(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
点滴筒に装着して、輸液の滴下を検出する検出部と、データ取得のために、前記検出部での結果を利用して、点滴間隔時間と点滴経過時間を計測すると共に点滴数をカウントする点滴状況監視部を備えた本体と、
点滴間隔時間の計測値を実際の点滴間隔として、この点滴間隔を目標とする点滴間隔に対する相対的なアナログ量として表示する画面を作成する画面制御処理部と、画面を表示する表示部を備えた携帯機器とで構成され、
通信機能を利用して、前記携帯機器からの要求に応じて前記本体が前記点滴状況監視部の各種データを提供することで、前記表示部でのアナログ量の表示を可能とする点滴管理システムにおいて、
画面制御処理部は、目標とする点滴間隔を、医者からの指示に基づく投与時間と投与量が入力されて初期設定すると共に、前記投与量を総点滴数に換算しておき、点滴の進行によりカウントされ増大していく点滴数を引いた残りの総点滴数で前記投与時間から点滴経過時間を引いた残りの投与時間に点滴を終わらせられるよう最適な点滴間隔に途中補正する、途中補正機能を備えており、
前記画面制御処理部で作成する画面では、軌道ラインと、前記軌道ラインに併せて表示され、滴下で開始位置から描画が開始されて延び、次の滴下で終了する点滴間隔表示帯とが表示され、前記軌道ラインの全長が目標とする点滴間隔に、前記点滴間隔表示帯の全長が検出した点滴間隔にそれぞれ対応しており、
前記途中補正機能による補正結果が反映され目標とする点滴間隔が変更されると、前記点滴間隔表示帯の延び速度が変わることを特徴とする点滴管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、最近では、点滴筒に取り付けたセンサーで滴下を検出し、必要な滴下情報を知らせる補助具が種々発明されている。
そのうち、特許文献1は、本出願人が先に提案したものであり、点滴筒に装着して利用するタイプの点滴用ドリップカウンタである。これは、輸液の滴下を検出する検出部と、検出した点滴間隔を目標とする点滴間隔に対する相対的なアナログ量として表示する表示部を備えており、アナログ量としての表示を特徴として、ユーザインターフェースに工夫を凝らしている。
【0005】
而して、看護師に上記した特許文献1の携帯型点滴用ドリップカウンタを実際に使用してもらい、その感想を聞いてみると、意外なことに、最初の点滴合わせを容易に行うことができる点は高く評価してもらえたが、積極的な購入については否定的な意見もあった。
その理由として、最初に正確に点滴合わせをしても、途中で患者が体位を動かしたり、トイレに移動したりすればずれてしまうので、現場では、それを見越して、点滴途中で何回か点滴確認を行い、その都度、残りの投与時間と残りの投与量から、再度点滴合わせを行っており、全体の手間から考えると、最初の点滴合わせが正確にできても、その利点だけでは購入を積極的に考えるほどではないと指摘された。
この指摘から、現場では、決められた投与量を決められた投与時間に全て投与し尽くすことが最優先であり、点滴途中では点滴間隔が変動することを見越して、点滴間隔を極力一定の状態にすることが要求されていることが明らかになった。
【0006】
本発明は、上記した現場での実際の要求内容に沿って、先に提案した点滴用ドリップカウンタによる点滴の合わせ易さの利点を生かしつつ、上記した点滴作業全体にわたって看護師の手間を軽減できる、新規且つ有用な点滴管理システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、第1の発明は、点滴筒に装着して、輸液の滴下を検出する検出部と、データ取得のために、前記検出部での結果を利用して、点滴間隔時間と点滴経過時間を計測すると共に点滴数をカウントする点滴状況監視部を備えた本体と、点滴間隔時間の計測値を実際の点滴間隔として、この点滴間隔を目標とする点滴間隔に対する相対的なアナログ量として表示する画面を作成する画面制御処理部と、画面を表示する表示部を備えた携帯機器とで構成され、通信機能を利用して、前記携帯機器からの要求に応じて前記本体が前記点滴状況監視部の各種データを提供することで、前記表示部でのアナログ量の表示を可能とする点滴管理システムにおいて、画面制御処理部は、目標とする点滴間隔を、初期設定の後、計測された点滴経過時間とカウントされた点滴数に基づいて補正する、途中補正機能を備えることを特徴とする点滴管理システムである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係る点滴管理システムにおいて、点滴状況監視部は、輸液の実際の滴下を検出できないと判断したときには、点滴数を疑似カウントする検出不能対応機能を備えることを特徴とする点滴管理システムである。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明に係る点滴管理システムにおいて、画面制御処理部で作成する画面では、軌道ラインと、前記軌道ラインに重畳描画され、滴下で開始位置から描画が開始されて延び、次の滴下で終了する点滴間隔表示帯とが表示され、前記軌道ラインの全長が目標とする点滴間隔に、前記点滴間隔表示帯の全長が検出した点滴間隔にそれぞれ対応しており、途中補正機能による補正結果が反映されると、前記点滴間隔表示帯の延び速度が変わることを特徴とする点滴管理システムである。
【0010】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に係る点滴管理システムにおいて、画面制御処理部は、実際の点滴間隔の適正、早すぎ、遅すぎを判定する判定機能を備えており、各範囲に応じて各別の表示態様を設定することを特徴とする点滴管理システムである。
【0011】
第5の発明は、第4の発明に係る点滴管理システムにおいて、携帯機器は、点滴合わせが上手くいったと判断すると本体との通信を切断する強制切断部を備えることを特徴とする点滴管理システムである。
【0012】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明に係る点滴管理システムにおいて、本体は、状態表示制御部と、状態表示部を備え、前記状態表示制御部は、携帯機器と通信可能状態になったときに、その状態を状態表示部により表示動作させることを特徴とする点滴管理システムである。
【0013】
第7の発明は、第6の発明に係る点滴管理システムにおいて、状態表示制御部は、点滴間隔時間の計測値を実際の点滴間隔として、この点滴間隔から目標とする点滴間隔までの差に応じて、実際の点滴間隔の適正、早すぎ、遅すぎを判定し、その判定結果に基づいて、状態表示部の表示色を指示することを特徴とする点滴管理システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の点滴管理システムによれば、点滴の準備の際だけでなく、途中でも容易に点滴合わせをすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る点滴管理システム1を図面に従って説明する。
図1は、点滴用スタンド(図示省略)に輸液バッグBを吊下げた状態を示している。本体3(第1の実施の形態)は、この輸液バッグBに接続された点滴筒Sに装着されている。
本体3の大きさはコンパクト且つ軽量で、点滴筒Sに容易に取付けられ、且つ点滴筒Sに有意的な重さを加えるようなことはない。
【0017】
図2に詳細に示すように、この本体3には、点滴筒Sへ取付ける抱込み部5が備えられている。また、本体3は筐体仕様になっており、抱込み部5側と容器部7側とで構成されている。
符号9、9は、点滴検出部を構成する投光部と受光部になっており、それらは抱込み部5側に差し込まれて対向配置されている。上記した抱き込み状態では、点滴筒Sを挟んで投光部9と受光部9とが対向するようになっており、滴下が有った場合にはその液滴を通過するようになっている。光は液滴を通過した場合としなかった場合とでは変化するので、その変化を利用して輸液の滴下を検出するようになっている。
符号11はバッテリーを示し、符号13は基板を示す。これらのバッテリー11と基板13が容器部7に収容されている。
【0018】
本体3の電気的構成は、
図3に示す通りであり、CPU、メモリー、タイマー等からなるマイクロコンピュータが基板13に実装されている。
CPUで全体を制御させている。CPUには、点滴検出部9と、点灯回路12と、揺れ検知センサー(3軸加速度センサー)15が接続されており、点滴検出部9や揺れ検知センサー15からの情報を受け取ると共に、状態表示制御部を実現しており、点灯回路12を制御して状態表示LED14を点滅させることができるようになっている。この状態表示LED14は、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDとで構成された三色LEDであり、各色で点灯することができる。なお、
図2では状態表示LED14は図示省略されている。また、無線通信機能として、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))17が利用されている。
電源(パワーサプライ)19はリチウムイオン電池で構成されており、バッテリー制御を受けて各部に電源を供給するようになっている。
【0019】
本体3の通信相手は、専用の携帯機器21になっている。
この携帯機器21には、CPU、メモリー等が設けられており、このCPUで全体を制御させている。CPUには、表面に配置された操作ボタン(操作部)23(投与量の増分ボタン(△)および減分ボタン(▽)と、時間の増分ボタン(△)および減分ボタン(▽)と、中央の確定ボタン)と、表示部としてのLCD(ディスプレイ)25が接続されており、操作ボタン23の操作を介して入力情報を受け取ると共に、LCD25で画面表示させることができるようになっている。また、無線通信機能として、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))27が設けられている。
電源(パワーサプライ)29はUSB端子を介して外部から充電されるようになっており、バッテリー制御を受けて各部に電源を供給するようになっている。
【0020】
本体3側、携帯機器21側は、上記したハード構成になっており、それぞれのCPUが通信でメモリーに格納された専用のプログラムを実行することにより、各種機能部がそれぞれ実現されている。
本体3側は、「点滴状況監視部」が実現されている。
この「点滴状況監視部」は、点滴検出部9から最初の滴下の検出が報知されると、点滴数のカウントを始めると共に、加算タイマーを始動させて、点滴経過時間(言い換えれば、最初の滴下から今までに経過した時間)の計測を始める。
さらに、点滴のカウント毎に、点滴間隔時間(言い換えれば、直前の滴下から直後の滴下までに経過した時間)を計測する。
点滴経過時間と、点滴数は、メモリーに格納するデータであり、時間の経過と共に増大していくので、データを増分更新していく。
一方、点滴間隔時間は、基本として、逐次表示用コンテンツであり、次の滴下が検出されると、データを上書き更新していく。
これらのデータは、携帯機器21側からの提供要求があれば提供し、リセット要求があればリセットする(すなわち初期状態に戻す)。
【0021】
また、携帯機器21側は、「画面制御処理部」が実現されている。この「画面制御処理部」は、LCD25に表示させる画面を作成するものであり、途中補正機能が備えられている。この「画面制御処理部」で作成された画面がLCD25で表示される。また、点滴合わせが上手くいった場合の「強制切断部」も実現されている。これらの処理部については、点滴管理システム1の動作説明の際に詳述する。
さらに、携帯機器21側には、通信相手の本体3を間違い無く決定するための「相手決定部」も実現されている。
【0022】
上記した構成の点滴管理システム1の動作を、点滴の手順に従って説明する。
先ず、点滴準備段階の<初期合わせ>における動作を、
図4を利用して説明する。
≪点滴準備段階の<初期合わせ>≫
<看護師>
通常の点滴準備として、点滴用スタンドに輸液バッグBを吊下げ、患者に対して刺入を実施する。また、点滴筒Sに本体3を装着する。本体3は常時電源ONになっている。
その後に、看護師は、携帯機器21を電源ONにして本体3に近づける。
<携帯機器→本体>
携帯機器21は、(ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))を介して)ペアリング相手を探索する。本体3は、ペアリングが確立したときを除いて、常時、IDを送出しており、相手決定部がこのIDを受け取ると、
図4に示すように、ペアリング相手の候補として登録リストを作成する。登録順位は電波強度の高い方が上にくるように設定されている。従って、複数の本体3A、3B、3Cが探索範囲にある場合には、いずれの本体3A、3B、3Cもリストされるが、その順位は携帯機器21と本体3A、3B、3Cとの距離によって決まることになる。
相手決定部では、この登録リストに基づいて、確定ボタン23の押下を確認する毎に、登録順位の高いものから、その本体3の状態表示LED14を黄色点滅させる。そして、その本体3とペアリングを(仮)確立させる。従って、押下が1回ならば、本体3Bとペアリングを(仮)確立させ、2回(1回目から3秒以内に2回目の押下がある場合)ならば、本体3Cとペアリングを(仮)確立させ、3回(1回目から3秒以内に2回目の押下があり、2回目から3秒以内に3回目の押下がある場合)ならば、本体3Aとペアリングを(仮)確立することになる。そして、確定ボタン23の次の押下を3秒以内に確認できなかった場合には、上記の(仮)確立を(本)確立にする。また、確定ボタン23の長押しを確認すると、上記の登録リストを消去し、再び、ペアリング相手の探索を開始する。
【0023】
<看護師>
看護師は、目的とする患者用の本体3の状態表示LED14を点滅させるよう、確定ボタン23を操作することになる。
<携帯機器←→本体>
相手決定部は、確定ボタン23の押下を確認すると、上記した決定手順に従って、ペアリングを確立させる。一つの部屋内で、複数の患者に対して同時並行的に点滴を行う場合は往々にしてあるが、この相手決定部の登録リスト形式の利用により、短時間での正しい相手とのペアリングが可能となっている。
【0024】
<携帯機器→本体>
その後、携帯機器21側の画面制御処理部が動作し、本体3に対して状態の確認を要求する。本体3側の状態が[初期](各種データがリセットされた状態)であると、操作ボタン23が設定入力可能状態となり、LCD25で入力を促す画面が表示される。
<看護師>
看護師が、医師からの指示に基づき、操作ボタン23を操作して、初期設定のために、(1)輸液セット(〇滴/ml)、(2)投与量(〇ml)、(3)投与時間(〇h00m)、(4)滴サイズ(標準または大)を入力する。なお、(1)輸液セット(〇滴/ml)と(4)滴サイズ(標準または大)については、専用ボタンが無く、いずれかのボタンで代用する。
【0025】
<携帯機器>
画面制御処理部が上記入力データを受け取ると、演算処理を開始して、1)投与量を総点滴数に換算し、2)最適な点滴間隔を演算する。
図5中でも示しているが、「(1)輸液セット(20滴/ml)、(2)投与量(300ml)、(3)投与時間(5h00m=1800s)、(4)滴サイズ(標準)の場合に、1)総点滴数は、6000(滴)(=20滴/ml×300ml)となり、2)最適な点滴間隔は、3.0s(=18000s÷6000滴)となる。なお、滴サイズが大の場合には、(1)輸液セットの数値が小さくなるように補正される。
この結果に基づいて、ループ速度の条件(すなわち、3.0s/周の速度でループを周回する)が決定される。
【0026】
画面制御処理部では、メモリーに格納された編集ツール(デザイン、色等)を利用して、上記のループ速度の条件の下、本体3側から点滴間隔時間のデータ提供を逐次受けて、表示用の動画コンテンツを都度作成して、LCD25に表示させる。
動画の画面は、
図6に示すものであり、実際はカラー画像であるが、視認の便宜のために、線図に基づいて説明する。
背景は黒色になっている。その背景で、円形の軌道ラインを描くようにドット列31のドット(白色)が表示されている。このドット列31は1ループの時間軸を示したものであり、1ループ、すなわち一周分が目標とする点滴間隔になっている。
このドット列31のうち、上部の円弧状部分のドット列は適正範囲のドット列31Gになっており、ドットは緑色表示され区別されている。この適正範囲は目標とする点滴間隔に所定範囲でプラスマイナスして幅を持たせたものとなっている。
また、一つのドット31Fは後述する前回表示ドットになって青色表示される。
【0027】
ドット列31の上側の中心から右側にかけて、太線の点滴間隔表示帯(ライン)33が重畳描画されている。この点滴間隔表示帯33の始点33Aは、適正範囲のドット列31Gの中心となるドットに重なっている。残りの端の点は、終点(赤色)33Bになっている。この点滴間隔表示帯33の全長が点滴間隔を示しており、終点33B側がドット列31に重なって、上記したループ速度に従って右周りに延びていく動画として表示されている。
ドット列31(一周)と、点滴間隔表示帯33を併せて表示することで、実際の点滴間隔が目標とする点滴間隔に対して相対的なアナログ量として表示した画面になっている。
【0028】
画面制御処理部は、判定機能も備えており、直前の点滴間隔を3種類(早い、適正、遅い)に区分けする。この区分け結果は、画面上は顔画像35の人相と顔色で反映されている。この顔画像35が状態表示マークとして表示されたものである。点滴間隔表示帯33も同様に色分けされている。色は、早い(黄色)、適正(緑色)、遅い(紫色)で使い分けられている。
適正範囲を示すドット列31Gの上側には目標値範囲を示すライン(緑色)37が表示されており、適正範囲は、点滴間隔表示帯33が適正範囲のドット列31G上に重畳描画されても、そのライン表示により常に確認できる。
【0029】
図6は、いずれも、点滴間隔表示帯33が延びていく途中を示したものであるが、(適正範囲内)は、直前の結果を意味しており、前回表示ドット31Fが適正範囲のドット列31Gにあり、顔画像35も笑顔(適正)になっている。また、点滴間隔表示帯33も緑色(適正色)で表示されている。
(早い場合)も、直前の結果を意味しており、前回表示ドット31Fが適正範囲のドット列31Gよりも手前にあり、顔画像35も困惑顔(早い)になっている。また、点滴間隔表示帯33も黄色(早い)で表示されている。
(遅い場合)も、直前の結果を意味しており、前回表示ドット31Fが適正範囲のドット列31Gよりも先にあり、顔画像35も思案顔(遅い)になっている。また、点滴間隔表示帯33も紫色(遅い)で表示されている。
さらに、遅い場合が2回以上続く場合には、警告の意味合いを強めるために、上記とは異なる表示になっている。
画面の下側には、参考のために、初期設定した投与量と投与時間が表示されている。
【0030】
看護師が、チューブTに取り付けたローラークレンメRを動かして調整を開始していくと、画面制御処理部は、本体3からのデータを逐次受け取って画面を作成していくので、LCD25上の画面は遷移していく。
<看護師>
看護師は、直前の結果を示す顔画像35や前回表示ドット31Fの位置だけでなく、現時点の結果を示す点滴間隔表示帯33の延び速度を参考に、その次の調整を行うことができ、適正範囲に調整し易くなっている。
【0031】
<携帯機器>
看護師の調整が上手くいくと、
図6の(適正範囲内)の画面が連続して表示されることになり、看護師は調整作業を完了するが、システム側も、強制切断部が(適正範囲内)の結果が3回連続して得られたと判断すると、調整が完了したと判断して、ペアリングを強制的に切断する。
これで、初期合わせが終了する。
【0032】
次に、点滴途中段階の<チェック・補正>における動作を、
図7を利用して説明する。
≪点滴途中段階の<チェック・補正>≫
この段階でも、同様にしてペアリングを確立する。
このペアリング確立により、携帯機器21側の画面制御処理部が動作し、本体3に対して状態の確認を要求する。
【0033】
<携帯機器>
本体3側の状態が[途中]であると、画面制御処理部の途中補正機能が働き、再度演算処理を開始して、1)投与量を総点滴数に換算し、2)最適な点滴間隔を再度演算する。
点滴の進行により、点滴数は増大していき、時間も経過していくので、図中でも示しているが、1つの具体例で、点滴数(1035滴)と経過時間(3600s)の場合には、1)(残りの)総点滴数は、4965(滴)(=6000滴−1035滴)となり、2)最適な点滴間隔は、2.9s(=(18000s−3600s)÷4965滴)となる。
すなわち、ループ速度の条件(すなわち、2.9s/周の速度でループを周回する)が変更決定される。
【0034】
初期合わせでは、3.0s/周であったから、この条件に変更になったことは、途中で患者の体位が変わったことにより最初の予想よりも点滴間隔が遅くなっていたことを意味する。
途中で、この条件に変更することにより、点滴間隔の変動を最小限に抑えながら、決められた投与時間全部を使って点滴を終わらせることができることになる。
【0035】
携帯機器21のLCD25には同じように
図6の画面が表示されることになるが、補正された内容に基づいて表示されることになる。そのため、点滴間隔が3.0sの場合には、今度は、遅いの表示がなされることになる。
【0036】
<看護師>
看護師の合わせ作業は、初期合わせの段階と同じである。
<携帯機器>
携帯機器21側も、途中合わせが終了すると、初期合わせの段階と同様にペアリングを強制的に切断する。
【0037】
従って、点滴管理システム1を利用すれば、初期設定から状況が変わっても、その変わった状況に携帯機器21側が自動的に対応するので、看護師は初期合わせの段階と同じ作業で点滴間隔を合わせることができる。
なお、点滴を終了した場合には、携帯機器21側からのリセット要求により、本体3側のメモリーに格納したデータをリセットすると共に、タイマーもリセットして、[初期]に戻すようになっている。このリセット動作により、次に別の患者用に利用することが可能となっている。
【0038】
この点滴管理システム1には、本体3の点滴状況監視部に、検出不能対応機能が備えられている。
滴下があっても、点滴検出部9で検出できない場合がある。例えば、患者がトイレ等に移動するときにはベッドから立ち上がって歩いたり、車いすに移乗して移動することになるが、その場合には点滴筒Sが揺れて斜めになってしまう場合がある。その場合には、輸液が筒の壁伝いに落下してしまうため、滴が投光部と受光部の間を通らず、実際には滴下していても点滴検出部9では検出できない。
このような検出不能をそのまま放置してしまうと、実際の残投与量と本体3側が記憶している残投与量が異なることになるので、途中補正機能の信頼性に関わる。そのため、検出不能対応機能が設けられている。
上記したように、点滴状況監視部では、点滴検出部9から最初の滴下の検出が報知されると、点滴数のカウントを始める。これは「通常カウント」である。これに対して、通常カウントに不適な期間があった場合には、その期間には、「通常カウント」による加算は無視され、「疑似カウント」による加算に差し替えられるようになっている。
【0039】
この「通常カウント」モードから「疑似カウント」モードへの移行、「疑似カウント」モードから「通常カウント」モードへの(戻し)移行は、
図8に示す揺れ検知ルーチンに従っている。
すなわち、揺れ検知センサー15が揺れを検知すると、「疑似カウント」を開始する。この「疑似カウント」は、直前に記憶された点滴間隔時間を利用している。
点滴間隔時間は、上記したように、逐次表示用コンテンツであり、次の滴下が検出されると、データを上書き更新していくが、この直前の点滴間隔時間のデータを利用している。従って、直前の滴下間隔が短く、換言すれば、ループ速度が適正範囲内より早く、2.2s/周であったとしても、その滴下間隔で疑似的にカウントをする。
そして、揺れが検知できなくなったときには、「通常カウント」モードに戻る。
【0040】
また、警告用に減算タイマー(5分設定)をONにして、減算を開始させる。減算タイマーがタイムアウトになると、患者の行動期間が通常の揺れを伴う行動期間を超えている、すなわち異常事態が発生していると判断して、状態表示LED14を赤く点滅させて警告を周囲に発する。
この減算タイマーは、揺れが検知できなくなったときには、リセットされる。
【0041】
この機能を併用することで、途中での検出エラーに対応した信頼性のある点滴数を、途中補正に利用できる。
一方、滴下を検出不能でも揺れが検知されない場合には、疑似カウントは行わない。この場合には点滴自体が停止している可能性が高いからである。
【0042】
携帯機器21は専用機器になっているが、
図9に示すように、スマートフォンを利用することもできる。スマートフォンを利用する場合には、操作部はタッチパネル式になる。スマートフォンは、小型パソコンであり、その機能を利用した履歴処理が可能となる。
例えば、本体3側で、1分間毎の点滴数も時系列で記録しておけば、スマートフォン側で、そのデータの転送を要求し、
図10に示すように、流量の変化を示すグラフを表示させることも可能である。
このグラフからは、その患者の点滴履歴を確認できるので、その患者の点滴状況を時系列で詳細に把握することができる。
また、残投与量と残投与時間を、逐次更新表示させることも容易になる。
【0043】
図11、
図12は、
図2とは別の本体39(第2の実施の形態)を示す。この本体39の筐体は本体3と同じように、抱込み部41側と容器部43側とで構成されている。
但し、内部では、投光部9と受光部9との代わりに、点光源45と反射鏡47、47と受光素子49とが備えられている。また、バッテリーケース51の上側に基板53が設けられており、この基板53の上面に、一対の状態表示LED14、14が配置されている。これらのLED14、14は、反射鏡47、47の背面側にあり、点滅しても検出の邪魔にはならない。
【0044】
この本体39の状態表示制御部には、点滴間隔時間の計測値を実際の点滴間隔として、この点滴間隔から目標とする点滴間隔までの差に応じて、実際の点滴間隔の適正、早すぎ、遅すぎを判定する判定機能も備えられている。この判定機能は、携帯機器21側の画面制御処理部が備える判定機能と同じであり、直前の点滴間隔を3種類(早い、適正、遅い)に区分けする。この区分け結果は、状態表示LED14、14の点灯色に反映される。色は、早い(青色)、適正(緑色)、遅い(紫色)で使い分けられている。点灯時間は60msec程度の短時間である。
【0045】
抱込み部41は透明なので、状態表示LED14の点灯は外から確認できる。
携帯機器21側の相手決定部が登録リストに基づいて、確定ボタン23の押下を確認する毎に、登録順位の高いものから、その本体39の状態表示LED14を点滅させる点は、本体3と同様であるが、その点灯色が上記したように異なっており、点滴の状態を、本体39の状態表示LED14、14の点灯色を見るだけで簡単に目視確認できる。そのため、病室の入口付近などから、点灯色を確認し、青色(早い)または紫色(遅い)の場合にのみ患者の近くに寄って、携帯機器21に状態を表示させて上記したような調整作業を行えば足りる。
従って、看護師の労力の軽減化を図れる。また、簡単に点滴の状態を確認できるので、点滴の安全性を向上できる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含められる。
例えば、本体3、39や携帯機器21の形状は特に限定されず、また、表示画面中の各種画像の大きさやデザインは要求される機能を果たせるものであれば良い。