【課題を解決するための手段】
【0021】
この問題は、独立請求項の特徴を有する、試料の分析的検査のための試験要素分析システム及び製造方法によって解決される。好適な実施形態は、単独様式に実現されることもあれば何れかの任意の組合せに実現されることもあり得るものであって、従属請求項に掲載されている。
【0022】
下記での使用に際し、「有する(have)」、「備える(comprise)」、又は「含む(include)」という用語又はそれらの語の何れかの任意の文法的変化形は、非排他的なやり方で使用されている。したがって、これらの用語は、これらの用語によって前置きされる特徴とは別に、更なる特徴がこの文脈で説明されているエンティティに存在していないという状況を言い表すとともに、1つ又はそれ以上の更なる特徴が存在しているという状況も言い表すものとする。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、及び「AはBを含む」という表現は、AにはBとは別に他の要素が何も存在していないという状況(即ち、Aは唯一且つ排他的にBから成るという状況)を言い表すとともに、エンティティAにはBとは別に1つ又はそれ以上の更なる要素、例えば、要素C、要素C及び要素D、又は更にそれ以上の要素など、が存在しているという状況も言い表すものとする。
【0023】
また、「少なくとも1(at least one)」、「1又はそれ以上(one or more)」、又は、或る特徴又は要素が一回又はそれ以上存在することを示唆する類似の表現は、典型的には、それぞれの特徴又は要素を紹介する際に一回に限って使用するつもりであることに留意されたい。下記では、それぞれの特徴又は要素に言及する際、殆どの場合に、それぞれの特徴又は要素が一回又はそれ以上存在することもあるという事実にもかかわらず「少なくとも1」又は「1又はそれ以上」という表現を繰り返すことはしない。
【0024】
また、下記での使用に際し、「好適には(preferably)」、「より好適には(more preferably)」、「特に(particularly)」、「更にとりわけ(more particularly)」、「具体的に(specifically)」、「より具体的に(more specifically)」という用語又は類似の用語は、代替的な実施可能性を制限すること無く、随意的な特徴と関連して使用されている。したがって、これらの用語によって前置きされる特徴は、随意的な特徴であり、特許請求の範囲による範囲を如何様にも制限するものではない。当業者には認識される様に、発明は代替的な特徴を使用することによって遂行されてもよい。同様に、「発明の或る実施形態では(in an embodiment of the invention)」又は類似の表現によって前置きされる特徴は、随意的な特徴とされることを意図しており、発明の代替的な実施形態に関して何らの制限も持たず、発明の範囲に関して何らの制限も持たず、またその様なやり方で前置きされる特徴を発明の他の随意的又は非随意的な特徴と組み合わせることの実施可能性に関して何らの制限も持たない。
【0025】
本発明の第1の態様では、試料、特に体液、の分析的検査のための試験要素分析システムが開示されている。試験要素分析システムは、試料を収容している試験要素を位置決めするための試験要素保持部と、試験要素の測定ゾーン内での変化を測定するための測定装置と、を有する評価装置を備えている。変化は検体にとって特徴的である。試験要素保持部は接点表面を有する接点要素を含んでいて、試験要素の接点表面と試験要素保持部の接点表面の間の電気的接触を可能にしている。試験要素保持部の接点要素の接点表面には、金属ルテニウムを含む電気伝導性表面が提供されている。
【0026】
概して本発明内での使用に際し、「試験要素分析システム(test element analysis system)」という用語は、試料の分析的検査のために構成されている任意の装置を指してよい。試験要素分析システムは、試料を収容し得る試験要素の少なくとも1つの分析、特に医学的分析、を行うように構成されていてもよい。「検体(analyte)」という用語は、原子、イオン、分子、及び高分子、特に生体高分子である核酸、ペプチド、及びタンパク質、脂肪、代謝産物、細胞、及び細胞断片、を含む。本出願の意義において、分析的検査のために使用される試料とは、検体を含む未変化媒質はもとより、検体若しくは検体由来物質を含む既変化媒質のこともあると理解される。原媒質の変化は、特に、試料を溶解させるために、検体を処理するために、又は検出反応を実施するために、実行させることができる。典型的な試料は、液体、特に体液である。液体は、純粋な液体であってもよいし、分散液、乳濁液、又は懸濁液の様な、均一又は不均一混合物であってもよい。具体的には、液体は、原子、イオン、分子、及び高分子、特に生体高分子である、核酸、ペプチド、及びタンパク質、脂肪、代謝産物、又は、更に、生体細胞、又は細胞断片を含んでいてもよい。検査されるべき典型的な液体は、血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液、涙液、細胞懸濁液、細胞上清、細胞抽出物、組織溶解物、又は同種物の様な体液である。液体は、また一方では、キャリブレーション溶液、参照液、試薬液、又は、標準化された検体濃度を含んでいる溶液いわゆる標準液であってもよい。概して本発明内での使用に際し、「分析的検査又は検体の判定(analytical examination or determination of analytes)」という用語は、検体の質的並びに量的な検出であると理解される。具体的には、それぞれの検体の濃度又は量の判定であると理解され、検体の不在又は存在のみの判定もまた分析的検査と見なされる。
【0027】
試験要素分析システムは、典型的には、分析ラボラトリ及び医療ラボラトリで使用される。但し、発明は、分析が患者自身によって自らの健康状態を継続的に監視する(在宅監視)するために実施される用途の分野にも向けられている。このことは、例えば、自分の血液中のブドウ糖の濃度を毎日数回判定しなくてはならない糖尿病患者又は抗凝血薬を摂取していてそのため自分の凝血状態を規則的な間隔で判定しなくてはならない患者の監視にとって特に医学的重要性がある。その様な目的の場合、評価計器はできる限り軽く小さく、バッテリ作動式で堅牢であるべきである。その様な試験要素分析システムは、例えばドイツ特許第4305058号に記載されている。
【0028】
試験要素は、大抵はプラスチック材料から成る細長い支持体層と、検出試薬を含む検出層及び場合によっては濾過層の様な他の補助的な層を有する測定ゾーンと、から本質的には構成される試験条片の形態をしている場合が多い。加えて、試験要素は、他の構造的要素、例えば、チャネル又はフリースの様な試料用計量投与及び輸送装置、試験要素の精密な位置決めを確約しひいては評価装置での精密な測定を確約するためのカットアウトの様な位置決め装置、又は、較正データ又はバッチ情報の様な試験要素の固有パラメータを評価装置へ転送するのに使用される、例えばバーコードの形態をしているコーディング要素又は電子的構成要素を収容していてもよい。
【0029】
試験要素は、大抵、測定ゾーン内に試薬を収容していて、それと試料との反応、具体的には試料に含まれる検体との反応が、システムの一部である評価計器によって判定できる試験要素の特徴的で測定可能な変化をもたらす。測定ゾーンは、随意的に、他の補助的物質を収容することもできる。測定ゾーンは、更に、試薬又は補助的物質の一部のみを収容することもできる。他の事例では、検体を判定するための検出反応がそのまま測定ゾーンで起こるのではなしに、むしろ、検出反応が完了した後の測定のために試薬混合物が測定ゾーンに移送されるだけ、ということもあり得る。分析的試験要素又は診断的試験担体の技術分野の熟練者は、検体特異的検出反応を実施するのに適した試薬及び補助的作用物質に精通している。検体が分析的に検出される事例では、測定ゾーンは、例えば、酵素、酵素基質、指示薬、緩衝塩、不活性充填剤、及び同種物を含むことができる。色の変化を生じさせる検出反応に加え、当業者は更に、電気化学的センサ又は化学的、生化学的、分子生物学的、免疫学的、物理的、蛍光定量的、又は分光分析的な検出方法の様な、記載の試験要素を用いて実現させることのできる他の検出原理を知っている。本発明の主題はこれら検出方法全てで使用することができる。これは、特に、検体特異的検出反応の結果として大抵は電圧又は電流として電気化学的に測定され得る測定ゾーン内変化が起こる電気化学的分析方法に適用される。
【0030】
試薬を使用する様な分析システムに加え、本発明の主題は更に試薬無し分析システムで使用することもでき、試薬無し分析システムでは、試験要素を試料と接触させた後に、更なる試薬無しにそのまま試料の特徴的な性質(例えばイオン選択電極を用いての試料のイオン組成)が測定される。発明は基礎的にその様な分析システム向けに使用することもできる。
【0031】
ここでの使用に際し、「評価装置(evaluation device)」という用語は、概して、試料の分析を遂行するように構成された任意の装置をいう。評価装置は試験要素保持部を備えている。「試験要素保持部(test element holder)」という用語は、概して、少なくとも1つの試験要素を受け入れるように、そして試験要素の測定ゾーン内の変化を測定するために試験要素を位置決めするように、構成されている任意の装置をいう。評価装置は、試験要素の測定ゾーン内の変化を測定するための測定装置を備えている。ここでの使用に際し、「測定装置(measuring device)」という用語は、試験要素の測定ゾーン内の少なくとも1つの変化を測定及び/又は検出するように構成されている任意の装置をいう。評価装置/測定装置は、少なくとも1つの電子的構成要素を有する少なくとも1つの電子ユニットを有していることもある。具体的には、電子ユニットは、試験要素の測定ゾーン内の変化の測定を遂行するため、測定装置の測定信号を記録するため、測定信号又は測定データを記憶するため、測定信号又は測定データを別の装置へ送信するための、少なくとも1つの電子的構成要素を備えていてもよい。
【0032】
評価装置は、測定を実施するための測定位置に試験要素を位置決めするために試験要素保持部を備えている。検体を判定するために、試験要素は評価装置に設置され、評価装置が検体によって引き起こされる試験要素の特徴的変化を判定し、それを表示又は更なる処理に向けて測定値の形式で提供する。検体は、計器分析の分野の熟練者に知られている様々な検出方法を用いて判定することができる。特に、光学的及び電気化学的な検出方法を使用することができる。光学的な方法は、例えば、吸収量、透過度、円偏光二色性、旋光分散、屈折率測定、又は蛍光を測定することによる、測定ゾーン内での特徴的変化の判定を含む。電気化学的な方法は、特に、測定ゾーン内の電荷、電位、又は電流の特徴的変化の判定に基づくものとすることができる。
【0033】
接点表面は、本発明の範囲内では、試験要素と評価装置の間に電気的接触を作り出すために直接接触させる接点要素又は試験要素の電気伝導性構造であるものと理解している。試験要素の事例では、それらは典型的には電極又は電極上に設置された導体経路であり、特に、これらの電極又は導体経路の、電気的接触を作り出すための成形された構造例えば平坦な構造を有している区域である。接点要素の接点表面は、更に、最大可能接点表面又は区域を現出させ、ひいては非常に確実な接触及び低い境界抵抗を現出させる形状とすることができ、例えば平坦な要素の形状をしていてもよい。これらの接点表面は、更に、例えばばね式又は差し込み式接点の事例では、出来る限り単純且つ穏やかに試験要素を挿入できるように曲線形状を有するものとすることができる。試験要素保持部の接点要素の接点表面には金属ルテニウムを含む電気伝導性表面が提供されている。
【0034】
「接点要素(contact element)」という用語は、試験要素の接点表面と試験要素保持部の接点表面の間の電気的接触を可能にさせるように構成されている任意の装置をいう。評価装置の試験要素保持部の構成要素である接点要素は極めて広範に様々な設計を有することができる。それらは、例えば、スライド式接点、ローラー接点、差し込み型接点、ばね接点、クリップ接点、又はゼロ力接点として設計することができる。接点表面の進歩的な設計は、とりわけ、接触接続にかかわる2つの要素の接点表面同士を直接接触させながらそれらの最終的な位置に到達するまで互いを通り過ぎて動かしてゆくスライド式接点、差し込み型接点、ばね接点、及びクリップ接点の様な接点要素型式の場合の接触信頼性にとって特に好都合である。接点要素の特に典型的な実施形態は、スライド式接点、差し込み型接点、ばね接点、及びクリップ接点である。その様な接点要素の広範に様々な考えられる実施形態が例えば米国特許第6,029,344号に記載されている。
【0035】
試験要素保持部の接点要素の接点表面には、金属ルテニウムを含む電気伝導性表面が提供されている。電気伝導性表面は、純粋な金属ルテニウム又は金属ルテニウムを備える化合物を含むことができる。ルテニウムは、ガルバニックコーティングによって直接的又は間接的に導電性材料へ適用することができる。純粋な材料の要素は、脆性や貧弱な弾性の様な、不利な機械的及び化学的性質を有していることがしばしばあるので、ルテニウム表面を、例えば導電性材料へ間接的にガルバニックコーティングすることによって、形成するようにしてもよい。但し、他の堆積技術又は被覆技術を追加的又は代替的に使用することもできる。試験要素保持部が、接点表面を有する接点要素を含む少なくとも1つの金属部分を備えていて、金属部分はルテニウム以外の少なくとも1つの導電性材料で作られており、接点要素の領域内の導電性材料は全体的又は部分的にルテニウムで被覆されている、というのであってもよい。導電性材料は銅を備えていてもよい。ルテニウムは、ガルバニックコーティングによって直接的又は間接的に導電性材料へ適用することができる。
【0036】
金属ルテニウム及び金属ルテニウムの化合物は二酸化ルテニウムとは区別される。二酸化ルテニウムでは、ルテニウムとオキシドは分離できない化合物であり、金属ルテニウムに比べて異なる化学的性質及び電気伝導性質を有している。金属ルテニウムを含む接点表面は二酸化ルテニウムを含む接点表面に照らして考えると有利であり、というのも二酸化ルテニウム面の製造は複雑で費用が嵩むからである。特に、二酸化ルテニウムのガルバニックコーティングは実施できない。
【0037】
意外にも、接点要素の機能性、即ちランイン挙動及び/又は境界抵抗は、本質的にルテニウム層の厚さから独立しており、特にルテニウム層の厚さが1μmから0.01μmの間の範囲内、好適には0.6μmから0.1μmの間の範囲内にある場合にそうであることが判明した。ルテニウム層の厚さは、1μmから0.01μmの間、好適には0.6μmから0.1μmの間とすることができる。例えば、ルテニウム層の厚さは0.4μmであってもよい。
【0038】
接点要素の導電性材料へルテニウム層を適用するときは、最初に1つ又はそれ以上の中間層、具体的には起源層(germ layer)又は保護層を導電性材料へ適用し、続いてルテニウム層をこれらの層へ適用するのが有利になり得る。その様な中間層の適用は、特に異なる材料間の良好な接着及び堅牢な結合をもたらすことができる。したがって、例えば、層を導電層へ適用するために、次に続くガルバニックコーティングによるルテニウムの適用にとって特に適した表面を生成するガルバニック法が最初に用いられることができる。また、保護層を適用することも実施可能であり、そうすればルテニウム面が傷つけられたときに下層の導電性材料を腐食の様な化学的及び/又は物理的損傷から保護することができる。加えて、接点要素の境界抵抗の様な電気的性質は、その様な中間層のための適した材料選択によって影響を受け得る。その様な中間層は、例えば、適した材料で作られた粒子を適用することによって作製することができる。代わりに、導電性材料と硬質材料層の間の良好で堅牢な結合を得るために、追加の中間層を提供するようにし、接点要素の導電性材料の表面を、被覆段階の前に、それが改善された被覆特性を有するようなやり方で処理する、というのも実施可能である。金属部分は、評価装置の少なくとも1つの電子的構成要素へ電気的に接続されている1つ又はそれ以上の接点部分を備え、1つ又はそれ以上の接点部分はルテニウムを含まないままにされる、というのであってもよい。金属部分は、押し抜きプレス曲げ加工部分又は押し抜き深絞り加工部分であってもよい。
【0039】
試験要素分析システムは、更に、少なくとも1つの測定ゾーン及び電気伝導性接点表面を有する試験要素を備えていてもよい。試験要素は、それを用いて試験要素と評価装置の間に電気的接触を作り出すことができる、電気伝導性である接点表面を含んでいてもよい。電気化学的分析方法の事例では、試料の電気化学的変化を判定するのに使用でき、また検査されるべき試料へ外部からの電圧及び/又は電流を印加するのにも使用できる導体経路又は電極が、試験要素上に配置されていてもよい。試験要素に対する電気化学的分析は、特に、それらによって発せられる電気的な測定信号又はそれらへ向けての操作信号が導体経路を介して測定され又は印加される間に、設計された電極同士の間の測定ゾーンで起こることができる。これらの導体経路は、試験要素と評価装置の間の電気的接触を作り出すのに使用することのできる接点表面を形成している設計された平坦区域を含むことができる。導体経路及び接点表面は貴金属から成っていてもよい。電気化学的分析方法を使用しない試験要素も同じく電気伝導性接点表面を有することができる。例えば、試験要素の較正データ又はバッチデータの様な固有パラメータを記憶したりそれらを評価計器へ転送したりするのに使用される電子的構成要素を試験要素上に搭載するのは好都合であろう。この目的では、これらの固有データは試験要素側にて電子的構成要素又は回路に記憶されている。試験要素が評価計器の中へ導入されると、評価計器の読み出し用電子機器によってこれらのデータが読み出され処理されることができる。
【0040】
電気伝導性接点表面は、電極又は導電性経路のうちの一方又は両方を備えていてもよい。試験要素の電気伝導性接点表面はルテニウムより軟質であってもよい。ルテニウム面が設けられている接点表面に対向する接点表面が、他方の接点表面のルテニウム面より低い硬度を有する材料から成っている場合はとりわけ好都合であることが判明した。試験要素の電気伝導性接点表面は全体的又は部分的に金で作られていてもよい。これには金属類、特に金の様な貴金属類が適している。その様な材料は、試験要素上の特に電極及び導体経路の接点表面向けに既に広範に用いられている。したがって、多くの事例では、本発明によるルテニウム面を有する接点要素を評価装置に設ければ十分であり、そのうえでその様な従来式試験要素を挿入すればよい。驚くべきことに、ルテニウム材料表面を有する接点表面とルテニウム面の材料より低い硬度を有する材料で作られた接点表面との組合せは、試験要素と評価装置の間の境界抵抗の高い再現性を実現させることが可能である、ということが判明した。
【0041】
以上に概説されている様に、米国特許第8,673,213B2号、欧州特許第1725881B1号、国際公開第2005/088319A2号では、試験要素と評価部の間の定義された再現可能な電気接続が、どちらも貴金属で作られている接点区域同士の場合に比べ、接点区域を電気伝導性の硬質材料で被覆することによって特に多回挿入後においてさえ改善される、ということが判った。しかし、幾度かの差し込み動作後、具体的には数万回の差し込み動作後は、硬質材料で被覆された接点表面が摩耗に因り影響を受ける及び/又は破壊されることもある。硬質材料で被覆された接点表面同士は、境界抵抗に関するランイン挙動及び境界抵抗のドリフトを呈することがある。硬質材料で被覆された接点表面を製造することは複雑であり、幾つかのプロセスを要し、したがって費用が嵩むこともある。加えて、硬質材料で被覆された接点表面の製造のプロセス信頼度が不十分であり得る。米国特許第6,029,344A1号、米国特許第5,409,762A号、及び米国特許第6,134,461A号は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金、を備える白金族の接点材料を含む接点表面を開示している。但し、欧州特許第0074630A2号では、白金族金族並びに貴金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金)の化合物は経済的理由から排除されている。驚くべきことに、金属ルテニウムを含む接点表面が、試験要素保持部と試験要素の間の低い境界抵抗、具体的には約50オーム未満の境界抵抗を確約する、ということが判った。加えて、試験要素と評価装置の間の境界抵抗の高い再現性がほぼ散乱無しに見いだされた。また驚くべきことに、ランイン挙動の無いことが判り、したがって信頼できる測定値が直接に確約される。また、接点要素の機能性は本質的にルテニウム層の厚さとは独立であることが判った。特に、極めて薄いルテニウム層においてさえ信頼できる測定値を求めることが可能となり得る。例えば、0.01μmの層厚さですら信頼できる測定値が得られ得る。ということは、堅牢性即ち以降の差し込み動作の量及び接点表面の機能性が強化され得るということである。金属ルテニウムを含む接点表面は、更に、対向する側の軟質接点表面例えば金の接点表面の摩耗が更に低減され、ひいては装置のルテニウム接点層への摩耗粒子の付着が低減され得るという理由から好都合であろう。加えて、ルテニウムの適用はガルバニックコーティングプロセスによって遂行されるので、ルテニウム接点の製造は、硬質材料の接点又は二酸化ルテニウムの接点よりも、より短期であり、複雑さはより軽減され、したがってより安価になるだろう。こうして、製造のためのプロセス時間を縮めプロセス信頼性を強化することができる。
【0042】
第2の態様では、発明による試験要素分析システムを製造するための方法が開示されている。方法の定義及び実施形態に関しては、上述の試験要素分析の定義及び実施形態を参照することができる。方法は以下の段階を備えている。
【0043】
a)金属ルテニウムを含む電気伝導性表面を有する接点要素を提供する段階、及び、
b)接点要素を評価装置の少なくとも1つの電子的構成要素と電気的に接続する段階。
【0044】
段階a)は、接点表面を有する接点要素を含む少なくとも1つの金属部分を提供する段階を備え、金属部分はルテニウム以外の少なくとも1つの導電性材料で作られていてもよい。段階a)は、更に、接点要素の領域内の導電性材料を全体的又は部分的にルテニウムで被覆する段階を備えていてもよい。
【0045】
本発明の知見を要約すると、以下の実施形態が好適である。
【0046】
(実施形態1)
試料、特に体液、の分析的検査のための試験要素分析システムであって、試験要素分析システムは、
−試料を収容している試験要素を位置決めするための試験要素保持部と、試験要素の測定ゾーン内での、検体にとって特徴的とされる変化を測定するための測定装置と、を有している評価装置であって、試験要素保持部が接点表面を有する接点要素を含み、試験要素の接点表面と試験要素保持部の接点表面の間の電気的接触を可能にしている、評価装置、
を備え、
−試験要素保持部の接点要素の接点表面には金属ルテニウムを含む電気伝導性表面が提供されている、
試験要素分析システム。
【0047】
(実施形態2)
上記の実施形態による試験要素分析システムにおいて、電気伝導性表面が純粋な金属ルテニウム又は金属ルテニウムを備える化合物を含む、試験要素分析システム。
【0048】
(実施形態3)
上記の実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムにおいて、試験要素保持部が接点表面を有する接点要素を包む少なくとも1つの金属部分を備えており、金属部分はルテニウム以外の少なくとも1つの導電性材料で作られていて、接点要素の領域内の導電性材料は全体的又は部分的にルテニウムで被覆されている、試験要素分析システム。
【0049】
(実施形態4)
上記の実施形態による試験要素分析システムにおいて、導電性材料は銅を備えている、試験要素分析システム。
【0050】
(実施形態5)
上記2つの実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムにおいて、ルテニウムはガルバニックコーティングによって直接的又は間接的に導電性材料へ適用されている、試験要素分析システム。
【0051】
(実施形態6)
上記3つの実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムにおいて、金属部分が評価装置の少なくとも1つの電子的構成要素へ電気的に接続されている1つ又はそれ以上の接点部分を備えており、1つ又はそれ以上の接点部分はルテニウムを含まないままである、試験要素分析システム。
【0052】
(実施形態7)
上記4つの実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムにおいて、金属部分は押し抜きプレス曲げ加工部分又は押し抜き深絞り加工部分である、試験要素分析システム。
【0053】
(実施形態8)
上記の実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムにおいて、
−少なくとも1つの測定ゾーンと電気伝導性接点表面とを有する試験要素、
を更に備えている試験要素分析システム。
【0054】
(実施形態9)
上記の実施形態による試験要素分析システムにおいて、
電気伝導性接点表面は電極又は導電性経路の一方又は両方を備えている、試験要素分析システム。
【0055】
(実施形態10)
上記2つの実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムにおいて、試験要素の電気伝導性接点表面はルテニウムより軟質である、試験要素分析システム。
【0056】
(実施形態11)
上記3つの実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムにおいて、試験要素の電気伝導性接点表面は全体的又は部分的に金で作られている、試験要素分析システム。
【0057】
(実施形態12)
上記の実施形態の何れか1つによる試験要素分析システムを製造するための方法であって、以下の段階、即ち、
a)金属ルテニウムを含む、電気伝導性表面を有する接点要素を提供する段階と、
b)接点要素を評価装置の少なくとも1つの電子的構成要素と電気的に接続する段階と、
を備えている方法。
【0058】
(実施形態13)
上記の実施形態による方法において、段階a)は、接点表面を有する接点要素を含む少なくとも1つの金属部を提供する段階を備え、金属部分はルテニウム以外の少なくとも1つの導電性材料で作られており、段階a)は、更に、接点要素の領域内の導電性材料を全体的又は部分的にルテニウムで被覆する段階を備えている、方法。
【0059】
次に続く好適な実施形態の説明では、発明の更なる随意的な特徴及び実施形態が、より詳細に、好ましくは従属請求項と関連付けて、開示されている。その中で、それぞれの随意的な特徴は、当業者には認識される様に、単独化された様式に実現されることもあれば何れかの任意の実施可能な組合せに実現されることもある。発明の範囲は好適な実施形態によって制限されない。実施形態は図に概略的に描かれている。その中で、これらの図における同一の符号は同一の要素又は機能的に匹敵する要素を指す。