(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892550
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】ピストンシールシステム
(51)【国際特許分類】
F02F 3/00 20060101AFI20210614BHJP
F02F 3/28 20060101ALI20210614BHJP
F16J 1/08 20060101ALI20210614BHJP
F16J 15/56 20060101ALI20210614BHJP
F16J 15/44 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
F02F3/00 D
F02F3/28 Z
F16J1/08
F16J15/56
F16J15/44 Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-502527(P2020-502527)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公表番号】特表2020-527671(P2020-527671A)
(43)【公表日】2020年9月10日
(86)【国際出願番号】US2018025471
(87)【国際公開番号】WO2018183895
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年11月21日
(31)【優先権主張番号】62/479,013
(32)【優先日】2017年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/501,295
(32)【優先日】2017年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/491,629
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/937,293
(32)【優先日】2018年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/938,130
(32)【優先日】2018年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/936,713
(32)【優先日】2018年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/934,625
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/903,636
(32)【優先日】2018年2月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/934,742
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/941,397
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/938,427
(32)【優先日】2018年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519350177
【氏名又は名称】クエスト エンジンズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ダルマス・エラリオ・ディノ
(72)【発明者】
【氏名】ブロム・ロイ・エー
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05222879(US,A)
【文献】
特開2005−113865(JP,A)
【文献】
米国特許第01016561(US,A)
【文献】
特開2008−014404(JP,A)
【文献】
特開2002−317695(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0184878(US,A1)
【文献】
特開2016−211415(JP,A)
【文献】
特開2015−094318(JP,A)
【文献】
特開2006−161563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00− 3/28
F04B 39/00−39/16
F16J 1/00− 1/24
F16J 7/00−10/04
F16J 15/40−15/453
F16J 15/54−15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構造表面と、
第1の端部、第2の端部、および該第1の端部と該第2の端部との間に延びるブロッキング要素表面を有するブロッキング要素と、
該第1の構造表面に、または該ブロッキング要素表面に、または該第1の構造表面と該ブロッキング要素表面に、ポケットフィールドを形成するために複数の列に配列され、複数の横方向に離間したポケットと、
前記第1の構造表面または前記ブロッキング要素表面にある前記ポケットフィールドに形成され、前記第1の構造表面または前記ブロッキング要素の周囲に延びる連続閉ループ構造である等化溝と、
該ブロッキング要素の第2の端部の作動流体圧力に対して高い圧力で、該ブロッキング要素の第1の端部に提供される作動流体と、を有し、
該第1の構造表面は、該ブロッキング要素表面から実質的に均一な距離をあけて、近接して配置され、
該ポケットフィールドとの作動流体の相互作用からシール均等物が生成される、シーリングシステム。
【請求項2】
前記複数の横方向に離間したポケットは異なるサイズおよび形状を有する、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項3】
前記複数の横方向に離間したポケットは、ポケットの複数の行およびポケットの複数の列を有するパターンで配置される、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項4】
前記複数の横方向に間隔を空けたポケットはそれぞれ、前記ポケットと前記第1の構造表面または前記ブロッキング要素表面との接合部に形成された縁部を持つポケット口を有する、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項5】
前記第1の構造表面がシリンダ壁によって提供され、前記ブロッキング要素表面がピストンのスカートによって提供される、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項6】
前記シリンダ壁は内燃機関のシリンダに設けられ、前記ピストンは内燃機関ピストンである、請求項5に記載のシーリングシステム。
【請求項7】
前記複数の横方向に離間したポケットはそれぞれ、前記ポケットと前記第1の構造表面または前記ブロッキング要素表面との接合部に形成された円形ポケット口を有する、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項8】
前記複数の横方向に離間したポケットはそれぞれ、前記ポケットと前記第1の構造表面または前記ブロッキング要素表面との接合部に形成された長方形のポケット口を有する、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項9】
前記複数の横方向に離間したポケットのうちの1つ以上が、収束部分と発散部分とを有する、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項10】
ブロッキング要素の第1の端部とブロッキング要素の第2の端部との間のブロッキング要素表面に対して第1の構造面をシールする方法であって、
第1の構造表面はブロッキング要素に近接し、実質的に均一な距離で配置され、
該第1の構造表面に、または該ブロッキング要素表面に、または該第1の構造表面と該ブロッキング要素表面に、ポケットフィールドを形成するために複数の列に配列され、複数の横方向に離間したポケットを提供するステップと、
前記第1の構造表面または前記ブロッキング要素表面にある前記ポケットフィールドに、前記第1の構造表面または前記ブロッキング要素の周囲に延びる連続閉ループ構造である等化溝を形成するステップと、
前記ブロッキング要素の第1の端部に作動流体を提供するステップと、
前記第1の構造表面に対して前記ブロッキング要素表面を移動させて、該ポケットフィールドによって誘導される作動流体の乱流によりシール均等物を生成するステップと、
を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月4日に出願された米国仮特許出願第62/501,295号、
2017年3月30日に出願された米国仮特許出願第62/479,013号、
2017年4月28日に出願された米国仮特許出願第62/491,629号、
2018年2月23日に出願された米国特許出願第15/903,636号、
2018年3月23日に出願された米国特許出願第15/934,625号、
2018年3月23日に出願された米国特許出願第15/934,742号、
2018年3月27日に出願された米国特許出願第15/936,713号、
2018年3月27日に出願された米国特許出願第15/937,293号、
2018年3月28日に出願された米国特許出願第15/938,130号、
2018年3月28日に出願された米国特許出願第15/938,427号、
および2018年3月30日に出願された米国特許出願第15/941,397号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的には、往復ピストンなどのブロッキング要素と、ピストンシリンダの壁などのブロッキング要素に隣接する表面との間にシール(封止)を形成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃エンジン、ポンプなどの往復ピストンおよびシリンダの配置では、通常、ピストンの両端間に圧力差が存在するように、ピストンとシリンダの間にシールが必要である。この圧力差により、ピストンは、ポンプや内燃エンジンを含む多くのものに役立つ流体ポンプ動作を提供できる。十分に密閉されたピストンとシリンダの配置は、たとえば、2、4、またはマルチサイクル内燃エンジン、フリーピストンエンジン、カロリーエンジン、ターボチャージャー、スーパーチャージャー、コンプレッサー、ポンプ、および真空で使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書における「シリンダ」への言及は、シリンダ形状または円形断面を有するチャンバに限定されないことを理解されたい。代わりに、シリンダという用語は、ピストンがシリンダの側壁に対してシールできるように適合されているが、同時にピストンがシリンダ内においてポンピング運動で往復して前後にスライドすることを可能にするように適合された外形を有するピストンを受け入れる任意のチャンバまたはキャビティを指す。
【0005】
エンジンシリンダは、1つ以上の吸気ポートと1つ以上の排気ポートを含み、これらは集合的に、それぞれエンジンシリンダにガスを出し入れすることができる。ポペットバルブなどのエンジンバルブを使用して、吸気ポートと排気ポートを選択的に開閉することができる。エンジンピストンのポンピング動作と燃料の導入に関連して、吸気バルブと排気バルブを選択的なタイミングで開閉することにより、燃焼と燃焼後のシリンダから使用済みチャージ排気ガスの除去のためにエンジンシリンダに空気/燃料チャージを供給することができる。
【0006】
たとえば、オットーサイクルまたはディーゼルサイクルの運転に使用される既存の内燃機関のピストンは、通常、ほぼ円筒形を有している。より具体的には、典型的なオットーまたはディーゼルサイクルエンジンのピストンは、1つまたは複数のシールピストンリングを受け入れる円周凹部を含む円形断面を備えたほぼ滑らかな円筒形のスカートを有してよい。ピストンおよびピストンリングアセンブリは、シリンダ内で上死点と下死点の間を往復スライドすることができる。ピストンリングとシリンダ壁の境界面は、たとえばエンジンオイルで潤滑される。
【0007】
内燃エンジンは、ほぼ例外なく、往復運動で前後に移動するピストンとシリンダとの間の界面を潤滑するために、エンジンオイルなどの液体潤滑剤を必要とする。潤滑システムは通常ミッションクリティカルであり、潤滑システムの故障は壊滅的なものとなる。ピストン潤滑剤の必要性には多くの欠点が伴う。潤滑剤は摩耗し、時間が経つと汚染されるため、交換が必要であり、エンジンの運転に費用と不便が増える。多くの潤滑剤は、エンジンピストンなどの可動部品に潤滑剤を再塗布するためにポンプと通路を必要とする。ポンプと通路、およびアクティブ潤滑システムの他の要素は、正しく動作する必要があり、相互接続された要素間にシールが必要である。潤滑システムの漏れは、シールが経時的に劣化するにつれて自然に発生し、ポンプが漏れて摩耗するため、さらにメンテナンス費用がかかり、エンジン操作に不便が増す。漏れはまた、潤滑剤が燃焼室に入り、燃焼を妨げ、インジェクターとスパークまたはグロープラグを汚す可能性がある。燃焼室の潤滑剤は、不要な排気ガスを発生させる可能性もある。漏れは、潤滑油が燃焼副産物で汚染されることもある。前述の問題はすべて、潤滑ピストンの使用に付随しており、すべてが故障モードと保守コストを増やす。したがって、ピストン潤滑にあまり依存しないか、まったく依存しない内燃機関が必要である。
【0008】
本発明の実施形態は、内燃機関での使用に限定されないが、ピストンスカートの外面の周りに配置された、垂直に間隔を空けた1つ以上の密閉ピストンリングを使用してピストンがシリンダに対して密閉されるピストンおよびシリンダ配置を日常的に使用するため、そのようなエンジンは本発明から利益を得ることができる。内燃エンジンとポンプ以外の多くのデバイスには、それらの間にシールを形成する必要がある可動要素が含まれることがある。本発明の実施形態は、これらの用途にも使用することができる。
[発明の目的]
【0009】
したがって、本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的は、ブロッキング要素と隣接表面との間に非接触または半非接触のシーリングシステムおよび方法を提供することにある。
【0010】
したがって、本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的は、ピストン(ピストンリングの有無にかかわらず)と周囲のシリンダとの間の非接触または半非接触のシーリングシステムおよび方法を提供することである。
【0011】
本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的はまた、ピストンリングの使用を低減または排除することにより、ピストンリングと周囲のシリンダとの間の接触から生じる摩擦損失を低減するシーリングシステムおよび方法を提供することにある。
【0012】
本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的はまた、潤滑剤の使用を必要としない、または潤滑剤の交換をより少なくするシーリングシステムおよび方法を提供することにある。
【0013】
本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的はまた、システム内のコンポーネントの摩耗を少なくし、それによりメンテナンス要件を減らし、システムの信頼性を高める、摩耗の少ないシーリングシステムおよびシーリング方法を提供することにある。
【0014】
本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的はまた、システムのコストおよび交換部品在庫要件を削減するために、封止に必要な部品の数を削減することにある。
【0015】
本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的はまた、ピストン表面とシリンダ表面との間の熱伝達を改善し、それにより冷却システムの複雑さを軽減し、システム効率を高めることにある。
【0016】
本発明の、必ずしもすべてとは限らないが幾つかの実施形態の目的はまた、シリンダ内の往復ピストンなどの移動部材の復元的自己修正センタリング動作を提供することにある。
【0017】
必ずしもすべてとは限らないが本発明のいくつかの実施形態のこれらおよび他の利点は、内燃機関の技術分野の当業者には明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の課題に応えて、出願人は革新的なシーリングシステムを開発した。このシーリングシステムは、第1の構造表面と、第1の端部、第2の端部、および該第1の端部と該第2の端部との間に延びるブロッキング要素表面を有するブロッキング要素と、該第1の構造表面にあって延伸せず、または該ブロッキング要素表面にあって延伸せず、または該第1の構造表面と該ブロッキング要素表面にあって延伸しないように、ポケットフィールドを形成するために複数の列に配列され、複数の横方向に離間したポケットと、該ブロッキング要素の第2の端部の作動流体圧力に対して高い圧力で、該ブロッキング要素の第1の端部に提供される作動流体と、を有し、該第1の構造表面は、該ブロッキング要素表面から実質的に均一な距離をあけて、近接して配置され、該ポケットフィールドとの作動流体の相互作用からシール均等物が生成される。
【0019】
出願人はさらに、革新的なシーリングシステムを開発した。このシーリングシステムは、第1の構造表面と、第1の端部、第2の端部、および該第1の端部と該第2の端部との間に延びるブロッキング要素表面を有するブロッキング要素と、該第1の構造表面上にあって延伸せず、または該ブロッキング要素表面にあって延伸せず、または該第1の構造表面と該ブロッキング要素表面にあって延伸しないように、ポケットフィールドとして配置された、複数の離間したポケットと、を有し、該第1の構造表面は、該ブロッキング要素表面から実質的に均一な距離をあけて、近接して配置される。
【0020】
出願人はさらに、革新的な内燃機関を開発した。この内燃機関は、シリンダ壁を有するエンジンシリンダと、該エンジンシリンダ内に配置され、スカートとヘッドを有するピストンと、該ピストンスカート上にあって延伸せず、または該ピストンシリンダにあって延伸せず、またはピストンスカートとエンジンシリンダの両方にあって延伸していない、ポケットフィールドとして配置された複数の離間したポケットと、を有する。
【0021】
出願人はさらに、ブロッキング要素の第1の端部とブロッキング要素の第2の端部との間のブロッキング要素表面に対して第1の構造面をシールする革新的な方法を開発した。この方法は、第1の構造表面はブロッキング要素に近接し、実質的に均一な距離で配置され、該第1の構造表面にあって延伸せず、または該ブロッキング要素表面にあって延伸せず、または該第1の構造表面と該ブロッキング要素表面にあって延伸しない、ポケットフィールドを形成するために複数の列に配列され、複数の横方向に離間したポケットを提供するステップと、前記ブロッキング要素の第1の端部に作動流体を提供するステップと、前記第1の構造表面に対して前記ブロッキング要素表面を移動させて、該ポケットフィールドによって誘導される作動流体の乱流によりシール均等物を生成するステップと、を有する。
【0022】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも例示および説明のみであり、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の理解を助けるために、添付の図面を参照するが、図面では、同様の参照文字は同様の要素を指す。図面は例示にすぎず、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【
図1】内燃機関シリンダの端部部分断面図およびその中に配置されたピストンの側面図であり、ピストンは、案内されていない連接棒に取り付けられ、本発明の第1の実施形態に従って、形成された外側密封構造を含む。
【
図2】内燃機関シリンダの端部部分断面図およびその中に配置されたピストンの側面図であり、ピストンは、案内された接続ロッドに取り付けられ、本発明の第2の実施形態に従って形成された外側シール構造を含む。
【
図3】切断線3―3を通して見た、
図1のピストンおよびシリンダの断面図であり、ピストンは、本発明の第1の実施形態に従って形成された外側密封構造を含む。
【
図4】
図2の切断線4―4によって画定されるピストン壁の一部の等角拡大図であり、ピストン壁部分は、本発明の第1および第2の実施形態に従って形成された外側密封構造を含む。
【
図5】本発明の第3の実施形態に従って形成されたピストンの長方形の変形の等角図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態に従って形成されたピストンの長方形の変形の等角図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態に従って形成された外側シール構造を含む回転エンジンシリンダおよびローターの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の幾つかの実施形態を、添付の図面に示しながら、詳細に述べる。
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態において、協働的に成形されたピストン36および周囲のシリンダ38が示されている。シリンダ38は、上端壁を有する燃焼室21を有していて、この実施形態では、上端壁はわずかに丸みを帯びているかまたはドーム状であり、連続した側壁を有している。1つ以上のスパークプラグまたはグロープラグ、吸気バルブおよび排気バルブ、および関連するポートは、燃焼室21と連通してよい。エンジンクランクケースは、エンジンシリンダ38の下に配置されてよい。
【0025】
ピストン36は、上端50またはヘッド、上端から遠位の下端51、およびピストンヘッドとピストンの下端との間に延びる側壁またはスカート35を含むことができる。ピストン36は、ガイドされていないコネクタロッド42に取り付けることができ、このロッド42は、クランクケース内のクランクシャフト44に接続されるクランク46に接続することができる。
【0026】
ピストンスカート35は、シリンダ38内でピストンヘッド50を見下ろすように上から見たときに、円形断面を有することができる。ピストンヘッド50は、燃焼室21の上端壁と協働してドーム状になっていてよい。シリンダ38を見下ろすように上から見たときに、シリンダも円形の形状を有することができる。代替実施形態において上から見たとき、シリンダ38、ピストンスカート35、およびピストンヘッド50は、長方形などの非円形の断面形状を有してもよいことが理解される。
【0027】
ピストン36は、ピストンスカート35が燃焼室21の側壁と密接に位置合わせされるが、均一に間隔をあけて平行になるように、シリンダ38の燃焼室21内に配置されてよい。燃焼室21の上端壁および側壁は、ピストンヘッド50とともに、作動流体を受けることができる作動空間または圧縮領域24を形成することができる。ピストン36は、燃焼室21内で、上端壁に向かって、および上端壁から往復して摺動するように構成されてよい。
【0028】
図1および
図3に示されるように、ピストンスカート35の外面または面は、ポケットのフィールド(field:領域)25を集合的に形成するランド23によって分散された複数の凹部またはポケット22を有することができる。出願人は、ピストンスカート35上に形成されたポケット22が、ピストンスカート内に形成されたものと同じものを意味すると見なしている。両方の場合において、ポケット22は、ポケットを囲むピストンスカート35の最も外側の表面から内側に延びている。必ずしもではないが、好ましくは、ポケット22は、口(mouth)での形状、基部での形状、高さ、幅、直径、深さ、および/または体積に関して、同様の形状および寸法であるのがよい。好ましくは、ピストンスカート35は中空壁構造であり(すなわち、対向する外側点の間が固体ではない)、ポケット22はピストンスカートに形成されるが、ピストンスカートを通ってピストン36の中空内部まで延びていない。フィールド25内のポケット22は、少なくとも1つの円周方向の列、またはより好ましくは、2つ以上の間隔を空けた縦行およびポケットの列からなるグリッドまたはアレイパターンで配置されてよい。図面に示されているフィールド25のランドおよびポケットの数、形状、サイズ、および配置は、議論および例示を容易にするために選択されたものであり、限定とはみなされない。
【0029】
ポケット22のフィールド25は、平面上で2次元(xおよびy)に延びても、空間内で湾曲した物体(例えば、円形断面を有するピストン35)の表面上で2次元に延びてもよい。ポケット22のそれぞれは、隣接する行および/または列のポケットと整列し、行および/または列に配置されたポケットと整列し、1つ以上の介在する行および/または列を離し、または互いに整列しなくてもよい。好ましくは、ポケット22のフィールド25は、x方向に互いに離間した2つ以上のポケットと、y方向に互いに離間した2つ以上のポケットとを含む。さらに、好ましくは、口のポケット22のそれぞれの寸法またはサイズは、xまたはy方向のいずれかで測定したときに、それが配置される表面の寸法(すなわち、フィールド25の寸法)よりも著しく小さい。さらに、好ましくは、口のポケット22のそれぞれの寸法またはサイズは、xおよびy方向の両方で測定したときに、ポケットが配置される表面の寸法よりも著しく小さい。著しく小さいということは、口での各ポケットの寸法またはサイズが、xおよびまたはy方向で測定されたときに、配置される表面の寸法の半分未満、より好ましくは4分の1未満であることを意味する。さらに、ランド23が占めるフィールド25の総表面積(例えば、ピストンスカート35の表面積)は、フィールドのポケット22の口に起因する総表面積を超えることが好ましい。
【0030】
図3を参照するに、シールまたはシール均等物は、ピストンスカートの表面におけるピストン22の適切なシーリングシステムフィールド25に配置されたポケット22およびランド23の存在により、ピストンスカート35の広がりにわたって上から下まで生成され得る。シールまたはその均等物は、ピストンヘッド50とピストン下端51との間の作動流体の圧力差の結果として生成され得る。ピストン36がチャンバ21内で上方に移動すると、作動空間24内の作動流体26の圧力および温度が上昇し、ピストン36のヘッド50とピストン下端51との間に作動流体圧力差を生じさせる。この圧力差は、ピストンスカート35の側壁と燃焼室21の側壁との間の空間を流れる、すなわちシールギャップ内でピストン36の下端51に向かって流れる、作動流体をひき起こす。シールギャップを通る作動流体26の流れは、各ポケット22で局所的なベンチュリ効果を誘発し、作動流体26の速度を増加させ、圧力を減少させる。作動流体26の速度および圧力変化は、ポケット22の幾何学的形状および配置の関数と同様に、ピストンスカート35の側壁と燃焼室21の側壁との間の実際の小さなクリアランス距離の関数であり得る。
【0031】
引き続き
図3を参照すると、ポケット22は、ポケット口とピストンスカート35の面との接合部、すなわちランド23との接合部に比較的鋭い縁部を有することが好ましい。作動流体26がポケット22の鋭い縁を越えて流れると、乱流により局所圧力の低下が生じることがある。その結果、作動流体26が膨張し、圧力の瞬間的な低下と局所的な乱流の増加が生じる可能性がある。さらに、連続する各ポケット22の上および中に流れる作動流体26は、各ポケット22が共振器(例えばヘルムホルツ様共振器)として機能するサイクルを開始してよく、それによりさらに局所的な乱流をひき起こす定義可能な周波数で、作動流体がポケット22に引き込まれ、排出される。
【0032】
結果として生じる乱流は、システム内の作動流体26の物理的特性と、フィールド25内の個々のポケット22の直径(または高さと幅)、内部形状、関係のある位置、および深さの関数であり得る。結果として生じる乱流は、各ランド23上の空間容積と各ポケット22内およびその上の空間容積との比による実際の小さなクリアランス距離またはシールギャップの関数でもあり得る。この局所的な乱流は、流れる作動流体26と相互作用し、作動流体26のさらなる流れを妨げる渦運動を発生させる可能性がある。作動流体の流量の減少は、共鳴効果を瞬間的に減少させ、続いて局所的な乱流を瞬間的に減少させ、次いで作動流体26の流量比を瞬間的に再び増加させる。
【0033】
ピストン36が上向きのストロークにあるとき、最上列(ピストン36の上端に最も近い)のポケット22を通過した作動流体26は、次にポケットフィールド25の隣接する列のポケットに遭遇する可能性がある。ここで、記載の乱流現象は繰り返されるが、開始圧力はより低くなる。
このプロセスは、作動流体26がシールシステムのポケットフィールド25の連続する列を通過する際に、シールギャップ内の局所圧力が十分に減少するまで(必ずしもそうである必要はないが好ましくはピストン36の下のシリンダ38に含まれる作動流体の圧力レベルになるまで)、連続的かつ相対的に減少する開始圧力をもって、繰り返される。ポケット22からフィールド25のポケットへの圧力低下の繰り返しサイクルは、許容できる(好ましくはないが)作動流体26のみが局所圧力の点を過ぎて流れるので、シールまたはシールの均等物を生成することができる。ここで、シールギャップの局所圧力は、ピストン36の下の空間の作動流体の圧力以下である。作動流体の漏れ量が、シール均等物が使用されるエンジンの動作を許可する場合、ピストンスカート35の面全体にわたる圧力が十分に低下することから生じる許容レベルの漏れを伴う「シール等価物」が結果的に生じる、ことが理解される。
【0034】
連続する各ポケット22での局所的な乱流は、ポケットの共鳴作用により許容される緩やかな漏れにより、時間とともに減少することがある。したがって、局所的な乱流は、チャンバ21の側壁に対するピストン36の運動速度の関数であってもよい。これは、この運動がチャンバ内のピストン36の周りの圧力変化の原因となる可能性があるためである。シーリングシステムの有効性は、ポケット22の内外への一貫した流れを提供することによりシーリングシステムフィールド25へのエネルギの流れを提供するために変動する作動流体26圧力を必要とし、それによりシーリングシステムの有効性を維持する。
【0035】
シーリングシステムの漏れの割合は、シーリングシステムパターン25内の異なるランド23の間隔パターンとポケット22の形状を使用することにより修正することができる。ランド23の間隔は、ポケット22が先行(上部)ポケットへの逆流を引き起こすように選択され、前方(下部)ポケットはシーリングシステムフィールド25内で内部減衰自己補強振動を引き起こす作動流体26の流れを防止することができる。
【0036】
特定の用途に対するシーリングシステムパターン25の有効性は、個々のポケット22の設計パラメータに加えて、シーリングシステムフィールド25の外側寸法の関数であり得る。
図3を再び参照すると、ポケット22の一部または全部の形状を修正して、ポケットの内側基部に収束領域39を、ポケットの口に発散領域を含めることにより、シール効率を改善することができる。デラバルノズル効果は、収束領域39とより広い発散領域を使用するポケットに生成され、ポケットの底に共振空洞を形成する。これは局所的超音速の作動流体26運動のために、より大きな局所的乱流を引き起こす可能性がある。
【0037】
図1および
図3に示されるように、ピストン36は、ピストンを囲む圧力がピストンスカート35上の任意の垂直点で正規化する傾向により、シリンダ38内で自己中心になり得る。例えば、ピストン36とシリンダ38との間の実際の小さなクリアランス距離、すなわちシールギャップが中心軸の周りで瞬間的に等しくない場合、ピストンの反対側の表面領域に作用する圧力により総正規化力が生成され得る。この総正規化力は、中心軸の周りの減衰振動により、ピストン36をシリンダ38内の中心に配置するように促す。ピストンをシリンダの中心に戻すために正規化力に必要な時間は、1つ以上の等化溝40を追加することで短縮できる。等化溝40は、ランド23領域、ポケット22の間、またはランド領域とポケット間の両方、またはポケットに対向するチャンバ21の側壁に配置され、シーリングシステムを採用した表面により迅速に力をより均一に分散させることができる。
【0038】
本発明の別の実施形態が、
図2および
図4に示される。
図2を参照すると、ピストン36は、シリンダ38内に配置され、ポケット22のフィールド25とピストンヘッド46とを持ったピストンスカート35を含む。ポケット22のフィールド25は、等化溝なしで提供される。ピストン36は、クランク46、連結ロッド42、およびクロスヘッド34によってクランクシャフト44に接続されている。クロスヘッド34は、ピストン36を燃焼室21に対して中心位置に維持しながら、クロスヘッド34およびピストン36が垂直方向に動くことを可能にするクロスヘッドガイド33に摺動可能に収容される。ポケットフィールド25の切断部4―4は、
図4に詳細に示されており、ポケット22およびランド23は、ポケット口で比較的鋭い接合縁部を有する。
【0039】
ピストンスカート35は、本発明の代替実施形態では外周円形状を有していなくてもよく、形状の任意の角が丸い限り、卵形、長方形などの任意の形状で形成されてもよい。例えば、本発明の第3および第4の実施形態が
図5および
図6に示される。
図5および6では、ピストンの断面が円形ではない。
図5は、
図1の円形ピストン実施形態に類似した長方形ピストン37を示し、それは、ピストンヘッド50とピストン下端51との間のピストンスカート上に配置されたポケットおよび等化溝40のフィールド25を含んでいる。等化溝40は、ピストンスカート35の周囲に延びて、ピストンスカートを取り囲む作動流体の圧力がすべての点で同じになるように平衡化または均等化できる連続閉ループ構造を形成することができる。
図6は、
図2の円形ピストン実施形態に類似する長方形ピストン37を示し、それは、ピストンヘッド50とピストン下端51との間のピストンスカート上に配置されたポケットのフィールド25を含むが、等化溝を含まない。
【0040】
本発明の第5の実施形態が
図7に示されており、
図7は、ロータリーエンジンハウジングおよび内部ロータリーエンジン部品の部分断面図を示している。ロータリーエンジンハウジングは、互いに接続された(例えば、ヒンジで接続された)第1の回転可能な羽根64、第2の回転可能な羽根74、第3の回転可能な羽根84、および第4の回転可能な羽根92、ならびに馬蹄形過給機ボス100を収容することができる。羽根64、74、84、92、およびボス100のそれぞれは、ロータリーエンジンハウジングの平坦な側壁(除去された)に対して中心軸の周りを回転する外面に形成されたランド23によって分離されたポケット22のフィールド25を有することができる。羽根64、74、84、92、およびボス100は、ロータリーエンジンハウジングの平坦な側壁から間隔を空けて平行であり、それにより、シール等価物が各羽根の内側間に集合的に提供され、それは、燃焼室21、および羽根およびボスが回転するときに内側から遠位にある各羽根の外側を画定する。
【0041】
チャンバ壁のような表面を持つシール均等物を形成するように構成された、説明されたピストン、羽根、および他の構造(集合的に「ブロッキング要素」と呼ばれる)は、発電エンジンだけでなく、ポンプや、シールまたはシール均等物が必要なその他のデバイスに使用できることを理解されたい。
【0042】
また、代替実施形態では、ブロッキング要素の表面上または中に形成されるとして説明したポケット22のフィールド25および/または等化溝40は、それに代えて、ブロッキング要素に対向する表面上または中に形成してもよい。また、ブロッキング要素の表面上または中に形成されると説明したポケット22のフィールド25は、ブロッキング要素の表面上または中に形成されることに加えて、ブロッキング要素に対向する表面上または中に形成されてもよいことを理解されたい。
【0043】
また、前述の構造を使用して、圧縮性流体、気体、液体、懸濁液、プラズマ、およびボーズ・アインシュタイン凝縮体を含むが、これらに限定されない流体のシーリングシステムを提供できることを理解されたい。
【0044】
ポケット22は、口、底、および口と底との間に延びるポケット内壁に沿って、所望の減圧効果を生み出すのに有効な任意の形状を有し得ることも理解される。そのような形状は、例えば、丸みを帯びた、円形、長方形、正方形、台形、平行四辺形、菱形、楕円形、楕円形、三角形、および多角形であってもよい。等化溝40の断面は、所望の圧力平衡効果を生じる限り、前述の形状または他の形状のいずれかを有してもよい。また、ポケット22は、ポケット口から遠位の平らな、丸い、または輪郭のある底部を有してもよいことも理解される。平坦なポケット22の底部は、ポケットを囲むランド23が延びる平面に平行な平面内に延びていてもよい。あるいは、このような平坦なポケット底部は、周囲のランドが延びる平面に対して非平行な平面内で角度を付けて延びてもよい。
【0045】
また、いくつかの実施形態では、ポケット22は、ポケット口と周囲のランドとの接合部に、フィレット、面取り、または他の破損/非鋭利な縁部を有し得ることを理解されたい。
【0046】
当業者によって理解されるように、本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。上述の要素は、本発明を実施するための1つの技術の例示的な例として提供されている。当業者は、特許請求の範囲に記載されている本発明から逸脱することなく、他の多くの実施が可能であることを認識するであろう。例えば、本発明の意図する範囲から逸脱することなく、ポケットおよび/またはポケットのパターンは均一である必要はなく、および/またはランドは平坦である必要はない。さらに、ポケットのパターンは、ピストンスカートの代わりにおよび/またはピストンスカートに加えて、シリンダ壁に設けることができる。したがって、本発明の開示は、本発明の範囲を例示することを意図したものであり、限定することを意図したものではない。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある限り、本発明は、本発明のそのような修正や変更のすべてを包含すると意図する。