特許第6892803号(P6892803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892803
(24)【登録日】2021年6月1日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】粘接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20210614BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20210614BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J153/00
   C09J11/08
【請求項の数】1
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-162298(P2017-162298)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-203172(P2017-203172A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-141636(P2017-141636)
(32)【優先日】2017年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】小野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】中田 加那予
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/027767(WO,A1)
【文献】 特開2005−307063(JP,A)
【文献】 特開2004−002736(JP,A)
【文献】 特開平11−323072(JP,A)
【文献】 特開2013−136653(JP,A)
【文献】 特表2002−533556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)メタクリル酸エステル単位からなる2つの重合体ブロック(A1)および(A2)とアクリル酸エステル単位からなる1つの重合体ブロック(B)とを有し、(A1)−(B)−(A2)ブロック構造を有し、重量平均分子量(Mw)が50,000〜250,000であり、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が35質量%以下であるアクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部、および(ii)粘着付与樹脂1〜190質量部を含有する粘接着剤組成物であり、
アクリル系ブロック共重合体としてアクリル系トリブロック共重合体(I)のみを含み、
前記粘接着剤組成物は、アクリル系トリブロック共重合体(I)および粘着付与樹脂のみを含み、
上記重合体ブロック(A1)および(A2)の構成単位となるメタクリル酸エステルが、メタクリル酸メチルであり、
上記重合体ブロック(B)の構成単位となるアクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチルおよびアクリル酸イソオクチルから選ばれる少なくとも一種である、
粘接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘接着剤などに好適なアクリル系ブロック共重合体を含む粘接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ブロック共重合体またはアクリル系ブロック共重合体を含む組成物を粘接着剤に用いることは従来から知られている。
例えば、ガラス転移温度が30℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックの両端にガラス転移温度が110℃以上で且つシンジオタクチシチーが70%以上であるメタクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックが結合したトリブロック共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ジブロック共重合体を含有するブロック共重合体組成物および該組成物からなる粘着剤が知られている(特許文献1参照)。また、メタクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックとアクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックよりなる特定のジブロック共重合体と(メタ)アクリル酸エステル系トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物が知られている(特許文献2参照)。さらに、特定のメタクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックとアクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックよりなるトリブロック共重合体とジブロック共重合体を含有する粘着剤組成物が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−323072号公報
【特許文献2】特開2004−002736号公報
【特許文献3】特開2005−307063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載される粘着剤および粘着剤組成物で具体的に検討されている粘着付与樹脂、可塑剤は限定されており、透明性、耐ブリード性、粘着特性などにおいてなお改良の余地がある。本発明の目的は、透明性、耐ブリード性、および粘着特性に優れたアクリル系ブロック共重合体を含有する粘接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねてきた結果、特定のアクリル系トリブロック共重合体と特定の粘着付与樹脂とを特定の配合比で含む粘接着剤組成物とすることで、透明性、耐ブリード性、および粘着特性などが優れるアクリル系ブロック共重合体を含有する粘接着剤組成物が得られることを見出した。
【0006】
本発明によれば上記目的は、
[1](i)メタクリル酸エステル単位からなる2つの重合体ブロック(A1)および(A2)とアクリル酸エステル単位からなる1つの重合体ブロック(B)とを有し、(A1)−(B)−(A2)ブロック構造を有し、重量平均分子量(Mw)が50,000〜250,000であり、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が35質量%以下であるアクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部、および
(ii)粘着付与樹脂1〜190質量部を含有する粘接着剤組成物、
[2](i)メタクリル酸エステル単位からなる2つの重合体ブロック(A1)および(A2)とアクリル酸エステル単位からなる1つの重合体ブロック(B)とを有し、(A1)−(B)−(A2)ブロック構造を有し、重量平均分子量(Mw)が50,000〜250,000であり、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が35質量%以下であるアクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部、および
(ii)粘着付与樹脂1〜190質量部、および
(iii)可塑剤80質量部以下を含有する粘接着剤組成物;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透明性、耐ブリード性、および粘着特性などが優れるアクリル系ブロック共重合体を含有する粘接着剤組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」は「メタクリル酸エステル」と「アクリル酸エステル」との総称であり、また「(メタ)アクリル」は「メタクリル」と「アクリル」との総称である。
【0009】
(アクリル系トリブロック共重合体(I))
本発明の粘接着剤組成物に含まれるアクリル系トリブロック共重合体(I)は、メタクリル酸エステル単位からなる2つの重合体ブロック(A1)および(A2)とアクリル酸エステル単位からなる1つの重合体ブロック(B)とを有し、(A1)−(B)−(A2)ブロック構造を有し、重量平均分子量(Mw)が50,000〜250,000であり、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が35質量%以下である。
【0010】
(重合体ブロック(A1)および(A2))
アクリル系トリブロック共重合体(I)は、メタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(A1)および(A2)の2つのメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックを有する。
【0011】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)の構成単位となるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルなどの官能基を有さないメタクリル酸エステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等の官能基を有するメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0012】
これらの中でも、得られる重合体の耐熱性、耐久性を向上させる観点から、官能基を有さないメタクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニルがより好ましく、重合体ブロック(A1)および(A2)と重合体ブロック(B)との相分離がより明瞭となり、凝集力が高くなる点からメタクリル酸メチルがさらに好ましい。重合体ブロック(A1)および(A2)は、これらメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。また、上記アクリル系トリブロック共重合体(I)は、メタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックとして重合体ブロック(A1)および(A2)の2つを有するが、これら重合体ブロック(A1)および(A2)を構成するメタクリル酸エステルは、同一であっても異なっていてもよい。また、重合体ブロック(A1)および(A2)中に含まれるメタクリル酸エステル単位の割合は、重合体ブロック(A1)および(A2)のそれぞれの重合体ブロック中、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がよりさらに好ましい。また、重合体ブロック(A1)および(A2)のメタクリル酸エステル単位の割合は100質量%であってもよい。
【0013】
なお、メタクリル酸エステル単位からなる各重合体ブロック(A1)および(A2)に含まれるメタクリル酸エステル単位の立体規則性は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
アクリル系トリブロック共重合体(I)では、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量は35質量%以下であり、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。また、重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量は4質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。重合体ブロック(A1)および(A2)の合計含有量が上記範囲内であると、アクリル系トリブロック共重合体(I)を粘接着剤組成物に用いた際に、優れた凝集力を発現し、タックと接着力がより向上する。また、該粘接着剤組成物は、耐熱接着性、保持力がより優れる傾向にある。また、アクリル系トリブロック共重合体(I)に含まれる重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれの含有量は同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれのガラス転移温度(Tg)は60〜140℃であることが好ましく、70〜130℃であることがより好ましく、80〜130℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、粘接着剤の通常の使用温度においてこの重合体ブロック(A1)および(A2)は物理的な疑似架橋点として作用し凝集力が発現することになり、粘接着剤組成物に用いた際に、接着特性、耐久性、耐熱性等に優れる。なお、本明細書におけるガラス転移温度は、DSC測定で得られた曲線の外挿開始温度である。
【0016】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれのTgは、同一でも異なっていてもよい。上記重合体ブロック(A1)および(A2)それぞれのTgが異なる場合でも、双方の重合体ブロックのTgが上記範囲であることが好ましい一態様である。
【0017】
(重合体ブロック(B))
アクリル系トリブロック共重合体(I)は、アクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(B)を1つ有する。
【0018】
上記重合体ブロック(B)の構成単位となるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルなどの、官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸フェノキシエチルなどの、官能基を有するアクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0019】
中でも、粘接着剤組成物とした際の透明性および柔軟性の観点から、一般式CH2=CH−COOR1(式中、R1は炭素数1〜10の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステルがより好ましく、重合体ブロック(A1)および(A2)と重合体ブロック(B)との相分離が明瞭となり粘接着剤組成物が高い凝集力を発現する点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルなどの、官能基を有さないアクリル酸エステルがよりさらに好ましい。さらに、粘接着剤組成物が常温で適度な粘着性を有し、かつ、広い温度範囲および広い剥離速度条件下で安定した接着力を発現する点から、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチルおよびアクリル酸イソオクチルから選ばれる少なくとも一種がより好ましく、特にアクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0020】
重合体ブロック(B)は、これらアクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。重合体ブロック(B)中に含まれるアクリル酸エステル単位の割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がよりさらに好ましい。また、重合体ブロック(B)のアクリル酸エステル単位の割合は100質量%であってもよい。
【0021】
アクリル系トリブロック共重合体(I)では、重合体ブロック(B)の含有量は、通常65質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。また、重合体ブロック(B)の含有量は96質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましい。重合体ブロック(B)の含有量が上記範囲内であると、アクリル系トリブロック共重合体(I)を粘接着剤組成物に用いた際に、優れた凝集力を発現し、タックと接着力がより向上する。
【0022】
上記重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)は−100〜30℃であることが好ましく、−80〜10℃であることがより好ましく、−70〜0℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、粘接着剤組成物に用いた際に優れたタックおよび接着力を有することができる。
【0023】
上記重合体ブロック(A1)および(A2)、ならびに重合体ブロック(B)には、本発明の効果を損なわない範囲で、お互いのモノマー成分が含有されていてもよい。例えば、重合体ブロック(A1)または(A2)と重合体ブロック(B)との境界でテーパード構造を有していてもよい。また、重合体ブロック(A1)または(A2)と重合体ブロック(B)とはお互いのモノマー成分を含有しないものであってもよい。
【0024】
また、上記重合体ブロック(A1)および(A2)ならびに重合体ブロック(B)は、必要に応じて他の単量体を含有してもよい。かかる他の単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の官能基を有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン、オクテン等のオレフィン系単量体;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系単量体等が挙げられる。各重合体ブロックがこれら他の単量体を含有する場合、その含有量は、各重合体ブロックを構成する単量体の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下である。
【0025】
アクリル系トリブロック共重合体(I)は、重合体ブロック(A1)、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A2)の順に結合した、(A1)−(B)−(A2)ブロック構造を有する。アクリル系トリブロック共重合体(I)がこの構造をとることにより、接着力、保持力、凝集力に優れる粘接着剤組成物が得られる。
【0026】
アクリル系トリブロック共重合体(I)の重量平均分子量(Mw)は50,000〜250,000である。凝集力および製造時の取扱性の点からは、70,000〜250,000であることが好ましく、100,000〜250,000であることがより好ましく、130,000〜250,000であることがさらに好ましい。アクリル系トリブロック共重合体(I)のMwが50,000未満であると凝集力に劣るおそれがある。また、Mwが250,000を超えると製造時の取り扱い性に劣るおそれがある。
【0027】
アクリル系トリブロック共重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.4であることがより好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量である。
【0028】
本発明で用いられるアクリル系トリブロック共重合体(I)の製造方法は、化学構造に関する本発明の条件を満足する重合体が得られる限りにおいて特に限定されることなく、公知の手法に準じた方法を採用することができる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位である単量体をリビング重合する方法が取られる。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(特開平06−93060号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩等の鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(特表平05−507737号公報参照)、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報参照)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(Macromolecular Chemistry and Physics、2000年、201巻、p.1108〜1114参照)等が挙げられる。
【0029】
上記製造方法のうち、有機アルミニウム化合物の存在下で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法は、得られるブロック共重合体の透明性が高いものとなり、残存単量体が少なく臭気が抑えられ、また、粘接着剤組成物として用いる際、貼り合わせ後の気泡の発生を抑制できるため好ましい。さらに、メタクリル酸エステル重合体ブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり、粘接着剤組成物の耐熱性を高める効果がある点、比較的温和な温度条件下でリビング重合が可能で工業的に生産する場合に環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかる電力)が小さい点でも好ましい。
【0030】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(1)
AlR234 (1)
(式(1)中、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表すか、あるいはR2が上記したいずれかの基であり、R3およびR4が一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を形成している。)で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物としては、重合のリビング性の高さや取り扱いの容易さ等の点から、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等が好ましく挙げられる。
【0032】
上記有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、テトラメチレンジリチウム等のアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、p−トリルリチウム、リチウムナフタレン等のアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウム等のアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド等のリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム等のリチウムアルコキシド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、重合開始効率が高いことから、アルキルリチウムが好ましく、中でもtert−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましく、sec−ブチルリチウムがさらに好ましい。
【0033】
また、上記リビングアニオン重合は、通常、重合反応に不活性な溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル等が挙げられ、トルエンが好適に用いられる。
【0034】
ブロック共重合体は、例えば、単量体を重合して得た所望のリビングポリマー末端に、所望の重合体ブロック(重合体ブロック(A1)、重合体ブロック(B)等)を形成する工程を所望の回数繰り返した後、重合反応を停止させることにより製造できる。具体的には、例えば有機アルミニウム化合物の存在下、有機アルカリ金属化合物からなる重合開始剤により、第1の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第1工程、第2の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第2工程、および、第3の重合体ブロックを形成する単量体を重合する第3工程を含む複数段階の重合工程を経て、得られた重合体の活性末端をアルコール等と反応させ、重合反応を停止させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I)を製造できる。上記のような方法によれば、重合体ブロック(A1)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A2)からなるトリブロック共重合体を製造できる。
【0035】
重合温度としては、重合体ブロック(A1)および(A2)を形成する際は0〜100℃、重合体ブロック(B)を形成する際は−50〜50℃が好ましい。上記範囲より重合温度が低い場合には、反応の進行が遅くなり、反応を完結させるのに長時間必要となる。一方、上記範囲より重合温度が高い場合には、リビングポリマー末端の失活が増え、分子量分布が広くなったり、所望のブロック共重合体が得られなくなったりする。また、重合体ブロック(A1)および(A2)ならびに重合体ブロック(B)はそれぞれ1秒〜20時間の範囲で重合できる。
【0036】
(粘着付与樹脂)
本発明の粘接着剤組成物には、粘着付与樹脂が含まれる。本発明の粘接着組成物に粘着付与樹脂が含まれることにより、接着性、タック、相溶性が向上する。なお、本発明の粘着剤組成物では、後述する可塑剤が含まれていないことが好ましい一態様である。
【0037】
本発明の粘接着剤組成物に配合可能な粘着付与樹脂としては、従来から粘着剤において用いられている粘着付与樹脂のいずれもが使用でき特に限定されないが、例えば、ロジン系樹脂(ロジン、ロジン誘導体、水素添加ロジン誘導体など)、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、(水添)石油系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、フェノール系樹脂、クマロン−インデン系樹脂などを挙げることができる。
【0038】
本発明においてロジン系樹脂とは、松から得られる琥珀色、無定形の天然樹脂のことであり、その主成分はアビエチン酸とその異性体の混合物である。また、このアビエチン酸またはその異性体の持つ反応性を利用して、エステル化、重合、水添等の変性をしたものも前記ロジン系樹脂に含まれる。例えば、未変性ロジン(例えば、トールロジン、ガムロジン、およびウッドロジンなど)、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、並びにこれらのエステル(例えば、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、およびエチレングリコールエステルなど)およびこれらをさらに水素添加(以下、水添とも称する。)等変性したものが挙げられ、特に耐熱性、耐着色性の観点から水素添加ロジンエステルが好適に用いられる。
【0039】
本発明においてテルペン系樹脂とは、テルペン系単量体を含む原料を重合して得られるオリゴマーである。また、このようにして得られたオリゴマーを水添等変性したオリゴマーも前記テルペン系樹脂に含まれる。テルペンとは一般的に、イソプレン(C58)の重合体を意味し、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)等に分類される。テルペン系単量体とは、これらを基本骨格として有する単量体であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレイン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピンネオール、β−テルピンネオール、γ−テルピンネオール、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類等が挙げられる。また、テルペン系単量体を含む原料には、テルペン系単量体と共重合可能な他の単量体、例えばベンゾフラン(C86O)等のクマロン系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン、2−フェニル−2−ブテン等のビニル芳香族化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ノリルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール系単量体等が含まれていてもよい。上記テルペン系単量体と共重合可能な他の単量体を含む原料を重合して得られるオリゴマーとしては、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。また、このようにして得られたオリゴマーを水添等変性したものもテルペン系樹脂に含まれる。
【0040】
本発明において(水添)石油系樹脂とは、C5留分、C9留分、C5留分の精製成分、C9留分の精製成分、またはこれら留分若しくは精製成分の混合物からなる原料を重合することにより得られるオリゴマーである。また、このようにして得られたオリゴマーを水添等変性したものも上記(水添)石油系樹脂に含まれる。なお、C5留分には、通常、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテンおよびシクロペンテン等が含まれ、C9留分には、通常、スチレン、アリルベンゼン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレンおよびインデン等が含まれる。また、C9留分には少量のC8留分およびC10留分が含まれる場合がある。
【0041】
上記(水添)石油系樹脂は、C5留分またはその精製成分を原料にしたC5樹脂、C9留分またはその精製成分を原料にしたC9樹脂、C5留分またはその精製成分とC9留分またはその精製成分との混合物を原料にした、C5−C9共重合樹脂に大別される。これらの中でも、特に耐熱性、耐着色性の観点から水添石油系樹脂が好適に用いられる。
【0042】
本発明においては、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、フェノール系樹脂等の芳香族炭化水素系樹脂は、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、ジビニルトルエン、2−フェニル−2−ブテン、メトキシスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、インデン、メチルインデン、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ノリルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはこれらの混合物からなる原料を重合することにより得られるオリゴマーである。また、このようにして得られたオリゴマーを水添等変性したものも含まれる。その他、クマロン−インデン系樹脂なども挙げられる。これらの中でも、特に相溶性、耐熱性、耐着色性の観点からスチレン系樹脂が好適に用いられる。
【0043】
これら粘着付与樹脂は1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。これら粘着付与樹脂が2種以上含まれている場合には、接着力やタックのバランスに優れる点で望ましい。また、上記粘着付与樹脂の軟化点については、高い接着力を発現する点から、50〜160℃のものが好ましい。
【0044】
粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部に対し、1〜190質量部である。粘着付与樹脂がロジン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、フェノール系樹脂、クマロン−インデン系樹脂などの場合、粘着付与樹脂の含有量が上記範囲にあると、粘接着剤組成物の接着力、タックおよび凝集力のバランスに優れる。より高い接着力、タックおよび凝集力を両立させる観点から、粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部に対し、10〜180質量部であることが好ましく、15〜170質量部であることがより好ましい。
【0045】
一方、粘着付与樹脂が、(水添)石油系樹脂、テルペン系単量体のみから構成されるテルペン系樹脂の場合は、アクリル系トリブロック共重合体との相溶性の観点から含有量を高めにくい傾向にある。接着力、タックおよび凝集力、および相溶性の観点から、粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部に対し、2〜40質量部であることが好ましく、2〜20質量部であることがより好ましい。
【0046】
(可塑剤)
本発明の粘接着剤組成物には、可塑剤が含まれていてもよい。本発明の粘接着剤組成物に可塑剤が含有されることにより、接着力とタックのバランスに優れる粘接着剤組成物が得られ、さらに、一般的に粘接着剤組成物全体としてのコストを下げることができる。
【0047】
かかる可塑剤の例としては、例えば、ジブチルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ビス(2−エチルヘキシル)テレフタレート、ジn−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジn−オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジn−ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3−ブチレングリコールとのエステル化物、安息香酸とジプロピレングリコールのエステル化物等エステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレンなどの低分子量重合体;ポリアクリル酸n−ブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリルオリゴマー;ダイアナプロセスオイルPWシリーズ(出光興産株式会社製)、SUNPURE LW70およびPシリーズ(日本サン石油株式会社製)等のパラフィン系オイル;SUNPURE N90およびNX90、SUNTHENEシリーズ(日本サン石油株式会社製)等のナフテン系オイル;JSO AROMA790(日本サン石油株式会社製)、Vivatec500(H&R社製)等のアロマ系オイル等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0048】
可塑剤の含有量は、アクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部に対し、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲にあることにより、透明性、耐ブリード性に優れる粘接着剤組成物が得られる。なお、粘接着剤組成物に可塑剤が含まれることによる効果を求めるためには、アクリル系トリブロック共重合体(I)100質量部に対し、通常5質量部以上含まれることが望ましい。
【0049】
本発明の粘接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体;軟化剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、染色剤、屈折率調整剤、フィラー、硬化剤、膠着防止剤等の添加剤が含まれていても良い。これら他の重合体および添加剤は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0050】
他の重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;スチレン−メタクリル酸メチル共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。これらの中でも、上記粘接着剤組成物に含まれるアクリル系トリブロック共重合体(I)との相溶性の観点から、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、AS樹脂、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデンおよびスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0051】
上記フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、および有機繊維;炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤;カーボンブラック等が挙げられる。無機繊維、有機繊維が含まれていると、得られる粘接着剤組成物に耐久性が付与される。無機充填剤が含まれていると、得られる粘接着剤組成物に耐熱性、耐候性が付与される。
【0052】
本発明の粘接着剤組成物に硬化剤を含ませると、硬化型粘接着剤として好適に使用できる。上記硬化剤としては、UV硬化剤等の光硬化剤、熱硬化剤等が挙げられ、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類等が挙げられる。具体的には、ベンゾイン、α−メチロールベンゾイン、α−t−ブチルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾフェノン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、ベンジル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、ジアセチル等が挙げられる。硬化剤は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0053】
上記硬化剤の効果を高める観点から、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸、および、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル等のエステル;アクリルアミド;メタクリルアミド;N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−(ジヒドロキシエチル)アクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;N−メチロールメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−(ジヒドロキシエチル)メタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;ビニルエステル;ビニルエーテル;モノ−N−ビニル誘導体;スチレン誘導体等の単量体;前記単量体を構成成分として含むオリゴマー等がさらに本発明の粘接着剤組成物に含まれていてもよい。耐久性を高める観点からは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル等のエステル;ビニルエーテル;スチレン誘導体;および前記単量体を構成成分として含むオリゴマーが好ましい。また、これらの単量体の他に、さらに2官能以上の単量体またはオリゴマーからなる架橋剤が含まれていてもよい。
【0054】
本発明の粘接着剤組成物に膠着防止剤を含ませると、取り扱い性の向上が期待できる。上記膠着防止剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸金属塩;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックス等のワックス類;低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィン;アクリル系樹脂粉末;ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン;オクタデシルアミン、リン酸アルキル、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミド等のアミド系樹脂粉末、四フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、シリカ等が挙げられる。
【0055】
本発明の粘接着剤組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、各成分を、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合または混練装置を使用して、通常100〜250℃の範囲内の温度で混合することにより製造できる。また、各成分を有機溶媒に溶解して混合した後、該有機溶媒を留去することによって製造してもよい。得られた粘接着剤組成物は、加熱溶融して使用可能であり、あるいは溶媒に溶解させて溶液型粘接着剤として使用してもよい。溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、エチルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、トルエン−エタノール混合溶媒等が挙げられる。なかでもトルエン、エチルベンゼン、酢酸エチル、メチルエチルケトンが好ましい。
【0056】
なお、本発明の粘接着剤組成物を加熱溶融して使用する場合、加工性・取扱性の観点から、溶融粘度が低いことが好ましい。一方、粘着剤組成物の粘着特性と高保持力(耐クリープ性)を両立する観点からは、溶融粘度は高いことが好ましい。
本発明の粘接着剤組成物は、該粘接着剤組成物からなる粘接着層や、該粘接着層を含む積層体(例えば、積層フィルムまたは積層シート)等の形態での粘接着製品に好適に用いられる。
【0057】
上記粘接着層を形成するには、本発明の粘接着剤組成物を加熱溶融して用いる場合、例えば、ホットメルト塗工法、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー成形法、ラミネーション法等を用いてシート状やフィルム状等の形状に形成できる。本発明の粘着剤組成物の溶融粘度が高い場合、例えば180℃での溶融粘度が20,000mPa・sを超える溶融粘度の場合には、より高い温度で加熱溶融させるため、Tダイから加熱溶融物を非接触で支持体上に塗布するホットメルト塗工方法が、粘着層の厚み制御、均質性、および支持体に必要な耐熱性の観点から好ましい。また、本発明の粘接着剤組成物を溶媒に溶解して用いる場合、例えば、支持体としてポリエチレンテレフタレート等の耐熱材料やスチールベルト等の平板またはロールを用い、これらの上に、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等を用いてアクリル系トリブロック共重合体(I)および粘着付与樹脂などを含む組成物を溶媒に溶解させた溶液を塗工し、乾燥により溶媒を除去する方法(溶液キャスト法)を用いて粘接着層を形成することができる。
【0058】
乾燥により溶媒を除去する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を用いることができるが、複数の段階に分けて乾燥を行うことが好ましい。複数の段階に分けて乾燥を行う場合には、1段階目の乾燥は、溶媒の急激な揮発による発泡を抑制するために、比較的低い温度で行い、2段階目以降の乾燥は、十分に溶媒を除去するために、高温で乾燥を行う方法がより好ましい。
【0059】
上記溶液中のアクリル系トリブロック共重合体(I)および粘着付与樹脂などを含む組成物の濃度は、該組成物の溶媒に対する溶解度、得られる溶液の粘度等を考慮して適宜決定されるが、好ましい下限値が5質量%、好ましい上限値が70質量%である。
【0060】
上記積層体は、本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着層と、紙、セロハン、プラスチック材料、布、木材、および金属等の種々の基材を積層することにより得られる。透明な材料からなる基材層であると、本発明の粘接着剤組成物は透明性や耐候性に優れることから、透明な積層体が得られるため好適である。透明な材料からなる基材層としては、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、シクロオレフィン系樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の重合体と種々のモノマーとの共重合体、これら重合体の2種以上の混合物、およびガラス等からなる基材層が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
上記積層体の構成としては、例えば、本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着層と基材層との2層構成、基材層2層と本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着層との3層構成(基材層/粘接着層/基材層)、基材層と本発明の粘接着剤組成物からなる異なる2層の粘接着層(a)および粘接着層(b)と基材層との4層構成(基材層/粘接着層(a)/粘接着層(b)/基材層)、基材層と本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着層(a)と他の材料からなる粘接着層(c)と基材層との4層構成(基材層/粘接着層(a)/粘接着層(c)/基材層)、基材層3層と本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着層2層との5層構成(基材層/粘接着層/基材層/粘接着層/基材層)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
上記積層体の厚み比としては特に制限されないが、得られる粘接着製品の粘着性、耐久性、取り扱い性から、基材層/粘接着層=1/1000〜1000/1の範囲であることが好ましく、1/200〜200/1の範囲であることがより好ましい。
【0063】
上記積層体を製造する際は、粘接着層と基材層をそれぞれ形成したのちラミネーション法等によりそれらを貼り合わせてもよいし、基材層上に直接粘接着層を形成してもよい。また、粘接着層と基材層を共押出することにより層構造を一度に形成して、例えば共押出しフィルムまたは共押出しシート等として積層体を製造してもよい。
【0064】
本発明の積層体においては、基材層と粘接着層との密着力を高めるために、基材層の表面にコロナ放電処理やプラズマ放電処理等の表面処理を予め施してもよい。また、上記粘接着層および基材層の少なくとも一方の表面に、接着性を有する樹脂等を用いてアンカー層を形成してもよい。
【0065】
かかるアンカー層に用いる樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ブロック共重合体(例えば、SIS、SBS等のスチレン系トリブロック共重合体、およびジブロック共重合体等)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。上記アンカー層は一層であってもよく、二層以上であってもよい。
【0066】
アンカー層を形成させる場合、その方法は特に制限されず、例えば、基材層に上記樹脂を含む溶液を塗工してアンカー層を形成させる方法、アンカー層となる上記樹脂等を含む組成物を加熱溶融してTダイ等により基材層表面にアンカー層を形成させる方法等が挙げられる。
【0067】
また、アンカー層を形成させる場合、アンカー層となる上記樹脂と本発明の粘接着剤組成物とを共押出して基材層表面にアンカー層と粘接着層とを一体積層してもよく、基材層表面にアンカー層となる樹脂と粘接着剤組成物とを順次積層してもよく、さらに、基材層がプラスチック材料である場合には、基材層となるプラスチック材料、アンカー層となる樹脂、および粘接着剤組成物を同時に共押出してもよい。
【0068】
本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着剤は、種々の用途に使用できる。また該粘接着剤組成物からなる粘接着層は、単体で粘接着シートとして使用できるし、該粘接着層を含む積層体も種々の用途に適用できる。例えば、表面保護等の保護用、マスキング用、結束用、包装用、事務用、ラベル用、装飾・表示用、接合用、ダイシングテープ用、シーリング用、防食・防水用、医療・衛生用、ガラス飛散防止用、電気絶縁用、電子機器保持固定用、半導体製造用、光学表示フィルム用、粘着型光学フィルム用、電磁波シールド用、または電気・電子部品の封止材用の粘接着剤、粘着テープ、フィルムまたはシート等が挙げられる。以下、具体例を挙げる。
【0069】
表面保護用の粘接着剤、粘着テープまたはフィルム等は、金属、プラスチック、ゴム、木材等種々の材料に使用でき、具体的には塗料面、金属の塑性加工や深絞り加工時、自動車部材、光学部材の表面保護のために使用できる。該自動車部材としては、塗装外板、ホイール、ミラー、ウィンドウ、ライト、ライトカバー等が挙げられる。該光学部材としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示装置;偏光フィルム、偏光板、位相差板、導光板、拡散板、DVD等の光ディスク構成フィルム;電子・光学用途向け精密ファインコート面板等が挙げられる。
【0070】
マスキング用の粘接着剤、テープやフィルム等の用途としては、プリント基板やフレキシブルプリント基板の製造時のマスキング;電子機器でのメッキやハンダ処理時のマスキング;自動車等車両の製造、車両・建築物の塗装、捺染、土木工事見切り時のマスキング等が挙げられる。
【0071】
結束用途としては、ワイヤーハーネス、電線、ケーブル、ファイバー、パイプ、コイル、巻線、鋼材、ダクト、ポリ袋、食品、野菜、花卉等が挙げられる。
包装用途としては、重量物梱包、輸出梱包、段ボール箱の封緘、缶シール等が挙げられる。
【0072】
事務用途としては、事務汎用、封緘、書籍の補修、製図、メモ用等が挙げられる。
ラベル用途としては、価格、商品表示、荷札、POP、ステッカー、ストライプ、ネームプレート、装飾、広告用等が挙げられる。
【0073】
上記ラベルとしては、紙、加工紙(アルミ蒸着加工、アルミラミネート加工、ニス加工、樹脂加工等を施された紙)、合成紙等の紙類;セロハン、プラスチック材料、布、木材および金属製のフィルム等を基材とするラベルが挙げられる。基材の具体例としては、例えば、上質紙、アート紙、キャスト紙、サーマル紙、ホイル紙;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、OPPフィルム、ポリ乳酸フィルム、合成紙、合成紙サーマル、オーバーラミフィルム等が挙げられる。中でも、本発明の粘接着剤組成物は、透明性・耐候性に優れる点で、透明な材料からなる基材を用いたラベルに好適に用いることができる。また、本発明の粘接着剤組成物は、経時的な変色が少ないため、サーマル紙や合成紙サーマルを基材とするサーマルラベルに好適に用いることができる。
【0074】
上記ラベルの被着体としては、プラスチックボトル、発泡プラスチック製ケース等のプラスチック製品;ダンボール箱等の紙製・ダンボール製品;ガラス瓶等のガラス製品;金属製品;セラミックス等その他の無機材料製品等が挙げられる。
【0075】
本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着層を含む積層体からなるラベルは、室温よりやや高い温度(例えば40℃)で保管時に接着亢進が少なく、使用後に糊残りなく剥がすことができる。しかも低温(−40〜+10℃)でも被着体に貼合でき、低温(−40〜+10℃)で保管しても剥がれることがない。
【0076】
装飾・表示用途としては、危険表示シール、ラインテープ、配線マーキング、蓄光テープ、反射シート等が挙げられる。
粘着型光学フィルム用途としては、例えば偏光フィルム、偏光板、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射防止フィルム、アンチグレアフィルム、カラーフィルター、導光板、拡散フィルム、プリズムシート、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、機能性複合光学フィルム、ITO貼合用フィルム、耐衝撃性付与フィルム、輝度向上フィルム、視認性向上フィルム等の片面若しくは両面の少なくとも一部または全部に粘接着層を形成した光学フィルム等が挙げられる。かかる粘着型光学フィルムは、上記光学フィルムの表面保護のために用いられる保護フィルムに本発明の粘接着剤組成物からなる粘接着層を形成させたフィルムを含む。粘着型光学フィルムは、液晶表示装置、PDP、有機EL表示装置、電子ペーパー、ゲーム機、モバイル端末等の各種画像表示装置に好適に用いられる。
【0077】
電気絶縁用途としては、コイルの保護被覆または絶縁、モータ・トランス等の層間絶縁等が挙げられる。
電子機器保持固定用途としては、キャリアテープ、パッケージング、ブラウン管の固定、スプライシング、リブ補強等が挙げられる。
【0078】
半導体製造用としては、シリコーンウエハーの保護用等が挙げられる。
接合用途としては、各種接着分野、自動車、電車、電気機器、印刷版固定、建築、銘板固定、一般家庭用、粗面、凹凸面、曲面への接着用等が挙げられる。
【0079】
シーリング用途としては、断熱、防振、防水、防湿、防音または防塵用のシーリング等が挙げられる。
防食・防水用途としては、ガス、水道管の防食、大口径管の防食、土木建築物の防食等が挙げられる。
【0080】
医療・衛生用途としては、鎮痛消炎剤(プラスター、パップ)、虚血性心疾患治療剤、女性ホルモン補充剤、気管支拡張剤、癌性疼痛緩和剤、禁煙補助剤、感冒用貼付剤、鎮痒パッチ、角質軟化剤等の経皮吸収薬用途;救急絆創膏(殺菌剤入り)、サージカルドレッシング・サージカルテープ、絆創膏、止血絆、ヒト排泄物処理装着具用テープ(人工肛門固定テープ)、縫合用テープ、抗菌テープ、固定テーピング、自着性包帯、口腔粘膜貼付テープ、スポーツ用テープ、脱毛用テープ等種々のテープ用途;フェイスパック、目元潤いシート、角質剥離パック等の美容用途;冷却シート、温熱カイロ、防塵、防水、害虫捕獲用等が挙げられる。
電子・電気部品の封止材用途としては、液晶モニター、太陽電池等が挙げられる。
【実施例】
【0081】
以下に本発明を実施例、比較例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。なお、以下に示す製造例1〜6では、モノマーやその他の化合物は、常法により乾燥精製し、窒素にて脱気して使用した。また、モノマーや他の化合物の反応系への移送および供給は窒素雰囲気下で行った。
【0082】
以下の例において、重合体(ブロックを形成する重合体)およびブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCによりポリスチレン換算分子量で求めた。GPCで用いた測定装置および条件は次のとおりである。
[GPC測定の装置および条件]
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
また、以下の例において、ブロック共重合体における各重合体ブロックの含有量は、1H−NMR測定によって求めた。1H−NMR測定で用いた測定装置および条件は次のとおりである。
【0083】
1H−NMR測定の装置および条件]
・装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「JNM−LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
1H−NMRスペクトルにおいて、3.6ppmおよび4.0ppm付近のシグナルは、それぞれ、メタクリル酸メチル単位のエステル基(−O−CH3)およびアクリル酸エステル単位のエステル基(−O−C2−CH2−CH2−CH3)に帰属され、その積分値の比によって各重合体ブロックの含有量を求めた。
粘着剤組成物からなる粘着層を有する粘着テープの評価は、以下の方法により行った。
【0084】
[相溶性]
後述の方法により作製した厚さ25μmの粘着層を有する粘着テープ作製24時間後の外観により相溶性を評価した。粘着テープが無色透明で全く白濁が見られないものは「A」(相溶性 良)、ムラや白濁が見られるものは「B」(相溶性 悪)とした。
【0085】
[ブリード性]
後述の方法により作製した厚さ25μmの粘着層を有する粘着テープ作製直後および24時間後の外観を観察し、粘着テープの粘着層表面からの液状物のにじみ出しにより評価した。粘着層表面からの液状物のにじみ出しが作製直後、および作製24時間後のいずれでも見られない場合は「a」、作製24時間後にテープ表面から液状物がにじみ出てきた場合は、「b」とした。
【0086】
[粘着特性]
25℃において、作製された粘着テープの粘着層表面に親指を押しつけ引き剥がす時の抵抗をタック感として3段階(1,2,3)で官能評価し、これを粘着特性の指標とした。ここでは、数字の大きいほど粘着性(タック性)が高く、「3」はタック感良好、「2」はタック感有りとし、粘着剤として適していることを示した。一方、「1」はタック感無しで粘着剤として不向きとした。
【0087】
[熱安定性]
熱安定性は、得られた粘着テープの180℃で3時間熱処理前後の外観の色変化を評価することによって行った。熱処理前後で外観上色変化が確認できない場合は「○」、色変化が確認できる場合は「△」とした。
【0088】
[溶融粘度]
後述のニーダーを用いて溶融混練により作製した粘着剤組成物を、B型粘度計にセットし、160℃、180℃に加温した際の溶融粘度を測定した。スピンドルはNo.29を用いた。
【0089】
[保持力(クリープ)]
JIS Z0237に準拠して測定した。すなわち、作製した厚さ25μmの粘着テープをステンレス(SUS304)板(ブライトアニール処理品)に幅25mm×長さ25mmで貼り付け、温度60℃で荷重500gを吊り下げ、落下時間または240分後のズレ距離を求めた。
【0090】
《製造例1》[アクリル系トリブロック共重合体(I−1)の製造]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて攪拌しながら、トルエン1408gと1,2−ジメトキシエタン32.7gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム24.5mmolを含有するトルエン溶液48.6gを加え、さらにsec−ブチルリチウム4.08mmolを含有するsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液2.39gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル32.6gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル410gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル45.3gを加え、一晩室温にて攪拌した。
(5)メタノ−ル15gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I−1)445gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−1)の重量平均分子量(Mw)を上述の方法でGPCを測定により求めた。また、上述した1H−NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I−1)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
【0091】
《製造例2》[アクリル系トリブロック共重合体(I−2)の製造]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて攪拌しながら、トルエン1409gと1,2−ジメトキシエタン32.7gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム24.5mmolを含有するトルエン溶液48.6gを加え、さらにsec−ブチルリチウム2.55mmolを含有するsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1.50gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル22.7gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル434gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル29.4gを加え、一晩室温にて攪拌した。
(5)メタノ−ル15gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I−2)440gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−2)の重量平均分子量(Mw)を上述の方法でGPCを測定により求めた。また、上述した1H−NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I−2)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
【0092】
《製造例3》[アクリル系トリブロック共重合体(I−3)の製造]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて攪拌しながら、トルエン1409gと1,2−ジメトキシエタン32.7gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム24.5mmolを含有するトルエン溶液48.6gを加え、さらにsec−ブチルリチウム3.15mmolを含有するsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1.85gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル32.6gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル410gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル45.3gを加え、一晩室温にて攪拌した。
(5)メタノ−ル15gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I−3)445gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−3)の重量平均分子量(Mw)を上述の方法でGPCを測定により求めた。また、上述した1H−NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I−3)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
【0093】
《製造例4》[アクリル系トリブロック共重合体(I−4)の製造]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて攪拌しながら、トルエン1302gと1,2−ジメトキシエタン65.1gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム60.3mmolを含有するトルエン溶液120.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム7.50mmolを含有するsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液4.34gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル53.9gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル360gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル53.9gを加え、一晩室温にて攪拌した。
(5)メタノ−ル20gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I−4)440gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−4)の重量平均分子量(Mw)を上述の方法でGPCを測定により求めた。また、上述した1H−NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I−4)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
【0094】
《製造例5》[アクリル系トリブロック共重合体(I−5)の製造]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて攪拌しながら、トルエン1409gと1,2−ジメトキシエタン32.7gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム24.5mmolを含有するトルエン溶液48.6gを加え、さらにsec−ブチルリチウム4.35mmolを含有するsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液2.55gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル43.5gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル360gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル61.5gを加え、一晩室温にて攪拌した。
(5)メタノ−ル15gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I−5)450gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−5)の重量平均分子量(Mw)を上述の方法でGPCを測定により求めた。また、上述した1H−NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I−5)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
【0095】
《製造例6》[アクリル系トリブロック共重合体(I−6)の製造]
(1)3Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にて攪拌しながら、トルエン1302gと1,2−ジメトキシエタン65.1gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム60.3mmolを含有するトルエン溶液120.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム7.50mmolを含有するsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液4.34gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル69.3gを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。
(3)引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル315gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した。
(4)さらに、これにメタクリル酸メチル65.9gを加え、一晩室温にて攪拌した。
(5)メタノ−ル20gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、液状沈殿物を析出させた。その後、液状沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(I−6)440gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−6)の重量平均分子量(Mw)を上述の方法でGPCを測定により求めた。また、上述した1H−NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(I−6)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。
【0096】
上記製造例1〜6で得たアクリル系トリブロック共重合体(I−1)〜(I−6)のブロック構造、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、PMMA重合体ブロック(メタクリル酸メチル単位100質量%からなる重合体ブロック)の合計含有量を表1に示す。なお、表1中、PMMAはメタクリル酸メチル単位100質量%からなる重合体ブロック、PnBAはアクリル酸n−ブチル単位100質量%からなるブロックを意味する。
【0097】
【表1】
【0098】
また、実施例および比較例では、粘着付与樹脂および可塑剤として、以下のものを使用した。
(粘着付与樹脂)
・商品名「Ysertack311」Euro Yser製、ロジンエステル
・商品名「Ysertack316」Euro Yser製、ロジンエステル
・商品名「Pensel D125」荒川化学工業株式会社製、重合ロジンエステル
・商品名「Pensel D160」荒川化学工業株式会社製、重合ロジンエステル
・商品名「KE311」荒川化学工業株式会社製、水添ロジンエステル
・商品名「FORAL 85E」Eastman製、水添ロジンエステル
・商品名「FORAL AX-E」Eastman製、ロジン酸
・商品名「YS polyster T160」ヤスハラケミカル株式会社製、テルペンフェノール系樹脂・商品名「YS resin SX100」ヤスハラケミカル株式会社製、芳香族炭化水素系樹脂
・商品名「Kristalex F100」Eastman製、芳香族炭化水素系樹脂
・商品名「Arkon P100」荒川化学工業株式会社製、水添石油系樹脂
・商品名「Arkon M100」荒川化学工業株式会社製、水添石油系樹脂
(可塑剤)
・商品名「DOP」新日本理化株式会社製、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート
・商品名「DOTP」Eastman製、ビス(2−エチルヘキシル)テレフタレート
・商品名「ATBC」旭化成ファインケム株式会社製、アセチルクエン酸トリブチル
・商品名「K-FLEX DP」Kalama chemical製、安息香酸とジプロピレングリコールのエステル化物
・商品名「Micryl 105」Polychem製、ポリn−ブチルアクリレートオリゴマー
・商品名「ARUFON UP1171」東亞合成株式会社製、アクリレートオリゴマー
【0099】
[実施例1]
上記製造例1で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−1)と粘着付与樹脂KE311とを下記表2Aに示す質量比で、かつこれらの合計が40質量%になるようにトルエンに溶解し、40質量%の粘着剤組成物を含有するトルエン溶液を作製した。得られたトルエン溶液をコーターによってポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡エステルフィルムE5000、厚さ50μm)上に乾燥後の粘着層の厚さが25μmになるようにコーティングした後、該フィルムを100℃、3分熱処理して、乾燥した粘着層がポリエチレンテレフタレート製フィルム上に形成された粘着テープを作製した。得られた粘着テープのタック感は良好であり、「3」であった。粘着テープ作製24時間後の外観は透明であり、相溶性は良好「A」であった。また、粘着テープ作製直後および作製24時間後のいずれの場合も粘着層表面からの液状物のにじみ出しは見られず、ブリード性は「a」であった。また、得られた粘着テープを180℃で3時間熱処理前後の色変化を評価したところ、外観上色変化は確認できず熱安定性は「○」であった。評価結果を表2Aに記載した。
【0100】
[実施例2〜35]
粘着剤組成物の配合を表2A〜Cに記載の配合(A−2〜A−35)にそれぞれ変更する以外は実施例1と同様に、40質量%の粘着剤組成物を含有するトルエン溶液の作製、および厚さが25μmの粘着層がポリエチレンテレフタレート製フィルム上に形成された粘着テープの作製を行い、得られた粘着テープを評価した。評価結果を表2A、表2B、表2Cに記載した。
【0101】
[比較例1]
粘着剤組成物の配合を表2Bに記載の配合(B−1)に変更する以外は実施例1と同様に、40質量%の粘着剤組成物を含有するトルエン溶液の作製、および厚さが25μmの粘着層がポリエチレンテレフタレート製フィルム上に形成された粘着テープの作製を行い、得られた粘着テープを評価した。得られた粘着テープのタック感はほとんどなく、「1」であった。粘着テープ作製24時間後の外観は不透明であり、相溶性は悪く「B」であった。また、粘着テープ作製直後および作製24時間後のいずれの場合も粘着層表面からの液状物のにじみ出しは見られず、ブリード性は「a」であった。なお、粘着付与樹脂として水添されていないロジンエステルから作製したため、得られた粘着テープの180℃で3時間処理前後の色変化は大きく、熱安定性は「△」であった。評価結果を表2Bに記載した。
【0102】
[比較例2、3]
粘着剤組成物の配合を表2Bに記載の配合(B−2、B−3)にそれぞれ変更する以外は実施例1と同様に、40質量%の粘着剤組成物を含有するトルエン溶液の作製、および厚さが25μmの粘着層がポリエチレンテレフタレート製フィルム上に形成された粘着テープの作製を行い、得られた粘着テープを評価した。得られた粘着テープのタック感はほとんどなく、「1」であった。粘着テープ作製24時間後の外観は不透明であり、相溶性は悪く「B」であった。また、粘着テープ作製直後および作製24時間後のいずれの場合も粘着層表面からの液状物のにじみ出しは見られず、ブリード性は「a」であった。なお、粘着付与樹脂に水素添加ロジンエステルや芳香族炭化水素系樹脂を用いたことからから、得られた粘着テープの180℃3時間処理前後の色変化は小さく、熱安定性は「○」であった。評価結果を表2Bに記載した。
【0103】
[比較例4]
粘着剤組成物の配合を表2Cに記載の配合(B−4)に変更する以外は実施例1と同様に、40質量%の粘着剤組成物を含有するトルエン溶液の作製、および厚さが25μmの粘着層がポリエチレンテレフタレート製フィルム上に形成された粘着テープの作製を行い、得られた粘着テープを評価した。得られた粘着テープのタック感はほとんどなく、「1」であった。粘着テープ作製24時間後の外観は透明であり、相溶性は良好「A」であった。一方、粘着テープ作製24時間後、粘着層表面からの液状物のにじみ出しが見られ、ブリード性は「b」であった。なお、粘着付与樹脂に水素添加ロジンエステルを用いたことからから、得られた粘着テープの180℃3時間処理前後の色変化は小さく、熱安定性は「○」であった。評価結果を表2Cに記載した。
【0104】
[実施例36]
160℃に設定したニーダーに製造例3で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−3)、製造例2で得られたアクリル系トリブロック共重合体(I−2)を表2Dの配合比に基づき投入して均一に溶融させた。その後、そのニーダーの温度を145℃に設定し、粘着付与樹脂として「YS resin SX100」を表2Dの配合比に基づき添加し、均一になるまで溶融混練させた後、可塑剤として「ATBC」を表2Dの配合比に基づき添加し、均一になるまで溶融混練させて粘接着剤組成物を得た。得られた粘接着剤組成物の溶融粘度は、217,000mPa・s(160℃)、57,500mPa・s(180℃)であった。得られた粘接着剤組成物を非接触式のホットメルトコーター(ITWダイナテック社製、クロスコーター)を用いてポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡エステルフィルムE5000、厚さ50μm)上に粘着層の厚さが25μmになるように170℃にて溶融塗工することにより粘着層がポリエチレンテレフタレート製フィルム上に形成された粘着テープを作製した。
【0105】
得られた粘着テープのタック感は良好であり、「3」であった。粘着テープ作製24時間後の外観は透明であり、相溶性は良好「A」であった。また、粘着テープ作製直後および作製24時間後のいずれの場合も粘着層表面からの液状物のにじみ出しは見られず、ブリード性は「a」であった。また、得られた粘着テープを180℃で3時間熱処理前後の色変化を評価したところ、外観上色変化は確認できず熱安定性は「○」であった。また、保持力(クリープ)も0.5mmしかずれておらず高い保持力であった。評価結果を表2Dに記載した。
【0106】
[実施例37〜39]
粘着剤組成物の配合を表2Dに記載の配合(A−37〜A−39)にそれぞれ変更する以外は実施例36と同様に、溶融混練により粘着剤組成物を作製し、非接触式のホットメルトコーター(ITWダイナテック社製、クロスコーター)を用いて厚さが25μmの粘着層がポリエチレンテレフタレート製フィルム上に形成された粘着テープの作製し、得られた粘着テープを評価した。なお、実施例38のみ粘着剤組成物作製の際に可塑剤は添加しておらず、実施例39のみ溶融塗工温度を155℃とした。評価結果を表2Dに記載した。
【0107】
【表2A】
【0108】
【表2B】
【0109】
【表2C】
【0110】
【表2D】
【0111】
上記実施例において示したように、本発明の粘接着剤組成物、およびそれから得られる粘着テープの外観は透明であり、ブリードもなく、粘着特性も良好であった。一方、比較例1〜3のように、本発明の範囲外の量の粘着付与樹脂を含む粘接着剤組成物、およびそれから得られる粘着テープの外観は悪く、粘着性能も悪かった。また、比較例4のように、本発明の範囲外の量の可塑剤を含む粘接着剤組成物、およびそれから得られる粘着テープの外観は透明であり良好だが、可塑剤がテープ表面にブリードし、粘着性能も悪かった。なお、実施例1〜9、13、16〜21、24、26〜39のように、粘着付与樹脂として、耐熱性に優れた、水添ロジンエステル、芳香族炭化水素系樹脂、水添石油系樹脂を用いた場合は、高温保存下でも着色しにくく、より好ましいこともわかる。また、実施例38のように、粘着剤組成物の溶融粘度が高く、かつ可塑剤を用いない場合は、得られる粘着テープの保持力(耐クリープ特性)がより高くなりやすいことがわかる。実施例36、37のように可塑剤を用いた場合でも粘着剤組成物の溶融粘度が高い場合は、得られる粘着テープの保持力(耐クリープ特性)が高くなりやすいことがわかる。
【0112】
以上から、本発明の粘接着剤組成物、およびそれから得られる粘着テープの外観は透明であり、ブリードもなく、粘着特性としても優れた性能を発現することがわかる。