(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892832
(24)【登録日】2021年6月1日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】遅延性結晶化挙動を示す高分子組成物、結晶化挙動に影響を及ぼす添加組成物、結晶化温度の低減方法、および添加組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20210614BHJP
C08K 5/3465 20060101ALI20210614BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/3465
C08K5/3445
【請求項の数】26
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-566693(P2017-566693)
(86)(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公表番号】特表2018-518582(P2018-518582A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】EP2016063428
(87)【国際公開番号】WO2016207003
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】102015211632.8
(32)【優先日】2015年6月23日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504174917
【氏名又は名称】フラウンホッファー−ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロース ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】プフェンドナー ルドルフ
【審査官】
幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−207063(JP,A)
【文献】
国際公開第00/026302(WO,A1)
【文献】
特開2014−177560(JP,A)
【文献】
特開昭48−028541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08K 5/34
Derwent Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーからなるマトリックスと、
b)少なくとも1つのアジン染料と、
c)常圧下で150°C未満の溶解温度の有機カチオンおよび有機アニオンあるいは無機アニオンの組成物からなる群から選択される少なくとも1つのイオン性液体と、
を含むかあるいはこれらからなる高分子組成物であって、
前記有機カチオンは、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)−イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシルイミダゾリウム)、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウムからなる群から選択され、
前記有機アニオンあるいは無機アニオンは、塩化物、硫酸メチル、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドからなる群から選択される、ことを特徴とする高分子組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアジン染料は、フェナジン染料、オキサジン染料、チアジン染料および/またはビスアジン染料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアジン染料は、ニグロシンおよび/またはインジュリンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子組成物。
【請求項4】
前記イオン性液体は、カチオンが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムから選択され、アニオンが、塩化物、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスヒナートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項5】
前記アジン染料および存在し得る少なくとも1価、2価、3価、および/または4価の金属塩の、前記少なくとも1つのイオン性液体に対する重量比は、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項6】
前記アジン染料および存在し得る少なくとも1価、2価、3価、および/または4価の金属塩の、前記少なくとも1つのイオン性液体に対する重量比は、10:90〜90:10であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項7】
前記アジン染料および存在し得る少なくとも1価、2価、3価、および/または4価の金属塩の、前記少なくとも1つのイオン性液体に対する重量比は、20:80〜80:20であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスを構成する結晶性熱可塑性ポリマーは、
a)ポリアミド−6,6.6,6.10,4.6,4.10,6.12,12.12、ポリアミド11、ポリアミド12、および(部分的)芳香族ポリアミド、ポリフタラミド、並びに種々のポリアミドの混合物、
b)上述したポリマーのうち2以上のポリマーの混合物、
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の高分子組成物。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスは、ポリアミド6およびポリアミド6.6からなる群から選択されるポリマーからなることを特徴とする、請求項7又は8に記載の高分子組成物。
【請求項10】
a)少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーからなるマトリックスを99.98〜70重量部、
b)少なくとも1つのアジン染料を0.01〜10重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.01〜10重量部、
d)少なくとも1価、2価、3価、および/または4価の金属塩を0〜10重量部、
の割合で含み、成分a)〜d)の合計量は100重量部であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項11】
a)少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーからなるマトリックスを99.97〜80重量部、
b)少なくとも1つのアジン染料を0.01〜7.5重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.01〜7.5重量部、
d)少なくとも1価、2価、3価、および/または4価の金属塩を0.01〜5重量部、
の割合で含み、成分a)〜d)の合計量は100重量部であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項12】
a)少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーからなるマトリックスを99.94〜91重量部、
b)少なくとも1つのアジン染料を0.02〜3重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.02〜3重量部、
d)少なくとも1価、2価、3価、および/または4価の金属塩を0.02〜3重量部、
の割合で含み、成分a)〜d)の合計量は100重量部であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項13】
a)少なくとも1つのポリアミドを99.98〜70重量部、
b)少なくとも1つのニグロシンを0.01〜10重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.01〜10重量部、
d)少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属擬ハロゲン化物あるいはアルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属擬ハロゲン化物を0〜10重量部、
の割合で含み、成分a)〜d)の合計量は100重量部であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項14】
a)少なくとも1つのポリアミドを99.97〜80重量部、
b)少なくとも1つのニグロシンを0.01〜7.5重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.01〜7.5重量部、
d)少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属擬ハロゲン化物あるいはアルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属擬ハロゲン化物を0.01〜5重量部、
の割合で含み、成分a)〜d)の合計量は100重量部であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項15】
a)少なくとも1つのポリアミドを99.94〜91重量部、
b)少なくとも1つのニグロシンを0.02〜3重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.02〜3重量部、
d)少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属擬ハロゲン化物あるいはアルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属擬ハロゲン化物を0.02〜3重量部、
の割合で含み、成分a)〜d)の合計量は100重量部であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項16】
a)〜c)の成分に加えて、紫外線吸収剤、光安定剤、安定剤、ヒドロキシアミン、ベンゾフラノン、金属不活性化剤、フィラー不活性化剤、難燃剤、核形成剤、衝撃強度増強剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー改質剤、加工助剤、離型剤、色素、着色料、蛍光増白剤、抗菌活性物質、帯電防止剤、滑材、粘着防止剤、結合剤、分散剤、相溶化剤、酸素吸収剤、酸吸収剤、マーキング剤、防曇剤、充填剤/強化材料、鎖延長剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤、あるいは上記添加剤のうち少なくとも2以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項17】
a)少なくとも1つのアジン染料と、
b)常圧下で150°C未満の溶解温度の有機カチオンおよび有機アニオンあるいは無機アニオンの組成物からなる群から選択される少なくとも1つのイオン性液体と、
を含むかあるいはこれらからなる結晶性熱可塑性ポリマーすなわち高分子組成物の結晶化遅延のための添加組成物であって、
前記有機カチオンは、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)−イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシルイミダゾリウム)、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウムからなる群から選択され、
前記有機アニオンあるいは無機アニオンは、塩化物、硫酸メチル、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドからなる群から選択される、ことを特徴とする添加組成物。
【請求項18】
a)少なくとも1つのアジン染料と、
b)常圧下で150°C未満の溶解温度の有機カチオンおよび有機アニオンあるいは無機アニオンの組成物からなる群から選択される少なくとも1つのイオン性液体と、
を含むかあるいはこれらからなる結晶性熱可塑性ポリマーすなわち高分子組成物の結晶化温度の低下のための添加組成物であって、
前記有機カチオンは、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)−イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシルイミダゾリウム)、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウムからなる群から選択され、
前記有機アニオンあるいは無機アニオンは、塩化物、硫酸メチル、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドからなる群から選択される、ことを特徴とする添加組成物。
【請求項19】
a)前記少なくとも1つのアジン染料は、フェナジン染料、オキサジン染料、チアジン染料および/またはビスアジン染料からなる群から選択され、
b)前記イオン性液体は、カチオンが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムから選択され、アニオンが、塩化物、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスヒナートからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項17又は18に記載の添加組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つのアジン染料は、ニグロシンおよび/またはインジュリンからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18又は19に記載の添加組成物。
【請求項21】
ポリアミドからなる群から選択される結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化を遅延させる方法であって、
少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーを含むかあるいは当該熱可塑性ポリマーからなるポリマーマトリックスに、請求項17,19,20のいずれか1項に記載の添加組成物を添加すると共に、前記ポリマーマトリックスを溶解し、続けて冷却するか、または、
少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーを含むかあるいは当該熱可塑性ポリマーからなる溶融状態のポリマーマトリックス中に、請求項17,19,20のいずれか1項に記載の添加組成物を添加すると共に、続けて冷却することを特徴とする、方法。
【請求項22】
ポリアミドからなる群から選択される結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化温度を低減させる方法であって、
少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーを含むかあるいは当該熱可塑性ポリマーからなるポリマーマトリックスに、請求項18〜20のいずれか1項に記載の添加組成物を添加すると共に、前記ポリマーマトリックスを溶解し、続けて冷却するか、または、
少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーを含むかあるいは当該熱可塑性ポリマーからなる溶融状態のポリマーマトリックス中に、請求項18〜20のいずれか1項に記載の添加組成物を添加すると共に、続けて冷却することを特徴とする、方法。
【請求項23】
前記添加組成物は、マスターバッチあるいは濃縮物の形態で導入されることを特徴とする請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記マスターバッチは、前記添加組成物を40〜90重量%の割合で含み、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー中に分散していることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリアミドからなる群から選択される結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化遅延のための請求項17,19,20のいずれか1項に記載の添加組成物の使用。
【請求項26】
ポリアミドからなる群から選択される結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化温度の低減のための請求項18〜20のいずれか1項に記載の添加組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマー、少なくとも1つのアジン染料、および少なくも1つのイオン性液体からなるマトリックスを含む高分子組成物に関する。この高分子組成物は、非添加高分子組成物と比較してその結晶化温度が十分に低いことで区別される。また、本発明は、結晶化に用いられる添加組成物に関し、結晶性熱可塑性ポリマー、すなわち、高分子組成物の結晶化温度を低減するための添加組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、結晶性熱可塑性ポリマー、すなわち高分子組成物の結晶化挙動に影響を及ぼす方法に関する。この場合において、一つのアジン染料および一つのイオン性液体が、結晶性の熱可塑性マトリックス高分子または高分子組成物中に含まれる。また、本発明は、上述した、アジン染料およびイオン性液体からなる添加組成物の使用目的を示す。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性ポリマーは、アモルファスあるいは(部分的に)結晶化した状態で存在する。アモルファスプラスチック材料では、ポリマー鎖が無秩序に配向している。例えば、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネートなどのアモルファス高分子は、しばしば透明であるとともに、光沢を有し、機械的に脆性であるとともに、化学的な抵抗が低い。溶解工程における加工中においては、流動性が比較的低いが、例えば、このようなアモルファスプラスチック材料で製造した成形部材の収縮の度合いは低く、有利である。(部分的に)結晶化したプラスチック材料の場合は、ポリマー鎖がいわゆるラメラ状のものとは相反するように一定の規則性を有している。ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの部分的に結晶化した高分子は、通常、強靭であるとともに、固く、高い化学的抵抗を示す。溶解工程中における流動性は高いが、成形部材の収縮度合も高い。部分的に結晶化した高分子は、結晶性の領域に加えてアモルファス相を有する。したがって、部分的に結晶化した高分子の性質は、アモルファス比に対する結晶子の割合、いわゆる結晶化度、アモルファスマトリックス中における結晶子の形状(いわゆる球晶)、結晶子の数、結晶の分布に比例して決定される。
【0004】
特に加工時及び適用時におけるプラスチック材料の特性を適合させる上で、その結晶化の挙動は、特に加工条件および添加物により影響を受ける。例えば、いわゆる核形成剤(核形成フォーマー)をプラスチック材料に加える。これらの添加剤は、製造工程におけるサイクルタイムを削減し、プラスチック材料の透明性を増大させ、機械的特性および熱的安定性を改善する(例えば、J.Kurja, N.A Mehl, Nucleating agents for semicrystalline polymers in Plastic Additives Handbook, 6th Edition, H. Zweifel, R.D. Maier, M. Schiller (Editor) Munich 2009, 967−990頁参照)。核形成剤としては様々な化学物質のクラスのものが使用されており、例えば、ポリプロピレンにおけるソルビトール変性物、金属フォスフェート、またはアリルアミドや、ポリエチレンテレフタレート(PET)における安息香酸ナトリウム等のアルカリ金属塩や、ポリアミドにおけるタルクまたはアジピン酸のアルカリ土類金属塩などを挙げることができる。高分子の物理的および化学的核形成プロセスは、例えば、J.P. Mercier, Pol. Eng. Sci. 1990, 30, 270−278に記載されている。
【0005】
一方、特定の応用や特定のプラスチック材料の特性を得るためには、部分的に結晶化した高分子の結晶化を阻害あるいは遅延させることが望ましい。しかしながら、そのような作用を奏する添加物は極めて少ない。ポリエステルの場合は、例えば、SANまたはポリスチレンの転嫁により結晶化が阻害され(R.M.R.Wellen, M.S. Rabello, J. Appl. Pol. Sci. 2009, 114, 1884−1895, R.M.R.Wellen, M.S. Rabello, J. Appl. Pol. Sci. 2010, 116, 1077−1087, R.M.R.Wellen, E.L. Canedo, M.S. Rabello, J. Appl. Pol. Sci. 2012, 125, 2701−2710)、 ポリアミドの場合は、上記目的を達成するため、特に芳香族化合物の使用が提案されている(US2005/02344159)。
【0006】
(部分的)結晶性ポリマー、特に、結晶化の遅いまたは結晶化温度の低いポリアミドを生成するために、例えば多環式芳香族(US2005/02344159)などや、上記した染料のうち、例えばニグロシン(K. Sukata et al. J. Appl. Pol. Sci. 2006, 101, 3270−3274)、あるいはリチウム塩(Y.Z. Xu et al. J. Appl. Pol. Sci. 2000, 77, 2685−2690)などの種々の金属塩(DE 2012105、DE2229803)といった種々の物質類を試した。ただし、これらの添加剤は、結晶化温度の大幅な低下や結晶化の遅延を図るための、上述した要求(具体的には、添加物の量を可能な限り少なくすることを含む要求)を全て満たすものではない。添加剤の量を低減することによって、他の高分子の特性に対する影響は少なくなり、コスト的にも有利となる。
【0007】
従来、イオン性液体は、種々の目的でポリマーに対して使用されてきた。例えば、JP20100202714,JP2003313724,JP2013253225,JP2010209219,WO2011/069960には、イオン性ブロックコポリマーの帯電防止の効果の改善を図るために、特にイオン性液体あるいは金属塩を含有させた帯電防止ポリマーが開示されている。同様に、WO2014/198539には、イオン性液体とともに、ポリアミドあるいはポリウレタンをコーティング用の導電性充填剤として用いることが開示されている。
【0008】
WO2004/005391,CN101580966には、イオン性液体を可塑剤として使用した高分子組成物が開示されている。WO2004/005391では、イオン性液体の15%添加により、ポリアミドコポリマーの融点がほんの僅かだけ減少することが記載されている。
【0009】
CN104073900,WO2004/005391では、殺生物効果を有するポリアミドに対して、イオン性液体を添加することがクレームされている。
【0010】
WO2014/120488,WO2012/021146,US2011/0039467には、プラスチック材料に対して難燃剤としてイオン性液体を添加することが開示されている。
【0011】
US2014/0128519,WO2012/084777,WO2012/084776では、カーボンナノチューブを備えるあるいはカーボンブラックなどの他の添加剤によるナノコンポジットと、生産性や導電性を改善させるイオン性液体とについてクレームされている。
【0012】
US2006/0173108には、核形成効果、すなわち、ポリプレピレンの結晶化温度を増加させるために、イオン性液体とソルビトール核形成剤とを組み合わせることが開示されている。
【0013】
WO2006/107759には、ステレオリソグラフィを実現させるために、核化防止剤を備えるウレタンアクリレートが開示されている。核化防止剤としては、1,3−ジクロロ−2−プロパノールフォスフェートが挙げられている。核化防止剤の目的は、非硬化樹脂中における結晶化を防止することであり、当該核化防止剤を熱可塑性製品に応用することについては考えられていない。
【0014】
J.DouおよびZ.Liuは、Pol. Intern. 62, 2013, 1698−1710において、ポリエステルの重縮合のためにマトリックスとしてイオン性液体を添加すると結晶化が促進されることを開示している。
【0015】
S.K.Chaurasia et al.は、Cryst. Eng. Comm. 2013, 15, 6022−6034, J. Pol.
Sci. B: Pol. Phys. 2011, 49, 291−300, RSC Adv, 2015, 5, 8263−8277, J. Raman, Spectrosc. 2011, 42, 2168−2172において、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートを添加することにより、ポリエチレンオキサイド(PEO)および対応する過塩素酸リチウム電解質の結晶化動作特性を遅延させることを教示している。そして、Solid State Ionics 183(2011)32−39において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート(EMIM−TY)を添加することにより、ポリエチレンオキサイド(PEO)の結晶性を低下させることを教示している。これらの結果は、A. Karmakar, A. GhoshのAIP Advances 2014,4,087112における、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネートの、ポリエチレンオキサイド−LiCF
3SO
3電解質への添加の場合の結果に匹敵するものである。
【0016】
M. Yousfi et al.は、Chem Eng. J. 255(2014)513−524において、トリヘキシルテトラデシルフォスホニウム−ビス−(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドとトリヘキシルテトラデシルフォスホニウム−ビス−2,4,4−(トリメチルペンチル)フォスフィナートを混合することにより、ポリプロピレン(PP)およびポリアミド6(PA6)からなる2つのポリマーの80/20混合物におけるポリプロピレン(PP)とポリアミド6(PA6)相の結晶化温度および結晶化動作特性が遅延することを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、(部分的に)結晶化した高分子、特にポリアミドおよびそれから得られるプラスチック材料の、結晶化遅延あるいは結晶化温度の低減に用いられる、利用可能な改善された添加物を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、ポリマー組成物に関し、本願のクレーム1の特徴によって達成される。また、クレーム11には、結晶性熱可塑性ポリマーすなわち高分子組成物の結晶化遅延および/または結晶化温度の低下に用いられる添加組成物が示されている。さらに、クレーム14には、結晶性熱可塑性ポリマーの結晶性遅延および/または結晶化温度の低下のための方法が開示されており、クレーム16には、該添加組成物の使用方法が開示されている。
【0019】
したがって、本発明は、
a)少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーからなるマトリックスと、
b)少なくとも1つのアジン染料と、
c)少なくとも1つのイオン性液体と、
を含む、あるいはこれらからなる高分子組成物に関する。
【0020】
したがって、結晶性熱可塑性ポリマーは、例えば、示差走査熱測定(DSC)あるいは微分機械分析(DMA)によって検知することが可能な結晶子融点を有する。
【0021】
特徴b)のアジン染料は、標準的な商用製品であり、例えば、Industrial Chemistry のH. Bernetz, Azine Dyes, Ullmann’s Encyclopedia (DOI 10.1002/14356007.a03_213.pub3)に記載されている。好ましいアジン染料としては、インジュリン、ニグロシンを挙げることができ、特に好ましくはニグロシンである。本発明の目的に関して、本発明で使用するアジン染料に関しては、従前に述べた文献中の定義を参照するものである。
【0022】
また、本発明の組成物は、金属塩を含むことができる。金属塩は、無機塩あるいは有機塩である。好ましくは、1価、2価、3価、または4価の金属塩は、具体的には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および亜鉛塩であり、特に好ましくは、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物である。例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどである。これらの塩は市販されている。
【0023】
驚くべきことに、アジン染料とイオン性液体とを組み合わせることによって、結晶性高分子の場合、結晶化温度および結晶化速度を顕著に低下させることができる。例えば、ニグロシンといった特定の染料をイオン性液体と組み合わせることによって、特にポリアミドの場合において、その結晶性に相乗的な効果を及ぼす。
【0024】
上述した文献のいずれにおいても、本発明にかかる相乗的組成物について言及していない。また、上記文献のいくつかにおいて、イオン性液体については、逆の効果、すなわち、結晶化の促進について示しているので、ここで見出した相乗効果は、まさに驚くべきものである。
【0025】
したがって、比較的低い使用濃度で現状の製品に対して高い効果を奏する、(部分的に)結晶化した高分子の結晶化温度を低減するための新たな組み合わせが提案されるものである。低濃度での使用は、従来の場合に比較して、他の高分子特性にネガティブな影響を与えないか、与え難くするものである。使用する組成物は、大規模な工業的スケールにおいて安価に利用できるものである。
【0026】
好ましい態様において、少なくとも1つのアジン染料は、フェナジン染料、オキサジン染料、チアジン染料および/またはビスアジン染料からなる群より選ばれることが好ましい。
【0027】
具体的には、ニグロシンおよび/またはインジュリンをアジン染料として使用でき、特に好ましくはニグロシンである。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つのイオン性液体は、常圧下で150℃未満の融点の有機カチオンおよび有機アニオンあるいは無機アニオンの組成物からなる群c)から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
イオン性液体の有機カチオンは、好ましくは、メチルトリ(1−ブチル)アンモニウム、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)−イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシルイミダゾリウム)、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウム、エチルトリブチルフォスフォニウム、テトラブチルフォスフォニウム、テトラオクチルフォスフォニウム、トリブチルメチルフォスフォニウム、トリブチルテトラデシルフォスフォニウム、トリヘキシルテトラデシルフォスフォニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムからなる群より選択される。
【0030】
有機あるいは無機アニオンは、好ましくは、塩化物、臭化物、硫酸水素塩、テトラクロロアルミン酸塩、チオシアネート、硫酸メチル、硫酸エチル、メタンスルフォネート、ギ酸塩、アセテート、ジメチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、パラ−トルエンスルフォネート、テトラフルオロボロネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスヒナートからなる群より選択することができる。
【0031】
特に、イオン性液体は、カチオンが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、トリヘキシルテトラデシルフォスフォニウム、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムからなる群より選択され、アニオンが、塩化物、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスヒナートからなる群より選択される。
【0032】
特に好ましいイオン性液体は、例えば、BASF SEのLudwigshafenあるいはIolitecのHeilbronnなどの市販品を用いることができる。
【0033】
添加可能な金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などからなる群から適宜選択することができ、好ましくは、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属擬ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属擬ハロゲン化物、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属擬ハロゲン化物からなる群、具体的には、塩化リチウム、臭化リチウム、安息香酸リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、および/または塩化亜鉛からなる群から選択される。
【0034】
アジン染料とイオン性液体との全体の混合比は、重量比で1:99〜99:1であり、好ましくは10:90〜90:10であり、より好ましくは20:80〜80:20である。少なくとも1つのアジン染料に加えて、1以上の上述した金属塩が存在する場合、上述した重量比は、イオン性液体に対する全てのアジン染料と金属塩との合計の量を含む。
【0035】
よって、ポリマーマトリックスの好ましい結晶性熱可塑性ポリマーは、
a)例えば、ポリアミド−6,6.6,6.10,4.6,4.10,6.12,12.12、ポリアミド11、ポリアミド12などのポリアミド、例えばテレフタル酸および/またはイソフタル酸や脂肪族ジアミンから製造されるポリフタラミド、あるいは、例えばアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、および1,4−または1,3−ジアミノベンゼンなどの芳香族ジアミンから製造されるポリフタラミド、並びに種々のポリアミドの混合物、特にPA−6およびPA−6.6の混合物といった(部分的)芳香族ポリアミド、
b)ポリエチレン(LDPE,LLDPE,VLDPE,ULDPE,MDPE,HDPE,UHMWPE)や、メタロセン−PE(m−PE)、ポリプロピレンなどのオレフィンやジオレフィンからなるポリマー、
c)ポリオキシメチレン(POM)あるいは、例えばブタノールとのコポリマーなどのポリアセタール、
d)ポリフェニレンオキサイドおよびポリスチレンあるいはポリアミドとの混合物、
e)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリ(エーテル)ケトン、ポリアリ−ルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリベンゼンイミダゾール、ポリヒダントイン、
f)脂肪族、芳香族ジカルボン酸またはジオールからなるポリエステル、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシナフタレート、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)などのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル、
g)上述したポリマーのうちの2つ以上のポリマーの混合物、あるいは、ポリスチレンに基づくアモルファスポリマーや、例えばPVC,ポリウレタン、ポリカーボネートなどのハロゲンを含むポリマーと、(部分的)結晶ポリマーとの混合物、
からなる群から選択される。
【0036】
上述したポリマーがコポリマーである時は、これらは、統計的(“ランダム”)ブロック形状か、“テーパー状”の構造体として存在するか、あるいはステレオブロックコポリマーである。
【0037】
立体規則性のポリマーは、アイソタクティック、ステレオタクティック、アタクティックな形態で存在する。
【0038】
上述した(部分的)結晶ポリマーは架橋してもよい。架橋は、ラジカル形成剤の添加により、あるいは電子ビームや、β線、γ線などを、加工中、あるいはその後の工程で照射することにより生成することができる。
【0039】
上述したポリマーa)〜f)は、未使用のものでもよいが、製造廃棄物や集積物(「使用済み」リサイクル品)などのリサイクルの形態のものでもよい。
【0040】
ポリマーマトリックスは、好ましくは、上述したポリマーから構成される。すなわち、全組成物が、上述したポリマー以外のポリマーを含まない。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態においては、ポリマーマトリックスは、ポリアミドおよびポリエステル、特には、ポリアミド6、ポリアミド
6.6、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などからなる群より選択されるポリマーからなる。具体的なポリアミドとしては、ポリアミド6およびポリアミド
6.6、さらにはそれらの混合物が好ましい。
【0042】
また、高分子組成物は、
a)少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーからなるマトリックスを99.98〜
70重量部、好ましくは99.97〜80重量部、特に好ましくは99.94〜91重量部、
b)少なくとも1つのアジン染料を0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜7.5重量部、特に好ましくは0.02〜3重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜7.5重量部、特に好ましくは0.02〜3重量部、
d)また、選択的に、少なくとも1価、2価、3価、および/または4価の金属塩を0〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、特に好ましくは0.02〜3重量部、
の割合で含むことが好ましい。なお、成分a)〜d)の合計量は100重量部である。
【0043】
また、高分子組成物は、
a)少なくとも1つのポリアミドあるいはポリエステルを99.98〜70重量部、好ましくは99.97〜80重量部、特に好ましくは99.94〜91重量部、
b)少なくとも1つのニグロシンを0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜7.5重量部、特に好ましくは0.02〜3重量部、
c)少なくとも1つのイオン性液体を0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜7.5重量部、特に好ましくは0.02〜3重量部、また、
d)少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属擬ハロゲン化物あるいはアルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属擬ハロゲン化物を0〜10重量部、好ましくは0.01〜5
重量部、特に好ましくは0.02〜3重量部、
の割合で含むことが特に好ましい。なお、成分a)〜d)の合計量は100重量部である。
【0044】
また、本発明の高分子組成物は、紫外線吸収剤、光安定剤、安定剤、ヒドロキシアミン、ベンゾフラノン、金属不活性化剤、フィラー不活性化剤、難燃剤、核形成剤、衝撃強度増強剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー改質剤、加工助剤、離型剤、色素、着色料、充填剤、強化材料、蛍光増白剤、抗菌活性物質、帯電防止剤、滑材、粘着防止剤、結合手段、鎖延長剤、分散剤、相溶化剤、酸素吸収剤、酸吸収剤、マーキング手段、防曇手段、あるいはこれらの2以上の混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含むことができる。
【0045】
好ましい態様としては、該組成物は具体的には、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、亜鉛ステアレート、カルシウムラクテート、ハイドロタルサイトなどの長鎖の酸の塩などに基づく酸吸収剤、および/または、フェノール酸化防止剤および亜リン酸エステルの群から選択される安定剤、および/または、ヒンダードアミン(HALS)群から選択される光安定剤、および/または、分散剤、および/または、難燃剤、および/または、充填剤/強化材料、および/または、鎖延長剤を含む。
【0046】
光安定剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゼンフェノン、安息香酸、アクリレート、オキサミド、2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンのエステルに基づく組成物が適している。
【0047】
好ましいフェノール酸化防止剤としては、例えば、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイル−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミドが挙げられる。
【0048】
好ましい亜リン酸エステル/亜ホスホン酸エステルとしては、例えば、
トリフェニルフォスファイト、ジフェニルアルキルフォスファイト、フェニルジアルキルフォスファイト、トリ(ノニルフェニル)フォスファイト、トリラウリルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4,6−トリス(tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリステアリルソルビトールトリフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12H−ジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサフォスフォシン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メチルフォスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルフォスファイト、6−フルオロ−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12−メチルジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサフォスフォシン、2,2’,2”−ニトリロ[トリエチルトリス(3,3”,5,5’−テトラーtert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)フォスファイト]、2−エチルヘキシル(3,3’,5,5’−テトラーtert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)フォスファイト、5−ブチル−5−エチル−2−(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスヒランなどを挙げることができる。
【0049】
好ましい安定化剤は、アミン系の酸化防止剤であって、例えば、
N,N’−ジイソプロピル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−ナフチル)−パラ−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、4−(パラ−トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−sec−ブチル−パラ−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−アリルジフェニレンジアミン、4−イソプロポキシジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−(4−tert−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、p,p’−ジ−tert−オクチルジフェニルアミン、4−n−ブチルアミノフェノール、4−ブチリルアミノフェノール、4−ノナノイルアミノフェノール、4−ドデカノイルアミノフェノール、4−オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4−メトキシフェニル)アミン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス[(2−メチルフェニル)アミノ]エタン、1,2−ビス(フェニルアミノ)プロパン、(オルト−トリル)ビグアナイド、ビス[4−(1’、3’−ジメチルブチル)フェニル]アミン、tert-オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、モノ−およびジアルキル化tert−ブチル/tert−オクチルジフェニルアミンの混合物、モノ−およびジアルキル化ノニルジフェニルアミンの混合物、モノ−およびジアルキル化ドデシルジフェニルアミンの混合物、モノ−およびジアルキル化イソプロピル/イソヘキシルジフェニレンアミンの混合物、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−4H−1,4−ベンゾチアジン、フェノチアジン、モノ−およびジアルキル化tert−ブチル/tert−オクチルフェノチアジンの混合物、モノ−およびジアルキル化tert−オクチルフェノチアジンの混合物、N−アリルフェノチアジン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,4−ジアミノブタ−2−エン、およびこれらの組み合わせまたは混合物を挙げることができる。
【0050】
好ましいアミノ系酸化防止剤は、例えば、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミン、N,N−ジラウリルヒドロキシルアミン、N,N−ジステアリルヒドロキシルアミン、N−ベンジル−α−フェニル二トロン、N−オクタデシル−α−ヘキサデシルニトロン、および次式で示すようなGenox EPのようなヒドロキシルアミンやN−オキサイド(ニトロン)を挙げることができる。
【0051】
好ましい安定化剤は、チオシナジスト(thiosynergists)である。好適なチオシナジストとしては、例えば、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルジプロピオネート、あるいは次式で表されるような化合物が挙げられる。
【0052】
また、好ましい安定剤として、特にポリアミドに対しては、ヨウ化銅、臭化銅などの銅塩、トリフェニルフォスフィン銅錯体などの銅錯体を挙げることができる。
【0053】
好ましいヒンダードアミンとしては、例えば、1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)コハク酸塩、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−n−ブチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロン酸塩、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−tert−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンとの直鎖あるいは環状の縮合物、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,1’−(1,2−エタンジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−モルフォリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンとの直鎖あるいは環状の縮合物、7,7,9,9−テトラメチル−2−シクロウンデシル―1−オキサ−3,8−ジアザ−4−オキソスピロ−[4,5]デカンとエピクロロヒドリンとの反応生成物などを挙げることができる。
【0054】
好ましい分散剤としては、例えば、
長鎖側基を有するコポリマー、すなわちポリアクリレートブロックコポリマーを有するポリアクリレートや、N,N’−1,2−エタンジイルビスオクタデカンアミドソルビタンエステルなどのアルキルアミド(例えば、モノステアリルソルビタンエステル)、チタネートおよびジルコネート、例えば、ポリプロピレンとアクリル酸との反応性コポリマー、ポリプロピレンと無水マレイン酸との反応性コポリマー、ポリエチレンとグリシジルメタアクリレートとの反応性コポリマー、
官能基との反応性共重合体、ジメチルシランジオール−エチレン酸化物の酸化物コポリマー、ポリフェニレンシロキサンコポリマーなどのポリスチレン/無水マレイン酸のポリシロキサンのコポリマー、ポリエチレンブロック/ポリエチレン酸化物のコポリマーなどの両親媒性のコポリマー、ヒドロキシ基含有デンドリマーなどのデンドリマーを挙げることができる。
【0055】
好ましい難燃剤としては、例えば、
a)Al(OH)
3,Mg(OH)
2,AlO(OH),MgCO
3や、モンモリナイトまたはセピオライトなどの層状シリケート、Mg−Alシリケート、POSS(多角形のオリゴマー状のシルセスキオキサン)化合物、ハンタイト、ハイドロマグネサイトあるいはハロイサイトなどの非有機または有機性の変性複塩、およびSb
2O
3、Sb
2O
5、MoO
3、錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛などの無機難燃剤、
b)メラミン、メレム、メラム、メロン、メラミン誘導体、メラミン縮合物、またはメラミン塩、ベンゾグアナミン、ポリイソシアヌレート、アラントイン、フォスファセンなどの窒素含有難燃剤、特に、メラミンシアヌレート、メラミンフォスフェート、ジメラミンフォスフェート、メラミンピロフォスフェート、メラミンポリフォスフェートや、メラミンアルミニウムフォスフェート、メラミン亜鉛フォスフェート、メラミンマグネシウムフォスフェート、およびこれら金属のピロフォスフェートおよびポリフォスフェートなどのメラミン−金属フォスフェート、ポリ−[2,4−(ピペラジン−1,4−イル)−6−(モルフォリン−4−イル)1,3,5−トリアジン]、アンモニウムポリフォスフェート、メラミンボレート、メラミンヒドロブロミド、
c)アルコキシアミン、ヒドロキシルアミンエステル、アゾ化合物、ジクミルまたはポリクミル、ヒドロオキシイミドエステルやヒドロオキシエーテルなど、上記物質の誘導体といったラジカル形成剤、
d)赤リン、レゾルシン二リン酸などのフォスフェート、ビスフェノール−A−ジフォスフェートおよびそのオリゴマー、トリフェニルフォスフェート、エチレンジアミンフォスフェート、次亜リン酸塩およびその誘導体などのフォスフィナート、ジエチルフォスフィナートアルミニウムや、ジエチルフォスフィナート亜鉛などのアルキルフォスフィナート塩、アルミニウムフォスフィネート、アルミニウムフォスファイト、アルミニウムフォスフォネート、フォスフォネートエステル、メタンホスホン酸のオリゴマーおよび高分子誘導体、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスフォリルフェナントレン−10−オキサイド(DOPO)およびその代替化合物などのリン含有難燃剤、
e)デカブロモジフェニルオキサイドなどのポリ臭化ジフェニルオキサイド、トリス(3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロピルフォスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)フォスフェート、テトラブロモフタル酸、1,2−ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ヘキサブロモシクロドデカン、臭素化ジフェニルエタン、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラート、エチレン−ビス(テトラブロモフタル酸イミド)、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリブタジエン、ポリスチレン−臭素化ポリブタジエンコポリマー、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化エポキシ樹脂、ポリペンタブロモベンジルアクリレートなどの、塩素および臭素に基づくハロゲン含有難燃剤(可能であれば、Sb
2O
3および/またはSb
2O
5と組み合わせる)、
f)ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウムなどのホウ酸塩(可能であれば、シリカなどのキャリアの上に担持される)、
g)硫黄、ジスルフィド、ポリサルフィド、チウラムサルフィド、ジチオカルバメート、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミドなどの硫黄含有化合物、
h)ポリテトラフルオロエチレンなどのドリップ防止剤、
i)ポリフェニルシロキサンなどのシリコン含有化合物、
j)カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンなどのカーボン変性物
さらには、上述した物質を適宜組み合わせたものを挙げられる。
【0056】
金属不活性剤としては、例えば、N,N’−ジフェニルオキサミド、N−サリチル酸−N’−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス(サリチロイル)ヒドラジン、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、3−サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゼン、ビス(ベンジリデン)オキサリルジヒドラジド、オキサニリド、イソフタロイルジヒドラジド、セバコイルビスフェニルヒドラジド、N,N’−ジアセチルアジポイルジヒドラジド、N,N’−ビス(サリチロイル)オキシリジヒドラジド、N,N’−ビス(サリチロイル)チオプロピオニルジヒドロヒドラジドなどを挙げることができる。
【0057】
ポリエステルやポリアミドのような重縮合ポリマーの線状分子量の増加のために好ましい鎖延長剤としては、例えば、ジエポキシド、ビス−オキサゾリン、ビス−オキサゾロン、ビス−オキサジン、ジイソシアネート、二無水化物、ビス−アシルラクタム、ビス−マレイミド、ジシアネート、カルボジイミドなどを挙げることができる。より好ましくは、ポリスチレン−ポリアクリレート−ポリグリシジル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリスチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリエチレン−無水マレイン酸コポリマーなどの高分子化合物である。
【0058】
好ましい色素は、無機あるいは有機の性質を有している。好ましい無機色素としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉄、ウルトラマリン、カーボンブラックである。好ましい有機色素は、例えば、アントラキノン、アンサンスロン、ベンズイミダゾロン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、インダントロン、イソインドリノン、アゾ化合物、ペリレン、フタロシアニン、またはピラントロンである。より好ましい色素は、金属酸化物に基づく金属または真珠光沢顔料といった効果顔料である。
【0059】
好ましい蛍光増白剤は、例えば、ビスベンゾオキサゾール、フェニルクマリン、またはビス(スチリル)ビフェニルなどである。
【0060】
好ましい充填剤不活性化剤としては、例えば、ビス−フェノール−A−ジグリシジルエーテル、ポリシロキサン、ポリアクリレートなどのエポキシドを挙げることができ、特に、ポリメタクリル酸−ポリアルキレンオキシドあるいはポリスチレン−ポリアクリレート−ポリグリシジル(メタ)アクリレートコポリマーといったブロックコポリマーを挙げることができる。
【0061】
好ましい帯電防止剤としては、例えば、エトキシル化したアルキルアミン、脂肪酸、アルキルスルフォナート、ポリエーテルアミドなどのポリマー、ポリエチレン−ポリアクリレート−Na−コポリマーなどのアクリル酸塩を含むコポリマーなどを挙げることができる。
【0062】
好ましい充填剤および強化材としては、例えば、炭酸カルシウム、シリケート、ガラス繊維、ガラス球(中実あるいは中空)、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、金属酸化物、金属水酸化物、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、セルロースなど天然製品のおがくずまたは繊維、合成繊維、金属繊維など、合成あるいは天然の材料を用いることができる。より好適な充填剤としては、ハイドロタルサイトまたはゼオライト、あるいはモンモリロナイト、ベントナイト、ベイデライト、マイカ、ヘクトライト、サポナイト、バーミキュライト、レディカイト、マガディアイト、イライト、カオリナイト、ウォオラストナイト、アタパルジャイト、セピオライトなどの層状シリケートを挙げることができる。
【0063】
好ましい離型剤は、例えばワックスである。
【0064】
本発明の高分子組成物は、特に、射出成型部品、フォイルやフィルム、発泡体、繊維、ケーブル及びパイプ、プロファイル、中空体、線状部品、ジオメンブレンなどの膜体などの、特定の成型部品を成形するための更なる加工に適している。これらの物品は、押出し、射出成型、ブロー成型、カレンダー加工、プレス加工、スピニング加工、回転成形や塗装、コーティング加工などを経て製造することができ、電気/電子産業、建設産業、輸送産業(車、飛行機、船、鉄道)、医療、家庭及び家電製品、自動車部品、消耗品、包装、家具、生地などに使用することができる。これらの成型部品も本発明の一部である。
【0065】
本発明の高分子組成物は、レーザ焼結や3Dプリンタなどの生産的な製造(付加的な製造)工程においても用いることができる。
【0066】
本発明の高分子組成物は、レーザ溶接などのプラスチック材料の溶接に対して好適に用いることができる。
【0067】
また、本発明は、結晶性熱可塑性ポリマーすなわち高分子組成物の結晶化遅延および/または結晶化温度の低減のための添加組成物に関し、
a)少なくとも1つのアジン染料、および
b)少なくとも1つのイオン性液体
からなる、あるいは含むものである。
【0068】
驚くべきことに、本発明の添加組成物を添加が、熱可塑性ポリマーの結晶化遅延および/または結晶化温度の低減に寄与するので、当該添加化合物により結晶性熱可塑性ポリマーすなわち高分子組成物の結晶化の挙動に影響を与えることができる。さらに、この添加またはこれによる結晶化挙動の開始によって、プラスチック材料の表面の性質、表面の品質、ほとんど視認できないフローライン、光沢、製造中の収縮の抑制、機械的特性、電気的特性、レオロジカルな特性、エイジング挙動、熱的安定性などの諸特性が影響を受ける。さらに、一部結晶化したプラスチック材料中におけるアモルファス部分の割合を増大させることができる。
【0069】
アジン染料の代表的なものは、金属塩であり、イオン性液体は、上述した通りである。
【0070】
少なくとも1つのアジン染料と少なくとも1つのイオン性液体との全体の重量比は、1:99〜99:1であり、好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは80:20〜20:80である。
【0071】
同様に、本発明は、結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化遅延および/または結晶化温度の低減方法に関するが、これは先に述べたように、本発明の添加組成物を、少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーを含む、あるいはこのポリマーからなるポリマーマトリックス中に加えることで、当該ポリマーマトリックスは、溶解し、続いて冷却される。この代わりに、上述した添加組成物を、少なくとも1つの結晶性熱可塑性ポリマーを含む、あるいはこのポリマーからなる溶融状態のポリマーマトリックス中に含有させ、続けて冷却しても良い。
【0072】
また、上述したように、更なる成分を当該高分子組成物に加える場合、これらの成分は、本発明の添加組成物と共に、液体、粉体、粒体、または圧縮体の形態で、別々に添加される。
【0073】
上述した添加組成物および追加の添加物のプラスチック材料への添加は、通常の加工方法で行うことができる。すなわち、高分子組成物は溶融され、ミキサー、ニーダー、押し出し機などによって本発明の添加物および追加の添加物と混合される。加工機械としては、単軸押出機、二軸押出機、遊星歯車押出機、環状押出機、共同ニーダーなどが好ましい。これらの機械は、脱ガスした真空中で用いることが好ましい。当該加工は、空気中で行うことも可能であるし、不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。
【0074】
また、本発明の添加組成物は、いわゆるマスターバッチあるいは濃縮物の形態で、高分子中に、本発明に係る組成物を、例えば10〜90%含むものとして製造、導入することができる。
【0075】
また、本発明は、結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化遅延および/または結晶化速度の低減および/または結晶化温度の低減のための本発明に係る添加組成物の使用方法に関する。
【0076】
本発明を、実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は、これらに表記された好ましいパラメータに限定されるものではない。
【0077】
実施例:結晶化温度が低下したポリアミド成形物の製造および評価
【0078】
ポリアミド6(Alphaion 27,Grupa Azoty ATT Polymers GmbH)を、溶融状態で、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(Iolite 0093, IOLITEC Heilbronn)および/またはニグロシンと混合した。得られた高分子組成物は、表1に示すようなものであった。溶融状態での加工は、同期型二軸押出機(Thermo Scientific Process 11)を用いて実施した。スクリューの回転速度は450回/分とし、押出し速度は、800g/時間、溶融温度は260℃とした。溶融物は、その後水浴中で冷却し、次いで、ストランド粒状化した。
【0079】
高分子組成物の熱分析は、動的示差走査熱量計(DSC)を用いて行った。溶解および結晶化挙動を調べるために、DSC822e(Mettler−Toledo AG)を用い、20ml/分の一定の窒素流量下で冷却するようにした。温度および熱流は、インジウムおよび亜鉛を用いて補正した。サンプル量は5mg±0.1mgとした。アルミニウムるつぼを用いた。サンプルは、0℃から270℃まで10℃/分の速度で昇温し、3分間保持した。その後、10℃/分の冷却速度で0℃まで冷却した。このサイクルを2回繰り返し、溶融温度Ts、ピーク結晶化温度Tpc、結晶化エンタルピーΔHc(Jg
−1)は、2回目の加熱および冷却の際に求めた。全ての例において、本発明に関連するピーク結晶化温度Tpcを表1に示す。
【0081】
上記サンプルにおいては、以下の生産物を用いた。
ニグロシン:NIGROSINBASE BA01 (LANXESS Deutschland GmbH)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド:Iolite0093(IOLITEC, Heilbronn)
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(TCI Europe N.V.)
【0082】
本発明のサンプルは、同濃度において、本発明に係る2つの成分のうちの一つしか含まない比較例のサンプルと比較すると、驚くべきことに、結晶化温度が顕著に低下している。