(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892479
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】真空構造部品、金型冷却装置、真空ダイカスト装置および真空ダイカスト法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20210614BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20210614BHJP
B22D 17/14 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
B22D17/22 D
B22C9/06 B
B22D17/14
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-131619(P2019-131619)
(22)【出願日】2019年7月17日
(65)【公開番号】特開2021-16860(P2021-16860A)
(43)【公開日】2021年2月15日
【審査請求日】2020年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和宏
【審査官】
萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−160040(JP,A)
【文献】
特開2011−005504(JP,A)
【文献】
特開2017−042792(JP,A)
【文献】
特開2011−031258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 15/00−17/32
B22C 5/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ホルダーと固定ダイスからなる固定型と、可動ホルダーと可動ダイスからなる可動型と、前記固定ダイスと前記可動ダイスとにより画成されるキャビティを減圧する真空排気手段とを有する真空ダイカスト装置に用いられる金型冷却装置の外側パイプに装着される真空構造部品であって、
前記固定ホルダー、前記固定ダイス、前記可動ホルダー又は前記可動ダイスの任意の位置に形成された冷却穴に侵入可能な小径部と、
前記冷却穴の穴径よりも大径の大径部と、
を有し、
弾性変形可能な弾性部材により構成されることを特徴とする真空構造部品。
【請求項2】
請求項1に記載の真空構造部品において、
当該真空構造部品の外形が、前記小径部から前記大径部へと連続するテーパ形状にて構成されることを特徴とする真空構造部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空構造部品が外側パイプに装着され、
前記固定型と前記可動型とから構成される金型に形成された前記冷却穴に、前記真空構造部品を介して取り付けられることを特徴とする金型冷却装置。
【請求項4】
固定ホルダーと固定ダイスからなる固定型と、可動ホルダーと可動ダイスからなる可動型と、前記固定ダイスと前記可動ダイスとにより画成されるキャビティを減圧する真空排気手段とを有する真空ダイカスト装置であって、
前記固定ホルダー、前記固定ダイス、前記可動ホルダー又は前記可動ダイスの任意の位置に形成された冷却穴と、
前記冷却穴に侵入可能な小径部と、前記冷却穴の穴径よりも大径の大径部と、を有し、弾性変形可能な弾性部材により構成される真空構造部品と、
前記固定型と前記可動型とから構成される金型に形成された前記冷却穴に、前記真空構造部品を介して取り付けられる金型冷却装置と、
を備えることを特徴とする真空ダイカスト装置。
【請求項5】
請求項4に記載の真空ダイカスト装置を用いて真空ダイカストを行うことを特徴とする真空ダイカスト法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空構造部品、金型冷却装置、真空ダイカスト装置および真空ダイカスト法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空ダイカスト装置のダイカスト金型には、キャビティを画成する固定ダイスと可動ダイスが設けられ、また、キャビティ内に突出する鋳抜きピンや押出ピン等のピン部材が、可動ダイス又は固定ダイスに形成されたピン部材貫通孔内を貫通して設けられている。そして、ダイカスト後には、型開きがなされて、押出ピンを動作してダイカスト品をキャビティから分離させ、その後にダイカスト金型が外部冷却されたり、キャビティに離型剤が塗布されたりする。
【0003】
この種の真空ダイカスト装置では、金型におけるキャビティ内への空気の侵入を防ぐために、金型の各所にはOリング等が設けられており、ダイカストを実行する際にキャビティ内が真空構造となるように構成されている。
【0004】
一方、金型におけるキャビティ内に金属溶湯を射出注入する際には、金属溶湯からの高熱が金型に対して伝達されるため、この金型に対する熱影響を好適に低減するために、金型には冷却穴が設けられるとともに当該冷却穴には金型冷却装置が配置されることが従来から行われている。なお、金型の冷却穴に配置される金型冷却装置の発明が、例えば、下記特許文献1等において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−42792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上掲した特許文献1に記載された従来技術に係る金型冷却装置では、冷却流体の漏れを防止する装置構成が開示されている。この装置構成は、外側パイプの環状溝に、Oリングである外側シール部材が設けられるものであり、さらに、金型に設けられる穴部(冷却穴)にシール部材が密着する構成となっている。しかしながら、特許文献1に開示された装置構成を実現するためには、穴部(冷却穴)や環状溝の寸法管理(直径、円筒度、面粗度など)や、Oリングの材質管理に手間が掛かるため、当該従来技術には改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、金型に形成された冷却穴に対して簡単かつ確実に金型冷却装置を設置できる構造を提供することで、手間の掛かる管理が不要でありながらも確実な金型冷却が可能な構成を提供することにある。また、本発明は、金型に形成された冷却穴に金型冷却装置を設置するだけで、確実かつ容易に真空状態を得ることができる構成を提供することを目的として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係る真空構造部品(21,21’)は、固定ホルダー(3A)と固定ダイス(3B)からなる固定型(3)と、可動ホルダー(4A)と可動ダイス(4B)からなる可動型(4)と、前記固定ダイス(3B)と前記可動ダイス(4B)とにより画成されるキャビティ(5)を減圧する真空排気手段(17,18)とを有する真空ダイカスト装置(1)に用いられる金型冷却装置(22)の外側パイプ(22b)に装着される真空構造部品(21,21’)であって、前記固定ホルダー(3A)、前記固定ダイス(3B)、前記可動ホルダー(4A)又は前記可動ダイス(4B)の任意の位置に形成された冷却穴(31)に侵入可能な小径部(21a,21a’)と、前記冷却穴(31)の穴径よりも大径の大径部(21b,21b’)と、を有し、弾性変形可能な弾性部材により構成されることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る真空構造部品(21,21’)では、当該真空構造部品(21,21’)の外形が、前記小径部(21a,21a’)から前記大径部(21b,21b’)へと連続するテーパ形状にて構成されることとすることができる。
【0011】
本発明に係る金型冷却装置(22)は、上述した真空構造部品(21,21’)が外側パイプ(22b)に装着され、前記固定型(3)と前記可動型(4)とから構成される金型に形成された前記冷却穴(31)に、前記真空構造部品(21,21’)を介して取り付けられることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る真空ダイカスト装置(1)は、固定ホルダー(3A)と固定ダイス(3B)からなる固定型(3)と、可動ホルダー(4A)と可動ダイス(4B)からなる可動型(4)と、前記固定ダイス(3B)と前記可動ダイス(4B)とにより画成されるキャビティ(5)を減圧する真空排気手段(17,18)とを有する真空ダイカスト装置(1)であって、前記固定ホルダー(3A)、前記固定ダイス(3B)、前記可動ホルダー(4A)又は前記可動ダイス(4B)の任意の位置に形成された冷却穴(31)と、前記冷却穴(31)に侵入可能な小径部(21a,21a’)と、前記冷却穴(31)の穴径よりも大径の大径部(21b,21b’)と、を有し、弾性変形可能な弾性部材により構成される真空構造部品(21,21’)と、前記固定型(3)と前記可動型(4)とから構成される金型に形成された前記冷却穴(31)に、前記真空構造部品(21,21’)を介して取り付けられる金型冷却装置(22)と、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、上記の真空ダイカスト装置(1)を用いて真空ダイカストを行うことを特徴とする真空ダイカスト法を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金型に形成された冷却穴に対して簡単かつ確実に金型冷却装置を設置できる構造を提供することができる。かかる構造によれば、手間の掛かる管理が不要でありながらも確実な金型冷却が可能な構成を提供することができる。また、本発明によれば、金型に形成された冷却穴に金型冷却装置を設置するだけで、確実かつ容易に真空状態を得ることができる構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る真空ダイカスト装置の断面図である。
【
図2】本実施形態に係る真空ダイカスト装置が備える真空構造部品と金型冷却装置の各構成と、これらを組み合わせた状態を示す図であり、図中の分図(a)が真空構造部品を示し、分図(b)が金型冷却装置を示し、分図(c)が金型冷却装置に真空構造部品が取り付けられた状態を示している。
【
図3】本実施形態に係る真空ダイカスト装置の冷却穴に対して金型冷却装置が真空構造部品を介して取り付けられた状態を示す図である。
【
図4】
図3の要部を拡大して示した要部拡大図である。
【
図5】本発明に係る真空構造部品が取り得る多様な形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
まず、本発明を適用可能な本実施形態に係る真空ダイカスト装置および真空ダイカスト法について、
図1に基づき説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る真空ダイカスト装置の断面図である。
【0018】
本実施形態に係る真空ダイカスト装置1は、ダイカスト金型2を備えており、ダイカスト金型2は、固定型3と、この固定型3に当接・離間する可動型4とにより構成されている。固定型3と可動型4の当接面がダイカスト金型2の分割面(PL面)である。固定型3は、固定ホルダー3Aと、固定ホルダー3Aに収容固定されキャビティ5の一部を画成する固定ダイス3Bとを備える。固定ホルダー3Aには、給湯口6aが形成された射出スリーブ6が接続されている。射出スリーブ6には、給湯口6aから供給されたアルミニウム合金等の溶湯Mをキャビティ5に充填するための射出プランジャ7が往復摺動可能に設けられている。固定ダイス3Bと後述する可動ダイス4Bの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、排気ランナー3aが形成され、固定ホルダー3Aの上方には、排気ランナー3aに連通する真空バルブ8が収容配置されている。
【0019】
可動型4は、可動ホルダー4Aと、可動ホルダー4Aに収容固定された可動ダイス4Bとを備える。可動ダイス4Bは、固定ダイス3Bとともにキャビティ5を画成する。可動ホルダー4Aには、分流子9が収容固定されている。可動ダイス4Bの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、分流子9を介して溶湯Mをキャビティ5へ導くランナー4aが形成されている。可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bには、押出ピン貫通孔10,11が、その一端側(
図1における紙面右側)をキャビティ5に開口して形成されている。押出ピン貫通孔10,11には、それぞれ押出ピン12,13が配置されている。押出ピン12,13の後端は、押出板14に固定され、この押出板14が図示せぬ駆動機構又は可動型4の開閉動作に協働する機構により駆動され、押出ピン10,11の先端(
図1における紙面右側の先端部)がキャビティ5に対して突出、後退可能となっている。
【0020】
可動ホルダー4Aの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、型締め時に固定ホルダー3Aと可動ホルダー4Aの間をシールするためのOリング等のシール部材15が設けられている。
【0021】
真空バルブ8は、排気ランナー3aの所定の位置に配置された図示せぬ溶湯感知センサーが溶湯Mを感知するまでは、後述する真空タンク17と排気ランナー3aとを連通する連通位置に保持され、溶湯感知センサーが溶湯Mを感知したときに、この連通を遮断する遮断位置に切換え可能となっている。なお、
図1では、連通位置に保持された真空バルブ8を示している。
【0022】
本実施形態に係る真空ダイカスト装置1では、真空タンク17が電磁弁19を介して真空バルブ8に接続されている。ここで電磁弁19は、真空バルブ8と真空タンク17とを連通させる連通位置と、両者間の連通を遮断する遮断位置とに切換え可能に設けられている。真空タンク17は、真空ポンプ18に接続されており、真空タンク17と真空ポンプ18が、本実施形態に係る真空排気手段を構成する。
【0023】
さらに、図示せぬ離型剤スプレー装置が、型開き時に固定型3と可動型4との間の空間を進退可能にダイカスト金型2の近傍に設けられる。また、ダイカスト品を取り出すための図示せぬロボットと、ダイカスト金型2を外部冷却するための図示せぬ冷却水供給装置とが、ダイカスト金型2の近傍に配置されている。
【0024】
そして、本実施形態に係る真空ダイカスト法では、固定型3と可動型4を開状態にして、図示せぬ離型剤スプレー装置を固定型3と可動型4との間の空間に侵入させ、キャビティ5に離型剤を塗布する。
【0025】
次に、固定型3と可動型4を閉じ、真空バルブ8が連通位置に保持されている状態で、電磁弁19を連通位置に切換えてキャビティ5を減圧する。こうしてキャビティ5の減圧を開始してキャビティ5を所定の真空度にした後に、射出プランジャ7により射出スリーブ6内の溶湯Mを加圧し、溶湯Mを分流子9およびランナー4aを介してキャビティ5に充填する。キャビティ5を充填した溶湯Mが排気ランナー3aに配置された図示せぬ溶湯感知センサーに感知されると、真空バルブ8が遮断位置に切換えられる。
【0026】
その後、型開きがなされ、押出板14が図示せぬ駆動機構又は可動型4の開閉動作に協働する機構により駆動されることにより、押出ピン12,13がダイカスト品をキャビティ5から分離させる。そして、図示せぬロボットがダイカスト品を取り出すことにより、本実施形態に係る真空ダイカスト法の一サイクルが終了する。
【0027】
以上、本実施形態に係る真空ダイカスト装置1の基本構成と、本実施形態に係る真空ダイカスト法についての説明を行った。次に、本実施形態に係る真空ダイカスト装置1が備える特徴的な構成について、
図2〜
図4を用いて説明を行う。ここで、
図2は、本実施形態に係る真空ダイカスト装置が備える真空構造部品と金型冷却装置の各構成と、これらを組み合わせた状態を示す図であり、図中の分図(a)が真空構造部品を示し、分図(b)が金型冷却装置を示し、分図(c)が金型冷却装置に真空構造部品が取り付けられた状態を示している。また、
図3は、本実施形態に係る真空ダイカスト装置の冷却穴に対して金型冷却装置が真空構造部品を介して取り付けられた状態を示す図である。さらに、
図4は、
図3の要部を拡大して示した要部拡大図である。
【0028】
図2(a)には、本実施形態に係る真空構造部品21が示されている。この真空構造部品21は、弾性変形可能な弾性部材により構成することが好ましく、例えば、耐熱性と弾性を有するフッ素ゴムにて構成することができる。また、この真空構造部品21は、後述する冷却穴31に設置されることになるが、外形の特徴として、冷却穴31に侵入可能な小径部21aと、冷却穴31の穴径よりも大径の大径部21bと、を有して形成されている。そして、当該真空構造部品21の外形については、小径部21aから大径部21bへと連続するテーパ形状にて構成されている。さらに、この真空構造部品21は、小径部21aから大径部21bへ軸方向に貫通する貫通孔21cを備えており、この貫通孔21cは、後述する金型冷却装置22の外側パイプ22bに真空構造部品21を嵌め込むための孔となっている。
【0029】
図2(b)には、本実施形態に係る金型冷却装置22が示されている。この金型冷却装置22は、外部から冷却水を取り込む取水口22aと、取水口22aから取り込んだ冷却水を後述する冷却穴31に向けて誘導する図示しない内側パイプと、冷却穴31で熱を奪った冷却水を外部へと誘導する外側パイプ22bと、外側パイプ22bによって誘導され戻された温まった冷却水を外部へと排出する排水口22cと、から構成されている。なお、図示しない内側パイプは、外側パイプ22bの内側に配置されており、図示しない内側パイプと外側パイプ22bとで二重管が構成されている。また、この金型冷却装置22単体については、従来から用いられているものである。
【0030】
図2(c)には、金型冷却装置22に真空構造部品21が取り付けられた状態が示されている。これら部材の取付方法については、金型冷却装置22を構成する外側パイプ22bの先端側(
図2(b)の紙面右側)から真空構造部品21を嵌め込めばよい。なお、本実施形態に係る真空構造部品21は、弾性変形可能な弾性部材により構成されており、かつ、真空構造部品21が有する貫通孔21cの孔径は外側パイプ22bの外径寸法よりも極僅かに大きく形成されているので、外側パイプ22bに対して容易に嵌め込むことが可能となっている。また、嵌め込み作業が完了した状態において、真空構造部品21と外側パイプ22bは極僅かな隙間寸法にて取り付けられた状態となっている。
【0031】
以上、
図2を用いて説明した真空構造部品21が取り付けられた金型冷却装置22を、冷却穴31に設置した状態が、
図3に示されている。
【0032】
図3で示す例では、可動ホルダー4Aを貫通し、可動ダイス4Bの途中まで設けられた冷却穴31に対して、上述した真空構造部品21が取り付けられた金型冷却装置22が設置された状態が示されている。
【0033】
まず、可動ダイス4Bに形成された冷却穴31の入口部と金型冷却装置22を構成する外側パイプ22bの先端側については、両部材に形成されたねじ溝形状によってねじ止めされている。ただし、このねじ溝形状による螺合結合箇所については、Oリングなどを用いて固定することができる。
【0034】
一方、可動ホルダー4Aに形成された冷却穴31の入口部と金型冷却装置22に取り付けられた真空構造部品21については、冷却穴31の入口部に対して真空構造部品21を嵌め込んで締め込むことで、弾性部材からなる真空構造部品21が形状変形し、外部から冷却穴31の内部に対する空気の侵入を確実に防止できるようになっている。特に、本実施形態の真空構造部品21については、
図4に示すように、真空構造部品21の小径部21aから大径部21bへと連続して形成されたテーパ形状を冷却穴31に対して挿し込むように構成されており、さらに、可動ホルダー4Aに形成された冷却穴31の入口部にも外方に向けて拡径するテーパ部31aが形成されているので、真空構造部品21を冷却穴31に対してスムーズに挿し込むことが可能となっている。
【0035】
またさらに、弾性部材からなる真空構造部品21が形状変形したときには、
図4中の符号(α)で示す矢印箇所において、真空構造部品21の貫通孔21cが変形して外側パイプ22bと密着し、さらに、
図4中の符号(β)で示す矢印箇所において、真空構造部品21の外周側が変形して冷却穴31の入口部におけるテーパ部31aの根元部分と密着するので、真空構造部品21による冷却穴31の確実な閉鎖が実現されることとなる。すなわち、本実施形態に係る真空構造部品21によって、確実な真空機構が実現することとなる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、真空構造部品21の外形については、小径部21aから大径部21bへと連続するテーパ形状にて構成されていた。しかし、本発明の範囲は、この形態には限定されない。例えば、
図5で示すように、小径部21a’から大径部21b’の間にテーパ形状の角度変化点25を設け、角度の異なる2つの面を組み合わせた形の真空構造部品21’を採用することも可能である。なお、
図5は、本発明に係る真空構造部品が取り得る多様な形態の一例を示す図である。
【0038】
さらに、本発明に係る真空構造部品の外形については、テーパ形状に限らず、連続した拡径部と縮径部を有し、この拡径部と縮径部が漸次大径となるような、いわゆる瓢箪型の部品とすることも可能である。
【0039】
また例えば、上述した実施形態では、可動ホルダー4Aを貫通し、可動ダイス4Bの途中まで設けられた冷却穴31に対して、本実施形態の真空構造部品21が取り付けられた金型冷却装置22が設置された状態を例示した。しかし、本発明の適用範囲は、上記の例には限られない。本実施形態の真空構造部品21が取り付けられた金型冷却装置22の設置可能な位置は、金型のあらゆる位置に設定することが可能であり、例えば、固定型3の射出スリーブ6の下方に対しても設置することが可能である。
【0040】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
1 真空ダイカスト装置、2 ダイカスト金型、3 固定型、3A 固定ホルダー、3B 固定ダイス、3a 排気ランナー、4 可動型、4A 可動ホルダー、4B 可動ダイス、4a ランナー、5 キャビティ、6 射出スリーブ、6a 給湯口、7 射出プランジャ、8 真空バルブ、9 分流子、10,11 押出ピン貫通孔、12,13 押出ピン、14 押出板、15 シール部材、17 真空タンク、18 真空ポンプ、19 電磁弁、21,21’ 真空構造部品、21a,21a’ 小径部、21b,21b’ 大径部、21c 貫通孔、22 金型冷却装置、22a 取水口、22b 外側パイプ、22c 排水口、25 角度変化点、31 冷却穴、31a テーパ部。