(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信事業者は、通信品質が悪化している場所において、基地局の調整や増設を行うことによって通信品質の改善を図っている。通信品質の改善に利用可能な人的資源及び物的資源に限りがあるため、通信事業者は、場所ごとの状況を考慮して順次通信品質の改善を行う。しかしながら、通信事業者は、通信端末から報告される多数の通信品質の情報を参照する必要があるため、優先的に通信品質を改善すべき場所を判断するために大きな労力を要していた。
【0005】
特許文献1に記載の技術は、通信端末に通信品質を測定させるのみであるため、測定結果に基づいて通信品質の改善の優先度を特定することはできない。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、優先的に通信品質を改善すべき場所を判断するための情報を出力できる管理装置、管理方法、管理プログラム及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の管理装置は、通信端末が測定した、第1時点における通信品質を示す第1品質と、前記第1時点よりも現在に近い第2時点における通信品質を示す第2品質とを取得する取得部と、前記第1品質及び前記第2品質に基づいて、通信品質が悪化している場所と、前記場所における通信品質の悪化の程度又は通信品質の改善の優先度とを特定する特定部と、前記場所と前記悪化の程度又は前記優先度とを関連付けて出力する出力部と、を有する。
【0008】
前記出力部は、前記場所を示す情報を地図に重畳して表示部に表示させてもよい。
【0009】
前記出力部は、前記場所を示す情報とともに前記悪化の程度又は前記優先度を示す情報を前記地図に重畳して前記表示部に表示させてもよい。
【0010】
前記出力部は、前記場所を示す情報とともに前記第2品質を示す情報を前記地図に重畳して前記表示部に表示させてもよい。
【0011】
前記出力部は、高さごとの前記第2品質を示す情報を前記表示部に表示させてもよい。
【0012】
前記特定部は、前記第1品質から前記第2品質の低下量又は低下割合を、前記悪化の程度として特定してもよい。
【0013】
前記特定部は、前記第1時点と前記第2時点との間における、通信品質の変化の大きさと、通信回線のトラヒックの変化の大きさと、通信回線の容量の逼迫度の変化の大きさとのうち少なくとも1つに基づいて、前記優先度を特定してもよい。
【0014】
前記特定部は、前記通信品質の悪化の理由に基づいて、前記優先度を重み付けしてもよい。
【0015】
前記取得部は、特定の季節に該当する期間又は特定のイベントが開催されている期間に測定された前記通信品質を、前記第1品質として取得してもよい。
【0016】
前記取得部は、計算によって算出された前記通信品質の理論値を、前記第1品質として取得してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様の管理方法は、プロセッサが、通信端末が測定した、第1時点における通信品質を示す第1品質と、前記第1時点よりも現在に近い第2時点における通信品質を示す第2品質とを取得するステップと、前記第1品質及び前記第2品質に基づいて、通信品質が悪化している場所と、前記場所における通信品質の悪化の程度又は通信品質の改善の優先度とを特定するステップと、前記場所と前記悪化の程度又は前記優先度とを関連付けて出力するステップと、を実行する。
【0018】
本発明の第3の態様の管理プログラムは、コンピュータに、通信端末が測定した、第1時点における通信品質を示す第1品質と、前記第1時点よりも現在に近い第2時点における通信品質を示す第2品質とを取得するステップと、前記第1品質及び前記第2品質に基づいて、通信品質が悪化している場所と、前記場所における通信品質の悪化の程度又は通信品質の改善の優先度とを特定するステップと、前記場所と前記悪化の程度又は前記優先度とを関連付けて出力するステップと、を実行させる。
【0019】
本発明の第4の態様の通信システムは、管理装置と、前記管理装置と通信可能な通信端末と、を有し、前記管理装置は、前記通信端末が測定した、第1時点における通信品質を示す第1品質と、前記第1時点よりも現在に近い第2時点における通信品質を示す第2品質とを取得する取得部と、前記第1品質及び前記第2品質に基づいて、通信品質が悪化している場所と、前記場所における通信品質の悪化の程度又は通信品質の改善の優先度とを特定する特定部と、前記場所と前記悪化の程度又は前記優先度とを関連付けて出力する出力部と、を備え、前記通信端末は、前記通信品質を測定する通信品質測定部と、前記通信品質を測定した位置を測定する位置測定部と、前記通信品質測定部が測定した前記通信品質と前記位置測定部が測定した前記位置とを前記管理装置に送信する送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優先的に通信品質を改善すべき場所を判断するための情報を出力できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[通信システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る通信システムSの模式図である。通信システムSは、管理装置100と、複数の通信端末200と、複数の基地局10とを含む。通信システムSが含む通信端末200及び基地局10の数は限定されない。通信システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0023】
基地局10は、LTE(Long Term Evolution)等の無線通信(移動体通信)を行うことが可能な無線基地局装置である。基地局10は、アンテナ、プロセッサ、電気回路等、無線通信に必要な設備を備え、自身が通信可能な範囲(すなわちセル)内の通信端末200に無線で接続される。基地局10は、通信端末200とインターネット等のネットワークNとの間の通信を中継する。
【0024】
通信端末200は、LTE等の無線通信を行うことが可能な通信装置である。通信端末200は、例えばスマートフォン、タブレット端末等の携帯端末である。通信端末200は、基地局10に無線で接続され、基地局10を介してネットワークNとの間で通信を行う。また、通信端末200は、後述のように基地局10との間の通信品質を測定するとともに、自身の位置を測定する。
【0025】
管理装置100は、通信端末200によって測定された通信品質を示す品質情報を記憶して管理するコンピュータである。また、管理装置100は、後述のように測定された通信品質に基づいて優先的に通信品質を改善すべき場所を判断するための情報を出力する。管理装置100は、有線又は無線でネットワークNに接続される。
【0026】
[通信端末200の構成]
図2は、本実施形態に係る通信端末200のブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示していないデータの流れがあってよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に別れて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0027】
通信端末200は、制御部210と、通信部220と、記憶部230と、測位信号受信部240とを有する。制御部210は、通信品質測定部211と、位置測定部212と、品質情報送信部213とを有する。
【0028】
通信部220は、基地局10を介して管理装置100との間で通信をするための通信インターフェースである。通信部220は、無線通信を実行するためのアンテナ、プロセッサ、電気回路等を含む。通信部220は、外部から受信した通信信号に所定の処理を行ってデータを取得し、取得したデータを制御部210に入力する。また、通信部220は、制御部210から入力されたデータに所定の処理を行って通信信号を生成し、生成した通信信号を外部に送信する。
【0029】
記憶部230は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部230は、制御部210が実行するプログラムを予め記憶している。また、記憶部230は、通信端末200が測定した品質情報を記憶する。
【0030】
測位信号受信部240は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機を含み、GPS衛星からの測位信号を受信する。通信端末200は、複数のGPS衛星からの測位信号を用いて、高精度に自身の位置の座標を算出することができる。
【0031】
制御部210は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部230に記憶されたプログラムを実行することにより、通信品質測定部211、位置測定部212及び品質情報送信部213として機能する。通信品質測定部211、位置測定部212及び品質情報送信部213の機能については、
図3を用いて後述する。制御部210の機能の少なくとも一部は、電気回路によって実行されてもよい。また、制御部210の機能の少なくとも一部は、ネットワーク経由で実行されるプログラムによって実行されてもよい。
【0032】
本実施形態に係る通信端末200は、
図2に示す具体的な構成に限定されない。通信端末200は、1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。
【0033】
[通信品質測定方法の説明]
図3は、本実施形態に係る通信端末200が行う通信品質測定方法の模式図である。通信端末200の通信品質測定部211は、通信端末200が通信を行う際に、基地局10との間の通信品質を測定する(a)。本実施形態では、通信品質としてRSSI、SNR又はSINR(信号対干渉雑音比)を用いるが、通信品質の高低又は良悪を示すことが可能なその他の指標を用いてもよい。また、通信品質は、通信が正常終了されたこと又は異常終了(切断)されたことを示してもよい。通信品質測定部211は、高さごとの通信品質を測定可能である場合には、測定地点の高さに関連付けて通信品質を測定する。測定地点の高さは、例えば通信端末200に設けられた高度センサによって特定されてもよく、あるいは通信端末200を所有するユーザに対して予め登録された住所に基づいて推定されてもよい。
【0034】
通信品質測定部211は、音声通話又はデータ通信のどちらにおいて通信品質の測定を行ってもよく、また特定のソフトウェアを用いた通信に限定して通信品質の測定を行ってもよい。通信品質測定部211は、毎回の通信において通信品質を測定してもよく、あるいは前回の測定から所定時間経過した場合の通信において通信品質を測定してもよい。
【0035】
通信品質測定部211は、通信端末200のバッテリ(充電池)の残量に応じて、通信品質の測定の頻度を変化させてもよい。通信品質測定部211は、例えば通信端末200のバッテリの残量が所定の閾値より少ない場合に測定頻度を低下させ、通信端末200のバッテリの残量が所定の閾値以上である場合に測定頻度を上昇させることによって、通信端末200の稼働時間と測定頻度とのバランスをとることができる。
【0036】
通信端末200の位置測定部212は、測位信号受信部240が受信したGPS衛星からの測位信号を用いて、通信品質測定時の通信端末200の位置(座標)を測定する(b)。位置測定部212による通信端末200の位置の測定は、具体的な方法に限定されない。例えば位置測定部212は、通信端末200が通信可能な基地局10のセルの位置に基づいて、通信品質測定時の通信端末200の位置を推定してもよい。
【0037】
位置測定部212は、通信品質の測定を行った通信の開始時、途中、終了時のいずれかの時点の位置を、通信品質測定時の位置として測定する。そして通信端末200は、通信品質測定部211が測定した通信品質と、位置測定部212が測定した位置とを関連付けて、品質情報として記憶部230に記憶する。
【0038】
通信端末200の品質情報送信部213は、記憶部230に記憶された品質情報を、基地局10を介して管理装置100へ送信する(c)。品質情報送信部213は、記憶部230に記憶された品質情報を、定期的に(例えば1日のうち所定の時間に)まとめて管理装置100へ送信してもよく、あるいは測定の度に管理装置100へ送信してもよい。管理装置100は、通信端末200から品質情報を受信して記憶する(d)。
【0039】
品質情報送信部213は、通信端末200のバッテリの残量に応じて、品質情報の送信の頻度を変化させてもよい。品質情報送信部213は、例えば通信端末200のバッテリの残量が所定の閾値より少ない場合に品質情報の送信頻度を低下させ、通信端末200のバッテリの残量が所定の閾値以上である場合に品質情報の送信頻度を上昇させることによって、通信端末200の稼働時間と送信頻度とのバランスをとることができる。
【0040】
[管理装置100の構成]
図4は、本実施形態に係る管理装置100のブロック図である。
図4において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図4に示していないデータの流れがあってよい。
図4において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図4に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に別れて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0041】
管理装置100は、制御部110と、通信部120と、記憶部130と、表示部140とを有する。制御部110は、品質情報取得部111と、悪化度特定部112と、優先度特定部113と、出力部114と、通知部115とを有する。
【0042】
通信部120は、基地局10を介して通信端末200との間で通信をするための通信インターフェースである。通信部120は、通信を実行するためのプロセッサ、コネクタ、電気回路等を含む。通信部120は、外部から受信した通信信号に所定の処理を行ってデータを取得し、取得したデータを制御部110に入力する。また、通信部120は、制御部110から入力されたデータに所定の処理を行って通信信号を生成し、生成した通信信号を外部に送信する。
【0043】
表示部140は、各種情報を表示するための、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(OLED: Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の表示装置を含む。
【0044】
記憶部130は、ROM、RAM、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部130は、制御部110が実行するプログラムを予め記憶している。また、記憶部130は、通信端末200から受信した品質情報を記憶する。記憶部130は、管理装置100の外部に設けられてもよく、その場合に通信部120を介して制御部110との間でデータの授受を行ってもよい。
【0045】
制御部110は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部130に記憶されたプログラムを実行することにより、品質情報取得部111、悪化度特定部112、優先度特定部113、出力部114及び通知部115として機能する。品質情報取得部111、悪化度特定部112、優先度特定部113、出力部114及び通知部115の機能については、
図5〜
図9を用いて後述する。制御部110の機能の少なくとも一部は、電気回路によって実行されてもよい。また、制御部110の機能の少なくとも一部は、ネットワーク経由で実行されるプログラムによって実行されてもよい。
【0046】
本実施形態に係る管理装置100は、
図4に示す具体的な構成に限定されない。管理装置100は、1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。
【0047】
[品質情報の取得方法の説明]
図5は、本実施形態に係る管理装置100が行う品質情報の取得方法の模式図である。管理装置100の品質情報取得部111は、通信端末200が通信品質の測定を行った各地点Pの品質情報を取得する(e)。
図5は、通信端末200が品質情報を測定した地点Pを地図上に模式的に表している。品質情報取得部111は、通信端末200から品質情報を受信して記憶部130に記憶させる。
【0048】
[悪化度及び優先度の特定方法の説明]
図6は、本実施形態に係る管理装置100が行う悪化度及び優先度の特定方法の模式図である。管理装置100は、悪化度及び優先度の少なくとも一方を特定して出力するように構成されている。まず管理装置100の品質情報取得部111は、記憶部130から、各地点の場所における第1時点及び第2時点の品質情報を読み出して取得する(f)。
図6は、地図上の各地点Pにおいて、矢印の左側には第1時点の通信品質を、矢印の右側には第2時点の通信品質を、模式的に表している。
【0049】
第1時点は、過去の特定の時間である。例えば第1時点は、1ヶ月前、6ヶ月前又は1年前のように、現在から所定期間遡った時間として定義される。第1時点の定義は、管理装置100に予め設定されてもよく、あるいは管理装置100のユーザによって入力されてもよい。品質情報取得部111は、各地点において第1時点に最も近い時間の品質情報を、第1時点の品質情報として取得する。
【0050】
品質情報取得部111は、過去(第1時点)の通信品質として、シミュレーションの計算によって算出した理論値を用いてもよい。通信品質の理論値は、基地局10のアンテナの位置及び周辺の建造物の配置を用いてシミュレーションを行うことによって算出できる。算出した理論値を基準として最近の通信品質が悪化している場合に、通信事業者はその場所の周辺の建造物の配置等の状況が変化していることを認識することができる。
【0051】
また、品質情報取得部111は、過去(第1時点)の通信品質を、時期に依存した通信回線のトラヒック又は通信品質の変動に基づいて推定してもよい。時期は、特定の季節に該当する期間、又はその場所において特定のイベントが開催されている期間である。通信品質の傾向は、時期ごとに異なる。そのためその時期において過去に測定された通信回線のトラヒック又は通信品質の変動に基づいて過去の通信品質を推定し、最近の通信品質と比較することによって、より高精度に通信品質の悪化を検出することができる。
【0052】
第2時点は、第1時点よりも現在に近い最近の特定の時間である。例えば第2時点は、現在の時間、又は第1時点の所定期間後の時間のように、第1時点よりも相対的に現在に近い時間として定義される。品質情報取得部111は、各地点において第2時点に最も近い時間の品質情報を、第2時点の品質情報として取得する。
【0053】
品質情報取得部111は、最近(第2時点)の通信品質を、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿されたメッセージの内容に基づいて推定してもよい。例えばSNSに特定の場所と通信品質の高低とを含むメッセージ(例えば「○○駅で通話が切れる」)が投稿された場合に、品質情報取得部111は、該場所において低い通信品質が測定されるものと推定する。これにより、通信品質の測定が実際に行われていない場所についても、通信品質を推定して通信品質の悪化を検出することができる。
【0054】
悪化度特定部112は、品質情報取得部111が取得した第1時点及び第2時点の品質情報が示す通信品質に基づいて、各地点の場所において通信品質が悪化しているか否かを判定し、通信品質が悪化していると判定された場所における悪化度を特定する(g)。悪化度は、第1時点の通信品質(第1品質という)を基準とした、第2時点の通信品質(第2品質という)の悪化の程度を示す値である。より具体的には、悪化度は、第1品質(例えば第1時点のRSSI、SNR又はSINR)から第2品質(例えば第2時点のRSSI、SNR又はSINR)の変化の大きさ(例えば低下量又は低下割合)を示す値である。
図6は、地点PXにおいて、第1品質に比べて第2品質が悪化したことを表している。
【0055】
優先度特定部113は、品質情報取得部111が取得した第1時点及び第2時点の品質情報が示す通信品質に基づいて、通信品質が悪化していると判定された場所における優先度を特定する(h)。優先度は、通信品質の改善を優先的に行うべき度合いを示す値である。優先度特定部113は、第1時点と第2時点との間における、通信品質の悪化の大きさ(すなわち上述の悪化度)と、通信回線のトラヒックの増加の大きさと、通信回線の容量の逼迫度の増大の大きさとのうち少なくとも1つに基づいて、優先度を特定する。
【0056】
通信回線のトラヒックは、例えば基地局10と通信端末200との間の単位時間あたりの通信量によって表される。通信回線の容量の逼迫度は、例えばアンテナのセクタ又は周波数バンドごとの、基地局10と通信端末200との間の同時接続数又はスループットの最大値に対する現在値の割合によって表される。
【0057】
優先度特定部113は、通信品質の悪化が大きいほど、又は通信回線のトラヒックの増加が大きいほど、又は通信回線の容量の逼迫度の増大が大きいほど、優先度を高く設定する。また、優先度特定部113は、通信品質の悪化が小さいほど、又は通信回線のトラヒックの増加が小さいほど、又は通信回線の容量の逼迫度の増大が小さいほど、優先度を低く設定する。このように場所ごとに特定された優先度によって、通信事業者は通信品質の変化が大きい場所を知ることができ、通信品質の改善を行うべき場所の判断を容易に行うことができる。
【0058】
さらに優先度特定部113は、通信品質の悪化の理由に基づいて、優先度を重み付けする。例えば優先度特定部113は、第2時点の通信品質(第2品質)が通信の切断の発生を示す場合に、優先度を高く重み付けする。優先度特定部113は、所定期間内に切断が発生した頻度に応じて優先度を連続的又は段階的に重み付けしてもよい。
図6は、地点PYにおいて、第1時点の切断頻度に比べて第2時点の切断頻度が上昇したことを表している。このように通信の切断のような特定の理由で通信品質が悪化している場所については優先度を高く設定することによって、通信事業者に通信品質の改善に特に重要な場所を知らせることができる。
【0059】
さらに優先度特定部113は、通信品質のSINRが示す干渉度合いと通信品質の悪化の理由とに基づいて、優先度を重み付けしてもよい。例えば優先度特定部113は、第2品質が示すSINRが所定の閾値以上であり、かつ第2品質が通信の切断の発生を示す場合に、優先度を高く重み付けする。このように干渉によって通信の切断が発生していると推測できる場所については優先度を高く設定することによって、通信事業者に通信品質の改善に特に重要な場所を知らせることができる。
【0060】
ここに示した優先度の定義は一例であり、通信事業者は、品質情報取得部111が取得した第1時点及び第2時点の品質情報が示す通信品質に基づいて特定可能な任意の優先度を定義することができる。
【0061】
基地局10は、アンテナの角度(チルト角)や、通信に用いるパラメータを、管理装置100から遠隔で調整可能に構成されている。管理装置100は、特定した優先度が所定の閾値以上である場合に、優先度を特定した場所の周辺にある基地局10を遠隔で調整する。
【0062】
基地局10の調整は、基地局10のアンテナのチルト角の変更、基地局10が使用する周波数バンドの負荷分散(すなわち基地局10から通信端末200に報知する周波数の優先順位の変更)、及び通信の規制(すなわち通信端末200と基地局10との間の通信制限)のうち、少なくとも1つを含む。複数の調整を行う場合には、チルト角の変更、負荷分散、通信の規制の順に行うことが望ましい。
【0063】
アンテナのチルト角の設定は、過去のイベントごとに、その時に測定された通信品質と関連付けられて管理装置100に記憶される。現在特定のイベントが開催されている場合には、管理装置100は該イベントに関連付けられたチルト角の設定に基づいて、基地局10のアンテナのチルト角を遠隔で変更する。
【0064】
このように優先度が高い場所については管理装置100が基地局10を遠隔で調整することによって、素早く通信品質を改善することができる。
【0065】
[出力方法の説明]
図7は、本実施形態に係る管理装置100が行う悪化度及び優先度の出力方法の模式図である。管理装置100の出力部114は、悪化度特定部112が特定した悪化度及び優先度特定部113が特定した優先度を、場所と関連付けて表示部140に表示させることによって出力する。
【0066】
具体的には、出力部114は、悪化度又は優先度が所定の条件を満たす場所の領域R1を、地図に重畳して表示部140に表示させる。悪化度又は優先度の条件は、例えば悪化度又は優先度が所定の閾値以上であることである。さらに出力部114は、領域R1ごとに関連付けられた悪化度及び優先度を示す表示欄Fを、表示部140に表示させる。また、出力部114は、表示欄F中に、第2時点の通信品質(第2品質)の値(例えばRSSI、SNR、SINR又は切断の頻度)を表示させてもよい。
【0067】
また、出力部114は、領域R1ごとの通信品質、悪化度及び優先度のうち少なくとも1つに応じて、領域R1又は表示欄Fの表示態様を変化させてもよい。例えば出力部114は、通信品質、悪化度又は優先度が所定の条件を満たす場合に、領域R1又は表示欄Fの色、線又は形状を変更する、あるいは領域R1又は表示欄Fを点滅させる。
【0068】
図7に示す各情報の表示態様は一例であり、これに限られない。
図7の表示欄Fでは、悪化度は値そのもの(例えばパーセンテージ)によって表示されており、優先度は値を言葉に変換したもの(例えば「低」、「中」又は「高」)によって表示されているが、その他の態様で表示されてもよい。
【0069】
このように悪化度及び優先度を地図に重畳して表示することによって、優先的に通信品質を改善すべき場所を判断するための情報を、通信事業者にわかりやすく知らせることができる。出力部114は、地図への重畳表示に限らず、悪化度及び優先度と場所とを関連付けたリストを出力してもよい。
【0070】
図8(a)、
図8(b)は、本実施形態に係る管理装置100が行う通信品質の出力方法の模式図である。管理装置100の出力部114は、品質情報取得部111が取得した第2時点の通信品質(第2品質)を、場所と関連付けて表示部140に表示させることによって出力する。出力部114は、ユーザによる操作に応じて、
図7に示す悪化度及び優先度の表示と
図8(a)、
図8(b)に示す通信品質の表示とを切り替える。
【0071】
出力部114は、高さを設定するための高さ設定欄Hを、表示部140に表示させる。
図8(a)、
図8(b)の例では、高さ設定欄Hとして高さの高低を選択するスライダを用いているが、高さの数値(例えば高度又は階層)を入力可能な欄を用いてもよい。そして出力部114は、高さ設定欄Hに設定された高さにおいて通信品質が所定の条件を満たす場所の領域R2を、地図に重畳して表示部140に表示させる。通信品質の条件は、例えば通信品質(例えばRSSI、SNR又はSINR)が所定の閾値以上であることである。
【0072】
図8(a)は低い高さにおける場所ごとの通信品質を表しており、
図8(b)は高い高さにおける場所ごとの通信品質を表している。高さごとの通信品質が測定されていない場所については、出力部114は、いずれか1つの高さにおける通信品質を表示部140に表示させる。
【0073】
また、出力部114は、領域R2ごとの通信品質に応じて、領域R2の表示態様を変化させてもよい。例えば出力部114は、通信品質が高い又は通信可能な場合に領域R2の色を濃く表示させ、通信品質が低い又は通信不可能な場合に領域R2の色を薄く表示させる。
図8(a)、
図8(b)では、領域R2の色は多数の点によって表現されている。
【0074】
このように設定された高さごとの通信品質を地図上に表示することによって、例えば高層ビル等の建造物の階層ごとの通信品質の違いや、公園等に植えられた樹木の成長にともなう通信品質の変化を、通信事業者に知らせることができる。
【0075】
[通知方法の説明]
図9は、本実施形態に係る通信端末200の前面図である。管理装置100の通知部115は、品質情報取得部111が取得した品質情報の通信品質が測定された場所において、特定した優先度が所定の閾値以上である場合に、該場所に現在位置すると推定される通信端末200、又は該場所に位置する可能性のある通信端末200を抽出する。また、通知部115は、該場所における通信品質が悪いこと(例えば通信品質の値が所定の閾値以下であること)を示す品質情報を管理装置100へ送信した通信端末200を抽出してもよい。また、通知部115は、該場所における品質情報を管理装置100へ送信した回数が所定値以上である通信端末200を抽出してもよい。
【0076】
そして通知部115は、抽出した通信端末200に、通信品質の改善の優先度が高い旨を示す通知を送信する。
図9は、表示部上に通知部115から受信した通知を表すメッセージMを表示している通信端末200を示している。通信端末200は、通知部115から通知を受信した時にメッセージMを表示してもよい。また、通信端末200は、通知部115から通知を受信した後であって該通知に係る場所に滞在している場合にメッセージMを表示してもよく、あるいは通知部115から通知を受信した後であって該通知に係る場所に滞在しており、かつ表示部がオン(すなわち情報を表示可能な状態)になっている場合にメッセージMを表示してもよい。
【0077】
通知部115は、優先度が高い場合に限られず、通信品質の改善の予定がある場合に通知を行ってもよい。通信品質の改善の予定は、通信事業者によって管理装置100に場所ごとに設定される。そして通知部115は、品質情報取得部111が取得した品質情報の通信品質が測定された場所において、通信品質の改善の予定が設定されている場合に、通信品質の改善の予定があることを判定する。そして通知部は、通信品質の改善の優先度が高い場合と同様に通信端末200を抽出し、通知を送信する。
【0078】
通信端末200が通信品質の改善の予定がある場所における品質情報を管理装置100へ送信した場合に、管理装置100の通知部115は、通信端末200に対して既に通信品質の改善の予定があることを示すメッセージを送信するとともに、今後の通信品質の測定を中止させる指示を送信してもよい。これにより通信端末200のバッテリの消費を抑え、無駄な通信を削減することができる。
【0079】
[通信方法のシーケンス]
図10は、本実施形態に係る通信システムSが行う品質情報の管理方法のシーケンス図である。まず通信端末200において、通信品質測定部211は、通信端末200が通信を行う際に、基地局10との間の通信品質を測定するとともに、位置測定部212は、通信品質測定時の通信端末200の位置を測定する(S11)。通信品質測定部211が通信品質を測定するタイミングは、通信の開始時、途中、終了時のいずれでもよい。そして品質情報送信部213は、測定した通信品質及び位置を示す品質情報を、基地局10を介して管理装置100へ送信する(S12)。管理装置100は、通信端末200から品質情報を受信して記憶する。
【0080】
管理装置100において、品質情報取得部111は、各地点の場所における第1時点及び第2時点の品質情報を取得する(S13)。悪化度特定部112は、ステップS13で品質情報取得部111が取得した第1時点及び第2時点の品質情報が示す通信品質に基づいて、各地点の場所において通信品質が悪化しているか否かを判定し、通信品質が悪化していると判定された場所における悪化度を特定する(S14)。また、優先度特定部113は、ステップS13で品質情報取得部111が取得した第1時点及び第2時点の品質情報が示す通信品質に基づいて、通信品質が悪化していると判定された場所における優先度を特定する(S15)。
【0081】
そして出力部114は、ステップS14で悪化度特定部112が特定した悪化度及びステップS15で優先度特定部113が特定した優先度を、場所と関連付けて表示部140に表示させることによって出力する(S16)。
【0082】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る管理装置100は、過去(第1時点)及び最近(第2時点)の通信品質に基づいて悪化度及び優先度を特定し、場所と関連付けて出力する。これにより、通信事業者は、場所ごとの時間経過による通信品質の変化を容易に把握することができ、優先的に通信品質を改善すべき場所を判断することができる。また、管理装置100は、悪化度及び優先度を地図上に重畳して表示するため、通信品質が悪化している場所の分布がわかりやすい。
【0083】
また、管理装置100は、通信品質、通信回線のトラヒック及び通信回線の逼迫度のうち少なくとも1つの変化の大きさに基づいて特定した優先度を出力するため、通信事業者は場所ごとの数値を分析する必要がなく、容易に通信品質を改善すべき場所を判断することができる。
【0084】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0085】
管理装置100及び通信端末200のプロセッサは、
図10に示す管理方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、管理装置100及び通信端末200のプロセッサは、
図10に示す管理方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して管理装置100及び通信端末200の各部を制御することによって、
図10に示す管理方法を実行する。
図10に示す管理方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。