(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1〜10に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0011】
[態様1]
本技術の一態様に係る工作機械1は、主軸中心線AX1を中心としてワークW1を回転させる主軸(例えば背面主軸52)と、前記主軸中心線AX1と並行したロッド112を進退させるアクチュエーター110と、連結位置P1と待機位置P2とに切り替えられて保持される連結部材200と、を備えている。前記連結位置P1は、前記主軸(52)内に挿入された排出軸72と前記ロッド112とを連結する位置である。前記待機位置P2は、少なくとも前記排出軸72と接続しない位置である。前記連結部材200が前記連結位置P1において前記排出軸72と前記ロッド112とを連結している場合には、前記ロッド112の進退に合わせて前記排出軸72が前記連結部材200とともに前記主軸中心線方向(Z軸方向)へ移動する。
【0012】
上記態様1では、排出装置にアクチュエーター110を用いる場合には連結部材200を連結位置P1に保持して排出軸72とロッド112とを連結することにより、アクチュエーター110が排出軸72を主軸中心線方向(Z軸方向)へ移動させることができる。また、排出装置にアクチュエーター110を用いない場合には連結部材200を少なくとも排出軸72と接続しない待機位置P2に保持することにより、パイプ式排出装置等といった別の排出装置を使用することができる。また、排出軸72を使用しない場合に連結部材200を取り外して保管する必要が無い。従って、本態様は、排出装置を切り替える作業を容易にすることが可能な工作機械を提供することができる。
【0013】
ここで、主軸は、背面主軸に限定されず、正面主軸でもよい。
ワークの概念には、製品も含まれるものとする。
尚、上記態様1の付言は、以下の態様も同様である。
【0014】
[態様2]
本工作機械1は、前記主軸中心線AX1及び前記ロッド112に並行したガイド軸G0を備えてもよい。
図5に例示するように、該ガイド軸G0の中心線AX2と前記主軸中心線AX1との距離L1、及び、前記ガイド軸G0の中心線AX2と前記ロッド112の中心線AX3との距離L2は、前記主軸中心線AX1と前記ロッド112の中心線AX3との距離L3よりも短くてもよい。前記連結部材200は、前記ガイド軸G0を通す穴222を有してもよい。前記連結部材200は、前記ガイド軸G0に沿って前記主軸中心線方向(Z軸方向)へ移動可能でもよい。前記連結部材200は、前記ガイド軸G0を中心として回転することにより前記連結位置P1と前記待機位置P2とに切り替えられてもよい。本態様は、ロッド112や排出軸72に加わるねじれ方向の力を低減させることができるので、より円滑に、ロッドを進退させて排出軸を主軸中心線方向へ移動させることができる。
尚、上記態様2には含まれないが、工作機械にガイド軸が無い場合も、本技術に含まれる。
【0015】
[態様3]
前記連結部材200は、前記待機位置P2から前記連結位置P1に移動する時に前記ロッド112が入る溝262が形成された係合部(例えば係合部材260)を有してもよい。前記ロッド112は、前記溝262に入る挿入部114が形成されて該挿入部114が前記溝262に入ると前記ロッド112の進退方向へ相対的に移動しないように前記係合部(260)と係合する係合形状113を有してもよい。本態様は、ねじを使用しなくても連結部材200を待機位置P2から連結位置P1に移動させると連結部材200とロッド112とが係合するので、排出装置を切り替える作業を容易にする好適な工作機械を提供することができる。
尚、上記態様3には含まれないが、ロッドに係合形状が無くねじによりロッドと連結部材とが接続される場合等も、本技術に含まれる。
【0016】
(2)工作機械の構成の具体例:
図1は、工作機械1の例としてNC(数値制御)旋盤の構成を模式的に例示している。
図1に示す工作機械1は、NC装置80、固定されたベース40に設置された正面主軸台41、固定されたベース50に設置された背面主軸台51、固定されたベース45に設置された刃物台46、等を備えている。NC装置80は、前述の各部41,51,46等の動作を制御する。
【0017】
正面主軸台41は、主軸中心線AX0に沿ったZ軸方向へ移動可能とされている。NC装置80は、正面主軸台41の駆動部(不図示)を介して正面主軸台41のZ軸方向における位置を制御する。正面主軸台41に設けられた正面主軸42は、Z軸方向へ挿入された円柱状(棒状)のワークW0をコレット(不図示)で解放可能に把持し、ワークW0の長手方向に沿う主軸中心線AX0を中心としてワークW0を回転させる。尚、本具体例のZ軸方向は水平方向であるが、Z軸方向は水平方向に限定されない。
【0018】
背面主軸台51は、主軸中心線AX1に沿ったZ軸方向、及び、このZ軸方向と直交(交差)するY軸方向へ移動可能とされている。NC装置80は、背面主軸台51の駆動部(不図示)を介して背面主軸台51のZ軸方向及びY軸方向における位置を制御する。背面主軸台51に設けられた背面主軸52は、Z軸方向へ挿入された正面加工後のワークW1を解放可能に把持し、主軸中心線AX1を中心としてワークW1を回転させる。背面主軸52は、正面主軸と対向する意味で対向主軸と呼ばれることがある。本具体例のY軸方向は水平方向であるが、Y軸方向は水平方向に限定されない。
【0019】
刃物台46は、ワークW0,W1を加工するための複数の工具T1が取り付けられ、Z軸方向及びY軸方向と直交(交差)するX軸方向へ移動可能とされている。NC装置80は、刃物台46の駆動部(不図示)を介して刃物台46のX軸方向における位置を制御する。本具体例のX軸方向は鉛直方向であるが、X軸方向は鉛直方向に限定されない。刃物台には、タレット刃物台、櫛型刃物台、等を用いることができる。工作機械には、複数種類の刃物台が設置されてもよい。また、各部41,51,46等の移動方向は、
図1に示す方向に限定されない。
【0020】
図2は、本技術の一実施形態に係る主軸となる背面主軸を含む背面主軸台の主軸中心線を通る縦断面を例示している。
図3は、連結部材が連結位置にある状態の背面主軸台の後部を例示する斜視図である。
図3では、アクチュエーター110のシリンダー111からロッド112の大部分を進出させた、すなわち、ロッド112を大きく後退させた状態の背面主軸台51の後部を示している。
図4は、連結部材が待機位置にある状態で
図3とは別の角度から背面主軸台の後部を例示する斜視図である。
図4では、シリンダー111にロッド112の大部分を退避させた、すなわち、ロッド112を大きく前進させた状態の背面主軸台51の後部を示している。
図2〜4等に示す背面主軸台51には、把持部60を有する背面主軸52を含む回転部U1、背面主軸52を回転可能に支持する支持部U2、及び、製品排出部材70とアクチュエーター110と連結部材200を有する製品排出装置100が設けられている。製品排出装置100は、概ね、支持部U2に取り付けられて移動しないように固定された支持プレートU2pの上に配置されている。
図2〜4に示す製品排出装置100は、いわゆるシリンダー式排出装置である。排出部材70は、交換部品であり、製品通過パイプ400等に変えられることがある。
【0021】
背面主軸52は、主軸中心線AX1に沿って貫通した穴を有し、支持部U2の本体部21に対してベアリングB1を介して回転可能に取り付けられている。背面主軸52には、チャックスリーブ63、及び、押しスリーブ65がZ軸方向(主軸中心線方向の例)へ挿入されている。これらチャックスリーブ63、及び、押しスリーブ65は、主軸中心線AX1に沿って貫通した穴を有し、排出部材70がZ軸方向へ挿入されている。背面主軸52は、排出部材70の周りでチャックスリーブ63及び押しスリーブ65とともに主軸中心線AX1を中心として回転する。背面主軸52の外周には、支持部本体部21側のステーター56と背面主軸52側のローター57を有するビルトインモーター55が取り付けられている。背面主軸52は、NC装置80の制御に従ったタイミングでモーター55により回転駆動される。
【0022】
把持部60は、コレット(把持具)61、キャップ部材62、及び、コレット開閉機構(63〜69)を備え、背面主軸52に挿入されたワークW1を把持して背面加工後に解放する。
コレット61は、背面主軸52の前端部に取り付けられ、正面主軸台41から供給されるワークW1を解放可能に把持し、背面主軸52とともに回転するようにされている。コレット61には、後側となるほど細くなるテーパー部61aが形成されている。このテーパー部61aには、複数の箇所(例えば3箇所)にすりわりが形成されている。キャップ部材62は、背面主軸52の前端部に取り付けられてコレット61を保持する。
【0023】
コレット開閉機構は、チャックスリーブ63、コレット開き用のコイルばね64、押しスリーブ65、爪部材66、シフター67、シフターレバー68、及び、コレット開閉用アクチュエーター69を有している。チャックスリーブ63は、コレットのテーパー部61aに接触し、Z軸方向へスライドするようにされている。ばね64は、前進方向D2側の端部がコレット61に掛止され、後退方向D3側の端部がチャックスリーブ63の内周面に掛止されて、チャックスリーブ63を後退方向D3へ付勢している。ここで、前進方向D2はワークW1をZ軸方向に沿って背面主軸52の前方外部へ押し出す方向であり、後退方向D3は前進方向D2の反対方向である。押しスリーブ65は、チャックスリーブ63の後端部に接触し、Z軸方向へスライドするようにされている。爪部材66は、シフター67のテーパー部67aに接触している先端部66a、及び、押しスリーブ65の後端部に接触している基部66bを有し、軸部66cを中心として傾動可能である。爪部材66自体は、背面主軸52とともに回転する。シフター67は、後側となるほど細くなるテーパー部67aを有し、Z軸方向へスライドするようにされている。シフターレバー68は、アクチュエーター69の駆動によりシフター67をZ軸方向へスライドさせる。アクチュエーター69は、NC装置80の制御に従ってシフターレバー68を駆動する。
【0024】
以上の構成により、アクチュエーター69がシフターレバー68を介してシフター67を後退方向D3へスライドさせると、シフター67が爪部材先端部66aを主軸中心線AX1から遠ざける向きに爪部材66を回転動作させる。すると、爪部材66の基部66bが押しスリーブ65を介してチャックスリーブ63を前進方向D2へスライドさせ、コレット61が締め付けられ、コレット61によりワークW1が把持される。一方、アクチュエーター69がシフターレバー68を介してシフター67を前進方向D2へスライドさせると、コレット開き用ばね64の付勢力によりチャックスリーブ63及び押しスリーブ65が後退する。これにより、爪部材先端部66aが主軸中心線AX1に近付く向きに爪部材66が回転動作するとともに、コレット61が緩められ、背面加工後の製品(ワークW1)がコレット61から解放される。
【0025】
排出部材70は、チャックスリーブ63及び押しスリーブ65の内側に挿入されている。排出部材70は、Z軸方向へ貫通した穴76cを有する筒状の外パイプ76、前端部に排出ピン74が取り付けられた製品排出軸72を有している。外パイプ76の外周には、支持部U2に取り付けられたフランジ部材F2の後端面に接触したストップリング76sが取り付けられている。製品排出軸72は、Z軸方向へ貫通した穴72cを有し、メタルブッシュとも呼ばれる滑り軸受75を介して外パイプ76の内周面に支持されて、外パイプ76の貫通穴76cを貫通してZ軸方向へ移動可能とされている。排出軸72の貫通穴72cは、流体としてブロー用オイル及びブロー用エアを通す。排出軸72の後端部の外周には、後述する連結部材200のシャフトホルダー240が前進方向D2へ移動しないようにするためのストップリング73が外嵌めされている。
正面加工後のワークW1は、緩められている状態のコレット61に挿入されてコレット61に把持される。背面加工後にコレット61が緩められ、排出ピン74を有する排出軸72が前進すると、製品(ワークW1)が前進方向D2へ排出される。
【0026】
排出軸72の後端部に取り付けられた配管部品300は、スイベル継手354に設けられた接続口360に対して着脱可能に取り付けられている。スイベル継手354は、X軸方向と直交する水平面に沿って回転動作可能である。接続口360に取り付けられた配管部品300は、スイベル継手354及び配管351〜353を介してオイル供給部36と圧空供給部37に接続され、ブロー用オイルとブロー用エアが選択的に供給される。
図2,4に示すように、スイベル継手354に接続された共通配管353には、チェックバルブとも呼ばれる逆止め弁を介して、オイル供給部36からのオイル配管351と圧空供給部37からのエア配管352が接続されている。接続口360には、配管部品300が着脱可能に取り付けられる。オイル供給部36からのブロー用オイルは、配管351,353、スイベル継手354、配管部品300、及び、排出軸72の貫通穴72cを通ってコレット61に供給される。これにより、切削くずが除去される。また、圧空供給部37からのブロー用エアは、配管352,353、スイベル継手354、配管部品300、及び、排出軸72の貫通穴72cを通ってコレット61に供給される。これにより、切削くずが除去される。
【0027】
図3,4に示すように、製品(ワークW1)を前進方向D2へ排出するための製品排出装置100は、上記排出部材70の他、アクチュエーター110、ガイド軸G0、待機位置保持具150、連結部材200、及び、配管部材300を有している。
【0028】
図5は、排出軸72とロッド112とが連結部材200により連結された状態において、排出軸72、ロッド112、及び、ガイド軸G0の位置関係を例示している。
図5では、配管部品300を簡略化して示している。
図6は、連結部材200の前進側の面とともに、主軸中心線AX1、ガイド軸G0の中心線AX2、及び、ロッド112の中心線AX3の位置も例示している。
図5に示すロッド112及びガイド軸G0は、主軸中心線AX1と並行している。これにより、移動しないガイド軸G0に対して、ロッド112、連結部材200、及び、排出軸72が円滑に前進方向D2及び後退方向D3へ往復移動することができる。
【0029】
図3〜5等に示すアクチュエーター110は、シリンダー111から後退方向D3へ突出した横断面略円形のロッド112をZ軸方向へ進退させる直動アクチュエーターである。本具体例のシリンダー111はエアシリンダーであるものとするが、アクチュエーターはサーボモーター等でもよい。
図4,5に示すように、ロッド112の後端部には、比較的細い挿入部114、及び、Z軸方向において挿入部114を挟む比較的太い係止部115,116を有する係合形状113が形成されている。挿入部114は、連結部材200が待機位置P2から連結位置P1に回転移動すると連結部材200の係合部材260(係合部の例)の溝262に入る。前進側の係止部115は、連結部材200が連結位置P1にある場合に係合部材260の前進端面261に接触してロッド112に対する連結部材200の前進方向D2への移動を抑止する。後退側の係止部116は、連結部材200が連結位置P1にある場合に係合部材260の深溝部263に入ってロッド112に対する連結部材200の後退方向D3への移動を抑止する。
【0030】
図3〜5等に示すガイド軸G0は、横断面略円形であり、Y軸方向において排出軸72とロッド112との間において排出軸72及びロッド112と並行するようにフランジ部材F2に取り付けられて移動しないように固定されている。ガイド軸G0は、連結部材200の転がり軸受220の貫通穴222を通り抜けており、連結部材200の前進方向D2及び後退方向D3への往復移動をより円滑にする機能を有する。本具体例において、主軸中心線AX1、ガイド軸G0の中心線AX2、及び、ロッド112の中心線AX3は、互いに平行となるように設計されている。
図6に示すように、中心線AX1,AX2,AX3は、Y軸方向に沿った一直線上に並んでいる。これにより、ロッド112や排出軸72に加わるねじれ方向の力が低減し、Z軸方向におけるロッド112の進退や排出軸72の移動がより円滑となる。
【0031】
ここで、
図5に示すように、ガイド軸中心線AX2と主軸中心線AX1との距離をL1とし、ガイド軸中心線AX2とロッド中心線AX3との距離をL2とし、主軸中心線AX1とロッド中心線AX3との距離をL3とする。ガイド軸G0が排出軸72とロッド112との間にあることにより、L1<L3、且つ、L2<L3となっている。Z軸方向において長尺なロッド112からY軸方向において長尺な連結部材200を介してZ軸方向において長尺な排出軸72にZ軸方向への駆動力を伝える場合、ロッド112や排出軸72にねじれ方向(特にY軸方向)への力が加わり易い。L1<L3、且つ、L2<L3であることにより、ロッド112や排出軸72に加わるねじれ方向の力が低減し、Z軸方向におけるロッド112の進退や排出軸72の移動がより円滑となる。
【0032】
また、
図5に示す例では、L1<L2となっており、ガイド軸G0が排出軸72寄りに配置されている。排出軸72は、Z軸方向へ移動する際、外パイプ76の内周面にある滑り軸受75から抵抗を受ける。L1<L2であることにより、排出軸72に加わるねじれ方向の力がさらに低減し、Z軸方向における排出軸72の移動がさらに円滑となる。
【0033】
待機位置保持具150は、支持プレートU2pの上面に対してねじS2により固定された金具である。待機位置保持具150には、連結部材200が
図3,9等に示す連結位置P1から
図4,10に示す待機位置P2に回転移動すると連結部材200の従動側端部212の近傍に取り付けられたねじS1が入る凹部152が形成されている。
【0034】
上記連結部材200は、プレート状の本体部材210を有し、ガイド軸G0を中心として回転することにより、
図3,9等に示す連結位置P1と
図4,10に示す待機位置P2とに切り替えられて保持される。連結位置P1に保持された連結部材200は、背面主軸52内に挿入された排出軸72の後端部と、ロッド112と、を連結し、ロッド112からの前進方向D2及び後退方向D3への駆動力を排出軸72に伝達する。待機位置P2に保持された連結部材200は、ロッド112と排出軸72の両方から離れており、排出部材70を使用しない時でも支持プレートU2p上に残されている。従って、排出軸72を有する排出部材70を使用しない場合に連結部材200を取り外して保管する必要が無い。また、シリンダー111も取り外して保管する必要は無い。
【0035】
図3等に示すように、連結部材200は、連結位置P1において長手方向をY軸方向へ向けて配置される。ここで、連結部材200の両端部の内、ロッド112側の端部を駆動側端部211と呼び、排出軸72側の端部を従動側端部212と呼ぶことにする。連結部材200の本体部材210において、ガイド軸G0と交差する位置の貫通穴214には転がり軸受220が嵌め込まれ、連結位置P1にある時の従動側端部212の上側に凹部213が形成されている。この凹部213には、排出軸72の後端部に接続された配管部品300が配置される。
図5,6等に示すように、本体部材210の前進側の面210aには、従動側端部212の側にシャフトホルダー240が取り付けられ、駆動側端部211の側に係合部材260(係合部の例)が取り付けられている。
図3,8〜10に示すように、本体部材210の後退側の面には、従動側端部212の側にねじS1が取り付けられている。
【0036】
本体部材210に固定された転がり軸受220は、ボールブッシュとも呼ばれ、ガイド軸G0を通す横断面略円形の穴222を有している。転がり軸受220は、ボールを利用した転がり軸受で、直線運動と回転運動が可能である。転がり軸受220を固定した本体部材210は、ガイド軸G0に沿ってZ軸方向へ往復移動可能であり、且つ、ガイド軸G0を中心として回転可能である。従って、連結部材200は、ガイド軸G0を中心として回転することにより連結位置P1と待機位置P2とに切り替えられる。
【0037】
シャフトホルダー240は、
図6に示すように、従動側端部212の側において本体部材210の前進側面210aに対してねじS4により固定されている。シャフトホルダー240は、ねじS4により本体部材210に取り付けられた固定部242、及び、従動側端部212の側にあるヒンジ部246を中心として固定部242に対して回転可能に取り付けられた開閉部244を有している。排出軸72の後端部を挟んだ状態で
図5に示すねじS5により開閉部244を固定部242に固定することができるように、固定部242の凹部242aの形状と開閉部244の凹部244aの形状とが排出軸72の後端部の外周形状に合わせられている。
【0038】
係合部材260は、
図6に示すように、駆動側端部211の側において本体部材210の前進側面210aに対してねじS6により固定されている。係合部材260には、連結部材200が待機位置P2から連結位置P1に回転移動する時にねじ及び取付工具を使用しなくても開口部262aからロッド112の挿入部114が入る略U字状の溝262が形成されている。溝262の開口部262aは、連結部材200が
図4等に示す待機位置P2にある時に水平方向(Y軸方向)を向き、連結部材200が
図3等に示す連結位置P1にある時に下(X軸方向)を向く位置にある。
図4,5に示すように、係合部材260において溝262の後退側には、ロッド112の後退側の係止部116が入る深溝部263が形成されている。連結部材200が連結位置P1にある時、係合部材260の前進端面261にはロッド112の前進側の係止部115が接触する。従って、ロッド112において挿入部114及び係止部115,116を有する係合形状113は、ねじ及び取付工具を使用しなくても連結部材200が待機位置P2から連結位置P1に移動する時に係合部材260と係合する。
尚、背面主軸52、排出部材70、ロッド112、ガイド軸G0、連結部材200、等の各部の主要部は、金属等で形成することができる。
【0039】
ブロー用オイルとブロー用エアが選択的に通る配管部品300は、
図3等に示すように、配管310,320,330、及び、継手315,321,322を有している。接続口360には、直管である配管310の一端が着脱可能に接続されている。配管310の他端には、継手315のエルボー(曲率半径が比較的小さい管継手)が接続されている。継手315の他端には、スイベル継手321が接続されている。スイベル継手321の他端には、直管である配管320の一端が接続されている。配管320の他端には、スイベル継手322の一端が接続されている。スイベル継手322の他端には、エルボーを有する配管330の一端が接続されている。配管330のエルボーには、排出軸72の後端部が接続されている。スイベル継手321,322は、スイベル継手354とともに、X軸方向と直交する水平面に沿って回転動作可能である。共通配管353から排出軸72までの間に3つのスイベル継ぎ手360,321,322が配置されているので、排出軸72の往復移動に伴う配管部品300の移動に必要な空間が少なくて済む。従って、本具体例は、工作機械を小型化することができる。
【0040】
上述した背面主軸台51から排出部材70を取り外すと、別の製品排出装置を構成する通過パイプ400を背面主軸台51に取り付けることができる。
【0041】
図7は、通過パイプが取り付けられた背面主軸台の縦断面を例示している。
図7に示す通過パイプ400は、割パイプ410を介してフランジ部材F2に固定されている。通過パイプ400は、背面加工後の製品(ワークW1)をZ軸方向へ通す貫通穴402を有し、該製品を図示しない後端部から排出する。主軸中心線AX1を中心として通過パイプ400の外側にある割パイプ410は、複数のすりわりを有し、フランジ部材F2のねじS3(
図3参照)により締め付けられると通過パイプ400を固定する。
図7に示す製品排出装置は、いわゆるパイプ式排出装置である。
【0042】
(3)具体例の工作機械の動作、作用、及び、効果:
次に、排出軸72をZ軸方向へ移動させる際の工作機械1の動作を説明する。連結部材200は
図3等に示すように連結位置P1にあり、シャフトホルダー240は
図5等に示すようにストップリング73の後退側の面に接触する位置で排出軸72の後端部と係合し、係合部材260は係止部115の後退側の面に接触する位置でロッド112の後端部と係合しているものとする。
【0043】
NC装置80の制御によりアクチュエーター110がロッド112を後退させると、連結部材200がガイド軸G0に沿って後退し、この連結部材200とともに排出軸72が後退方向D3へ移動する。
図5で示したように、L1<L2<L3であるので、ロッド112や排出軸72に加わるねじれ方向の力が少なくなっており、Z軸方向におけるロッド112や排出軸72の後退方向D3への移動が円滑に行われる。
【0044】
また、NC装置80の制御によりアクチュエーター110がロッド112を前進させると、連結部材200がガイド軸G0に沿って前進し、この連結部材200とともに排出軸72が前進方向D2へ移動する。
図5で示したように、L1<L2<L3であるので、ロッド112や排出軸72に加わるねじれ方向の力が少なくなっており、Z軸方向におけるロッド112や排出軸72の前進方向D2への移動が円滑に行われる。
【0045】
製品(ワークW1)の排出を
図3で示した排出部材70による方式から
図7で示した通過パイプ400による方式に切り替える時、以下の作業を行えばよい。
まず、アクチュエーター110でロッド112を前進させて連結部材200とともに排出軸72を前進させる。次いで、シャフトホルダー240の固定部242から
図5に示すねじS5を外し、
図8に示すようにシャフトホルダー240の開閉部244を開く。これにより、シャフトホルダー240と排出軸72との係合が解除される。次いで、排出軸72の後端部を手でさらに背面主軸52内に押し込み、排出軸72の先端部から排出ピン74を取り外す。次いで、接続口360のナットを緩めて接続口360から配管部品300を取り外し、この配管部品300に接続されている排出軸72を外パイプ76内から後退方向D3へ引き出す。
図9には、背面主軸台51から排出軸72及び配管部品300を取り外した様子を示している。
【0046】
その後、シャフトホルダー240の開閉部244を閉じてねじS5を締める。ここで、ロッド112と係合部材260との係合にねじを使用していないので、ガイド軸G0を中心として連結部材200を連結位置P1から待機位置P2に90°回転させることができる。すると、
図4,10に示すように、係合部材260の溝262及び深溝部263からロッド112の挿入部114及び係止部116が外れ、待機位置保持具150の凹部152に連結部材200のねじS1が入る。このねじS1を締めると、待機位置P2において連結部材200が移動しないように固定される。次いで、フランジ部材F2にある2個のねじS3を緩め、背面主軸52内から外パイプ76を後退方向D3へ引き出す。
【0047】
その後、
図7に示す割パイプ410をフランジ部材F2内に挿入し、背面主軸52内に通過パイプ400を挿入し、2個のねじS3を締めると、
図7で示した製品排出装置が形成される。
【0048】
製品の排出を
図7で示した通過パイプ400による方式から
図3で示した排出部材70による方式に切り替える時には、以下の作業を行えばよい。
まず、フランジ部材F2にある2個のねじS3を緩め、背面主軸52内から通過パイプ400を後退方向D3へ引き出す。また、フランジ部材F2内から割パイプ410を後退方向D3へ引き出す。
【0049】
その後、背面主軸52内に外パイプ76を挿入し、2個のねじS3を締める。この状態が
図10に示されている。次いで、連結部材200のねじS1を緩め、連結部材200の固定を解除する。ここで、係合部材260とロッド112との係合にねじを用いていないので、ガイド軸G0を中心として連結部材200を待機位置P2から連結位置P1まで90°回転させることができる。すなわち、待機位置保持具150の凹部152から連結部材200のねじS1が外れた後、係合部材260の溝262及び深溝部263にロッド112の挿入部114及び係止部116が入る。これにより、Z軸方向において挿入部114の両側にある係止部115,116が係合部材260を挟み、ねじ及び取付工具を使用しなくてもロッド112の進退方向へ相対的に移動しないように係合部材260とロッド112とが係合する。次いで、シャフトホルダー240の固定部242から
図5に示すねじS5を外し、
図9に示すようにシャフトホルダー240の開閉部244を開く。
【0050】
その後、配管部品300に接続されている排出軸72を外パイプ76内に挿入し、配管部品300を接続口360に接続する。また、排出軸72の先端部に排出ピン74を取り付ける。この状態が
図8に示されている。次いで、排出軸72のストップリング73の後退側においてシャフトホルダー240の開閉部244を閉じ、
図5に示すねじS5を締める。これにより、排出軸72とシャフトホルダー240とが係合し、ロッド112と排出軸72とが連結部材200により連結される。
【0051】
その後は、NC装置80の制御によりアクチュエーター110がロッド112をZ軸方向へ進退させると、連結部材200がガイド軸G0に沿ってZ軸方向へ移動し、この連結部材200とともに排出軸72がZ軸方向へ移動する。
【0052】
以上説明したように、製品排出装置にアクチュエーター110を用いる場合には連結部材200を連結位置P1に保持して排出軸72とロッド112とを連結することにより、アクチュエーター110が排出軸72をZ軸方向へ往復移動させることができる。また、製品排出装置にアクチュエーター110を用いない場合には連結部材200を排出軸72とロッド112とに接続しない待機位置P2に保持することにより、通過パイプ400等を使用することができる。この時、連結部材200やシリンダー111を取り外して保管する必要は無い。また、ねじ及び取付工具を使用しなくても、連結部材200を待機位置P2から連結位置P1に移動させることにより連結部材200とロッド112とが係合する。従って、本具体例は、製品排出装置を切り替える作業が容易となる。
【0053】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、正面主軸台に排出装置を着脱可能に取り付ける場合にも、本技術を適用可能である。
中心線AX1,AX2,AX3の位置関係は、
図6で示したような一直線上が好ましいものの、一直線上に限定されない。例えば、
図6で示した位置関係からガイド軸G0の中心軸AX2がX軸方向へずれる等、中心線AX1,AX2,AX3が直線上にない位置関係である場合も、本技術に含まれる。
また、工作機械1にガイド軸G0が無く、連結部材200がロッド112を中心として回転することにより連結位置と待機位置とが切り替わる場合も、本技術に含まれる。この場合の待機位置は、連結部材200がロッド112と接続したまま排出軸72から離れる位置である。
さらに、連結部材における連結位置と待機位置との移動は、回転移動に限定されず、平行移動等でもよい。
【0054】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、排出装置を切り替える作業を容易にすることが可能な工作機械等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。