緩衝溶液、ならびに医薬製剤に使用される他の無毒性の適合性物質が挙げられる。
【0018】
「組成物」または「医薬組成物」とは、本発明の化合物、またはその塩、もしくはアミノ酸抱合体を含有する製剤である。一実施形態では、医薬組成物は、バルクまたは単位剤形である。単位剤形は、例えば、カプセル剤、IVバッグ、錠剤、エアゾール吸入器の単一ポンプ、またはバイアルを含む種々の形態のいずれかである。組成物の単位用量中の活性成分(例えば、本発明の化合物またはその塩の製剤)の量は有効量であり、関与する特定の処置に従って変化する。当業者は、患者の年齢および病態に依存して、投与量に慣例的な変更を加えることが必要な場合があることがわかるであろう。投与量は投与経路にも依存することになる。経口、経眼、点眼、経肺、経直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内および鼻腔内などを含む種々の経路が企図される。本発明の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形として、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、貼付剤および吸入剤が挙げられる。別の実施形態では、化合物1は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体と、および必要な任意の防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合される。
【0019】
「処置すること」という用語は、本明細書で使用する場合、疾患状態または病態の、緩和、減少、縮小、除去、調節または改善、すなわち後退を起こすことを指す。
【0020】
「予防すること」という用語は、本明細書で使用する場合、特に患者または対象が疾患状態または病態になりやすい、またはそれになるリスクがある場合に、患者または対象に疾患状態または病態が発生するのを完全にまたはほぼ完全に止めることを指す。予防することにはまた、疾患状態または病態の発症を抑制、すなわち阻止すること、および例えば疾患状態または病態が既に存在し得る場合に、疾患状態または病態の緩和または改善、すなわち後退を起こすことも含まれ得る。
【0021】
「〜のリスクを減少させること」という表現は、本明細書で使用する場合、中枢神経系疾患、炎症性疾患および/または代謝性疾患が患者に発生する見込みまたは可能性を、特に対象にそのような発生が起こりやすい場合に、下げることを指す。
【0022】
「併用療法」(または「共同療法」)とは、本発明の化合物および少なくとも第2の薬剤(これらの治療剤(すなわち、本発明の化合物および少なくとも第2の薬剤)の共同作用から有益な効果を付与するように意図された特定の処置レジメンの一部として)の投与を指す。併用の有益な効果には、治療剤の併用から生じる薬物動態学的または薬力学的な共同作用が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの治療剤の併用投与は、一般に、規定時間(通常、選択された併用に依存して、分、時間、日または週)をかけて行われる。「併用療法」は、別個の単剤療法レジメンの一部としての、これらの治療剤のうち2種以上の投与により、偶発的および恣意的に本願の併用になるものを包含するように意図されていてもよいが、一般にはそうではない。「併用療法」は、この治療剤の逐次投与、すなわちその治療剤が異なる時間に投与されるもの、およびこの治療剤、または少なくとも2種の治療剤の、実質的な同時投与を包含するものとする。実質的な同時投与は、例えば、固定比の治療剤を有する単一カプセルを、または各治療剤の単一カプセルを複数種で、対象に投与することによって行うことができる。各治療剤の逐次投与または実質的な同時投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通す直接吸収を含むが、これらに限定されない任意の適切な経路によって行うことができる。治療剤は、同じ経路でも異なる経路でも投与することができる。例えば、選択された併用の第1の治療剤は静脈内注射で投与され、併用の他方の治療剤は経口で投与されてもよい。あるいは、例えば、すべての治療剤が経口で投与されてもよく、すべての治療剤が静脈内注射で投与されてもよい。治療剤が投与される順番は厳密に重要なものではない。
【0023】
「併用療法」はまた、上記の治療剤を、他の生物学的に活性な成分と、および非薬物療法(例えば、手術または機械的処置)とさらに併用して投与することも包含する。併用療法が非薬物処置をさらに含む場合、その非薬物処置は、治療剤と非薬物処置との併用の共同作用からの有益な効果が得られる限り、任意の好適な時間に行うことができる。例えば、適切と思われる場合には、非薬物処置が治療剤の投与から一時的に、おそらくは数日または数週間でさえ除外された場合でもなお有益な効果が得られる。
【0024】
本発明の化合物の「有効量」とは、望ましい薬理学的効果を生み出す化合物の量(数量または濃度)のことである。一実施形態では、有効量の化合物が処置を必要とする対象に投与されると、即時にまたは化合物が1回以上投与された後に、疾患から生じる症状が改善される。対象に投与されることになる化合物の量は、特定の障害、投与方式、併用投与される化合物がある場合はそれ、ならびに対象の特徴、例えば、総体的な健康状態、他の疾患、年齢、性別、遺伝子型、体重および薬物耐性に依存することになる。当業者は、これらおよび他の因子に依って適切な投与量を決定することができるであろう。
【0025】
「予防的有効量」という用語は、疾患のリスクを予防するまたは減少させるために投与される本発明の化合物または化合物の併用の量(数量または濃度)、換言すると、防止効果または予防効果をもたらすために必要な量を意味する。対象に投与されることになる本化合物の量は、特定の障害、投与方式、併用投与される化合物がある場合はそれ、ならびに対象の特徴、例えば、総体的な健康状態、他の疾患、年齢、性別、遺伝子型、体重および薬物耐性に依存することになる。当業者は、これらおよび他の因子に依って適切な投与量を決定することができるであろう。「対象」には、哺乳動物(例えばヒト)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコおよびトリなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタおよびウマなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウスおよびモルモットなど)が含まれる。通常、対象はヒトである。
【0026】
医薬組成物
「医薬組成物」とは、対象への投与に好適な形態の本発明の化合物を含有する製剤である。一実施形態では、医薬組成物は、バルクまたは単位剤形である。投与を容易にし、投与量を均一にするために、組成物を単位剤形に製剤化することが有利であり得る。本明細書で使用される単位剤形とは、処置されることになる対象への単位投与量として適した、物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と共同して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性な試薬を含有する。単位剤形の仕様は、活性な試薬に独自の特徴、達成されるべき特定の治療効果、および各個体を処置するための活性剤などの調合に関する当技術分野に固有の制限によって決定され、これらに直接的に依存する。
【0027】
候補の製剤として、経口、舌下、バッカル、非経口(例えば、皮下、筋肉内または静脈内)、経直腸、局所(経皮を含む)、鼻腔内および吸入の各投与に好適なものが挙げられる。特定の患者に対する最適な投与手段は、処置される疾患の性質および重症度、または使用される療法の性質、および活性化合物の性質に依存することになるが、可能な場合には、経口投与をFXRにより活性化される疾患および病態の予防および処置に使用してもよい。経口投与に好適な製剤は、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤などの、各々が所定量の活性化合物を含有する別個の単位として、散剤もしくは顆粒剤として、水性もしくは非水性液中の溶液剤もしくは懸濁剤として、または水中油もしくは油中水の乳剤として、提供され得る。舌下またはバッカル投与に好適な製剤として、活性化合物と、通常は糖およびアラビアゴムまたはトラガントなどの香味基剤とを含むトローチ剤、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロース、アラビアゴムなどの不活性基剤中に活性化合物を含むパステル剤が挙げられる。
【0028】
非経口投与に好適な製剤は、通常、所定濃度の活性化合物を含有する滅菌水溶液を含み、この溶液は、対象とするレシピエントの血液と等張とすることができる。非経口投与に好適な別の製剤には、生理学的に好適な共溶媒ならびに/または界面活性剤およびシクロデキストリンなどの錯化剤を含有する製剤が含まれる。水中油乳剤もまた、非経口製剤に好適な製剤である。このような溶液は静脈内に投与することができるが、皮下注射または筋肉内注射によって投与することもできる。
【0029】
経直腸投与に好適な製剤は、坐剤基剤を形成する1種または複数種の固体担体、例えばカカオ脂などの中に活性成分を含む単位用量の坐剤として提供することができる。
【0030】
局所適用または鼻腔内適用に好適な製剤として、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾール剤および油剤が挙げられる。このような製剤に好適な担体として、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコールおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0031】
本発明の製剤は、任意の好適な方法によって(通常は、活性化合物を、液体もしくは微粉化固体担体またはその両方と、必要な割合で均一および均質に混合し、次いで必要に応じて、得られた混合物を所望の形状に成形することによって)調製することができる。
【0032】
例えば、錠剤は、粉末または顆粒の活性成分と、1種または複数種の任意選択の成分、例えば、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤または界面活性分散剤などとを含む均質混合物を圧縮することによって、または粉末化活性成分と不活性液体希釈剤との均質混合物を鋳型成形することによって、調製することができる。吸入による投与に好適な製剤には、様々な種類の定量加圧エアゾール、噴霧器または吸入器を用いて生成することができる微粒子粉剤またはミスト剤が含まれる。
【0033】
経口による肺内投与では、粉末または液滴の粒径は、気管支樹内への送達を確実にするために、通常、0.5〜10μmの範囲であり、または約1〜5μmとすることができる。鼻腔投与では、鼻腔内での滞留を確実にするために、10〜500μmの範囲の粒径を使用することができる。
【0034】
定量吸入器は、通常、活性成分を液化噴射剤に入れた懸濁製剤または溶液製剤を含有する加圧エアゾールディスペンサーである。使用の際に、これらのデバイスは、計量された体積、通常は10〜150μmを送達するようになされたバルブを通して製剤を吐出し、活性成分を含有する微粒子スプレーを生成する。好適な噴射剤として、一定のクロロフルオロカーボン化合物、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、およびこれらの混合物が挙げられる。製剤は、1種または複数種の共溶媒、例えば、オレイン酸またはトリオレイン酸ソルビタンなどのエタノール界面活性剤、抗酸化剤および好適な香味剤をさらに含有してもよい。
【0035】
噴霧器は、圧縮ガス(通常、空気または酸素)を狭いベンチュリ・オリフィスに通して加速することによって、または超音波撹拌によって、活性成分の溶液または懸濁液を治療用エアゾールミストに変換する市販のデバイスである。噴霧器中での使用に好適な製剤は、液体担体に入れた活性成分からなり、40%w/wまでの、好ましくは20%w/w未満の製剤を含む。担体は、通常、好ましくは、例えば塩化ナトリウムを添加して体液と等張にした、水または希釈水性アルコール溶液である。任意選択の添加物として、製剤が滅菌に調製されていない場合には防腐剤(例えばヒドロキシ−安息香酸メチル)、抗酸化剤、香味剤、揮発性油、緩衝剤および界面活性剤が挙げられる。
【0036】
通気法による投与に好適な製剤として、吸入器を用いて、または鼻から吸い込む方法で鼻腔内に取り込まれて送達され得る微粉砕粉末が挙げられる。吸入器中で、粉末は通常、ゼラチンまたはプラスチックで作製されたカプセルまたはカートリッジの中に含有されており、カプセルまたはカートリッジはその場で孔を開けられるかまたは開封され、吸入すると、または手動操作のポンプを用いると、引き込まれてデバイスを通過する空気によって粉末が送達される。吸入器中に使用される粉末は、専ら活性成分のみか、または活性成分と、ラクトースなどの好適な粉末希釈剤と、任意選択の界面活性剤とを含む粉末ブレンドのいずれかからなる。活性成分は、通常0.1〜100%w/wの製剤を含む。
【0037】
さらなる実施形態では、本発明は、活性成分として本発明の化合物を、少なくとも1種の医薬担体または希釈剤と一緒に、および/またはそれらと混合して含む医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物は上記の疾患または病態の予防または処置に使用することができる。
【0038】
担体は、薬学的に許容され、組成物中の他の成分と適合性がなければならない、すなわち組成物中の他の成分に悪影響を及ぼしてはならない。担体は固体でも液体でもよく、好ましくは単位用量製剤、例えば0.05〜95重量%の活性成分を含有することができる錠剤として製剤化される。所望の場合、他の生理学的に活性な成分もまた本発明の医薬組成物中に組み入れてもよい。
【0039】
上記で具体的に述べた成分に加えて、本発明の製剤は、問題にしている製剤のタイプに配慮した上で、薬学分野の当業者に公知の他の薬剤を含んでもよい。例えば、経口投与に好適な製剤は香味剤を含んでもよく、鼻腔内投与に好適な製剤は香料を含んでもよい。
【0040】
処置方法
本発明の化合物は、ヒトを含む哺乳動物などの対象の療法に有用である。特に、本発明の化合物は、対象の疾患または病態を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法において有用である。一実施形態では、疾患または病態はFXRにより活性化される(例えば、FXRが、疾患または病態の開始または進行において役割を担う)。一実施形態では、疾患または病態は、心血管疾患、慢性肝疾患、脂質障害、胃腸疾患、腎疾患、代謝性疾患、がんおよび神経系疾患から選択される。
【0041】
一実施形態では、本発明は、対象の心血管疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、心血管疾患の処置方法に関する。一実施形態では、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脂質異常症、高コレステロール血症、高脂血症、高リポタンパク血症および高トリグリセリド血症から選択される心血管疾患。
【0042】
「高脂血症」という用語は、血中脂質値の異常な上昇の存在を指す。高脂血症は、少なくとも3つの形態:高コレステロール血症、すなわちコレステロール値の上昇、高トリグリセリド血症、すなわち、トリグリセリド値の上昇、および複合型高脂血症、すなわち、高コレステロール血症と高トリグリセリド血症との複合で現れ得る。
【0043】
「脂質異常症」という用語は、リポタンパク質値の低下および/または上昇の両方(例えば、LDL値、VLDL値の上昇およびHDL値の低下)を含む、血漿中リポタンパク質値の異常を指す。
【0044】
一実施形態では、本発明は、対象におけるコレステロール値の低減、または食事性コレステロールのコレステロール代謝、異化、吸収、およびコレステロール逆輸送の調節から選択される方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、対象のコレステロール、トリグリセリドまたは胆汁酸の各値に悪影響を及ぼす疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。
【0046】
一実施形態では、本発明は、対象のトリグリセリドを低下させる方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。
【0047】
一実施形態では、本発明は、対象のコレステロール値の上昇に関連する疾患状態を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、対象のコレステロール値の上昇に関連する疾患状態の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、対象のコレステロール値の上昇に関連する疾患状態の予防方法に関する。一実施形態では、疾患状態は、冠状動脈疾患、狭心症、頚動脈疾患、卒中、脳動脈硬化性および黄色腫から選択される。
【0048】
一実施形態では、本発明は、対象の脂質障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、脂質障害の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、脂質障害の予防方法に関する。
【0049】
脂質障害とは、コレステロールおよびトリグリセリドの異常を指す用語である。脂質異常は、脈管疾患ならびに特に心臓発作および卒中の、リスクの上昇に関連している。脂質障害における異常は、遺伝的素因に食事摂取の性質が組み合わさったものである。多くの脂質障害が、過体重であることに関連している。脂質障害はまた、糖尿病、メタボリックシンドローム(インスリン抵抗性症候群と呼ばれることもある)、甲状腺の機能低下または一定の薬物療法(移植を受けた人々の拒絶反応抑制レジメンに使用されるものなど)から生じるものを含む他の疾患にも関連している場合がある。
【0050】
一実施形態では、本発明は、対象の脂質代謝に悪影響を及ぼす疾患(すなわちリポジストロフィー)の1つまたは複数の症状を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、脂質代謝に悪影響を及ぼす疾患の1つまたは複数の症状の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、脂質代謝に悪影響を及ぼす疾患の1つまたは複数の症状の予防方法に関する。
【0051】
一実施形態では、本発明は、対象の脂質蓄積を低減する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。
【0052】
一実施形態では、本発明は、対象の慢性肝疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、慢性肝疾患の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、慢性肝疾患の予防方法に関する。一実施形態では、慢性肝疾患は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)(原発性胆汁性胆管炎(PBC)としても知られる)、脳腱黄色腫症(CTX)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、薬物性胆汁うっ滞、妊娠性肝内胆汁うっ滞、非経口栄養関連胆汁うっ滞(parenteral nutrition associated cholestasis:PNAC)、細菌過剰増殖または敗血症関連胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝臓移植関連移植片対宿主病、生体ドナー移植肝再生、先天性肝線維症、総胆管結石症、肉芽腫性肝疾患、肝内または肝外悪性病変、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、ウィルソン病、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシスおよびα1−アンチトリプシン欠損症から選択される。
【0053】
一実施形態では、本発明は、対象の胆汁うっ滞の合併症を含む、胆汁うっ滞の1つまたは複数の症状を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、胆汁うっ滞の1つまたは複数の症状の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、胆汁うっ滞の1つまたは複数の症状の予防方法に関する。
【0054】
胆汁うっ滞は、通常、肝臓内(肝内)または肝臓外(肝外)の因子によって引き起こされ、血流中の胆汁酸塩、胆汁色素ビリルビンおよび脂質が正常に排出されずに蓄積される。肝内胆汁うっ滞は、身体が胆汁を排出する能力が損なわれる、小管の広範な閉塞または肝炎などの障害を特徴とする。肝内胆汁うっ滞はまた、アルコール性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、身体の別の部分から広がった(転移した)がん、原発性硬化性胆管炎、胆石、胆石仙痛および急性胆嚢炎に起因することもある。肝内胆汁うっ滞はまた、手術、重傷、嚢胞性線維症、感染症または静脈内栄養補給の合併症として起こることもあり、薬物誘発性のこともある。胆汁うっ滞はまた、妊娠の合併症として起こることもあり、多くの場合、第二期および第三期に発症する。肝外胆汁うっ滞は、総胆管結石症(胆管結石)、良性胆道狭窄(総胆管の非がん性狭窄)、胆管癌(腺管癌)および膵臓癌に起因することが最も多い。肝外胆汁うっ滞は、多くの薬物療法の副作用として起こることもある。
【0055】
本発明の化合物は、胆道閉鎖症、産科胆汁うっ滞、新生児胆汁うっ滞、薬物性胆汁うっ滞、C型肝炎感染症から生じる胆汁うっ滞、慢性胆汁うっ滞性肝疾患、例えば原発性胆汁性肝硬変(PBC)、および原発性硬化性胆管炎(PSC)を含むが、これらに限定されない肝内または肝外の胆汁うっ滞の、1つまたは複数の症状を処置または予防するために使用することができる。
【0056】
一実施形態では、本発明は、対象の肝再生を増強する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、この方法は、肝臓移植の際に肝再生を増強する。
【0057】
一実施形態では、本発明は、対象の線維症を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、線維症の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、線維症の予防方法に関する。
【0058】
したがって、本明細書で使用する場合、線維症という用語は、病的状態または疾患による線維症、身体外傷による線維症(「外傷性線維症」)、放射線損傷による線維症、および化学療法剤への曝露による線維症を含む、広く認知されている線維性障害を指す。本明細書で使用する場合、「臓器線維症」という用語には、以下に限定されるものではないが、肝線維症、腎臓の線維症、肺の線維症および腸の線維症が含まれる。「外傷性線維症」には、以下に限定されるものではないが、手術(手術瘢痕)、偶発性身体外傷、熱傷、および肥厚性瘢痕化に続発する線維症が含まれる。
【0059】
本明細書で使用する場合、「肝線維症」には、以下に限定されるものではないが、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによるものなどのウイルス誘発性肝線維症;アルコール(アルコール性肝疾患)、メトトレキサートを含むがこれに限定されない一定の医薬化合物、一部の化学療法剤、およびヒ素剤または高用量のビタミンAの慢性摂取、酸化ストレス、がん放射線療法、または四塩化炭素およびジメチルニトロソアミンを含むがこれらに限定されない一定の工業化学薬品への曝露;ならびに原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、脂肪肝、肥満症、非アルコール性脂肪性肝炎、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス、自己免疫肝炎および脂肪性肝炎などの疾患を含むいずれかの原因による肝線維症が含まれる。
肝線維症の現行療法は主として、病因の除去、例えば過剰な鉄の除去(例えばヘモクロマトーシスの場合)、ウイルス量の低減(例えば慢性ウイルス性肝炎の場合)、または毒素への曝露の排除または低減(例えば、アルコール性肝疾患の場合)に向けられている。コルチコステロイドおよびコルヒチンなどの抗炎症薬も、肝線維症に至ることがある炎症の処置に使用されることが知られている。当技術分野において公知のとおり、肝線維症は、通常、生検材料の組織学的検査に基づいて、臨床的に5段階の重症度(S0、S1、S2、S3およびS4)に分類することができる。S0は線維症を示さず、S4は肝硬変を示す。肝線維症の重症度を病期分類するための様々な基準が存在するが、一般に、初期段階の線維症は、肝臓の一門脈(帯域)における、不連続な限局領域の瘢痕化によって特定され、後期段階の線維症は、架橋線維症(肝臓の各帯域にわたる瘢痕化)によって特定される。
【0060】
一実施形態では、本発明は、対象の臓器線維症を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、線維症は肝線維症である。
【0061】
一実施形態では、本発明は、対象の胃腸疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、胃腸疾患の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、胃腸疾患の予防方法に関する。一実施形態では、胃腸疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、細菌過剰増殖、吸収不良、放射線照射後大腸炎および顕微鏡的大腸炎から選択される。一実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病および潰瘍性大腸炎から選択される。
【0062】
一実施形態では、本発明は、対象の腎疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、腎疾患の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、腎疾患の予防方法に関する。一実施形態では、腎疾患は、糖尿病性腎症、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、慢性移植糸球体症、慢性間質性腎炎および多発性嚢胞腎疾患から選択される。
【0063】
一実施形態では、本発明は、対象の代謝性疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、腎疾患の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、腎疾患の予防方法に関する。一実施形態では、代謝性疾患は、インスリン抵抗性、高血糖症、真性糖尿病、肥満糖尿病傾向および肥満症から選択される。一実施形態では、真性糖尿病はI型糖尿病である。一実施形態では、真性糖尿病はII型糖尿病である。
【0064】
真性糖尿病は、広く糖尿病と呼ばれ、一般に、グルコースの産生および利用における代謝障害により、体内の適切な血糖値を維持できなくなることを特徴とする疾患または病態を指す。
【0065】
II型糖尿病の場合、疾患はインスリン抵抗性を特徴とし、インスリンが広範囲の濃度にわたってその生物学的作用を働かせる能力を失う。インスリン応答性に対するこの抵抗性により、筋肉におけるグルコース取り込み、酸化および貯蔵のインスリンによる活性化が不足し、脂肪組織における脂肪分解と肝臓におけるグルコース産生および分泌のインスリンによる抑制が不十分になる。その結果生じる状態は血糖の上昇であり、「高血糖症」と呼ばれる。高血糖症が制御されなければ、網膜症(眼の血管損傷による視力の低下または喪失);ニューロパチー(神経系に対する血管損傷による神経損傷および足の障害);ならびに腎症(腎臓の血管損傷による腎疾患)、高血圧症、脳血管疾患および冠状動脈性心疾患を含む、微小血管疾患および大血管疾患のリスクの増加による若年死亡率の増加につながる。したがって、グルコースホメオスタシスの制御は、糖尿病の処置にきわめて重要な手法である。
【0066】
インスリン抵抗性は、高血圧症、耐糖能異常、高インスリン血症、トリグリセリド値の上昇およびHDLコレステロールの低下、ならびに中心性肥満および全体的肥満の群を束ねるものと仮定されている。インスリン抵抗性と、耐糖能異常、血漿トリグリセリドの増加および高密度リポタンパク質コレステロール濃度の低下、高血圧症、高尿酸値症、低密度リポタンパク質粒子の微小化、高濃度化、ならびにプラスミノーゲン活性化因子インヒビター1の循環値の上昇とが結びつくと、「症候群X」と呼ばれている。したがって、「症候群X」を構成する一群の疾患状態、病態または障害を含む、インスリン抵抗性に関連する任意の障害を処置または予防する方法が提供される。一実施形態では、本発明は、対象のメタボリックシンドロームを処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、メタボリックシンドロームの処置方法に関する。別の実施形態では、本発明は、メタボリックシンドロームの予防方法に関する。
【0067】
一実施形態では、本発明は、対象のがんを処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、がんの処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、がんの予防方法に関する。一実施形態では、がんは、肝細胞がん、結腸直腸がん、胃がん、腎がん、前立腺がん、副腎がん、膵がん、乳がん、膀胱がん、唾液腺がん、卵巣がん、子宮体がんおよび肺がんから選択される。一実施形態では、がんは肝細胞がんである。一実施形態では、がんは結腸直腸がんである。一実施形態では、がんは胃がんである。一実施形態では、がんは腎がんである。一実施形態では、がんは前立腺がんである。一実施形態では、がんは副腎がんである。一実施形態では、がんは膵がんである。一実施形態では、がんは乳がんである。一実施形態では、がんは膀胱がんである。一実施形態では、がんは唾液腺がんである。一実施形態では、がんは卵巣がんである。一実施形態では、がんは子宮体がんである。一実施形態では、がんは肺がんである。
【0068】
別の実施形態では、ソラフェニブ、スニチニブ、エルロチニブまたはイマチニブから選択される薬剤のうち少なくとも1つが、がんを処置するために、本発明の化合物と併用投与される。一実施形態では、アバレリックス、アルデロイキン(aldeleukin)、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストゾール(anastozole)、ベバシズマブ、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エルロチニブ、エキセメスタン、5−フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゴセレリン酢酸塩、イリノテカン、ラパチニブジトシル酸塩、レトゾール(letozole)、ロイコボリン、レバミゾール、オキサリプラチン、パクリタキセル、パニツムマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、プロフィマー(profimer)ナトリウム、タモキシフェン、トポテカンおよびトラスツズマブから選択される薬剤のうち少なくとも1つが、がんを処置するために、本発明の化合物と併用投与される。
【0069】
がんの適切な処置は、腫瘍が由来する細胞のタイプ、悪性腫瘍のステージおよび重症度、ならびに腫瘍の一因となっている遺伝的異常に依存する。
【0070】
がん病期分類システムは、がんの進行程度を示す。一般に、病期分類システムは、腫瘍の広がり具合を表し、予後および処置が類似している患者を同一病期分類群に入れる。一般に、浸潤性になった、または転移した腫瘍では予後が思わしくない。
【0071】
病期分類システムの一種において、症例はローマ数字のI〜IVで表される4つのステージに分類される。ステージIでは、がんは限局的であることが多く、通常治癒可能である。ステージIIおよびIIIAのがんは通常、より進行しており、周辺組織に浸潤し、リンパ節に広がっている場合がある。ステージIVのがんは、リンパ節の外の部位に広がった転移性がんを含む。
【0072】
別の病期分類システムは、カテゴリー、すなわち腫瘍(Tumor)、リンパ節(Node)および転移(Metastases)の略語であるTNM病期分類である。このシステムでは、悪性腫瘍は各カテゴリーの重症度に従って表される。例えば、Tは原発腫瘍の程度を0から4に分類し、0は浸潤性活性のない悪性腫瘍を表し、4は原発部位からの広がりによって他の器官に浸潤した悪性腫瘍を表す。Nはリンパ節転移の程度を分類し、0はリンパ節転移のない悪性腫瘍を表し、4は広範囲のリンパ節転移のある悪性腫瘍を表す。Mは転移の程度を0から1に分類し、0は転移のない悪性腫瘍を表し、1は転移した悪性腫瘍を表す。
【0073】
これらの病期分類システムもしくはこれらの病期分類システムの変形または他の好適な病期分類システムを、肝細胞がんなどの腫瘍を表すために使用することができる。がんのステージおよび特徴に依存する肝細胞がんの処置に、利用可能な選択肢はわずかしかない。処置には、手術、ソラフェニブでの処置、および標的療法が含まれる。一般に、手術は、初期ステージの限局的な肝細胞がんの処置の第一選択である。さらなる全身的処置は、浸潤性および転移性の腫瘍を処置するために使用することができる。
【0074】
一実施形態では、本発明は、対象の胆石を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、胆石の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、胆石の予防方法に関する。
【0075】
胆石は、胆汁成分が付加成長して胆嚢内で形成される結晶性の結石である。これらの結石は胆嚢内で形成されるが、遠位に移動して、胆嚢管、総胆管、膵管またはファーター膨大部などの胆道系の他の部分に入ることがある。まれに、重度の炎症の場合、胆石は胆嚢を侵食して、癒着した腸に入ることがあり、ともすれば、胆石性イレウスと呼ばれる閉塞を引き起こすことがある。胆嚢内に胆石が存在すると、急性胆嚢炎、胆嚢内の胆汁うっ滞を特徴とする炎症状態、ならびに多くの場合、腸内微生物、主として大腸菌(Escherichia coli)およびバクテロイデス(Bacteroides)種による二次感染に至ることがある。
【0076】
胆道系の他の部分に胆石が存在すると、胆管の閉塞を引き起こし、上行性胆管炎または膵炎などの重篤な病態に至る可能性がある。一実施形態では、本発明は、対象のコレステロール胆石疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、コレステロール胆石疾患の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、コレステロール胆石疾患の予防方法に関する。
【0077】
一実施形態では、本発明は、対象の神経系疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体の有効量を投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、本発明は、神経系疾患の処置方法に関する。一実施形態では、本発明は、神経系疾患の予防方法に関する。一実施形態では、神経系疾患は卒中である。
【0078】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法であって、さらに、化合物が、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、経眼、経腟、経直腸および脳室内から選択される経路で投与される方法に関する。一実施形態では、経路は経口である。
【0079】
一実施形態では、本明細書に記載の方法のうち1つまたは複数において利用される化合物はFXRアゴニストである。一実施形態では、化合物は選択的FXRアゴニストである。別の実施形態では、化合物はTGR5を活性化しない。一実施形態では、化合物は、代謝経路に関与する他の核内受容体を活性化しない(例えば、AlphaScreenアッセイによって測定されるとおり)。一実施形態では、このような代謝経路に関与する他の核内受容体は、LXRβ、PXR、CAR、PPARα、PPARδ、PPARγ,RAR、RARα、VDR、TR、PR、RXR、GRおよびERから選択される。一実施形態では、化合物はアポトーシスを誘導する。
【0080】
一実施形態では、本発明は、胆汁酸ホメオスタシスに関与する1種または複数種の遺伝子の発現レベルを調整する方法に関する。
【0081】
一実施形態では、本発明は、細胞に本発明の化合物を投与することによって、細胞内のCYP7αlおよびSREBP−ICから選択される1種または複数種の遺伝子の発現レベルを減少させる方法に関する。一実施形態では、本発明は、細胞に本発明の化合物を投与することによって、細胞内のOSTα、OSTβ、BSEP、SHP、UGT2B4、MRP2、FGF−19、PPARγ、PLTP、APOCIIおよびPEPCKから選択される1種または複数種の遺伝子の発現レベルを増加させる方法に関する。
【0082】
本発明はまた、疾患または病態(例えば、FXRにより活性化される疾患または病態)を処置または予防するための医薬品の製造であって、当該医薬品が、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体を含む、医薬品の製造にも関する。一実施形態では、本発明は、本明細書の上記に記載の疾患または病態のいずれか1つを処置または予防するための医薬品の製造であって、当該医薬品が、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体を含む、医薬品の製造に関する。
【0083】
本発明はまた、疾患または病態(例えば、FXRにより活性化される疾患または病態)を処置または予防する方法において使用するための組成物であって、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体を含む組成物にも関する。一実施形態では、本発明は、本明細書の上記に記載の疾患または病態のいずれか1つを処置または予防する方法において使用するための組成物であって、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくはアミノ酸抱合体を含む組成物に関する。
【0084】
本発明の方法は、有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む。本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、一定の効果を達成するのに十分な本発明の化合物の量を指す。したがって、FXRにより活性化される疾患または病態を予防または処置する方法に使用される本発明の化合物の有効量は、FXRにより活性化される疾患または病態を予防または処置するのに十分な量ということになる。
【0085】
同様に、胆汁うっ滞性肝疾患または胆汁流量の増加を予防または処置する方法に使用される本発明の化合物の有効量は、腸への胆汁流量を増加させるのに十分な量ということになる。
【0086】
所望の生物学的効果を達成するために必要な本発明の化合物の量は、意図されている用途、投与手段およびレシピエントなどの複数の因子に依存し、最終的には担当の医師または獣医師の判断によることになる。一般に、FXRにより活性化される疾患および病態の処置の典型的な1日用量は、例えば、約0.01mg/kg〜約100mg/kgの範囲にあると考えられる場合がある。この用量は、単回の単位用量として、または数回に分けられた単位用量として、または持続注入として投与することができる。同様の投与量が、他の疾患、病態の処置、ならびに胆汁うっ滞性肝疾患の予防および処置を含む療法に適用可能であろう。
【実施例】
【0087】
実験セクション
実施例1.化合物1の合成
化合物1を、スキーム1に記載の手順に従って、7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン−24−酸(A1)を出発材料として調製した。A1は、当技術分野において公知である方法により調製した。例えば、A1は、PCT公報国際公開第2014/184271号パンフレットに記載の手順により調製できる。
【化3】
試薬および条件:a)MeOH、p−TSA;b)フェティゾン試薬、乾燥トルエン、還流;c)NaOH、MeOH;d)KOH、NH
2NH
2・H
2O、エチレングリコール、還流。
【0088】
メチル7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−3−オキソ−5β−コラン−24−オエート(A2):
A1(0.46mmol)およびp−TSA(0.046mmol)のMeOH(5mL)溶液を一晩反応させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチル(10mL)に溶解させ、NaHCO
3の飽和溶液により中性pHになるまで洗浄した。水相をEtOAcで抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗製物をトルエン(6.5mL)に溶解させ、フェティゾン試薬と共に18時間還流した。混合物をセライトパッドで濾過し、濾液を真空下で濃縮して、さらに精製せずに次の工程に使用した。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.87−0.95(9H,m,CH
3−18,CH
3−21,CH
3−26),1.23(3H,s,CH
3−19),3.0(1H,t,J=14.2Hz,CH−4),3.65(3H,s,COOCH
3),3.87(1H,s,CH−7),4.32(1H,s,CH−11).
【0089】
7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン−24−酸(1):
メチル7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−3−オキソ−5β−コラン−24−オエート(A2)(150mg)を、NaOHのメタノール溶液と共に一晩撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を水に溶解させ、Et
2Oで洗浄した。水相をHCl 3NでpH 1に酸性化し、CHCl
3で抽出し、回収した有機層をH
2O、ブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗製物を、石油エーテルと酢酸エチルの混合物を溶離溶媒系として使用してシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−3−オキソ−5β−コラン−24−酸(0.21mmol)のエチレングリコール(2mL)中の懸濁液を、KOH(0.518mmol)およびNH
2NH
2・H
2O(2.07mmol)と共に30時間還流した。混合物を室温に冷却し、H
2Oで希釈し、Et
2O(3×5mL)で洗浄した。HCl 3NによるpH 1への酸性化の後、水相をEtOAcで抽出し、回収した有機層をH
2O、ブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製物を、H
2O−MeOHを溶離溶媒系として使用して逆相C18フラッシュクロマトグラフィーにより精製し、このように7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン−24−酸(1)を白色の固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CD
3OD):δ 0.87−0.92(6H,m,CH
3−18,CH
3−25),1.00(3H,d,J=6.4Hz,CH
3−21),1.14(3H,s,CH
3−19),3.73(1H,s,CH−7),4.19(1H,s,CH−11).
13C−NMR(100.6MHz,CD
3OD):12.1,14.7,19.0,23.2,23.5,24.7,25.5,28.6,29.0,29.1,34.1,36.3,37.5,37.8,38.3,38.5,38.8,42.8(x2),50.1,51.5,52.3,58.1,69.3,71.8,183.6.
【0090】
薬理学および生物学的データ
一般に、化合物の薬物候補としての見込みは、当技術分野において公知の種々のアッセイを使用して評価することができる。例えば、FXRのin vitro検証では、その活性および選択性はAlphaScreen(生化学アッセイ)を使用して評価することができ、遺伝子発現はRT−PCR(FXR標的遺伝子)を使用して評価することができ、細胞毒性(例えばHepG2)は、ATP含量、LDH放出およびカスパーゼ−3活性化を使用して評価することができる。TGR5のin vitro検証では、その活性および選択性は、HTR−FRET(細胞ベースアッセイ)を使用して評価することができ、遺伝子発現は、RT−PCR(TGR5標的遺伝子(すなわちcFOS))を使用して評価することができ、細胞毒性(例えばHepG2)は、ATP含量、LDH放出およびカスパーゼ−3活性化を使用して評価することができる。以下の化合物を、下記の実施例において対照として使用した。
【0091】
本明細書で使用する場合、化合物Aは
【化4】
であり、オベチコール酸、INT−747、6−ECDCA、6−α−エチルケノデオキシコール酸、または6α−エチル−3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸としても知られている。
【0092】
本明細書で使用する場合、化合物Bは
【化5】
であり、INT−767または6α−エチル−3α,7α,23−トリヒドロキシ−24−ノル−5β−コラン−23−硫酸ナトリウム塩としても知られている。
【0093】
本明細書で使用する場合、化合物Cは
【化6】
であり、INT−777または6α−エチル−23(S)−メチル−3α,7α,12αトリヒドロキシ−5β−コラン−24−酸としても知られている。
【0094】
本明細書で使用する場合、化合物Dは
【化7】
であり、6α−エチル−23(R)−メチルケノデオキシコール酸、およびS−EMCDCAとしても知られている。
【0095】
本明細書で使用する場合、化合物Eは
【化8】
である。
【0096】
本明細書で使用する場合、化合物Fは
【化9】
であり、3α,7α,11β−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン−24−酸としても知られている。
【0097】
実施例2.FXR/TGR5活性
核内で、リガンドが結合した核内受容体(NR)は、基底転写機構と直接相互作用することにより、または活性化補助因子と呼ばれる架橋因子と接触することにより、転写の開始を調節する(Onate,et al.,Science,1995,270,1354−1357;Wang,et al.,J Biol Chem,1998,273,30847−30850;およびZhu,et al.,Gene Expr,1996,6,185−195)。NRの、その活性化補助因子とのリガンド依存性の相互作用は、受容体のリガンド結合ドメイン(LBD)に位置する活性化機能2(activation function 2:AF−2)と、活性化補助因子に位置する核内受容体ボックス(NRボックス)の間で発生する(Nolte,et al.,Nature,1998,395,137−143)。NRボックス中に存在するLXXLLペプチド配列は、様々なタンパク質のAF−2領域との相互作用を容易にするシグネチャーモチーフとなることが、複数の証拠によって実証されている(Heery,et al.,Nature,1997,387,733−736;およびTorchia,et al.,Nature,1997,387,677−684)。
【0098】
FXRと、ステロイド受容体活性化補助因子1(SRC−1)のNRボックス中に存在するLXXLLモチーフとの間で行われる二分子相互作用を利用して、新規な調節剤を同定するためにAlphaScreenを使用した。
【0099】
ヒトFXR−LBD−GSTを、ビオチン化LXXLL SRC−1ペプチドの存在下で、指定のリガンドの濃度を漸増してインキュベートした。AlphaScreenシグナルは、受容体−活性化補助因子複合体が形成されると増加する。本発明の化合物は強力なFXRアゴニストである。データを表1に示す。
【0100】
胆汁酸(BA)は、いくつかの核内ホルモン受容体を調節するだけではなく、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)TGR5のアゴニストでもある(Makishima,et al.,Science,1999,284,1362−1365;Parks,et al.,Science,1999,284,1365−1368;Maruyama,et al.,Biochem Biophys Res Commun,2002,298,714−719;およびKawamata,et al.,J Biol Chem,2003,278,9435−9440)。FXRおよびTGR5によるシグナリングは、いくつかの代謝経路を調節し、BA合成および腸肝再循環だけではなく、トリグリセリド、コレステロール、グルコースおよびエネルギーホメオスタシスも調整する。化合物1がTGR5を活性化する能力を評価するために、この化合物および他の比較化合物を、細胞内cAMPの増加をTGR5活性化の読み出し情報としてスクリーニングした。TGR5を恒常的に発現するヒト腸内分泌NCI−H716細胞を、漸増濃度の本発明の化合物に曝露し、細胞内cAMP値をTR−FRETによって測定した。リトコール酸(LCA)を陽性対照として使用した。本発明の化合物は、TGR5よりFXRの方に高選択性を示す。データを表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
実施例3.核内受容体選択性プロファイル
AlphaScreenアッセイを利用して、代謝経路に関与する以下の核内受容体に対する化合物1の選択性を評価できる:LXRα、LXRβ、PXR、CAR、PPARα、PPARδ、PPARγ、RAR、RARα、VDR、TR、PR、RXRα、GR、およびER。
【0105】
【表4a】
【0106】
【表4b】
【0107】
実施例4.FXR標的遺伝子パネル
化合物1がFXR標的遺伝子を調節する能力を評価するために、定量的RT−PCRアッセイを行う(
図1を参照)。本発明の化合物が内在性FXR遺伝子ネットワークを調整することができるかどうかを判定するのに適切な細胞株として、HepG2細胞を選択する。本発明の化合物がFXR標的遺伝子を誘導する能力は、1μΜの比較化合物および本発明の化合物で終夜処理した細胞から全RNAを単離することによって査定される。化合物Aは強力なFXR選択的アゴニストとして確立しており、化合物Bは強力な二重FXR/TGR5アゴニストとして確立している。
【0108】
FXRは、BAホメオスタシスに関与するいくつかの標的遺伝子の発現を調整する。要するに、FXRは、いくつかの代謝経路、すなわち、脂質代謝、胆汁酸代謝および炭水化物代謝などに中心的な役割を果たす。遺伝子発現プロファイリングに関しては、脂質代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子として、例えば、APOCII、APOE、APOAI、SREBP−1C、VLDL−R、PLTPおよびLPLが挙げられ、胆汁酸代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子として、例えば、OSTα/β、BSEP、MRP2、SHP、CYP7A1、FGF19、SULT2A1およびUGT2B4が挙げられ、炭水化物代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子として、例えば、PGCla、PEPCKおよびGLUT2が挙げられる。
【0109】
実施例5.In vitro細胞毒性
化合物1のin vitro細胞毒性を評価するために、2つの異なるアッセイ法を使用する。これらのアッセイは、ATP値を測定することによって細胞生存率を評価し、LDH放出を測定することによって細胞毒性を評価する。アデノシン三リン酸(ATP)ヌクレオチドは、あらゆる細胞内で補酵素として使用される多官能性分子であり、ミトコンドリアのDNAの不可欠部分であるため、基本的分子レベルでのエネルギー源である(Kangas,et al.,Medical Biology,1984,62,338−343;Crouch,et al.,J Immunol.Methods,1993,160,81−88;およびPetty,et al.,J Biolumin.Chemilumin.1995,10,29−34)。それは、細胞内エネルギー移動に関して、「分子単位の通貨」と呼ばれている。これは代謝におけるATPの重要な役割を確言するものであり、ATP含量の低下は、細胞傷害が現れる最初の段階である(Storer,et al.,Mutation Research,1996,368,59−101;およびCree and Andreotti,Toxicology In−Vitro,1997,11,553−556)。細胞生存率を、試験化合物の暴露時間および濃度に関連した細胞内ATPの測定値として決定する(Sussman,Promega Cell Notes,Issue 3,2002)。
【0110】
細胞の生存率を測定する別の方法は、細胞の区画化を規定する膜の統合性を検出することである。損傷した細胞膜において細胞質からの成分の漏出を測定することは、膜統合性の損失を示し、LDH放出は細胞における共通毒性を判定するために使用される方法である。HepG2細胞を本発明の化合物で処理し、段階希釈を行う。無細胞および無処理の細胞と共に、アッセイ対照として、LCA希釈液を、プレーティングした細胞に添加する。アッセイは、各試験化合物濃度につき3連で行う。
【0111】
【表5】
【0112】
実施例6.CYP450スクリーニング
化合物1の薬物・薬物相互作用の可能性を評価するために、主要な6種のCYP450アイソフォーム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4)を調査する(Obach,et al.,J Pharmacol.Exp.Ther,2006,316,336−348)。
【0113】
化合物1とシトクロムP450酵素との間の相互作用を判定するために、本発明の化合物を、組換えCYP450タンパク質(baculosomes;Invitrogen)、基質および阻害剤を使用して、化合物が蛍光シグナルの生成を阻害する(または阻害しない)能力によって分析する(Bidstrup,et al.,Br J Clin.Pharmacol,2003,56,305−14)。陽性対照として、各CYP450アイソフォームの選択的阻害剤を同一プレート中で試験する。
【0114】
【表6】
【0115】
実施例7.ヒトERGカリウムチャネル
イオンチャネル機能を判定するために、Predictor(商標)hERG蛍光偏光アッセイは、試験化合物がhERGチャネルを遮断する傾向の初期判断に有効な方法となるため、これを使用する(Dorn,et al.J Biomol.Screen,2005,10,339−347)。このアッセイは、hERGカリウムチャネル活性が、永久にトランスフェクトした細胞中で静止膜電位をもたらすという仮定に基づいており、このため、hERGチャネルを遮断すると、細胞膜の脱分極が起こるはずとなる。このアッセイは、パッチクランプ電気生理学試験と正確に相関するデータを生成することによって、潜在的なhERGチャネル遮断剤を特定するように設計される。Predictor(商標)アッセイの結果は、パッチクランプ法から得られたものと高い相関性を示す(Dorn,et al.J Biomol Screen,2005,10,339−347)。
【0116】
hERGカリウムチャネルを安定にトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣細胞由来の膜標品を使用して、Predictor(商標)蛍光偏光アッセイによって、このチャネルに対する本発明の化合物の潜在的阻害効果を評価する。hERGカリウムチャネルの阻害の結果として膜分極が失われることは、蛍光偏光(FP)の減少と直接的に相関がある。
【0117】
アッセイは、試験化合物ならびに陽性対照であるE−4031およびタモキシフェンの16点用量反応を使用して、3連で行う。E−4031では15nM(AmP=163)のIC
50、タモキシフェンでは1.4μΜ(ΔητΡ=183)のIC
50が得られている。100mP(ミリ偏光)を超えるアッセイウィンドウが良好と考えられる。非線形回帰曲線はGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)分析によって得られ、IC
50値が計算される。
【0118】
【表7】
【0119】
実施例8.Pgp ATPアーゼ活性
Pgp ATPアーゼ活性に対する化合物1の影響を、製造者の標準的なプロトコルに従ってPgp−Glo(商標)アッセイで(Technical Bulletin;Pgp−Glo
TM Assay Systems Instructions for Use of Products V3591 and V3601;2015年11月改定)検討した。
【0120】
【表8】
【0121】
実施例9.生理化学的性質
水溶性、臨界ミセル濃度、表面張力、およびLogP
Aなどの化合物1の生理化学的性質を、当技術分野において公知である方法を利用して決定した。データを表9に与える。
【0122】
【表9】
【0123】
実施例10.胆汁瘻ラットにおける化合物1の胆汁分泌および代謝
目的および原理:化合物の構造修飾は、その肝臓取り込み、肝臓輸送、ならびに分泌および腸内吸収に影響を与える。したがって、静脈内または十二指腸投与後の胆汁分泌とその代謝の知識は、追加の試験の候補選択における要点である。腸内吸収の様式および効率を評価するため、化合物1を、静脈内(大腿部注入)と経口(十二指腸注入)の両方で、同じ投与量で投与し、その胆汁分泌速度を胆汁瘻ラットモデルで評価する。胆汁産生に対する胆汁分泌促進作用も評価する。静脈内と十二指腸投与の間の時間に対する胆汁分泌の曲線下面積(AUC)の差はその腸内吸収を説明し(account of)、そのバイオアベイラビリティについての情報を与える。さらに、肝臓代謝と腸代謝もきわめて異なっている可能性があり、したがって、化合物1の胆汁分泌ならびにその主な(腸の)および肝臓の代謝物を決定する。
【0124】
胆汁分泌促進作用−十二指腸注入
胆汁瘻ラットモデルを、University of Bologna Lab facilitiesで開発する。化合物1を、約1μmol/kg/分(1時間注入)の投与量で、ラットの群に十二指腸注入(id)により投与する。ラットは、注入の前またはその間の異なる時点で胆汁試料を回収するための胆汁瘻を有する。十二指腸注入実験のために、ラット(250±10g)を処置する。胆汁試料を15分ごとに4時間回収する。さらに、3匹の対照ラットを、同じ時間およびサンプリングの条件下で食塩水により処置する(十二指腸対照ラット)。
【0125】
胆汁分泌促進作用−静脈内注入
大腿部注入実験のために、ラットを、約lμmol/分/kgの化合物1により処置する。大腿部注入は、約75分の定常状態後に開始し、約60分間継続する。胆汁試料を約15分ごとに4時間回収する。さらに、ラットを、同じ時間およびサンプリングの条件下で食塩水により処置する(大腿部対照ラット)。