(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記確認工程における充放電容量が、前記2つの電極の少なくとも一方が有する活物質の容量の1/2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセパレータの評価方法。
前記2つの電極の少なくとも一方は、セパレータと対向する部分の表面積が、前記セパレータの通電面積よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセパレータの評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
上記特許文献5に記載の評価方法では、一次電池のように電極間に直流を印加する。この場合、以下の不利点があった。
(1)直流で永続的に生成されるデンドライトに対する耐久性は数値化できるが、充放電サイクルを繰り返す実際の二次電池でのサイクル寿命との整合性が得られない。
(2)充放電時間が経過すると電極反応界面が広くなるため、時間経過に伴って実質的な電流密度が低下し、デンドライト形状が大きく変わり、長期間にわたって安定的な条件下で評価することができず、デンドライト抑止性能を定量的に評価することができない(例えば、J. Phys. Chem. C 2007, 111, 1150-116を参照。)。
(3)2つの電極の一方のみからデンドライトが成長するため、測定時間が長引き、デンドライト抑止性能を迅速に評価することができない。
(4)上記特許文献5に記載の評価方法では亜鉛等がイオンに変わる反応ばかりであるため、デンドライト抑止性能が高いセパレータを長時間かけて評価する場合に、外部からさらに反応に必要な原料(亜鉛、電解液等)を補充したり、大量の原料を搭載するために大型の測定装置を用いたりする必要があり、評価を簡便におこなうことができない。また、特許文献5の段落〔0075〕に記載のように後から原料を補充すると、測定装置内の条件が変わってしまい、連続的で安定な評価ができないおそれがある。
【0014】
<本発明のセパレータの評価方法>
本発明のセパレータの評価方法は、電解質を保持する電解槽容器内で、セパレータで互いに隔離された、充放電に伴って形態変化が起こる2つの電極で充電反応と放電反応とを交互にかつ互いに逆反応となるように行い、2つの電極間の短絡を確認する工程を含む。
本発明の評価方法は、実際の二次電池のように充電と放電とを繰り返すため、以下の利点である。
(1)実際の二次電池のサイクル寿命と整合性のある評価が可能である。
(2)充放電時間が経過しても電極の反応界面があまり広くならず、時間経過に伴って電流密度が低下する程度が小さく、デンドライト形状が大きく変わらないため、長期間にわたって安定的な条件下で測定が可能であり、その結果、デンドライト抑止性能を定量的に評価することができる。
(3)2つの電極のそれぞれからデンドライトが成長するため、短絡が生じるまでの測定時間を短縮することができ、迅速な評価が可能である。
(4)本発明の評価方法では2つの電極で充放電を交互に行うため、デンドライト抑止性能が高いセパレータを評価する場合であっても、外部から更に反応に必要な原料を補充したり、大量の原料を搭載するために大型の測定装置を用いたりする必要がなく、簡便な評価が可能である。また、外部から更に原料を供給しない場合は、測定装置内の条件が変わることを防止し、連続的で安定な評価が可能であるため、定量性により優れた評価を行うことができる。
【0015】
本発明のセパレータの評価方法において、2つの電極間の短絡を確認する手段は特に限定されず、電圧又は抵抗の低下やその他の物性値の変動等の確認、短絡自体の視認等が挙げられるが、上記確認工程は、電圧又は抵抗の低下によって2つの電極間の短絡を確認することが好ましい。2つの電極間の短絡により、電圧や抵抗は明らかに急激・非連続的に低下するため、デンドライトがセパレータを突き破って短絡が生じたことを容易に確認することができる。
【0016】
本発明のセパレータの評価方法において、上記確認工程における充放電容量が、上記2つの電極の少なくとも一方が有する活物質の容量の1/2以下であることが好ましい。
言い換えれば、上記確認工程における上記2つの電極の少なくとも一方が有する活物質の利用率(電極が有する活物質量の内、電池反応に使用され、溶解する活物質の最大量の割合〔質量割合〕を言い、本明細書中、電極利用率とも言う。)を50%以下とすることが好ましい。これにより、電池反応中に電池の下地が維持されることになり、電極が大きく形態変化することがなくなるため、より連続的で安定な評価が可能となり、セパレータのデンドライト抑止性能をより定量性良く評価することができる。
中でも、上記確認工程における充放電容量が、上記2つの電極それぞれが有する活物質の容量の1/2以下であることがより好ましい。
【0017】
また上記確認工程における充放電容量が、上記2つの電極の少なくとも一方が有する活物質の容量又は上記2つの電極それぞれが有する活物質の容量の1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることが更に好ましく、1/5以下であることが特に好ましい。
【0018】
上記確認工程において、2つの電極で充電反応と放電反応とを一定の時間間隔毎に切り替えることが好ましい。
上記時間間隔は、より連続的で安定な評価を行う観点から、40分以下であることがより好ましく、30分以下であることが更に好ましく、20分以下であることが一層好ましく、12分以下であることが特に好ましい。上記時間間隔は、その下限は特に限定されないが、通常は1分以上であり、3分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましい。また、充電反応から放電反応への切替え間、放電反応から充電反応への切替え間、又は、これらの両方に、電流を流さない時間(休止時間)を設けてもいい。休止時間としては、評価時間短縮の観点では短い方が好ましいが、充放電反応に伴うイオンの偏りを解消する観点から、直前の反応時間の0.1倍〜10倍であることが好ましい。より好ましくは0.5倍〜5倍であり、更に好ましくは0.8倍〜1.2倍である。
【0019】
本発明の評価方法において、上記2つの電極の少なくとも一方は、セパレータと対向する部分の表面積が、上記セパレータの通電面積よりも小さいことが好ましい。また、均一な電流を電極間に流す観点では、電極の、少なくとも外周部(エッジ部)を絶縁処理することが望ましい(例えば、電極外周部に沿って外周部だけを絶縁した場合を
図2に、電極外周部を含むより広い部分を絶縁し、特定形状の開口部を設けた場合を
図3に示す。)。エッジ部の絶縁処理としては、例えば絶縁性の塗料を塗布して塗膜化する方法や絶縁性のフィルムを配置する方法があるが、通電可能な開口部を設けつつ端部が電気的に絶縁されれば特に限定されない。これにより、電極全体に均一な電流密度を印加することができ、連続的で安定な評価を行うことができる。中でも、上記2つの電極それぞれの、セパレータと対向する部分の表面積が、いずれもセパレータの通電面積よりも小さく、セパレータ面に対して平行に配置されていることがより好ましい。
【0020】
本発明の評価方法において、上記確認工程における充放電電流密度が、上記セパレータの通電面積に対して1〜100mA/cm
2であることが好ましい。該充放電電流密度が1mA/cm
2以上であることにより、より迅速に評価を行うことが可能である。また、該充放電電流密度が100mA/cm
2以下であることにより、水の分解反応が生じることを充分に防止することができる。
上記充放電電流密度は、10mA/cm
2以上であることがより好ましく、25mA/cm
2以上であることが更に好ましく、40mA/cm
2以上であることが特に好ましい。また、該充放電電流密度は、90mA/cm
2以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明のセパレータの評価方法において、上記2つの電極は、充放電に伴って形態変化が起こる電極である限り特に限定されず、その材料として、一次電池や二次電池の正極活物質や負極活物質として通常用いられるものを使用できるが、中でも亜鉛種、カドミウム種、又は、リチウム種を含むものであることが好ましく、より迅速な評価を行う観点からは、亜鉛種を含むものであることがより好ましい。
本発明のセパレータの評価方法において、例えば、上記2つの電極が亜鉛を有する電極及び酸化亜鉛を有する電極であることが特に好ましい。亜鉛を有する電極が放電側になり、酸化亜鉛を有する電極が充電側になる。なお、亜鉛を有する電極は、亜鉛を活物質の主成分として有する限り、更に酸化亜鉛を有していてもよく、酸化亜鉛を有する電極は、酸化亜鉛を活物質の主成分として有する限り、更に亜鉛を有していてもよい。
活物質の主成分とは、活物質の含有割合として最も質量割合が多いことを言う。なお、上記確認工程において、通常、亜鉛を有する電極と酸化亜鉛を有する電極とは入れ替わる。
【0022】
上記2つの電極は、集電体上に上記材料層を形成することで製造することができる。
電極を構成する集電体としては、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;アルカリ(蓄)電池や空気亜鉛電池に集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
【0023】
上記2つの電極は、セパレータを介して隔てられるが、セパレータと直接接していても、接していなくてもよい。また、セパレータと直接接していない場合に、セパレータからの距離をそろえるために、多孔性部材を挿入することもできる。該多孔性部材としては、多孔性部材が通常有する透気度を有する限り特に限定されないが、不織布や微多孔膜等の多孔性基材が望ましく、測定対象であるセパレータよりも透気度が高いことが好ましい。電極とセパレータとの距離は、1000μm以下が好ましく、より好ましくは700μm以下であり、更に好ましくは500μm以下である。1000μmを超えて電極がセパレータから離れると、デンドライトがセパレータに到達せず、正しく測定できない可能性が生じる。
【0024】
本発明のセパレータの評価方法において、上記電解質は、電解液であることが好ましく、水系電解液がより好ましく、中でも、アルカリ性電解液が好ましい。アルカリ性電解液中ではデンドライトが成長し易いため、より迅速な評価が可能である。また、アルカリ性電解液を含んで構成される電池に用いた場合のセパレータのデンドライト抑止性能をより正確に評価できる。アルカリ性電解液の種類、濃度等は、適宜設定できるが、セパレータを用いる電池のアルカリ性電解液と同じ条件とすることが好ましい。アルカリ性電解液としては、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等が挙げられる。上記水系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。
【0025】
また、水含有電解液は、有機溶剤系電解液に用いられる有機溶剤を含んでいてもよい。該有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、イオン性液体、フッ素含有カーボネート類、フッ素含有エーテル類、ポリエチレングリコール類、フッ素含有ポリエチレングリコール類等が挙げられる。上記有機溶剤系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。上記有機溶剤系電解液の電解質としては、特に制限はないが、LiPF
6、LiBF
4、LiB(CN)
4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)等が好ましい。
有機溶剤系電解液を含む水含有電解液の場合、水系電解液と有機溶剤系電解液の合計100質量%に対して、水系電解液の含有量は、好ましくは10〜99.9質量%、より好ましくは20〜99.9質量%である。
【0026】
本発明の評価方法において、上記確認工程における、下記式(1);
X=A
2/(100−B) (1)
(式中、Aは、サイクル寿命(サイクル数)を表す。Bは、電極利用率(%)を表す。)で表されるXが100以上であるセパレータを良品とすることが好ましい。これにより、より正確な定量評価が可能となる。また、上記Xが150以上であるセパレータを良品とすることがより好ましい。
上記Xは、その上限値は特に限定されず、大きい程性能に優れるが、通常は50000以下である。
なお、いずれかの電極利用率で上記Xが基準以上であれば良品であるが、中でも、50%以下のいずれの電極利用率でも上記Xが基準以上であることが好ましい。
【0027】
<本発明のセパレータ>
本発明は、ポリマーと無機粒子の複合体を含む、本発明の評価方法にて良品となるセパレータでもある。
本発明のセパレータは、ポリマーと無機粒子の複合体を含むため、アニオン伝導性膜である。このようなアニオン伝導性膜は、水酸化物イオンは充分に透過しながら、アニオンであってもイオン半径の大きな金属イオン(例えば、亜鉛負極の電極反応で生じる亜鉛酸イオン)の拡散は充分に防止することができるため、これをセパレータとして用いることにより得られる電池が良好な性能を発揮することができる。また、本発明のセパレータは、本発明の評価方法にて良品となるものであるため、充放電に伴って形態変化が起こる電極を含んで構成される電池のデンドライトによる正極と負極との短絡をより抑制し、電池をより長寿命化させることができる。
以下に、本発明のセパレータが含むポリマー、及び、無機粒子について順に説明する。本発明のセパレータは、後述するポリマー、無機粒子を、それぞれ1種含んでいてもよく2種以上含んでいてもよい。
【0028】
(ポリマー)
上記ポリマーとしては、セパレータ形成材料を増粘等させて材料中の成分同士を結着させることができるものであればよく、例えば、ポリエチレン等の脂肪族炭化水素基含有ポリマー、ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコール等の水酸基含有ポリマー;ポリアクリルアミド等のアミド基含有ポリマー;ポリマレイミド等のイミド基含有ポリマー;(メタ)アクリル系ポリマー;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン原子含有ポリマー;アンモニウム塩含有ポリマー;ホスホニウム塩含有ポリマー;イオン交換性ポリマー;天然ゴム;共役ジエン系ポリマー;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)等の糖類;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー等が挙げられ、これらの中の1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。これらポリマーが官能基を有する場合には、それを主鎖及び/又は側鎖に有していても良く、架橋剤との結合部位として存在してもよい。また、上記ポリマーは、有機架橋剤化合物により架橋されていてもよい。
【0029】
上記ポリマーは、中でも、共役ジエン系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。
共役ジエン系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル系ポリマーを含む本発明のセパレータは、亜鉛酸イオン等の金属イオンの浸透は抑制し、水酸化物イオンは透過する良好な水酸化物イオンの選択的透過性を有し、かつ、空隙の少ない膜であることから、電池をより長寿命化させることができる。なお、共役ジエン系ポリマーを用いて形成されたアニオン伝導性膜はアルカリ耐性を有することから、アルカリ性の電解液と接触する電池のセパレータの材料として好適に用いることができる。
【0030】
上記ポリマーは、更に、酸基含有ビニル単量体由来の構成単位を有することが好ましい。酸基含有ビニル単量体としては、例えば、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸がより好ましい。
上記ポリマーを構成する全構成単位100質量%中、酸基含有ビニル単量体由来の構成単位の質量割合は、0.1質量%以上であることが好ましい。該質量割合は、10質量%以下であることが好ましい。
【0031】
上記ポリマーは、重量平均分子量が、1万以上、650万以下であることが好ましい。重量平均分子量は、2万以上であることがより好ましい。上記重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算された重量平均分子量として測定することができる。
装置:東ソー株式会社製 HCL−8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・H
2O、リン酸入りNMP):0.01mol/L
【0032】
上記ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が−40℃以上、50℃以下であることが好ましい。ポリマーのTgが−40℃未満の場合にはセパレータの機械的強度が不足し、デンドライト抑制効果が低くなるおそれがある。また、Tgが50℃を超える場合には、セパレータが硬脆くなりすぎ、電池を形成する際にセパレータにクラック等が入ることにより、電池の寿命性能を低下させるおそれがある。
ポリマーのTgは、ポリマーをガラス板に塗布し、120℃で1時間乾燥することにより、ポリマーフィルムを形成し、得られたポリマーフィルムについて、示差走査熱量計(装置名:熱分析装置DSC3100S、BRVKER)を用いて測定されるものである。
【0033】
上記ポリマーは、例えば、上述したポリマーが含む構成単位を形成するモノマー成分を重合することにより製造することができる。
モノマー成分の重合方法としては特に限定されず、例えば、水溶液重合法、乳化重合法、逆相懸濁重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法を挙げることができる。これらの方法の中でも、簡便に製造できる観点から、乳化重合法を用いることが好ましい。乳化重合には、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤を好適に使用できる。
【0034】
上記各モノマー成分の重合には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては通常用いられているものを1種又は2種以上使用することができる。
上記重合開始剤の使用量としては、ポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対して、0.02質量%以上、2質量%以下であることが好ましい。
【0035】
上記各単量体成分の重合には、重量平均分子量を調整する目的で、t−ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度や濃度等の重合反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、共役ジエン系重合体の原料として用いられた全単量体成分100質量%に対して、10質量%以下とすることが好ましい。重量平均分子量を調整する観点から、0.01質量%以上とすることが好ましい。
【0036】
上記ポリマーを製造する重合反応の温度は、重合反応が進行する限り特に限定されないが、20℃以上、100℃以下であることが好ましい。該温度は、より好ましくは、40℃以上、90℃以下である。
また、重合反応の時間は、特に限定されないが、生産性を考慮すると、1時間以上、10時間以下が好ましい。
【0037】
上記ポリマーの含有量は、セパレータの機械的強度及びイオン伝導性の観点から、セパレータ100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。また、該含有量は、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
(無機粒子)
上記無機粒子が含む元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、及び、Brからなる群より選択される少なくとも1つの元素であることが好ましい。
【0039】
上記無機粒子としてば、例えば、酸化物;水酸化物;層状複水酸化物;粘土化合物;固溶体;合金;ゼオライト;ハロゲン化物;カルボキシラート化合物;炭酸化合物;炭酸水素化合物;硝酸化合物;硫酸化合物;スルホン酸化合物;ヒドロキシアパタイト等のリン酸化合物;亜リン化合物;次亜リン酸化合物、ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硫化物;オニウム化合物;塩等が挙げられる。これらの中でも、上記無機粒子は、例えば酸化物、水酸化物、層状無機化合物、及び、硫化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0040】
上記酸化物としては、例えば酸化セリウム、酸化ジルコニウムが好ましい。より好ましくは、酸化セリウムである。また、酸化セリウムは、例えば、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム等の金属酸化物との固溶体であってもよい。酸素欠陥を持つものであってもよい。
上記水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化セリウム、水酸化ジルコニウムが好ましい。
【0041】
上記層状無機化合物は、1層だけであってもよく、2層以上が積層されたものであってもよい。上記層状無機化合物としては、例えば層状複水酸化物が挙げられる。
上記層状複水酸化物とは、下記式;
[M
11−xM
2x(OH)
2](A
n−)
x/n・mH
2O
(M
1は、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu、Mnのいずれかである二価の金属イオンを表す。M
2は、Al、Fe、Mn、Co、Cr、Inのいずれかである三価の金属イオンを表す。A
n−は、OH
−、Cl
−、NO
3−、CO
32−、COO
−等の1〜3価のアニオンを表す。mは0以上の数である。nは、1〜3の数である。xは、0.20〜0.40の数である。)に代表される化合物である。なお、A
n−は、2価以下のアニオンであることが好ましい。
このような層状複水酸化物は、天然産のもの(例えばハイドロタルサイト(Hydrotalcite)、マナッセイト(Manasseite)、モツコレアイト(Motukoreaite)、スティッヒタイト(Stichtite)、ショグレナイト(Sjogrenite)、バーバートナイト(Barbertonite)、パイロアウライト(Pyroaurite)、イオマイト(Iomaite)、クロロマガルミナイト(Chlormagaluminite)、ハイドロカルマイト(Hydrocalmite)、グリーン ラスト1(Green Rust 1)、ベルチェリン(Berthierine)、タコバイト(Takovite)、リーベサイト(Reevesite)、ホネサイト(Honessite)、イヤードライト(Eardlyite)、メイキセネライト(Meixnerite)等)の他、人工的に合成されたものであってもよく、150℃〜900℃で焼成することにより、脱水した化合物や、層間内の陰イオンを分解させた化合物、層間内の陰イオンを水酸化物イオン等に交換した化合物であってもよい。これらの層状複水酸化物の中でも、ハイドロタルサイト等のMg−Al系層状複水酸化物が好ましい。上記層状複水酸化物には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。
上記硫化物としては、例えば硫化セリウム、硫化ジルコニウムが好ましい。
【0042】
上記無機粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。
【0043】
また上記無機粒子は、その平均粒子径が10nm〜100μmであることが好ましい。平均粒子径が100μm以下であることにより、セパレータが有する金属及び/又は金属化合物の質量に対する表面積をより大きくし、デンドライトがセパレータを突き抜けることをより抑制する。なお、その平均粒子径の下限は特に限定されないが、平均粒子径は通常は10nm以上である。
上記平均粒子径は、0.2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に適切な量の金属及び/又は金属化合物を分散させた溶液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所)を用いて測定されるものである。
【0044】
上記無機粒子の割合は、本発明のセパレータ100質量%中、25質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、35質量%以上であり、更に好ましくは、40質量%以上である。また、80質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、70質量%以下である。
【0045】
本発明のセパレータは、更に、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、カーボン等が挙げられる。
上記その他の成分の含有割合は、本発明のセパレータ100質量%中、5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、1質量%以下であり、更に好ましくは、0.2質量%以下である。
【0046】
本発明におけるセパレータを形成するためのセパレータ形成材料の調製方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
セパレータ形成材料(好ましくは、上記ポリマー、上記無機粒子、及び、必要に応じて上記その他の成分)と共に、必要に応じて、上記その他の成分を混合する。混合には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、レディミル、ボールミル等を使用することができる。混合の前に、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤を加えても良い。
【0047】
セパレータ形成材料からセパレータを製造する方法は、膜が形成される限り特に制限されず、セパレータ形成材料をロールで圧延して膜状に成形する方法、平板プレス等で圧延して膜状に成形する方法や、射出成形法、押出成形法、キャスト法等の膜状に成形する方法を用いることができる。これらの成形方法は単独で用いてもよく、2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
上記製造方法は、セパレータ形成材料を膜状に成形する工程の他に、膜を乾燥させる工程を含んでいてもよい。乾燥温度は適宜設定すればよいが、60℃〜160℃で行うことができる。
【0048】
本発明のセパレータは、更に多孔質材料を含み、前記複合体が多孔質材料に含浸していることが好ましい。
上記多孔質材料としては、例えば、不織布、濾紙、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有重合体、ポリテトラフルオロエチレン部位含有重合体、ポリフッ化ビニリデン部位含有重合体、セルロース、フィブリル化セルロース、ビスコースレイヨン、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール含有重合体、セロファン、ポリスチレン等の芳香環部位含有重合体、ポリアクリロニトリル部位含有重合体、ポリアクリルアミド部位含有重合体、ポリハロゲン化ビニル部位含有重合体、ポリアミド部位含有重合体、ポリイミド部位含有重合体、ナイロン等のエステル部位含有重合体、ポリ(メタ)アクリル酸部位含有重合体、ポリ(メタ)アクリル酸塩部位含有重合体、ポリイソプレノールやポリ(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有重合体、ポリカーボネート等のカーボネート基含有重合体、ポリエステル等のエステル基含有重合体、ポリウレタン等のカルバメートやカルバミド基部位含有重合体、寒天、ゲル化合物、有機無機ハイブリッド(コンポジット)化合物、イオン交換膜性重合体、環化重合体、スルホン酸塩含有重合体、第四級アンモニウム塩含有重合体、第四級ホスホニウム塩重合体、環状炭化水素基含有重合体、エーテル基含有重合体、セラミックス等の無機物等からなる膜であって、多孔質性のものが挙げられる。これらのセパレータは1種用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0049】
上記多孔質材料における多孔質は、本発明の技術分野において多孔質と言えるものであればよいが、中でも、旭精工株式会社 王研式透気度平滑度測定装置 KY−55で測定し、測定値の平均値を算出することで求められる透気度値が例えば1000s以上であることが好ましい。なお、透気度値は、その上限値は特に限定されないが、通常100000s以下である。
【0050】
本発明の評価方法で良品とされたセパレータは、特に負極活物質としてリチウム種、亜鉛種、又は、カドミウム種を含有する負極を含んで構成される電池等の電池用セパレータとして好適に用いることができるものであり、本発明の評価方法を用いることで、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制することができ、電池を長寿命化することができるセパレータを正確、簡便かつ迅速に選別できる。
【0051】
本発明のセパレータを適用する電池の形態は一次電池;充放電が可能な二次電池(蓄電池);メカニカルチャージ方式の電池(亜鉛負極を機械的に交換する電池);第三極方式の電池(負極と、充電に適した電極と、放電に適した電極とを用いて構成される電池)、燃料電池等、いずれの形態であっても良いが、二次電池又は燃料電池が好ましい。
上記電池の構成は特に制限されないが、アルカリ乾電池、酸化銀電池、マンガン−亜鉛電池、ニッケル−亜鉛電池、燃料電池、空気電池等、アルカリ性電解液を使用する電池であることが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0053】
下記電解液を保持する電解槽容器内で、下記セパレータで互いに隔離されるように下記2つの電極を配置して測定装置を構築し、2つの電極で充電反応と放電反応とを交互にかつ互いに逆反応となるように充放電試験を実施した。
【0054】
(電極)
2cm×2cmに切り出した集電体(Sn/Niメッキパンチング鋼板)上に亜鉛板(0.5mm厚)を溶接し、その上にZnO:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)=97:3の質量比で混合した亜鉛活物質を平板プレス機により圧着し、亜鉛/酸化亜鉛合剤電極を作製した。ここで、亜鉛合剤電極の理論活物質量は、80mAh/cm
2とした。
外周部の絶縁処理としてエポキシ樹脂(関西ペイント社製ミリオンクリアー)を電極外周部に沿って幅1mmとなるように塗布した(
図2参照)。
【0055】
(電解液)
6.7mol/Lに調整された水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を飽和濃度まで溶かした溶液を電解液とした。
【0056】
(セパレータ)
[共役ジエン系共重合体の調製例]
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計、及び、還流冷却管を備えたフラスコ内にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、脱イオン水57質量部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素ガスで置換した。
一方、滴下ロートにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、スチレン58質量部、1,3−ブタジエン40質量部、フマル酸2質量部、t−ドデシルメルカプタン0.5質量部および脱イオン水38質量部を仕込み、プレエマルションを調製した。その後、フラスコ内にゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら撹拌下で65℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液6質量部を添加し、次いで、前記で得られたプレエマルションを5時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、脱イオン水5質量部で滴下ロートを洗浄し、得られた洗浄液をフラスコ内に滴下した。その後、フラスコ内の内容物を65℃で2時間維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、不揮発分含量が48.1質量%の共役ジエン系共重合体の水分散液を得た。
【0057】
[セパレータの調製例]
ハイドロタルサイト(商品名:DHT−6、協和化学工業社製、平均粒子径0.20μm)100質量部、上記調製例で調製した共役ジエン系共重合体の水分散液100質量部及び純水25質量部を計り取り、ニーダーを用いて均一な状態になるまで混練を行った後、得られた混練物を厚さ100μmになるまでロールプレスすることで、セパレータを作製した。
【0058】
セパレータとして下記3種類について検討した。
(1)微多孔性膜:(1−1)ナイロン製不織布(厚み160μm)、(1−2)ポリオレフィン製親水性微多孔膜(厚み25μm)をそれぞれ用いた。
(2)アニオン伝導性膜:上記セパレータの調製例で調製したアニオン伝導性膜(特願2015−213144に記載の実施例1のアニオン伝導性膜と同一。厚み101μm)を用いた。
(3)多孔体含浸膜:上記セパレータの調製例の混練物(特願2015−213144に記載の実施例1の混練物と同一)をナイロン製不織布と圧延することで繊維物質と一体化したセパレータを用いた。
【0059】
(充放電試験装置)
北斗電工社製充放電試験装置(HJ−1005SD8)を用いた。
(測定器)
電極間の短絡は、HIOKI社製バッテリーハイテスタ(BT3554)を用いて2つの電極間の抵抗を測定し、抵抗の急激な低下によって確認した。抵抗の急激な低下とは、サイクル毎に電極間抵抗を測定した場合に、前サイクルの電極間抵抗に比べて10%以上の低下率があった場合を指す。この測定は、上記バッテリーハイテスタで測定できるが、充放電試験装置における電流−電圧の測定値から算出することもできる。
【0060】
<直流電流による評価>
(比較例1)
電流密度10mA/cm
2の直流電流を印加した結果、下記の表1に示す試験結果となった。
【0061】
【表1】
【0062】
測定時間が経過すると共に片方の亜鉛極からデンドライトの成長がみられるとともに、もう一方の電極では搭載していた金属亜鉛種が酸化される。このため、元々搭載していた金属亜鉛を消費してしまうと、水の電気分解が生じることにより水素発生反応に変わる(測定可能な時間が短い。)。上記試験では集電体上に0.5mm厚の亜鉛金属板を張り付けていたが、集電体との接点の酸化により実質的な放電可能電気量は30mAh/cm
2程度の放電能力であった。
このように直流電流によるセパレータ評価を長期間実施するためには、予め放電するための原料として金属亜鉛種を大量に搭載しておく必要がある。
【0063】
<交流測定による評価>
(実施例1)
次に比較例1と同様な構成で測定装置を構築し、直流電流の印加ではなく、定められた電気量での充放電試験を実施した。
ここでは、電流密度を80mA/cm
2に固定し、10分、15分、30分、48分毎に充放電電流の向きを切り替えて測定を実施した。
下記表2及び表3に、各測定により得られたサイクル数及びX値を示す。
なお、X値は、下記一般式(1);
X=A
2/(100−B) (1)
(式中、Aは、サイクル寿命(サイクル数)を表す。Bは、電極利用率(%)を表す。)で表される。X値が100以上であるセパレータを良品とする。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
実施例1の結果から、(2)アニオン伝導性膜及び(3)多孔体含浸膜は、50%以下のいずれの電極利用率でもX値が100以上であり、良品であると評価できる。
実施例1では、電極に金属亜鉛種を大量に搭載したり、金属亜鉛種を追加したりすることなく、長時間の安定的な評価が可能であり、(2)アニオン伝導性膜、(3)多孔体含浸膜のデンドライト抑制能力が優れることを定量的かつ迅速に評価することができた。また、実施例1の測定方法は、実際の二次電池と同様に充放電反応を行うことから、実際の二次電池のサイクル寿命と整合した評価結果が得られるものと考えられる。
【0067】
なお、電極利用率が50%を超えると、亜鉛極が大きく形態変化するためにセパレータ性能に関係なく性能低下が生じるおそれがある。このため、本試験は電極に搭載している容量の50%以下の利用率で評価することが好ましい。