(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、歯科治療に用いられる歯科用製品としての歯科用補綴物は、金や銀、パラジウム合金等の金属材料から鋳造により成形されるもの、ジルコニア等のセラミックスやチタン、ハイブリッドレジン等で形成された加工用ブロックに対して切削や研磨等の機械加工を施して、所望の形状に形成される場合がある。なお、ハイブリッドレジンは、レジンマトリックス中に無機充填剤が高密度で分散された複合材料である。
近年のデジタル画像技術やコンピュータ処理技術等の発達により、例えば、特許文献1に開示されているように、口腔内の撮影画像から、コンピュータ支援設計(CAD)(Computer Aided Design)及びコンピュータ支援製造(CAM)(Computer Aided Manufacturing)技術によるCAD/CAM装置を用いて、加工用ブロックに切削加工を施して歯科用補綴物を加工するCAD/CAMシステムが多用されるようになってきている。なお、CAD/CAM装置によって加工されることから、歯科用補綴物を加工するための加工用ブロックは歯科用CAD/CAMブロックと称されたり、ミルブランクと称されたりすることがある。また、円盤状の形状をしている加工用ブロックは、CAD/CAM加工用ディスク等と称される場合がある。このCAD/CAM加工用ディスクは、複数の歯科用補綴物を加工する場合や、複数本の歯に亘って形成される大型となる歯科用補綴物を加工する場合に適している。
なお、特許文献2には、CAD/CAM加工用ディスクが歯科用ミルブランクとして示されている。
【0003】
円盤状の加工用ブロックを加工装置に供する場合には、加工用ブロックの円の軸芯を、加工装置の加工の基準となる軸芯と一致させる軸芯出しされなければ、加工される歯科用補綴物の形状が所望の形状とならず、加工用ブロックの材料に無駄が生じてしまう虞がある。例えば、特許文献3に示されているように、加工装置には、加工用ブロックである円盤状の未加工品3を保持する環状の保持装置4が具備されており、未加工品3はこの保持装置4の所定の位置に保持される必要がある。例えば、環状の保持装置4の中心軸と円盤状の未加工品3の中心軸とを一致させる。すなわち、これらの中心軸同士を一致させて軸芯出しすることにより、未加工品3を加工装置の基準に対して所定の位置に位置させられて、所望の加工を施すことができるものである。
【0004】
ところで、保持装置は円盤状の加工ブロックを保持する構造として、一対の環状保持部材で構成され、円盤の盤面の両方の周縁部をこの一対の環状保持部材のそれぞれに保持させて、円盤を挟持することで加工用ブロックを保持する。
図14には、円盤状をしているCAD/CAM加工用ディスクである加工用ブロック100が示されており、
図14(A)は斜視図、
図14(B)は正面図である。
この加工用ブロック100は、歯科用補綴物が形成される円柱状の被加工部101と、この被加工部101の中央部に被加工部101よりも拡径されたフランジ部102が形成されている。なお、これら被加工部101とフランジ部102は、例えばセラミックスやチタン、ハイブリッドレジン等の材料により一体成形されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明に係る加工用ブロック、加工用ブロック保持体および加工用ブロックの位置決め方法を
、図示した実施の形態に基づいて説明する。なお、
加工用ブロックに用いられる材料に制限はないが、この実施形態では、ジルコニア、二ケイ酸リチウムなどのセラミックス材料、チタン、コバルトクロムなどの金属材料、PMMA、PEEK、ハイブリッドレジンなどのレジン系材料、およびワックス系の材料、といった、一般的に歯科用補綴物として用いられる材料を使用した加工用ブロックを例示する。
【0018】
(第1実施形態)
図1〜
図3に、この発明の第1実施形態に係る加工用ブロック1が示されている。
図1は加工用ブロック1の正面図、
図2は加工用ブロック1を保持する加工用ブロック保持体である環状保持部材10(
図3参照)の収容側保持部材11と押圧側保持部材12とを分離して示す斜視図である。また、
図3(A)は収容側保持部材11と押圧側保持部材12とによって加工用ブロック1を保持させた状態を、加工用ブロック1の軸芯を含む面で切断した断面図である。また、
図3(B)は
図3(A)の一部を拡大して示す断面図である。
【0019】
この加工用ブロック1は、円柱状の被加工部1aと、この被加工部1aの中央部に配されて被加工部1aよりも拡径されたフランジ部1bとが一体に形成されている。このフランジ部1bが中央部に形成されているため、被加工部1aの両端部はフランジ部1bのフランジ面から突出している。このフランジ部1bの上面には、フランジ部1bの外周縁と、フランジ面から上方に突出している被加工部1aの上側突出部1atに掛けて傾斜面による保持面1cが設けられている。また、この保持面1cには、後述するように押圧側保持部材12が対向する。なお、加工用ブロック1の押圧側保持部材12に対向する側、すなわち上側突出部1atが配された側を上側とする。また、被加工部1aの下部であって、フランジ部1bのフランジ面から下方には、下側突出部1abが突出している。また、保持面1c
を形成する傾斜面は、
加工用ブロック1の軸芯C上に頂点が位置している円錐形の側面で形成されている。なお、この円錐形の頂点は、
図1に示すように、フランジ部1bの押圧側保持部材12側、すなわち上側に位置している。また、円錐形の側面であるので、保持面1c内の位置であって、加工用ブロック1の軸芯C上の適宜な位置を中心とした円上にある位置は、フランジ部1bの下面からの距離が一定となる。
また、
図1〜
図3では、保持面1c
がフランジ部1bの外周端から被加工部1aに掛けて形成
されたものとして示されているが、この保持面1cの下端部をフランジ部1bの径方向の中間部に配して被加工部1aに掛けて設けたものであっても構わない。また、保持面1cの上端部をフランジ部1bの径方向の中間部に配してフランジ部1bの外周端
に掛けて設けたものであっても構わない。さらに、フランジ部
1bの中間部のみに設けたものであっても構わない。
また、保持面1cの傾斜角度は、加工用ブロック1の軸芯Cに対して3〜87度、好ましくは5〜85度、さらに10〜80度の範囲内とすることがより好ましい。
【0020】
収容側保持部材11は、軸芯C
1を中心とした円筒形の収容主体部11aと、この収容主体部11aの下部に設けられた収容フランジ部11bと外側フランジ部11cとにより形成されている。収容主体部11aの外側面には、係合機構を構成する雄ネジ部11sが形成されている。
収容フランジ部11bは、収容主体部11aの内側方向に突出させた内側フランジにより形成されている。そして、加工用ブロック1のフランジ部1bがこの収容フランジ部11bの上面に載置される。すなわち、収容フランジ部11bの内径は、フランジ部1bの外径よりも小さくされている。また、フランジ部1bの外径は収容主体部11aの内径よりも小さくされている。また、フランジ部1bが収容フランジ部11bに載置された状態で、収容フランジ部11bの内側に、被加工部1aの下側突出部1abが挿通される。
外側フランジ部11cは収容主体部11aの外側方向に突出させて形成されている。この外側フランジ部11cは、後述する係合主体部12aの下面が対向する部分となる。
【0021】
また、押圧側保持部材12は、軸芯C
2を中心とした円筒形の係合主体部12aと押圧フランジ部12bとにより形成されている。係合主体部12aの内側面には、収容側保持部材11の雄ネジ部11sと螺合する係合機構を構成する雌ネジ部12sが形成されている。なお、係合主体部12aの外周面は、作業者が把持しやすいように適宜な形状、例えば、ローレット目が形成されたり、多角形や波形等に形成され
たりしている。また、治具が用いられる場合には、用いられる治具と係合する形状とされている。
なお、この実施形態では、係合機構として、雄ネジ部11sと雌ネジ部12sとが組み合わされたねじ込みによる構造を例示して説明する。
押圧フランジ部12bは、係合主体部12aの上部に内側方向に突出させた内側フランジにより形成されている。この押圧フランジ部12bの内周面の、加工用ブロック1側となる端部には、対面周縁部12cが形成されている。この対面周縁部12cは、加工用ブロック1を環状保持部材10に保持させた状態において、保持面1cに接触する部分となる。
【0022】
対面周縁部12cが保持面1cと接触するためには、下記式1と式2とを満たせばよい。
D
H<D
O<D
L (式1)
L
O<L
H (式2)
これら式1と式2とにおいて、
図3(B)を参照して、D
Oは対面周縁部12cの直径であり、D
Hは
上側突出部の外径であり、D
Lは保持面1cの外周端の直径である。また、L
Hは保持面1cの内周端とフランジ部1bの下面との距離であり、L
Oは対面周縁部12cと係合主体部12aの下面との距離である。
【0023】
上述した収容側保持部材11は、図示しない加工装置の保持装置に取り付けられており、この保持装置により収容側保持部材11は三次元における姿勢が変更されるようになされている。また、この収容側保持部材11の軸芯C
1は保持装置と所定の位置関係にあり、例えば、軸芯C
1が、加工用ブロック1を加工する際にの加工装置の加工の基準となる。
【0024】
加工用ブロック1を環状保持部材10に保持させる場合、収容側保持部材11の収容フランジ部11bの内側に被加工部1aの下側突出部1abが収容されるように、加工用ブロック1を設置する
(第1配置ステップ)。そして、加工用ブロック1を収容した収容側保持部材11に押圧側保持部材12を被せて
(第2配置ステップ)、収容主体部11aの雄ネジ部11sに、係合主体部12aの雌ネジ部12sを螺合させる。押圧側保持部材12を回動させると、押圧側保持部材12が収容側保持部材11に対して
前進して、押圧側保持部材12が収容側保持部材11に締め付けられる。この押圧側保持部材12の前進により対面周縁部12cが保持面1cに当接する
(位置決めステップ)。この対面周縁部12cが押圧側保持部材12の軸芯C
2と直交する面で切断した断面内の円上にあり、保持面1cが円錐形の側面で形成されているから、押圧側保持部材12を収容側保持部材11に対して円滑に回動させるには、対面周縁部12cを構成する角部の尖端が保持面1cの円錐形の軸芯Cを中心とした円上で当接することを要する。このため、収容側保持部材11と加工用ブロック1との間の間隙が、加工用ブロック1の周囲で均等となるよう加工用ブロック1が移動させられる。押圧側保持部材12の前進によって、加工用ブロック1が収容側保持部材11と押圧側保持部材12とで挟持されると、対面周縁部12cと保持面1cとは、対面周縁部12cの円の軸芯C
2と保持面1cの円錐形の軸芯Cとが一致することとなる。また、対面周縁部12cを備えた押圧側保持部材12と、保持装置に取り付けられている収容側保持部材11とは、軸芯C
1と軸芯C
2とが一致している。したがって、加工用ブロック1の軸芯Cと収容側保持部材11との軸芯C
1とが一致して、加工用ブロック1が加工装置の加工の基準と一致して軸芯出しされ、所定の位置に設定される。したがって、加工装置により加工用ブロック1に施される加工は、加工用ブロック1の所定の位置に対して行われる。このため、加工ミスや材料の無駄の発生を減じることができる。
【0025】
ところで、加工用ブロック1は、前述したように、保持面1cに対面周縁部12cが当接して位置決めされるので、対面周縁部12cは押圧フランジ部12bの内周面に形成されていればよい。例えば、
図4に示すように、押圧フランジ部12bの下端部を内周面から切り欠いて切欠部12dを設けた形状としても構わない。この形状とすれば、
図3と比較して、係合主体部12aの上部が被加工部1aの上面から上方に突出する突出長さを小さくできる。
【0026】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態に係り、第1実施形態とは異なる加工用ブロック保持体である環状保持部材20に、第1実施形態と同様の加工用ブロック1が保持された状態を、加工用ブロック1の軸芯Cを含む面で切断して示す断面図である。加工用ブロック1を押圧するこの第2実施形態に係る押圧側保持部材22は、第1実施形態に係る押圧側保持部材12と同様に、係合主体部22aと押圧フランジ部22bとにより形成されている。この第2実施形態に係る押圧フランジ部22bの対面周縁部22cは、加工用ブロック1の保持面1cと重なる形状の円錐形の内側面で形成されている。
また、この場合の対面周縁部22cは、保持面1cと重なる形状の円錐形とする場合には、保持面1cの傾斜角度と同様に、押圧側保持部材12の軸芯C
2に対して3〜87度、好ましくは5〜85度、さらに10〜80度の範囲内とすることがより好ましい。なお、対面周縁部22cは、保持面1cとは異なる傾斜角度で設けられていてもよい。また、対面周縁部22cは、加工用ブロック1の軸芯Cを含む面で切断した断面形状が直線状であっても、曲線状であってもよく、直線と曲線とを含むような形状に設けられていてもよい。
【0027】
なお、加工用ブロック1と収容側保持部材11とは、第1実施形態に係る加工用ブロック1と収容側保持部材11と同様であるので、同じ符号を付してある。また、収容側保持部材11と押圧側保持部材22とで、環状保持部材20が構成される。
この第2実施形態では、押圧側保持部材22を収容側保持部材11に対して前進させると、対面周縁部22cの円錐形の内側面が保持面1cの円錐形の側面に当接すると共に、密着する。したがって、加工用ブロック1の軸芯Cと収容側保持部材11の軸芯C
1とが一致し、加工用ブロック1と加工装置とが軸芯出しされて、加工用ブロック1が加工装置の所定位置に設定される。
【0028】
(第2実施形態の変形例)
図6は、第2実施形態の変形例を示し、第2実施形態と同一の部位については
図5と同一の符号が付されている。なお、この変形例に係る加工用ブロック2は、前述した加工用ブロック1とは異なるものである。すなわち、加工用ブロック2は、被加工部1aとは異なる被加工部2aを有している。この加工用ブロック2の下部には、収容側保持部材11よりも下方に突出する下側突出部2bが設けられている。また、被加工部2aの上部には、押圧側保持部材12よりも上方に突出する上側突出部2cが設けられている。すなわち、
図1に示す加工用ブロック1の被加工部1aの厚さよりも、加工用ブロック2の被加工部2aの厚さが大きくされている。このため、加工用ブロック1の場合に比べて大型の歯科用
補綴物を加工することができる。なお、被加工部2aには、フランジ部1bに相当するフランジ部2dが設けられており、また、保持面1cに相当する保持面2eが設けられている。
【0029】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態に係る加工用ブロック3を示し、
図7(A)は加工用ブロック3の斜視図、
図7(B)は加工用ブロック3の正面図である。
この加工用ブロック3は、
図1に示した第1実施形態に係る加工用ブロック1の被加工部1aのうちの保持面1cから上方に突出した上側突出部1atが形成されていない形状とされたものである。すなわち、被加工部3aの上端部にフランジ部3bが形成され、しかも、このフランジ部3bの上面には傾斜面による保持面3cが設けられている。したがって、この保持面3cは、被加工部3aの上面とフランジ部3bの側面とに掛けた傾斜面によって設けられている。なお、保持面3cは、下端部をフランジ部3bの径方向の中間部に配して被加工部3aに掛けて設けたものであっても構わない。また、保持面3cの上端部をフランジ部3bの径方向の中間部に配してフランジ部3bの外周端に掛けて設けたものであっても構わない。さらに、フランジ部3bの中間部のみに設けたものであっても構わない。
また、この保持面3cは保持面1cと同様に円錐形の側面で形成される。また、被加工部3aの下部
には、フランジ部3bの下面よりも下方に
向かって下側突出部3abが突出している。
なお、保持面3cは、保持面1cと同様に、傾斜角度を、加工用ブロック3の軸芯Cに対して3〜87度、好ましくは5〜85度、さらに10〜80度の範囲内とすることがより好ましい。
【0030】
図8は加工用ブロック3が環状保持部材に保持された状態を示し、この環状保持部材は、
図3に示す第1実施形態に係る環状保持部材10と同一のものである。
すなわち、環状保持部材10は、収容側保持部材11と押圧側保持部材12とにより構成されている。そして、収容側保持部材11に押圧側保持部材12を係合させると、押圧側保持部材12の角部の尖端で形成された対面周縁部12cが加工用ブロック3の保持面3cに当接する。そして、押圧側保持部材12を収容側保持部材11に締め付けると、収容側保持部材11の軸芯C
1および押圧側保持部材12の軸芯C
2と加工用ブロック3の軸芯Cとが一致するから、加工用ブロック3と加工装置とが軸芯出しされることとなる。
なお、加工用ブロック3を環状保持部材10に保持させた状態では、
図8に示すように、被加工部3aの上面は、押圧側保持部材12の上面よりも下位に位置することとなる。
また、
図9は、
図4に示す形状と同様に、切欠部12dを設けた形状の押圧側保持部材12により、加工用ブロック3を保持させた状態を示している。この場合には、
図8に示す形状の押圧側保持部材12による場合に比べて、押圧側保持部材12の上面から被加工部3aの上面までの距離が小さくなるので、加工装置が備えた加工用治具が被加工部3aに到達しやすくなる。
【0031】
(第4実施形態)
図10は第4実施形態に係り、この実施形態に係る環状保持部材は、
図5に示す第2実施形態に係る収容側保持部材11と押圧側保持部材22とからなる環状保持部材20と同じものである。すなわち、押圧側保持部材22の対面周縁部22cは加工用ブロック3の保持面3cを形成する円錐形と重なる形状の円錐形の内側面で形成されている。
また、この場合の対面周縁部22cは、保持面3cと重なる形状の円錐形とする場合には、保持面3cの傾斜角度と同様に、押圧側保持部材12の軸芯C
2に対して3〜87度、好ましくは5〜85度、さらに10〜80度の範囲内とすることがより好ましい。なお、対面周縁部22cは、保持面1cとは異なる傾斜角度で設けられていてもよい。また、対面周縁部22cは、加工用ブロック1の軸芯Cを含む面で切断した断面形状が直線状であっても、曲線状であってもよく、直線と曲線とを含むような形状に設けられていてもよい。
押圧側保持部材22の雌ネジ部12sを収容側保持部材11の雄ネジ部11sに螺合させて、収容側保持部材11に対して前進させると、対面周縁部22cの円錐形の内側面が保持面3cの円錐形の側面に当接して密着する。したがって、加工用ブロック3の軸芯Cと収容側保持部材11の軸芯C
1および押圧側保持部材22の軸芯C
2とが一致して、加工用ブロック3と加工装置とが軸芯出しされることとなる。
【0032】
(第4実施形態の変形例)
図11は、
図10に示す第3実施形態の変形例に係る加工用ブロック3を示し、被加工部3aの下側突出部3abが形成されていないものを示す。すなわち、この加工用ブロック4は、
図12に示すように、フランジ部4bの上面に傾斜面による保持面4cが設けられている。なお、保持面4cは下端部をフランジ部4bの径方向の中間部に配して被加工部4aに掛けて設けたものであっても構わない。また、保持面4cの上端部をフランジ部4bの径方向の中間部に配してフランジ部4bの外周端に掛けて設けたものであっても構わない。さらに、フランジ部4bの中間部のみに設けたものであっても構わない。
【0033】
図12は、この加工用ブロック4を環状保持部材に保持させた状態を示す断面図である。なお、環状保持部材は、
図10に示す環状保持部材20と同じものであり、収容側保持部材11と押圧側保持部材22とから構成されている。加工用ブロック4を環状保持部材20に保持させた状態では、フランジ部4bが収容側保持部材11の収容フランジ部11bに載置された状態となる。そして、この状態における収容フランジ部11bの内周側の部分には、収容フランジ部11bの上面から下方に突出する被加工部4aの部位が存せず、収容側保持部材11の収容フランジ部11bの下側面まで空間となる。したがって、被加工部3aの上側の盤面の上方と下側の盤面の下方には、空間部11dが形成される。この加工用ブロック4は、第3実施形態に係る加工用ブロック3の被加工部3aの厚さよりもさらに小さく、第3実施形態に係る加工用ブロック3よりも小型の歯科用補綴物を加工する場合に適したものとなる。
なお、この加工用ブロック3を保持するための環状保持部材には、収容側保持部材11と押圧側保持部材12とを用いることもできる。環状保持部材10を用いる場合には、押圧側保持部材12には切欠部12dが形成されていない形状のもの、形成されている形状のもの、いずれの形状の押圧側保持部材12であっても用いることができる。
【0034】
(第5実施形態)
図13は、第5実施形態に係る加工用ブロック5の正面図である。この加工用ブロック5は、
図7(B)に示す第3実施形態に係る加工用ブロック3の円錐形の側面で形成された保持面3cとは異なる保持面5cを有している。この保持面5cは、球面等の曲面状で設けられている。
保持面5cは、球面の一部で形成された形状とすることが好ましいが、楕円球体の一部、断面が放物線等を始めとする各種の二次曲線、三次曲線等の高次曲線の一部をなすもの、その他種々の
曲面の一部とすることができる。すなわち、保持面5c内の位置であって、加工用ブロック5の軸芯C上の適宜な位置を中心とした円上にある位置は、フランジ部5bの下面からの距離が一定となるものである。なお、保持面5cは、下端部をフランジ部5bの径方向の中間部に配して被加工部5aに掛けて設けたものであっても構わない。また、保持面5cの上端部をフランジ部5bの径方向の中間部に配してフランジ部5bの外周端に掛けて設けたものであっても構わない。さらに、フランジ部5bの中間部のみに設けたものであっても構わない。また、
保持面5cは、フランジ部5bの径方向に対して、
図13に示すような凸状ではなく、凹状であっても構わない。
なお、被加工部5aの形状は、
図6(b)に示す加工用ブロック3と同様なものとされており、被加工部5aの下部はフランジ部5bから下方に突出した下側突出部5abが設けられている。
この加工用ブロック5を保持する環状保持部材は、第1実施形態に係る
図3に示す環状保持部材10と同様に、収容側保持部材11と押圧側保持部材12とを組み合わせた構成の環状保持部材10を用いることができる。
この加工用ブロック5を収容側保持部材11に、加工用ブロック5のフランジ部5bを収容側保持部材11の収容フランジ部11bに載置させて収容させる。この収容側保持部材11に押圧側保持部材12を係合させて、押圧側保持部材12を収容側保持部材11に対して前進させると、押圧側保持部材12の対面周縁部12cが保持面5cに当接する。このとき、押圧側保持部材12の軸芯C
2と直交する面で切断した断面内の円上にある対面周縁部12cは、保持面5cの一部であって、加工用ブロック5の軸芯Cを中心とした円上で接触する。このため、対面周縁部12cの軸芯C
2と加工用ブロック5の軸芯Cとが一致することとなる。したがって、収容側保持部材11の軸芯C
1および押圧側保持部材12の軸芯C
2と加工用ブロック5の軸芯Cとが一致して軸芯出しされ、加工用ブロック5が所定の位置に位置づけられる。
【0035】
なお、
図13に示す加工用ブロック5では、保持面5cの上端縁が被加工部5aの上面と一致している形状を示したが、
図1に示すように、保持面5cの上端縁よりも上方に被加工部5aの一部を突出させた形状とすることもできる。被加工部5aの厚さは、加工すべき歯科用補綴物の大きさ等に基づいて設定することができ、
図6に示す変形例のように、収容側保持部材11の下方と押圧側保持部材12の上方とのそれぞれに突出させた形状とすることもできる。
【0036】
以上に説明したいずれの実施形態でも、円錐形の側面や曲面、球面で形成した保持面1c、3c、4c、5cを押圧側保持部材12、22の側に配した場合について説明した。他方、加工用ブロック1、2、3、4、5の収容側保持部材11の側に円錐形の側面や球面による載置面を形成し、加工用ブロック1、2、3、4、5を収容側保持部材11に載置させる構造とすることもできる。この場合、収容側保持部材11の収容フランジ部11bの上側端縁に、対面周縁部22cの場合と同様に、載置面と一致する形状の面を形成することもできる。
さらに、前述した保持面1c、3c、4c、5cを形成せずに、収容側保持部材11に面した載置面のみを加工用ブロック1、2、3、4、5に形成する形状とすることもできる。この場合は、押圧側保持部材12、22を収容側保持部材11に締め付けた際に、載置面の側面の円の軸芯Cと収容フランジ部11bの側の対面周縁部の円の軸芯C
1とが一致するから、加工用ブロック1、2、3、4、5の軸芯Cが収容側保持部材11の軸芯C
1と一致して、加工装置の所定の位置に位置決めされる。
【0037】
また、以上に説明したように、加工用ブロック1、2、3、4、5のいずれにおいても、対面周縁部12c、22cは保持面1c、3c、4c、5cを押圧する状態で接触するから、この接触部分を加工用ブロック1、2、3、4、5の内周側に位置させることができる。このため、接触部分から外周側の部分が不要となるので、フランジ部1b、2d、3b、4bの外径を、従来の加工用ブロック100のフランジ部102の外径よりも小さくすることができる。
【0038】
また、歯科用補綴物の加工に用いられる円盤状の加工用ブロックの材料としては、ジルコニア、二ケイ酸リチウムなどのセラミックス材料、チタン、コバルトクロムなどの金属材料、PMMA、PEEK、ハイブリッドレジンなどのレジン系材料、およびワックス系の材料、といった、一般的に歯科用補綴物として用いられる材料を用いることができる。さらに、歯科用補綴物以外の加工品に用いられる加工用ブロックの場合には、これらの材料その他、この加工品に要求される材料を用いることができる。
【0039】
以上に説明したように、この発明に係る加工用ブロックによれば、加工装置に供する際に、加工装置の加工の基準と円盤状の加工用ブロックの軸芯とを容易に一致させることができ、加工ミスや材料の無駄を減じて、加工用ブロックを加工する際の歩留まりや生産性の向上に寄与する。
【課題】円盤状の加工用ブロックを加工装置に供する際、加工用ブロックと加工装置との軸芯出しを容易に行える加工用ブロック、加工用ブロック保持体および加工用ブロックの位置決め方法を提供する。
【解決手段】円盤状の加工用ブロック1の被加工部1aよりも拡径されたフランジ部1bの上端縁から被加工部1aに掛けて傾斜面による保持面1cを形成すると、この保持面1cは円錐形の側面の形状となる。保持装置の環状保持部材10に加工用ブロック1を収容させて、押圧側保持部材12を係合させて収容側保持部材11に対して前進させると、保持面1cに押圧側保持部材12の対面周縁部12cが当接する。対面周縁部12cは円錐形の保持面1cの軸芯を中心とした円上で当接するから、環状保持部材10の軸芯と加工用ブロック1の軸芯とが一致して加工装置の所定の位置に、加工用ブロック1が設定される。