特許第6893170号(P6893170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893170
(24)【登録日】2021年6月2日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/06 20060101AFI20210614BHJP
   F16C 29/02 20060101ALI20210614BHJP
   F16C 25/04 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   F16C32/06 A
   F16C29/02
   F16C25/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-509452(P2017-509452)
(86)(22)【出願日】2016年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2016057070
(87)【国際公開番号】WO2016158229
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2018年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-72054(P2015-72054)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−251395(JP,A)
【文献】 特開平11−190306(JP,A)
【文献】 特開2010−151176(JP,A)
【文献】 特開平04−029616(JP,A)
【文献】 特表2009−505014(JP,A)
【文献】 特表2009−534601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/00−32/06
F16C 29/00−31/06
F16C 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる単一のガイドと、前記ガイドに対して軸方向に移動可能なスライダと、を備えるアクチュエータであって、
前記ガイドは、一面が開放された凹形断面を有し、
前記スライダは、前記スライダの複数の面に設けられる圧縮気体を噴出するエアパッドと、前記エアパッドから噴出される圧縮気体を排出する排気溝と、を有し、前記ガイドの内側を前記ガイドに対して浮上して案内されるように構成され、
前記スライダには、前記スライダを挟んで互いに対向する前記ガイドの内面にそれぞれ対向するようにサーボ室が形成されており、
前記スライダは、前記エアパッドから噴出される圧縮気体により、前記軸方向に直交する方向であって開放された一面とは反対向きの方向の力を付与される、アクチュエータ。
【請求項2】
前記エアパッドは、周囲が前記排気溝で囲まれている、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記スライダの複数の面に設けられた前記エアパッドは、前記複数の面のそれぞれにおいて前記排気溝とは別の排気溝に囲まれ、さらに、複数の面に跨がる一続きの一つの前記排気溝によって前記複数の面の前記別の排気溝とともに囲まれている、請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記排気溝は、前記軸方向に延びる部分を含む、請求項1から3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記一面の開放は、前記一面の一部を開放するものであり、
前記エアパッドは、前記スライダの四面に設けられ、
前記スライダは、四面に設けられた前記エアパッドのそれぞれから、それぞれに対向する前記ガイドの面に向けて圧縮気体を噴出することによって、前記ガイドに対して四面が浮上して案内されるように構成される、請求項1から4の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダがガイドに案内されつつ移動可能であるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
真空環境下で使用されるアクチュエータには、真空チャンバ内を汚染しないことが求められる。そのようなアクチュエータとして、気体圧アクチュエータが知られている(例えば特許文献1)。気体圧アクチュエータは、スライダ内に設けられたエアパッドから圧縮気体を噴出することによって、スライダがガイド軸に対して滑らかに移動できるように構成されている。気体圧アクチュエータは、転がり軸受やリニアガイドを使用するアクチュエータのように、潤滑オイルや摺動面からの微細ごみの発生がなく、アクチュエータからの発熱がないなどの、様々な利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4443778号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来知られている気体圧アクチュエータは、長方形の筒状に構成されたスライダが同じく長方形断面のガイド軸を4面で拘束する構造となっている。このような構造のアクチュエータは、ガイド軸の製作コストが高い、ガイド軸に対するスライダの組立調整が煩雑であるなどの、いくつかの製造上の問題が存在する。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、スライダがガイドに案内されつつ移動可能であるアクチュエータの簡易的な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様のアクチュエータは、一方向に延びるガイドと、ガイドに対して軸方向に移動可能なスライダと、を備えるアクチュエータであって、ガイドは、少なくとも一面が開放され、スライダは、圧縮気体を噴出するエアパッドとスライダを駆動するためのエアサーボ室とを有し、ガイドに対して浮上して案内されるように構成される。
【0007】
「一面が開放され」るとは、一面の全体が開放される場合も一面の一部が開放される場合も含まれる。
【0008】
ガイドは凹形断面を有し、スライダは凹形断面を構成する三面で拘束されつつ、ガイドに対して浮上して案内されるように構成されてもよい。
【0009】
ガイドは多角形断面を有し、スライダは多角形断面を構成する複数の面のうちの一面で拘束されつつ、ガイドに対して浮上して案内されるように構成されてもよい。
【0010】
これらの態様によると、スライダがガイド軸を4面で拘束する従来構造のアクチュエータと比較して、ガイドの一面が開放された構造となるので、ガイドおよびスライダの構造を簡素化することができる。
【0011】
スライダとガイドとの間に、磁力による下向きの力をスライダに付与するマグネットプリロード機構が設けられてもよい。これによると、アクチュエータの軸受剛性を確保することができる。
【0012】
本発明の別の態様もまた、アクチュエータである。このアクチュエータは、一方向に延びるガイドと、ガイドに対して軸方向に移動可能なスライダと、を備えるアクチュエータであって、ガイドは、少なくとも一面が開放され、スライダは、圧縮気体を噴出するエアパッドとエアパッドから噴出される圧縮空気を排出する排気溝とを有し、ガイドに対して浮上して案内されるように構成され、排気溝は軸方向に延びる部分を含む。
【0013】
ガイドは凹形断面を有し、スライダは凹形断面を構成する三面で拘束されつつ、ガイドに対して浮上して案内されるように構成されてもよい。
【0014】
ガイドは多角形断面を有し、スライダは多角形断面を構成する複数の面のうちの一面で拘束されつつ、ガイドに対して浮上して案内されるように構成されてもよい。
【0015】
これらの態様によると、スライダがガイド軸を4面で拘束する従来構造のアクチュエータと比較して、ガイドの面が開放された構造となるので、ガイドおよびスライダの構造を簡素化することができる。
【0016】
スライダとガイドとの間に、磁力による下向きの力をスライダに付与するマグネットプリロード機構が設けられてもよい。これによると、アクチュエータの軸受剛性を確保することができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様もまた、アクチュエータである。このアクチュエータは、一方向に延びるガイドと、ガイドに対して軸方向に移動可能なスライダと、を備え、ガイドまたはスライダの一方が凹形断面を有し、他方が凹形断面を構成する三面で拘束されつつ、スライダがガイドにより案内される。
【0018】
この態様によると、スライダがガイド軸を4面で拘束する従来構造のアクチュエータと比較して、ガイドまたはスライダの一面が開放された構造となるので、ガイドおよびスライダの構造を簡素化することができる。
【0019】
スライダは、圧縮気体を噴出するエアパッドを有しており、ガイドに対して浮上して案内されるように構成されてもよい。これによると、気体圧アクチュエータの場合であってもガイドおよびスライダの構造を簡素化することができる。
【0020】
スライダは、エアパッドから噴出される圧縮空気を排出する排気溝をさらに有してもよい。排気溝は、軸方向に延びる部分を含んでもよい。これによると、ガイドまたはスライダの一面が開放された構造の気体圧アクチュエータを、真空環境下でも使用することができる。
【0021】
スライダは、軸方向に延びるエアサーボ室を有してもよい。ガイドは、エアサーボ室に進入してエアサーボ室を2つに区画する隔壁を有してもよい。スライダは、エアサーボ室の2つの区画のうちの一方の区画に圧縮気体を供給されるとともに他方の区画から圧縮気体を排出されることにより、ガイドに対して軸方向に移動してもよい。
【0022】
スライダとガイドとの間に、磁力による下向きの力をスライダに付与するマグネットプリロード機構が設けられてもよい。これによると、アクチュエータの軸受剛性を確保することができる。
【0023】
なお、以上の要素の任意の組み合わせや、本発明の要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、スライダがガイドに案内されつつ移動可能であるアクチュエータを簡易的な構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る気体圧アクチュエータの概略斜視図である。
図2】気体圧アクチュエータを構成するスライダの斜視図である。
図3図1、2中のA−A線に沿った気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。
図4】気体圧アクチュエータの動作原理を説明する、図1中のB−B線に沿った気体圧アクチュエータの断面図である。
図5】変形例に係る気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。
図6】別の変形例に係る気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。
図7】さらに別の変形例に係る気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。
図8】さらに別の変形例に係る気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。
図9】さらに別の変形例に係る気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。
図10】さらに別の変形例に係る気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る気体圧アクチュエータ10の概略斜視図である。気体圧アクチュエータ10は、一方向に延び断面凹形に形成されるガイド12と、ガイド12に案内されつつガイド12に沿って軸方向に移動可能な、直方体形状のスライダ20と、で構成される。ガイド12は、底壁37、第1側壁38および第2側壁39を有し、図示しない脚台によって底壁37の両端および中間部が支持されている。
【0028】
スライダ20は、蓋40を有する。蓋40は、スライダ20に形成されるエアサーボ室28(後述)の開口を塞ぐ。なお、エアサーボ室28がスライダ20を貫通しないよう形成される場合は、蓋40は不要となる。スライダ20は、凹形のガイド12の内側にわずかな隙間を有するように収納される。詳細に後述するように、スライダ20に設けられたエアパッドから圧縮気体(例えば空気)を噴出することで、スライダ20はガイド12に沿って滑らかに移動可能となっている。
【0029】
気体圧アクチュエータ10は、例えば、電子ビーム露光装置などの真空チャンバ内で動作する装置において、可動ステージの駆動に使用される。電子ビーム露光装置とともに使用する場合、気体圧アクチュエータが磁性体であると電子ビームの軌道に影響を及ぼすおそれがあるため、ガイド12、脚台およびスライダ20は、非磁性体材料、例えばセラミックスで形成される。
【0030】
気体圧アクチュエータ10は、例えば転がり軸受やリニアガイドを使用するスライダと比較して、潤滑オイルや摺動面からの微細ごみの発生がないので、例えば真空環境下で使用する電子ビーム露光装置に適している。
【0031】
図2は、スライダ20を下方向から見た斜視図であり、図3は、図1、2中のA−A線に沿った気体圧アクチュエータ10の軸方向断面図である。スライダ20の略直方体形状を構成する面のうち、凹形のガイド12に対する面、すなわち底面22、第1側面24、第2側面26には、エアパッド30が複数形成されている。エアパッド30は、図示しない給気系から供給される高圧の気体を噴出し、ガイド12との間の微小な隙間に高圧の気体層を形成することによって、スライダ20をガイド12から浮上させる。スライダ20の中央部には、スライダ20を駆動するためのエアサーボ室28が形成されている。
【0032】
スライダ20の底面22、第1側面24、第2側面26の縁部には、複数のエアパッド30を取り囲むように、差動排気用の排気溝32、34、36が形成されている。したがって、排気溝32、34、36はいずれも、スライダ20の軸方向に沿って延びる部分を含む。排気溝32は大気解放されている。なお、排気溝32は、排気ポンプ(図示せず)に接続されてもよい。排気溝34、36はそれぞれ、排気溝内の圧力を低真空圧力レベル、中真空圧力レベルにするための排気ポンプ(図示せず)に接続されており、スライダ20のエアパッド30およびエアサーボ室28から内部空間に供給された圧縮気体を外部に排気する。これにより、圧縮気体がガイド12とスライダ20との間の隙間から漏れ出さないようにすることで、気体圧アクチュエータを真空環境下でも使用可能にすることができる。なお、気体圧アクチュエータ10を大気圧環境下で使用する場合には、このような排気溝32、34、36を設ける必要はない。
【0033】
ガイド12を凹形にした場合、スライダ20の側面に配置されるエアパッド30の負荷容量によっては、ガイド12が第1側壁38の上端と第2側壁39の上端との間隔が広がるように(すなわち上側が広がるように)変形しやすくなる。これにより、所望の軸受剛性を確保できなくなるおそれがある。そこで、スライダ20の側面のエアパッド30は、できるだけ底面22側に近づけて配置することが望ましい。
【0034】
図4は、気体圧アクチュエータ10の動作原理を説明する、図1中のB−B線に沿った気体圧アクチュエータの断面図である。なお、図4ではガイド12とスライダ20との隙間や隔壁13とエアサーボ室28との隙間を誇張して描いている。実際は例えば、これらの隙間は数ミクロン程度である。図示するように、スライダ20のエアサーボ室28を軸方向に関して二つのサーボ室28A、28Bに区画する隔壁13がガイド12に固定されている。二つのサーボ室28A、28Bには、各サーボ室に圧縮気体を出入り可能にするための給気系17A、17Bがそれぞれ接続されている。給気系17A、17Bは、サーボ弁16A、16Bと、圧縮気体供給源18A、18Bと、をそれぞれ備えている。
【0035】
エアパッド30に圧縮空気を供給すると、スライダ20がガイド12に対してわずかに浮上する。ここで、例えばサーボ室28Aに圧縮空気を供給するとともに、サーボ室28Bから圧縮空気を排出すると、隔壁13がピストンとして作用して、スライダ20が図中の左方向に移動する。このようにして、サーボ弁16A、16Bの開度を制御することによって、スライダ20をガイド12に対して任意の位置に移動させることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、ガイドの4面を拘束するスライダの代わりに、凹形断面のガイド内を略直方体形状のスライダが摺動するような構造を採用した。この構造では、ガイドをその両端だけでなく複数箇所で支持することが可能となるため、ガイドのたわみ剛性を確保しやすく、角形断面のガイド軸と比較してガイドの断面積を小さくすることができる。したがって、ガイドの小型化、低コスト化が実現される。また、スライダを偏平構造にすることができるため、気体圧アクチュエータの設置高さを抑えることができる。また、スライダを筒状に形成する必要がないので、ガイドに対するスライダの組立調整を簡素化することができる。さらに、スライダおよびガイドをそれぞれ一体構造として製作することができるため、部品点数を減らすことができる。
【0037】
気体圧アクチュエータの軸受剛性を強化するためにマグネットプリロード機構を設けてもよい。図5は、そのような変形例に係る気体圧アクチュエータ10’の軸方向断面図である。図5中の符号が付された部材のうち、図3中に表れたものは、同一の構成を有するので説明を省略する。
【0038】
マグネットプリロード機構48は、磁石による吸引力によって、スライダ20に下向きの力を与えるものである。スライダ20の上面からガイド12の両側壁に向けて延び出すL字形の支持部材42をスライダ20に設ける。支持部材42の下面にマグネット44を、ガイド12の第1側壁38の上部および第2側壁39の上部に軟磁性材料46を、互いに引き合うように設置する。こうすることで、気体圧アクチュエータの軸受剛性を高めることができる。
【0039】
気体圧アクチュエータ10を電子ビーム露光装置とともに使用する場合には、マグネット44からの漏洩磁場が、電子ビームの軌跡に影響を与えるおそれがある。そこで、マグネット44および軟磁性材料46の周辺(図5中の点線Cで示す箇所)に磁気シールドを施し、漏洩磁場を抑制することが好ましい。
【0040】
上記では、ガイド12を断面凹形に、スライダ20を略直方体形状にすることを述べたが、両者の形状を入れ替えてもよい。図6は、そのような変形例に係る気体圧アクチュエータ50の軸方向断面図である。
【0041】
図6では、ガイド52は角形断面を有し、スライダ70は凹形断面を有する。スライダ70の内面のうち、ガイド52に対する面、すなわち上面72、側面74、側面76には、エアパッド80が複数形成されている。エアパッド80は、図示しない給気系から供給される高圧の気体を噴出し、ガイド52との間の微小な隙間に高圧の気体層を形成することによって、スライダ70をガイド52から浮上させる。スライダ70の中央部には、スライダ70を駆動するためのエアサーボ室(図示せず)が形成されている。
【0042】
図示しないが、スライダ70の上面72、側面74、側面76の縁部には、複数のエアパッド80を取り囲むように、差動排気用の排気溝が形成されている。排気溝はそれぞれ排気ポンプ(図示せず)に接続されており、スライダ70のエアパッド80およびエアサーボ室から内部空間に供給された圧縮気体を外部に排気する。これにより、圧縮気体がガイド52とスライダ70との間の隙間から漏れ出さないようにすることで、気体圧アクチュエータを真空環境下でも使用可能にすることができる。なお、気体圧アクチュエータ50を大気圧環境下で使用する場合には、このような排気溝を設ける必要はない。
【0043】
上記の実施の形態では、アクチュエータの軸受剛性を強化するために、マグネットプリロード機構48を設けることを述べた。しかしながら、マグネットプリロード機構の代わりに、リニアガイドなどを用いてスライダとガイドの上下方向を構造的に接続してしまってもよい。この場合、スライダにエアパッドを設ける必要はなくなる。また、リニアガイドを使用する場合も、大気圧環境下と真空環境下の両方でアクチュエータを使用することができる。
【0044】
以上、いくつかの実施の形態に係るアクチュエータの構成について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0045】
本発明によれば、アクチュエータのガイド機構として、エアパッド、エアパッドとマグネットプリロード機構、リニアガイドを自由に選択可能となる。また、アクチュエータを、大気圧環境下および真空環境下の両方で使用することが可能である。
【0046】
実施の形態では、気体圧アクチュエータが非磁性体、特にセラミックスで作成されることを述べたが、本発明は、磁性体で構成されている気体圧アクチュエータに対しても適用することができる。
【0047】
実施の形態では、アクチュエータのガイドおよびスライダが長方形の断面形状を有することを述べたが、本発明は、任意の断面形状を有するガイドおよびスライダを備えるアクチュエータに対しても適用することができる。
【0048】
図7〜9はそれぞれ、そのような変形例に係る気体圧アクチュエータの軸方向断面図である。図7〜9はそれぞれ、図3に対応する。
【0049】
図7は、変形例に係る気体圧アクチュエータ110の軸方向断面図である。気体圧アクチュエータ110は、ガイド12とスライダ20とを備える。スライダ20は、台形の断面形状を有し、第1側面24と第2側面26が上側ほど互いに近づくように傾斜している。ガイド12は、スライダ20に対応する凹形の断面を有する。すなわち、ガイド12は、第1側壁38の内面38aと第2側壁39の内面39aが、上側ほど互いに近づくように傾斜している。
【0050】
本変形例によると、実施の形態に係る気体圧アクチュエータによって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本変形例では、スライダ20の第1側面24と第2側面26が傾斜し、これに対するガイド12の面も同様に傾斜する。したがって、第1側面24および第2側面26(ひいてはスライダ20)は、エアパッド30から噴出される気体によりガイド12との隙間に形成される高圧の気体層から、下向きの力を受けることができる。つまり、本変形例によれば、気体圧アクチュエータの軸受剛性が高まる。
【0051】
図8は、変形例に係る気体圧アクチュエータ210の軸方向断面図である。気体圧アクチュエータ210は、ガイド12とスライダ20とを備える。スライダ20は長方形の断面形状を有し、ガイド12は凹形の断面形状を有する。
【0052】
本変形例では、ガイド12の第1側壁38および第2側壁39は、L字形の断面形状を有する。第1側壁38、第2側壁39はそれぞれ、互いに向かって延び出す第1延出部38b、第2延出部39bを有する。別の言い方をすると、ガイド12は、底壁37、第1側壁38、第2側壁39に加えて上壁を有し、その上壁の一部(中央部)が開放されているともいえる。スライダ20の上面には、第1延出部38b、第2延出部39bと対する部分に、エアパッド30が形成される。
【0053】
本変形例によると、実施の形態に係る気体圧アクチュエータによって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本変形例では、第1延出部38b、第2延出部39bと対するスライダ20の上面にエアパッド30が形成される。したがって、スライダ20は、エアパッド30から噴出される気体によりガイド12との隙間に形成される高圧の気体層から、下向きの力を受けることができる。つまり、本変形例によれば、気体圧アクチュエータの軸受剛性が高まる。
【0054】
図9は、変形例に係る気体圧アクチュエータ310の軸方向断面図である。気体圧アクチュエータ310は、ガイド12とスライダ20とを備える。ガイド12およびスライダ20は、矩形の断面形状を有する。なお、ガイド12およびスライダ20は、矩形の断面形状に限らず、多角形状の断面形状を有していればよい。本変形例では、ガイド12は、三面が開放されている。
【0055】
スライダ20を構成する面のうち、ガイド12に対する面、すなわち底面22には、エアパッド30が複数形成されている。また、スライダ20の底面22には、複数のエアパッド30を取り囲むように、差動排気用の排気溝32、34、36が形成されている。
【0056】
本変形例によると、スライダ20は底面22しか拘束されないため、ガイド12およびスライダ20の構造がより簡素化する。
【0057】
実施の形態では、スライダ20には、1つのエアサーボ室28が形成されることを述べたが、複数のエアサーボ室が形成されてもよい。図10は、そのような変形例に係る気体圧アクチュエータ420の軸方向断面図である。図10図8に対応する。本変形例では、第1側面24および第2側面26に、それぞれエアサーボ室28が形成されている。すなわち、2つのエアサーボ室28が、スライダ20を挟んで互いに対向する内面38a、内面39aにそれぞれ対向するよう形成されている。本変形例によれば、2つのエアサーボ室28に圧力変動が生じても、2つのエアサーボ室28で圧力変動による力が相殺される。そのため、エアサーボ室28に圧力変動が生じても、その圧力変動がスライダ20とガイド12の間に影響するのを抑止できる。
【符号の説明】
【0058】
10 気体圧アクチュエータ、 12 ガイド、 20 スライダ、 30 エアパッド、 34 排気溝、 44 マグネット、 48 マグネットプリロード機構、 50 気体圧アクチュエータ、 52 ガイド、 70 スライダ、 80 エアパッド。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によると、スライダがガイドに案内されつつ移動可能であるアクチュエータを簡易的な構造にすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10