【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による易切削性セグメントの一態様は、
母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、該母材の内部に鋼繊維が分散されており、
前記母材のコンクリート設計基準強度が、42N/mm
2乃至60N/mm
2の範囲にあり、
前記鋼繊維の混入率が、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲にあり、
前記繊維強化プラスチックの弾性係数が30kN/mm
2乃至120kN/mm
2の範囲にあることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、母材のコンクリート内に繊維強化プラスチック製の筋材が埋設されていることにより、例えば鉄筋が埋設されるRCセグメントに比べて、切削性に優れた易切削性セグメントが形成される。特に、繊維強化プラスチックの弾性係数が30kN/mm
2乃至120kN/mm
2の範囲にあることにより、弾性係数が200kN/mm
2程度の鉄筋よりも弾性係数が小さくなる(低剛性である)ことは勿論のこと、この数値範囲の弾性係数を有する繊維強化プラスチックとしてガラス繊維強化プラスチック等が適用され、一方で、高弾性炭素繊維強化プラスチック(弾性係数は鉄筋と同等)が除外されることから、高価な高弾性炭素繊維強化プラスチックからなる筋材を含まず、従って製作コストが可及的に安価で、切削性に優れた易切削性セグメントとなる。
【0009】
また、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲の鋼繊維がコンクリート内に分散されていることにより、鋼繊維の架橋効果に起因してひび割れ分散性が良好になり、各ひび割れのひび割れ幅が可及的に抑制されて止水性が向上する。
例えば、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドからなる筋材のみが母材に埋設される形態では、ガラス繊維強化プラスチックのロッドが低剛性であることから、ひび割れ幅の大きなひび割れが生じ易くなり、止水性が低下し得るが、コンクリート内に鋼繊維が分散されていることによりこのような課題が解消される。ここで、鋼繊維とは、鋼材を原料とし、不連続の繊維状に加工されたコンクリートの補強材のことであり、例えばアラミド繊維と比べて格段に剛性の高い繊維材である。
さらに、母材の内部に繊維強化プラスチックによる筋材と鋼繊維が埋設されていることにより、例えば鉄筋が埋設されているRCセグメントに比べて、曲げ耐力が高められ、耐荷性が向上する。例えば、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドからなる筋材のみが母材に埋設される形態では、曲げ耐力が低下し、かつ、塑性変形性能が低下し得るが、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドに加えて所定量の鋼繊維が分散されることにより、易切削性セグメントの耐荷性が格段に向上する。
尚、繊維強化プラスチックのロッドにより形成される、主筋と、配力筋と、フープ筋等の各筋材を全て備えた易切削性セグメントであってもよいことは勿論のことである。
【0010】
また、上記する鋼繊維を混入することによる他の効果として、本態様の易切削性セグメントが脆性的な曲げ圧縮破壊やせん断破壊が先行して発生するセグメントとならないことが挙げられる。例えば、繊維強化プラスチック製の筋材として低剛性のガラス繊維強化プラスチックのロッドからなる筋材を適用する場合、セグメントの剛性を高めるべく、ガラス繊維強化プラスチックの量を増加させる方策が考えられる。しかしながら、ガラス繊維強化プラスチックの量を過度に増加させると、今度は、曲げ引張破壊が先行して発生するセグメントから上記する脆性的な破壊が先行して発生するセグメントとなり、好ましくない。これに対して、本態様の易切削性セグメントは、母材内に所定量の鋼繊維が分散されていることにより、筋材を形成する繊維強化プラスチック(例えば、低剛性のガラス繊維強化プラスチック)の量を増加させることなく、セグメントの剛性を高めることが可能となり、曲げ引張破壊が先行して発生する易切削性セグメントを形成できる。
ここで、母材のコンクリート設計基準強度が、42N/mm
2乃至60N/mm
2の範囲にあることにより、トンネル標準示方書[シールド工法編]・同解説 2016年にある、セグメントに適用されるコンクリートの設計基準強度を充足する。
【0011】
また、鋼繊維の混入率(容積百分率のことであり、セグメントの全体体積に対する鋼繊維の全体体積)が、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲にあることにより、コンクリートプラントにおいてセグメントを製作する際の製作性と、鋼繊維によるセグメント補強効果を担保することができる。
【0012】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記鋼繊維が分散された前記母材のひび割れ発生後の最大引張応力が、前記母材のみからなるプレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、鋼繊維が分散された母材の応力−ひずみ特性を向上させることができ、ひび割れ発生後の最大引張応力を、プレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きくすることができる。
【0013】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記繊維強化プラスチックの破断時のひずみレベルにおける、前記鋼繊維が分散された前記母材の引張応力が0N/mm
2よりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、筋材を形成する繊維強化プラスチックが破断する際のひずみレベルにおいても、母材と鋼繊維が協同することにより、鋼繊維が分散されている母材の引張応力をゼロより大きくすることができ、作用する曲げモーメントに抵抗することができる。
【0014】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、
母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、該母材の内部に鋼繊維が分散されており、
前記鋼繊維が分散された前記母材のひび割れ発生後の最大引張応力が、前記母材のみからなるプレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、鋼繊維が分散された母材の応力−ひずみ特性を向上させることができ、ひび割れ発生後の最大引張応力を、プレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きくすることができる。
【0015】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、
母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、該母材の内部に鋼繊維が分散されており、
前記繊維強化プラスチックの破断時のひずみレベルにおける、前記鋼繊維が分散された前記母材の引張応力が0N/mm
2よりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、筋材を形成する繊維強化プラスチックが破断する際のひずみレベルにおいても、母材と鋼繊維が協同することにより、鋼繊維が分散されている母材の引張応力をゼロより大きくすることができ、作用する曲げモーメントに抵抗することができる。
【0016】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記筋材が、ガラス繊維強化プラスチックのロッド、アラミド繊維強化プラスチックのロッド、中弾性炭素繊維強化プラスチックのロッド、のいずれか一種により形成されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、筋材が、ガラス繊維強化プラスチック等(弾性係数は30kN/mm
2乃至120kN/mm
2の範囲にあって低剛性である)のロッドにて形成されていることにより、高価な高弾性炭素繊維強化プラスチックからなる筋材を含まず、従って製作コストが可及的に安価となり、ロッドが低剛性であることに起因して切削性に優れた易切削性セグメントを形成できる。
【0018】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記鋼繊維が、直線状の中央棒材と、該中央棒材の両端にある一以上の段状フック材と、を有することを特徴とする。
本態様によれば、鋼繊維が、直線状の中央棒材の両端において一以上の段状フック材を有していることにより、母材に対する鋼繊維の付着性が高められる結果、低剛性の繊維強化プラスチックからなる筋材を備える易切削性セグメントの応力−ひずみ特性が向上し、ひび割れ分散性の向上に起因して止水性が高められる。
【0019】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様において、前記易切削性セグメントは、二つのリング継手面と二つのセグメント継手面を有し、
前記リング継手面において、ほぞと、該ほぞが嵌まり込むほぞ溝のいずれか一方を備えており、
リング継ぎされる二つの前記易切削性セグメントの一方の該易切削性セグメントの前記ほぞ溝に対して、他方の該易切削性セグメントの前記ほぞが嵌まり込むようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、リング継ぎされる二つの易切削性セグメントのうちの一方の易切削性セグメントのほぞ溝に対して、他方の易切削性セグメントのほぞが嵌まり込むようになっていることにより、セグメント継手面における曲げモーメントを、リング継手面のほぞ及びほぞ溝の係合構造を介して隣接する易切削性セグメントに効果的に伝達することができる。
【0020】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記ほぞの表面に、シェアストリップが取り付けられていることを特徴とする。
本態様によれば、ほぞの表面にシェアストリップが取り付けられ、従ってほぞとほぞ溝の界面にシェアストリップが介在することにより、せん断力を緩衝させて均等に伝達することができ、このことにより、ほぞが局所的に当たって破壊されることを抑制できる。