(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、従来の電気めっき装置においては、ワーク保持治具におけるワークと電気的接触端子との接続部にめっき液が浸入し、接続部に金属が析出し、ワークと電気的接触端子とが癒着し、ワークをワーク保持治具から取り外すのが困難になる、という不具合があった。
【0005】
また、従来の電気めっき装置においては、ワークの全面に対して均等にめっき処理を施すために、全ての電気的接触端子までの配線の長さを等しくするという構成等を、採用しており、装置構成が複雑化するという不具合があった。
【0006】
本発明は、上述の不具合の少なくとも一方を解消できる、ワーク保持治具及び電気めっき装置を提供することを、目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、電気めっき処理の被処理物である板状ワークを保持するためのワーク保持治具において、
バックパネルとフレーム体とを備えており、両者の間で前記ワークを保持するようになっており、
前記フレーム体は、前記バックパネルとの間で前記ワークの周縁部を保持するように前記バックパネルに取り付けられるようになっており、
前記フレーム体は、環状の本体と、該本体の全周に渡って設けられた導電部材と、前記ワークの前記周縁部に電気的接触できるように前記導電部材に電気的接続して前記導電部材に沿って設けられた接触部材と、前記接触部材より内側において前記本体の全周に渡って設けられたシール部材と、を有しており、
前記フレーム体は、前記シール部材及び前記接触部材が前記ワークの前記周縁部に当接した状態で、前記周縁部、前記導電部材、及び前記接触部材を収容する、密封空間を、構成するようになっており、
前記導電部材は、全周における任意の点において略均等な抵抗値を示すような、幅広且つ肉厚の形態を、有している、
ことを特徴としている。
【0008】
本発明の第2態様は、電気めっき処理の被処理物である板状ワークを保持するためのワーク保持治具において、
バックパネルとフレーム体とを備えており、両者の間で前記ワークを保持するようになっており、
前記フレーム体は、前記バックパネルとの間で前記ワークの周縁部を保持するように前記バックパネルに取り付けられるようになっており、
前記フレーム体は、環状の本体と、該本体の全周に渡って設けられた配線と、前記ワークの前記周縁部に電気的接触できるように前記配線に電気的接続して前記配線に沿って設けられた接触部材と、前記接触部材より内側において前記本体の全周に渡って設けられたシール部材と、を有しており、
前記フレーム体は、前記シール部材及び前記接触部材が前記ワークの前記周縁部に当接した状態で、前記周縁部、前記配線、及び前記接触部材を収容する、密封空間を、構成するようになっており、
前記フレーム体又は前記バックパネルは、前記密封空間に液体を充填するための液注入口を、有している、
ことを特徴としている。
【0009】
本発明の第3態様は、前記第1又は第2態様のワーク保持治具を備え、前記ワークを前記ワーク保持治具によって保持し、保持された前記ワークに対して電気めっき処理を施す、電気めっき装置であって、
めっき液を収容しており、前記ワークに対して電気めっき処理を行う、めっき処理槽と、
前記ワークを保持した前記ワーク保持治具を、前記めっき処理槽に対して搬入搬出する、搬送機構と、
を備えており、
前記ワーク保持治具の前記密封空間には、金属塩を含んでいない液体が、充填されている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1及び第3態様によれば、板状ワークの全周に渡って均一な通電を行うことができ、それ故、ワークの被処理面の全面に渡って均一なめっき処理を施すことができる。
【0011】
本発明の第2及び第3態様によれば、ワークに対してめっき処理を施す際に、密封空間へめっき液が侵入するのを防止でき、それ故、めっき液に起因した金属がワークの周縁部や接触部材に析出するのを、防止できる。その結果、めっき処理後のワークをワーク保持治具から取り外す際に、ワークや接触部材が損傷するのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
(全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態の電気めっき装置の平面図である。
図2は、
図1のII−II断面略図である。この電気めっき装置9Aは、ワーク保持治具1Aと、めっき処理槽2Aと、搬送機構3Aと、を備えている。ワーク保持治具1Aは、矩形の板状ワーク10を保持するように、構成されている。めっき処理槽2Aは、ワーク保持治具1Aに保持されたワーク10に対してめっき処理を施すように、構成されている。本実施形態では、3台のめっき処理槽2Aが一列に並んで配置されている。搬送機構3Aは、ワーク10を保持したワーク保持治具1Aを、めっき処理槽2Aに対して垂直方向から搬入搬出するように、構成されている。
【0014】
(ワーク保持治具)
図3は、ワーク保持治具1Aの分解斜視図である。ワーク保持治具1Aは、矩形のバックパネル11と矩形のフレーム体12とを備えており、両者の間で板状のワーク10を保持するようになっている。バックパネル11には、ワーク10が重ねられるようになっている。フレーム体12は、バックパネル11との間でワーク10の周縁部101を保持するようにバックパネル11に取り付けられるようになっている。バックパネル11及びフレーム体12は、例えば塩化ビニル樹脂で構成されている。
【0015】
図4は、
図3のフレーム体12のIV矢視図である。
図5及び
図6は、
図3のV−V断面に相当する部分図であり、
図5はバックパネル11にフレーム体12が取り付けられる前の状態を示しており、
図6はバックパネル11にフレーム体12が取り付けられた後の状態を示している。すなわち、
図6は、ワーク保持治具1Aがワーク10を保持した状態を示している。
【0016】
フレーム体12は、矩形環状の本体13と、本体13の全周に渡って設けられた導電部材15と、ワーク10の周縁部101に電気的接触できるように導電部材15に電気的接続して導電部材15に沿って設けられた接触部材16と、接触部材16より内側において本体13の全周に渡って設けられたシール部材17と、を有している。接触部材16は、本体13の各辺に沿って設けられている。
【0017】
バックパネル11は、本体13の後側開口130に嵌まり込む凸部111を、有しており、ワーク10は、凸部111の端面112に形成されている浅い凹部113に嵌め込まれるようになっている。
【0018】
導電部材15は、
図5及び
図6に示されるように、幅W及び厚さTを有しており、従来に比して幅広且つ肉厚の形態を有している。それ故、導電部材15は、全周における任意の点において略均等な抵抗値を示すという特性を有している。具体的には、導電部材15は、50〜900mm
2の断面積(W×T)を有している。導電部材15は、50mm
2未満の場合には、前記のような特性を殆ど示すことができず、900mm
2を越える場合には、重くなりすぎて取扱いが困難となる。導電部材15は、例えば、銅又はチタンの表面に塩化ビニル樹脂をコーティングして構成されている。導電部材15は、「ブスバー」とも称される。
【0019】
接触部材16は、ワーク10の周縁部101に電気的接触するための多数の並設された板バネ状接触端子161を有する、櫛状接触部材である。本実施形態では、櫛状接触部材16は、本体13の各辺において3個に分割されて設けられている。接触部材16は、導電部材15にボルト165で固定されている。ボルト165は、フレーム体12の後面側に現れているので、接触部材16の交換作業を容易に行うことができる。なお、接触部材16は、接触端子161の復元力が弱くなった時に交換される。接触端子161は、例えば、銅に金をコーティングして構成されている。
【0020】
また、フレーム体12は、
図6の状態で、すなわち、シール部材17及び接触部材16の接触端子161がワーク10の周縁部101に当接した状態で、周縁部101、導電部材15、及び接触部材16を収容する、密封空間5を、構成するようになっている。シール部材17は、例えば、スポンジゴムで構成されている。シール部材17は、ワーク10の周縁部101に、圧縮されて密着する。なお、フレーム体12は、バックパネル11の周縁部119にボルト18によって固定されることにより、バックパネル11に取り付けられている。
【0021】
一方、本体13の上辺13Aの上面には、上方に延びた2本の持ち手122と、密封空間5に液体を充填するための液注入口124及び空気抜き口125と、が設けられている。持ち手122は、導電部材15に電気的接続している。更に、本体13の右辺13Bの側面には、横方向に突出した右ガイドバー126が右辺13Bに沿って設けられており、左辺13Cの側面には、横方向に突出した左ガイドバー127が左辺13Cに沿って設けられている。
【0022】
(めっき処理槽)
図7は、
図2のVII−VII断面略図である。めっき処理槽2Aは、めっき液20で満たされており、槽内に、陽極21及び噴流機構22を備えている。めっき処理槽2Aは、陽極21とワーク保持治具1Aに保持されたワーク10との間に電気を流すことによって、ワーク10の被処理面110に対してめっき処理を施すようになっている。めっき処理槽2Aにおいては、めっき処理の際、めっき液20が噴流機構22によってワーク10の被処理面110に対して吹き付けられるので、常に新鮮なめっき液20が被処理面110に接触することとなり、めっき処理が効果的に施される。
【0023】
更に、めっき処理槽2Aは、
図2に示されるように、ワーク保持治具1Aが槽内に搬入される際にワーク保持治具1Aをガイドするガイド部材を、備えている。具体的には、ガイド部材は、ワーク保持治具1Aの右ガイドバー126を案内する右ガイドレール231と、左ガイドバー127を案内する左ガイドレール232と、を有している。ガイドレールは、ガイドバーが垂直方向にスライドする縦溝からなっている。なお、このガイド部材は、ワーク保持治具1Aを垂直状態に支持する支持部材としても機能している。
【0024】
(搬送機構)
搬送機構3Aは、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して垂直方向から搬入搬出する垂直搬送機構31と、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで運搬する第1運搬機構32と、を有している。
【0025】
垂直搬送機構31は、キャリアバー311と、昇降バー312と、左右一対の昇降レール313と、を備えている。キャリアバー311は、2個の把持部315を介して昇降バー312に、把持されている。キャリアバー311の中央には、ワーク保持治具1Aが2本の持ち手122を介して、引っ掛けられるようになっている。そして、垂直搬送機構31は、ワーク保持治具1Aが引っ掛けられたキャリアバー311を把持した昇降バー312を、昇降レール313に沿わせて、昇降させることにより、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して搬入搬出するようになっている。なお、ワーク10を保持したワーク保持治具1Aは、ワーク10の被処理面110が噴流機構22側に向くように、キャリアバー311に引っ掛けられる。
【0026】
第1運搬機構32は、左右一対の水平レール321を有しており、昇降バー312を支持している昇降レール313を、一列に並んだ3台のめっき処理槽2Aの上方において、めっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで、水平レール321に沿って、水平に移動させるようになっている。よって、第1運搬機構32は、昇降バー312に把持されたキャリアバー311に引っ掛けられているワーク保持治具1Aを、任意のめっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで、運搬できる。
【0027】
(作動)
前記構成の電気めっき装置9Aは、次のように作動する。
(1)ワーク保持
まず、バックパネル11を床面に水平に置く。次に、バックパネル11の凸部111の凹部113に、ワーク10を嵌め込む。次に、フレーム体12を、上方からバックパネル11に重ねていき、周縁部119にボルト18によって固定する。これにより、ワーク10がワーク保持治具1Aによって保持され、ワーク10の周縁部101には、
図6に示されるような密封空間5が構成される。
【0028】
(2)液注入
ワーク10を保持したワーク保持治具1Aを、垂直状態に起こして、キャリアバー311の中央に持ち手122を介して引っ掛ける。そして、液体を、液注入口124から、密封空間5へ注入する。その際、密封空間5内の空気は、空気抜き口125から確実に抜けていくので、液体の注入は、円滑に行われる。なお、密封空間5へ注入する液体としては、金属塩を含んでいない液体を用いる。「金属塩を含んでいない」とは、「含まれている全ての金属塩の濃度が5g/L以下である」ことを意味している。そのような液体としては、具体的には、水道水、天然水、又は純水を、使用する。純水としては、脱イオン水、蒸留水、精製水、又はRO水を、使用する。
【0029】
(3)運搬
第1運搬機構32を作動させて、ワーク保持治具1Aを、めっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで、運搬する。
図1では、最奥のめっき処理槽2Aまで運搬している。
【0030】
(4)搬入
垂直搬送機構31を作動させて、ワーク保持治具1Aを、めっき処理槽2Aへ搬入する。ところで、めっき処理槽2Aの両側には、搬送機構3Aの支持台30が配置されており、支持台30上には、バー載置台318が設けられている。垂直搬送機構31は、キャリアバー311がバー載置台318に載る位置まで、昇降バー312を下降させ、キャリアバー311がバー載置台318に載ると、把持部315を解除してキャリアバー311を離し、昇降バー312を上昇させる。これにより、ワーク保持治具1Aが、キャリアバー311に引っ掛かった状態で、めっき処理槽2Aへ搬入される。なお、この際、ワーク保持治具1Aは、左右のガイドバー126、127が左右のガイドレール231、232によって案内されるので、垂直状態を維持したまま円滑に搬入される。
【0031】
(5)めっき処理
電源スイッチ(図示せず)をオンして、ワーク10及び陽極21への通電を行う。これにより、ワーク10と陽極21との間に電界が形成されてワーク10に対するめっき処理が行われる。ワーク10への通電は、電源(図示せず)から、通電路(図示せず)、バー載置台318、キャリアバー311、持ち手122、導電部材15、及び接触部材16を経ることにより、行われる。この際、密封空間5には液体が充填されているので、密封空間5へのめっき液20の侵入を防ぐことができる。仮に、密封空間5に液体が充填されていない場合には、密封空間5の内外の圧力差によって、めっき液20が密封空間5に侵入することとなる。
【0032】
(6)搬出
垂直搬送機構31を作動させて、昇降バー312を下降させ、把持部315を作動させてキャリアバー311を把持し、昇降バー312を上昇させる。これにより、キャリアバー311と共にワーク保持治具1Aが上昇し、ワーク保持治具1Aがめっき処理槽2Aから上方へ搬出される。
【0033】
(効果)
(a)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、ワーク10の周縁部101、導電部材15、及び接触部材16を収容する、密封空間5を、構成でき、液注入口124から、密封空間5に液体を注入できる。したがって、ワーク10に対してめっき処理を施す際に、密封空間5へめっき液20が侵入するのを防止でき、それ故、めっき液20に起因した金属がワーク10の周縁部101や接触部材16に析出するのを、防止できる。その結果、めっき処理後のワーク10をワーク保持治具1Aから取り外す際に、ワーク10や接触部材16が損傷するのを防止できる。
【0034】
(b)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、導電部材15が従来に比して幅広且つ肉厚の形態を有しているので、全周における任意の点において略均等な抵抗値を示すことができ、したがって、ワーク10の全周に渡って均一な通電を行うことができ、それ故、ワーク10の被処理面110の全面に渡って均一なめっき処理を施すことができる。
【0035】
(c)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、接触部材16が櫛状接触部材であるので、導電部材15が幅広且つ肉厚の形態を有していても、ワーク10に対して良好な通電を行うことができる。
【0036】
(d)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、櫛状接触部材16が本体13の各辺において3個に分割されているので、故障した部材16のみを容易に交換できる。
【0037】
(e)前記構成の電気めっき装置9Aによれば、ワーク保持治具1Aの密封空間5に液体が充填されているので、ワーク10に対してめっき処理を施す際に、密封空間5へめっき液20が侵入するのを防止でき、それ故、めっき液20に起因した金属がワーク10の周縁部101や接触部材16に析出するのを、防止できる。その結果、めっき処理後のワーク10をワーク保持治具1Aから取り外す際に、ワーク10や接触部材16が損傷するのを防止できる。
【0038】
(f)前記構成の電気めっき装置9Aによれば、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して垂直方向から搬入搬出するので、装置の設置面積を小さくできる。
【0039】
(g)前記構成の電気めっき装置9Aによれば、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して搬入する際、左右のガイドバー126、127が左右のガイドレール231、232によって案内されるので、ワーク保持治具1Aを、垂直状態を維持したまま円滑に搬入できる。
【0040】
[第2実施形態]
(全体構成)
図8は、本発明の第2実施形態の電気めっき装置9Bの平面図である。
図9は、
図8のIX−IX断面略図である。この電気めっき装置9Bは、ワーク保持治具1Bと、めっき処理槽2B及び干満槽4と、搬送機構3Bと、を備えている。ワーク保持治具1Bは、矩形の板状ワークを保持するように構成されている。めっき処理槽2Bは、ワーク保持治具1Bに保持されたワークに対してめっき処理を施すように、構成されている。本実施形態では、3台のめっき処理槽2Bが一列に並んで配置されており、各めっき処理槽2Bには干満槽4が前置されている。搬送機構3Bは、ワークを保持したワーク保持治具1Bを、めっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出するように、構成されている。
【0041】
(ワーク保持治具)
図10は、ワーク保持治具1Bの分解斜視図である。ワーク保持治具1Bは、第1実施形態のワーク保持治具1Aに比して、次の点のみが異なっており、その他の構成、すなわち、液注入口124、空気抜き口125、本体13、導電部材15、及び接触部材16等の構成は、同じである。
【0042】
(i)本体13の上辺13Aに、持ち手122に代えて、把持部123を有している。なお、把持部123は、導電部材15に電気的接続していない。
【0043】
(ii)本体13の上辺13Aの端部に、通電端子121を有している。なお、通電端子121は、導電部材15に電気的接続している。
【0044】
(iii)左右のガイドバー126、127に代えて、上下のガイドバー128、129を有している。上ガイドバー128は、本体13の上辺13Aに沿って設けられており、上辺13Aの前面において前方向に突出した上前ガイドバー1281と、上辺13Aの後面において後方向に突出した上後ガイドバー1282と、を有している。下ガイドバー129は、本体13の下辺13Dに沿って設けられており、下辺13Dの下面において下方向に突出している。
【0045】
(めっき処理槽)
図11は、
図9のXI−XI断面略図である。めっき処理槽2Bは、第1実施形態のめっき処理槽2Aに比して、次の点のみが異なっており、その他の構成、すなわち、めっき液20、陽極21、及び噴流機構22等の構成は、同じである。
【0046】
(i)通電部24を有している。通電部24は、ワーク保持治具1Bがめっき処理槽2Bに搬入された際に、通電端子121に当接するように設けられている。
【0047】
(ii)左右のガイドレール231、232に代えて、ワーク保持治具1Bがめっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出される際に上下のガイドバー128、129を案内する上下のガイドレール251、252を、有している。上ガイドレール251は、上前ガイドバー1281を案内する上前ガイドレール2511と、上後ガイドバー1282を案内する上後ガイドレール2512と、を有している。なお、ガイドレールは、ガイドバーが水平方向にスライドできる横溝を、有している。
【0048】
(iii)前段に、干満槽4を備えている。すなわち、めっき処理槽2Bには干満槽4が前置されており、両槽の間は、第1開閉ゲート41で仕切られている。干満槽4は、ワーク保持治具1Bが干満槽4に対して水平方向から搬入搬出される際に上下のガイドバー128、129を案内する上下のガイドレール421、422を、有している。上下のガイドレール421、422は、めっき処理槽2Bの上下のガイドレール251、252と同じ構成を有している。更に、干満槽4は、第1開閉ゲート41に対向する側に、第2開閉ゲート43を有している。両開閉ゲート41、43は、左右方向に開閉するようになっている。
【0049】
(搬送機構)
搬送機構3Bは、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出する水平搬送機構34と、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対する搬入搬出位置まで運搬する第2運搬機構35と、を有している。
【0050】
水平搬送機構34は、搬送レール341と、搬送部342と、を備えている。搬送レール341は、干満槽4及びめっき処理槽2Bの上方において両槽を横切って延びるように、設けられている。搬送部342は、垂直状態のワーク保持治具1Bを把持部123を介して把持し、ワーク保持治具1Bを伴って、搬送レール341に沿って移動するように、設けられている。
【0051】
第2運搬機構35は、左右一対の水平レール351と、運搬台352と、を有している。水平レール351は、一列に並んで配置されている3台の干満槽4に沿って、延びている。運搬台352上には、めっき処理槽2Bの上ガイドレール251及び干満槽4の上ガイドレール421と同じ上ガイドレール353と、めっき処理槽2Bの下ガイドレール252及び干満槽4の下ガイドレール422と同じ下ガイドレール354とが、設けられている。運搬台352は、搬送部342に把持され且つ上ガイドレール353及び下ガイドレール353に支持されたワーク保持治具1Bを、搬送レール341と共に、水平レール351に沿って、運搬するようになっている。よって、第2運搬機構35は、搬送部342に把持されたワーク保持治具1Bを、任意のめっき処理槽2Bに対する搬入搬出位置まで、運搬できる。
【0052】
(作動)
前記構成の電気めっき装置9Bは、次のように作動する。
(1)ワーク保持
第1実施形態と同様に行うことにより、ワーク保持治具1Bによってワーク10を保持する。これにより、ワーク10の周縁部101には、
図6に示されるような密封空間5が構成される。
【0053】
(2)液注入
ワーク10を保持したワーク保持治具1Bを、垂直状態に起こして、下ガイドバー129を運搬台352の下ガイドレール354に嵌め込むとともに、搬送部342によって把持部123を把持する。そして、液体を、液注入口124から、密封空間5へ注入する。その際、密封空間5内の空気は、空気抜き口125から確実に抜けていくので、液体の注入は、円滑に行われる。
【0054】
(3)運搬
第2運搬機構35を作動させて、ワーク保持治具1Bを、めっき処理槽2Bに対する搬入搬出位置まで、運搬する。
図8では、最奥のめっき処理槽2Bまで運搬している。
【0055】
(4)搬入
まず、第2開閉ゲート43を開ける。このとき、第1開閉ゲート41は閉じており、めっき処理槽2Bにはめっき液20が満たされている。次に、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、干満槽4へ搬入する。次に、第2開閉ゲート43を閉じる。次に、干満槽4へめっき液20を注入し、干満槽4をめっき液20で満たす。次に、第1開閉ゲート41を開く。次に、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、干満槽4からめっき処理槽2Bへ搬入する。次に、第1開閉ゲート41を閉じる。これにより、ワーク保持治具1Bが、めっき処理槽2Bへ搬入される。なお、この際、ワーク保持治具1Bは、下ガイドバー129が、運搬台352の下ガイドレール354、干満槽4の下ガイドレール422、及びめっき処理槽2Bの下ガイドレール252によって、案内され、上ガイドバー128が、干満槽4の上ガイドレール421及びめっき処理槽2Bの上ガイドレール251によって案内されるので、垂直状態を維持したまま、干満槽4、更にはめっき処理槽2Bに円滑に搬入される。
【0056】
(5)めっき処理
電源スイッチ(図示せず)をオンして、ワーク10及び陽極21への通電を行う。これにより、ワーク10と陽極21との間に電界が形成されてワーク10に対するめっき処理が行われる。ワーク10への通電は、電源(図示せず)から、通電路(図示せず)、通電部24、通電端子121、導電部材15、及び接触部材16を経ることにより、行われる。この際、密封空間5には液体が充填されているので、密封空間5へのめっき液20の侵入を防ぐことができる。したがって、めっき液20に起因した金属がワーク10の周縁部101や接触部材16に析出するのを、防止できる。仮に、密封空間5に液体が充填されていない場合には、密封空間5の内外の圧力差によって、めっき液20が密封空間5に侵入して来ることとなる。
【0057】
(6)搬出
まず、第1開閉ゲート41を開く。次に、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、めっき処理槽2Bから干満槽4へ搬出する。次に、第1開閉ゲート41を閉じる。次に、干満槽4内のめっき液20を干満槽4から排出する。次に、第2開閉ゲート43を開ける。そして、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、干満槽4から搬出する。
【0058】
(効果)
前記構成のワーク保持治具1B及び電気めっき装置9Bによれば、第1実施形態と同じ(a)〜(e)の効果を発揮できる。更に、次の効果を発揮できる。
【0059】
(f)前記構成の電気めっき装置9Bによれば、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出するので、装置の設置空間を低くできる。
【0060】
(g)前記構成の電気めっき装置9Bによれば、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対して搬入する際、上下のガイドバー128、129が上下のガイドレール251、252;421、422によって案内されるので、ワーク保持治具1Bを、垂直状態を維持したまま円滑に搬入できる。
【0061】
[別の実施形態]
本発明は、下記のような別の構成を採用してもよい。
(1)前記実施形態におけるワーク保持治具1A、1Bにおいて、液注入口124及び空気抜き口125が設けられていない。よって、そのようなワーク保持治具を備えた電気めっき装置においては、密封空間5に液体が充填されていない。この構成によっても、前記実施形態の(a)及び(e)以外の効果を発揮できる。
【0062】
(2)前記実施形態におけるワーク保持治具1A、1Bにおいて、
図12及び
図13に示されるように、接触部材16が、導電部材15ではなく配線19に電気的接続している。なお、
図12は、
図5に相当しており、
図13は、
図6に相当している。配線19は複数設けられており、各接触部材16には、それぞれ、同じ長さの配線19が接続されている。このワーク保持治具を備えた電気めっき装置においては、密封空間5に液体が充填されている。この構成によっても、前記実施形態の同様の効果を発揮できる。
【0063】
(3)
図14に示されるように、櫛状接続部材16が、本体13の各辺において、各辺の全長に渡って連続して、設けられている。これによれば、フレーム体12の組立作業を簡素化できる。
【0064】
(4)液注入口124が、液体の注入と共に空気抜きを行う構造を有している。これによれば、空気抜き口125を省略できる。
【0065】
(5)液注入口124及び/又は空気抜き口125が、バックパネル11に設けられている。
【0066】
(6)ワーク保持治具が、ワーク10を、垂直ではなく、傾斜して又は水平に、保持するようになっている。
【0067】
(7)バックパネル11とフレーム体12とが、ボルト18ではなく、パッチン錠、例えばトグルラッチを用いて、固定されている。
【0068】
(8)板状ワーク10が、矩形ではなく、円形又は多角形又はその他の形状を有している。また、それに対応して、バックパネル11及びフレーム体12も、矩形ではなく、円形又は多角形又はその他の形状を有している。
【符号の説明】
【0070】
1A、1B ワーク保持治具 10 ワーク 101 周縁部 11 バックパネル
12 フレーム体 126 右ガイドバー 127 左ガイドバー
128 上ガイドバー 129 下ガイドバー 13 本体 15 導電部材
16 接触部材 161 接触端子 17 シール部材 19 配線
2A、2B めっき処理槽 231 右ガイドレール 232 左ガイドレール
251 上ガイドレール 252 下ガイドレール 3A、3B 搬送機構
31 垂直搬送機構 32 第1運搬機構 34 水平搬送機構 35 第2運搬機構
20 めっき液 4 干満槽 5 密封空間 9A、9B 電気めっき装置