【実施例1】
【0043】
実施例1においては、木軸が円断面形状をなす万年筆型のタッチペン1を、
図1と
図2を参照して説明する。
図1はタッチペンと、タッチペンに装着させるペン先部の群の斜視図を示している。
図1(A)図は、タッチペンの斜視図を示し、
図1(B)図はタッチペンの内部構造とペン先部の一例を示す斜視図を示している。
図1(B)図においては、理解を容易にするため、木軸を破線とし、導電管と金属軸体とを実線で示している。
図1(C)図から
図1(E)図には、導電管に装着されるペン先部を選択可能な群の例を示している。
図2は、タッチペンの製造工程を
図1(B)図のA−A位置における断面図により示している。
【0044】
万年筆型のタッチペン1は、軸方向の先方から中央部にかけて中空部を有する木軸10と、導電管20と、複数の金属軸体30と、交換可能なペン先部40とからなっている(
図1参照)。木軸10は、先方から後方までの全体が円断面形状の木質素材からなる。より詳細には、木軸の先方側から中央部にかけての約3分の1の長さが、後方に向けて緩やかに膨らんで太径とされ、太径の中央部から後方に向けて緩やかに窄まって後方側が細径とされた万年筆形状をなしている。中空部11(
図1(B)図参照)は、3列の金属軸体30,30,30が指先から第1関節までの約20mmの間隔をあけて軸方向に配列されるように、木軸の先端から約60mmよりも深い位置まで穿設されている。
【0045】
導電管20を格納させた木軸10は、木軸10と導電管20を横断する金属軸体の挿嵌孔12,13が穿設されている(
図2(B)図参照)。金属軸体30の挿嵌孔は、周方向に配列される挿嵌孔12,13が隣接して直交されるように穿設される(
図1(B)図,
図2(E)図参照)と共に、隣接された挿嵌孔12,13がそれぞれ、木軸の先端から約20mmをあけて木軸の軸方向に3列、配列されている。木軸10は、無垢材に限定されず、集成材であってもよい。木軸は、例えば抗菌性があると共に、肌触りがよく加工しやすいヒノキ、スギが好適である。ほかにも抗菌作用・抗真菌作用を有すると共に、成長が早く環境負荷の小さい竹であってもよい。また、高級な美観を呈するカエデ、紫檀、黒檀、オークウッド、メープル、ウォールナット、チーク、マホガニー等であってもよい。
【0046】
導電管20は木軸10と共に、金属軸体30を挿し込むための穿孔加工ができればよく、材質は限定されない。例えば、金属管であれば銅、銅合金としての真鍮、銀、鉄であればよいが、導電性の高さと穿孔加工の容易さから銅、真鍮が好適である。導電管は、導電性樹脂管であってもよく、例えば、導電性ポリアセチレン、ポエリエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)に、金属粒子、カーボンナノチューブ等の導電性フィラーを添加させてなる導電性樹脂が好適である。導電管の外径は、木軸の中空部に格納可能であればよいが、中空部の内面と摺り合ってがたつきがない大きさとされるとより好適である。導電管20の内径は、ペン先部40の装着部をなす軸部41が脱落されない大きさとされる。
【0047】
金属軸体30の材質は限定されないが、木軸の外面14に露出されている金属軸体の端面31を、木軸の外面と同一面をなすように研磨加工しやすいように、柔らかい金属とするとよい(
図1(A)図,
図2(F)図参照)。例えば、銅、銅と亜鉛の合金である真鍮、金であれば、導電性に優れると共に、端面を容易に滑らかな面に研磨させやすい。特に、金属軸体を銅、真鍮とすると、銅にウイルスの失活効果があることから、人の指が触れる機会が多い金属軸体部分を衛生的に維持させることができ、好適である。
【0048】
木軸に挿嵌される金属軸体30は、隣り合う一対の金属軸体32が、木軸10の軸方向に垂直に隣接して配設されている(
図1(B)図参照)。各々の金属軸体30は、木軸10と導電管20とを横断するように貫通されているため、タッチペン1の先端から所望の位置において、木軸の周方向に均等に4つの金属軸体の端面31が露出される(
図1(A)図参照)。ここでは、隣り合う一対の金属軸体32の周面33が木軸の内部で接するように、金属軸体の直径と略同じ距離をずらして隣接配置させている(
図2(F)図参照)。隣り合う一対の金属軸体32が接し合っているため、金属軸体30と導電管20とを確実に導通させることができ、タッチパネルに検知されやすいタッチペンとすることができる。
【0049】
なお、隣り合う一対の金属軸体は、金属軸体の直径よりも僅かに短い距離をずらして隣接配置させてもよい。この場合には、軸方向に配列される3つの挿嵌孔12,12,12を穿孔させ、金属軸体を木軸に挿嵌させてから、前記3つの挿嵌孔と隣接して交差する挿嵌孔13,13,13を、軸方向に3列をなすように穿孔加工させればよい(
図1(B)図参照)。そうすると、先に挿嵌された金属軸体が、交差する挿嵌孔と重なっている部分については、木軸と導電管と共に切除されるため、交差する挿嵌孔に金属軸体を挿嵌させるときに、先に挿嵌された金属軸体に引っ掛かることがない。そのため、交差する挿嵌孔の穿孔位置を厳密に調整させなくても、隣り合う一対の金属軸体が接し合うように配置させることができる。
【0050】
また金属軸体は、木軸の軸方向に3列に並んで配置されている。隣り合う列同士の間隔は、指先から第1関節までの約20mmの間隔があけられている。具体的には、木軸の先端から約20mmの位置、約40mmの位置、約60mmの位置に配置されている。そのため、鉛筆書きのようにタッチペンの先方が把持された場合だけでなく、タッチパネルに手が触れないようにタッチペンの中央部が把持された場合であっても、タッチパネルを操作することができる。
【0051】
ペン先部40は、先端部42の形状が異なるペン先部の群から用途に合わせて交換可能とされている(
図1(B)図から
図1(E)図参照)。いずれのペン先部も、装着部が導電管に押し込まれて装着される円断面形状の軸部41であり、同一の外形形状をなしている。軸部41と先端部42との間には、導電管20の内径よりも太い径の膨出部43が備えられ、ペン先部40が導電管の適切な深さまで挿し込まれると、膨出部43の後方端面が導電管の先端部に引っ掛かる。ペン先が交換されるときには、膨出部43を摘んで引き抜けば、先端部42を損傷させることなくペン先部を交換させることができる。
【0052】
ペン先部の先端部42の形状は限定されず、市場に流通されている周知のペン先部であればよい。例えば、金属管からなる軸部41に導電性ゴム軸体44を挿通させ、導電性ゴム軸体の先端に円盤体45を備えさせたペン先部40であればよい(
図1(B)図参照)。この場合には、導電性ゴム軸体44の金属管の先端から突出された部分46が自由に側方に変形可能であるため、円盤部をタッチパネルに当接させやすい。そのため、タッチパネルに署名がされる場合だけでなく、スマートフォン・タブレットのタッチ操作にも適している。
【0053】
ほかにも、先端部42の形状を導電性の毛束とし、絵画用の筆に近似させたペン先部47としてもよい(
図1(C)図参照)。先端部42の形状を、先端が尖った鉛筆形状としたペン先部48としてもよい(
図1(D)図参照)。先端部の形状42を、導電性繊維が半球形状に編まれたものとし、スマートフォン等のタッチ操作に適したペン先部49としてもよい(
図1(E)図参照)。ペン先部の形状は、以上に限定されないことは勿論のことである。
【0054】
次に、タッチペンの製造方法について、
図2を参照して説明する。
図2(A)図は、角材100の中心位置に中空部11を穴開け加工する工程を示している。
図2(B)図は、木軸10の中空部11に導電管20を格納させる第1の工程と、木軸10を万年筆形状に切削させる工程とを示している。
図2(C)図は、木軸10と導電管20を一体にした状態で、金属軸体の挿嵌孔12を穿孔させる第2の工程を示している。
図2(D)図と
図2(E)図は、挿嵌孔12に金属軸体30を挿嵌させる第3の工程を示している。
図2(F)図は、木軸10と金属軸体30の外面を同時に研磨して滑らかな外面とする仕上げ工程を示している。
【0055】
まず、木軸10をなす断面が正方形形状とされる角材100の後端部101を回転治具により保持させ、角材100を先端面の中心回りに回転させる。角材100の先端面にドリルビットを突き当て、角材の中心位置に穴開け加工をし、導電管20を格納させる中空部11を形成させる(
図2(A)図参照)。次に、導電管20を中空部11に押し込んで格納させる(
図2(B)図参照)。導電管20の先端は、後の工程で、木軸10との先端の位置を一致させるように研磨させるため、この段階においては木軸の先端から僅かに突出される状態となっている。併せて、前記角材を回転させながら周面に切削刃を押し当て、角材を大まかに万年筆型の木軸形状に旋削加工させる。この段階においては角材の後端部101だけは切削せずに、角材の形状のまま残しておく。
【0056】
第2の工程においては、V字溝を有する固定具(図示を省略している)に、正方形形状をなす前記後端部101の角部を嵌合させ、木軸10が周方向に回転しない状態に保持させる。この状態で、木軸10と導電管20とを横断貫通させるようにドリルビットを側方から押し当て、金属軸体を挿嵌させる挿嵌孔12を穿孔させる。この挿嵌孔12は、先端から約20mm間隔をあけて3列となるように穿孔される(
図2(C)図参照)。この時に、ドリルビットが貫入した側の導電管20の管内壁において、挿嵌孔12の周囲が、僅かに突起21が立った状態となり、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となる。
【0057】
第3の工程においては、軸方向に並んだ3列の挿嵌孔12,12,12に、3本の金属軸体30,30,30を挿嵌させ、木軸の外面から突出された余剰部分34をニッパー等により切除させる(
図2(D)図参照)。次に、木軸を周方向に90度回転させて、前記と同様に、固定具に木軸10を保持させる。そして、先に穿孔された各々の挿嵌孔12,12,12と隣接されるように、金属軸体30の直径と略同じ距離だけ、木軸の軸方向にずらした位置に、交差される挿嵌孔13,13,13を穿孔させる(
図2(E)図参照)。前記と同様に、先に挿嵌させた金属軸体30に交差する金属軸体35を挿嵌孔13に挿嵌させ、木軸10の外面から突出された余剰部分を切除させる。この段階においては、木軸の外面14から金属軸体の尖った端面36が僅かに突出された状態となっている。
【0058】
次に、仕上げ工程として、未切削のままの前記後端部101を、回転治具に保持させ、木軸10を回転させながら金属やすりを前記尖った端面36に接触させるようにして、金属軸体30と木軸10とを一体に研磨させる(
図2(F)図参照)。金属軸体の端面31と木軸の外面14とが略同一面となったら、紙やすりを木軸10の周面に巻き付けるようにして、金属軸体の端面31と木軸の外面14とが、滑らかな同一面をなすように研磨させる。そして、未切削のままの後端部101と木軸10との境界部分102(
図2(E)図参照)に切削刃を押し当てて木軸10を切り離す。
【0059】
導電管20の先端面を木軸10の先端面に揃えるように、導電管の突出部分をディスクサンダーにより削り、導電管に所望のペン先部40を装着させ、タッチペン1が完成される(
図2(F)図参照)。第2の工程で説明したように、導電管20の管内壁において挿嵌孔の周囲が、僅かに突起21が立った状態となると共に、管形状が僅かに扁平に歪んだ状態となっている(
図2(C)図参照)。そのため、ペン先部40(
図2(F)図参照)の軸部41を導電管に押し込むと、前記軸部41の外周面と導電管20の歪んだ管内壁とが摺り合って挟持され、ペン先部40が脱落されにくい状態で、木軸10に装着される。
【実施例3】
【0063】
実施例3においては、鉛筆型のタッチペン3について、
図4を参照して説明する。
図4(A)図は鉛筆型のタッチペン3の斜視図を示している。
図4(B)図は、タッチペンの各部品を組み立てる前の状態を示している。
図4(C)図は、
図4(A)図のA−A位置における断面図を示している。
【0064】
木軸60は、断面が正六角形状の鉛筆型をなしている。より詳細には、鉛筆の削られた先端部に近似した形状をなすように、先端部61が細径となるように削られている。先端部61を除いた部分は軸の形状が後方まで同一断面形状としている(
図4(A)図参照)。また、木軸60は、各々の分割片62,62が均等に二分割されるように、対向する頂点を繋ぐ対角線に沿って分割されている(
図4(B)図参照)。中空部63と導電管22は、実施例2と同様に、木軸60の先方から後方まで延びている(
図4(C)図参照)。
【0065】
金属軸体70は、正六角形をなす6つの外面のうち、3つの外面64に均等に分散されて配置されている(
図4(C)図参照)。金属軸体70は、一方の端面71が、各々の木軸の外面64と同一面をなし、他方の端面72が導電管の内部空間23まで、導電管に貫通されている。木軸の周方向に配列された3つの金属軸体は、ペン軸と直交する一つの面において放射状に配列されている(
図4(C)図参照)。金属軸体70は、木軸60の先端から後方にかけて、約20mmの間隔をあけて、8列配列されている(
図4参照)。タッチペン3を把持する場合には、金属軸体70が挿嵌されている3つの外面64に指をかければ、軸方向のいずれの位置が把持されても、指がいずれかの金属軸体70の近傍に接する。これにより、把持される位置が限定されず、感度の高いタッチペンとされる。
【実施例4】
【0066】
実施例4においては、二分割させた木軸で、導電性薄膜体を挟んでなるタッチペン4を、
図5を参照して説明する。
図5(A)図は、タッチペン4の斜視図を示し、
図5(B)図は、タッチペン4の各部品を組み立てる前の状態を示している。
図5(C)図は、導電性薄膜体の両端部を研磨する前の状態を示している。
【0067】
導電性薄膜体80(
図5(B)図参照)は、導電性に優れた銅、アルミニウム、金、銀等からなる金属箔であればよい。特に、金属箔の両面に導電性接着剤層が積層された導電性テープであれば二分割させた木軸の接合も容易となるため、より好適である。導電性薄膜体80は、金属箔に限定されず、紙にカーボン粉末、金属粉末が混練されてなる導電紙であってもよく、樹脂基材に導電性接着剤層を積層させた導電性テープであってもよい。
【0068】
タッチペン4においては、導電性薄膜体80として、銅箔の両面に導電性接着剤層が積層された導電性両面テープ、又は、紙にカーボン粉末が混錬されてなる導電性カーボン紙が使用された試作品を作成し、タッチパネルが作動されることを確認している。前記導電性両面テープの厚さは、約0.06mmであり、前記導電性カーボン紙の厚さは、約0.08mmにすぎず、木軸の外面には導電性薄膜体の両側端部81が僅かに筋状に現れるだけであり、木軸の美観を損ねることもない(
図5(A)図参照)。
【0069】
木軸90は、万年筆型の木軸を先方から後方まで均等に二分割させている(
図5(B)図参照)。中空部91と導電管24の長さは、ペン先部の装着部を格納できればよく、木軸の先方のみに備えられればよく、例えば、約30mmの長さとされればよい。導電管24は、ペン先部が脱落されにくいように、予め後方側25を挟み潰し、僅かに扁平に変形させている。
【0070】
タッチペン4の製造工程は、まず一方の分割片92の中空部をなす半円柱形状の窪み93に導電管を嵌合させる。次に、分割片92よりも大きい導電性薄膜体80を、木軸の分割面94と導電管24の周面とに馴染むように貼着させる(
図5(B)図参照)。次に、他方の分割片95を導電性薄膜体80に貼着させ、二つの分割片92,95を接合させる(
図5(C)図参照)。最後に、導電性テープの余剰部分82と木軸の外面96とを一体に仕上げ研磨し、タッチペン4が完成される(
図5(A)図参照)。二分割させた木軸で導電性両面テープ等を挟み、分割片同士を接合させるだけであるため、製造が容易であり、量産に適している。
【0071】
また、試作品においては導電性薄膜体の両側端部81(
図5(A)図参照)を触らないように指先で木軸90部分だけを摘んだ場合であっても、スマートフォンのタッチパネルが反応することが確認された。換言すれば、導電性薄膜体80を分割面94の全面に貼着させた場合には、導電性薄膜体の両側端部82に直接触れなくても、タッチパネルを操作することができる。これにより、木軸を把持する位置、把持する態様もいずれも限定されず、木軸の美観を活かしたタッチペンとすることができる。
【0072】
(その他)
・本実施例においては、万年筆型と鉛筆型の木軸を説明したが、木軸の形状はこれに限定されないことは勿論のことである。
・実施例4のタッチペン4において、接合させた二つの分割片が分離されにくいように、分割面に対して斜めに交差する方向に金属軸体を配設させてもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。