特許第6893152号(P6893152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6893152電流推定装置、電動圧縮機、電流推定方法及びモータ電流実効値推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893152
(24)【登録日】2021年6月2日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】電流推定装置、電動圧縮機、電流推定方法及びモータ電流実効値推定方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/14 20060101AFI20210614BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20210614BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20210614BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   H02P23/14
   B60H1/00 101C
   B60H1/32 623B
   F25B1/00 341J
   F25B1/00 371N
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-171976(P2017-171976)
(22)【出願日】2017年9月7日
(65)【公開番号】特開2019-45120(P2019-45120A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
(72)【発明者】
【氏名】上谷 洋行
(72)【発明者】
【氏名】樋口 博人
(72)【発明者】
【氏名】森 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恭平
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−208143(JP,A)
【文献】 特開2011−87404(JP,A)
【文献】 特開平10−150775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動させる高電圧回路のキャパシタ電流を推定する電流推定装置であって、
前記高電圧回路に含まれるインバータの入力電圧と前記モータの回転数とを用いて電圧利用率を演算する電圧利用率演算部と、
前記電圧利用率を予め定められた第1演算式に適用して第1定数を演算する第1定数演算部と、
前記第1定数に前記モータのモータ電流実効値を乗じて前記高電圧回路に含まれるコンデンサのキャパシタ電流を演算するキャパシタ電流演算部と、
を備える電流推定装置。
【請求項2】
前記第1演算式は、n、A0、Ai(i=1〜n)を所定の定数とし、前記第1定数をα、前記電圧利用率をNv、としたとき以下の式(1)である、請求項1に記載の電流推定装置。
【数1】
【請求項3】
前記電圧利用率を予め定められた第2演算式に適用して第2定数を演算する第2定数演算部と、
前記第2定数に前記インバータの入力電流を乗じて前記モータ電流実効値を演算するモータ電流実効値演算部と、
をさらに備える請求項1または請求項2に記載の電流推定装置。
【請求項4】
前記第2演算式は、m、B0、Bj(j=1〜m)を所定の定数とし、前記第2定数をβ、前記電圧利用率をNvとしたとき以下の式(2)である、請求項3に記載の電流推定装置。
【数2】
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電流推定装置、を備える電動圧縮機。
【請求項6】
モータを駆動させる高電圧回路のキャパシタ電流を推定する電流推定方法であって、
前記高電圧回路に含まれるインバータの入力電圧と前記モータの回転数とを用いて電圧利用率を演算するステップと、
前記電圧利用率を予め定められた第1演算式に適用して第1定数を演算するステップと、
前記第1定数に前記モータのモータ電流実効値を乗じて前記高電圧回路に含まれるコンデンサのキャパシタ電流を演算するステップと、
を有する電流推定方法。
【請求項7】
モータを駆動させる高電圧回路のモータ電流実効値を推定するモータ電流実効値推定方法であって、
前記高電圧回路に含まれるインバータの入力電圧と前記モータの回転数とを用いて電圧利用率を演算するステップと、
前記電圧利用率を予め定められた第2演算式に適用して第2定数を演算するステップと、
前記第2定数に前記インバータの入力電流を乗じて前記モータ電流実効値を演算するステップと、
を有するモータ電流実効値推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流推定装置、電動圧縮機、電流推定方法及びモータ電流実効値推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコンに用いられる空気調和装置用の圧縮機として、インバータ装置が組み込まれたインバータ一体型の電動圧縮機が提供されている。この電動圧縮機には、車両に搭載された電源ユニットからの高電圧電力を電動圧縮機が備えるモータに供給するための高電圧回路が設けられている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、車両用空気調和装置が備える電動圧縮機について、電動圧縮機の起動時にモータを流れる電流値に基づいて回転数を制御することにより、液圧縮による損傷等を防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−340423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記のインバータ一体型の電動圧縮機の場合、高電圧回路に設定されているコンデンサの電流を正確に推定し、把握することができれば、より適切に、故障防止となる圧縮機運転を行うことができる。そのため、コンデンサに流れるキャパシタ電流を推定する技術が望まれている。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる電流推定装置、電動圧縮機、電流推定方法及びモータ電流実効値推定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、モータを駆動させる高電圧回路のキャパシタ電流を推定する電流推定装置であって、前記高電圧回路に含まれるインバータの入力電圧と前記モータの回転数とを用いて電圧利用率を演算する電圧利用率演算部と、前記電圧利用率を予め定められた第1演算式に適用して第1定数を演算する第1定数演算部と、前記第1定数に前記モータのモータ電流実効値を乗じて前記高電圧回路に含まれるコンデンサのキャパシタ電流を演算するキャパシタ電流演算部と、を備える電流推定装置である。
【0008】
本発明の一態様における前記第1演算式は、n、A0、Ai(i=1〜n)を所定の定数とし、前記第1定数をα、前記電圧利用率をNv、としたとき以下の式(1)である。
【数1】
【0009】
本発明の一態様における前記電流推定装置は、前記電圧利用率を予め定められた第2演算式に適用して第2定数を演算する第2定数演算部と、前記第2定数に前記インバータの入力電流を乗じて前記モータ電流実効値を演算するモータ電流実効値演算部と、をさらに備える。
【0010】
本発明の一態様における前記第2演算式は、m、B0、Bj(j=1〜m)を所定の定数とし、前記第2定数をβ、前記電圧利用率をNvとしたとき以下の式(2)である。
【数2】
【0011】
本発明の一態様は、上記の何れかに記載の電流推定装置、を備える電動圧縮機である。
【0012】
本発明の一態様は、モータを駆動させる高電圧回路のキャパシタ電流を推定する電流推定方法であって、前記高電圧回路に含まれるインバータの入力電圧と前記モータの回転数とを用いて電圧利用率を演算するステップと、前記電圧利用率を予め定められた第1演算式に適用して第1定数を演算するステップと、前記第1定数に前記モータのモータ電流実効値を乗じて前記高電圧回路に含まれるコンデンサのキャパシタ電流を演算するステップと、を有する電流推定方法である。
【0013】
本発明の一態様は、モータを駆動させる高電圧回路のモータ電流実効値を推定するモータ電流実効値推定方法であって、前記高電圧回路に含まれるインバータの入力電圧と前記モータの回転数とを用いて電圧利用率を演算するステップと、前記電圧利用率を予め定められた第2演算式に適用して第2定数を演算するステップと、前記第2定数に前記インバータの入力電流を乗じて前記モータ電流実効値を演算するステップと、を有するモータ電流実効値推定方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータを駆動する高電圧回路に設けられたコンデンサのキャパシタ電流を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における電動圧縮機が搭載された車両の概略ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態における電動圧縮機の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態における電流推定装置の一例を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態における電流推定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態によるキャパシタ電流の電流推定処理について、図1図4を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における電動圧縮機が搭載された車両の概略ブロック図である。
図1に車両3に搭載されたECU(Electric Control Unit)1と車載用の空気調和装置2とを示す。図示するように車両3は、ECU1と空気調和装置2とを備えている。また、空気調和装置2は、電動圧縮機10を備えている。ECU1は、車両3の電装機器の制御を行う。空気調和装置2は、カーエアコンユニットである。電動圧縮機10は、車載用空気調和装置に用いられる電動圧縮機である。電動圧縮機10は、インバータ装置が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機である。ECU1と空気調和装置2は、信号線、通信線、電力線等で接続され、空気調和装置2は、CAN(Controller Area Network)通信によりECU1の制御信号を受信する。そして、ユーザが、エアコンに対して起動、停止、温度設定等の操作を行うと、ECU1は、その操作に応じた制御信号を生成し、空気調和装置2の動作を制御する。また、空気調和装置2に組み込まれた電動圧縮機10も、ECU1が生成した制御信号に基づいて動作する。次に電動圧縮機10とその制御回路について説明する。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態における電動圧縮機の一例を示す図である。
図2に空気調和装置2が備える電動圧縮機10の概略構成を示す。
バッテリ20は、車両3(空気調和装置2の外部)に搭載された電源ユニットである。バッテリ20は、電動圧縮機10に高圧の直流電力を供給する。電動圧縮機10は、制御回路100と、圧縮部11と、モータ12と、制御装置50と、電流推定装置60と、を備える。制御回路100は、コンデンサ30、インバータ40、電圧検出回路70、電流検出回路80を備える。インバータ40とモータ12は電力線で接続される。また、制御回路100が備える所定の構成要素と制御装置50とは信号線で接続されている。インバータ40は、バッテリ20から供給された直流電力を三相交流に変換し、モータ12へ供給する。このように電動圧縮機10は、車両3に搭載された電源ユニット(バッテリ20)から供給される高電圧の直流電力をインバータ40で三相交流電力に変換し、それをモータ12に印加することによって駆動されるものである。インバータ40は、制御装置50によって制御される。制御装置50は、IC(Integrated Circuit)等で構成され、ECU1から取得した制御信号に基づいて、インバータ40を介してモータ12を所望の動作に制御する。例えば、制御装置50は、モータ12の回転数ωを制御する。モータ12がインバータ40からの指示によって回転駆動することにより、圧縮部11が冷媒を圧縮し、空気調和装置2が備える冷媒回路(図示せず)へ冷媒を供給する。
【0018】
また、制御回路100には電圧検出回路70、電流検出回路80が設けられている。電圧検出回路70は、インバータ40に入力される直流電圧(インバータ入力電圧Vdc)を検出する。電流検出回路80は、インバータ40の入力電流(インバータ入力電流Idc)を検出する。
【0019】
ところで、電動圧縮機10の性能や制御効率の向上、故障防止のためには、コンデンサ30のキャパシタ電流Icapの値を把握できるとよいことが分かっている。そこで、本実施形態では、図2で例示する高電圧回路のコンデンサ30に流れるキャパシタ電流を推定する方法を提供する。図2の電流推定装置60は、本実施形態に係るキャパシタ電流の推定装置である。電流推定装置60は、電圧検出回路70、電流検出回路80、制御装置50と信号線で接続されている。電流推定装置60は、モータ12の回転数ω、インバータ40の入力電流値Idc、インバータ40の入力電圧値Vdcをこれらの回路等から取得し、演算によりキャパシタ電流Icapを推定する。制御装置50は、推定されたキャパシタ電流Icapを取得して電動圧縮機10の制御に用いる。
なお、図2では、電流推定装置60は、制御装置50とは別の装置として記載したが、電流推定装置60は、制御装置50の一部に含まれるように構成されていてもよい。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態における電流推定装置の一例を示す機能ブロック図である。
図示するように電流推定装置60は、入出力部61と、電圧利用率演算部62と、第1定数演算部63と、第2定数演算部64と、モータ電流実効値演算部65と、キャパシタ電流演算部66と、記憶部67と、を備える。
入出力部61は、インバータ入力電流Idc、インバータ入力電圧Vdc、モータ12の回転数ωを取得する。
【0021】
電圧利用率演算部62は、誘起電圧定数KE[Vrms/rpm]、回転数ω[rpm]、インバータ入力電圧Vdc[V]を用いて、以下の式(3)により、電圧利用率Nvを演算する。
Nv = (KE×ω)/(Vdc/√2) ・・・・(3)
【0022】
第1定数演算部63は、電圧利用率演算部62が演算した電圧利用率Nvを、以下の式(4)(第1演算式)に適用して第1定数αを演算する。
α = A0+(A1×Nv)+(A2×Nv)+(A3×Nv)+(A4×Nv)+(A5×Nv)+(A6×Nv)+(A7×Nv)+(A8×Nv)+(A9×Nv)+(A10×Nv10)+・・・+(An×Nv)・・・・(4) ここで、A0、A1、・・・・、Anは所定の定数である。なお、式(4)は以下の式で表すことができる。
【0023】
【数3】
【0024】
また、以下に式(4)の具体例(n=10)を示す。
α = A0+(A1×Nv)+(A2×Nv)+(A3×Nv)+(A4×Nv)+(A5×Nv)+(A6×Nv)+(A7×Nv)+(A8×Nv)+(A9×Nv)+(A10×Nv10
A0=1.2、A1=−7.6、A2=60.0、A3=−200、A4=460、A5=−500、A6=320.5、A7=0、A8=−106、A9=52.7、A10=−8.5
上記、例示したようにA0〜Anは、添字が偶数の場合と奇数の場合とで交互に正の値と負の値とを繰り返すように設定することができる。これにより、第1定数αの近似精度を向上することができる。また、A0〜Anのうち少なくとも1つ(上記例ではA7)の値を「0」とすることで、定数αの近似精度が向上することが確認されている。
【0025】
第2定数演算部64は、電圧利用率演算部62が演算した電圧利用率Nvを、以下の式(5)(第2演算式)に適用して第2定数βを演算する。
β = B0+(B1×Nv)+(B2×Nv)+(B3×Nv)+(B4×Nv)+(B5×Nv)+(B6×Nv)+(B7×Nv)+(B8×Nv)+(B9×Nv)+(B10×Nv10)+・・・+(Bm×Nv)・・・・(5)
ここで、B0、B1、・・・・、Bmは所定の定数である。なお、式(5)は以下の式で表すことができる。
【0026】
【数4】
【0027】
以下に式(5)の具体例(m=10)を示す。
β = B0+(B1×Nv)+(B2×Nv)+(B3×Nv)+(B4×Nv)+(B5×Nv)+(B6×Nv)+(B7×Nv)+(B8×Nv)+(B9×Nv)+(B10×Nv10
B0=13.2、B1=−120、B2=600、B3=−1750、B4=2970、B5=−3000.2、B6=1430.8、B7=0、B8=−370、B9=170、B10=−25
第1定数αの場合と同様、B0〜Bmは、添字が偶数の場合と奇数の場合とで交互に正の値と負の値とを繰り返すように設定することができる。これにより、第2定数βの近似精度を向上することができる。また、B0〜Bmのうち少なくとも1つ(上記例ではB7)の値を「0」とすることで、定数βの近似精度が向上することが確認されている。
【0028】
モータ電流実効値演算部65は、第2定数演算部64が演算した第2定数βと、インバータ入力電流Idcとを乗じて、モータ電流実効値Im[Arms]を演算する。具体的には、モータ電流実効値演算部65は、以下の式(6)によって、モータ電流実効値Imを演算する。
Im = β×Idc ・・・(6)
【0029】
キャパシタ電流演算部66は、第1定数演算部63が演算した第1定数αと、モータ電流実効値演算部65が演算したモータ電流実効値Imとを乗じてキャパシタ電流Icapを演算する。具体的には、キャパシタ電流演算部66は、以下の式(7)によって、キャパシタ電流実効値Icapを演算する。
Icap = α×Im ・・・(7)
記憶部67は、誘起電圧定数KE、A0〜An、B0〜Bmなどの定数を記憶する。
【0030】
次に本実施形態のキャパシタ電流推定処理の流れについて説明する。
図4は、本発明の一実施形態における電流推定処理の一例を示すフローチャートである。
まず、入出力部61が、電圧検出回路70からインバータ入力電圧Vdcを、電流検出回路80からインバータ入力電流Idcを、制御装置50から回転数ω(指令値)を、それぞれ取得する(ステップS11)。
【0031】
次に電圧利用率演算部62が、上記の式(3)によって電圧利用率Nvを演算する(ステップS12)。
次に第1定数演算部63が、上記の式(4)によって第1定数αを演算する(ステップS13)。
【0032】
一方、第2定数演算部64は、上記の式(5)によって第2定数βを演算する(ステップS14)。第2定数演算部64が第2定数βを演算すると、次にモータ電流実効値演算部65が、上記の式(6)によってモータ電流実効値Imを演算する(ステップS15)。
【0033】
最後にキャパシタ電流演算部66が、上記の式(7)によってキャパシタ電流Icapを演算する(ステップS16)。その後、例えば、入出力部61は、キャパシタ電流Icapを制御装置50へ出力する。制御装置50は、キャパシタ電流Icapの推定値を用いて、インバータ40の制御を行う。
【0034】
本実施形態によれば、制御回路100から取得できる情報に基づく演算だけでキャパシタ電流Icapを推定することができる。これにより、キャパシタ電流Icapを、電動圧縮機10の性能向上などに活用することができるようになる。また、キャパシタ電流Icapを検出するセンサを設ける必要がないので、コストの増大を防ぐことができる。また、電動圧縮機10は、車載用の空気調和装置に用いられるため、高い信頼性が求められるところ、キャパシタ電流検出用のセンサを設けると、センサの故障等により信頼性が低下する可能性があるが、本実施形態の電流推定装置60であれば、センサを設置することが無い為、信頼性を損ねる可能性が少ない。また、車載用空気調和機に用いられるインバータ一体型の電動圧縮機には、搭載スペースの観点から小型であることが要求されるところ、本実施形態の演算による電流推定方法であれば、センサの設置による装置の大型化を防ぐことができる。
【0035】
電流推定装置60の全ての機能又は一部の機能は、例えば、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路で構成されたハードウェアによって実現してもよい。また、電流推定装置60の全ての機能又は一部の機能は、MCU(micro computer unit)等のコンピュータによって構成されても良い。その場合、電流推定装置60における各処理の過程は、例えば電流推定装置60が有するCPUがプログラムを実行することによって実現できる。
【0036】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、電動圧縮機10が、車両3のカーエアコンの一部を構成する場合を例に説明を行ったが、電動圧縮機10は、冷凍・冷蔵車の空気調和装置に適用することも可能である。また、電動圧縮機10の適用先の装置は、車両以外にも、船、航空機、鉄道など、各種の移動体に搭載する空気調和装置であっても良い。その場合であっても、本実施形態に係る電流推定装置60を電動圧縮機10の制御装置とともに組み込むことで、電動圧縮機10を駆動するモータ12の高電圧回路に設けられたキャパシタの電流を推定し、電動圧縮機10の制御に役立てることができる。
【0038】
また、上記の電流推定装置60の少なくとも一部の機能(入出力部61、第2定数演算部64、モータ電流実効値演算部65、記憶部67)のみを実装した装置を構成し、図2に例示した制御回路100に接続することで、モータ電流実効値推定装置として利用することができる。モータ電流実効値推定装置は、インバータ入力電圧Vdc、インバータ入力電流Idc、回転数ωを取得し、上記の式(4)によって、モータ電流実効値Imを推定する(図4のフローチャートでは、ステップS11、S12、S14、S15の処理を行う)。
【符号の説明】
【0039】
1・・・ECU
2・・・空気調和装置
10・・・電動圧縮機
11・・・圧縮部
12・・・モータ
20・・・バッテリ
30・・・コンデンサ
40・・・インバータ
50・・・制御装置
60・・・電流推定装置
61・・・入出力部
62・・・電圧利用率演算部
63・・・第1定数演算部
64・・・第2定数演算部
65・・・モータ電流実効値演算部
66・・・キャパシタ電流演算部
67・・・記憶部
図1
図2
図3
図4