(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力軸と出力軸とを有する減速機と、この減速機には、前記出力軸の開度を示す全開度表示部とこの全開度表示部を指し示す全開度指針部とが設けられた回転弁であって、前記入力軸側には、この入力軸の回転角度に対応する弁体開度を微小開度範囲において表示する微小開度表示部が備えられていると共に、前記減速機には、さらに前記入力軸の回転数を表示する回転数表示部と、前記入力軸の回転数を前記回転数表示部において指し示す回転数指針部とが備えられ、前記回転数表示部の設定位置が、前記減速機上面において回転調整手段により回転調整自在に設けられたことを特徴とする微小開度表示機能付き回転弁。
前記入力軸に設けたインジケータに前記微小開度表示部が設けられ、この微小開度表示部の始点位置に始点表示部が施された請求項1又は2に記載の微小開度表示機能付き回転弁。
入力軸の回転を減速して出力軸に出力して回転弁を回転する減速機の出力軸側に、この出力軸と同期して回転する指針を設け、この指針の全開度指針部を前記出力軸の開度を示す全開度表示部の始点位置に前記回転弁の全閉状態で合わせ、前記回転弁に水圧を負荷した状態で前記入力軸を通水開始位置まで回転して前記全開度指針部を前記全開度表示部の始点位置から充水開始位置まで進め、この状態で前記入力軸と同期して回転する微小開度表示部の始点位置を前記指針に設けた回転数指針部に合わせつつ前記入力軸に固定し、前記入力軸の回転数を表示する回転数表示部の始点位置を前記微小開度表示部の始点位置に合わせることにより、微小開度を正確に表示するようにしたことを特徴とする回転弁の微小開度調整方法。
前記微小開度表示部には、前記入力軸の回転角度に対応する弁体開度が微小開度範囲において表示され、前記回転数表示部には、前記回転数指針部により前記入力軸の回転数が前記出力軸に同期されて指し示めされる請求項5に記載の回転弁の微小開度調整方法。
【背景技術】
【0002】
従来、バタフライ弁等の回転弁には、外部に弁体開度を表示するための開度表示部が設けられることがある。この場合、特に、充水機能を有するバタフライ弁では、通水開始時から徐々に充水をおこなうために、開度表示部を介して、弁閉付近からの弁体の微小開度を微細に表示できるように要求されることが多い。その際、一般に、この種のバルブには減速歯車機能が内蔵されたアクチュエータが搭載され、この減速歯車機能を介して入力軸の回転が出力軸に減速されて出力されるようになっている。これを利用し、減速された出力軸側の回転角度を確認することで、弁体の微小開度を視認しながら操作できるようにした微小開度表示機能付きの回転弁が知られている。
【0003】
回転弁用の開度表示機能を有する操作機として、例えば、特許文献1の多段歯車式手動操作機が開示されている。この手動操作機では、内部に遊星歯車機能が設けられ、入力軸からの入力が遊星歯車機能を介して減速された後に出力軸から出力される。この場合、入力軸には出力側の開度軸が同軸上に回転可能に取付けられ、この開度軸には指針が一体に取付けられ、一方、遊星歯車機能を覆うふたには、目盛が記されている。この構成により、指針は、出力軸と同じ回転角だけ回転可能になっており、この指針が目盛を指すことで出力側の回転角度が外部から視認可能に設けられている。
【0004】
一方、特許文献2の微小開度表示機能付きバルブでは、減速機に、入力軸、出力軸、これら入出力軸部の間の歯車列と、弁体の開度を示す開度目盛部、この開度目盛部を差し示す開度指針部とが設けられている。開度目盛部は、出力軸部の回転角度に対応する弁体開度を表示する全開度表示目盛と、入力軸部の回転角度に対応する弁体開度を表示する微小開度表示目盛とを有し、開度指針部は、全開度表示目盛において開度を指し示す全開度指針と、微小開度表示目盛において開度を指し示す微小開度指針とを有している。この構成により、入力軸部の回転時には、出力軸の回転により弁体の開度(回転角度)が全開度表示目盛に指示され、微小開度指針で全開度指針の開度が拡大されて微小開度表示目盛に指示されるようになっている。
【0005】
さらに、微小開度指針が、軸芯回りに位置調整可能に設けられ、弁体が通水開始の位置で微小開度表示目盛の「0度」を指すように設定されることにより、通水(充水)時からの微小開度指針の回転量を視認可能になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の特許文献1の手動操作機の場合、出力軸と同じ回転角で回転する指針により、出力側の回転角度のみを確認する構成であることから、弁体の微小な回転角度を視認することが難しい。このことから、特に、弁体の微調整を必要とする回転弁に適しているとは言い難く、充水時に弁閉付近の微小開度を細かい制御を必要とする充水用のバタフライ弁に使用することは難しい。
【0008】
一方、後者の特許文献2の微小開度表示機能付きバルブでは、微小開度指針と微小開度表示目盛とにより、微小開度の状態を確認可能であり、さらに、微小開度指針を調整することで、弁体の任意の動作状態からの入力軸の回転状態を、微小開度指針により視認可能になっている。
【0009】
しかし、この減速機では、入力軸が回転した回数を目盛で確認することができない。そのため、充水開始からの回転数を確認するためには、微小開度指針の回転数を目視以外の方法で別途カウントする必要がある。しかも、全開度表示目盛と微小開度目盛とが位置決め状態になっていることで、全開度表示目盛に対して微小開度目盛を調整することもできない。このことから、充水時に、微小開度指針を微小表示目盛の「0度」を指すように設定し、充水開始時からの微小開度指針の回転量を視認することは可能ではあるが、これと同時に全開度表示目盛を全開度表示指針に対して調整して0の位置にリセットすることができない。これにより、充水開始時には、微小開度指針が0度の位置を指し示すときに全開度表示指針が全閉状態から開方向にわずかに進み、微小開度表示と全開度表示との表示がずれた関係となる。このように、弁体を任意の回転状態から作動させる際に、入力軸側と出力軸側との指針の位置関係も正しく表示できないため、充水開始時からの正確な微小開度の確認が難しく、作業性も悪い。
このような理由から、充水時などの弁閉状態より弁体が回転した状態から、さらに弁体が回転するときの回転量を正確かつ高精度に制御するために微小開度を表示可能な回転弁の開発が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、任意の回転状態から弁体が回転するときの回転量を従来に比して正確かつ高精度に外部に表示して微小開度を視認でき、作業性を向上できる微小開度表示機能付き回転弁と微小開度調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、入力軸と出力軸とを有する減速機と、この減速機には、出力軸の開度を示す全開度表示部とこの全開度表示部を指し示す全開度指針部とが設けられた回転弁であって、入力軸側には、この入力軸の回転角度に対応する弁体開度を微小開度範囲において表示する微小開度表示部が備えられていると共に、減速機には、さらに入力軸の回転数を表示する回転数表示部と、入力軸の回転数を回転数表示部において指し示す回転数指針部とが備えられ
、回転数表示部の設定位置が、減速機上面において回転調整手段により回転調整自在に設けられた微小開度表示機能付き回転弁である。
【0012】
請求項2に係る発明は、回転数表示部の始点位置を微小開度表示部の指針部とした微小開度表示機能付き回転弁である。
【0013】
請求項3に係る発明は、入力軸に設けたインジケータに微小開度表示部が設けられ、この微小開度表示部の始点位置に始点表示部が施された微小開度表示機能付き回転弁である。
【0015】
請求項
4に係る発明は、全開度表示部の設定位置が、減速機上面において回転調整手段により回転調整自在に設けられた微小開度表示機能付き回転弁である。
【0016】
請求項
5に係る発明は、入力軸の回転を減速して出力軸に出力して回転弁を回転する減速機の出力軸側に、この出力軸と同期して回転する指針を設け、この指針の全開度指針部を出力軸の開度を示す全開度表示部の始点位置に回転弁の全閉状態で合わせ、回転弁に水圧を負荷した状態で入力軸を通水開始位置まで回転して全開度指針部を全開度表示部の始点位置から充水開始位置まで進め、この状態で入力軸と同期して回転する微小開度表示部の始点位置を指針に設けた回転数指針部に合わせつつ入力軸に固定し、入力軸の回転数を表示する回転数表示部の始点位置を微小開度表示部の始点位置に合わせることにより、微小開度を正確に表示するようにした回転弁の微小開度調整方法である。
【0017】
請求項
6に係る発明は、微小開度表示部には、入力軸の回転角度に対応する弁体開度が微小開度範囲において表示され、回転数表示部には、回転数指針部により入力軸の回転数が指し示めされる回転弁の微小開度調整方法である。
【0018】
請求項
7に係る発明は、回転数表示部の設定位置が、減速機上面において回転調整手段により回転調整自在に設けられた回転弁の微小開度調整方法である。
【0019】
請求項
8に係る発明は、全開度表示部の設定位置が、減速機上面において回転調整手段により回転調整自在に設けられた回転弁の微小開度調整方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、全開度表示部と全開度指針部とにより出力軸の開度を表示可能であることに加えて、入力軸に微小開度表示部、減速機に回転数表示部並びに回転数指針部を備えていることにより、入力軸の回転した回数を回転数表示部により視認しながら微小開度を調整可能となる。このとき、出力軸の回転を入力軸に同期しながらこの入力軸の微小開度を指し示すことができるため、任意の回転状態から弁体が回転するときの回転量を、従来に比して正確かつ高精度に外部に表示して微小開度を視認できる。これにより、正確に出力軸を回転させて微小開度を調整し、充水作業を実施することが可能になり、その作業性も向上する。さらに、バルブ本体の口径や個体差などによる充水開始時のバルブ開度の差異や、或は、長期の使用や劣化などにより充水開始時のバルブ開度が変わった場合にも、それぞれの充水開始位置をリセットして微小開度の表示を調整し、高精度にバルブ開度を制御可能となる。
特に、減速機上面において、回転調整手段を介して全開度表示部に対する回転数表示部の位置を回転することでこれらの位置を相対的に調整でき、弁閉状態から充水開始状態になったときを始点として、この位置からの出力軸の正確な回転数を回転数表示部に表示させることが可能となる。
【0021】
請求項2に係る発明によると、回転数表示部の始点位置を微小開度表示部の指針部としていることにより、回転数表示部の始点位置に対する微小開度表示部の回転量を視認し、微小開度表示部用の指針部を別途設けることなく入力軸の微小開度を確認できる。しかも、回転数表示部によって出力軸の回転数、並びに入力側の微小開度を集中的に表示できるため、この回転数表示部付近を視認することで、出力軸の回転数と、入力軸の回転による微小開度とを一目で正確に確認可能となる。
【0022】
請求項3に係る発明によると、入力軸に設けたインジケータの微小開度表示部に始点表示部を施していることで、この始点表示部を回転数表示部に対して位置調整して目盛を合わせるようにすれば、入力軸が充水開始の位置まで回転した後に始点表示部の位置を確認して入力軸の微小な回転を正確に表示できる。
【0024】
請求項
4に係る発明によると、回転調整手段を介して全開度目盛部を回転数表示部に対して相対的に回転して調整できることにより、この全開度目盛部の始点を出力軸の弁閉状態に正確に合わせることができ、出力軸の弁閉状態からの正確な開度を全開度表示部に表示させることが可能となる。
【0025】
請求項
5に係る発明によると、弁開時の充水状態まで出力軸を回転させた状態で、微小開度表示部の始点位置、回転数表示部の始点位置、回転数指針部を合わせて回転数表示部を位置決めできることで、優れた作業性により充水開始時の位置合わせをおこなうことができる。全開度表示部と全開度指針部とにより出力軸の開度を表示可能であることに加えて、充水時には、出力軸側の回転数指針部、入力軸側の微小開度表示部により正確な微小開度を確認できる。
【0026】
請求項
6に係る発明によると、回転数表示部の始点位置に対して、出力軸側の指針の回転数指針部と、入力軸側の微小開度表示部との回転状態を確認できることで、従来に比して充水開始状態から弁体が回転するときの回転量を、正確かつ高精度に確認しながら微小開度を制御可能となる。
【0027】
請求項
7に係る発明によると、減速機上面において、回転調整手段を介して全開度表示部に対する回転数表示部の位置を回転することでこれらの位置を相対的に調整でき、弁閉状態から充水開始状態になったときを始点として、この位置からの出力軸の正確な回転数を回転数表示部に表示させることが可能となる。
【0028】
請求項
8に係る発明によると、回転調整手段を介して全開度目盛部を回転数表示部に対して相対的に回転して調整できることにより、この全開度目盛部の始点を出力軸の弁閉状態に正確に合わせることができ、出力軸の弁閉状態からの正確な開度を全開度表示部に表示させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明における微小開度表示機能付き回転弁と微小開度調整方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、回転弁用の減速機を示しており、
図2は、本発明の微小開度表示機能付き回転弁の半截断面図を示している。
【0031】
本発明における微小開度表示機能付き回転弁は、例えば、充水機能付きのバタフライ弁からなり、そのバルブ本体1には減速機2が搭載される。
図1、
図2に示した減速機2は、入力軸3と出力軸4とを有し、さらに、減速機構5、キャップ6を有している。減速機2は、図示しないキーハンドル(開栓キー)にて回転操作可能に設けられ、キャップ6を介して入力軸3に回転力が入力され、この入力軸3の回転が減速機構5を介して減速された後に出力軸4から出力され、この出力軸4の回転がバルブ本体1のステム7に伝達されてこのステム7に接続された図示しない弁体が作動する。
【0032】
減速機構5は、外歯車10、内歯車11、偏心カム12、ピン13を有する差動歯車機能からなり、外歯車10と内歯車11との歯数差により所定の減速比が設定される。本例で使用される減速機2は、入力軸3と出力軸4とが同方向に回転するギアの組合わせにより設けられ、入力軸3の右回り回転により出力軸4も右回り回転して弁開動作するようになっている。入力軸3、及びこの入力軸2と同期して回転する後述の表示部材20と指針21とが同一方向に回転することで視認性に優れ、直感的な操作が可能になっている。減速機構5が、入力軸3と出力軸4とが同方向に回転するギア機構であることで、いわゆるセルフロック機能も発揮し、流体圧力による回転を防ぎつつ操作力を伝達するようになっている。
入力軸3を1回転したときには、この回転が減速機構5により減速されて出力軸4が入力軸3の1回転分の回転量だけ減速回転し、この入力軸3の回転が後述の回転数表示部22によって示される。
【0033】
図3のキャップ6は操作部側に設けられ、入力軸3の上端部に嵌め込みにより一体に取付けられる。キャップ6は、いわゆるスリップキャップと呼ばれる構造であるとよく、この場合、過大なトルクが入力側から加わったときに、この入力側でスリップして入力軸3への回転伝達が遮断される。スリップキャップを用いた場合、埋設などでバルブ本体1の呼び径等が分かりづらい状態で必要以上に大きい操作トルクが加わったときにも、入力軸3に過大な回転力が伝わることがないことで安全な回転操作が可能となる。さらに、バルブ本体1の操作に必要なトルクに応じて、異なるスリップトルクのキャップ6を選定することも可能である。
【0034】
図3〜
図8において、減速機2には、全開度を示す目盛である全開度表示部23、回転数を示す目盛である回転数表示部22、これら目盛を指すための指針21が設けられ、この指針21は、全開度指針部30、回転数指針部31を備えている。一方、入力軸3側には、目盛を有する微小開度表示部32が設けられる。これらによって、ステム7の開度が外部より視認可能に設けられている。
【0035】
ここで、本発明における「全開度表示」とは、弁体(ステム7)操作時における弁閉から弁体までの出力側の開度表示、一方、「微小開度表示」とは、弁体(ステム7)操作時における入力側の開度表示をそれぞれ意味する。後述するように、「全開度表示」は、全開度表示部23と指針21(全開度指針部30)、「微小開度表示」は、回転数表示部22と微小開度表示部32と指針21(回転数指針部31)とにより、それぞれ表示可能に設けられる。
【0036】
減速機2の上面の外周側には、SUS等の材料により環状の銘板33が設けられ、この銘板33の表面に前記の全開度表示部23が設けられる。全開度表示部23は、出力軸4の開度用として設けられ、減速機2の上面に固着されて弁閉状態(弁体角度0°)から弁開状態(弁体角度90°)までの弁体の全開度が銘板33の略90°の範囲にわたって弁体の角度や弁開度の割合を示す数値とともに記され、全開度指針部30に指示されることで、出力軸4の回転状態が表示可能になっている。全開度表示部23には、充水に適した弁開度の範囲である充水開度範囲表示部34が併記される。さらに、銘板33には、呼び径、メーカー名、呼び圧力、最高許容圧力、最高流速、製造年等が記されている(図示せず)。
【0037】
銘板33の全開度表示部23(銘板33)の裏面側には、回転調整手段として貼着部40が設けられ、この貼着部40を介して減速機2上面に銘板33(全開度表示部23)が貼着される。これにより、全開度表示部23を所望の向きにしつつ減速機2に貼着することで、全開度表示部23の設定位置が減速機2上面において回転調整手段40により回転調整自在に設けられ、出力軸4(全開度指針部30)の回転状態に合わせて正確に取付けながら全開度を表示可能となる。全開度表示部23の回転調整手段40は、全開度表示部23を減速機2上面に対して回転調整自在であれば、貼着部以外の手段であってもよい。
【0038】
回転数表示部22は、入力軸3の回転数の表示用として設けられ、全開度表示部23とは別体に形成された扇状部材41の上面に記され、全開度指針部30の略180°反対側に設けられる。そして、回転数指針部31に指示されることで、入力軸3の回転数が表示可能に設けられている。回転数表示部22は、全開度表示部23と同様に、略90°の範囲にわたって入力軸3の回転数を示す数値とともに記される。
【0039】
回転数表示部22の始点位置(0(ゼロ)の位置)には線状の表示指針部42が記され、この表示指針部42が、微小開度表示部32が回転するときの目盛を読むための指針部となる。表示指針部42を含む回転数表示部22を構成する目盛は、入力軸3の回転数に対応するように等間隔に形成される。
【0040】
このように、表示指針部42が、微小開度表示部32が回転するときの目盛を読むための指針部として機能するので、新たな微小開度指針部を設ける必要が無く、また、表示指針部42と微小開度表示部32が、全開表示部材を介することなく対向配置しているので、微小開度の視認性、特に回転数表示の視認性を高めることができる。
【0041】
回転数表示部22(扇状部材41)には、回転調整手段として所定長さの2箇所の長孔50、50、2つのねじ51、51が設けられ、これら長孔50、ねじ51によって回転数表示部22が減速機2上面に固着される。その際、ねじ51の長孔50への止め位置を変えることで、回転数表示部22の位置が、減速機2上面において回転調整自在に設けられる。この回転調整手段は、前述の全開度表示部の回転調整手段と同様に、回転数表示部を減速機上面に対して回転調整自在であれば、長孔50とねじ51との組合わせ以外の各種手段を用いることもできる。
【0042】
図2において、出力軸4の上部には、この出力軸4並びに弁体と一体に回転可能に開度軸52が取付けられ、この開度軸52の上部に前述の指針21が一体に嵌合され、この指針21に、全開度指針部30、回転数指針部31が、180°の間隔で一体に形成されている。指針21は、全開度指針部30が全開度表示部23、回転数指針部31が回転数表示部22をそれぞれ指し示す向きに出力軸4と同期するように取付けられ、全開度指針部30は、出力軸4の弁閉状態からの回転量に応じて、全開度表示部23を指し示すようになっている。
【0043】
一方、回転数指針部31は、入力軸3の回転数を出力軸4の回転に同期させた状態で、回転数表示部22において指し示すようになっており、この回転数指針部31には、例えば赤色等の着色が施されている。
【0044】
微小開度表示部32は、入力軸3の回転角度に対応する弁体開度を、微小開度範囲における表示用として入力軸3側に同期して回転可能に設けられ、全開度表示部23の内側に配置される。微小開度表示部32は、略環状の適宜の厚さの板材である表示部材20の上面に記され、この表示部材20は、入力軸3に設けられる略環状のインジケータ55の上面に固定可能に設けられる。微小開度表示部32の始点位置には、始点表示部60が数字の「0(ゼロ)」とともに施され、微小開度表示部32はこの始点表示部60を基点として、等間隔な目盛部により分割される。
【0045】
この場合、微小開度表示部32は、1回転である360°が16分割されて記される。このように微小開度表示部32が細かく分割されている場合、入力軸3の回転時の微調整が容易となる。例えば、1回転以下の入力軸3の目盛のステップとして、1/4回転、1/8回転、1/16回転と、360°が4の倍数で刻まれている場合、微小開度表示部32の回転状態を直感的に視認しやすく、このうち、特に、図に示すように、1/16回転ごとのステップに分割されているときには、バルブのCv値の変化量のステップをより細かく調整可能となる。微小開度表示部32には、上記の0(ゼロ)から15までの数字が順に記される。
【0046】
インジケータ55は、止めねじ61により入力軸3と同軸のキャップ6に固定される。この止めねじ61により、微小開度表示部32は、入力軸3に対して周方向に0の位置を回転調整可能な状態で固定可能になっている。
【0047】
前述したように、回転数表示部22、微小開度表示部32の位置がそれぞれ調整可能であることから、
図5の出力軸4が微小開度の状態で、指針21の全開度指針部30が全開度表示部23の始点位置である「0(ゼロ)」よりも弁開方向に進んだ状態にあるときに、
図6に示すように、回転数表示部22、微小開度表示部32をそれぞれ回転調整し、指針21の回転数指針部31に対してそれぞれの始点位置を一致させることが可能となる。これを利用して、出力軸4の任意の回転状態、例えば、
図5の充水開始の状態からの微小開度を、回転数指針部31による出力軸4の回転数と、微小開度表示部32による入力軸3の回転量とにより表示可能となる。
【0048】
前述した減速機2が搭載されるバルブ本体1は、主に水道配管に配設されて初期充水に用いられ、図示しないが、ステム7の中心からオフセットされた単偏心形構造になっている。ステム7には弁体が取付けられ、この弁体の外周面には複数の櫛歯状の溝が形成されている。弁体の回転時には、櫛歯状溝を介して弁箱に形成された弁座面との隙間が徐々に広がることで、極小開度から小開度までの間に初期充水に適したなだらかな流量変化特性を発揮する領域が設けられる。ステムには前記減速機2が接続され、この減速機2を介して微小開度を表示可能に設けられる。
【0049】
バルブ本体1は、例えば、充水時の目標流速が0.5m/sに設定され、この目標流速を満足するために、水の圧力7.5Kのときに弁開度15%、圧力4Kのときに弁開度20%、圧力1Kのときに弁開度25%となるバルブ容量になっている。減速機2は、これらに対応した微小開度表示機能を有し、この減速機2により微小開度を調整しつつ弁開操作することで、水の圧力に対応した目標弁開度を調整可能になり、目標となる流速0.5m/sで通水可能に設けられる。充水時の目標流速は適宜設定され、この目標流速に応じて目盛等を変更可能になっている。
【0050】
なお、全開度表示部23や回転数表示部22、微小開度表示部32をなす各目盛は、使用圧力に応じた充水に適した水量の領域を表示するように適宜設定可能である。このため、これら表示部位が設けられた減速機2を、バルブ本体1の充水開始位置や口径が異なる場合、或は、単偏心形構造以外の偏心形バタフライ弁や、軸芯バタフライ弁など各種の回転弁に適用でき、更には、回転弁以外のバルブにも利用することもできる。
【0051】
前述した回転調整手段は、回転数表示部側、或は開度表示部側の何れか一方に設けられていればよく、又はこれら双方に設けられていてもよい。本実施形態における回転調整手段の「回転調整」とは、入力軸や出力軸の軸心に対して回転して調整可能であることを意味している。
【0052】
続いて、前述した実施形態の回転弁の微小開度調整方法並びに作用を説明する。
図4において、予め、微小開度の調整前には、減速機2上面に銘板33(全開度表示部23)、入力軸3にキャップ6をそれぞれ取付けておく。また、指針21が出力軸4と同期回転するように、この指針21を出力軸4側の開度軸52に取付ける。微小開度表示部32が記された表示部材20は、インジケータ55の上面に一体に固着する。回転数表示部22が記された扇状部材41は、ねじ51により長孔50を介して減速機2上面に位置調節可能に仮止めする。
【0053】
この状態で、先ず、キャップ6(入力軸3)を操作してバルブを全閉状態にし、出力軸4と同期回転する指針21の全開度指針部30を、全開度表示部23の始点位置(0の位置)に、回転弁の全閉状態(弁体開度が0°、弁体の回転数0%の状態)で位置合わせする。これにより、全開度指針部30は、出力軸4とともに全開度表示部23の略0°〜90°の範囲内を回転するようになる。
【0054】
次いで、
図5において、バルブ本体1に水圧を負荷した状態で、入力軸3を通水開始位置まで開方向に回転し、全開度指針部30を全開度表示部23の始点位置から充水開始位置まで進める。
この状態で、入力軸3と同期して回転する微小開度表示部32の始点位置を指針21の回転数指針部31に合わせるように、フリーの状態のインジケータ55をキャップ6に対して回転させ、止めねじ61を締めてインジケータ55(微小開度表示部32)を入力軸3(キャップ6)に固定する。
【0055】
このバルブ本体1の漏れ出し開始状態で、
図6に示すように、回転数表示部22の始点位置である表示指針部42を、回転数指針部31に位置合わせした状態の微小開度表示部32の始点位置である始点表示部60に合わせるように、扇状部材41を銘板33に対して調整し、この扇状部材41をねじ51で長孔50を介して減速機2上面(銘板33)に固定する。これにより、回転数表示部22の表示指針部42を微小開度表示部32の始点表示部60に合わせ、これら表示指針部42、始点表示部60と、回転数指針部31とを、通水開始状態(充水開始状態)において一直線上に並ばせることにより、充水開始位置を入力軸3の回転数が0となる始点位置としてリセットし、この状態から回転数表示部22、微小開度表示部32の回転状態を視認して微小開度を正確に表示可能となる。
【0056】
このとき、長孔50とねじ51とを介して扇状部材41を減速機2上面に取付けていることで回転数表示部22の位置調整が容易となり、かつ、バルブ本体1の漏れ出し開始位置が変化した場合であっても、扇状部材41の取付け位置を変更することで簡単に充水開始位置をリセットできる。
【0057】
図7においては、
図6の減速機2のキャップ6を弁閉方向に回転した状態を示している。この場合、全開度指針部30が全開度表示部23の弁閉状態である「0」を示し、一方、回転数指針部31は、回転数表示部22の表示指針部42(始点となる0の位置)よりもマイナス位置を指し示す。この回転数表示部22の状態により、入力軸3が充水開始状態に達していないことを確認できる。
【0058】
図8においては、減速機2の操作例として、
図6の減速機2の入力軸3を充水開始状態から操作して、出力軸4が充水開始の位置から入力軸3を1回転半した状態を示している。この場合、回転数指針部31が、表示指針部42から回転数表示部22の目盛の「1」と「2」との間にあることで出力軸4が1回転以上2回転未満であることを確認でき、表示指針部42の位置に微小開度表示部32の目盛の「8」が位置していることで、入力軸3が8/16回転、すなわち半回転していることを確認できる。よって、これらの出力軸4側の回転数指針部31、入力軸3側の微小開度表示部32の回転状態から、出力軸4が充水開始状態の段階から入力軸3を1回転半したことを視認できる。このとき、表示指針部42を基準に回転数指針部31、微小開度表示部32の目盛を確認すればよいため、視認性に優れている。
【0059】
以上のように、本発明の微小開度表示機能付き回転弁は、入力軸3と出力軸4とを有する減速機2に、出力軸4の開度を示す全開度表示部23と全開度指針部30とを設け、入力軸3側には、この入力軸3の弁体開度を微小開度範囲で表示する微小開度表示部32、減速機2には、さらに入力軸3の回転数を表示する回転数表示部22と、回転数指針部31とを設けていることにより、充水開始時には、全開度指針部30が全開度表示部23の充水開始位置まで回転した状態で、この充水開始状態の出力軸4に入力軸3の回転を同期させるように調整し、充水開始時からの微小開度を回転数指針部31により回転数表示部22に正確かつ高精度に指し示すことができる。
【0060】
この場合、前記したように、回転数指針部31と回転数表示部22とで、充水開始時からの入力軸3の回転数、微小開度表示部32と回転数表示部22とで、出力軸4の1回転分に満たない入力軸3側の回転を確認することにより、充水開始時からの開度を正確に外部に表示できる。しかも、出力軸4の回転数、入力軸3の回転量は、ともに表示指針部42が基準になっていることから、回転数指針部31と微小開度表示部32(始点表示部60)との位置ずれを防止し、充水開始時より正確に出力軸を回転制御できる。これにより充水時の作業性も高まる。
【0061】
表示指針部42に対する回転数指針部31、微小開度表示部32の視認性が高いことから、作業者が全開度の表示と微小開度の表示とを混同するおそれもなく、回転数表示部22の始点位置が表示指針部42として微小開度表示部32の指針になることで、微小開度用の指針を別途設けることがなく、必要最小限の部品点数で表示部位を構成できる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。