(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジオール成分(但し、イソソルビドを除く)とジカルボン酸成分(但し、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸を除く)とを反応させてポリエステル樹脂を製造する方法であって、前記ジオール成分が、少なくとも請求項1記載の式(1)で表される9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール単位に対応するジオール成分を含み、ジカルボン酸成分が、少なくとも2,5−フランジカルボン酸成分を含み、前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール成分と前記2,5−フランジカルボン酸成分とを、前者/後者=30/70〜70/30(モル比)の割合で用いるポリエステル樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、少なくとも9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール単位を含むジオール単位と、少なくとも2,5−フランジカルボン酸単位を含むジカルボン酸単位との繰り返し単位で形成されている。なお、以下の説明において、ジオール単位はジオール成分(A)に由来し、ジカルボン酸単位はジカルボン酸成分(B)に由来するため、エステル化反応を除き、ジカルボン酸単位をジカルボン酸成分と同義に用い、ジオール単位をジオール成分と同義に用いる場合がある。
【0027】
[ジオール単位(又は成分)]
ジオール単位(又は成分)は、少なくとも9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール単位(又は成分)を含んでいればよく、このようなジオール単位は、例えば、下記式(1)で表すことができ、このジオール単位に対応するジオール成分は下記式(1a)で表すことができる。
【0029】
(式中、環Z
1、Z
2、Ar
1及びAr
2はそれぞれ同一又は異なってアレーン環を示し、R
1a及びR
1bはそれぞれ同一又は異なってアルキレン基、m1及びm2はそれぞれ同一又は異なって0又は1以上の整数、R
2a、R
2b、R
3a及びR
3bはそれぞれ同一又は異なって置換基、n1、n2、k1及びk2はそれぞれ同一又は異なって0又は1〜4の整数を示す)。
【0030】
前記式(1)で表される単位において、環Z
1及びZ
2で表されるアレーン環には、単環式又は多環式アレーン環が含まれ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環及び環集合アレーン環が含まれる。
【0031】
単環式アレーン環としては、例えば、ベンゼン環が例示でき、縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレンなどの縮合二環式C
10−16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン、フェナントレンなどの縮合三環式C
12−16アレーン環)などの縮合二乃至四環式C
10−20アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環は、縮合二乃至三環式C
10−16アレーン環、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、特に、ナフタレン環であってもよい。
【0032】
環集合芳香族炭化水素環(環集合アレーン環)としては、例えば、ビアレーン環、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC
6−12アレーン環、テルアレーン環、例えば、テルフェニレン環などのテルC
6−12アレーン環などが例示できる。好ましい環集合芳香族炭化水素環は、環集合C
12−18アレーン環、例えば、ビC
6−10アレーン環、特にビフェニル環などであってもよい。
【0033】
好ましい環Z
1及びZ
2は、ベンゼン環、多環式C
10−20アレーン環(例えば、C
10−14アレーン環、特に、ナフタレン環及びビフェニル環)が挙げられる。環Z
1及びZ
2は、同一又は異なって、ベンゼン環又はナフタレン環である場合が多い。なお、2つの環Z
1及びZ
2は同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0034】
R
1a及びR
1bで表されるアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であってもよく、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などのC
2−6アルキレン基、好ましくはC
2−4アルキレン基、さらに好ましくはC
2−3アルキレン基、特にエチレン基が例示できる。分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などのC
3−6アルキレン基、好ましくはC
3−4アルキレン基、特にプロピレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C
2−6アルキレン基、例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
2−4アルキレン基であってもよい。
【0035】
基R
1a及びR
1bは同一又は異なる種類(炭素数又は構造の異なる)のアルキレン基で構成してもよく、通常、同一であってもよい。
【0036】
基OR
1a及びOR
1bの繰り返し単位数m1及びm2は、0又は1〜10の整数、例えば、1〜10(例えば、1〜7)程度、好ましくは1〜5(例えば、1〜4)、さらに好ましくは1〜3(例えば、1〜2)、特に1であってもよい。なお、m1及びm2は同一又は異なっていてもよい。
【0037】
また、m1及びm2の合計(m1+m2)の平均値は、0〜20(例えば、1〜20)程度の範囲から選択でき、通常、2〜15(例えば、2〜13)、好ましくは2〜12(例えば、2〜10)、さらに好ましくは2〜8(例えば、2〜6)、特に2〜5程度であってもよく、2〜4(例えば、2〜3)、特に2程度であってもよい。上記m1及びm2が大きすぎると、耐熱性と高屈折率とを両立できなくなるおそれがある。
【0038】
なお、m1及びm2が2以上であるとき、各繰り返し単位において、基R
1a及びR
1bで表されるアルキレン基は、同一又は異なる種類(炭素数又は構造の異なる種類)のアルキレン基で構成してもよく、通常、同一であってもよい。
【0039】
前記式(1)において、基[−(OR
1a)
m1−]及び[−(OR
1b)
m2−]は、環Z
1及びZ
2の適当な位置に置換でき、例えば、環Z
1及びZ
2がベンゼン環である場合、2〜4位のいずれであってもよく、3位又は4位であってもよい。また、環Z
1及びZ
2がナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8位である場合が多く、フルオレン環との位置関係で、1,5−位、2,5−位、1,6−位、2,6−位などの関係で置換していてもよく、例えば、1,5−位、2,6−位などの位置関係(特に、2,6−位の位置関係)である場合が多い。また、環集合アレーン環Z
1及びZ
2において、置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、環Z
1及びZ
2がビフェニル環である場合には、ビフェニル環の3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合している場合が多く、例えば、3,5−位、3,6−位、3,3’−位、3,4’−位、4,2−位、4,3’−位、4,4’−位などの置換位置に置換していてもよく、好ましくは3,5−位、3,6−位、3,4’−位、4,2−位、4,4’−位、さらに好ましくは3,6−位、4,2−位の置換位置で置換していてもよい。
【0040】
置換基R
2a及びR
2bは、後述するジカルボン酸成分との反応に不活性な置換基であればよく、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC
5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC
6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC
5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC
6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC
1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC
5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC
6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルチオ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのC
1−6アルキル−カルボニル基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC
1−6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC
1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC
1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
【0041】
これらの基R
2a及びR
2bのうち、代表的な基R
2a及びR
2bには、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい基R
2a及びR
2bとしては、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC
6−10アリール基)、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルコキシ基など)など、特にC
1−4アルキル基(例えば、メチル基)が例示できる。なお、基R
2a及びR
2bがアリール基であるとき、基R
2a及びR
2bは、それぞれ、環Z
1及びZ
2とともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。基R
2a及びR
2bの種類は、同一の又は異なる環Z
1及びZ
2において、同一又は異なっていてもよい。
【0042】
置換数n1及びn2は、環Z
1及びZ
2の種類などに応じて、0又は1〜4の整数、例えば、0〜3(例えば、0〜2)、好ましくは0又は1(例えば、0)であってもよい。特に、n1及びn2が1又は2である場合、環Z
1及びZ
2がベンゼン環、R
2a及びR
2bがメチル基であってもよく、n1及びn2が1である場合、環Z
1及びZ
2がナフタレン環又はビフェニル環、R
2a及びR
2bがメチル基であってもよい。なお、基R
2a及びR
2bの置換位置は、特に限定されない。
【0043】
環Ar
1及びAr
2で表されるアレーン環としては、単環式アレーン環(ベンゼン環など)、縮合多環式アレーン環(ナフタレン環などのC
10−16アレーン環など)などが例示できる。好ましい環Ar
1及びAr
2はベンゼン環又はナフタレン環(特にベンゼン環)である。
【0044】
環Ar
1がベンゼン環であり、環Ar
2がナフタレン環である化合物は、ベンゾ[a]フルオレン化合物、ベンゾ[b]フルオレン化合物、ベンゾ[c]フルオレン化合物を形成してもよい。
【0045】
基R
3a及びR
3bとしては、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC
1−6アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC
6−10アリール基)などが挙げられる。これらの基R
3a及びR
3bのうち、C
1−4アルキル基(特に、メチル基)が好ましい。なお、基R
3a及びR
3bの種類は、同一又は異なっていてもよく、置換数k1及びk2が2以上である場合、基R
3a及びR
3bの種類は、それぞれ、フルオレン環のベンゼン環上において、同一又は異なっていてもよい。
【0046】
置換数k1及びk2は0〜4の整数から選択でき、好ましくは0〜1、特に0である。なお、置換数k1及びk2は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R
3a及びR
3bの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、7−位、2−及び7−位など)であってもよい。
【0047】
前記式(1a)で表される代表的なジオール成分としては、以下のような化合物が例示できる。
【0048】
(a)環Ar1及びAr2がベンゼン環である化合物
式(1a)で表され、環Ar
1及びAr
2がベンゼン環である化合物には、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類が含まれる。このような代表的な化合物には、前記式(1a)において、(a1)環Z
1及びZ
2がベンゼン環であり、m1及びm2が1である9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類;(a2)環Z
1及びZ
2がナフタレン環であり、m1及びm2が1である9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類;(a3)前記(a1)(a2)の化合物において、m1及びm2が2以上である9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)フルオレン類などが含まれる。
【0049】
(a1)9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類
9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類としては、R
2a及びR
2bが炭化水素基であり、n1及びn2が0又は1である化合物が好適に使用される。
【0050】
具体的には、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC
2−6アルコキシフェニル)フルオレンなど;9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−(2−ヒドロキシエトキシ)−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C
1−6アルキルヒドロキシC
2−6アルコキシフェニル)フルオレンなど;9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジC
1−6アルキルヒドロキシC
2−6アルコキシフェニル)フルオレンなど;9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C
5−10シクロアルキルヒドロキシC
2−6アルコキシフェニル)フルオレンなど;9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C
6−10アリールヒドロキシC
2−6アルコキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0051】
(a2)9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類
上記9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類には、上記例示の9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類の環Z
1及びZ
2がナフタレン環である9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−6−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス[1−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−ナフチル)]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC
2−6アルコキシナフチル)フルオレンなど}などが含まれる。
【0052】
(a3)9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)フルオレン類
さらに、上記9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)フルオレン類には、前記(a1)(a2)の化合物に対応する9,9−ビス[ヒドロキシポリC
2−6アルコキシC
6−10アリール)フルオレン類、例えば、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシジ又はトリC
2−6アルコキシフェニル]フルオレンなど;9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−2−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[モノ又はジC
1−4アルキルヒドロキシジ又はトリC
2−6アルコキシフェニル]フルオレンなど;9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C
6−10アリールヒドロキシジ又はトリC
2−6アルコキシフェニル]フルオレンなど;9,9−ビス[2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−6−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシジ又はトリC
2−6アルコキシナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシジ又はトリC
2−6アルコキシC
6−10アリール)フルオレン類などが含まれる。
【0053】
(b)環Ar1及び環Ar2のうち少なくとも一方がナフタレン環である化合物
代表的な上記式(1a)で表される化合物には、(b1)一方の環Ar
1がベンゼン環であり、他方の環Ar
2がナフタレン環であるベンゾフルオレン類、(b2)環Ar
1およびAr
2がナフタレン環であるジベンゾフルオレン類などが含まれる。
【0054】
(b1)ベンゾフルオレン類
ベンゾフルオレン類には、例えば、11,11−ビス(ヒドロキシC
2−6アルコキシC
6−10アリール)ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス(ヒドロキシC
2−6アルコキシC
6−10アリール)ベンゾ[b]フルオレン類、7,7−ビス(ヒドロキシC
2−6アルコキシC
6−10アリール)ベンゾ[c]フルオレン類が含まれる。
【0055】
具体的には、前記式(1a)において、環Z
1およびZ
2がベンゼン環であり、m1及びm2が1であるベンゾフルオレン類、例えば、11,11−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ベンゾ[b]フルオレン類、7,7−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ベンゾ[c]フルオレン類;Z
1及びZ
2がナフタレン環であり、m1及びm2が1であるベンゾフルオレン類、例えば、11,11−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−6−ナフチル)ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−6−ナフチル)ベンゾ[b]フルオレン類、7,7−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−6−ナフチル)ベンゾ[c]フルオレン類;Z
1及びZ
2がベンゼン環であり、m1及びm2が2以上であるベンゾフルオレン類、例えば、11,11−ビス[2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−6−ナフチル]ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス[2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−6−ナフチル]ベンゾ[b]フルオレン類などが含まれる。
【0056】
(b2)ジベンゾフルオレン類
代表的なジベンゾフルオレン類には、12,12−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)ジベンゾ[b,h]フルオレン類が含まれる。
【0057】
具体的には、前記式(1)において、Z
1及びZ
2がベンゼン環であり、m1及びm2が1であるジベンゾフルオレン類、例えば、12,12−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジベンゾ[b,h]フルオレン類;Z
1及びZ
2がナフタレン環であり、m1及びm2が1であるジベンゾフルオレン類、例えば、12,12−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−6−ナフチル)ジベンゾ[b,h]フルオレン類;Z
1及びZ
2がベンゼン環であり、m1及びm2が2以上であるジベンゾフルオレン類、例えば、12,12−ビス(4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル)ジベンゾ[b,h]フルオレン類などが含まれる。
【0058】
前記式(1a)で表されるジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、このようなジオール成分の使用により前記式(1)で表されるジオール単位をポリエステル樹脂に導入できる。
【0059】
ジオール単位に対応するジオール成分(A)は、少なくとも9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール成分(第1のジオール成分)(A1)を含んでいればよく、ジオール成分(A)は、第1のジオール成分(A1)は、第2のジオール成分(A2)とを含んでいてもよい。
【0060】
第2のジオール成分(A2)は、脂肪族ジオール成分、脂環族ジオール成分、芳香族ジオール成分から選択された少なくとも一種であってもよい。
【0061】
脂肪族ジオール成分としては、例えば、アルカンジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのC
2−10アルカンジオール、好ましくはC
2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC
2−4アルカンジオール);ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC
2−4アルカンジオールなどが例示できる。
【0062】
脂環族ジオール成分としては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC
5−8シクロアルカンジオール);ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC
1−4アルキル)C
5−8シクロアルカンなど);イソソルビド、1,4:3,6−ジアンヒドロマンニトール、1,4:3,6−ジアンヒドロイジトール、1,4−アンヒドロエリスリトールなど;ノルボルナンジオール、アダマンタンジオールなどのビ又はトリシクアルカンジオール;3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのジ(ヒドロキシC
1−10アルキル)テトラオキサスピロアルカン)などのオキサスピロ環式ジオールなどが例示できる。
【0063】
芳香族ジオール成分としては、例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ハイドロキノン、レゾルシノールなど);ジヒドロキシアルキルアレーン(例えば、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC
1−4アルキル)C
6−10アレーンなど);ビスフェノール類(例えば、ビフェノール、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C
1−10アルカン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C
4−10シクロアルカンなど);ビスフェノール類(ビフェノール、ビスフェノールA、F、Sなど)のアルキレンオキサイド付加体(例えば、エチレンオキサイド付加体などのC
2−3アルキレンオキサイド付加体など)などが例示できる。
【0064】
これらの第2のジオール成分(A2)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0065】
ポリエステル樹脂の柔軟性を向上させ、複屈折を低減するためには、第2のジオール成分(A2)は、脂肪族ジオール成分、例えば、エチレングリコールなどのC
2−6アルカンジオールなどが有用であり、ポリエステル樹脂の機械的特性を低減させることなく、複屈折を低減するためには、脂環族ジオール成分、例えば、シクロヘキサンジオールなどのC
5−8シクロアルカンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC
1−4アルキル)C
5−8シクロアルカンなどが有用である。ポリエステル樹脂の耐熱性、機械的特性、屈折率を向上させるためには、芳香族ジオール成分、例えば、ベンゼンジメタノール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体が有用である。
【0066】
第1のジオール成分(A1)の割合は、ジオール成分の全体((A1)+(A2))に対して、10〜100モル%(例えば、20〜98モル%)、好ましくは30〜100モル%(例えば、40〜95モル%)、さらに好ましくは50〜100モル%(例えば、60〜90モル%)程度であってもよい。また、第1のジオール成分(A1)により耐熱性、機械的強度、有機溶剤に対する溶解性を有効に向上させるためには、70〜100モル%(例えば、75〜100モル%)、特に90〜100モル%(例えば、93〜100モル%)程度であってもよい。本発明では、第1のジオール成分(A1)に対応する単位を比較的多くの割合でポリエステル樹脂に導入でき、ポリエステル樹脂(樹脂を形成する単位全体)中の第1のジオール成分(A1)に対応する単位の割合は、5〜50モル%(例えば、10〜50モル%)、好ましくは20〜50モル%(例えば、25〜45モル%)、さらに好ましくは30〜50モル%(例えば、35〜45モル%)程度であってもよく、45〜50モル%(例えば、46〜50モル%)程度であってもよい。
【0067】
なお、イソソルビドを第2のジオール成分(A2)として使用してもよいが、本発明では、第2のジオール成分(A2)がイソソルビドを含まなくてもポリエステル樹脂の耐熱性及び機械的特性を向上できる。そのため、イソソルビド単位のポリエステル樹脂(ジオール単位及びジカルボン酸単位の総量)への導入量は、0〜5モル%(好ましくは0〜3モル%)であってもよく、イソソルビドを導入しなくてもよい。
【0068】
[ジカルボン酸単位(又は成分)]
ジカルボン酸単位に対応するジカルボン酸成分(B)は、2,5−フランジカルボン酸単位に対応する2,5−フランジカルボン酸成分(B1)を含んでいればよく、2,5−フランジカルボン酸成分(B1)は、遊離の2,5−フランジカルボン酸であってもよく、その反応性誘導体、例えば、低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステルなどのC
1−4アルキルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライドなど)又は酸無水物であってもよい。工業的には、2,5−フランジカルボン酸成分は、2,5−フランジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸C
1−2アルキルエステルを用いる場合が多い。
【0069】
なお、2,5−フランジカルボン酸(FDCA)は、慣用の方法、例えば、セルロース、グルコースやフルクトースから(5−ヒドロキシメチル)フルフラールを経由して調製でき、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックの原料として利用できる数少ないバイオマス由来の芳香族ジカルボン酸である。
【0070】
ジカルボン酸単位に対応するジカルボン酸成分(B)は、2,5−フランジカルボン酸成分(第1のジカルボン酸成分)(B1)と、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分及び複素環式ジカルボン酸成分から選択された少なくとも一種の第2のジカルボン酸成分(B2)とを含んでいてもよい。
【0071】
脂肪族ジカルボン酸成分(B2)としては、例えば、アルカンジカルボン酸[例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、プラリシン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸などの直鎖状又は分岐鎖状C
2−30アルカンジカルボン酸(好ましくはC
6−12アルカンジカルボン酸)、マレイン酸などのアルケンジカルボン酸などが例示できる。脂肪族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などのC
5−10シクロアルカン−ジカルボン酸);シクロアルケンジカルボン酸(テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物など);ビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸又は橋架け環式シクロアルカンジカルボン酸(例えば、無水ヘット酸、無水ハイミック酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)などが挙げられる。
【0073】
芳香族ジカルボン酸成分は、単環式ジカルボン酸成分と多環式ジカルボン酸成分とに大別され、単環式ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC
1−4アルキルテレフタル酸)、無水フタル酸、フタル酸などのC
6−10アレーンジカルボン酸などが例示できる。多環式ジカルボン酸成分としては、例えば、縮合多環式ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸など)、アントラセンジカルボン酸などの縮合多環式C
10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C
10−14アレーン−ジカルボン酸];ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC
6−10アリールC
6−10アレーンジカルボン酸];ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパンなどのジフェニルC
1−4アルカン−ジカルボン酸など)などのジC
6−10アリールC
1−6アルカン−ジカルボン酸];ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC
6−10アリールケトン−ジカルボン酸]などが例示できる。多環式ジカルボン酸成分には、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
6−10アリール)フルオレン、下記式(2a)又は(2b)で表されるフルオレンジカルボン酸成分も含まれる。
【0075】
(式中、X
1a、X
1b及びX
2は同一又は異なって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示し、pはそれぞれ0〜4の整数を示し、R
3a、R
3b、k1及びk2は前記に同じ)。
【0076】
前記式(2a)及び(2b)において、基R
3a、R
3bは、前記と同様であり、好ましい置換基R
3a、R
3bは、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にメチル基などのC
1−4アルキル基など)である場合が多い。好ましい置換数k1及びk2は、例えば、0〜2、好ましくは0又は1、特に0である。
【0077】
前記式(2a)及び(2b)において、X
1a、X
1b及びX
2で表される炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−8アルキレン基が例示できる。好ましいアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキレン基)である。
【0078】
炭化水素基の置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)などが挙げられる。
【0079】
基X
1a及びX
1bは直鎖状又は分岐鎖状C
2−4アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C
2−3アルキレン基など)である場合が多く、X
2は直鎖状又は分岐鎖状C
1−3アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基など)である場合が多い。置換基を有する炭化水素基X
1a及びX
1bは、例えば、1−フェニルエチレン基、1−フェニルプロパン−1,2−ジイル基などであってもよい。
【0080】
前記式(2b)において、メチレン基の繰り返し数pは、例えば、0〜3程度の整数、好ましくは0〜2程度の整数、さらに好ましくは0又は1であってもよい。
【0081】
前記式(2a)で表されるジカルボン酸成分として、具体的には、例えば、X
1a及びX
1bが直鎖状又は分岐鎖状C
2−6アルキレン基である化合物、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
2−6アルキル)フルオレンなどが挙げられる。
【0082】
前記式(2b)で表されるジカルボン酸成分として、具体的には、例えば、p=0であり、かつX
2が直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン;p=1であり、かつX
2が直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(2,3−ジカルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(ジカルボキシC
2−8アルキル)フルオレンなどが挙げられる。
【0083】
式(2a)又は(2b)で表されるフルオレンジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらのフルオレンジカルボン酸成分のうち、前記式(2a)で表されるジカルボン酸成分は、ポリエステル樹脂に負の波長分散特性を付与するのに有用である。このような前記式(2a)で表されるジカルボン酸成分[9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類]としては、例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
2−6アルキル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(カルボキシC
2−4アルキル)フルオレン、さらに好ましくは9,9−ビス(カルボキシC
2−3アルキル)フルオレンなどが例示できる。
【0084】
芳香族ジカルボン酸成分は複素環式ジカルボン酸成分、例えば、2,5−チオフェンジカルボン酸などであってもよい。
【0085】
前記芳香族ジカルボン酸成分において、単環式芳香族ジカルボン酸成分及び多環式芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、単環式芳香族ジカルボン酸成分と多環式芳香族ジカルボン酸成分とを組み合わせてもよい。
【0086】
これらの第2のジカルボン酸成分(B2)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0087】
これらの第2のジカルボン酸成分(B2)のうち、脂肪族ジカルボン酸成分(例えば、アルカンジカルボン酸など)は、ポリエステル樹脂の柔軟性を向上させ、複屈折を低減するために有用であり、脂環族ジカルボン酸成分(例えば、シクロアルカンジカルボン酸、ビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸などは、ポリエステル樹脂の機械的特性を低減させることなく、複屈折を低減するために有用であり、芳香族ジカルボン酸成分(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸などの単環式アレーンジカルボン酸成分、ナフタレンジカルボン酸などの多環式アレーンジカルボン酸成分など)はポリエステル樹脂の耐熱性、機械的特性、屈折率を向上させるために有用である。なお、ポリエステル樹脂の結晶性を低減するためには、芳香族ジカルボン酸成分の分子において、カルボキシル基又はその反応性誘導体基が非対称の位置に置換しているのが好ましい。
【0088】
ジカルボン酸単位(又は成分)は、少なくとも2,5−フランジカルボン酸単位(又は成分)を含んでいればよく、例えば、2,5−フランジカルボン酸単位(又は第1のジカルボン酸成分)(B1)の割合は、ジカルボン酸単位(又は成分)全体((B1)+(B2))に対して、10〜100モル%(例えば、20〜98モル%)、好ましくは25〜100モル%(例えば、30〜95モル%)、さらに好ましくは40〜100モル%(例えば、50〜90モル%)程度であってもよく、60〜100モル%(例えば、75〜100モル%)程度であってもよい。本発明では、2,5−フランジカルボン酸単位を比較的多くの割合でポリエステル樹脂に導入でき、ポリエステル樹脂中の2,5−フランジカルボン酸単位の割合は、5〜50モル%(例えば、10〜50モル%)、好ましくは20〜50モル%(例えば、25〜45モル%)、さらに好ましくは30〜50モル%(例えば、35〜45モル%)程度であってもよい。
【0089】
さらに、ジオール成分(A)及びジカルボン酸成分(B)は、必要であれば、ヒドロキシカルボン酸成分及び/又はラクトンを含んでいてもよい。ヒドロキシカルボン酸成分としては、グリコール酸、乳酸、酪酸、ヒドロキシ吉草酸などのヒドロキシC
3−11アルカン−カルボン酸成分、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸などのヒドロキシC
3−10シクロアルカン−カルボン酸成分、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシC
6−10アレーン−カルボン酸などが例示できる。ラクトンとしては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−ジメチルブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのC
3−15ラクトンなどが例示できる。これらのヒドロキシカルボン酸成分及び/又はラクトンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのヒドロキシカルボン酸成分及び/又はラクトンの使用量は、ジオール成分(A)及びジカルボン酸成分(B)の全体に対して、0〜25モル%(例えば、3〜10モル%)程度であってもよい。
【0090】
なお、必要であれば、ジオール成分(A)は、ポリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのアルカンポリオールなどと組み合わせて使用してもよい。また、ジカルボン酸成分(B)は、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸又はその酸無水物、ピロメリット酸などのポリカルボン酸成分などと組み合わせて使用してもよい。このような成分を併用することにより、ポリエステル樹脂に分岐構造などを導入してもよい。
【0091】
本発明のポリエステル樹脂は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール単位と2,5−フランジカルボン酸単位とを含む繰り返し単位、例えば、下記式(3)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0093】
(式中、環Z
1、Z
2、Ar
1及びAr
2、R
1a及びR
1b、m1及びm2、R
2a、R
2b、R
3a及びR
3b、n1、n2、k1及びk2は前記に同じ)。
【0094】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール単位と2,5−フランジカルボン酸単位との割合(モル比)は、前者/後者=5/95〜95/5程度の広い範囲から選択でき、例えば、10/90〜90/10(例えば、20/80〜80/20)、好ましくは30/70〜70/30(例えば、40/60〜60/40)程度であってもよい。なお、上記ジオール単位と2,5−フランジカルボン酸単位との割合は、反応系への仕込みモル比に対応させてもよい。
【0095】
本発明のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、0.1×10
4〜50×10
4程度の範囲から選択でき、例えば、1×10
4〜30×10
4、好ましくは1.5×10
4〜20×10
4、さらに好ましくは2×10
4〜10×10
4程度であってもよい。また、末端基定量法による数平均分子量は、例えば、0.3×10
4〜30×10
4程度の範囲から選択でき、例えば、0.5×10
4〜20×10
4、好ましくは0.7×10
4〜15×10
4、さらに好ましくは0.8×10
4〜10×10
4程度であってもよい。なお、末端基定量法では、
1H−NMRによる分子鎖末端基に由来するプロトンの積分値と繰り返し単位に由来するプロトンの積分値とを比較することにより測定できる。
【0096】
本発明のポリエステル樹脂は、第1のジオール成分(A1)のカルド構造に起因するためか、結晶性は低く、粉末X線回折装置を用いて測定すると、非晶性であることを示すハローが観察される場合が多い。
【0097】
ポリエステル樹脂は、耐熱性が高く、例えば、窒素雰囲気下、熱重量測定器(TGA)で測定したとき、ポリエステル樹脂の5%重量減少温度(Td5)は、300〜450℃(例えば、330〜420℃)、好ましくは350〜400℃(例えば、370〜390℃)程度であってもよい。ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC)で測定したとき、例えば、50〜120℃(例えば、55〜100℃)、好ましくは60〜80℃(例えば、60〜70℃)程度であってもよく、微量融点測定器で測定したとき、軟化温度Tsは、例えば、150〜230℃(例えば、160〜200℃)、好ましくは170〜190℃程度であってもよい。
【0098】
さらに、本発明のポリエステル樹脂は、第1のジカルボン酸成分(B1)に代えてテレフタル酸ジメチルを用いたポリエステル樹脂よりも高い透明性を有しており、厚さ30μmのフィルムにおいて、480nm以上の波長で80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは83〜98%(例えば、85〜95%)程度の高い透過率を示す。
【0099】
本発明のポリエステル樹脂は、比較的高い屈折率を有している場合が多い。そのため、光学用の樹脂として、単独で又は他の樹脂と組み合わせて使用できる。ポリエステル樹脂の屈折率は、20℃、波長589nmにおいて、1.56以上(例えば、1.56〜1.75)、さらに好ましくは1.57以上(例えば、1.57〜1.7)、さらに好ましくは1.58以上(例えば、1.58〜1.67)程度であってもよい。なお、ポリエステル樹脂は、低複屈折(複屈折の絶対値が小さい)又は負の複屈折を有していてもよい。
【0100】
ポリエステル樹脂は、高い機械的特性も有している。厚さ100μmのフィルムについて、引張試験を行うと、降伏伸度0.5〜5%(例えば、1〜4%、好ましくは1.5〜3%)程度、降伏応力3〜12MPa(例えば、5〜10MPa、好ましくは6〜8MPa)程度であってもよい。また、ポリエステル樹脂は、芳香族ポリエステルであっても、多少の延性を示し、厚さ100μmのフィルムにおいて、破断伸度は1〜10%(例えば、2〜8%、好ましくは3〜7%)程度であってもよく、破断強度は3〜15MPa(例えば、5〜12MPa、好ましくは6〜10MPa)程度であってもよい。さらに、厚さ100μmのフィルムにおいて、引張弾性率(初期勾配から算出)は、250〜500MPa(例えば、270〜400MPa、好ましくは300〜350MPa)程度であってもよい。なお、動的粘弾性測定において、厚さ100μmのフィルムの貯蔵弾性率(E’)は低温から室温付近まで大きな変化がないようである。
【0101】
さらに、ポリエステル樹脂は、芳香環を有していても、9,9−ビスアリールフルオレン骨格のカルド構造に起因するためか、有機溶媒に対する溶解性も高い。例えば、1重量%の濃度で室温(15〜25℃程度)での溶解性を調べると、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロエタンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、エーテル類(テトラヒドロフランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)に可溶である。なお、共重合成分の種類及び共重合割合によっても、可溶な有機溶媒を選択することもできる。
【0102】
そのため、上記ポリエステル樹脂を可溶な有機溶媒は、必要により、炭化水素(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素など)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのアルキルケトン、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル)、及びこれらの混合溶媒などと併用してもよい。なお、エーテル類には、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(セロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノC
1−4アルキルエーテルなど)及びこれらのアセテート類(セロソルブアセテート類など)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(カルビトール類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジアルキレングリコールモノC
1−4アルキルエーテルなど)及びこれらのアセテート類(カルビトールアセテート類など)なども含まれる。
【0103】
[ポリエステル樹脂の製造方法]
前記ポリエステル樹脂は、少なくとも9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール成分(A1)を含むジオール成分(A)と、少なくとも2,5−フランジカルボン酸成分(B1)を含むジカルボン酸成分(B)とを反応させることにより製造できる。
【0104】
ポリエステル樹脂は、慣用のエステル化法、例えば、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などを利用して調製でき、反応により生成する水又は酸ハライドを反応系から除去しながら反応させるエステル化法、ジカルボン酸成分としてジカルボン酸エステルを用い、反応により生成するアルコールを除去しながら反応させるエステル交換法のいずれであってもよい。工業的に好ましい方法は、溶融重合法(例えば、エステル交換法)である。
【0105】
反応において、ジカルボン酸成分及びジオール成分の一方の成分を他方の成分よりも過剰に用いてもよい。例えば、反応系で揮発又は昇華する反応成分(エチレングリコールなどのアルカンジオール、2,5−フランジカルボン酸成分など)を過剰に用いてもよい。
【0106】
反応は、金属触媒、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルトなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウムなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む化合物の存在下で行ってもよい。金属化合物としては、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などが例示できる。これらの触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10
−4〜1000×10
−4モル、好ましくは0.1×10
−4〜500×10
−4、さらに好ましくは0.5×10
−4〜300×10
−4(例えば、0.7×10
−4〜200×10
−4)程度であってもよい。なお、触媒の使用量が多くなると、高分子量のポリエステル樹脂が生成しやすくなる場合がある。
【0107】
反応は、必要に応じて、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤など)などの添加剤の存在下で行ってもよい。反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、減圧下(例えば、1×10
2〜1×10
4Pa程度)で行うこともできる。反応温度は、重合法に応じて選択でき、溶融重合法での反応温度は、例えば、150〜350℃(例えば、180〜300℃)、好ましくは200〜280℃、さらに好ましくは220〜250℃程度であってもよい。
【0108】
なお、溶融重合法では、2,5−フランジカルボン酸成分などの揮発又は昇華を抑制するため、ジカルボン酸成分及びジオール成分の融点以上の温度であって、エステル化又はエステル交換反応が生じる温度(例えば、100〜200℃、好ましくは130〜180℃、さらに好ましくは150〜170℃程度)で反応(予備縮合反応)させた後、昇温して反応させて低分子量のオリゴマーを生成させ(ステップ1又はオリゴマー生成ステップ)、昇温して減圧下でさらに重合させてポリエステル樹脂を生成させ(ステップ2又は高分子量化ステップ)てもよい。
【0109】
ステップ1では、温度170〜250℃(例えば、180〜230℃、好ましくは190〜210℃)程度で行うことができ、反応時間は、例えば、1〜10時間(例えば、2.5〜8時間、好ましくは3〜7時間)程度であってもよい。このステップ1では、ポリエステル樹脂を高分子量化するためには、反応時間を長くするのが有利であり、例えば、3〜10時間(例えば、4〜7時間)程度であってもよい。
【0110】
さらに、ステップ2では、最終的に、250〜330℃(例えば、260〜310℃、好ましくは270〜300℃)程度で、1〜10時間(例えば、2.5〜8時間、好ましくは3〜7時間)程度に亘り反応させつつ、生成する水やアルコールを除去してもよい。なお、必要により、ステップ1とステップ2との間に、減圧下、ステップ1の温度よりも高くステップ2の温度よりも低い温度、例えば、200〜270℃(例えば、210〜250℃)程度に昇温して短時間(例えば、10分〜2時間、好ましくは15分〜1時間)で第1のステップ(オリゴマー生成ステップ)で生成した水やアルコールを留去する移行ステップを設けてもよい。
【0111】
このようにして生成したポリエステル樹脂は、慣用の分離方法、例えば、有機溶媒に溶解した状態で、貧溶媒に投入する再沈殿法など方法で精製してもよい。
【0112】
[用途]
本発明のポリエステル樹脂は、前記のように、有機溶媒に対する溶解性が高い。そのため、本発明のポリエステル樹脂は、有機溶媒を含む組成物、例えば、コーティング剤、塗料、インキなどとして利用できる。さらに、本発明のポリエステル樹脂は、耐熱性が高くても、成形性(溶融成形性など)に優れており、必要により添加剤とともに、樹脂組成物(又は樹脂成形体)を構成し、成形体を形成できる。そのため、本発明は、前記ポリエステル樹脂又はその組成物で形成された成形体も含む。
【0113】
なお、添加剤としては、種々の添加剤、例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、表面改質剤、消泡剤、低応力化剤、耐熱性改良剤などが例示できる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0114】
前記成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて選択でき、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、チューブ状、棒状、中空状、ハウジング状、ケーシング状など)などであってもよい。
【0115】
本発明のポリエステル樹脂又は樹脂組成物は、光学的特性に優れているため、光学材料又は光学用成形体(特に、光学フィルム、光学レンズなどの光学部品)を形成してもよい。フィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。フィルム(光学フィルム)は、慣用の成膜方法、流延法又はキャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。フィルムは、無延伸フィルムであってもよく、一軸又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。延伸倍率は、一軸又は二軸の各方向にそれぞれ1.1〜10倍(好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍)程度であってもよく、1.1〜2.5倍程度であってもよい。
【0116】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【実施例】
【0117】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、得られたポリエステル樹脂の特性及び評価は以下のようにして測定した。
【0118】
(1)赤外分光分析(FT−IR)
赤外分光光度計(JASCO社製「FT/IR−400」)を使用して4000cm
−1から500cm
−1までの波数範囲でKBr錠剤法で測定した。
【0119】
(2)示差走査型熱量測定(DSC)
示差走査型熱量計(パーキンエルマー(株)製「DSC−8000」)を用い窒素雰囲気中、50℃から100℃まで昇温速度2℃/minで昇温し、昇温後、100℃から50℃まで降温速度2℃/minで降温し、その後、50℃から100℃まで昇温速度2℃/minで昇温した。一回目の昇温過程でのガラス転移点(Tg)を評価した。
【0120】
(3)熱重量分析(TGA)
熱重量測定計(パーキンエルマー(株)製「TGA−7」)を用い窒素雰囲気中、50℃から700℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、5%重量減少温度を測定した。
【0121】
(4)広角X線回折測定(WAXS)
試料板に0.1g程の試料を測定表面が平らになるように充填し、粉末X線回折装置(RIGAKU社製の「Gaiger Flex」)を用いて回折角度2θを5°から50°まで検出速度1°/minで測定を行った。35kV、15mAで発生させたX線をグラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を用いて強度プロファイルを得た。
【0122】
(5)核磁気共鳴分光分析(NMR)
核磁気共鳴分光分析器(日本電子(株)製「AL300 SC−NMR」、
1H共鳴周波数300MHz)で測定した。
【0123】
(6)溶解性試験
濃度1重量%、25℃で試料の溶解性を評価した。
【0124】
(7)軟化点測定
試料をカバーガラスに挟み、微量融点測定器((株)ヤナコ機器開発研究所製「MP−500D型」)を用いてクロスニコル下で観察した。
【0125】
(8)引張強度試験
溶液キャスト法によって、厚さ100μmのフィルムを調製した。このフィルムを万能材料試験機(インストロン社製「5583型」)に固定し、荷重500Nおよび引張速度0.5mm/minで測定した。破断強度、破断応力、引張弾性率は、3回の測定値の平均値から求めた。
【0126】
(9)動的粘弾性試験
溶液キャスト法によって、厚さ100μmのフィルムを調製した。このフィルムを動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DMS6100」)に固定し、昇温速度3℃/min、静的張力5gf、測定周波数10Hz、測定温度範囲−150℃〜150℃の条件で測定した。
【0127】
(10)溶液粘度測定
分子量の指標である還元粘度(hsp/c)は、0.5g/dLクロロホルム溶液中で、オストワルド型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0128】
(11)可視・紫外分光測定(UV−Vis)
溶液キャスト法によって、厚さ30μmのフィルムを調製した。これらのフィルムを可視紫外分光光度計(日本分光社製「V−700型」)に固定し、300cm
−1から600cm
−1までの波数範囲で測定した。
【0129】
[実施例1]
二つ口フラスコに等モル量の2,5−フランジカルボン酸ジメチル(DMFC)(1.00g;5.43×10
−3モル)と9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)(2.38g;5.43×10
−3モル)、及びチタン酸イソプロピル(TTIP)(0.0154g;DMFCに対して1.0モル%)を重合管に仕込み、撹拌下160℃で1時間加熱した後、200℃に昇温し、5時間加熱した(ステップ1)。その後、反応系を減圧(0.1〜0.5mmHg)にして230℃で30分加熱し、さらに280℃に昇温して2時間30分重合した(ステップ2)。得られたポリマーをクロロホルムに溶解させた後、メタノール中に投入する再沈殿法によって精製した。
【0130】
[実施例2及び実施例3]
チタン酸イソプロピル(TTIP)の使用量を、DMFCに対して、0.5モル%(実施例2)、1.5モル%(実施例3)とする以外、実施例1と同様にして還元粘度0.20dL/gのポリエステル樹脂(実施例2)及び還元粘度が0.15dL/gのポリエステル樹脂(実施例3)を得た。
【0131】
[実施例4及び実施例5]
ステップ2の反応時間を1時間(実施例4)、ステップ2の反応温度を300℃(実施例5)とする以外、実施例1と同様にして還元粘度0.23dL/gのポリエステル樹脂(実施例4)及び還元粘度0.15dL/gのポリエステル樹脂(実施例5)を得た。
【0132】
[参考例1]
チタン酸イソプロピル(TTIP)の使用量を、DMFCに対して0.1モル%とし、ステップ1の反応時間を2時間とする以外、実施例1と同様にして反応させた。しかし、DMFCが昇華し、生成物の還元粘度が0.03dL/gであり、高分子量のポリエステル樹脂が得られなかった。
【0133】
[参考例2]
チタン酸イソプロピル(TTIP)の使用量を、DMFCに対して0.1モル%とし、ステップ1の反応時間を5時間とする以外、実施例1と同様にして反応させた。しかし、生成物の還元粘度が0.06dL/gであり、高分子量のポリエステル樹脂が得られなかった。
【0134】
実施例1で得られたポリエステル樹脂の特性を以下に示す。
【0135】
FT−IR(KBr)(ν/cm
−1);2800−3160cm
−1(芳香族C−H伸縮),1721cm
−1(エステルC=O伸縮),1245cm
−1(エーテルC−O−C伸縮),1220cm
−1(フラン環C−O−C伸縮)
1H−NMR(DMSO−d
6,δ/ppm);7.83(s,Ar,2H),7.18−7.35(s,Ar,2H,d,Ar,2H,d,Ar,2H,d,Ar,2H),6.94(d,Ar,2H),6.88(d,Ar,2H),4.53(s,Ar,4H),4.18(s,Ar,4H),3.87(s,Ar,2H),3.80(s,Ar,3H),3.65(s,Ar,2H)
【0136】
実施例1で得られたポリエステル樹脂の粉末X線回折スペクトルを
図1に示す。この
図1のハローから明らかなように、ポリエステル樹脂は非晶性であった。
【0137】
ポリエステル樹脂の5%重量減少温度(Td5)は380℃、ガラス転移温度(Tg)は65℃、軟化温度Tsは180℃であり、耐熱性が高い。
【0138】
さらに、ポリエステル樹脂は、厚さ30μmのフィルムにおいて、480nm以上の波長で80%以上の透過率を示した。
【0139】
実施例1で得られたポリエステル樹脂は、厚さ100μmのフィルムにおいて、降伏伸度2.3%、降伏応力7.3MPaを示した。また、多少の延性を示し、厚さ100μmのフィルムにおいて、破断伸度は4.6%、破断強度は7.0MPaであり、引張弾性率(初期勾配から算出)は、330MPaであった。なお、動的粘弾性測定において、厚さ100μmのフィルムの貯蔵弾性率(E’)は低温から室温付近まで大きな変化がなかった。
【0140】
さらに、実施例1で得られたポリエステル樹脂は、25℃の温度で、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドに可溶であり、アセトン、n−ヘキサン、トルエン、アセトニトリルに不溶であった。