特許第6893012号(P6893012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6893012肺高血圧症の治療におけるカンナビジオールの応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893012
(24)【登録日】2021年6月2日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】肺高血圧症の治療におけるカンナビジオールの応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20210614BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20210614BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20210614BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   A61K31/05
   A61P11/00
   A61P9/12
   A61K36/185
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-502341(P2020-502341)
(86)(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公表番号】特表2020-528055(P2020-528055A)
(43)【公表日】2020年9月17日
(86)【国際出願番号】CN2017093367
(87)【国際公開番号】WO2019014851
(87)【国際公開日】20190124
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】520013755
【氏名又は名称】徳義制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】DEYI PHARMARMACEUTICAL LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】張可
(72)【発明者】
【氏名】譚▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】于朝暉
(72)【発明者】
【氏名】李向東
【審査官】 梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】 BURSTEIN, S. ,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2015年,Vol.23, No.7,pp.1377-1385.
【文献】 飴嶋 慎吾,分子心血管病,2008年,Vol.9, No.4,pp.29(355)-34(360).
【文献】 糸井 利幸,京都府立医科大学雑誌,2010年,Vol.119, No.4,pp.225-235.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/05
A61K 36/185
A61P 9/12
A61P 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(3)から選ばれるいずれか1項の、肺高血圧症を治療及び/又は予防す
る医薬品の調製における使用。
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物。
【請求項2】
前記肺高血圧症は、原発性肺高血圧症又は二次性肺高血圧症である、ことを特徴とする
求項1に記載の肺高血圧症を治療及び/又は予防する医薬品の調製における使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、肺高血圧症の治療におけるカンナビジオールの応用に関する
【背景技術】
【0002】
肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension、PA
H)は、病因が複雑であり、複数種の心臓、肺又は肺血管疾患により引き起こされる。肺
高血圧症は、肺細動脈血管リモデリング、肺動脈平滑筋の増殖を病理学的特徴とし、その
症状として、肺循環の圧力及び抵抗の増加、右心負荷の増大、右心機能不全、肺血流量の
減少が発生して、その結果、一連の臨床症状を引き起こし、肺高血圧症の病気の経過には
、通常、進行性発展が認められる。特に動脈血管緊張の強化による右心不全は、人間の生
命と健康に対する深刻な脅威である。
【0003】
肺高血圧症は、原発性と二次性の2種に分けられる。肺高血圧症の理解が深まるに伴い、
2003年に、世界保健機関(WHO)の「肺高血圧症会議」では、病因、病態生理、治
療計画及び予後の特徴によって肺高血圧症を分類し、2004年に、米国胸部専門医学会
(ACCP)及び欧州心臓病学会(ESC)は、それについて改訂し、この分類方法は、
肺高血圧症患者に対する治療には、指針意義がある。穏やかな状態で右心カテーテルを用
いて測定した平均肺動脈圧が25mmHg以上であると、肺高血圧症であると考えられる
。26−35mmHgを軽度、36−45mmHgを中度、>45mmHgを重度とする
ように、安静時PAPmによって肺高血圧症が級分けされる。
【0004】
肺高血圧症は、主に肺動脈と右心に関係し、その症状として、右心室肥大、右心房拡張、
肺動脈幹拡張、末梢肺細動脈がまばらになること、肺細動脈内皮細胞および平滑筋細胞の
増殖・肥大、血管内膜が線維化して厚くなること、中膜肥厚、管腔の狭化、閉塞、歪み及
び変形、叢状病変が認められる。肺細静脈にも、内膜性線維増殖および管腔閉塞が出現す
ることがある。肺高血圧症患者の他の症状には、肺動脈外膜と静脈の肥大、TGF−β発
現上昇、及びエラスチン、フィブロネクチン、シトクロムCやムコ多糖などのマトリック
スタンパク質の発現上昇が含まれる。
【0005】
肺高血圧症は、治療できる疾患であるが、現在、特に有効な治癒方法がなかった。従来の
治療方法には、酸素吸入、強心、利尿、カルシウムチャネル遮断薬や抗凝固剤を用いた補
助治療などが含まれ、主に症状を緩和させる作用を果たす。
【0006】
近年、標的療法用の医薬品の研究開発及び普及(主に、プロスタサイクリン類医薬品、エ
ンドセリン受容体拮抗剤、ホスホジエステラーゼ−5阻害剤、及び新しく研究している可
溶性グアニル酸シクラーゼアゴニスト、5−セロトニン輸送体阻害剤、成長因子阻害剤、
Rhoキナーゼ阻害剤などを含む)及び生体肺移植などの治療方法は、患者の予後を大幅
に改善する。
【0007】
これら医薬品は、一定の程度でPAHの症状を緩和することができるが、今のところ、肺
高血圧症は、治癒できず且つ死亡率が高い疾患であり、治療を受ける場合、患者の生存期
間中央値は、2.7年しかなく、現在、肺高血圧症に対して特に有効な治癒方法がなく、
このため、新しい特異的治療薬を見つけることが特に急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、鋭意研究及び創造的な努力を行った結果、驚くことに、カンナビジオールが
肺高血圧症を効果的に阻害でき、特に低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症の治療
に適用することを見出した。それによって、下記発明を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、以下の(1)〜(3)から選ばれるいずれか1項の肺高血圧症を治療
及び/又は予防する医薬品の調製における用途に関する。
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、好ましくは、大麻抽出物、たとえば産業
用大麻抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物。
【0010】
本発明の一実施態様では、前記用途において、前記肺高血圧症は、原発性肺高血圧症又は
二次性肺高血圧症、好ましくは、肺動脈性肺高血圧症(たとえば、特発性肺高血圧症、遺
伝性肺高血圧症、医薬品及び毒物により引き起こされる肺高血圧症又は新生児持続性肺高
血圧症)、左心疾患関連肺高血圧症(たとえば、収縮期心不全により引き起こされる肺高
血圧症、拡張機能障害により引き起こされる肺高血圧症、弁膜症により引き起こされる肺
高血圧症)、肺疾患により引き起こされる肺高血圧症(たとえば、慢性閉塞性肺疾患によ
り引き起こされる肺高血圧症、肺気腫により引き起こされる肺高血圧症又は間質性肺疾患
により引き起こされる肺高血圧症)、低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症(たと
えば、睡眠時無呼吸症候群により引き起こされる肺高血圧症、慢性高山病により引き起こ
される肺高血圧症、たとえば高地心臓病)又は慢性血栓塞栓性肺高血圧症、より好ましく
は、低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症である。
【0011】
カンナビジオール(Cannabidiol、 CBD)は、カンナビノイドのうちの1
種であり、その構造式が以下の式Iに示される。
式I
前記カンナビジオールである式I化合物は、市販品として購入でき(たとえば、Sigm
aなどから購入)又は市販原料を用いて従来技術により合成することができる。合成後、
カラムクロマトグラフィー法、液液抽出法、分子蒸留方法又は結晶化などの方法によりさ
らに精製し得る。また、カンナビジオールは、大麻、特に産業用大麻から抽出されてもよ
い。
【0012】
本発明では、実験により研究したところ、本発明の前記カンナビジオール及び上記化合物
は、低酸素症及び薬物誘導により引き起こされる肺高血圧症動物モデルに対して顕著な治
療作用を有する。
【0013】
カンナビジオールの薬学的に許容可能な塩は、有機アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナ
トリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、ストロンチウム塩、
カルシウム塩)などを含むが、これらに制限されない。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、カンナビジオールの薬学的に許容可能な塩は、カンナ
ビジオール(CBD)と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸
化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化バリウム、
アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルピリジン、エタノ
ールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、
アルギニン、オルニチン、コリン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロ
カイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、N−メチル
グルコサミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンなどとで形成され
る塩であってもよい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、カンナビジオールの薬学的に許容可能なエステルは、
カンナビジオールと1つのC−Cアルキルカルボン酸とで形成されるモノエステルで
あってもよく、カンナビジオールと同じ又は異なる2つのC0−アルキルカルボン酸
とで形成されるジエステルであってもよく、前記C−Cアルキルカルボン酸は、直鎖
アルキルカルボン酸、分岐アルキルカルボン酸又は環状アルキルカルボン酸、たとえば、
HCOOH、CHCOOH、CHCHCOOH、CH(CHCOOH、C
(CHCOOH、CH(CHCOOH、(CHCHCOOH、
(CHCCOOH、(CHCHCHCOOH、(CHCH(CH
COOH、(CHCH(CH)CHCOOH、(CHCCHCOO
H、CHCH(CHCCOOH、シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカ
ルボン酸、シクロペンタンカルボン酸であってもよい。
【0016】
前記大麻抽出物は、カンナビジオールを含有する大麻、特に産業用大麻的抽出物、たとえ
ば、エタノール抽出液、エキスなどであってもよい。ここで、カンナビジオールの含有量
について特に限定がなく、さらに、当業者が公知する手段、たとえば濃縮などにより大麻
抽出物中のカンナビジオールの含有量をさらに向上することができる。本発明の一実施態
様では、前記大麻抽出物は、エキスであり、好ましくは、カンナビジオールの含有量が1
8%−25%である。
【0017】
本発明の別の態様は、以下の(1)〜(3)から選ばれるいずれか1項の炎症を阻害する
医薬品、炎症性因子の発現を阻害する医薬品又は炎症誘発性遺伝子(たとえば、Mgl
遺伝子)の発現を阻害する医薬品の調製における用途に関する。
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、好ましくは、大麻抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物。
【0018】
本発明の一実施態様では、前記用途において、前記炎症は、慢性低悪性度炎症である。
【0019】
本発明の一実施態様では、前記用途において、前記炎症性因子は、TNF−α及びIL−
6、特にヒトTNF−α及びヒトIL−6から選ばれる。
【0020】
本発明の別の態様は、カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステルを含
み、又はカンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステルを含有する植物抽
出物(たとえば、大麻抽出物)、及び1種以上の薬学的に許容可能な補助材を含む医薬品
組成物に関する。
【0021】
本発明の一実施態様では、前記医薬品組成物において、カンナビジオールは、唯一の活性
成分である。本発明の別の実施態様では、カンナビジオールと肺高血圧症を予防及び治療
する他の1種以上の既知の活性成分とを併用する。
【0022】
本発明の一実施態様では、前記医薬品組成物において、前記医薬品組成物は、プロスタサ
イクリン類医薬品、エンドセリン受容体拮抗剤、ホスホジエステラーゼ−5阻害剤、可溶
性グアニル酸シクラーゼアゴニスト、5−セロトニン輸送体阻害剤、成長因子阻害剤及び
Rhoキナーゼ阻害剤から選ばれるいずれか1種又は複数種をさらに含む。
【0023】
本発明の一実施態様では、前記医薬品組成物において、
前記プロスタサイクリン類医薬品は、ベラプロスト(Benapnost)、トレプロス
チニル(Treprostinil)、イロプロスト(iloprost)及びベンテイ
ビス(Ventavis)から選ばれるいずれかの1種又は複数種であり、
前記エンドセリン受容体拮抗剤は、ボセンタン(Bosentan)であり、及び/又は
前記ホスホジエステラーゼ−5阻害剤は、シルデナフィル(Sildenafil)、バ
ルデナフィル(Vardenafil)及びタダラフィル(Tadalafil)から選
ばれる。
【0024】
前記医薬品組成物の製剤形態は、任意の薬学的に許容される剤形であってもよく、これら
剤形には、錠剤、糖コーティング錠剤、フィルムコーティング錠剤、腸溶性コーティング
錠剤、カプセル剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、経口液剤、トローチ剤、顆粒
剤、沖剤、丸剤、散剤、膏剤、丹剤、懸濁剤、粉末剤、溶液剤、注射剤、座剤、軟膏剤、
硬膏剤、クリーム剤、噴霧剤、滴剤、貼付剤が含まれ、好ましい経口剤形は、たとえば、
カプセル剤、錠剤、経口液剤、顆粒剤、丸剤、散剤、丹剤、膏剤などである。前記経口剤
形は、一般的に使用されている賦形剤、たとえば粘着剤、充填剤、希釈剤、打錠剤、潤滑
剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤及び湿潤剤を含むことができ、必要に応じて錠剤を包衣して
もよい。適切な充填剤には、セルロース、マンニトール、乳糖や他の類似した充填剤が含
まれ、適切な崩壊剤には、澱粉、ポリビニルピロリドン及び澱粉誘導体、たとえば、デン
プングリコール酸ナトリウムが含まれ、適切な潤滑剤には、たとえば、ステアリン酸マグ
ネシウムが含まれる。薬学的に許容可能な適切な湿潤剤には、ドデシル硫酸ナトリウムが
含まれる。
【0025】
好ましくは、前記医薬品組成物は、経口製剤である。本発明者は、試験した結果、前記カ
ンナビジオールを用いて調製される医薬品を肺高血圧症に罹患したマウスに強制経口投与
すると、明らかな治療効果を有する。
【0026】
本発明の前記医薬品組成物の治療及び/又は予防上有効用量は、0.1−200mg/k
g体重/日である。本発明の前記医薬品組成物の有効用量は、好ましくは、0.1−10
0mg/kg体重/日であり、より好ましくは、0.1−50mg/Kg体重/日である
。ヒトに用いられる前記医薬品組成物の推薦される有効用量は、好ましくは、0.1−5
0mg/kg体重/日、より好ましくは、0.5−30mg/Kg体重/日である。前記
「治療及び/又は予防上有効用量」は、関連疾患の単剤又は併用薬による治療に適用でき
る。
【0027】
前記肺高血圧症を治療する医薬品組成物(薬剤)の好適使用方法は、経口であり、好適投
与量は、1日0.5−30mg/Kgである。
【0028】
本発明の別の態様は、製品1及び製品2を含み、
前記製品1は、
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、好ましくは、大麻抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物から選ばれるいずれか1項の製品であり

前記製品2は、プロスタサイクリン類医薬品、エンドセリン受容体拮抗剤、ホスホジエス
テラーゼ−5阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼアゴニスト、5−セロトニン輸送体阻
害剤、成長因子阻害剤及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれるいずれか1種又は複数種で
あり、且つ
前記製品1及び製品2は、それぞれ単独で包装され、
好ましくは、前記製品1及び製品2は、いずれも経口製剤の形態である。
本発明の一実施態様では、前記複合製品において、
前記プロスタサイクリン類医薬品は、ベラプロスト(Benapnost)、トレプロス
チニル(Treprostinil)、イロプロスト(iloprost)及びベンテイ
ビス(Ventavis)から選ばれるいずれか1種又は複数種であり、
前記エンドセリン受容体拮抗剤は、ボセンタン(Bosentan)であり、及び/又は
前記ホスホジエステラーゼ−5阻害剤は、シルデナフィル(Sildenafil)、バ
ルデナフィル(Vardenafil)及びタダラフィル(Tadalafil)から選
ばれる。
【0029】
本発明のさらなる態様は、肺高血圧症の治療及び/又は予防するための以下の(1)〜(
3)から選ばれるいずれか1項の製品に関する。
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、好ましくは、大麻抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物。
【0030】
本発明の一実施態様では、前記製品において前記肺高血圧症は、原発性肺高血圧症又は二
次性肺高血圧症、好ましくは、肺動脈性肺高血圧症(たとえば、特発性肺高血圧症、遺伝
性肺高血圧症、医薬品及び毒物により引き起こされる肺高血圧症又は新生児持続性肺高血
圧症)、左心疾患関連肺高血圧症(たとえば、収縮期心不全により引き起こされる肺高血
圧症、拡張機能障害により引き起こされる肺高血圧症、弁膜症により引き起こされる肺高
血圧症)、肺疾患により引き起こされる肺高血圧症(たとえば、慢性閉塞性肺疾患により
引き起こされる肺高血圧症、肺気腫により引き起こされる肺高血圧症又は間質性肺疾患に
より引き起こされる肺高血圧症)、低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症(たとえ
ば、睡眠時無呼吸症候群により引き起こされる肺高血圧症、慢性高山病により引き起こさ
れる肺高血圧症、たとえば高地心臓病)又は慢性血栓塞栓性肺高血圧症、より好ましくは
、低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症である。
【0031】
本発明のさらなる態様は、炎症、炎症性因子の発現又は炎症誘発性遺伝子(たとえば、M
gl遺伝子)の発現を阻害する以下の(1)〜(3)から選ばれるいずれか1項の製品
に関する。
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、好ましくは、大麻抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物。
本発明の一実施態様では、前記製品において、前記炎症性因子は、TNF−α及びIL−
6、特にヒトTNF−α及びヒトIL−6から選ばれる。
【0032】
本発明のさらなる態様は、ニーズがある受検者に以下の(1)〜(3)から選ばれるいず
れか1項の製品を有効量で投与するステップを含む肺高血圧症を治療及び/又は予防する
方法に関する。
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、好ましくは、大麻抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物。
【0033】
本発明の一実施態様では、前記方法において、前記受検者は、哺乳動物、特にヒトである
【0034】
本発明の一実施態様では、前記方法において、前記肺高血圧症は、原発性肺高血圧症又は
二次性肺高血圧症、好ましくは、肺動脈性肺高血圧症(たとえば、特発性肺高血圧症、遺
伝性肺高血圧症、医薬品及び毒物により引き起こされる肺高血圧症又は新生児持続性肺高
血圧症)、左心疾患関連肺高血圧症(たとえば、収縮期心不全により引き起こされる肺高
血圧症、拡張機能障害により引き起こされる肺高血圧症、弁膜症により引き起こされる肺
高血圧症)、肺疾患により引き起こされる肺高血圧症(たとえば、慢性閉塞性肺疾患によ
り引き起こされる肺高血圧症、肺気腫により引き起こされる肺高血圧症又は間質性肺疾患
により引き起こされる肺高血圧症)、低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症(たと
えば、睡眠時無呼吸症候群により引き起こされる肺高血圧症、慢性高山病により引き起こ
される肺高血圧症、たとえば高地心臓病)又は慢性血栓塞栓性肺高血圧症、より好ましく
は、低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症である。
【0035】
本発明のさらなる態様は、ニーズがある受検者に以下の(1)〜(3)から選ばれるいず
れか1項の製品を有効量で投与するステップを含む炎症、炎症性因子の発現又は炎症誘発
性遺伝子(たとえば、Mgl遺伝子)の発現を阻害する方法に関する。
(1)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、
(2)カンナビジオールを含有する植物抽出物、好ましくは、大麻抽出物、及び
(3)カンナビジオール又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び1種以上の薬
学的に許容可能な補助材を含有する医薬品組成物。
【0036】
本発明の一実施態様では、前記方法において、前記炎症は、慢性低悪性度炎症である。
【0037】
本発明の一実施態様では、前記方法において、前記炎症性因子は、TNF−α及びIL−
6から選ばれる。
なお、活性成分であるカンナビジオールの使用量及び使用方法は、患者の年齢、体重、性
別、自然健康状況、栄養状況、化合物の活性強度、投与時間、代謝速度、病症の重篤度及
び治療する医師の主観的判断を含める多数の要因による。カンナビジオールの投与量(有
効量)は、好ましくは、0.1−50mg/kg体重/日、より好ましくは、0.5mg
/kg−30mg/kg体重/日、0.5mg/kg−20mg/kg体重/日、5mg
/kg−30mg/kg体重/日又は5mg/kg−20mg/kg体重/日、さらに好
ましくは、0.5mg/kg−10mg/kg体重/日、特に好ましくは、0.5mg/
kg−5mg/kg体重/日である。好ましくは、経口により投与する。
【0038】
本発明では、用語「有効量」とは、受検者において本発明の前記疾患又は病症を治療、予
防、低減及び/又は緩和することができる投与量である。
【0039】
用語「受検者」とは、患者、又は本発明の組成物を受けて本発明の前記疾患又は病症を治
療、予防、低減及び/又は緩和する他の動物、特に哺乳動物、たとえば、ヒト、イヌ、サ
ル、ウシ、ウマなどであってもよい。
【0040】
用語「疾患及び/又は病症」とは、前記受検者の1つの身体状態であり、この身体状態は
、本発明の前記疾患及び/又は病症に関連する。
【0041】
本発明では、用語「肺高血圧症」は、普通の高血圧とは完全に異なる疾患である。人間の
心臓は、左心系と右心系に分けられ、一般的に言われている高血圧は、全身へ血液を供給
する左心系からの動脈圧が上昇することを意味し、一方、特に肺部へ血液を供給する右心
系からの動脈は、肺動脈と呼ばれ、この動脈圧の上昇は、肺高血圧症と呼ばれる。
【0042】
肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension、PA
H)は、既知又は未知の原因により引き起こされる肺動脈内の圧力が異常に上昇する疾患
又は病態生理学的な症候群であり、肺循環障害及び右心高負荷があり、右心不全、さらに
死亡を引き起こす可能性があり、さらに、PAHの患者は、末期に心臓駆出機能障害のた
めに低血圧を発症する可能性がある。
【0043】
用語「高血圧」(hypertension)とは、全身循環の動脈血圧(収縮期血圧及
び/又は拡張期血圧)の上昇を主な特徴(収縮期血圧≧140mmHg水銀柱、拡張期血
圧≧90mmHg水銀柱)とし、心臓、脳、腎臓などの器官の機能又は器質的損傷が伴い
得る臨床症候群である。
【0044】
用語「TNF−α」とは、腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor
−α)であり、全身性炎症に関するサイトカインであり、急性期反応を引き起こす多数の
サイトカインのうちの1つでもあり、主にマクロファージから分泌される。腫瘍壊死因子
αの主な作用は、免疫細胞の機能を調整することにある。本発明では、特に断らない限り
、TNF−αとは、GenBank登録番号:NP_038721.1に示されるタンパ
ク質、又はそのTNF−α機能を有するフラグメントである。本発明の一実施態様では、
TNF−α遺伝子の核酸配列は、Gene ID:21926又はその縮退配列に示され
るとおりである。
【0045】
用語「IL−6」とは、サイトカインの1種であるインターロイキン6(Interle
ukin 6)であり、インターロイキンの1種である。それは、線維芽細胞、単球/マ
クロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、上皮細胞、ケラチノサイト又は複数種の腫瘍細
胞から生成し得る。インターロイキン6は、免疫反応に関与する細胞を刺激して増殖、分
化を促進してその機能を高めることができる。本発明では、特に断らない限り、IL−6
とは、GenBank登録番号:NP_001300983.1のタンパク質、又はその
IL−6機能を有するフラグメントである。本発明の一実施態様では、IL−6遺伝子の
核酸配列は、Gene ID:16193又はその縮退配列に示されるとおりである。
【0046】
用語「Mgl」とは、マクロファージガラクトースN−アセチル−ガラクトサミン特異
的レクチン2(macrophage galactose N−acetyl−gal
actosamine specific lectin 2)である。本発明では、特
に断らない限り、Mglとは、GenBank登録番号:NP_660119.1のタ
ンパク質、又はそのMgl機能を有するフラグメントである。本発明の一実施態様では
、Mgl遺伝子の核酸配列は、Gene ID:216864又はその縮退配列に示さ
れるとおりである。
【0047】
本発明では、特に断らない限り、前記製品1、製品2は、明瞭さのために過ぎず、順番を
示す意味がない。
【0048】
本発明では、特に断らない限り、大麻は、好ましくは、産業用大麻であり、大麻抽出物は
、好ましくは、産業用大麻抽出物である。
【発明の効果】
【0049】
本発明では、試験により研究したところ、カンナビジオールは、肺高血圧症を阻害する作
用を有することを見出し、カンナビジオールは、肺高血圧症に対して良好な治療作用を有
し、特に低酸素血症により引き起こされる肺高血圧症の治療に適用することが証明される
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】CBDは、低酸素によって引き起こされる右心室収縮期血圧の上昇を低下させる。N=10/群、値は、平均値±標準誤差であり、正常酸素野生群を参照とすると、***P<0.001である。低酸素野生群を参照とすると、###P<0.001である。
図2】CBDは、低酸素によって引き起こされる右心室肥大を低下させる。N=10/群、値は、平均値±標準誤差であり、正常酸素野生群を参照とすると、***P<0.001であり、低酸素野生群を参照とすると、###P<0.001である。
図3-ABCD】肺細動脈血管のHE染色(図3A−3D)の結果である。図3A−3Dのサンプルは、順次第1群−第4群のマウス肺組織のパラフィン切片である。
図3-EHFG】弾性繊維染色(図3E−3H)の結果である。図3E−3Hのサンプルは、順次第1群−第4群のマウス肺組織のパラフィン切片である。
図4】CBDは、低酸素によって引き起こされる血管リモデリング率を低下させる。N=10/群、値は、平均値±標準誤差であり、正常酸素野生群を参照とすると、**P<0.001であり、低酸素野生群を参照とすると、###P<0.01である。
図5】CBDは、インビトロLPSにより誘発されるプライマリ肺胞マクロファージの活性化を阻害する。値は、平均値±標準誤差であり、陰性対照群を参照とすると、P<0.05、**P<0.01であり、LPS処理群を参照とすると、P<0.05、##P<0.01である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例にて本発明の実施態様を詳細に説明するが、当業者にとって明らかなように
、以下の実施例は、本発明を説明するために過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして
はならない。実施例では、具体的な条件を明記しない場合、通常の条件又はマーカーが推
薦する条件で行われる。使用される試薬又は器具は、メーカーが記載されていない場合、
市販品として入手できる一般的な製品である。
【0052】
実施例1:低酸素症により引き起こされる高血圧症へのカンナビジオールの影響について
の試験
1. 実験動物、試薬及び器具
(1)実験動物
4−6週齢、健康で活発であり、毛に艶があり、体重(25.15±2.15)g、C5
7BL/6(軍事科学医学院実験動物センター、SPFグレード)。以下の4群に分けら
れる。
第1群(正常酸素野生型、対照群):正常酸素の条件下、雌マウス10匹、雄マウス10
匹;
第2群(低酸素野生型、対照群):低酸素の条件下、雌マウス10匹、雄マウス10匹;
第3群(10mg/kg、実験群):低酸素の条件下で強制的経口投与処理、10mg/
kg 雌マウス10匹、雄マウス10匹;
第4群(50mg/kg、実験群):低酸素条件下で強制的経口投与処理、50mg/k
g 雌マウス10匹、雄マウス10匹。
(2)投与方法
第2−4群マウスを常圧低酸素動物飼育室に入れて、室内の酸素濃度を9%−11%、室
内の温度を22−26℃に維持した。第1群マウスは、常圧空気を吸入させる以外、残り
の条件が第2−4群マウスと同様であった。
従来の研究結果から明らかなように、マウスを低酸素状態で14日間維持すると、右心室
収縮期血圧が明らかに上昇することを基準とする肺高血圧症モデルを作成することができ
る(Ricard, N., Tu, L., Le Hiress, M., Huertas, A
., Phan, C., Thuillet, R., Sattler, C., Fadel, E
., Seferian, A., Montani, D., et al. (2014). I
ncreased pericyte coverage mediated by end
othelial−derived fibroblast growth factor
−2 and interleukin−6 is a source of smooth m
uscle−like cells in pulmonary hypertension
. Circulation 129, 1586−1597.)。CBDが肺高血圧症に対
して治療作用を有するか否かを調べるために、本発明者は、まず、低酸素環境でマウスを
持続的に14日間処理し、起肺高血圧症のモデル(第2−4群)を作成し、次に、強制的
経口投与の投与方式で、15日目から21日目まで投与し、1日に1回投与し、7日間持
続して毎日マウス(第3−4群)を処理して、21日目に検査した。
具体的な検査ステップは、以下の第2部分「実験方法」に記載される。
(3)実験試薬
ペントバルビタールナトリウム(sigma)、カンナビジオール(雲南漢素生物科技有
限公司)、クリスタルバイオレット、ビクトリアブルーB(国薬集団化学試剤有限公司)
、ニューフクシン(東京化成工業株式会社)。
(4)実験器具
マルチチャンネル生理学レコーダ(BE−EH4) 北京拜安吉科技有限公司、OLYM
PUS顕微鏡(CX4)オリンパス(中国)有限公司(OCN)、低酸素箱(CJ−DO
2)長沙長錦科技有限公司;蛍光定量PCR機器(Light Cycler480II)
Roche Applied Science。
【0053】
2. 実験方法
(1)右心室収縮期血圧(RVSP)の測定
21日目に、マウスにペントバルビタールナトリウム(35mg/kg)を腹腔内注射し
て麻酔し、Songら(Song, Y., Jones, J.E., Beppu, H., K
eaney, J.F., Jr., Loscalzo, J., and Zhang, Y.Y
. (2005). Increased susceptibility to pulm
onary hypertension in heterozygous BMPR2−m
utant mice. Circulation 112, 553−562.)が報道し
た右心カテーテル法を参照して、生理学レコーダに備えるカテーテルを用いて右心室収縮
期血圧を測定した。カテーテルの末端をマルチチャンネル生理学レコーダの信号収集処理
システムに接続し、モニターに表示された血圧値と圧力曲線の波形の変動に基づいてカテ
ーテル先端の位置を判断した。カテーテルが右心室に入った後、RVSPを測定して記録
した。
(2)右心室肥大指数(RVH)の測定
Ryanらによる方法を用いて、マウスを麻酔した後、開胸して、心臓を摘出し、すべて
の血管及び心室を剥離して、右心室を切り取り、それぞれ右心室の重量と左心室の中隔の
重量を秤量し、右心室重量を左心室と膈の全重量で割った(RV/(LV+S))。
(3)HE染色
サンプル:マウス肺組織のパラフィン切片。
目的:肺組織の病理的結果から、血管壁が厚くなる現象があるか否かを判定する。
作成したパラフィン切片を55℃のオーブンに入れて10min放置した。
[1]パラフィン切片は、パラフィンを除去された後に、下へ移動して70%エタノールに
入った。
キシレンI:15min
キシレンII:7min
1:1キシレンエタノール溶液:5min
各段のエタノール:それぞれ5min
[2]ヘマトキシリン溶液で10−15min染色した。
[3]水道水で2min洗浄した。
[4]0.5%塩酸アルコール溶液で8s分化した。
[5]水道水で10min青色を取り戻した。
[6]70%アルコール→80%アルコールでそれぞれ2min。
[7]0.5%エオジンアルコール染液で50−70s染色した、
[8]90%エタノール、95%エタノールでそれぞれ3min色だしをした。
[9]無水エタノールI、IIでそれぞれ3min脱水した。
[10]無水エタノール:キシレン(1:1)で3min。
[11]キシレンIで3min。
[12]キシレンIIで3min。
中性ガムでブロックした。
染色終了後、細胞核は、青紫色、細胞質は、ピンク色を呈した。
(4)弾性繊維染色(Elastic染色)
サンプル:マウス肺組織のパラフィン切片。
染液調製:ビクトリアブルーB 1g。
ニューフクシン 1g、クリスタルバイオレット 1g。
熱湯200mlに溶解して、レゾルシノール4g、デキストリン4g、30%塩化鉄50
ml(使用時に調製)を順次加えて、5min煮て濾過し、沈殿とろ紙を95%エタノー
ル200mlで溶解して、15min−20min沸騰させて濾過し(水浴)、95%エ
タノールを200mlになるまで補充し、最後に、濃塩酸2mlを加えた。シールして、
遮光下で保存した。
染色方法:
キシレン I 10min、キシレン II 10min、100%エタノール 5mi
n、90%エタノール5min、水道水5min、0.5%過マンガン酸カリウム5mi
nで処理し、水道水で2−3min洗浄し、1%シュウ酸溶液2−3min(漂白すれば
よい)で処理し、水道水で2−3min洗浄し、95%エタノール 2−3min、El
astic 染液2hで染色し、95%エタノールで染液を洗い落とし、水道水で2−3
min洗浄し、Van Gieson染液で1min染色し、80%エタノール 1mi
n、90%エタノール 1min、無水エタノール I 5min、無水エタノール I
I 5min、キシレン I 5min、キシレン II 5minで素早く脱水した。
(5)血管リモデリング率
Keeganらの方法(Keegan, A., Morecroft, I., Smilli
e, D., Hicks, M.N., and MacLean, M.R. (2001).
Contribution of the 5−HT(1B) receptor to hy
poxia−induced pulmonary hypertension:conv
erging evidence using 5−HT(1B)−receptor kn
ockout mice and the 5−HT(1B/1D)−receptor a
ntagonist GR127935. Circulation research 8
9, 1231−1239)によって、前記の弾性繊維を染色した肺パラフィン切片を用い
て計数を行い、50−100μmを取り、大気道から離れた肺細動脈血管を計数し、リモ
デリング部分が血管の周長の1/2以上を超えるものをリモデリング血管とした。
(6)統計学的処理
計測情報は、平均数±標準誤差で表され、SPSS 22.0を用いて統計学的処理を行
い、統計的検定は、すべて両側T検定に基づいた。
【0054】
3. 実験結果
(1)PAHマウス右心室収縮期血圧
結果を図1に示した。
連続的に低酸素を21日間保持したところ、低酸素モデル対照群の平均右心室収縮期血圧
は、(25.55±2.29)mmHgであり、正常酸素対照群(17.54±1.48
)mmHgよりも明らかに上昇し、差は統計的に有意であった(P<0.001)。
CBDで治療したところ、10mg/kgの実験群では、平均右心室収縮期血圧は、(1
6.90±2.31)mmHgであり、低酸素モデル対照群よりも明らかに低下し、差は
統計的に有意であり(P<0.001)、50mg/kgの実験群では、平均右心室収縮
期血圧は、(17.92±2.37)mmHgであり、同様にモデル群よりも明らかに低
下したが、2つの投与量処理群(10mg/kg及び50mg/kg)の結果には、有意
差がなかった。
(2)CBD処理によるPAHマウス右心室の肥大指数の明らかな阻害
結果を図2に示した。
モデル群マウスの右心室肥大指数は、(32.62±1.41)%であり、正常酸素対照
群マウス(25.99±1.17)%よりもはるかに高かった。CBDで治療したところ
、10mg/kg及び50mg/kgの実験群では、マウスの右心指数は、それぞれ(3
0.18±1.01)%、(29.90±1.19)%であり、モデル群よりもはるかに
低下し、差は、統計的に有意であったが(P<0.001)、各投与量を用いた治療群の
間には、有意差がなかった。
(3)肺細動脈の病理学的変化
結果を、図3A−3H及び図4に示した。
低酸素モデル群のマウスでは、管壁が明らかに厚くなり、リモデリングが明らかであった
。CBDで治療した後、肺細動脈リモデリングを顕著に低下させ、リモデリング率の低下
は、明らかであった。
カンナビジオールの2つの投与量群のいずれも、右心室収縮期血圧を低下させ、右心室(
RV)の肥大指数を阻害することができ、病理学的リモデリングに対して改善作用を果た
し、たとえば、動脈中層の壁厚比、管壁中層の断面積比を減少させたり、右心室肥大を低
下させたりした。
【0055】
実施例2:カンナビジオールでLPSにより誘発されたマクロファージを処理するインビ
トロ実験
1. 実験動物、試薬及び器具
2月齢のC57BL/6マウス(軍事科学医学院実験動物センター、SPFグレード)
RPMI−1640(Sigma)
カンナビジオール(CBD、雲南漢素生物科技有限公司)
LPS(Sigma)
蛍光定量PCR機器(Roche)
2. 実験方法
Yangらの方法によってプライマリ肺胞マクロファージ(Yang, H.M., Ma,
J.Y., Castranova, V., and Ma, J.K. (1997). Ef
fects of diesel exhaust particles on the re
lease of interleukin−1 and tumor necrosis f
actor−alpha from rat alveolar macrophages.
Experimental lung research 23, 269−284.)を分
離し、つまり、2月齢のマウスにペントバルビタールを腹腔内注射して麻酔させた。仰臥
位に固定して、首部を消毒し、首部の皮膚を切り開き、腺筋を取り除いて、気管を露出さ
せた。断ち切らずに気管において小さな孔をあけ、1ml ピペットチップに小さな白色
ピペットチップを装着して、4℃のPBS 1ml(Ca2+、Mg2+無し、0.6m
M EDTA)[50ml PBS+0.00876g EDTA]を吸い取って開口か
ら肺に吹き込み、吹き込んだ後に吸い出した。次に、新しいPBSを吹き込んで吸出し、
このように3−4回繰り返した。収集した肺胞洗浄液を200×gで5分間遠心分離し、
上澄液を捨てた。無血清RPMI−1640培養液を用いて細胞を1回洗浄し、200×
gで5分間遠心分離した。血清含有RPMI−1640を加えて再懸濁させて接種した。
2h付着させて、PBSで3回洗浄した。血清含有RPMI−1640を加えて、5%二
酸化炭素、37℃の条件下で培養した。
マウスの肺胞マクロファージを、6つの処理群(1群ごとに約5×10個の細胞)にラ
ンダムに分け、第1群は、陰性対照とし、第2群は、100ng/mLのLPSで誘導さ
せ(培地にLPS添加)、生体内炎症反応モデルをシミュレーションし、第3群は、CB
D対照群(培地に5μM CBD添加)とし、第4群は、0.5μMのCBDで0.5h
前処理した後、100ng/mLのLPSを加えて誘発させた(培地に0.5μM CB
Dと100ng/mL LPS添加)。第5群は、1μMのCBDで0.5h前処理した
後、100ng/mLのLPSを加えて誘発させた(培地に1μM CBDと100ng
/mL LPS添加)。第6群は、5μMのCBDで0.5h前処理した後、100ng
/mLのLPSを加えて誘発させた(培地に5μM CBDと100ng/mL LPS
添加)。5h処理後、細胞を収集して、蛍光定量PCR機器を用いて各群の細胞の炎症性
因子TNF−α、IL−6及びMglの発現の変化を検出した。
TNF−αを検出するプライマー:
フォワードプライマー:CCCTCACACTCAGATCATCTTCT(SEQ I
D NO:1)
リバースプライマー:GCTACGACGTGGGCTACAG(SEQ ID NO:
2)
IL−6を検出するプライマー:
フォワードプライマー:GAGGATACCACTCCCAACAGACC(SEQ I
D NO:3)
リバースプライマー:AAGTGCATCGTTGTTCATACA(SEQ ID N
O:4)
Mglを検出するプライマー:
フォワードプライマー:AGGCAGCTGCTATTGGTTCTCTGA(SEQ
ID NO:5)
リバースプライマー:AGTTGACCACCACCAGGTGAGAAT(SEQ I
D NO:6)
【0056】
3. 実験結果
結果を図5に示した。
結果から分かるように、CBDは、LPSにより引き起こされる炎症関連TNF−α及び
IL−6の発現、炎症誘発性遺伝子Mglの発現を用量依存的に明らかに阻害できた。
本発明の特定の実施形態を詳細に説明したが、当業者にとって明らかなように、開示され
たすべての内容に基づいて、これら詳細についてさまざまな修正や置換を行うことができ
、これら変化は、すべて本発明の特許範囲に属する。本発明全体の範囲は、添付した特許
請求の範囲及びその任意の等同物により限定される。
図1
図2
図3-ABCD】
図3-EHFG】
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]