(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高さ計測装置は、前記マスク保持装置に保持されたマスクのマスク上面高さと、前記基板位置決め装置の駆動により計測高さ位置に移動した前記基板の基板上面高さとを計測するものであり、
前記制御装置は、前記マスク上面高さ、前記基板上面高さ、前記マスクの厚さ及び、前記計測高さの基板上面からマスク下の基準高さまでの離間距離の各値をもとに、前記マスク下側層の厚さを算出するものである請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係るスクリーン印刷機の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、スクリーン印刷機の内部構造を簡易的に示した図であり、基板の搬送方向である機体幅方向から示したものである。このスクリーン印刷機1は、基板に対してクリームはんだを印刷するものであり、例えば印刷状態を検査するはんだ検査機や基板に電子部品の装着を行う部品装着機などと共に回路基板生産ラインを構成するものである。従って、回路基板生産ラインを構成する各機械に対して基板が順番に搬送され、このスクリーン印刷機1では図面を貫く機体幅方向に基板10が送られる。
【0012】
スクリーン印刷機1は、図示する内部構造全体が機体カバーによって覆われている。その機体カバーには機体幅方向の両側面に搬送口が形成され、基板の搬入および搬出が行われるようになっている。なお、本実施形態では、スクリーン印刷機1の機体前後方向をY軸方向、機体幅方向をX軸方向、そして機体高さ方向をZ軸方向として説明する。
【0013】
スクリーン印刷機1は、機内に設置されたマスク20の下に基板10が搬送され、マスク20の上面側から印刷パターン孔をクリームはんだが通り、下側の基板10に塗布されて印刷パターンが形成される。そこで、スクリーン印刷機1の機内上部側には、機体幅方向に配置された一対のマスクホルダ3に、枠体を介してマスク20が保持される。マスクホルダ3の上方側にはスキージ装置4が設置され、機体前後方向に移動可能な状態で取り付けられている。一方、マスクホルダ3の下方側には、基板10を機体幅方向に搬入及び搬出させる基板搬送装置5、基板10を機体前後方向にクランプするためのクランプ装置6、そして基板10をクランプ位置へと上下させるバックアップ装置7などが昇降装置8に組み付けられている。
【0014】
その昇降装置8は、垂直なガイドレール11に沿って摺動する昇降台12を備え、その昇降台12がボールネジ機構13を介して昇降用モータ14に連結されている。昇降台12の上には、支持台15を介して基板搬送装置5やクランプ装置6などが搭載されている。支持台15には機体前後方向(Y軸方向)に一対のマスクサポート21が設けられ、それぞれ脚体上面にマスク20に接触するマスク支持プレート211が固定されている。図面右側のマスクサポート21にはボールネジ機構22が構成され、マスクサポート用モータ24(
図2参照)によって図面左側のマスクサポート21との距離の調整が可能となっている。
【0015】
次に、クランプ装置6は、基板10の搬送方向と直行する機体前後方向に一対のサイドフレーム25があり、支持台23上に組み付けられている。図面右側のサイドフレーム25にボールネジ機構26が構成され、基板クランプ用モータ29(
図2参照)によって図面左側のサイドフレーム25との距離の調整が可能となっている。一対のサイドフレーム25には、その上端部にクランプ部27が形成され、クランプ部27同士の距離が縮まることによって基板10が把持できるようになっている。そして、サイドフレーム25の内側には、コンベアベルト28からなる基板搬送装置5が組み付けられている。
【0016】
一対のサイドフレーム25の間には、基板10を支持するバックアップ装置7が設けられている。バックアップ装置7は、複数のバックアップピン32を備えたバックアップテーブル31がボールネジ機構を介して支持され、バックアップ用モータ34によって昇降するよう構成されている。クランプ装置6の支持台23は、ボールネジ機構を介して支持され、昇降用モータ33によって昇降するよう構成されている。クランプ装置6やバックアップ装置7を支持する支持台15は、昇降台12に対してX−Y平面上のX方向及びY方向とθ方向に位置調整が可能な構成となっている。つまり、作業位置に搬送されて保持された基板10に対してマスク20との間の位置調整を行う補正装置が構成されている。
【0017】
スキージ装置4は、走行台41に対して一対のスキージが昇降可能な状態で搭載されている。走行台41は、ガイドロッド42に対して摺動可能に組み付けられ、ガイドロッド42と平行なネジ軸43からなるボールネジ機構を介して、スキージ用モータ44(
図2参照)の駆動により機体前後方向の直線移動が可能となっている。本実施形態では、その走行台41に対して3台のレーザ変位計45が搭載されている。スキージ装置4は、マスク20の幅に応じて機体幅方向(図面を貫く方向)に長いため、3台のレーザ変位計45は、走行台41の幅方向に間隔を空けて取り付けられている。このレーザ変位計45は、後述するように基板10やマスク20などの上面高さを計測するためのものである。
【0018】
スクリーン印刷機1には、全体の駆動を制御する制御装置9が搭載され、各装置の駆動部に対して駆動制御が行われるようになっている。
図2は、スクリーン印刷機1の制御システムを簡易的に示したブロック図である。制御装置9は、マイクロプロセッサ(CPU)51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54がバスラインを介して接続されている。CPU51は、制御装置全体を統括制御するものであり、ROM52には、CPU51が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM53には、一時的な計算データや表示データ等が格納される。
【0019】
スクリーン印刷機1の機体前面部にはタッチパネル型の操作表示装置58が取り付けられ、作業者によるデータ入力や作業内容および数値の表示などが可能になっている。制御装置9にはI/Oポート55を介してその操作表示装置58が接続されている。I/Oポート55にはその他にも各種モータがドライバを介して接続されている。図示した各種モータにはサーボモータが使用され、内部に組み込まれたエンコーダから自身の回転量に関する情報(信号)が制御装置9に対して送信可能となっている。更に、I/Oポート55にはレーザ変位計45が接続され、その計測情報が制御装置9に送信されるようになっている。
【0020】
そして、制御装置9の不揮発性メモリ54には、CPU51が行う処理に必要な情報が記憶され、次に説明するスクリーン印刷機1の印刷制御プログラムが格納され、その実行により基板10に対する印刷処理が行われるようになっている。また、本実施形態には、マスク20に対する印刷時の基板10の突き上げ量を決定するための参考値を算出する計測プログラムや、その参考値を正確に算出するための誤差算出プログラムなども不揮発性メモリ54に格納されている。
【0021】
続いて、スクリーン印刷機1の作用について説明する。スクリーン印刷機1では、コンベアベルト28によってサイドフレーム25の間に基板10が搬送される。そして、バックアップ用モータ34の駆動によりバックアップテーブル31が上昇し、バックアップピン32によって基板10がコンベアベルト28から持ち上げられる。更に、その基板10は、基板クランプ用モータ29の駆動によりサイドフレーム25が移動し、一対のクランプ部27によって挟み込まれて保持される。
【0022】
次に、昇降用モータ33の駆動により、基板10を保持したクランプ装置6が上昇し、マスク支持プレート211の高さにクランプ部27と基板10とが合わせられ、各々の上面が揃えられる。マスクホルダ3とクランプ装置6との間には、XY平面上を移動可能なカメラ46が設けられている。そこで、カメラ46によって基板10に付されたマークが撮像され、基板10とマスク20に関してX,Y,θ方向の相対的位置の位置ズレ量が算出され、支持台15に構成されている補正装置によって位置ズレ補正が行われる。
【0023】
続いて、昇降用モータ14の駆動により昇降台12が上昇し、基板10が基板移動高さにまで突き上げられ、マスク20に対して基板10が位置決めされる。そして、スキージ装置4によってマスク20が基板10に押し付けられ、ローリングされたクリームはんだがマスク20の印刷パターン孔へと押し込まれる。その後、昇降用モータ33の駆動により基板10を所定速度で下降させる版離れが行われ、印刷パターンに従ってクリームはんだが基板10に印刷される。
【0024】
スクリーン印刷機1では、以上のような各装置の駆動により、基板10に対して印刷が行われる。その印刷品質を低下させる要因の一つして、基板10とマスク20との密着度が版離れ制御に適合しなくなることがある。そして、その密着度を狂わせる原因として、マスク20と一体のメッシュや接着剤からなるマスク下側層の厚みの変化がある。マスク下側層は、印刷時にマスク20と基板10の隙間となり、その隙間量が参考値となり
図3に示す基板移動高さMつまり基板の突き上げ量が決定されているからである。そこで、本実施形態では、制御装置9に記憶された計測プログラムの実行によりマスク下側層の厚さが算出され、その参考値によって基板の突き上げ量の再設定が可能になっている、
図3は、マスク下側層の厚さを算出するためのイメージ図である。
【0025】
マスク20は、アルミニウム合金製の四角い枠体47に対し、枠内に張り出すようにしてポリエステル製のメッシュ48が張られ、そのメッシュ48に対して下面外周部が接着剤を用いて貼り付けられている。従って、マスク20は、テンションンのかかったメッシュ48によって外側に引っ張られるようにして枠体47の内側に保持されており、下面側にはメッシュ48や接着剤による極めて薄いマスク下側層が形成されている。計測プログラムでは、このメッシュ48などからなるマスク下側層の厚さが算出される。
【0026】
マスク下側層の厚さの算出は、操作表示装置58のスタートボタンのON操作により実行される。そこでは先ず、
図3に示すように、マスク20から下に離れた位置であって、レーザ変位計45によって計測が可能な計測高さH1に、昇降用モータ14,33やバックアップ用モータ34の駆動によって基板10が位置決めされる。基板10がマスク20の下層部分に接する印刷高さ(理論上のマスク20下面高さ)を印刷基準高さH0とした場合に、計測高さH1は、その印刷基準高さH0から任意の離間距離Aだけ基板10を下降させた高さである。そして、基板10の位置決め後は、レーザ変位計45によって基板10及びマスク20に対する高さ計測が行われる。
【0027】
その高さ計測では、スキージ装置4の走行台41が駆動することにより、3台のレーザ変位計45がY軸方向(
図1参照)に移動し、マスク20の上を矢印で示す方向にレーザ光が連続して照射される。そして、印刷パターン孔201を通った基板10上面までの基板上面距離L1と、その直近のマスク20上面までのマスク上面距離L2とが一組の計測データとして、それぞれが複数個所で取得される。本実施形態では、3台のレーザ変位計45のそれぞれの走査線65上の3個所で計測された合計9個所の計測データが取得される。
【0028】
次に、計測値である計測距離L1,L2、設定値である離間距離A、そして操作表示装置58から入力されたマスク20の厚さC(設計値)によって、メッシュ48などからなるマスク下側層の層さXが算出される。すなわち、基板上面距離L1により基板10の上面高さが算出され、マスク上面距離L2によってマスク20の上面高さが算出される。その基板10の上面までの計測距離L1とマスク20の上面までの計測距離L2の値の差から上面間隔Bが算出される。そして、計算式(上面間隔B−離間距離A−マスク厚C)からマスク下側層の厚さXが求められる。
【0029】
それぞれの具体的な数値は、例えば、上面間隔B(210μm)−離間距離A(100μm)−マスク厚C(μm)=マスク下側層の厚さX(10μm)である。そして、求められたマスク下側層の厚さXの値は、参考値として操作表示装置58に表示される。このマスク下側層の厚さXは、印刷時のマスク20と基板10の隙間量である。そこで、作業者は、この参考値を基に、印刷時のマスク20と基板10との密着度が最適化するように、基板10の突き上げ量、つまり基板10を上昇させる昇降用モータ14の駆動制御値(基板移動高さM)を決定し、再設定処理を実行する。
【0030】
ところで、マスク20は、テンションンのかかったメッシュ48によって引っ張られているため、マスク洗浄によりメッシュ48が薄くなると、マスク20に撓みが生じてしまう。また、基板10に関しても、両面実装基板の場合にはリフローによって反りが生じてしまう。そのため、複数個所で得られる計測値にばらつきが生じる。そこで、本実施形態の計測プログラムでは、マスク20の撓みなどが生じた中で、作業者が最適な密着度に対する決定が行えるように、複数の参考値が算出されるようになっている。すなわち、複数の参考値は、複数パターンのマスク下側層の厚さXとして操作表示装置58に表示されるようになっている。
【0031】
そのため、先ず前述したように、マスク20と基板10は、レーザ変位計45によって基板上面距離L1とマスク上面距離L2が複数個所で計測され、各々の個所の上面高さが求められる。その複数の計測値からは、基板上面距離L1およびマスク上面距離L2について、それぞれの最大値(L1max,L2max)、最小値(L1min,L2min)および平均値(L1ave,L2ave)の各種計測値が求められる。そして、各種計測値の組み合わせによって、前記計算式からマスク下側層の厚さXが算出される。
【0032】
例えば、基板上面距離L1およびマスク上面距離L2の最大値同士、最小値同士または平均値同士のように同種の計測値で算出されるほか、基板上面距離L1の最大値(L1max)とマスク上面距離L2の平均値(L2ave)など、異なる計測値の組み合わせによるマスク下側層厚さXの算出が行われる。そして、算出された各マスク下側層の厚さXが操作表示装置58に表示される。よって、入力操作により印刷高さの値が新たに再設定されるが、その際、作業者は、各パターンのマスク下側層の厚さXから選択した値に応じて最適な印刷高さを決定することができる。
【0033】
続いて、マスク下側層の厚さの算出処理により正しい値を得るには、
図3に示す計測時の基板10の上面高さが計測高さH1に一致していなければならない。しかし、基板10における製造誤差によって、基板10の上面高さがH1とずれてしまうことがある。そのため、その製造誤差を吸収する高さ調整処理が必要であり、本実施形態では、制御装置9に記憶された誤差算出プログラムの実行により基板10の製造誤差が算出され、その値に基づいて制御値の再設定が行われる。
図4及び
図5は、基板の製造誤差算出処理を実行する際のクランプ装置6を示した図である。
【0034】
基板の製造誤差算出処理は、スクリーン印刷機1からマスク20が取り外された後、操作表示装置58のスタートボタンのON操作により実行される。先ず、昇降用モータ14,33やバックアップ用モータ34の駆動により、クランプ装置6がレーザ変位計45によって上面の計測が可能な高さにまで上昇した位置決めが行われる。その際、バックアップ用モータ34は、
図4に示すように、バックアップピン32の先端面をクランプ部27の上面と一致させる駆動制御が行われる。制御装置9には、そのメモリに同条件を実行するための基準移動高さNのデータが記憶されている。
【0035】
そこで、レーザ変位計45によってクランプ部27上面までのクランプ部上面距離L11と、バックアップピン32先端面までのピン先端面距離L12とが計測され、その上面高さと先端面高さが求められる。そして、クランプ部上面距離L11からピン先端面距離L12を引いた値によって誤差が算出され、バックアップピン32の上昇位置の調整が行われる。すなわち、クランプ部27上面に対するバックアップピン32先端面の高低差をゼロにするように10の基準移動高さNの自動補正が行われ、バックアップ用モータ34から出力される回転角の調整が行われる。
【0036】
次に、基板搬送装置5によりクランプ装置6に基板10が搬送され、
図5に示すように、バックアップピン32に持ち上げられた基板10がクランプ部27によってクランプされる。基板10の厚さ設計値Kは操作表示装置58から入力されているため、基準移動高さNから基板10の厚さ設計値Kを差し引いた基板保持移動高さSまで、バックアップピン32に対する上昇駆動制御が行われる。なお、基板10はロット単位で厚さ設計値が一定となるため、例えば基板の製造誤差算出処理は基板10のロット変更時に行われる。
【0037】
次に、レーザ変位計45によってクランプ部27の上面までのクランプ部上面距離L11と、クランプ部27にクランプされた基板10の上面までの基板上面距離L13が計測され、それぞれの上面高さが求められる。そして、クランプ部上面距離L11から基板上面距離L13を引いた値によって基板10製造誤差が算出され、その誤差の値(或は実際の基板厚さ)が操作表示装置58に基板10の数値として表示される。そこで、クランプ部27上面と基板10上面との高低差をゼロにするように、基板10厚さ設計値Kが操作表示装置58で再入力される。これにより基板保持移動高さSが補正され、基板10を保持する際のバックアップ用モータ34から出力される回転角の調整が行われ、前述したマスク下側層の厚さの出処理では、基板10の上面高さが計測高さH1に一致して正しい値が得られることとなる。
【0038】
よって、本実施形態によれば、マスク下側層の厚さXが算出され、その値が操作表示装置58に表示されるため、作業者は印刷時の基板10の基板移動高さMを数値から決定することができ、メッシュ48の厚さが変化したとしても、印刷時のマスク20と基板10との密着度を最適化することができる。特に、レーザ変位計45を使用した計測によってマスク下側層の厚さXが算出されるため、メッシュ48の厚さの変化をその都度正確に把握することができる。そして、作業者の経験などに関係なく適切なマスク20と基板10との密着度を得ることができる。また、基板10の製造誤差を求めて正確な計測ができるようにしたので、作業者による印刷時の基板10の基板移動高さMの決定が、マスク20と基板10との密着度に対してより信頼度の高いものになる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、複数個所の計測距離L1,L2からマスク20の撓みや基板10の反り10の状況を表示するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、マスク下側層の厚さXが操作表示装置58に表示されることにより、それを参考値として作業者が印刷時の基板10の基板移動高さMが設定する場合を説明したが、例えば、参考値に基づきで基板移動高さMが自動で補正されるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、3台のレーザ変位計45から合計9個所の計測データが取得されるが、例えば計測箇所を4箇所にして合計12個の計測データとしたり、あるいはそれ以上であってもよい。