(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
例えばターボ分子ポンプのような真空ポンプは、それぞれのプロセスに必要な真空を提唱するために様々な分野の技術で使用される。ターボ分子ポンプは、ロータ軸の方向に前後して配置されている複数のステータディスクを有する1つのステータと、このステータに対してこのロータ軸を中心にして回転可能に軸支された1つのロータとを有する。このロータは、1つのロータ軸と、このロータ軸上に配置され、軸方向に前後し、これらのステータディスク間に配置された複数のロータディスクとを有する。この場合、これらのステータディスクとこれらのロータディスクとは、それぞれ1つのポンプ構造を有する。
【0004】
空間ベクトル変調は、電力技術においてはパルス幅変調に基づいて電気機械を制御するための方法を意味する。この変調方式に基づいて、多相交流システムを、三相交流機を作動させるために必要になるような複数の電子経路とみなすことが可能である。当該空間ベクトル表示によれば、当該機械内の磁束密度の分布を示すためには、2つの変数である空間ベクトルの角度とこの空間ベクトルの絶対値又は実数部及び/又は虚数部とで十分である。三相システムが構成されなければならない場合、1つのハーフブリッジが、3つの相のそれぞれの相に必要とされる。相U,V,Wの出力電圧が、当該ハーフブリッジによって正又は負の中間回路電圧に設定され得る。
【0005】
従来の空間ベクトル変調の場合、
【0006】
【数1】
の一定の電位が、始点に対して使用される。その結果、それぞれ1つのデューティー比λ
ζが、異なる相ζ=U,V,Wに対して設定される。当該デューティー比λ
ζは、関係式
【0007】
【数2】
によって規定されている。しかし、このような従来の変調によれば、
【0008】
【数3】
の最大電圧振幅だけが取得され得る。当該最大電圧振幅は、理論的に取得可能な
【0009】
【数4】
の振幅よりも小さい。それ故に、差動電圧範囲を増大させるためには、複数の位相が同じ方向と同じ長さとを有する零相分を導入する必要がある。しかし、その結果、追加の計算労力が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、それぞれのインバータが、パルス幅変調に基づいて作動する三相交流機に対して効率的であり、より少ないスイッチンング損失で制御可能であり、又は当該三相交流機が、より簡単に且つよりロバストに起動可能である、冒頭で述べた種類の空間ベクトル変調方法、ハイブリッド変調方法、起動方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する空間ベクトル変調方法によって解決され、請求項7に記載の特徴を有するハイブリッド変調方法によって解決され、請求項8に記載の特徴を有する起動方法によって解決され、請求項14に記載の特徴を有する装置によって解決され、請求項15に記載の特徴を有する真空ポンプ、特にターボ分子ポンプによって解決される。本発明の空間ベクトル変調方法と本発明の起動方法との好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0012】
パルス幅変調に基づいて作動可能な三相交流機、特に真空ポンプ、好ましくはターボ分子ポンプの三相交流機用の三相インバータ、特に2レベル三相インバータを制御するための本発明の空間ベクトル変調方法は、それぞれのパルス幅変調周期内に、当該インバータの3つの相U,V,Wのうちの少なくとも1つの相が接続されないか、又は、当該インバータの3つの相U,V,Wのうちの最大で2つの相が接続されることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、所定の1つの目標電圧空間ベクトルから出発して、最初に、当該インバータの3つの相U,V,Wの3つの目標電位u
U0,u
V0,u
W0が計算され、最小値u
Minが、当該計算された3つの目標電位u
U0,u
V0,u
W0から算出され、当該インバータの3つの相U,V,Wに対する最終的な出力電位u
Ufinal,u
Vfinal,u
Wfinalが、当該算出された最小値u
Minを考慮して計算される。
【0014】
当該インバータの3つの相U,V,Wに対する当該最終的な出力電位u
Ufinal,u
Vfinal,u
Wfinalは、以下の関係式:
u
Ufinal=u
U0−u
Min,u
Vfinal=u
V0−u
Min及びu
Wfinal=u
W0−u
Min
によって計算される。
【0015】
このとき、好ましくは、当該インバータのそれぞれの相U,V,Wに対するデューティー比λが、以下の関係式:
λ
U=u
Ufinal/U
dc,λ
V=u
Vfinal/U
dc及びλ
W=u
Wfinal/U
dc
によって計算され、ここで、U
dcは、中間回路電圧である。
【0016】
当該本発明の効率的な計算を使用することで、
【0017】
【数5】
の最大電圧絶対値が、零相分を導入することなしに生成可能である。本発明の変調方法のさらなる利点は、少なくとも1つの相がそれぞれのPWM(パルス幅変調)周期内に接続しないことにある。電圧空間ベクトルの1回転を考慮した場合、インバータのそれぞれのスイッチング素子が、その期間の専ら3分の2までに切り替えられる。このことは、有効なスイッチング損失が約33%程度減少され、その結果スイッチンング損失もこれに応じて減少されることを意味する。
【0018】
好ましくは、当該インバータ(10)の3つの相U,V,Wの目標電位u
U0,u
V0,u
W0は、逆クラーク変換を使用して直交座標系における2つの電圧u
α及びu
βから計算される。
【0019】
α,β変換とも呼ばれるクラーク変換が、軸U,V,Wを有する三相交流機の場合のような多相の変数を、軸α,βを有するより簡単な直交座標に変換するために使用される。したがって、好ましくは、当該両電圧u
α及びu
βは、絶対値及び角度としての電圧ベクトルから計算される。
【0020】
パルス幅変調に基づいて作動可能な三相交流機、特に真空ポンプ、好ましくはターボ分子ポンプの三相交流機用の三相インバータ、特に2レベル三相インバータを制御するためのハイブリッド変調方法は、比較的大きい相電流に対しては、本発明の空間ベクトル変調方法が使用され、比較的小さい相電流に対しては、当該インバータの全ての3つの相U,V,Wが電圧の切り替えに寄与する従来の変調方法が使用されることを特徴とする。
【0021】
本発明の空間ベクトル変調方法及び/又は本発明のハイブリッド変調方法を使用して、パルス幅変調に基づいて作動可能なエンコーダなしの三相交流機、真空ポンプ、好ましくはターボ分子ポンプのエンコーダなしの三相交流機を起動するための方法は、当該起動方法が、同期ステップ、起動ステップ及び検査ステップを有し、この検査ステップでは、当該起動が良好に進行したときは、部分ステップa)にしたがって、内部監視装置が、エンコーダなしに磁界方向制御する機械制御のために始動し、当該起動方法が終了され、当該起動が失敗したときは、部分ステップb)にしたがって、当該三相交流機が、停止するまで制動され、その後に、当該三相交流機が新たに起動されることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、当該三相交流機は、その同期ステップにおいてそのアイドリング動作中に関係式
【0023】
【数6】
によって規定されている同期電圧ベクトル
【0024】
【数7】
によって制御される。この場合、同期過程の全期間が、T
syncによって規定されている。及び/又は、当該同期電圧ベクトル
【0025】
【数8】
は、比較的狭い周波数範囲内にある一定の周波数f
syncで回転するか又は周波数幅なしの周波数f
syncで回転する。及び/又は、当該同期電圧ベクトル
【0026】
【数9】
の振幅u
syncが、0とk
T×T
syncとの間の時間間隔内に増大する。ここで、k
TI(0,1)である。及び/又は、振幅u
syncが、k
T×T
syncとT
syncとの間の時間間隔内に電圧値u
syncからk
u×u
syncに線形に変化する。ここで、k
u≧0である。
【0027】
好ましくは、当該三相交流機は、その起動ステップにおいてそのアイドリング動作中に関係式
【0028】
【数10】
によって規定されている起動電圧ベクトル
【0029】
【数11】
によって制御される。この場合、当該起動過程は、パラメータである当該起動時間T
up、Hzを単位とする最終回転速度f
final及び初期振幅u
upによって規定されている。回転する起動電圧ベクトル
【0030】
【数12】
の振幅u
upは、u
upからu
up+ΔUまで線形に増大する。この場合、ΔUは、関係式ΔU=2π・Ψ
M・(f
final−f
sync)によって計算される。この関係式では、Ψ
Mは、当該三相交流機の磁束密度である。及び/又は、当該回転する起動電圧ベクトル
【0031】
【数13】
の周波数f
upは、f
syncから最終周波数まで線形に増大する。及び/又は、当該起動電圧ベクトル
【0032】
【数14】
の初期角度γ
upは、起動過程の開始時に関係式γ
up=γ
sync+Δγによって計算される。この場合、γ
syncは、当該同期過程の終了時の同期電圧ベクトル
【0033】
【数15】
の角度であり、Δγは、0と±45°との間のパラメータである。
【0034】
好ましくは、検査ステップの初期化部分ステップa)では、初期の電気角速度ω
0が、関係式
【0035】
【数16】
によって算定される。初期の電気角度γ
0は、関係式
【0036】
【数17】
によって算定される。負の起動速度が必要である場合には、この負の起動速度は、関係式
【0037】
【数18】
によって計算される。
【0038】
本発明の起動方法の好適な構成によれば、検査ステップの制動部分ステップb)では、インバータ10が始動され、一定の電圧ベクトル
【0039】
【数19】
が印加され、オン時点T
onまで保持される。その後に、当該インバータ10は、停止され、全ての相電流が値零になるオフ時点T
offまで保持される。次いで、逆起電力の振幅絶対値
【0040】
【数20】
が測定される。この振幅絶対値
【0041】
【数21】
が、限界値U
stopよりも小さい場合には、当該制動過程が終了される。そうでない場合には、制動部分ステップb)が繰り返される。
【0042】
特に好ましくは、起動過程後の検査ステップにおいて、全ての相電流が値零になるまで、インバータ10が、停止されてオフ時点T
offまで保持される。さらに、3つの相電圧u
U,u
V,u
Wが、逆起電力として測定され、当該逆起電力の電圧ベクトル
【0043】
【数22】
が、クラーク変換を使用して計算される。このとき、絶対値
【0044】
【数23】
と、当該逆起電力の電圧ベクトルの角度
【0045】
【数24】
とが計算され得る。当該絶対値が、限界値U
backEMF lowよりも大きい場合には、初期化部分ステップa)が実行され、そうでない場合には、制動部分ステップb)が実行される。
【0046】
パルス幅変調に基づく三相交流機、特に同期三相電動機を制御するための、特に真空ポンプ、好ましくはターボ分子ポンプの三相交流機又はエンコーダなしの同期三相電動機を制御するための本発明の装置は、三相インバータ、特に2レベル三相インバータ及び制御装置を有する。この場合、当該三相インバータ(10)は、本発明の空間ベクトル変調方法にしたがう制御装置によって、本発明のハイブリッド変調方法にしたがう制御装置によって、及び/又は本発明の起動方法にしたがう制御装置によって制御可能である。
【0047】
本発明の真空ポンプ、特にターボ分子ポンプは、1つのステータ及びこのステータに対して回転軸を中心にして回転可能に軸支された1つのロータ並びに少なくとも1つの駆動装置を有する。この場合、前記駆動装置は、三相交流機、特にエンコーダなしの同期電動機から成り、当該三相交流機、特にエンコーダなしの同期電動機は、本発明の空間ベクトル変調方法にしたがって、本発明のハイブリッド変調方法にしたがって、本発明の起動方法にしたがって、及び/又は本発明の装置によって制御可能である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、吸気フランジ113によって包囲されているポンプ給気口115を有する。容器(Rezipient)が、図示されなかったポンプ吸気口に知られている方法で接続され得る。この容器からのガスが、ポンプ給気口115を介してこの容器から吸引され、当該ポンプを通過してポンプ排気口117に供給され得る。例えば回転ベーンポンプのような補助真空ポンプが、このポンプ排気口117に接続され得る。
【0050】
吸気フランジ113は、
図1による真空ポンプの整合時に真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。このハウジング119は、下部121を有する。電子機器用ハウジング123が、この下部121の側方に配置されている。真空ポンプ111の電気構成要素及び/又は電子構成要素が、例えば、当該真空ポンプ内に配置された電動機125を作動させるために電子機器用ハウジング123内に格納されている。付属機器用の複数の端子127が、この電子機器用ハウジング123に設けられている。さらに、例えばRS485規格にしたがうデータインタフェース129と、電力供給端子131とが、電子機器用ハウジング123に配置されている。
【0051】
特に流入弁としての流入口133が、ターボ分子ポンプ111のハウジング119に設けられている。真空ポンプ111が、この流入口133を通じて通気され得る。さらに、パージガス端子とも呼ばれるバリアガス端子135が、下部121の領域内に配置されている。パージガスが、電動機125(例えば、
図3参照)を当該ポンプによって電動機室137内に供給されたガスから保護するためにバリアガス端子135を通じて流入され得る。電動機125が、真空ポンプ111の電動機室137内に格納されている。さらに、2つの冷媒端子139が、下部121に配置されている。この場合、冷却の目的で当該真空ポンプ内に供給され得る冷媒用に、これらの冷媒端子のうちの一方の冷媒端子が、流入口として設けられていて、その他方の冷媒端子が、流出口として設けられている。
【0052】
当該真空ポンプの下面141が、フロアスペースとして使用され得る。その結果、真空ポンプ111は、下面141上で直立して作動され得る。しかし、真空ポンプ111が、吸気フランジ113を介して当該容器に固定され、したがって懸吊されて作動されてもよい。さらに、真空ポンプ111が、
図1に示された方式とは違う方式で整合されて作動され得るように、この真空ポンプ111は構成されてもよい。下面141が下側ではなくて、側方に向けられて又は上側に向けられて配置され得る当該真空ポンプの実施の形態も実現され得る。
【0053】
さらに、様々な複数のボルト143が、
図2に示されている下面141に配置されている。ここではさらに特定しなかった真空ポンプの複数の構造部材が、これらのボルト143によって接合固定されている。例えば、ベアリングキャップ145が、下面141に固定されている。
【0054】
さらに、複数の固定孔147が、下面141に配置されている。ポンプ111が、これらの固定孔147を通じて、例えば支持面に固定され得る。
【0055】
冷媒管148が、
図2〜5に示されている。冷媒端子139を通じて流入及び流出する冷媒が、この冷媒管148内で循環し得る。
【0056】
図3〜5の断面が示すように、当該真空ポンプは、ポンプ給気口115に存在するプロセスガスをポンプ排気口117に送るために複数のプロセスガスポンプ段を有する。
【0057】
ロータ軸151を中心にして回転可能なロータシャフト153を有するロータ149が、ハウジング119内に配置されている。
【0058】
ターボ分子ポンプ111は、ロータシャフト153に固定された複数の放射状ロータディスク155と、これらのロータディスク155間に配置され且つハウジング119内に固定された複数のステータディスク157とを有する、互いに直列に接続された複数のターボ分子ポンプ段から成る。この場合、1つのロータディスク155と隣接した1つのステータディスク157とが、それぞれ1つのターボ分子ポンプ段を形成する。これらのステータディスク157は、スペーサリング159によって希望した軸方向間隔で互いに保持されている。
【0059】
さらに、当該真空ポンプは、半径方向に入れ子式に配置され、ポンプ作用するように互いに直列に接続された複数のホルベックポンプ段を有する。これらのホルベックポンプ段のロータが、ロータシャフト153に配置された1つのロータハブ161と、このロータハブ161に固定され且つこのロータハブ161によって作動される2つの円筒状ホルベック・ロータスリーブ163,165とを有する。これらの円筒状ホルベック・ロータスリーブ163,165は、ロータ軸151に対して同軸に配向されていて、半径方向に入れ子式に接続されている。さらに、2つの円筒状ホルベック・ステータスリーブ167,169が設けられている。同様に、これらの円筒状ホルベック・ステータスリーブ167,169は、ロータ軸151に対して同軸に配向されていて、半径方向に見て入れ子式に接続されている。
【0060】
これらのホルベックポンプ段のポンプ作用する表面が、ホルベック・ロータスリーブ163,165とホルベック・ステータスリーブ167,169との外側面によって、すなわち放射状の内面及び/又は外面によって形成されている。放射状ホルベック・ギャップ171を形成するように、外側のホルベック・ステータスリーブ167の放射状内面が、外側のホルベック・ロータスリーブ163の放射状外面に対向し、これによって複数のターボ分子ポンプ段に後続する第1ホルベックポンプ段を形成する。放射状ホルベック・ギャップ173を形成するように、外側のホルベック・ロータスリーブ163の放射状内面が、内側のホルベック・ステータスリーブ169の放射状外面に対向し、これによって第2ホルベックポンプ段を形成する。放射状ホルベック・ギャップ175を形成するように、内側のホルベック・ステータスリーブ169の放射状内面が、内側のホルベック・ロータスリーブ165の放射状外面に対向し、これによって第3ホルベックポンプ段を形成する。
【0061】
放射状に延在する1つのチャネルが、ホルベック・ロータスリーブ163の下端部に設けられ得る。外側に存在する放射状ホルベック・ギャップ171が、このチャネルを介して中央のホルベック・ギャップ173に接続されている。さらに、放射状に延在する1つのチャネルが、ホルベック・ステータスリーブ169の上端部に設けられ得る。当該中央の放射状ホルベック・ギャップ173が、このチャネルを介して内側に存在する放射状ホルベック・ギャップ175に接続されている。これにより、当該入れ子式に接続された複数のホルベックポンプ段が、互いに直列に接続される。さらに、排気口117に向かう接続チャネル179が、内側に存在する放射状ホルベック・ロータスリーブ165の下端部に設けられ得る。
【0062】
上記の複数のホルベック・ステータスリーブ163,165のポンプ作用する複数の表面がそれぞれ、ロータ軸151を中心にして軸方向に螺旋状に延在する複数のホルベック溝を有する一方で、これらのホルベック・ステータスリーブ163,165の対向している外側面は、滑らかに形成されていて、真空ポンプ111を作動させるためにガスをこれらのホルベック溝内で前方に送る。
【0063】
ロータシャフト153を回転可能に軸支するため、ころ軸受181が、ポンプ排気口117の領域内に設けられていて、永久磁石軸受183が、ポンプ給気口115の領域内に設けられている。
【0064】
ころ軸受181の領域内には、ころ軸受181に向かって増大している外径を有する円錐形のテーパ雌ねじ185が、ロータシャフト153に設けられている。このテーパ雌ねじ185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも1つのワイパに摺動接触している。この動作媒体貯蔵部は、重ね合わせて積層された複数の吸収性ディスク187を有する。これらの吸収性ディスク187は、ころ軸受181用の作動媒体、例えば潤滑油で浸漬されている。
【0065】
真空ポンプ111の領域内では、当該作動媒体が、毛細管作用によって当該作動媒体貯蔵部から当該ワイパを通じて回転するテーパ雌ねじ185に滲入し、遠心力の結果としてテーパ雌ねじ185に沿ってこのテーパ雌ねじ185の大きくなる外径の方向にころ軸受181に向かって送られる。当該作動媒体は、例えば潤滑機能を満たす。ころ軸受181及び当該作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ111内の凹形の座部189とベアリングキャップ145とによって覆われている。
【0066】
永久磁石軸受183が、ロータ側の軸受の半分191とステータ側の軸受の半分193とから成る。これらの軸受の半分はそれぞれ、軸方向に重ね合わせて積層された複数の永久磁石リング195,197から成る1つのリングスタックを有する。これらのリング磁石195,197は、互いに放射状の軸受ギャップ199を形成して対向している。この場合、ロータ側のリング磁石195は、半径方向外側に配置されていて、ステータ側のリング磁石197は、半径方向内側に配置されている。軸受ギャップ199内に存在する磁場が、これらのリング磁石195,197間に反発力を発生させる。ロータ側のリング磁石195は、ロータシャフト153の支持部201によって支持されている。この支持部201は、リング磁石195を半径方向外側で包囲している。ステータ側のリング磁石197は、リング磁石197を貫通して延在し、ハウジング119の放射状ブレース205に懸吊されているステータ側の支持部203によって支持されている。ロータ側のリング磁石195は、支持部203に結合された蓋部材207によってロータ軸151に対して平行に固定されている。ステータ側のリング磁石197は、支持部203に結合されている固定リング209と、この支持部203に結合されている固定リング211とによってロータ軸151に対して平行に一方向に固定されている。さらに、皿ばね213が、固定リング211とリング磁石197との間に設けられ得る。
【0067】
非常用軸受又はバックアップ軸受215が、当該磁石軸受内に設けられている。この非常用軸受又はバックアップ軸受215は、真空ポンプ111の通常の作動中は接触なしにアイドリング動作し、ロータ149が当該ステータに向かって過度に振れたときに初めて、ロータ149を半径方向に保持するように作動する。その結果、ロータ側の構造物とステータ側の構造物との衝突が回避される。当該バックアップ軸受215は、潤滑されないころ軸受として構成されていて、ロータ149及び/又は当該ステータと一緒に半径方向の隙間を形成する。その結果、このバックアップ軸受215は、通常のポンプ動作中は何もしていない。バックアップ軸受215が介入しているときの半径方向の振れは、十分に大きいと判断される。したがって、バックアップ軸受215は、当該真空ポンプの通常の動作中は何もしていない。また、バックアップ軸受215が何もしていないときの半径方向の振れは、十分に小さいと判断される。したがって、ロータ側の構造物とステータ側の構造物との衝突が、あらゆる状況において回避される。
【0068】
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動させるために電動機125を有する。この電動機125の電機子が、ロータ149によって構成されている。このロータ149のロータシャフト153が、電動機ステータ217を貫通して延在している。永久磁石が、この電動機ステータ217を貫通して延在しているロータシャフト153の一部上に半径方向外側で又は埋設されて配置され得る。半径方向の電動機隙間を成す隙間219が、電動機ステータ217とこの電動機ステータ217を貫通して延在しているロータ149の一部との間に配置されている。この電動機ステー217と当該永久磁石とが、駆動トルクを伝達するために当該隙間219を介して磁気作用を及ぼされ得る。
【0069】
電動機ステータ217は、当該ハウジング内の、電動機125用に設けられている電動機室137の内部に固定されている。パージガスとも呼ばれ、例えば空気又は窒素でもよいバリアガスが、バリアガス端子135を通じてこの電動機室137内に到達し得る。電動機125が、当該バリアガスによってプロセスガス、例えばプロセスガスの腐食作用のある成分から保護され得る。電動機室137が、排気口117を通じて排気され得る。すなわち、この電動機室137が、この排気口117に接続されている補助真空ポンプによって少なくともほぼ真空圧力にされる。
【0070】
さらに、特に、半径方向外側に存在するホルベックポンプ段に対する電動機室137のより良好な密閉を達成するため、周知であるいわゆるラビリンスシール223が、ロータハブ161と電動機室137を仕切っている内壁221との間に設けられ得る。
【0071】
図6は、それぞれの相U,V,Wの出力電圧u
V,u
U,u
Wが正又は負の中間回路電位U
dcに設定され得るように、3つの相ζ=U,V,Wのそれぞれの相に対して1つのハーフブリッジを有する典型的な三相インバータ10を概略的に示す。切り替え状態が、s
ζ=Hであるときに、それぞれの相ζの電圧電位u
ζが、値U
dcをとり、切り替え状態が、s
ζ=Lであるときに、それぞれの相ζの電圧電位u
ζが、値0をとる。所定のデューティー比λ
ζI[0,1]の場合、電圧u
ζ=λ
ζ×U
dcが、それぞれの相ζに対して発生する。
【0072】
図7は、空間ベクトル変調のための典型的な複数の有効電圧ベクトルを概略的に示す。この場合、これらの電圧ベクトル
【0073】
【数25】
は、複数の電圧ベクトルに対応する座標の実数部u
αと虚数部u
βとを有する直交座標系で示されている。それぞれの有効電圧ベクトル
【0074】
【数26】
は、3つの相の切り替え状態に依存する。その結果、以下の関係:
【0077】
【数29】
によって規定されている。
【0078】
図8は、直交座標系で示された典型的な任意の電圧
【0079】
【数30】
を示す。同様に、直交座標系の座標は、電圧ベクトルの実数部u
αと虚数部u
βとに対応する。したがって、それぞれの電圧が、以下の関係式:
【0081】
以下に示されているように、3つの電位u
U,u
V,u
Wが、クラーク変換を使用して、当該両電圧u
α及びu
βによって規定された電圧ベクトル
【0083】
【数33】
逆クラーク変換を使用することで、希望した電圧ベクトル
【0084】
【数34】
が、以下のように零電位に対する3つの電位u
*U,0,u
*V,0,u
*W,0に変換され得る。
【0085】
【数35】
本発明の空間ベクトル変調方法の場合、それぞれのパルス幅変調周期内に、インバータ10の3つの相U,V,Wのうちの少なくとも1つの相が接続されないか、又は、インバータ10の3つの相U,V,Wのうちの最大で2つの相が接続されるように、例えば、
図6に示された三相インバータ10、特に2レベル三相インバータが、パルス幅変調に基づいて作動可能な三相交流機のために制御される。この場合、所定の1つの目標電圧空間ベクトルから出発して、最初に、インバータ10の3つの相U,V,Wの3つの目標電位u
U0,u
V0,u
W0が計算され、最小値u
Minが、当該計算された3つの目標電位u
U0,u
V0,u
W0から算出され、インバータ10の3つの相U,V,Wに対する最終的な出力電位u
Ufinal,u
Vfinal,u
Wfinalが、当該算出された最小値u
Minを考慮して計算され得る。
【0086】
インバータ10の3つの相U,V,Wに対する最終的な出力電位u
Ufinal,u
Vfinal,u
Wfinalは、以下の関係式によって計算され得る:u
Ufinal=u
U0−u
Min,u
Vfinal=u
V0−u
Min及びu
Wfinal=u
W0−u
Min。
【0087】
インバータ10のそれぞれの相U,V,Wに対するデューティー比λは、以下の関係式によって計算され得る:λ
U=u
Ufinal/U
dc,λ
V=u
Vfinal/U
dc及びλ
W=u
Wfinal/U
dc。この場合、U
dcは、中間回路電圧である。
【0088】
このとき、インバータ10の3つの相U,V,Wの目標電位u
U0,u
V0,u
W0は、逆クラーク変換を使用して直交座標系における2つの電圧u
α及びu
βから計算され得る。
【0089】
最終的に、両電圧u
α及びu
βが、絶対値及び角度としての電圧ベクトルから計算され得る。
【0090】
したがって、本発明の空間ベクトル変調の場合、浮遊電位が、始点に対して使用される。始点又は零点に対する3つの電位u
*U,0,u
*V,0,u
*W,0のうちの最小値が、以下の関係式にしたがって算出される:
u
min=min(u
*U,0,u
*V,0,u
*W,0)。次いで、それぞれの相のデューティー比λ
ζが、以下のように計算される:
【0091】
【数36】
このような本発明の空間ベクトル変調方法を使用することで、
【0092】
【数37】
の振幅が、追加の計算労力なしに直接に効率的に取得される。この場合、使用されるマイクロコントローラの計算負荷が、これに応じて低減される。それぞれのパルス幅変調周期内に、インバータ10の3つの相U,V,Wのうちの少なくとも1つの相が接続されるか、又は、インバータ10の3つの相U,V,Wのうちの最大で2つの相が接続される。したがって、三相交流機のそれぞれの回転周期内に、インバータ10のそれぞれの経路が、当該期間の3分の1にわたって切り替わらない。これに応じて、所定のスイッチンング周波数f
Fの場合に、当該切り替え期間が、
【0093】
【数38】
に減少している。この場合、スイッチンング損失が、33%程度減少される。
【0094】
パルス幅変調に基づいて作動可能な三相交流機用の三相インバータ、特に2レベル三相インバータを制御するための本発明のハイブリッド変調方法によれば、比較的大きい相電流に対しては、本発明の空間ベクトル変調方法が使用され得、比較的小さい相電流に対しては、インバータ10の全ての3つの相U,V,Wが電圧の切り替えに寄与する従来の変調方法が使用され得る。
【0095】
本発明の空間ベクトル変調方法及び/又は本発明のハイブリッド変調方法が使用可能である、パルス幅変調に基づいて作動可能なエンコーダなしの三相交流機を起動するための本発明の方法は、同期ステップ、起動ステップ及び検査ステップを有する。この場合、当該検査ステップでは、当該起動が良好に進行したときは、部分ステップa)にしたがって、内部監視装置が、エンコーダなしに磁界方向制御する機械制御のために始動し、当該起動が終了し、当該起動が失敗したときは、部分ステップb)にしたがって、当該三相交流機が、停止するまで制動される。その後に、当該三相交流機が新たに起動される。
【0096】
同期ステップでは、三相交流機が、そのアイドリング動作中に関係式
【0097】
【数39】
によって規定されている同期電圧ベクトル
【0098】
【数40】
によって制御される。この場合、同期過程の全期間が、T
syncによって規定されている。当該同期電圧ベクトル
【0099】
【数41】
は、比較的狭い周波数範囲内にある一定の周波数f
syncで回転するか又は周波数幅なしの周波数f
syncで回転する。当該同期電圧ベクトル
【0100】
【数42】
の振幅u
syncが、0とk
T×T
syncとの間の時間間隔内に増大する。ここで、k
TI(0,1)である。振幅u
syncが、k
T×T
syncとT
syncとの間の時間間隔内に電圧値u
syncからk
u×u
syncに線形に変化する。ここで、k
u≧0である。
【0101】
起動ステップでは、三相交流機が、そのアイドリング動作中に関係式
【0102】
【数43】
によって規定されている起動電圧ベクトル
【0103】
【数44】
によって制御される。この場合、当該起動過程は、パラメータである当該起動時間T
up、Hzを単位とする最終回転速度f
final及び初期振幅u
upによって規定されている。回転する起動電圧ベクトル
【0104】
【数45】
の振幅u
upは、u
upからu
up+ΔUまで線形に増大する。この場合、ΔUは、関係式ΔU=2π・Ψ
M・(f
final−f
sync)によって計算される。この関係式では、Ψ
Mは、当該三相交流機の磁束密度である。当該回転する起動電圧ベクトル
【0105】
【数46】
の周波数f
upは、f
syncから最終周波数まで増大する。当該起動電圧ベクトル
【0106】
【数47】
の初期角度γ
upは、起動過程の開始時に関係式γ
up=γ
sync+Δγによって計算される。この場合、γ
syncは、当該同期過程の終了時の同期電圧ベクトル
【0107】
【数48】
の角度であり、Δγは、0と±45°との間のパラメータである。
【0108】
検査ステップの初期化部分ステップa)では、初期の電気角速度ω
0が、関係式
【0109】
【数49】
によって算定される。初期の電気角度γ
0は、関係式
【0110】
【数50】
によって算定される。負の起動速度が必要である場合には、この負の起動速度は、関係式
【0112】
検査ステップの制動部分ステップb)では、インバータ10が始動され、一定の電圧ベクトル
【0113】
【数52】
が印加され、オン時点T
onまで保持される。その後に、当該インバータ10は、停止され、全ての相電流が値零になるオフ時点T
offまで保持される。次いで、逆起電力の振幅
【0115】
【数54】
が、限界値U
stopよりも小さい場合には、当該制動過程が終了される。そうでない場合には、制動部分ステップb)が繰り返される。
【0116】
起動過程後の検査ステップにおいて、全ての相電流が値零になるまで、インバータ10が、停止されてオフ時点T
offまで保持される。さらに、3つの相電圧u
U,u
V,u
Wが、逆起電力として測定され、当該逆起電力の電圧ベクトル
【0117】
【数55】
が、クラーク変換を使用して計算される。このとき、絶対値
【0118】
【数56】
と、当該逆起電力の電圧ベクトルの角度
【0119】
【数57】
とが計算され得る。当該絶対値が、限界値U
backEMF lowよりも大きい場合には、初期化部分ステップa)が実行され、そうでない場合には、制動部分ステップb)が実行される。
【0120】
本発明の起動方法を使用することで、パルス幅変調に基づいて作動可能な三相交流機、特にパルス幅変調に基づいて作動可能なエンコーダなしの三相交流同期機又は三相交流同期電動機が、比較的簡単に且つロバストに起動され得る。
【0121】
パルス幅変調に基づく三相交流機、特にエンコーダなしの同期三相電動機を制御するための本発明の装置が、三相インバータ10、特に2レベル三相インバータ及び制御装置を有する。この場合、本発明の装置の三相インバータ10は、例えば、
図6に示された種類のインバータでもよい。三相インバータ10が、本発明の装置を制御することによって本発明の空間ベクトル変調方法にしたがって、本発明のハイブリッド変調方法にしたがって及び/又は本発明の起動方法にしたがって制御可能である。
【0122】
本発明の空間ベクトル変調方法、本発明のハイブリッド変調方法、本発明の起動方法及び本発明の装置は、特に、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのそれぞれの駆動装置を制御するために使用可能であり、例えば、
図1〜5に示された種類の真空ポンプ、特にターボ分子ポンプを制御するために使用可能である。
【0123】
本発明の真空ポンプ、特にターボ分子ポンプは、1つのステータ及びこのステータに対して回転軸を中心にして回転可能に軸支された1つのロータ並びに少なくとも1つの駆動装置を有する。当該駆動装置は、三相交流機、特にエンコーダなしの同期電動機から成る。当該三相交流機、特にエンコーダなしの同期電動機は、本発明の空間ベクトル変調方法にしたがって、本発明のハイブリッド変調方法にしたがって、本発明の起動方法にしたがって及び/又は本発明の装置によって制御可能である。