特許第6892955号(P6892955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6892955
(24)【登録日】2021年6月1日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】易切削性セグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   E21D11/08
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-103886(P2020-103886)
(22)【出願日】2020年6月16日
【審査請求日】2021年2月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 佳文
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 直俊
(72)【発明者】
【氏名】岸山 雄多佳
(72)【発明者】
【氏名】小阪 佳平
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−040137(JP,A)
【文献】 特開2012−021329(JP,A)
【文献】 特開2019−038721(JP,A)
【文献】 特開2002−227594(JP,A)
【文献】 特開平01−154996(JP,A)
【文献】 特開2008−025303(JP,A)
【文献】 特開2017−031724(JP,A)
【文献】 特開2019−049191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、該母材の内部に鋼繊維が分散されており、
前記母材のコンクリート設計基準強度が、42N/mm乃至60N/mmの範囲にあり、
前記鋼繊維の混入率が、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲にあり、
前記繊維強化プラスチックの弾性係数が30kN/mm乃至120kN/mmの範囲にあり、
前記鋼繊維が分散された前記母材のひび割れ発生後の最大引張応力が、前記母材のみからなるプレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きくなるひずみ範囲を有し、
前記繊維強化プラスチックの破断時のひずみレベルにおける、前記鋼繊維が分散された前記母材の引張応力が0N/mmよりも大きいことを特徴とする、易切削性セグメント。
【請求項2】
前記筋材が、ガラス繊維強化プラスチックのロッド、アラミド繊維強化プラスチックのロッド、中弾性炭素繊維強化プラスチックのロッド、のいずれか一種により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の易切削性セグメント。
【請求項3】
前記鋼繊維が、直線状の中央棒材と、該中央棒材の両端にある一以上の段状フック材と、を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の易切削性セグメント。
【請求項4】
前記易切削性セグメントは、二つのリング継手面と二つのセグメント継手面を有し、
前記リング継手面において、相互に連続しない複数のほぞと、該複数のほぞがそれぞれ嵌まり込む相互に連続しない複数のほぞ溝のいずれか一方を備えており、
リング継ぎされる二つの前記易切削性セグメントの一方の該易切削性セグメントの前記複数のほぞ溝に対して、他方の該易切削性セグメントの前記複数のほぞがそれぞれ嵌まり込むようになっていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の易切削性セグメント。
【請求項5】
前記ほぞの表面に、シェアストリップが取り付けられていることを特徴とする、請求項に記載の易切削性セグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易切削性セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シールド工法により本線トンネルとランプトンネルを個別に施工した後、本線トンネルとランプトンネルの一部区間を非開削施工にて切り拡げることにより地中拡幅部を施工し、双方のトンネルを当該地中拡幅部にて接続する施工が行われる。本線トンネルは例えば地下40m以深の大深度の地下道であり、この地下道に対して地上のインターチェンジ・ジャンクション等からアクセスするランプトンネルが延設し、地中拡幅部にて双方のトンネルが連結され得る。
この地中拡幅部の施工においては、間隔を置いて併設する本線トンネルとランプトンネルを例えば相対的に大断面の円筒状の地中構造物にて包囲した後、地中構造物の内部を掘削し、双方のトンネルの連通部を撤去することにより地中拡幅部が施工される。尚、地中構造物の施工に際し、必要に応じて地中構造物の施工領域には止水処理が行われる。
上記する大断面の地中構造物の構築方法としては、複数本の小断面トンネルを筒状に並設して外殻(大断面覆工体)を施工する方法がある。より具体的には、複数の先行小断面トンネルを間隔を置いて環状に施工した後、当該間隔において先行小断面トンネルの一部を切削しながら複数の後行小断面トンネルを環状に施工し、後行小断面トンネルの一部を撤去して先行小断面トンネルと連通させる。すなわち、先行小断面トンネルと後行小断面トンネルが交互に数珠つなぎされた大断面覆工体を形成して、各小断面トンネルを連通させる。そして、大断面の環状の連通部に対して周方向に延設する主筋を配し、中詰めコンクリートを施工することにより、大断面覆工体である地中構造物が施工される。
ところで、上記する大断面覆工体を形成する先行小断面トンネルと後行小断面トンネルはいずれも、シールド工法により順次施工される。後行小断面トンネルにてその一部が切削される先行小断面トンネルは、例えばRC(Reinforced Concrete)セグメントにて施工され、後行小断面トンネルは、例えば鋼製セグメントにて施工され得る。その中で、先行小断面トンネルを形成するセグメントには、後行小断面トンネル施工用のシールド掘進機にて切削可能な易切削性セグメントが適用されるのが望ましい。
【0003】
ここで、特許文献1には、コンクリートを母材とし、樹脂製筋材を筋材とする切削セグメントにおいて、コンクリートは骨材を含み、骨材は、粗骨材及び細骨材を含み、粗骨材に軽量骨材または高炉スラグ骨材を使用し、筋材が連続ネジを備えるガラス繊維ロッドからなる、切削セグメントが提案されている。この切削セグメントでは、クラック伸展防止のための添加材として、コンクリートにアラミド繊維が0.25体積%乃至0.5体積%混入されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019−49191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の切削セグメントによれば、アラミド繊維が0.25体積%乃至0.5体積%混入されていることにより、クラック伸展防止を図ることができるとしている。しかしながら、低剛性のアラミド繊維をせいぜい0.5体積%混入しただけでは、クラック(ひび割れ)の伸展を効果的に防止できるか否かに関して定かでない。さらに、ここには、例えば一箇所(もしくは可及的に少数箇所)にひび割れが集中することによってひび割れ幅が大きくなり、切削セグメントの止水性が低くなるといった課題に関する記載は一切なく、この課題解決手段に関する記載は当然に存在しない。尚、低剛性のアラミド繊維を0.5体積%混入しただけでは、ひび割れを分散させて各ひび割れのひび割れ幅を低減し、止水性を向上させることは極めて難しいことから、特許文献1に記載の特徴構成が切削セグメントのひび割れ分散性と止水性の向上に有効であるとは言い難い。
【0006】
本発明は、製作コストが可及的に安価であり、切削性と耐荷性、及び止水性に優れた易切削セグメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による易切削性セグメントの一態様は、
母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、該母材の内部に鋼繊維が分散されており、
前記母材のコンクリート設計基準強度が、42N/mm乃至60N/mmの範囲にあり、
前記鋼繊維の混入率が、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲にあり、
前記繊維強化プラスチックの弾性係数が30kN/mm乃至120kN/mmの範囲にあることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、母材のコンクリート内に繊維強化プラスチック製の筋材が埋設されていることにより、例えば鉄筋が埋設されるRCセグメントに比べて、切削性に優れた易切削性セグメントが形成される。特に、繊維強化プラスチックの弾性係数が30kN/mm乃至120kN/mmの範囲にあることにより、弾性係数が200kN/mm程度の鉄筋よりも弾性係数が小さくなる(低剛性である)ことは勿論のこと、この数値範囲の弾性係数を有する繊維強化プラスチックとしてガラス繊維強化プラスチック等が適用され、一方で、高弾性炭素繊維強化プラスチック(弾性係数は鉄筋と同等)が除外されることから、高価な高弾性炭素繊維強化プラスチックからなる筋材を含まず、従って製作コストが可及的に安価で、切削性に優れた易切削性セグメントとなる。
【0009】
また、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲の鋼繊維がコンクリート内に分散されていることにより、鋼繊維の架橋効果に起因してひび割れ分散性が良好になり、各ひび割れのひび割れ幅が可及的に抑制されて止水性が向上する。
例えば、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドからなる筋材のみが母材に埋設される形態では、ガラス繊維強化プラスチックのロッドが低剛性であることから、ひび割れ幅の大きなひび割れが生じ易くなり、止水性が低下し得るが、コンクリート内に鋼繊維が分散されていることによりこのような課題が解消される。ここで、鋼繊維とは、鋼材を原料とし、不連続の繊維状に加工されたコンクリートの補強材のことであり、例えばアラミド繊維と比べて格段に剛性の高い繊維材である。
さらに、母材の内部に繊維強化プラスチックによる筋材と鋼繊維が埋設されていることにより、例えば鉄筋が埋設されているRCセグメントに比べて、曲げ耐力が高められ、耐荷性が向上する。例えば、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドからなる筋材のみが母材に埋設される形態では、曲げ耐力が低下し、かつ、塑性変形性能が低下し得るが、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドに加えて所定量の鋼繊維が分散されることにより、易切削性セグメントの耐荷性が格段に向上する。
尚、繊維強化プラスチックのロッドにより形成される、主筋と、配力筋と、フープ筋等の各筋材を全て備えた易切削性セグメントであってもよいことは勿論のことである。
【0010】
また、上記する鋼繊維を混入することによる他の効果として、本態様の易切削性セグメントが脆性的な曲げ圧縮破壊やせん断破壊が先行して発生するセグメントとならないことが挙げられる。例えば、繊維強化プラスチック製の筋材として低剛性のガラス繊維強化プラスチックのロッドからなる筋材を適用する場合、セグメントの剛性を高めるべく、ガラス繊維強化プラスチックの量を増加させる方策が考えられる。しかしながら、ガラス繊維強化プラスチックの量を過度に増加させると、今度は、曲げ引張破壊が先行して発生するセグメントから上記する脆性的な破壊が先行して発生するセグメントとなり、好ましくない。これに対して、本態様の易切削性セグメントは、母材内に所定量の鋼繊維が分散されていることにより、筋材を形成する繊維強化プラスチック(例えば、低剛性のガラス繊維強化プラスチック)の量を増加させることなく、セグメントの剛性を高めることが可能となり、曲げ引張破壊が先行して発生する易切削性セグメントを形成できる。
ここで、母材のコンクリート設計基準強度が、42N/mm乃至60N/mmの範囲にあることにより、トンネル標準示方書[シールド工法編]・同解説 2016年にある、セグメントに適用されるコンクリートの設計基準強度を充足する。
【0011】
また、鋼繊維の混入率(容積百分率のことであり、セグメントの全体体積に対する鋼繊維の全体体積)が、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲にあることにより、コンクリートプラントにおいてセグメントを製作する際の製作性と、鋼繊維によるセグメント補強効果を担保することができる。
【0012】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記鋼繊維が分散された前記母材のひび割れ発生後の最大引張応力が、前記母材のみからなるプレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、鋼繊維が分散された母材の応力−ひずみ特性を向上させることができ、ひび割れ発生後の最大引張応力を、プレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きくすることができる。
【0013】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記繊維強化プラスチックの破断時のひずみレベルにおける、前記鋼繊維が分散された前記母材の引張応力が0N/mmよりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、筋材を形成する繊維強化プラスチックが破断する際のひずみレベルにおいても、母材と鋼繊維が協同することにより、鋼繊維が分散されている母材の引張応力をゼロより大きくすることができ、作用する曲げモーメントに抵抗することができる。
【0014】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、
母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、該母材の内部に鋼繊維が分散されており、
前記鋼繊維が分散された前記母材のひび割れ発生後の最大引張応力が、前記母材のみからなるプレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、鋼繊維が分散された母材の応力−ひずみ特性を向上させることができ、ひび割れ発生後の最大引張応力を、プレーンコンクリートの最大引張応力よりも大きくすることができる。
【0015】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、
母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、該母材の内部に鋼繊維が分散されており、
前記繊維強化プラスチックの破断時のひずみレベルにおける、前記鋼繊維が分散された前記母材の引張応力が0N/mmよりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、コンクリートからなる母材に鋼繊維が分散されていることにより、筋材を形成する繊維強化プラスチックが破断する際のひずみレベルにおいても、母材と鋼繊維が協同することにより、鋼繊維が分散されている母材の引張応力をゼロより大きくすることができ、作用する曲げモーメントに抵抗することができる。
【0016】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記筋材が、ガラス繊維強化プラスチックのロッド、アラミド繊維強化プラスチックのロッド、中弾性炭素繊維強化プラスチックのロッド、のいずれか一種により形成されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、筋材が、ガラス繊維強化プラスチック等(弾性係数は30kN/mm乃至120kN/mmの範囲にあって低剛性である)のロッドにて形成されていることにより、高価な高弾性炭素繊維強化プラスチックからなる筋材を含まず、従って製作コストが可及的に安価となり、ロッドが低剛性であることに起因して切削性に優れた易切削性セグメントを形成できる。
【0018】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記鋼繊維が、直線状の中央棒材と、該中央棒材の両端にある一以上の段状フック材と、を有することを特徴とする。
本態様によれば、鋼繊維が、直線状の中央棒材の両端において一以上の段状フック材を有していることにより、母材に対する鋼繊維の付着性が高められる結果、低剛性の繊維強化プラスチックからなる筋材を備える易切削性セグメントの応力−ひずみ特性が向上し、ひび割れ分散性の向上に起因して止水性が高められる。
【0019】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様において、前記易切削性セグメントは、二つのリング継手面と二つのセグメント継手面を有し、
前記リング継手面において、ほぞと、該ほぞが嵌まり込むほぞ溝のいずれか一方を備えており、
リング継ぎされる二つの前記易切削性セグメントの一方の該易切削性セグメントの前記ほぞ溝に対して、他方の該易切削性セグメントの前記ほぞが嵌まり込むようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、リング継ぎされる二つの易切削性セグメントのうちの一方の易切削性セグメントのほぞ溝に対して、他方の易切削性セグメントのほぞが嵌まり込むようになっていることにより、セグメント継手面における曲げモーメントを、リング継手面のほぞ及びほぞ溝の係合構造を介して隣接する易切削性セグメントに効果的に伝達することができる。
【0020】
また、本発明による易切削性セグメントの他の態様は、前記ほぞの表面に、シェアストリップが取り付けられていることを特徴とする。
本態様によれば、ほぞの表面にシェアストリップが取り付けられ、従ってほぞとほぞ溝の界面にシェアストリップが介在することにより、せん断力を緩衝させて均等に伝達することができ、このことにより、ほぞが局所的に当たって破壊されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の易切削性セグメントによれば、製作コストが可及的に安価であり、切削性と耐荷性、及び止水性に優れた易切削セグメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る易切削性セグメントの一例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る易切削性セグメントの一例の内部構造を示す透視図である。
図3】各種筋材の引張応力−ひずみ関係グラフを示す図である。
図4】鋼繊維の一例の斜視図である。
図5】各種セグメントの曲げモーメント−曲率関係グラフを示す図である。
図6A】比較形態(ガラス繊維強化プラスチックのロッドのみが埋設されている)の易切削性セグメントに生じるひび割れの一例を示す模式図である。
図6B】実施形態の易切削性セグメントに生じるひび割れの一例を示す模式図である。
図7A】実施形態に係る易切削性セグメントのリング継手面に設けられている、ほぞ溝を拡大して示す図である。
図7B】実施形態に係る易切削性セグメントのリング継手面に設けられている、ほぞを拡大して示す図である。
図8】ほぞとほぞ溝の係合構造を示す縦断面図である。
図9】破壊エネルギー試験の試験概要図である。
図10】載荷荷重−ひび割れ開口変位関係グラフを示す図である。
図11】引張応力−ひび割れ幅関係グラフを示す図である。
図12】引張応力−ひずみ関係グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係る易切削性セグメントについて、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0024】
[実施形態に係る易切削性セグメント]
まず、図1乃至図8を参照して、実施形態に係る易切削性セグメントの一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る易切削性セグメントの一例を示す斜視図であり、図2は、実施形態に係る易切削性セグメントの一例の内部構造を示す透視図である。また、図4は、鋼繊維の一例の斜視図である。さらに、図7A図7Bはそれぞれ、実施形態に係る易切削性セグメントのリング継手面に設けられている、ほぞ溝とほぞを拡大して示す図であり、図8は、ほぞとほぞ溝の係合構造を示す縦断面図である。尚、図2では、母材に埋設されている鋼繊維の図示を省略している。また、図7及び図8では、母材に埋設されている筋材の図示を省略している。
【0025】
図示する易切削性セグメント10は、母材であるコンクリートの内部において、繊維強化プラスチックにより形成される筋材21,22,23と、分散された多数の鋼繊維30とを有する。易切削性セグメント10は施工対象のセグメントトンネルの曲率を有する湾曲状を呈し、一対のリング継手面11と一対のセグメント継手面12とを有する。
【0026】
母材のコンクリート設計基準強度は、42N/mm乃至60N/mmの範囲にあり、トンネル標準示方書[シールド工法編]・同解説 2016年にある、セグメントに適用されるコンクリートの設計基準強度を充足している。
【0027】
また、図2に示すように、母材のコンクリート内には、易切削性セグメント10に作用する曲げモーメントに対して引張抵抗する主筋21(内側主筋及び外側主筋)と、配力筋22と、組立筋23が配設されている。ここで、各筋材21,22,23は、繊維強化プラスチックにより形成されており、より詳細には、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)のロッド、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP:Aramid Fiber Reinforced Plastics)のロッド、中弾性炭素繊維強化プラスチック(中弾性CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)のロッドのいずれか一種により形成され、高弾性炭素繊維強化プラスチックのロッドは適用されない。
【0028】
図3に示すように、これらの繊維強化プラスチックの弾性係数は、30kN/mm乃至120kN/mmの範囲にあり、弾性係数が200kN/mm程度の鉄筋や、鉄筋と同等の弾性係数を有する高弾性炭素繊維強化プラスチックに比べて低剛性のロッドとなる。このように、低剛性のロッドからなる筋材21,22,23を有することにより、易切削性セグメント10の切削性が良好になる。また、材料コストの高価な高弾性炭素繊維強化プラスチックを適用しないことにより、易切削性セグメント10の製作コストを可及的に安価にできる。
【0029】
ところで、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドからなる筋材21,22,23のみが母材に埋設される形態では、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドが低剛性であることから、ひび割れ幅の大きなひび割れが生じ易くなり、止水性が低下し得る。そこで、易切削性セグメント10では、多数の鋼繊維30が母材内に分散された構成を適用している。より詳細には、混入率が0.3体積%乃至1.0体積%の範囲の鋼繊維30が母材内に分散されている。
【0030】
図4に示すように、鋼繊維30は、直線状の中央棒材31と、中央棒材31の両端にある一以上の段状フック材32とを有する。鋼繊維30が、直線状の中央棒材31の両端において一以上の段状フック材32を有していることにより、母材に対する鋼繊維の付着性が高められ、低剛性の繊維強化プラスチックからなる筋材21,22,23を備える易切削性セグメント10の応力−ひずみ特性を向上させることができる。また、鋼繊維30の架橋効果に起因してひび割れ分散性が良好になり、発生し得るひび割れのひび割れ幅を可及的に抑制することができ、止水性が向上する。
【0031】
ここで、鋼繊維30としては、1800N/mm程度の高い引張強度を有する高性能鋼繊維(HPSF:High Performance steel Fiber)の適用が好ましい。尚、図示例の鋼繊維30の有する段状フック材32は略Z型を有しているが、図示例以外にも、例えば二以上の略Z型の多段状の段状フック材等、様々な形状形態の段状フック材が適用できる。また、図示例の鋼繊維30の中央棒材31は直線状を呈しているが、ジグザグ型や波型、曲線型などの形態であってもよい。
【0032】
鋼繊維30の混入率が、0.3体積%乃至1.0体積%の範囲にあることにより、コンクリートプラントにおいてセグメントを製作する際の製作性と、鋼繊維によるセグメント補強効果の双方を担保することができる。すなわち、鋼繊維30の混入率が0.3体積%未満の場合は、セグメントの全域に対して耐荷性や止水性を保証するのに十分な鋼繊維を分散できないことから、鋼繊維30の混入率を0.3体積%以上に規定する。一方、鋼繊維の混入率が1.0体積%を超えると、スランプロスにより、所定のスランプ(例えば、5cm±1.5cm)が確保された易切削性セグメントを製造できないことから、プラントにおけるセグメント製作性の観点より鋼繊維30の混入率を1.0体積%以下に規定する。
【0033】
また、母材内に鋼繊維30が混入されることにより、易切削性セグメント10が脆性的な曲げ圧縮破壊やせん断破壊が先行して発生するセグメントとならない効果が奏される。易切削性セグメント10は、低剛性のガラス繊維強化プラスチック等のロッドからなる筋材21,22,23を備えているが、セグメントの剛性を高めてひび割れ幅を抑制しようとした場合に、ガラス繊維強化プラスチック等の量を増加させる方策が考えられる。しかしながら、ガラス繊維強化プラスチック等の量を過度に増加させると、今度は、曲げ引張破壊が先行して発生するセグメントから上記する脆性的な破壊が先行して発生するセグメントになり、好ましくない。これに対して、易切削性セグメント10は、母材内に所定量の鋼繊維が分散されていることにより、筋材21,22,23を形成する低剛性のガラス繊維強化プラスチック等の量を増加させることなく、易切削性セグメント10の剛性を高めることが可能となり、曲げ引張破壊が先行して発生する易切削性セグメントを形成できる。
【0034】
また、母材のコンクリート内に、ガラス繊維強化プラスチック等のロッドからなる筋材21が埋設され、さらに所定量の鋼繊維30が分散していることにより、図5に示すように、一般のRCセグメントのM−φ特性(実線グラフ)よりも優れたM−φ特性(点線グラフ)を有し、高い耐荷性を有する易切削性セグメントが形成される。
【0035】
ここで、図6A図6Bを参照して、鋼繊維30の架橋効果によるひび割れ分散性及び止水性の向上について説明する。ここで、図6A及び図6Bはそれぞれ、比較形態(ガラス繊維強化プラスチックのロッドのみが埋設されている)と実施形態の易切削性セグメントに生じるひび割れの一例を示す模式図である。
【0036】
図6Aに示すように、ガラス繊維強化プラスチックのロッドからなる筋材21のみが埋設されている易切削性セグメントでは、筋材21の剛性が低いことに起因して、発生するひび割れc1のひび割れ幅w1が一般に大きくなる。
【0037】
これに対して、図6Bに示すように、易切削性セグメント10では、母材内に多数の鋼繊維30が分散していることにより、鋼繊維30の架橋効果によってひび割れ分散性が向上し、各ひび割れc2のひび割れ幅w2を図6Aに示すひび割れc1のひび割れ幅w1に比べて格段に抑制することが可能になる。
【0038】
母材の内部に繊維強化プラスチックによる筋材21と鋼繊維30が埋設されていることにより、曲げモーメントに対して引張抵抗する主筋としての筋材21のみを配筋し、鋼繊維30に配力筋22(もしくはフープ筋等)の機能を発揮させることにより、配力筋22や組立筋23を省略することも可能になる。
【0039】
図1に戻り、易切削性セグメント10は、一方のリング継手面11にほぞ溝13を備え、他方のリング継手面11にほぞ14(図7B参照)を備えている。図示例では、一方のリング継手面11に三つのほぞ溝13が設けられており、他方のリング継手面11のうち、三つのほぞ溝13に対応する位置に三つのほぞ14が設けられている。従って、リング継ぎされる一方の易切削性セグメント10の三つのほぞ溝13に対して、他方の易切削性セグメント10の三つのほぞ14がそれぞれ係合される。尚、リング継手面11に設けられるほぞ溝13やほぞ14の数は、図示例に限定されない。
【0040】
セグメント継手面12においては、例えば突き合わせ継手が適用される。図2に示すように、一方の易切削性セグメント10に埋設されている樹脂製の組立用インサート26に対して、他方の易切削性セグメント10側から同様に樹脂製の組立用斜めボルト25を挿入してねじ込むことにより、突き合わせ継手が形成される。また、リング継手面11においては、複数(図示例は三つ)の部分ほぞ継手が適用でき、セグメント継手面12における曲げモーメントを、リング継手面11のほぞ14及びほぞ溝13の係合構造(図8参照)を介して、隣接する易切削性セグメント10に効果的に伝達することができる。尚、セグメント継手には、突き合わせ継手以外の多様な形態の継手が適用できる。
【0041】
ここで、図7A及び図7Bを参照して、ほぞ溝とほぞの形状形態の一例について説明する。図7Aに示すように、ほぞ溝13は、リング継手面11から平面視トラック状に窪むテーパー側面13bと、テーパー側面13bの底にある平面視トラック状の底部平坦面13aとを有する。さらに、リング継手面11には、例えばクロロプレン合成ゴム製の水膨張性シール材16が取り付けられている。
【0042】
一方、図7Bに示すように、ほぞ14は、リング継手面11から平面視トラック状に張り出してほぞ溝13のテーパー側面13bに相補的なテーパー側面14bと、テーパー側面14bの頂部において平面視トラック状に広がって底部平坦面13aに嵌まり込む頂部平坦面14aとを有する。また、ほぞ14の表面には、複数(図示例は二つ)のシェアストリップ15が取り付けられている。
【0043】
図8に示すように、リング継ぎされる二つの易切削性セグメント10の一方の易切削性セグメント10のほぞ溝13に対して、他方の易切削性セグメント10のほぞ14が嵌まり込むことにより、双方のリング継手面11において、ほぞ溝13とほぞ14の係合構造が形成される。対向するリング継手面11,11の間の隙間は、水膨張性シール材16によりシールされることにより、止水性が保証される。また、ほぞ溝13とほぞ14の係合構造における隙間には、シェアストリップ15が圧接された状態で介在する。
【0044】
ほぞ溝13とほぞ14が相互に係合するリング継手面11にせん断力Sが作用すると、ほぞ溝13のテーパー側面13bと底部平坦面13aの境界を起点とする押し抜きせん断面Lが形成され得る。しかしながら、易切削性セグメント10では、多数の鋼繊維30がこの押し抜きせん断面Lを介してその左右の領域に跨がるように分散している。このことにより、押し抜きせん断面Lに沿う方向の押し抜きせん断力S1に対して多数の鋼繊維30が抵抗することとなり、易切削性セグメント10のリング継手面11の近傍におけるせん断耐力が向上し、押し抜きせん断破壊を抑制することができる。
【0045】
また、ほぞ溝13とほぞ14の係合構造における隙間に配設されたシェアストリップ15によってせん断力を緩衝させて均等に伝達することができ、このことにより、ほぞ14が局所的に当たって破壊されることを抑制できる。
【0046】
尚、適用されるリング継手としては、図示例のほぞタイプの継手の他にも、ワンタッチ式の継手をはじめとして様々な形態の継手が適用されてもよい。例えばワンタッチ式の継手では、一方のセグメントのリング継手面に設けられている雌側継手に対して、他方のセグメントのリング継手面に設けられている雄側継手を例えば押し込むこと等により、リング継手が形成される。この形態のリング継手を易切削性セグメントに適用する場合は、雌側継手と雄側継手の双方を切削容易な樹脂製の継手とするのがよい。
【0047】
このように、易切削性セグメント10によれば、低剛性のガラス繊維強化プラスチックのロッド等により形成される筋材21等がコンクリートの母材内に埋設されていることにより、可及的に安価な製作コストの下で、切削性に優れた易切削性セグメントが得られる。
【0048】
また、母材内に、低剛性の筋材21等に加えて高い引張強度と定着性能を備える所定量の鋼繊維30が分散していることにより、高い耐荷性を有し、脆性的な曲げ圧縮破壊やせん断破壊が先行して発生せずに曲げ引張破壊が先行して発生し、さらには、ひび割れ分散性に優れ、もって高い止水性を有する易切削性セグメントが得られる。
【0049】
[破壊エネルギー試験とその結果]
次に、図9乃至図12を参照して、本発明者等により実施された破壊エネルギー試験とその結果について説明する。
【0050】
<試験概要>
コンクリートの設計基準強度:f'ck=60N/mm2(コンクリートの実強度:f'c=76.9N/mm2)、高性能鋼繊維(Dramix(登録商標) 4D 80/60BG、BEKAERT社製)、繊維混入率1.0vol.%の条件で、破壊エネルギー試験を試験体4本で行った。破壊エネルギー試験概要図を図9に示す。この試験装置では、二つのローラー支承上に試験体を載置して二点支持させ、試験体の下面中央に切欠きを予め設けておき、試験体の上面中央に試験機ヘッドにて載荷荷重Pを作用させた。各試験体に破壊エネルギー試験を実施し、載荷荷重−ひび割れ開口変位(CMOD)の関係を計測した。四つの試験体の関係グラフと、それらの関係グラフの平均値グラフを図10に示す。尚、図10において、縦軸の値は、載荷荷重を設計ひび割れ発生荷重にて除すことにより正規化している。ここで、設計ひび割れ発生荷重:Pは、以下の方法により算定した。すなわち、曲げひび割れ強度の特性値:fbckを繊維補強コンクリートの材料係数にて除すことにより曲げひび割れ強度の設計値:fbcdを算定し、この曲げひび割れ強度の設計値:fbcdと試験体の断面係数:Zを乗じた値を部材係数にて除すことにより設計ひび割れ発生曲げモーメント:Mを算定した。そして、この設計ひび割れ発生曲げモーメント:Mと、試験体における支承−荷重載荷点との距離とにより、設計ひび割れ発生荷重:Pを算定している。
【0051】
<逆解析>
破壊エネルギー試験で計測した載荷荷重−ひび割れ開口変位(CMOD)関係を用いて逆解析を行い、引張応力―ひび割れ幅の関係(引張軟化曲線)を推定した。ここでは、試験体4体での平均値を用いて逆解析を行った。試験体4体での平均値(P−CMOD)を用いて、逆解析により推定した引張軟化曲線を、モデル化平均曲線とし、モデル化平均曲線に低減係数を考慮することで、試験結果のバラつきを危険確率5%に補正した引張軟化曲線を、特性化曲線とした。
【0052】
コンクリートの引張強度の算定方法は、コンクリート標準示方書・設計編 2017年[本編]5.3.1によれば、一般のコンクリートの圧縮強度の特性値:f'ck(設計基準強度)に基づいて、ftk=0.23f'ck2/3N/mm2で表すことができる。尚、この式は、f'ckが20〜50N/mm2程度の普通コンクリートのみならず、f'ckが80N/mm2程度以下のコンクリートにも適用できる。
【0053】
<コンクリートの低減係数>
次に、コンクリートの低減係数の設定方法について説明する。繊維の分散性及び配向性により、試験結果にバラつきが生じるため、十分な試験結果に基づいて低減係数を定める必要がある。しかしながら、Dramix 4D 80/60BG 1.0vol.%の試験体は4体であり、十分な試験結果ではない。
【0054】
一方、既往の実験はBUNDREX(登録商標) 60/30 0.4vol.%:KOSTEEL社製の試験体124体で行っており、実験より得られた引張軟化曲線より、開口幅1mmまでの破壊エネルギーの実験データを正規分布と仮定し、危険確率5%となる特性値を0.79N/mm2と定めている。これより、設計に用いる引張軟化曲線は、破壊エネルギーの平均値に対する低減率(β=0.79/1.33=0.59)を用いてモデル化した平均軟化曲線を特性値化して定めたものである。この低減率(β=0.59)を低減係数として用いるものとする。
【0055】
<引張軟化曲線>
モデル化平均曲線に対して、上記するコンクリートの低減係数を乗じることにより引張軟化曲線を求めた。図11に、モデル化平均曲線と、求められた引張軟化曲線を示す。
【0056】
尚、図11において、コンクリートの引張強度:ft=0.23f'c2/3、f'c=76.9N/mm2とし、ftの正規化値=0.98とした。
【0057】
<引張応力−ひずみ曲線>
次に、図11に示す引張軟化曲線を用いて、引張応力−ひずみ曲線を設定した。ここで、ひずみεとひび割れ幅w(mm)の間には、ひずみε=ひび割れ幅w(mm)/ひび割れ間隔Lcr(mm)の関係があり、ひび割れ間隔を実験の配筋仕様からLcr=247mmと設定することにより、図12に示す引張応力−ひずみ曲線が求められる。尚、図11図12における縦軸は、引張応力に対して繊維補強コンクリートの材料係数を見込んだ値を、コンクリートの引張強度の特性値:ftkにて正規化した値である。
【0058】
図12において、ひび割れは、ひずみ100μ程度で発生する。また、プレーンコンクリートの引張強度の正規化値に低減係数βを乗じた値の正規化値は0.58である。
【0059】
図示する引張応力−ひずみ曲線では、ひび割れ発生の際のひずみレベルまでは引張応力が線形的に増加し、その後、ひび割れの発生に伴い引張応力が僅かに低下した後、鋼繊維による引張力が作用することに起因して引張応力が増加し、プレーンコンクリートの引張応力よりも大きな引張応力となる傾向を示す。そして、例えば少なくともひずみ5000μ(ひび割れ幅として1.5mm程度)までの範囲において、鋼繊維が分散された母材のひび割れ発生後の最大引張応力が、母材のみからなるプレーンコンクリートの最大引張応力以上の引張応力を有することができ、ひび割れを効果的に抑制できることが特定されている。
【0060】
また、GFRPの破断ひずみ(引張強度/弾性係数)の範囲を求めると、公称径(φ8)の場合に、1205/70100=17200μとなり、公称径(φ12)の場合に、1170/58500=20000μとなる。そして、このGFRPの破断ひずみ範囲(曲げ耐力向上範囲)においても、鋼繊維が分散された母材の引張応力が0N/mm2よりも大きくなることが特定されている。
【0061】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0062】
10:易切削性セグメント
11:リング継手面
12:セグメント継手面
13:ほぞ溝
13a:底部平坦面
13b:テーパー側面
14:ほぞ
14a:頂部平坦面
14b:テーパー側面
15:シェアストリップ
16:水膨張性シール材
21:筋材(主筋)
22:筋材(配力筋)
23:筋材(組立筋)
25:組立用斜めボルト
26:組立用インサート
30:鋼繊維
31:中央棒材
32:段状フック材
c1,c2:ひび割れ
w1,w2:ひび割れ幅
【要約】      (修正有)
【課題】製作コストが可及的に安価であり、切削性と耐荷性、及び止水性に優れた易切削セグメントを提供する。
【解決手段】易切削性セグメント10は、母材であるコンクリートの内部に、繊維強化プラスチックにより形成される筋材が埋設され、母材の内部に鋼繊維30が分散されており、母材のコンクリート設計基準強度が42N/mm乃至60N/mmの範囲にあり、鋼繊維30の混入率が0.3体積%乃至1.0体積%の範囲にあり、繊維強化プラスチックの弾性係数が30kN/mm乃至120kN/mmの範囲にある。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12