(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
処理液の収容領域を有するケース本体と、該収容領域内に眼用デバイスを支持せしめる支持部と、該ケース本体における前記収容領域の開口部に装着される蓋体とを備えており、
ユーザーが取り外した眼用デバイスを収容すると共に別体の補充容器から該収容領域へ該処理液を注入して使用される眼用デバイスケースであって、
前記支持部によって前記眼用デバイスが前記収容領域内に支持された状態で前記補充容器の注ぎ口が差し入れられる挿入口が設けられていると共に、
該補充容器の該注ぎ口が該挿入口より差し入れられた部分において接触せしめられて該注ぎ口からの前記処理液の前記収容領域への注入を許容する容器受部が、該挿入口よりも内方に位置して設けられている眼用デバイスケース。
前記収容領域に収容される前記処理液として、前記眼用デバイスに対する処理に際して発泡するものが用いられるものであって、かかる処理液の発泡に伴う液面のレベル変動の最高レベル以下の位置に、前記容器受部における前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接位置が設定されている請求項1〜7の何れか一項に記載の眼用デバイスケース。
前記支持部によって前記眼用デバイスが前記収容領域内に支持されると共に、前記蓋体が装着された前記ケース本体の前記収容領域において、前記処理液に作用する作用物が収容配置される請求項1〜8の何れか一項に記載の眼用デバイスケース。
前記ケース本体が前記収容領域を上方に向けて開放する開口部を備えており、該開口部に対して前記蓋体が装着されると共に、該蓋体には、該開口部から該収容領域へ差し入れられる前記支持部が設けられている一方、
該蓋体には、前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられる挿入口が設けられていると共に、該蓋体が装着された該ケース本体の正立状態で該挿入口よりも下方に位置して且つ該支持部による眼用レンズの支持位置よりも上方に位置して、前記容器受部が設けられている請求項1〜11の何れか一項に記載の眼用デバイスケース。
前記眼用デバイスが、近視や遠視、老視等の視力矯正用コンタクトレンズと、虹彩着色やリンバル拡張等の美容用コンタクトレンズと、近視抑制用コンタクトレンズ、オルソケラトロジー用コンタクトレンズ、円錐角膜用コンタクトレンズ等の特殊コンタクトレンズと、センサや通信機能、撮像機能等を備えた機能性コンタクトレンズと、無水晶体型や有水晶体型等の眼内レンズとの、何れかである請求項1〜13の何れか一項に記載の眼用デバイスケース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討したところ、従来から提供されており又は提案されているコンタクトレンズケースなどの眼用デバイスケースには、改善すべき問題点があることが判った。即ち、従来の眼用デバイスケースは、収容領域が上方に向けて開放されており、その開口部分を通じて、ボトル状の処理液補充容器から処理液を注入するようになっていることから、注入に際して処理液が周囲に飛び散りやすいといった問題を有していた。特に従来の眼用デバイスケースは、上方への開口部分を通じて、眼用デバイスであるコンタクトレンズ等を収容領域に出し入れするようになっていることから開口面積が大きく、上方から注入された処理液が収容領域の壁面や液面で跳ね返って開口部分から外へ飛び散りやすい。更に、収容領域に予め眼用デバイスをセットした後で処理液を注入する場合では、眼用デバイスをより効率的に処理したいという使用者の心理から、眼用デバイスに対して直接に且つ全体に処理液を勢い良く注ぎかけるように注入する傾向があり、眼用デバイス表面による処理液の跳ね返しで処理液の飛び散りが一層大きな問題になりやすい。
【0007】
そして、飛び散った処理液が直接に眼に入ることは稀であったとしても、飛び散った処理液が直接に手指に付着したり、テーブルなどの周囲に付着した処理液を拭き取る際に手指に付着することがあり、処理液の付着した手指で、眼に触れたり、新たな眼用デバイスを装用したりすると、処理液が眼に入ることになる。
【0008】
本発明は、例えば眼用デバイスケースへの処理液の注入に際して処理液が飛び散ることに起因する使用者の眼への悪影響などという、従来では認識すらされていなかったユーザーによる使用時の観点にたった新たな課題等を解決することにより、従来の眼用デバイスケースが内在する課題の少なくとも一つを解決し得る新規な眼用デバイスケースなどの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0013】
【0015】
第
一の態様は、処理液の収容領域を有するケース本体と、該収容領域内に眼用デバイスを支持せしめる支持部と、該ケース本体における前記収容領域の開口部に装着される蓋体とを備えており、ユーザーが取り外した眼用デバイスを収容すると共に別体の補充容器から該収容領域へ該処理液を注入して使用される眼用デバイスケースであって、前記支持部によって前記眼用デバイスが前記収容領域内に支持された状態で前記補充容器の注ぎ口が差し入れられる挿入口が設けられていると共に、該補充容器の該注ぎ口が該挿入口より差し入れられた部分において接触せしめられて該注ぎ口からの前記処理液の前記収容領域への注入を許容する容器受部が、該挿入口よりも内方に位置して設けられている眼用デバイスケースである。
【0016】
本態様の眼用デバイスケースでは、挿入口へ補充容器の注ぎ口が差し入れられることで該挿入口が狭窄された状態で、挿入口よりも内方に位置した容器受け部で位置決めされた補充容器の注ぎ口の先端開口から処理液が収容領域へ注入されることとなる。それ故、たとえ処理液が収容領域内で跳ね返ったりしても、容器外部まで飛び出して飛散することが軽減され得る。
【0017】
第
二の態様は、前記第
一の態様に係る眼用デバイスケースにおいて、記挿入口には、前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられていない状態において、該注ぎ口が差し入れられた状態よりも開口面積を縮小させる弁体が配されているものである。
【0018】
本態様の眼用デバイスケースでは、例えばケース内において眼用デバイスを処理液で処理している状態などのように、挿入口へ補充容器の注ぎ口が差し入れられていない状態においても、挿入口の不必要な開口面積が弁体によって抑えられる。それ故、例えばかかる挿入口を通じての異物の侵入などに対して抑制効果が発揮される。
【0019】
第
三の態様は、前記第
二の態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記弁体が、弾性的な変形作用に基づいて前記挿入口の開口面積を拡縮可能とされている弾性弁とされたものである。
【0020】
本態様の眼用デバイスケースでは、弾性弁による弾性的な変形作用をもって、例えば補充容器の注ぎ口の挿入時には必要な開口面積を確保しつつ、非挿入時には挿入口の開口を充分に小さく又は実質的に閉じることも可能になる。
【0021】
第
四の態様は、前記第
二又は第
三の態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記弁体が、前記処理液の通過を制限するようにされたものである。
【0022】
本態様の眼用デバイスケースでは、例えば補充容器の注ぎ口が挿入されていない状態において、挿入口を通じての処理液の外部への漏れ出しを抑えることが可能になり、例えば処理液が収容された状態で眼用デバイスケースを移動させる際の振動等により、収容領域内の処理液が不用意に外部へ漏れ出すことを防止又は抑制することも実現可能になる。
【0023】
第
五の態様は、前記第
二〜
四の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記弁体が、前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられていない状態においてガスの通過を許容するようにされたものである。
【0024】
本態様の眼用デバイスケースでは、例えば補充容器の内圧が環境の温度変化等によって不必要に変化することを回避したり、或いは、例えば処理領域に収容された処理液からガスが発生する場合でも発生したガスを速やかに外部へ逃がすことも可能になる。
【0025】
第
六の態様は、前記第
一〜
五の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記容器受部に対する前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接によって、前記挿入口に対する該補充容器の該注ぎ口の挿入深さが制限されるものである。
【0026】
本態様の眼用デバイスケースでは、ユーザーが補充容器から処理液を注入するに際して、例えば補充容器の注ぎ口の先端部が容器受部へ当接するまで挿入して使用させるようにすることで、挿入口に対する補充容器の注ぎ口の挿入長さを安定して規定することが可能になる。それ故、例えば挿入口に対する補充容器の注ぎ口の挿入深さが足りないことによる処理液の漏れ出しや、挿入口に対する補充容器の注ぎ口の挿入深さが深すぎることによる眼用デバイスへの干渉や弁体への負荷を低減することも可能になる。
【0027】
第
七の態様は、前記第一〜
六の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記容器受部における前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接位置が、前記収容領域における前記処理液の液面レベルの規定位置よりも上方に設定されているものである。
【0028】
本態様の眼用デバイスケースでは、補充容器の注ぎ口が収容領域に充填された処理液に対して不必要に接触することを防止されて、例えば処理液を収容領域ヘ充填した後の処理液の補充容器への逆流の回避が図られ得る。また、収容領域に充填された処理液中の雑菌の補充容器内への侵入や、補充容器の注ぎ口の周囲に付着した雑菌等の収容領域に充填された処理液への移行などについても、抑制乃至は防止の効果が発揮され得る。
【0029】
第
八の態様は、前記第一〜第
七の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記収容領域に収容される前記処理液として、前記眼用デバイスに対する処理に際して発泡するものが用いられるものであって、かかる処理液の発泡に伴う液面のレベル変動の最高レベル以下の位置に、前記容器受部における前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接位置が設定されているものである。
【0030】
本態様の眼用デバイスケースでは、例えば補充容器から処理領域へ充填された処理液が、容器受部に残留した場合でも、発泡に伴って当該容器受部にまで達した処理液によって処理容器内で循環可能となる。それ故、仮に容器受部に処理液が残留しても、残留した過酸化水素水等の処理液が中和されずに刺激物として残されたり、汚染等されたりする不具合が回避され得る。
【0031】
第
九の態様は、前記第一〜
八の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記支持部によって前記眼用デバイスが前記収容領域内に支持されると共に、前記蓋体が装着された前記ケース本体の前記収容領域において、前記処理液に作用する作用物が収容配置されているものである。
【0032】
本態様の眼用デバイスケースでは、処理液に作用する作用物が配された収容領域内に眼用デバイスを配置せしめた状態下で、補充容器から収容領域内へ処理液を注入して充填することができる。具体的には、例えば過酸化水素水によるコンタクトレンズの殺菌処理に際して、収容領域内に配された作用物としての触媒による過酸化水素水の分解が、コンタクトレンズを浸漬するより前の段階で開始されるのを避けることも可能になる。
【0033】
第
十の態様は、前記第一〜
九の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記容器受部には、前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接位置から下方に向かって、該注ぎ口から注入された前記処理液を導く案内流路が設けられているものである。
【0034】
本態様の眼用デバイスケースでは、補充容器の注ぎ口から流出した処理液を案内流路によって予め設定した特定の箇所に導いて収容領域に充填させることができる。それ故、処理液の注入操作に際しての処理液の流れをより飛び散り等の少ない箇所に設定したり、より安定した注入状態を実現したりすることも可能になる。
【0035】
なお、案内流路は、例えば注ぎ口の先端部の当接位置から下方に向かう傾斜勾配をもって延びる凹状の溝の他、トンネル状の孔によって、或いはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。特にトンネル状の孔とされた案内流路では、孔の周壁によって処理液の周囲への飛散をより確実に防止することも可能になる。また、案内流路は単一である必要はなく、複数の案内流路を設けたり、分流や合流する態様の案内流路を採用しても良い。
【0036】
また、容器受部には、補充容器の注ぎ口の先端開口の開口方向前方に位置して、該注ぎ口から流出されて開口方向前方に向かって流れる処理液が当たる遮面状部分を設けることが望ましい。補充容器から収容領域に注がれる処理液の流れの勢いは、注ぎ口の先体開口の前方に向かう方向に大きいことから、処理液の流速を遮面状部分で抑えることで、液面や眼用デバイス,支持部などからの処理液の跳ね返りを軽減することができる。また、遮面状部分の形状を適切に設定することで、注入される処理液を特定の方向に導きつつ収容領域へ導き入れることも可能になる。
【0037】
第
十一の態様は、前記第一〜
十の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記容器受部の表面には撥水性又は疎水性の表面コートが施されているものである。
【0038】
本態様の眼用デバイスケースでは、収容領域へ注入された処理液が、容器受け部において付着を避けられ又は付着後に速やかに下方へ流下されることで、処理液が容器受け部へ付着して止まり続けることを避け得る。それ故、容器受け部へ付着した処理液に関して、例えば蒸発による特定成分の高濃度化や付着等が生じたり、処理液としての過酸化水素水が触媒で分解されずに残留したりするような問題に対して有効となり得る。
【0039】
第
十二の態様は、前記第一〜
十一の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記ケース本体が前記収容領域を上方に向けて開放する開口部を備えており、該開口部に対して前記蓋体が装着されると共に、該蓋体には、該開口部から該収容領域へ差し入れられる前記支持部が設けられている一方、該蓋体には、前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられる挿入口が設けられていると共に、該蓋体が装着された該ケース本体の正立状態で該挿入口よりも下方に位置して且つ該支持部による眼用レンズの支持位置よりも上方に位置して、前記容器受部が設けられているものである。
【0040】
本態様の眼用デバイスケースでは、蓋体に支持部と注ぎ口が設けられていることにより、容器本体の構造の簡略化が可能になる。また、蓋体に注ぎ口が設けられており、容器本体に蓋体を装着しなければ注ぎ口が機能しないことから、蓋体が備える支持部へ眼用デバイスを支持せしめてから蓋体を容器本体へ装着した後に、処理液を注ぎ口から収容領域へ注入して充填する一連の処理を、ユーザーに対して正しく導いて行わせることが容易となる。更に、ケース本体の成立状態での容器受部の位置が、挿入口よりも下方で且つ眼用レンズの支持位置よりも上方に設定されていることから、ユーザーが処理液を注入する際に、補充容器の注ぎ口が挿入部によっても位置決めされやすいことに加えて、注ぎ口が眼用デバイスへ不用意に干渉することも避けやすい。
【0041】
第
十三の態様は、前記第一〜
十二の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記処理液が以下[1],[2],[3]の何れかを含むものであり、且つ前記眼用デバイスの消毒又は洗浄の用途に用いられるものである。
[1]過酸化水素、過ホウ酸、過酢酸、過ギ酸及びこれら塩から選択される過酸化物、
[2]二酸化塩素、亜塩素酸、次亜塩素酸及びこれらの塩から選択される塩素の酸化物、
[3]ポビドンヨード
【0042】
本態様の眼用デバイスケースでは、例えば眼に入ると大きな刺激を生ずる過酸化水素水等を処理液として用いて眼用デバイスの殺菌や消毒、洗浄等を眼用デバイスの使用者が行なう際に、かかる処理液の注入時に不用意にケース外へ処理液が飛散し、手指を介するなどして眼に刺激を受けるリスクが軽減され得る。
【0043】
第
十四の態様は、前記第一〜
十三の何れかの態様に係る眼用デバイスケースにおいて、前記眼用デバイスが、近視や遠視、老視等の視力矯正用コンタクトレンズと、虹彩着色やリンバル拡張等の美容用コンタクトレンズと、近視抑制用コンタクトレンズ、オルソケラトロジー用コンタクトレンズ、円錐角膜用コンタクトレンズ等の特殊コンタクトレンズと、センサや通信機能、撮像機能等を備えた機能性コンタクトレンズと、無水晶体型や有水晶体型等の眼内レンズとの、何れかとされたものである。
【0044】
本態様に係る各種の眼用デバイスケースは、各種の眼用レンズ(屈折等の光学作用を有しないものを含む)において、例えば流通用や保存用、殺菌等の処置用などとして、眼用レンズの種別の他、専門家や一般ユーザーなどの各ユーザー毎のニーズに応える各種態様で提供され得る。例えば、処理液を注入する補充容器として、一般ユーザーが使用する個別の小容量のボトルタイプを採用する他、メーカーが製造ライン上で使用する処理液供給ラインを含む大容量のタンクタイプなどを採用することもできる。
【0047】
第
十五の態様は、前記第一〜
十四の何れかの態様に係る眼用デバイスケースと組み合わせて用いられて、該眼用デバイスケースへ注入する前記処理液を保存する眼用デバイス用処理液の補充容器であって、前記処理液を流出させる注ぎ口には、先端部から外方に突出する突起部を有する遮断弁体が、内方から外方に向けて付勢されることで該突起部が外方に突出して該注ぎ口を遮断せしめた状態で組み付けられており、該注ぎ口における該突起部が前記眼用デバイスケースの前記容器受部へ接触せしめられて内方へ押し込まれることで該注ぎ口が開放されて該処理液が該注ぎ口から流出可能とされる眼用デバイス用処理液の補充容器である。
【0048】
本態様の補充容器は、注ぎ口の先端部から突出する突起部を容器受部へ押し付けることで、注ぎ口を開口させて処理液を流出させることができる。それ故、補充容器の注ぎ口の先端側を容器受部へ押し付けることで、眼用デバイスケースに対して補充容器を安定した位置決め状態として、処理液を注入することができる。また、処理液を眼用デバイスケースへ注入する際に、注ぎ口の開口方向の前方には、容器受部が位置せしめられることから、補充容器の注ぎ口から開口方向前方に向かって勢い良く流出した処理液も容器受部へ当たることで分散や流速低下されることとなり、処理液の跳ね返りによる外部への飛散の軽減も図られ得る。
【0049】
第
十六の態様は、前記第一〜
十四の何れかの態様に係る眼用デバイスケースと、前記第
十五の態様に係る補充容器とを組み合わせて採用した眼用デバイス用処理液による処理セットである。
【0050】
本態様に従う構造とされた処理液セットでは、眼用デバイスケースに設けられた容器受部に対して適切に合った注ぎ口を備えた補充容器を、眼用デバイスケースと組み合わせて一般ユーザーへ提供することができる。特に、前記第十
七の態様に係る補充容器と組み合わせたことで、処理液を眼用デバイスケースへ注入するに際して、例えば補充容器の注ぎ口を眼用デバイスケースの容器受部に設けられた押付部等へ押し付けるまでの段階、或いは注入後に補充容器を眼用デバイスケースから引き離す段階などにおいて、眼用デバイスケースから離れた補充容器の注ぎ口から処理液が意図せずに流出してしまうことが防止される。即ち、補充容器における処理液の流出口が遮断弁体によって閉じられていることから、補充容器を傾けるだけで処理液が意図せずこぼれてしまうということもない。
【0051】
また、遮断弁体を備えた補充容器を採用したことで、眼用デバイスのすすぎ液として間違って使用してしまうことを効果的に防止できる利点もある。即ち、眼用デバイスのすすぎ液は、下方へ向けた容器の注ぎ口から眼用デバイスに対して直接に注ぎかけるように用いられるのが一般的であり、注ぎ口から突出した突起部を押し込まなければ処理液が流出しない遮断弁体があると使用しづらい。それ故、すすぎ液に適さない洗浄液や消毒液の如き処理液の補充容器において遮断弁体を備えることで、万一間違えて当該補充容器に収容された処理液をすすぎに使用しようとして、補充容器を持って逆さにして容器周壁を押圧等しても、処理液が出てしまうことがなく、眼用デバイスケースの収容領域への充填を前提としないユーザーの不用意による誤使用を防止することも可能となる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、例えば眼用デバイスケースへの処理液の注入に際して処理液が飛び散ることに起因する問題が存在するという、従来では認識されていなかった新たな課題が提示され得た。そして、かかる新規な課題に対して、前述の各態様に係る眼用デバイスケースなどによれば、収容領域へ注入した処理液の外部への跳ね返り等による飛び散りを抑えることができて、飛び散りの少ない処理液の注入操作をユーザーに行わせるように仕向けることが実現可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0055】
図1には、眼用デバイスケースに係る本発明の一実施形態であるコンタクトレンズ用のレンズケース10が示されている。また、
図2〜3には、当該レンズケース10の縦断面図が示されていると共に、
図4〜5には、当該レンズケース10の分解斜視図が示されている。
【0056】
本実施形態のレンズケース10は、処理液12を収容する収容領域14を有しており、かかる収容領域14においてコンタクトレンズ16,16を浸漬状態に保持することで、コンタクトレンズ16,16に対して処理液12による所定の処理を施すものである。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として鉛直方向をいい、コンタクトレンズケース10の底面をテーブルなどへの水平な支持面へ載置した正立状態で示す
図2,3中の上下方向をいうものとする。
【0057】
また、本発明において処理液12は限定されるものでなく、例えば保存液とされてコンタクトレンズ16に対して保存処理を施すものなどであっても良いが、本実施形態では処理液として過酸化水素水を採用することにより、コンタクトレンズ16に対して殺菌を含む消毒処理を施し得るコンタクトレンズ消毒用のレンズケースを提供する。
【0058】
より詳細には、本実施形態のレンズケース10は、ケース本体18と蓋体20を含んで構成されている。ケース本体18には、収容領域14を画成する収容凹所22が形成されている。収容凹所22は、所定量の処理液12を貯留して一対のコンタクトレンズ16,16を浸漬状態に保持せしめ得る深さや大きさをもって上方に開口している。
【0059】
なお、ケース本体18や蓋体20の材質は限定されるものでないが、好適にはポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、ポリスチレン、ABS等の合成樹脂材料を用いて成形される。また、ケース本体18は、透明又は半透明とすることで、内部に収容された処理液12やコンタクトレンズ16等を外部から視認可能とされ得る。因みに、
図1では、ケース本体18を透明と仮定し、外観されるケース本体の外部構造線の他、透視される内部の収容物も実線で示している。
【0060】
本実施形態のケース本体18は、周壁24として、略矩形筒形で上下に延びる外周壁24aと、略円形筒形で上下に延びる内周壁24bを有している。外周壁24aは下方に向かって僅かに拡開している一方、内周壁24bは上方に向かって僅かに拡開している。これら外周壁24aと内周壁24bは上部において一体化されている一方、下方において周壁間に隙間が設定されている。また、ケース本体18の上端部分では、外周壁24aよりも内周壁24bが上方に突出しており、外周壁24aの上端面によって形成された段差状面26から上方に向かって略一定の外径寸法で円筒状に突出した蓋嵌合部28が形成されている。
【0061】
また、内周壁24bの下端は、底壁30が設けられて閉塞されている。これにより、ケース本体18の内部には、内周壁24bで囲まれて上方に向かって開口する凹所状の空間として、処理液12を貯留する収容領域14が形成されている。なお、本実施形態のケース本体18には、消毒用のレンズケースに使用することを考慮して、処理液12として用いられる過酸化水素水に作用して所定時間内で中和するための触媒32が収容領域14に配置されている。かかる触媒32は、処理液12への接触面積を確保するために凹凸を付した王冠に似たリング形状とされており、ケース本体18の底壁30の中央部分に形成された内方凸部34に対して外嵌固定されて、収容領域14の底部に設置されている。
【0062】
蓋体20は、下方に向かって開口する浅底のキャップ構造とされており、ケース本体18の蓋嵌合部28に対して上方から被せられるように嵌着されることで、収容領域14の上端の開口部36を覆蓋し得るようになっている。なお、蓋体20の周壁38は、
図6に示されているように、ケース本体18の外周壁24aに対応した略四角筒形の外周壁38aと、ケース本体18の内周壁24bに対応する略円筒形の内周壁38bとを有している。内周壁38bは、外周壁38aに内接する径寸法とされて、周方向の4箇所で外周壁38aと一体化されている。これら外周壁38aと内周壁38bは、平板状の上底壁40を含めて一体成形されている。
【0063】
なお、本実施形態では、ケース本体18の蓋嵌合部28の外周面と、蓋体20の内周壁38bの内周面とが、相互に当接して嵌め合わされることで、蓋体20がケース本体18に対して着脱可能とされているが、例えば蓋体20をケース本体18に対してねじ構造で着脱可能にしても良い。
【0064】
また、蓋体20の上底壁40には、後述する補充容器の注ぎ口が差し入れられる挿入口42が、中央部分を貫通して形成されている。更に、挿入口42の外周側には、挿入口42と内周壁38bとの径方向中間部分を周方向に延びる円弧形状をもって、上底壁40から下方に向かって突出する固定用突起44が一体形成されている。本実施形態では、各半周に満たない周長の一対の固定用突起44,44が、径方向で対向位置して形成されている。
【0065】
そして、弁体を構成するパッキン46と、容器受部48および支持部50を併せ備えた受部付きホルダ部材52が、蓋体20に対して下方から順次に重ね合わされるようにして組み合わされており、蓋体20の上底壁40に対して、かかる一対の固定用突起44,44を利用して固定されている。
【0066】
パッキン46は、円形のプレート形状を有しており、シリコーンやゴムなどのエラストマからなる弾性板によって構成されている。パッキン46の外径は、蓋体20の内周壁38bの内径より僅かに小さくされており、内周壁38bに嵌め入れられて、蓋体20の上底壁40の下面に重ね合わされている。また、パッキン46には、蓋体20における一対の固定用突起44,44に対応する位置に、一対の位置決め孔54,54が、固定用突起44,44に対応する円弧形状をもって形成されている。そして、パッキン46を蓋体20の上底壁40の下面に重ね合わせた際、蓋体20の固定用突起44,44が、位置決め孔54,54に嵌め通され、位置決め孔54,54を貫通して下方に突出するようになっている。
【0067】
さらに、パッキン46の中央部分には、スリット56が形成されている。スリット56の具体的形状は限定されるものでなく、例えば一文字状スリットや3本以上の放射状スリット等も採用可能であるが、本実施形態では直交する2本スリットからなる十文字状のスリット56が採用されている。また、かかるスリット56は、位置決め孔54,54の形成部分を避けて形成されており、本実施形態では位置決め孔54,54が位置する円上よりも内周側に位置して、挿入口42の内部領域と略同じか僅かに大きな領域にまで伸びる大きさでスリット56が設けられている。
【0068】
スリット56は、例えばパッキン46の形成後にカッター等で切り裂くことで実質的に幅を持たないスリット構造とすることができ、パッキン46の弾性によって略閉鎖状態に保持され得るようになっている。一方、パッキン46の中央部分は、スリット56の形成領域において、外部から及ぼされる力によって上下方向に捲れて開くような弾性変形が容易に生ぜしめられてスリット56が開口し得るようにされており、且つ、外力を取り除くことで弾性によりスリット56が初期の閉鎖状態に復元可能とされている。
【0069】
このようなパッキン46が蓋体20の上底壁40の下面に重ね合わされていることにより、蓋体20の挿入口42が内方からパッキン46で覆われている。そして、パッキン46が挿入口42の弾性弁として機能することで、例えば挿入口42から差し入れられる後述の補充容器の注ぎ口によってスリット56が押し広げられて連通状態とされたり、例えば収容領域の内圧上昇でスリット56が押し広げられて後述の過酸化水素水の分解で発生する酸素ガスの放出が可能とされ得る。
【0070】
さらに、蓋体20に対して、パッキン46の更に下方から、受部付きホルダ部材52が組み付けられている。かかる受部付きホルダ部材52は、
図7,8に単品状態で示されているように、蓋体20の挿入口を通じて差し入れられる後述の補充容器の注ぎ口を受け入れる容器受部48を有していると共に、該容器受部48の下方に位置して、一対のコンタクトレンズ16,16を収容状態で保持せしめる支持部50が容器受部48と一体的に設けられている。
【0071】
容器受部48は、下方に向かって小径となる略漏斗状の筒形状とされており、容器受部48の上端には、開口周縁部において外周に広がるフランジ状部58が一体形成されている。容器受部48の周壁60の上端部の内径は、蓋体20の挿入口42の内径と略等しくされていると共に、フランジ状部58の外径は、蓋体20の内周壁38bの内径より僅かに小さくされている。
【0072】
そして、かかるフランジ状部58が、蓋体20の上底壁40の下面に対して、パッキン46を挟んで重ね合わされて、固定的に取り付けられている。蓋体20と容器受部48との固定構造は限定されるものでなく、例えば螺合による固定構造なども採用可能であるが、本実施形態では、パッキン46の位置決め孔54,54を貫通して下方に突出された蓋体20の固定用突起44,44の突出先端部がフランジ状部58の上面へ固着されることによって、蓋体20と容器受部48が固定されている。
【0073】
特に本実施形態では、フランジ状部58の上面において径方向中間部分を全周に亘って連続して伸びる周溝62が形成されており、蓋体20の固定用突起44,44の突出先端部がかかる周溝62の底面に当接されて超音波や高周波の溶着加工で固着されていることから、溶着によるバリ等も周溝62へ収容されて、パッキン46への悪影響が回避されている。なお、
図2,3等の図面上では、作図中の都合で固定用突起44が先細形状のままの初期高さで示されているが、実際には溶着加工で潰されることにより、固定用突起44の高さ寸法がパッキン46の厚さ寸法と同じか小さくされており、それによって、固定用突起44の周囲を含む広い領域において、パッキン46が、蓋体20の上底壁40と容器受部48のフランジ状部58との間で圧縮状態で挟まれていることが望ましい。
【0074】
そして、蓋体20の上底壁40と容器受部48のフランジ状部58との間で、パッキン46の外周部分が幅広い環状の領域で挟まれて支持されていることに加えて、パッキン46の位置決め孔54,54へ固定用突起44,44が嵌め入れられている。これにより、パッキン46が組付時に正確に位置決めされると共に、組付後のズレやヨレも効果的に防止されており、例えば後述する補充容器のノズル部の挿入等に際して及ぼされる外力に対しても安定したパッキン46の支持状態がより確実に維持されるようになっている。
【0075】
また、容器受部48の周壁60は、上側部分よりも下側部分の方が傾斜角度を大きくされたテーパ付きの略円筒形状とされている。更に、周壁60には、傾斜角度の大きい下側部分において、内外に貫通する側方窓64が形成されている。本実施形態では、径方向に対向位置して一対の側方窓64,64が形成されている。尤も、側方窓64,64の位置や数、大きさなどは限定されるものでない。
【0076】
更にまた、容器受部48の底壁66には、上下に貫通する下方窓68が形成されている。本実施形態では、略円板形状の底壁66の中心回りで各四半周に満たない大きさの扇形の下方窓68が、周方向で等分に計4個形成されている。これら4個の下方窓68により、底壁66が、平面視で十文字状に延びる格子形状とされている。なお、かかる底壁66において格子形状とされた部分は、例えば略三角形状のように、頂部(最上部)が殆ど幅を持たないで下方に向かって幅寸法が広がる断面形状とされることが望ましい。これにより、底壁66上への処理液の滞留を避けることができる。
【0077】
さらに、容器受部48の下方には、ホルダベース70が一体的に設けられている。かかるホルダベース70は、上端縁が直線形状で下方が半円形状とされた略小鉤形のプレート形状を有しており、容器受部48の底壁66から下方に突設された連結部72によって、略上下左右に広がる状態で支持されている。ホルダベース70は、コンタクトレンズ16よりも一回り大きな外周形状とされており、両面の中央部分には、それぞれ外方に向かって突出する球欠形状の保持凸部74が設けられている。
【0078】
なお、各保持凸部74の表面には、上下に延びるリブ状の複数本の突起が形成されている。また、保持凸部74の外周側には、周方向で複数の連通孔76が、ホルダベース70を貫通して形成されている。これにより、コンタクトレンズ16の保持凸部74への張り付きが防止されると共に、コンタクトレンズ16の凹状後面への処理液の接触や循環の性能向上が図られている。
【0079】
また、連結部72の上下方向の中間部分には、ホルダベース70の上方に位置して、ホルダベース70の上端縁と略平行に突出する一対の支持軸78,78が形成されている。かかる支持軸78,78は、円形断面のロッド形状とされている。そして、
図4,5に示されているように、ホルダベース70の両面に重ね合わされるホルダキャップ80,80が、支持軸78,78によって開閉可能に組み付けられている。
【0080】
かかるホルダキャップ80は、中央部分が外方に向かって膨らんだ球冠形状の網目状部86とされていると共に、外周部分が平坦な環状プレート部88とされている。また、ホルダキャップ80の上端縁には一対のC字状のフック82,82が設けられており、かかるフック82,82が、ホルダベース70の支持軸78,78に外嵌されることで、ホルダキャップ80がホルダベース70に対して支持軸78回りで略90度或いはそれ以上にわたって回動可能に組み付けられている。
【0081】
そして、支持軸78回りの回動によって、各ホルダキャップ80は、ホルダベース70の各一方の面に対して、
図2に示されている如き重ね合わされた閉状態から、
図4,5に示されている如き上方に開いた開状態にまで、移動可能とされている。
【0082】
ホルダキャップ80が下方に回動されてホルダベース70の表面に重ね合わされた状態では、
図2に示されているように、ホルダキャップ80の平坦な環状プレート部88がホルダベース70の平坦な外周表面に対して当接又は近接して重ね合わされる。また、ホルダキャップ80の球冠形状の網目状部86が、ホルダベース70の保持凸部74を所定距離を隔てて外方から覆うように重ね合わされる。これにより、ホルダベース70とホルダキャップ80との間には、コンタクトレンズ16を保持せしめる保持領域が形成されている。要するに、本実施形態では、ホルダベース70とホルダキャップ80を含んで、コンタクトレンズ16を支持する支持部50が構成されている。
【0083】
なお、かかるコンタクトレンズ16の保持領域は、コンタクトレンズ16を圧縮や変形等させないで保持せしめ得る大きさと形状をもって形成されることが望ましい。また、保持領域へコンタクトレンズ16を収容して保持せしめた状態下で、コンタクトレンズ16の凸状前面は、ホルダキャップ80で覆われているが、ホルダキャップ80が網目構造とされていることにより、コンタクトレンズ16のホルダキャップ80への張り付きが防止されると共に、コンタクトレンズ16への処理液の接触や循環の性能が確保されている。一方、ホルダキャップ80を支持軸78回りで上方へ回動させて開くことで、保持領域が開放可能とされており、かかる開状態において、保持領域に対してコンタクトレンズ16を出し入れ可能とされている。
【0084】
また、蓋体20の上底壁40の下面に受部付きホルダ部材52が固着されることで、蓋体20の下方に位置して、容器受部48と支持部50が、蓋体20の挿入口42と略同一中心軸上で下方に向かって順次に配列された状態で配置されている。そして、ケース本体18の上方への開口部36に対して蓋体20を装着する際には、ホルダキャップ80,80を閉じてホルダベース70に重ね合わせた状態で、受部付きホルダ部材52を下端側から開口部36を通じて収容凹所22へ差し入れるようにされる。ケース本体18の蓋嵌合部28へ蓋体20を装着した状態では、収容凹所22が蓋体20で覆蓋されて収容領域14が画成されると共に、かかる収容領域14内で、容器受部48と支持部50が、周壁24(内周壁24b)から内周側に離れた中央部分に位置決め配置されるようになっている。即ち、コンタクトレンズ16,16を収容保持せしめる支持部50は、連結部72と容器受部48を介して、蓋体20から吊り下げられた状態で収容領域14内に配置されるようになっている。
【0085】
なお、収容領域14では、貯留される処理液12の規定液面レベル92が、支持部50を浸漬せしめ得る深さに設定されている。好適には、
図2,3に例示されているように、蓋体20の装着状態において容器受部48の底壁66の上面より下方で略連結部72上に位置して、処理液12の規定液面レベル92が設定される。これにより、後述する補充容器から注入された過酸化水素水などの処理液12が底壁66上に貯留して、触媒32の作用による分解がなされずに残ってしまうことが防止され得る。
【0086】
また、受部付きホルダ部材52は、特に処理液12の規定液面レベル92より上に位置する容器受部48等において、撥水性又は疎水性を付与する表面処理や表面加工を施されて表面コートされることが望ましく、それによって処理液12の付着が抑えられ得る。なお、撥水性又は疎水性の表面コートは、公知の手法で形成され得るが、例えば撥水性又は疎水性を有する薄膜を表面にコーティングする他、表面の物理的形状によって撥水性又は親水性を付与することも可能である。前者としては、例えばフッ素系ポリマーやシリコーン系ポリマーなどの疎水性の高いポリマーを揮発性溶剤などに溶かしたものを基材上に塗布して乾燥させることで疎水性被膜を形成することができる。後者としては、例えば水がしみ込むことのできない程度のナノレベルの凹凸を表面に設けて当該凹凸部分に空気層を保持させることで撥水性を付与したり、ミクロンレベルのシボ加工を表面に形成することで疎水性を高めることができる。
【0087】
尤も、過酸化水素水などの処理液12によるコンタクトレンズ16,16の殺菌等の処理中では、過酸化水素水の分解反応で気泡が発生する。特に本実施形態では、収容領域14の底部に触媒32が配置されていることで、底部付近において発生する酸素ガスの気泡によって処理液12の全体に対して効果的に攪拌作用が発揮される。また、処理液12が攪拌されることで、支持部50内に保持されたコンタクトレンズ16,16には、ホルダベース70の連通孔76やホルダキャップ80の網目状部86を通じて、処理液12が効率的に接触され得て、目的とする殺菌等の処理が為なさる。
【0088】
このような処理液12の発泡によって収容領域14内の液面が泡立つことで、処理液12の実質的な液面が上昇することとなる。そして、かかる発泡によって上昇した液面には、過酸化水素水等の処理液12の分解反応が及ぶことから、処理液の発泡に伴う液面のレベル変動の最高レベル以下の位置に、容器受部48の底壁66の上面が設定されることで、仮に底壁66の上面に処理液12が残留しても、分解反応が及ぼされることとなり、過酸化水素水等の処理液12が未分解のままで残されることが防止され得る。
【0089】
ここにおいて、本実施形態のレンズケース10は、例えばコンタクトレンズの使用者が眼から外したコンタクトレンズに対して消毒や殺菌の処理をするために繰り返し使用される。かかる処理に際しては、その都度、処理液12をケース本体18へ注入することとなる。処理液12は、レンズケース10のケース本体18に蓋体20を装着して収容凹所22を覆蓋せしめた状態で、内部に形成された収容領域14に対して、過酸化水素水等の所定の処理液が充填された別体の補充容器を用いて適量だけ注入することができる。
図9,10には、補充容器の一実施形態が示されている。
【0090】
かかる補充容器100は、長期間に亘って処理液12を保存し得るものであれば良く、材質や形状、構造、容量などは限定されないが、意図しない漏れ出しを防止しつつ十分な容量を保存し得るように、例えば図示されているように、上方に開口を有するボトル本体102の開口部104に対して、注ぎ口106を備えた栓体108を溶着や螺合などで固着せしめた構造の容器が採用され得る。
【0091】
本実施形態の補充容器100は、栓体108の中央部分から上方に突出する小径で且つ先細筒形状の注ぎ口106を備えている。なお、注ぎ口106の外周面には雄ねじ山が設けられており、補充容器100を使用しない状況下では、図示しないキャップを装着することができるようになっている。また、かかる注ぎ口106の内部には、注ぎ口106の先端に開口する流出口110に対して内方から押し付けられることで、当該流出口110を閉鎖する円形の小さなブロック形状の弁体112が設けられている。
【0092】
この弁体112は、
図11,12に拡大して示されているように、付勢手段としてのコイル状の樹脂ばね114によって内方から付勢されて、円形の流出口110の基端側のテーパ状乃至は段差状の内周面に対して内方から押し付けられることで流出口110を遮断状態に保持し得るようになっている。なお、樹脂ばね114は、先細の二重螺旋構造とされており、大径の基端部分には、注ぎ口106の内周面に嵌着固定される固定リング116を有していると共に、小径の先端部分において弁体112と一体化されている。
【0093】
さらに、弁体112には、中央部分から外方に突出する操作突起118が設けられており、かかる操作突起118が、注ぎ口106の流出口110に挿通されて外方に突出されている。なお、操作突起118は、
図11等に示されているように、流出口110の内周面との間に上下方向に延びる隙間が形成される大きさや形状とされている。本実施形態では、操作突起118の外周面を上下方向に延びる凹状の縦溝120が、周方向で等間隔に3本形成されることで、操作突起118の横断面形状が3本の略放射形状とされており、かかる縦溝120によって、流出口110内を上下方向に延びる隙間が形成されている。
【0094】
そして、流出口110から外方へ突出せしめられた操作突起118の先端部が押し込まれることにより、樹脂ばね114による付勢力に抗して弁体112が内方に移動させられて流出口110から離れることで弁体112が開状態に切り換えられる。
【0095】
その結果、流出口110の内周面と操作突起118の縦溝120との間の隙間を通じて、補充容器100の内部空間が外部に連通されることとなり、補充容器100に収容された処理液12の流出が許容される。なお、操作突起118の先端に加えられた押込方向の外力が解除されると、樹脂ばね114による付勢力で弁体112が流出口110の基端側の内周面へ押し付けられた閉状態に復帰して保持される結果、流出口110は遮断状態へ自動的に復帰する。
【0096】
かくの如き補充容器100を用いれば、操作突起118を押込操作しなければ収容された処理液12が不用意に流出することが防止されて、過酸化水素水などの処理液が意図せずに飛散等することが防止される。それに加えて本実施形態では、レンズケース10において、補充容器100の操作突起118を押込操作して処理液12を流出させる部位が特定されており、それによって、処理液を収容容器等へ注入する際の処理液の周囲への飛散などが一層効果的に防止されるようになっている。
【0097】
すなわち、本実施形態では、
図13に示されているように、レンズケース10における蓋体20の中央部分に形成された挿入口42が、補充容器100の注ぎ口106を差し入れ可能な大きさとされている。そして、テーブル等の水平な支持台上にケース本体18の底壁30を載置した正立状態において、補充容器100を上下反転させて下方に向けた注ぎ口106を、蓋体20の挿入口42からレンズケース10内へ差し入れることができるようになっている。
【0098】
また、レンズケース10の容器受部48は、補充容器100の注ぎ口106に略対応して一回り大きな内周面形状とされている。そして、蓋体20の挿入口42から差し入れられた注ぎ口106が、パッキン46のスリット56を押し広げて容器受部48内へ入り込むようになっている。その際、挿入口42や容器受部48の内周面は、注ぎ口106の外周面よりも僅かに大きくされていることで、差し入れられる注ぎ口106に対して、直接又はパッキン46を介しての接触等による案内作用を発揮して、注ぎ口106の大きな傾きや引っ掛かりなどが回避されるようになっている。特に本実施形態では、エラストマからなるパッキン46が弾性的な保持作用及び/又はシール作用を発揮し得ることとなり、補充容器100の注ぎ口106を、容器受部48の内周面によって一層安定して保持することができる。
【0099】
そして、補充容器100の注ぎ口106が容器受部48へ略真っ直ぐに差し入れられると、
図14に示されているように、注ぎ口106の先端から突出された操作突起118の突出先端が、容器受部48の底壁66の中央部分に対して当接せしめられる。更に、補充容器100の重量や操作力などによって、操作突起118の突出先端が容器受部48の底壁66へ押し付けられることにより、かかる操作突起118が補充容器100の内方へ押し込まれる。
【0100】
その結果、補充容器100の注ぎ口106の先端部が、容器受部48の底壁66に対して直接に又は操作突起118を介して間接に当接して、挿入口42に対する注ぎ口106の挿入深さが制限され、且つ注ぎ口106の周囲も挿入口42や容器受部48の周壁60で保持されることで、かかる注ぎ口106が補充容器100に対して位置決め状態とされる。また、かかる状態下、操作突起118が補充容器100の内方へ押し込まれたことで、弁体112が内方へ移動することとなり、特別な弁操作を必要とすることなく注ぎ口106の弁体112による閉止が解除されて開状態とされる。これにより、補充容器100に収容された処理液12が、注ぎ口106から、流出口110の内周面と操作突起118の縦溝120との間の隙間を通じて、レンズケース10内へ注入されることとなる。
【0101】
特に本実施形態では、注ぎ口106の先端部が当接する容器受部48の底壁66が格子構造とされており、流出口110から流出した処理液12が、底壁66の下方窓68を通じて、コンタクトレンズ16,16の支持部50が配置された下方へ流入される。その際、格子構造の底壁66が、流出口110から注がれる処理液12の流れの勢いが大きい流出口110の開口方向前方となる開口方向下方に位置して、流出口110から流出されて開口方向前方(下方)に向かって流れる処理液12が当たる遮面状部分を構成している。流出口110から収容領域14へ注がれる処理液12の流れの勢いを遮面状部分としての底壁66で抑えることにより、処理液12の跳ね返りを軽減することができる。
【0102】
また、注ぎ口106の開口方向の前方で直近に位置する格子構造の底壁66も、注ぎ口106に対向する上端に向かって次第に幅寸法が小さくなる略三角断面形状とされていることから、格子構造の底壁66による処理液12の跳ね返り自体が抑えられている。なお、流出口110から流出した処理液12のうち、底壁66から跳ね返った処理液12や底壁66の下方窓68から流下しきれない処理液12などがあれば、容器受部48の周壁60の側方窓64を通じて、収容領域14へ流入され得る。
【0103】
すなわち、補充容器100の処理液12は、容器受部48内において、注ぎ口106の流出口110から注ぎ出されることで、案内流路としての容器受部48の下方窓68等を通じて下方に導かれて収容領域14へ注入されることとなり、補充容器100から注がれた処理液12は、容器受部48の周壁60やパッキン46,蓋体20等によってレンズケース10の外部周囲への飛散を防止されて収容領域14内へ案内され得る。
【0104】
また、補充容器100の注ぎ口106が容器受部48で位置決めされることから、処理液12の注入位置も、予め定められた位置へ安定して設定されることとなり、流出口110の開口方向となる下方には、流出方向となる上下方向に直交する平面(水平方向に広がる平面)が存在しないように設計されていることが望ましい。それによって、流出口110から勢い良く下方に流下された処理液12が上方に跳ね返って、例えばパッキン46の隙間等から外部へ漏れ出すことも一層効果的に防止され得る。
【0105】
従って、本実施形態のレンズケース10或いは補充容器100を含む、眼用デバイスのケース付き処理セットによれば、飛び散りの少ない処理液12のレンズケース内への注入操作が実現可能となる。そして、処理液12の注入に際しての飛び散りが防止される結果、飛び散った過酸化水素水等が手指に付着してレンズ使用者の眼を意図せずに刺激してしまう問題が効果的に防止され得る。
【0106】
特に本実施形態では、一対のコンタクトレンズ16,16が、何れも、処理液12をレンズケース10内に注入する際の流出口110よりも下方に位置して、レンズ中心軸を略水平方向に向けた状態で、支持部50によって保持されることから、注入された処理液12がコンタクトレンズ16の表面へ直接に当たって跳ね返ることも効果的に防止され得る。
【0107】
また、本実施形態のレンズケース10は、ケース本体18の周壁24が、略ストレートな円筒形状の内周壁24bと下方に向かって広がる外周壁24aとの二重壁構造とされていることから、テーブル等への載置状態で幅広の底面による優れた安定性が、処理液量の不必要な増大を避けつつ、向上され得る。特にテーブル等への載置状態でのケース本体18の安定性の向上は、処理液12を注入するに際して補充容器100の流出口110を下方に向けて押し付ける力が容器受部48へ作用することから、押付方向の傾きなどに起因するレンズケース10の意図しない倒れ等を防止するのに有効である。
【0108】
また、本実施形態では、注ぎ口106の流出口110に弁体112を備えた弁付きの補充容器100が採用されていることから、レンズケース10への処理液12の注入に際して、補充容器100を傾けたり反転させたりしても、流出口110の先端の操作突起118を容器受部48の底壁66へ押し付けて内方へ押し込むまでは、処理液12の意図しない流出が防止され得る。それ故、レンズケース10への処理液12の注入操作に際しての意図しない処理液のこぼれ出しや飛び散りが一層効果的に防止され得る。
【0109】
しかも、補充容器100の注ぎ口106を差し入れられるレンズケース10の挿入口42と容器受部48との間もパッキン46で覆われていることから、注ぎ口106から容器受部48内で注入された処理液12が、レンズケース10の外部にまで飛び出したり漏れ出したりすることが、より効果的に防止され得る。また、かかるパッキン46は、弾性的な変形作用に基づいて挿入口42の開口面積を拡縮可能とするものであって、補充容器100の注ぎ口106が差し入れられていない状態において、注ぎ口106が差し入れられた状態よりも開口面積を縮小させる弁体として機能し得る。即ち、補充容器100の注ぎ口106が差し入れられた状態では、パッキン46が弾性変形してスリット56を開いて注ぎ口106の挿通を許容する一方、注ぎ口106が引き抜かれると弾性により元のプレート形状へ復帰してスリット56を閉じる。そして、スリット56を閉じた状態では、過酸化水素水の分解等により収容領域14内の圧力上昇を伴って発生するガスの流出はスリット56を通じて許容しつつ、レンズケース10の傾斜や転倒時に際しての処理液12の漏出量を抑える効果も発揮し得る。
【0110】
さらに、本実施形態のレンズケース10は、収容領域14の所定位置へコンタクトレンズ16,16を支持せしめた状態で、触媒32が配置された収容領域14へ処理液12を注入することができる。それ故、収容領域14へ処理液12を注入すると同時に、コンタクトレンズ16,16に対する殺菌等の処理が開始されると共に、過酸化水素水などの処理液12の触媒作用による分解反応等が開始され得る。従って、収容領域14への処理液12の注入が完了した後にコンタクトレンズ16,16を収容領域14へ差し入れる場合では問題視されることのある、コンタクトレンズ16,16の差し入れ前の触媒による処理液12の分解反応の先行開始も回避され得る。
【0111】
以上の実施形態の具体的説明によって発明は限定されるものでない。例えば、レンズケース10への処理液12の注入に用いられる補充容器は、前述の実施形態の補充容器100に限定されるものでなく、注ぎ口106に弁体112を設けなくても良いし、栓体108の注ぎ口106がボトル本体102の中心軸に対して傾斜して、例えば側方や斜め上方等に向かって突出して設けられても良い。
【0112】
また、レンズケース10の具体的構造や形状、大きさなども変更可能である。例えば、前記実施形態では幅に比して深さの大きい収容領域14とされてコンタクトレンズ16を略縦置状態で保持せしめるようになっていたが、深さに比して幅の大きい収容領域として、コンタクトレンズ16の光軸が略上下方向となる状態でレンズ前面又は後面を下方から支持せしめる凸形又は凹形の支持面を備え、コンタクトレンズ16を平置状態で保持せしめる態様であっても良い。そのような各態様において、容器受部やコンタクトレンズの支持部は、蓋体に一体的に設ける必要はなく、また、容器受部とコンタクトレンズの支持部も別体として、例えば容器受部を蓋体側に設ける一方、コンタクトレンズの支持部を容器本体側に設けることも可能である。
【0113】
また、前記実施形態では、蓋体20の挿入口42を通じて補充容器100の注ぎ口106が差し入れられて処理液12が収容領域14へ注入されるようになっていたが、注ぎ口からの処理液の収容領域への注入を許容する容器受部を蓋体とは別の箇所に設けることも可能である。具体的には、例えばケース本体において蓋体の装着位置を側方や下方に外れた位置に、処理液の注入を許容する容器受部を設けても良い。また、ケース本体又は蓋体に対して側方から補充容器の注入口を差し入れるようにしても良い。また、ケース本体に蓋体を装着して収容領域を閉じた状態下で処理液を収容領域へ流し込む態様の他、例えばコンタクトレンズの支持部や容器受部を蓋体とは別体で設けることにより、蓋体を未装着の状態で、コンタクトレンズが収容支持された収容領域へ処理液を注入する態様も採用可能である。また、蓋部材が開かれた状態で現れる容器受部を採用することも可能である。また、補充容器の注ぎ口を受ける容器受部を設けることなく、ケース本体の蓋体による蓋閉状態において、コンタクトレンズが支持された収容領域へ処理液を流し込める態様なども採用可能である。
【0114】
さらに、補充容器100において、前記実施形態のようにレンズケース10の容器受部48へ操作突起118を押し付けて内方に押し込むことで流出口110を開口させる構造の他に、レンズケースへの当接等によって開操作される各種の弁手段を採用することができる。具体的には、特開2004−290473号公報に記載されているように、流出口にスリット付きの弾性弁を装着し、コンタクトレンズケースの容器受け部に突設した雄ルアー状の中空ピンを当該弾性弁のスリットへ差し入れて弾性弁を開操作するようにしても良い。
【0115】
また、レンズケースにおいて補充容器の注ぎ口が挿入される挿入口などには、注目しやすい形状や色を設定することも可能であり、それによって使用者に着目させて挿入口をアピールすることができる。
【0116】
また、補充容器の注ぎ口が接触せしめられる容器受部は、前述の如き有底の筒形状に限定される物手ない。例えば補充容器の注ぎ口が押し付けによって開く弁手段を備えていない場合には、底部のない筒形状や円弧形状などをもって、補充容器の注ぎ口の当接によって特定の方向で位置決め作用を発揮し得る容器受部を構成することも可能である。
【0117】
また、処理液12は限定されるものでなく、コンタクトレンズ16等の眼用デバイスの保存処理や消毒、洗浄等の用途に用いられるものであっても良く、例えば、過酸化水素、過ホウ酸、過酢酸、過ギ酸及びこれら塩から選択される過酸化物や、二酸化塩素、亜塩素酸、次亜塩素酸及びこれらの塩から選択される塩素の酸化物や、ポビドンヨード、の何れかを含むものなどが採用される。実施形態に例示した触媒32も、処理液12に応じて適宜に使用されるものであり、触媒32の有無や種類は限定されない。例えば過酸化水素水の処理液に対して例示の白金などの触媒の他に、カタラーゼなどの酵素の錠剤等を採用することも可能であって、その場合には例えば処理液の注入前にケース本体内へ錠剤等を投入すれば良い。処理液12として過酸化水素水以外の例えばポビドンヨード消毒液を用いる場合には、亜硫酸ナトリウムやアスコルビン酸などの中和錠剤を採用することも可能である。
【0118】
さらに、前述したように本発明の適用範囲は、例示のコンタクトレンズ用のケースや処理セット等に限定されるものでない。例えば、視力矯正用コンタクトレンズや美容用コンタクトレンズ、特殊コンタクトレンズ、機能性コンタクトレンズなどの各種のコンタクトレンズ用のケースやケース付き処理液セットの他、眼内レンズを保存や移送等するためのケースやケース付き処理液セットなどに適用することも可能である。また、眼用デバイスケースには、一体的に又は付属的に他の機能手段を設けることも可能であり、例えば処理時間などを計測するためのタイマーや、処理状態を光や音等で表示するための表示手段、眼用デバイスの汚れ度合いを測定したり欠けなどの損傷を確認するセンサやモニターなどを付加することも可能であって、そのような機能手段を設けた眼用デバイスケースや処理液セットに対しても、本発明は有効に適用され得る。更にまた、発明が適用されるレンズ等に応じて、ケースの具体的な形状や大きさなども適宜に変更可能であり、例えば単一又は3つ以上の眼用デバイスに適用されるケースなどにも本発明は適用され得る。
また、本発明は、もともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 処理液の収容領域を有するケース本体と、該収容領域内に眼用デバイスを支持せしめる支持部と、該ケース本体における前記収容領域の開口部に装着される蓋体とを備えており、別体の補充容器から該収容領域へ該処理液を注入して使用される眼用デバイスケースであって、前記支持部によって前記眼用デバイスが前記収容領域内に支持された状態で、前記補充容器の注ぎ口が接触せしめられて該注ぎ口からの前記処理液の前記収容領域への注入を許容する容器受部が設けられている眼用デバイスケース、
(ii) 前記蓋体が装着された前記ケース本体の正立状態で、下方に向けられた前記補充容器の注ぎ口が前記容器受部に対して上方から接触せしめられるようになっている(i)に記載の眼用デバイスケース、
(iii) 前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられる挿入口が設けられていると共に、該挿入口よりも内方に位置して前記容器受部が設けられている(i)又は(ii)に記載の眼用デバイスケース、
(iv) 前記挿入口には、前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられていない状態において、該注ぎ口が差し入れられた状態よりも開口面積を縮小させる弁体が配されている(iii)に記載の眼用デバイスケース、
(v) 前記弁体が、弾性的な変形作用に基づいて前記挿入口の開口面積を拡縮可能とされている弾性弁である(iv)に記載の眼用デバイスケース、
(vi) 前記弁体が、前記処理液の通過を制限するものである(iv)又は(v)に記載の眼用デバイスケース、
(vii) 前記弁体が、前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられていない状態においてガスの通過を許容するものである(iv)〜(vi)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(viii) 前記容器受部に対する前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接によって、前記挿入口に対する該補充容器の該注ぎ口の挿入深さが制限される(iii)〜(vii)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(ix) 前記容器受部における前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接位置が、前記収容領域における前記処理液の液面レベルの規定位置よりも上方に設定されている(i)〜(viii)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(x) 前記収容領域に収容される前記処理液として、前記眼用デバイスに対する処理に際して発泡するものが用いられるものであって、かかる処理液の発泡に伴う液面のレベル変動の最高レベル以下の位置に、前記容器受部における前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接位置が設定されている(i)〜(ix)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(xi) 前記支持部によって前記眼用デバイスが前記収容領域内に支持されると共に、前記蓋体が装着された前記ケース本体の前記収容領域において、前記処理液に作用する作用物が収容配置される(i)〜(x)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(xii) 前記容器受部には、前記補充容器の前記注ぎ口の先端部の当接位置から下方に向かって、該注ぎ口から注入された前記処理液を導く案内流路が設けられている(i)〜(xi)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(xiii) 前記容器受部の表面には撥水性又は疎水性の表面コートが施されている(i)〜(xii)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(xiv) 前記ケース本体が前記収容領域を上方に向けて開放する開口部を備えており、該開口部に対して前記蓋体が装着されると共に、該蓋体には、該開口部から該収容領域へ差し入れられる前記支持部が設けられている一方、該蓋体には、前記補充容器の前記注ぎ口が差し入れられる挿入口が設けられていると共に、該蓋体が装着された該ケース本体の正立状態で該挿入口よりも下方に位置して且つ該支持部による眼用レンズの支持位置よりも上方に位置して、前記容器受部が設けられている(i)〜(xiii)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(xv) 前記処理液が以下[1],[2],[3]の何れかを含むものであり、前記眼用デバイスの消毒又は洗浄の用途に用いられる(i)〜(xiv)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、[1]過酸化水素、過ホウ酸、過酢酸、過ギ酸及びこれら塩から選択される過酸化物、[2]二酸化塩素、亜塩素酸、次亜塩素酸及びこれらの塩から選択される塩素の酸化物、[3]ポビドンヨード、
(xvi) 前記眼用デバイスが、近視や遠視、老視等の視力矯正用コンタクトレンズと、虹彩着色やリンバル拡張等の美容用コンタクトレンズと、近視抑制用コンタクトレンズ、オルソケラトロジー用コンタクトレンズ、円錐角膜用コンタクトレンズ等の特殊コンタクトレンズと、センサや通信機能、撮像機能等を備えた機能性コンタクトレンズと、無水晶体型や有水晶体型等の眼内レンズとの、何れかである(i)〜(xv)の何れか一項に記載の眼用デバイスケース、
(xvii) 処理液の収容領域を有するケース本体と、該収容領域内に眼用デバイスを支持せしめる支持部と、該ケース本体における前記収容領域の開口部に装着される蓋体とを備えており、別体の補充容器から該収容領域へ該処理液を注入して使用される眼用デバイスケースであって、該ケース本体の該蓋体による蓋閉状態において該収容領域へ該処理液を流し込めることを特徴とする眼用デバイスケース、
(xviii) (i)〜(xvii)の何れか一項に記載の眼用デバイスケースと組み合わせて用いられて、該眼用デバイスケースへ注入する前記処理液を保存する眼用デバイス用処理液の補充容器であって、前記処理液を流出させる注ぎ口には、先端部から外方に突出する突起部を有する遮断弁体が、内方から外方に向けて付勢されることで該突起部が外方に突出して該注ぎ口を遮断せしめた状態で組み付けられており、該注ぎ口における該突起部が前記眼用デバイスケースの前記容器受部へ接触せしめられて内方へ押し込まれることで該注ぎ口が開放されて該処理液が該注ぎ口から流出可能とされる眼用デバイス用処理液の補充容器、
(xix) (i)〜(xvii)の何れか一項に記載の眼用デバイスケースと、(xviii)に記載の補充容器とを組み合わせて採用した眼用デバイス用処理液による処理セット、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、補充容器を接触させて、注ぎ口を所定の部位へ位置決めさせた状態で、補充容器から処理液を収容領域へ注入することができる。それ故、例えば眼用デバイスの使用者が処理液を補充容器から収容領域へ注入する際に、上方に大きく離れた位置から処理液を勢い良く注入したり、予め収容されたコンタクトレンズ等の眼用デバイスに対して直接に且つ全体に勢い良く注ぎかけるように処理液を注入する等といった、処理液の飛び散り量が多くなりがちな注入態様を避けるようにして、飛び散りの少ない処理液の注入操作をユーザーに行わせるように仕向けることが実現可能となる。しかも、眼用デバイスが収容領域内に支持された状態で処理液を収容領域へ注入できることから、例えば眼用デバイスの処理液による殺菌等の目的とする処理を、処理液の注入と略同時に開始することも可能になる。
上記(ii)に記載の発明では、ケース本体の開口部へ蓋体が装着されて大きな開口の無い状態で、補充容器から処理液を収容領域へ注入することができる。それ故、大きく開口した開口部を通じて、注入した処理液が外部へ飛び散ることが防止され得る。また、ケース本体の正立状態で補充容器を上方から接触させて注入できることから、例えば注入時のケースの安定的な保持や処理液の注入操作などが、一層容易に実現可能となる。
上記(iii)に記載の発明では、挿入口へ補充容器の注ぎ口が差し入れられることで該挿入口が狭窄された状態で、挿入口よりも内方に位置した容器受け部で位置決めされた補充容器の注ぎ口の先端開口から処理液が収容領域へ注入されることとなる。それ故、たとえ処理液が収容領域内で跳ね返ったりしても、容器外部まで飛び出して飛散することが軽減され得る。
上記(iv)に記載の発明では、例えばケース内において眼用デバイスを処理液で処理している状態などのように、挿入口へ補充容器の注ぎ口が差し入れられていない状態においても、挿入口の不必要な開口面積が弁体によって抑えられる。それ故、例えばかかる挿入口を通じての異物の侵入などに対して抑制効果が発揮される。
上記(v)に記載の発明では、弾性弁による弾性的な変形作用をもって、例えば補充容器の注ぎ口の挿入時には必要な開口面積を確保しつつ、非挿入時には挿入口の開口を充分に小さく又は実質的に閉じることも可能になる。
上記(vi)に記載の発明では、例えば補充容器の注ぎ口が挿入されていない状態において、挿入口を通じての処理液の外部への漏れ出しを抑えることが可能になり、例えば処理液が収容された状態で眼用デバイスケースを移動させる際の振動等により、収容領域内の処理液が不用意に外部へ漏れ出すことを防止又は抑制することも実現可能になる。
上記(vii)に記載の発明では、例えば補充容器の内圧が環境の温度変化等によって不必要に変化することを回避したり、或いは、例えば処理領域に収容された処理液からガスが発生する場合でも発生したガスを速やかに外部へ逃がすことも可能になる。
上記(viii)に記載の発明では、ユーザーが補充容器から処理液を注入するに際して、例えば補充容器の注ぎ口の先端部が容器受部へ当接するまで挿入して使用させるようにすることで、挿入口に対する補充容器の注ぎ口の挿入長さを安定して規定することが可能になる。それ故、例えば挿入口に対する補充容器の注ぎ口の挿入深さが足りないことによる処理液の漏れ出しや、挿入口に対する補充容器の注ぎ口の挿入深さが深すぎることによる眼用デバイスへの干渉や弁体への負荷を低減することも可能になる。
上記(ix)に記載の発明では、補充容器の注ぎ口が収容領域に充填された処理液に対して不必要に接触することを防止されて、例えば処理液を収容領域ヘ充填した後の処理液の補充容器への逆流の回避が図られ得る。また、収容領域に充填された処理液中の雑菌の補充容器内への侵入や、補充容器の注ぎ口の周囲に付着した雑菌等の収容領域に充填された処理液への移行などについても、抑制乃至は防止の効果が発揮され得る。
上記(x)に記載の発明では、例えば補充容器から処理領域へ充填された処理液が、容器受部に残留した場合でも、発泡に伴って当該容器受部にまで達した処理液によって処理容器内で循環可能となる。それ故、仮に容器受部に処理液が残留しても、残留した過酸化水素水等の処理液が中和されずに刺激物として残されたり、汚染等されたりする不具合が回避され得る。
上記(xi)に記載の発明では、処理液に作用する作用物が配された収容領域内に眼用デバイスを配置せしめた状態下で、補充容器から収容領域内へ処理液を注入して充填することができる。具体的には、例えば過酸化水素水によるコンタクトレンズの殺菌処理に際して、収容領域内に配された作用物としての触媒による過酸化水素水の分解が、コンタクトレンズを浸漬するより前の段階で開始されるのを避けることも可能になる。
上記(xii)に記載の発明では、補充容器の注ぎ口から流出した処理液を案内流路によって予め設定した特定の箇所に導いて収容領域に充填させることができる。それ故、処理液の注入操作に際しての処理液の流れをより飛び散り等の少ない箇所に設定したり、より安定した注入状態を実現したりすることも可能になる。なお、案内流路は、例えば注ぎ口の先端部の当接位置から下方に向かう傾斜勾配をもって延びる凹状の溝の他、トンネル状の孔によって、或いはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。特にトンネル状の孔とされた案内流路では、孔の周壁によって処理液の周囲への飛散をより確実に防止することも可能になる。また、案内流路は単一である必要はなく、複数の案内流路を設けたり、分流や合流する態様の案内流路を採用しても良い。また、容器受部には、補充容器の注ぎ口の先端開口の開口方向前方に位置して、該注ぎ口から流出されて開口方向前方に向かって流れる処理液が当たる遮面状部分を設けることが望ましい。補充容器から収容領域に注がれる処理液の流れの勢いは、注ぎ口の先体開口の前方に向かう方向に大きいことから、処理液の流速を遮面状部分で抑えることで、液面や眼用デバイス,支持部などからの処理液の跳ね返りを軽減することができる。また、遮面状部分の形状を適切に設定することで、注入される処理液を特定の方向に導きつつ収容領域へ導き入れることも可能になる。
上記(xiii)に記載の発明では、収容領域へ注入された処理液が、容器受け部において付着を避けられ又は付着後に速やかに下方へ流下されることで、処理液が容器受け部へ付着して止まり続けることを避け得る。それ故、容器受け部へ付着した処理液に関して、例えば蒸発による特定成分の高濃度化や付着等が生じたり、処理液としての過酸化水素水が触媒で分解されずに残留したりするような問題に対して有効となり得る。
上記(xiv)に記載の発明では、蓋体に支持部と注ぎ口が設けられていることにより、容器本体の構造の簡略化が可能になる。また、蓋体に注ぎ口が設けられており、容器本体に蓋体を装着しなければ注ぎ口が機能しないことから、蓋体が備える支持部へ眼用デバイスを支持せしめてから蓋体を容器本体へ装着した後に、処理液を注ぎ口から収容領域へ注入して充填する一連の処理を、ユーザーに対して正しく導いて行わせることが容易となる。更に、ケース本体の成立状態での容器受部の位置が、挿入口よりも下方で且つ眼用レンズの支持位置よりも上方に設定されていることから、ユーザーが処理液を注入する際に、補充容器の注ぎ口が挿入部によっても位置決めされやすいことに加えて、注ぎ口が眼用デバイスへ不用意に干渉することも避けやすい。
上記(xv)に記載の発明では、例えば眼に入ると大きな刺激を生ずる過酸化水素水等を処理液として用いて眼用デバイスの殺菌や消毒、洗浄等を眼用デバイスの使用者が行なう際に、かかる処理液の注入時に不用意にケース外へ処理液が飛散し、手指を介するなどして眼に刺激を受けるリスクが軽減され得る。
上記(xvi)に記載の発明では、各種の眼用レンズ(屈折等の光学作用を有しないものを含む)において、例えば流通用や保存用、殺菌等の処置用などとして、眼用レンズの種別の他、専門家や一般ユーザーなどの各ユーザー毎のニーズに応える各種態様で提供され得る。例えば、処理液を注入する補充容器として、一般ユーザーが使用する個別の小容量のボトルタイプを採用する他、メーカーが製造ライン上で使用する処理液供給ラインを含む大容量のタンクタイプなどを採用することもできる。
上記(xvii)に記載の発明では、ケース本体の開口部へ蓋体が装着されて大きな開口の無い状態で、補充容器から処理液を収容領域へ流し込んで注入することができる。それ故、大きく開口した開口部を通じて、収容領域へ流し込んだ処理液が外部へ飛び散ることが防止され得て、飛び散りの少ない処理液の注入操作をユーザーに行わせるように仕向けることが実現可能となる。
上記(xviii)に記載の発明では、本態様の補充容器は、注ぎ口の先端部から突出する突起部を容器受部へ押し付けることで、注ぎ口を開口させて処理液を流出させることができる。それ故、補充容器の注ぎ口の先端側を容器受部へ押し付けることで、眼用デバイスケースに対して補充容器を安定した位置決め状態として、処理液を注入することができる。また、処理液を眼用デバイスケースへ注入する際に、注ぎ口の開口方向の前方には、容器受部が位置せしめられることから、補充容器の注ぎ口から開口方向前方に向かって勢い良く流出した処理液も容器受部へ当たることで分散や流速低下されることとなり、処理液の跳ね返りによる外部への飛散の軽減も図られ得る。
上記(xix)に記載の発明では、眼用デバイスケースに設けられた容器受部に対して適切に合った注ぎ口を備えた補充容器を、眼用デバイスケースと組み合わせて一般ユーザーへ提供することができる。特に、前記第十八の態様に係る補充容器と組み合わせたことで、処理液を眼用デバイスケースへ注入するに際して、例えば補充容器の注ぎ口を眼用デバイスケースの容器受部に設けられた押付部等へ押し付けるまでの段階、或いは注入後に補充容器を眼用デバイスケースから引き離す段階などにおいて、眼用デバイスケースから離れた補充容器の注ぎ口から処理液が意図せずに流出してしまうことが防止される。即ち、補充容器における処理液の流出口が遮断弁体によって閉じられていることから、補充容器を傾けるだけで処理液が意図せずこぼれてしまうということもない。また、遮断弁体を備えた補充容器を採用したことで、眼用デバイスのすすぎ液として間違って使用してしまうことを効果的に防止できる利点もある。即ち、眼用デバイスのすすぎ液は、下方へ向けた容器の注ぎ口から眼用デバイスに対して直接に注ぎかけるように用いられるのが一般的であり、注ぎ口から突出した突起部を押し込まなければ処理液が流出しない遮断弁体があると使用しづらい。それ故、すすぎ液に適さない洗浄液や消毒液の如き処理液の補充容器において遮断弁体を備えることで、万一間違えて当該補充容器に収容された処理液をすすぎに使用しようとして、補充容器を持って逆さにして容器周壁を押圧等しても、処理液が出てしまうことがなく、眼用デバイスケースの収容領域への充填を前提としないユーザーの不用意による誤使用を防止することも可能となる。
別体の補充容器から眼用デバイスケースへの処理液の注入に際して処理液が飛び散ることなどに起因する、例えば使用者の眼への悪影響等という、従来では認識すらされていなかった新たな課題を解決し得る新規な構造の眼用デバイスケースを提供する。
コンタクトレンズ16等の眼用デバイスと共に処理液12を収容するケース本体18と蓋体20を含む眼用デバイスケース10において、補充容器100の注ぎ口106が接触せしめられて処理液12の注入を許容する容器受部48を設けた。