【文献】
水蒸気吸着等温線による表面特性の評価,住化分析センターテクニカルニュースTN249,2021年 1月15日,URL,https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/pdf/tn249.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0〜150質量部、(C)非繊維状無機充填材10〜200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上である無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
前記(C)非繊維状無機充填材が、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理される、請求項1または2記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について、以下具体的に説明する。なお、以下では無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を単にポリアミド樹脂組成物ともいう。
まず、本発明で使用することのできる各成分について詳しく述べる。
【0015】
[(A)ポリアミド]
「ポリアミド」とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。本発明で用いられるポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(c)ジアミンおよびジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられる。ポリアミドは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。以下、本発明で用いられるポリアミド樹脂の原料について説明する。
【0016】
上記(a)ポリアミドの原料となるラクタムとしては、特に限定されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、およびドデカラクタムなどが挙げられる。
【0017】
また、上記(b)ポリアミド樹脂の原料となるω−アミノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸などが挙げられる。なお、上記(a)ポリアミドおよび(b)ポリアミドは、それぞれ2種以上のラクタムまたはω−アミノカルボン酸を併用して縮合させたものであってもよい。
【0018】
続いて、上記(c)ポリアミドの原料となるジアミン(単量体)としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンなどが挙げられる。
【0019】
他方、上記(c)ポリアミドの原料となるジカルボン酸(単量体)としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。
上記(c)ポリアミドは、それぞれ1種単独または2種以上のジアミンおよびジカルボン酸を併用して縮合させたものであってもよい。
【0020】
ポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド410(ポリテトラメチレンセバカミド)、ポリアミド412(ポリテトラメチレンドデカミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド1010(ポリデカメチレンセバカミド)、ポリアミド1012(ポリデカメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、およびポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドなどが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられるポリアミドの末端基としては、特に限定されないが、一般にアミノ基またはカルボキシル基が存在する。本発明に用いるポリアミドにおけるアミノ末端基量とカルボキシル末端基量との総量に対するアミノ末端基量の比[アミノ末端基量/(アミノ末端基量+カルボキシル末端基量)]は、0.3以上4.0以下であることが好ましく、0.3以上1.5以下がより好ましく、0.5以上1.2以下がさらに好ましい。末端基量の比が上記範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物から得られる成形体の、色調、機械的強度、および耐振動疲労特性がより優れる傾向にある。なお、2種類以上のポリアミドを含む場合は、それらの混合物としての末端基量の比がこの範囲になることで同様の効果が得られる。
【0022】
ポリアミドのアミノ末端基量は、好ましくは10〜100μmol/gであり、より好ましくは15〜80μmol/gであり、さらに好ましくは30〜80μmol/gである。アミノ末端基量が上記範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度がより優れる傾向にある。なお、2種類以上のポリアミドを含む場合は、それらの混合物としての末端基量がこの範囲になることで同様の効果が得られる。
【0023】
ここで、本明細書におけるアミノ末端基量およびカルボキシル末端基量の測定方法の例としては、
1H−NMR法や滴定法が挙げられる。
1H−NMR法おいては、各末端基に対応した特性シグナルの積分値によって求めることができる。滴定法においては、アミノ末端基については、ポリアミド樹脂のフェノール溶液を0.1N塩酸で滴定する方法、カルボキシル末端基については、ポリアミド樹脂のベンジルアルコール溶液を0.1N水酸化ナトリウムで滴定する方法等が挙げられる。
【0024】
さらに、本発明で用いられるポリアミドの末端基の濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。調整方法としては、特に限定されないが、例えば、末端調整剤を用いる方法が挙げられる。具体例として、ポリアミドの重合時に所定の末端濃度となるように、モノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物、およびジカルボン酸化合物からなる群より選択される1種以上の末端調整剤を添加することが挙げられる。末端調整剤の溶媒への添加時期については、末端調整剤として本来の機能を果たす限り特に限定されず、例えば、上記したポリアミドの原料を溶媒に添加する際があり得る。
【0025】
上記モノアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンおよびジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミンおよびジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミンおよびナフチルアミン等の芳香族モノアミン、並びにこれらの任意の混合物などが挙げられる。中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性や価格などの観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンおよびアニリンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記ジアミン化合物は、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記モノカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸およびイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。本発明では、これらのカルボン酸化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記ジカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸およびスベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から誘導される単位(ユニット)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明において、(A)ポリアミド樹脂は、ISO 307に準拠し、質量分率96%の硫酸で測定されるした粘度数(VN)が、80〜180ml/gであることが、機械的強度、射出成形時の流動性、外観の観点から好ましい。より好ましくは80〜150ml/g、さらに好ましくは100〜150ml/gであり、特に好ましくは、115〜150ml/gである。
【0030】
本発明で用いられる(A)ポリアミド樹脂の配合量は、流動性と外観の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して30〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは35〜80質量%、さらに好ましくは35〜75質量%、特に好ましくは40〜70質量%である。
【0031】
[(B)ガラス繊維および/または炭素繊維]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維および/または炭素繊維を含有することにより、優れた機械的強度、耐衝撃性、剛性が得られる。
【0032】
ガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的強度をポリアミド樹脂組成物に付与できる観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、および重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものがさらに好ましい。
【0033】
また、ガラス繊維および炭素繊維は、断面が円形状であっても、偏平状(楕円状、繭型形状など)であってもよい。偏平状であると、耐衝撃性、低反り性の観点で好ましい。
ガラス繊維の繊維径は、偏平状の場合は、優れた機械的強度と外観、低反り性の観点から、平均短径が3〜15μmが好ましく、より好ましくは4〜10μmであり、さらに好ましくは5〜9μmである。
【0034】
本明細書における数平均繊維径および重量平均繊維長は、以下の方法により測定することができる。
ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上のガラス繊維および/または炭素繊維を任意に選択し、SEM(走査型電子顕微鏡Scanning Electron Microscope)で観察して、これらの繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定する。併せて、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める。
【0035】
ガラス繊維および炭素繊維は、シランカップリング剤などにより表面処理を施してもよい。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
特に、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0036】
また、ガラス繊維および炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級および第3級アミンとの塩などを含んでもよい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ガラス繊維および炭素繊維は、公知のガラス繊維および炭素繊維の製造工程において、連続的に反応させることにより得られる。
具体的には、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、集束剤をガラス繊維および炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによりガラス繊維および炭素繊維が得られる。
繊維ストランドはロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を行いチョップドガラスストランドとして使用してもよい。
【0038】
集束剤は、ガラス繊維または炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。
【0039】
ガラス繊維および炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量は、ガラス繊維または炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上相当であることが好ましい。一方、本発明のポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下相当であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、またはストランドの乾燥後に切断工程を行ってもよい。
【0040】
本発明で用いられるガラス繊維および/または炭素繊維の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0〜150質量部である。好ましくは15〜150質量部、より好ましくは25〜120質量部、さらに好ましくは30〜100質量部である。また、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対しては、0〜57質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜55質量%、さらに好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。
【0041】
[(C)非繊維状無機充填材]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(C)非繊維状無機充填材を含んでいる。非繊維状無機充填材を含有することにより、優れた機械的強度、外観と剛性が得られる。非繊維状無機充填材としては、球状、板状、棒状、針状、粒状、鱗片状の形状であることが好ましい。
非繊維状無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトが挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
例示した中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度および剛性を増大させる観点から、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、ワラストナイト、グラファイト、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトよりなる群から選択される1種以上が好ましい。より好ましくは、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはタルク、マイカおよびカオリンの中から選ばれる1種以上である。
【0043】
非繊維状無機充填材は、優れた機械的特性と外観をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均粒子径が0.1〜50μmであるものが好ましい。より好ましくは3〜40μmであり、さらに好ましくは10〜40μmであり、特に好ましくは10〜30μmである。非繊維状無機充填材の数平均粒子径は、原料である非繊維状無機充填材、またはポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて含まれる有機物を焼却処理した残渣分を、1%石鹸水に分散させ、レーザー粒度計にて粒子径分布を測定することにより求めることができる。
【0044】
また、非繊維状無機充填材の中でも、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3〜20μmであり、重量平均繊維長が10〜300μmであり、およびアスペクト比が3〜20である針状無機充填材がさらに好ましい。
【0045】
針状無機充填材の数平均繊維径および重量平均繊維長は、原料である針状無機充填材、またはポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上を任意に選択し、SEMで観察して、繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定する。併せて、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める。
【0046】
本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、水蒸気吸着によるBET比表面積S
水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S
窒素の比(S
水蒸気/S
窒素)が、0.45以上であり、好ましくは0.45以上0.8以下であり、より好ましくは0.5以上0.7以下である。ここで、S
水蒸気/S
窒素は、非繊維状無機充填材表面が親水性か疎水性かの指標となる値で、この値が大きい程親水性の傾向が強いことを意味している。S
水蒸気/S
窒素を上記範囲とすることで、極性があり親水性の官能基の割合が高いポリアミド樹脂との親和性が増すので、機械的強度や耐衝撃性が向上する傾向にある。
【0047】
S
水蒸気とS
窒素は、例えば、マイクロトラック・ベル社製のBELSORP−maxなどのガス吸着量測定装置を用いることで測定することができる。具体的測定方法は、試料の前処理として100℃で6時間真空加熱を行った後、定容量法により水蒸気または窒素ガスの吸着等温線を測定し、BET法を用いて比表面積を求めることができる。
S
水蒸気とS
窒素は、非繊維状無機充填材の原料となる鉱石によって異なるため、上記方法で分析することによって、非繊維状無機充填材を選定することが好ましい。
【0048】
非繊維状無機充填材は、表面処理剤などにより表面処理を施してもよい。好ましい表面処理剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上であり、中でも優れた機械的強度、耐衝撃性の観点から、有機シラン系化合物がより好ましい。
【0049】
有機シラン系化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等の不飽和基含有アルコキシシラン化合物、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸などの酸無水物基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。中でも、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸などの酸無水物基含有アルコキシシラン化合物が好ましく、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0050】
これらの表面処理剤は、予め非繊維状無機充填材を表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法により好ましく用いられるが、予め非繊維状無機充填材の表面処理を行わずに、非繊維状無機充填材とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、これら表面処理剤を添加するいわゆるインテグラルブレンド法で用いてもよい。
【0051】
これら表面処理剤の処理量は非繊維状無機充填材100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましい。より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.2〜1.5質量部である。0.05質量部未満の場合には、表面処理することによる機械特性の改良効果が小さく、10質量部を上回る場合には、非繊維状無機充填材の分散不良や、発生ガスによる外観不良が発生しやすくなる傾向がある。
また、本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、上記のように親水性が高いため、表面処理剤との親和性も高くなることから、表面処理による機械強度や耐衝撃性の向上効果がより一層発現する傾向にある。
【0052】
本発明で用いられる非繊維状無機充填材の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、10〜200質量部である。好ましくは15〜150質量部、より好ましくは15〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部である。また、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対しては、10〜65質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは10〜45質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。
【0053】
付加的成分の例を以下に挙げる。
酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤等を添加することもできるし、他の熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族および第IVb族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
フェノール系熱安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。
【0055】
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に制限されないが、例えば、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、および1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。
特に、耐熱エージング性向上の観点から、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
【0056】
フェノール系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド樹脂組成物中のフェノール系熱安定剤の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0057】
リン系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)−ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)−ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)−ビス(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))−1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、およびテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。
【0058】
リン系熱安定剤を用いる場合、本発明のポリアミド樹脂組成物中のリン系熱安定剤の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。
上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0059】
アミン系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。
【0060】
アミン系熱安定剤を用いる場合、本発明のポリアミド樹脂組成物中のアミン系熱安定剤の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0061】
周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族および第IVb族の元素の金属塩としては、特に限定されるものではないは、好ましくは銅塩である。
【0062】
銅塩としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅等)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅およびステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記列挙した銅塩の中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅および酢酸銅よりなる群から選択される1種以上が好ましく、より好ましくはヨウ化銅および/または酢酸銅である。
【0064】
銅塩を用いる場合、本発明のポリアミド樹脂組成物中の銅塩の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.2質量部であり、より好ましくは0.02〜0.15質量部である。
上記範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上することができる。
【0065】
また、耐熱エージング性を向上させる観点から、本発明のポリアミド樹脂組成物全量に対し、銅元素の含有濃度として、好ましくは10〜500ppmであり、より好ましくは30〜500ppmであり、さらに好ましくは50〜300ppmである。
【0066】
アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に制限されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウムおよび塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。
特に、耐熱エージング性の向上という観点から、好ましくはヨウ化カリウムおよび臭化カリウム、並びにこれらの混合物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
【0067】
アルカリ金属のハロゲン化物、および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、本発明のポリアミド樹脂組成物中のアルカリ金属のハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.2〜2質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる。
【0068】
滑剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。優れた外観と成形加工性の観点から、中でも脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドから選ばれる1種以上が好ましく、2種以上を併用することがより好ましく、脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルを併用することがさらに好ましい。
【0069】
脂肪酸とは、脂肪族モノカルボン酸を示す。特に、炭素数8以上の脂肪酸が好ましい。より好ましくは炭素数8〜40の脂肪酸である。
脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、飽和または不飽和の、直鎖状または分岐状の、脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、モンタン酸等が挙げられる。
【0070】
脂肪酸エステルとは、脂肪酸とアルコールとのエステル化合物である。
アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
【0071】
脂肪酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸−1,3−ブタンジオールエステル、モンタン酸−トリメチロールプロパンエステル、トリメチロールプロパントリラウレート、ブチルステアレート等が挙げられる。
【0072】
脂肪酸アミドとは、脂肪酸のアミド化物である。
脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカアミド等が挙げられる。特に、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、およびN−ステアリルエルカアミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミドおよびN−ステアリルエルカアミドがより好ましい。
【0073】
脂肪酸金属塩とは、上述した脂肪酸の金属塩である。
脂肪酸と塩を形成する金属元素としては、元素周期律表の第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
金属元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;が好ましい。
【0074】
脂肪酸金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。
これら脂肪酸金属塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
これら滑剤の配合量に特に制限はないが、優れた外観と成形加工性の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対し、0.01〜1質量%が好ましく、0.03〜0.6質量%がより好ましく、0.05〜0.5質量%がさらに好ましい。
【0076】
着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、アジン系染料などが挙げられる。これら着色剤の配合量に特に制限はないが、優れた外観と成形加工性の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対し、0.01〜3質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましい。
【0077】
本発明において、ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、単軸または多軸押出機によってポリアミド樹脂を溶融させた状態で混練する方法を用いることができる。上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口からポリアミド樹脂を供給して溶融させた後、下流側供給口から無機充填材を供給して溶融混練する方法を好ましく使用できる。また、ガラス繊維ロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。
このようにして得られる組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形により各種部品の成形体として成形できる。
【0078】
これら各種部品としては、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用として好適に使用できる。
【0079】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【実施例】
【0080】
(使用した原料)
(1)ポリアミド
(1−1)ポリアミド66(以下、PA−1と略記)
VN(硫酸):147ml/kg、アミノ末端基:50mmol/kg、
カルボン酸末端基:80mmol/kg
(1−2)ポリアミド6(以下、PA−2と略記)
VN(硫酸):125ml/kg、アミノ末端基:90mmol/kg、
カルボン酸末端基:30mmol/kg
【0081】
(2)ガラス繊維
(2−1)平均繊維径13μmのガラス繊維(以下、GF−1と略記)
(2−2)平均短径7μm、平均長径28μmの扁平形状断面のガラス繊維(以下、GF−2と略記)
【0082】
(3)無機充填材
(3−1)平均粒子径19.4μmのタルク(以下、T−1と略記)
窒素ガス吸着BET比表面積S
窒素:3.3m
2/g
水蒸気吸着BET比表面積S
水蒸気:1.9m
2/g
S
水蒸気/S
窒素:0.58
(3−2)平均粒子径17.8μmのタルク(以下、T−2と略記)
窒素ガス吸着BET比表面積S
窒素:7.2m
2/g
水蒸気吸着BET比表面積S
水蒸気:2.5m
2/g
S
水蒸気/S
窒素:0.35
【0083】
(4)滑剤
モンタン酸ナトリウム[Licomont(登録商標)NaV101(クラリアントケミカルズ社製)](以下、WAXと略記)
【0084】
(評価方法)
以下に、評価方法について述べる。
<引張強度>
実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 3167、多目的試験片A型の成形片を成形した。得られた成形片を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/minで引張試験を行い、引張強度を測定した。
【0085】
<シャルピー衝撃強度>
上記多目的試験片A型を切削して使用し、80mm×10mm×4mmの試験片を用いて、ISO 179/1eAに準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
【0086】
<外観>
実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、金型温度を80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 294−3に従いタイプD1の金型を用いて、60mm×60mm×2mmの成形片を、射出時の充填時間を1秒、保圧5秒でそれぞれ成形し、目視で外観を判定した。10枚の成形片の両面(合計20面)を観察し、全ての面で充填材の浮きやシルバーストリーク等による白化部分が観察されないものをA、白化部分が観察される面の数が5つ以下のものをB、白化部分が観察される面が6つ以上のものをCとした。
【0087】
[製造例1(表面処理タルクT−3の製造)]
タルク(T−1)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−3と略記)を得た。
【0088】
[製造例2(表面処理タルクT−4の製造)]
タルク(T−1)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−4と略記)を得た。
【0089】
[製造例3(表面処理タルクT−5の製造)]
タルク(T−2)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−5と略記)を得た。
【0090】
[製造例4(表面処理タルクT−6の製造)]
タルク(T−2)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−6と略記)を得た。
【0091】
[製造例5(表面処理タルクT−7の製造)]
タルク(T−1)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−7と略記)を得た。
【0092】
[製造例6(表面処理タルクT−8の製造)]
タルク(T−1)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−8と略記)を得た。
【0093】
[製造例7(表面処理タルクT−9の製造)]
タルク(T−2)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−9と略記)を得た。
【0094】
[製造例8(表面処理タルクT−10の製造)]
タルク(T−2)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−10と略記)を得た。
【0095】
[実施例1〜7、比較例1〜8]
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口、9番目のバレルに下流側第2供給口、11番目のバレルに真空脱揮口を有した、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口からダイまでを300℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量25kg/hで、表1記載の割合となるように、上流側供給口よりポリアミド、滑剤を供給し、下流側第1供給口より無機充填材、下流側第2供給口よりガラス繊維を供給し、真空脱揮口より減圧して溶融混練し樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物を、樹脂温度290℃、金型温度80℃にて成形し、引張強度、シャルピー衝撃強度、外観を評価した。物性値を組成とともに表1に併記した。
【0096】
【表1】
【0097】
表1から明らかなように、本発明の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物は機械的強度や外観に優れていることがわかる。