特許第6892799号(P6892799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6892799トラックバースの拡張プラットホームおよびその構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892799
(24)【登録日】2021年6月1日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】トラックバースの拡張プラットホームおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 1/00 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   E01F1/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-140838(P2017-140838)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-19615(P2019-19615A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】517255418
【氏名又は名称】株式会社近畿興業エンジニアリングサポート
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】野上 保久
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−009577(JP,A)
【文献】 特開2006−118274(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3184935(JP,U)
【文献】 特開平06−280402(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3161779(JP,U)
【文献】 実開平04−033714(JP,U)
【文献】 実開平05−081308(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00997581(EP,A1)
【文献】 実開昭63−179302(JP,U)
【文献】 特開2007−107248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉庫のトラックバースの既存プラットホームを拡張するように構築されるプラットホームであって、前記プラットホームは、
駐車スペースの既存スラブ上に所定厚さに形成されたレベリング層と、該レベリング層の上面に発泡樹脂ブロックが所定段数に積層された樹脂ブロック層と、前記レベリング層と前記樹脂ブロック層の側面を覆うように構築された側壁部と、前記樹脂ブロック層の上面に所定層厚で構築されたコンクリートスラブ層とを備え、
前記側壁部は、建築用空洞コンクリートブロックを所定段数積み上げて構築され、積み上げられたコンクリートブロック間とコンクリートブロック内の空洞とに補強鉄筋が配筋され、前記空洞にモルタル充填補強され、
前記コンクリートスラブ層は、スラブ補強鉄筋が配筋され、前記スラブ補強鉄筋の端部が前記補強鉄筋の上端と接合鉄筋で接合され、前記樹脂ブロック層と前記側壁部の上面とがスラブコンクリートで覆われたことを特徴とするトラックバースの拡張プラットホーム。
【請求項2】
前記レベリング層は、前記既存スラブに設けられた水勾配に対して、該レベリング層上面が水平面をなすように形成された請求項1に記載のトラックバースの拡張プラットホーム。
【請求項3】
前記レベリング層は、撒き出された砂を転圧して形成された請求項2に記載のトラックバースの拡張プラットホーム。
【請求項4】
前記発泡樹脂ブロックは、発泡スチロール樹脂製ブロックである請求項1に記載のトラックバースの拡張プラットホーム。
【請求項5】
倉庫のトラックバースの既存プラットホームを拡張するプラットホームの構築方法であって、駐車スペースの既存スラブ上の拡張予定範囲の周囲に建築用空洞コンクリートブロックを所定段数積み上げ、積み上げたコンクリートブロック間とコンクリートブロック内の空洞に補強鉄筋を配筋してモルタル充填補強した側壁部を構築し、前記側壁部で囲まれた範囲内に所定厚さのレベリング層を形成し、該レベリング層の上面に発泡樹脂ブロックを所定段数積層して樹脂ブロック層を構築し、該樹脂ブロック層の上面にスラブ補強鉄筋を配筋し、前記スラブ補強鉄筋の端部を前記補強鉄筋の上端と接合し、前記樹脂ブロック層と前記側壁部の上面とにスラブコンクリートを打設して所定層厚のコンクリートスラブ層を形成することを特徴とするトラックバースの拡張プラットホームの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラックバースの拡張プラットホームに係り、倉庫の積み卸しスペースとしてのトラックバースの利用効率の向上を図るために、プラットホームを任意の形状に、迅速かつ容易に拡張構築できるようにしたトラックバースの拡張プラットホームおよびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模な物流倉庫等の積み卸しスペースとしてのトラックバースは、複数台の40フィートコンテナトレーラーが並列して駐車できるように広大な床面積で設計されている。また、このトラックバースのスペースを有効に確保するための工法も実施されている(非特許文献1)。ところが、倉庫から頻繁に出庫する貨物車両は2トン、4トン積みトラックが多い。したがって、図5に一例として模式的に示した従来の倉庫のトラックバース50のように、小型、中型貨物車両T2は40フィートコンテナトレーラーT1に対応させて設計された既存のプラットホーム52位置まで入り込む必要がある。このときの貨物車両T2の前方の車両駐車スペース53は無駄な空間となってしまう。したがって、従来の車両駐車スペース53に新たなプラットホーム10(たとえば図3(a))を拡張することができれば、積み卸しエリア54を新たな保管エリア55とすることができ、保管物量を増加させることができる。
【0003】
このような要請に対応するために、図3(a)に示したように、既存のスラブ床3上の所定範囲に鉄骨フレーム(図示せず)を組み、鉄骨フレーム上にデッキプレートを敷設してコンクリートスラブを打設して床の嵩上げを行って拡張プラットホーム10を構築する方法が考えられる。しかし、鉄骨フレーム組立からコンクリートの養生完了まで一定の施工期間と、周辺に重機等を設置した作業が必要となるため、トラックバースをそのまま稼動して工事するのは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】竹中工務店、“大型物流倉庫にて「竹中フリートラックバース工法」を初適用”、[online]、2016年10月3日、[平成29年7月12日検索]、インターネット<URL:http://www.takenaka.co.jp/news/2016/10/03/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラットホームは貨物の積み卸しエリアとして台車等が往来するが、床に作用する荷重はそれほど大きくない。よって、鉄骨フレームを組み立てるのに代えて所定の大きさの発泡樹脂ブロックを所定段数積層し、その上にコンクリートスラブを構築すれば、大幅な工期短縮が可能となる。発泡樹脂ブロックとしては、軽量盛土工法等に用いられる既製品の大型発泡スチロールブロックを利用することができる。この発泡スチロールブロックを建築物内で使用する場合、可燃物である発泡スチロール材料を防火構造で被覆することが必要となってくる。そのためには、たとえば発泡スチロールブロックを囲む側壁部分をコンクリート壁等の耐火壁とすることが好ましい。コンクリート壁としては自立式のプレキャストコンクリート壁体等があるが、プラットホームの高さは施設ごとに異なるため、汎用製品がそのまま使える場合が少なく、特注品は高価となりコスト上の問題がある。現場打ちコンクリート壁を構築するには、型枠作業、コンクリート作業、養生期間と施工期間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、トラックバースに新たにプラットホームを拡張して設ける際に、上述した従来の技術が有する問題点を解消し、所定高さに積層した発泡スチロールブロックでスラブ支持構造を構築し、その周囲を囲むように重量コンクリートブロックを所定高さに積み上げて耐火壁とすることで、床面形状が柔軟に設定でき、迅速かつ容易に施工が行えるようにしたトラックバースの拡張プラットホームおよびその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、倉庫のトラックバースの既存プラットホームを拡張するように構築されるプラットホームであって、前記プラットホームは、駐車スペースの既存スラブ上に所定厚さに形成されたレベリング層と、該レベリング層の上面に発泡樹脂ブロックが所定段数に積層された樹脂ブロック層と、前記レベリング層と前記樹脂ブロック層の側面を覆うように構築された側壁部と、前記樹脂ブロック層の上面に所定層厚で構築されたコンクリートスラブ層とを備え、前記側壁部は、建築用空洞コンクリートブロックを所定段数積み上げて構築され、積み上げられたコンクリートブロック間とコンクリートブロック内の空洞とに補強鉄筋が配筋され、前記空洞にモルタル充填補強され、前記コンクリートスラブ層は、スラブ補強鉄筋が配筋され、前記スラブ補強鉄筋の端部が前記補強鉄筋の上端と接合鉄筋で接合され、前記樹脂ブロック層と前記側壁部の上面とがスラブコンクリートで覆われたことを特徴とする。
【0008】
前記レベリング層は、前記既存スラブに設けられた水勾配に対して、該レベリング層上面が水平面をなすように形成されることが好ましい。
【0009】
前記レベリング層は、撒き出された砂を転圧して形成されることが好ましい。
【0010】
前記発泡樹脂ブロックは、発泡スチロール樹脂製ブロックであることが好ましい。
【0013】
拡張プラットホームの構築方法としての本発明は、倉庫のトラックバースの既存プラットホームを拡張するプラットホームの構築方法であって、駐車スペースの既存スラブ上の拡張予定範囲の周囲に建築用空洞コンクリートブロックを所定段数積み上げ、積み上げたコンクリートブロック間とコンクリートブロック内の空洞に補強鉄筋を配筋してモルタル充填補強した側壁部を構築し、前記側壁部で囲まれた範囲内に所定厚さのレベリング層を形成し、該レベリング層の上面に発泡樹脂ブロックを所定段数積層して樹脂ブロック層を構築し、該樹脂ブロック層の上面にスラブ補強鉄筋を配筋し、前記スラブ補強鉄筋の端部を前記補強鉄筋の上端と接合し、前記樹脂ブロック層と前記側壁部の上面とにスラブコンクリートを打設して所定層厚のコンクリートスラブ層を形成することを特徴とする。

【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のトラックバースの拡張プラットホームの一実施形態の内部構造を一部切欠いて模式的に示した斜視図。
図2図1の拡張プラットホームの一部断面を示した断面図。
図3】本発明のトラックバースの拡張プラットホームの構築例を示した模式平面図。
図4】本発明のトラックバースの拡張プラットホームの構築例と貨物車両の駐車状況の一例を示した模式側面図。
図5】従来のトラックバースにおける貨物車両の駐車状況の一例を示した模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のトラックバースの拡張プラットホームの一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の物流倉庫のトラックバース1の拡張プラットホーム10の一部分を切欠いてその内部を示した斜視図である。図2は、拡張プラットホーム10の断面構成を部分的に示した部分断面図である。拡張プラットホーム10は、トラックバース1の既存のプラットホーム2の側面端部から、車両駐車スペース3側に所定の床平面形状をなして張り出して構築され同図にはその一部が示されている。拡張プラットホーム10は、図1,2に示したように、貨物車両が駐車される駐車スペース3の既存の床スラブ4上に撒き出された砂が所定厚さに転圧されたレベリング層20と、レベリング層20の上面に発泡スチロールブロック26が所定段数に積層されたブロック層25と、ブロック層25の上面に所定層厚で構築されたコンクリートスラブ層30と、レベリング層20とブロック層25の側面を覆うように構築された側壁部15とを主構成した複合構造物である。
【0017】
本発明の拡張プラットホーム10の実施形態では、拡張プラットホーム10の床面形状に合わせて側壁部15が構築され、その内部にレベリング層20が形成され、その上面にさらにブロック層25が積み上げられ、ブロック層25と側壁部15の上面を覆うようにコンクリートスラブ層30が構築されている。
【0018】
本実施形態の側壁部15は、建築用空洞コンクリートブロック(C種)16(以下、コンクリートブロック16と記す。)を4段積み上げたコンクリートブロック壁体からなる。この積層段数は拡張プラットホーム10の高さに応じて設定される。通常のプラットホーム高さは貨物車両の種類によって異なるため、拡張プラットホーム10の用途に合わせて設定することが好ましい。またコンクリートブロック16は規格品であり、サイズが規定されているが、最上段のコンクリートブロック16の高さは拡張プラットホーム10の設計高さに応じて工場等であらかじめ切断加工しておくことが好ましい。これにより現場でのブロック積み作業が迅速に行える。各コンクリートブロック16の連通したすべての空洞部(図示せず)には縦筋17が配筋された状態で補強モルタルが充填され、所定高さのブロック間には横筋(図示せず)も配筋されている。さらに最上段のブロック位置には後述するコンクリートスラブ層30の端部との一体化を図る接合鉄筋が所定ピッチをあけて配筋されている。
【0019】
拡張プラットホーム10が構築されるトラックバース1の車両駐車スペース3は、床スラブ4が外部境界に向けて所定水勾配で傾斜している。このため、側壁部15のコンクリートブロック16を水平に積み上げるために、本実施形態では図1図2に示したように、レベル調整用のベースコンクリート22が打設されているが、水勾配が小さい場合にはベースコンクリート22を施工しないで、床スラブ4に直接コンクリートブロック16を積み上げてもよい。
【0020】
側壁部15が構築された範囲の内側の床スラブ4上にはレベリング層20が形成されている。レベリング層20は、上面がほぼ水平面を構成するように、撒き出された自然砂を転圧整形してなる基面層である。これにより、上述の発泡スチロールブロック26は、基面層としてのレベリング層20上に水平状態をなして積み上げられる。本実施形態のブロック層25では発泡スチロールブロック26が2段に積み上げられている。通常の既製品としての発泡スチロールブロック26の規格高さは500mmであるが、本実施形態のブロック層25の設計高さは750mmに設定されている。そこで、2段目の発泡スチロールブロック26は工場で高さ250mmに切断して搬入されている。これにより、現場でのブロック積み上げ作業の作業時間は大幅に短縮される。なお、ブロックの積み上げパターンは、公知のEPS工法の施工基準に準じることとし、ブロックは千鳥形状に配置されているので、積み上げ状態の安定性が確保されているる。またブロック間には公知の両爪タイプの緊結金物(図示せず)で固定されている。これによりブロック間にずれが生じるのが防止されている。
【0021】
発泡スチロールブロック26がほぼ水平に積み上げられたブロック層25の上面には現場打ちコンクリート作業によってコンクリートスラブ層30が構築されている。このコンクリートスラブ層30は、拡張プラットホーム10上を走行する台車等の上載荷重を均等に分散させるとともに、積み上げられた発泡スチロールブロック26に均等な床版荷重を作用させることで、ブロック間の密着度を高めブロック層25の安定化を図る効果も期待できる。スラブコンクリート31内にはスラブ補強筋32が所定ピッチ(たとえば150mm)で縦横配筋されている。さらにスラブコンクリート31表面にはひび割れ発生防止のために縦横に収縮目地33が形成されている。
【実施例】
【0022】
ここで、倉庫のトラックバース1において、既存のプラットホーム2に加え拡張プラットホーム10を増設した実施例について、図3図4を参照して説明する。図3(a)は、既存のプラットホーム2を利用する40フィートコンテナトレーラーT1以外に4トン積み以下のトラックT2が出庫のために頻繁に出入りするような倉庫を例にした実施例である。この実施例では、4トン積み以下のトラックT2の積み卸し作業の効率化を図るための拡張プラットホーム10が増設されている。この拡張プラットホーム10を備えたトラックバース1では、図3(a),図4(b)に示したように、車両駐車スペース3内に40フィートコンテナトレーラーT1と4トン積みトラックT2とを同時に効率よく駐車させて、積み卸し作業を行うことができる。このとき4トン積みトラックT2が積み卸し作業を行う拡張プラットホーム10の背後の既存のプラットホーム2は荷物保管エリア40として利用することができ、貨物の流れがよりスムースになる。
【0023】
図3(b)は、拡張プラットホーム10の両側部に貨物車両の駐車スペース3を設けるようにした実施例である。拡張プラットホーム10をこのような床面形状とすることにより、たとえばウイング車T3の荷台を拡張プラットホーム10に横付けして駐車させることでウイング車T3による貨物の積み卸し作業を効率よく行うことができる。また、図4(c)に示したように、拡張プラットホーム10の前面では、通常の4トン積みトラックT2による積み卸し作業を並行して行うことができる。また拡張プラットホーム10の背後の既存スペースを荷物保管エリア40として利用できるので、全体としてきわめて効率のよい積み卸し作業が実現する。
【0024】
以上の図を用いた説明では、拡張プラットホーム10として既存のプラットホーム2から連続して床面積を拡張する仕様について説明したが、既存のプラットホーム2から独立した島式のプラットホームとすることも可能である。
【0025】
また、拡張プラットホームの応用例として、広い床面積の工場等において、各種の作業工程のエリアごとに床高を変更する必要がある場合等において、本発明の拡張プラットホームの構造からなる嵩上げ床を構築することも有効である。
【0026】
このように本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1、50 トラックバース
2、52 既存のプラットホーム
3、53 車両駐車スペース
4 床スラブ
10 拡張プラットホーム
15 側壁部
16 コンクリートブロック
20 レベリング層
25 ブロック層
26 発泡スチロールブロック
30 コンクリートスラブ層
図1
図2
図3
図4
図5