【課題を解決するための手段】
【0022】
本開示は、以下の[1]から[24]を含む。
[1]ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸の少なくとも1つのジアステレオ異性体を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で得る方法であって、
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-リン酸とゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸の混合物を、溶媒または溶媒混合液中で懸濁させて、スラリーを形成させるステップ、および
前記スラリーを濾過して、固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸と、前記溶媒または溶媒混合液に溶解したゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸を含む濾液とを得るステップ
を含み、前記固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸が、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-リン酸であり、および/または前記濾液が、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を含む、方法。
[2]一旦形成後の前記スラリーを約30℃から約80℃の温度に任意選択で加熱する、上記[1]に記載の方法。
[3]前記スラリーを好ましくは濾過前に冷却しない、上記[2]に記載の方法。
[4]前記固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸を洗浄するステップをさらに含む、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸をジアステレオ異性体として純粋な形態で得る方法であって、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を含む前記濾液から前記溶媒を除去して、固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で得るステップをさらに含む、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]前記溶媒または溶媒混合液を除去するステップが、
例えば蒸留または減圧下での蒸発などの蒸発により、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を含む前記濾液から、前記溶媒または溶媒混合液の一部を除去して、固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を含む濃縮した濾液を得ること、
任意選択で、前記濃縮した濾液を撹拌すること、および
前記濃縮した濾液を濾過して、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で、固体として得ること
を含む、上記[5]に記載の方法。
[7]前記溶媒または溶媒混合液を除去するステップが、
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を含む前記濾液を冷却して、固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を含む冷却した濾液を得ること、
任意選択で、前記冷却した濾液を撹拌すること、および
前記冷却した濾液を濾過して、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で、固体とし
て得ること
を含む、上記[5]に記載の方法。
[8]前記濾液にシード材料を添加するステップをさらに含む、上記[7]に記載の方法。
[9]前記濾液にさらなる溶媒を添加するステップをさらに含む、上記[7]または[8]に記載の方法。
[10]前記実質的にジアステレオ異性体として純粋な固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を洗浄することをさらに含む、上記[7]から[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-リン酸を、ジアステレオ異性体として純粋な形態で得る方法である、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[12]第1の濾過より得られた固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸を、第2の溶媒または第2の溶媒混合液中で懸濁させて、第2のスラリーを形成させるステップ、および
前記第2のスラリーを濾過して、実質的にジアステレオ異性体として純粋な固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-リン酸を得るステップ
をさらに含む、上記[11]に記載の方法。
[13]前記溶媒が、極性プロトン性溶媒および極性非プロトン性溶媒から選択される溶媒であるか、または前記溶媒混合液が、極性プロトン性溶媒および極性非プロトン性溶媒から選択される溶媒を含む、上記[1]から[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14]前記溶媒がIPAであるか、または前記溶媒混合液がIPAを含む、上記[13]に記載の方法。
[15]前記溶媒がIPAである、上記[14]に記載の方法。
[16]前記溶媒がアセトニトリルであるか、または前記溶媒混合液がアセトニトリルを含む、上記[13]に記載の方法。
[17]上記[1]から[16]のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能なゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸。
[18]上記[1]から[16]のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能なゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-リン酸。
[19]ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸の結晶形であって、I形である結晶形。
[20]Kα2/Kα1比が0.5のCu放射線を使用して測定した場合に、5.0±0.2、6.7±0.2、8.0±0.2、11.3±0.2、20.2±0.2および21.4±0.2から選択される2θに少なくとも2つのピークがあるXRPDパターンを有することを特徴とする、上記[19]に記載の結晶形。
[21]Kα2/Kα1比が0.5のCu放射線を使用して測定した場合に、5.0±0.2、6.7±0.2、8.0±0.2、11.3±0.2、20.2±0.2および21.4±0.2から選択される2θに少なくとも4つのピークがあるXRPDパターンを有することを特徴とする、上記[20]に記載の結晶形。
[22]Kα2/Kα1比が0.5のCu放射線を使用して測定した場合に、2θが5.0±0.2、6.7±0.2、8.0±0.2、11.3±0.2、20.2±0.2および21.4±0.2のピークがあるXRPDパターンを有することを特徴とする、上記[21]に記載の結晶形。
[23]実質的に図1に示されるXRPDパターンを有することを特徴とする、上記[19]に記載の結晶形。
[24]ヌジョール中の懸濁液として測定した場合に、実質的に図2に示されるFTIRパターンを有することを特徴とする、上記[19]から[23]のいずれか一項に記載の結晶形。
本発明の第1の態様においては、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸の少なくとも1つのジアステレオ異性体を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で提供する方法であって、
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-リン酸とゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸の混合物を、溶媒または溶媒混合液中で懸濁させて、スラリーを形成させるステップ;および
上記のスラリーを濾過して、固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸と、上記の溶媒または溶媒混合液に溶解したゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸を含む濾液とを得るステップ
を含み;
上記の固体のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-リン酸は、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-リン酸であり、かつ/または上記の濾液は、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-リン酸を含む、
方法を提供する。
【0023】
発明者らは、(R)−エピマーと(S)−エピマーの溶解性における差が充分大きいので、この簡素な方法を用いてエピマーを分離することができることを見出した。意外なことに、この方法により、ジアステレオ異性体が濃縮されたゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸が提供されるだけでなく、1つのエピマーまたは両方のエピマーが、実質的にジアステレオ異性体が濃縮された形態で形成しうる。試験したすべての溶媒において、(S)−エピマーは(R)−エピマーよりも高い溶解性を有する。したがって、(S)−エピマーは典型的には濾液中の溶液として、ジアステレオ異性体が濃縮された形態で存在し、(R)−エピマーは典型的には濾過器上の固体として、ジアステレオ異性体が濃縮された形態で存在する。
【0024】
本発明の特定の実施形態は、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含む濾液と、ジアステレオ異性体の混合物である固体生成物とを提供する。本発明の特定の実施形態は、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−リン酸である固体と、ジアステレオ異性体の混合物を含む濾液とを提供する。本発明の特定の実施形態は、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−リン酸である固体と、実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含む濾液との両方を提供する。
【0025】
スラリーの形成は、周囲温度(すなわち20℃〜30℃)で行ってもよい。発明者らは、いずれの加熱ステップまたは冷却ステップも行うことなく、それぞれのエピマーで良好なジアステレオ異性体純度を得ることができることを見出した。
【0026】
しかしながら、スラリーは、スラリーを形成させる工程の少なくとも一部分の間、加熱することが好ましい。したがって、スラリーが形成した後にスラリーを加熱してもよい。スラリーは、約30℃〜約80℃、例えば約40℃〜約70℃の温度に加熱してもよい。特定の好ましい実施形態においては、スラリーは、約50℃〜約60℃の温度に加熱する。スラリーは、1日間以下加熱してもよい。スラリーは、30分間以上加熱してもよい。1〜3時間が適切となりうる。
【0027】
またスラリーは、スラリー形成ステップの少なくとも一部分の間、撹拌してもよい。スラリーは、3日間以下、例えば1日間以下撹拌してもよい。スラリーは、30分間以上撹拌してもよい。1〜6時間が適切でありうる。撹拌には、かき混ぜること、振盪すること、またはその両方が含まれてもよい。スラリーは、同時に、または実質的に同時に、加熱とかき混ぜを行ってもよい。
【0028】
スラリーを加熱した場合、スラリーを濾過前に冷却しないことが好ましい。
【0029】
上記の方法は、固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸を洗浄するステップをさらに含んでもよい。このステップは、濾過による分離の次に行う。このステップは典型的には、スラリーの形成に使用した、同じ溶媒または溶媒混合液を用いて行うが、異なる溶媒を使用して固体を洗浄しうること、またはスラリーを溶媒混合液から形成させた場合は、混合液中の溶媒のうちの1種のみを使用して固体を洗浄することが考えられる。スラリーを加熱した場合、この洗浄ステップは、高温の、例えば約40℃〜約70℃の溶媒または溶媒混合液を使用して行ってもよいが、常に当てはまるわけではない。溶媒または溶媒混合液は、スラリーと同じ温度としてもよい。
【0030】
上の段落で述べたこの洗浄ステップは、通常、固体が濾過器上にある間に行って洗浄濾液を得る。典型的には、洗浄濾液を始めの濾液と一緒にする。本明細書全体にわたり、「濾液」という用語は、濾過後の濾液の処理に関連して使用する場合、この方法で形成した、始めの濾液と洗浄濾液を一緒にすることによって得られた合わせた濾液の両方を包含するよう意図するものであり、また、始めの濾液を洗浄濾液と一緒にしない場合は、この用語は、始めの濾液を単独で指すよう意図するものである。
【0031】
ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の出発原料は、遊離塩基、塩または水和物の出発原料の形態としてもよい。ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の出発原料は、塩および/または溶媒和物(例えば、水和物)の形態でなくてもよい。出発原料は、遊離塩基の形態とすることが好ましい。
【0032】
実質的にジアステレオ異性体として純粋なゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の生成物は、遊離塩基、塩または水和物の出発原料の形態としてもよい。ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の生成物は、塩および/または溶媒和物(例えば、水和物)の形態でなくてもよい。生成物は、遊離塩基の形態とすることが好ましい。
【0033】
通常、出発原料および生成物は同じ形態である。しかしながら、処理ステップが塩基または酸の添加を含んでもよいことが考えられ、この場合、形態は異なりうる。
【0034】
出発原料および生成物は、両方とも遊離塩基の形態であることが好ましい。
【0035】
「実質的にジアステレオ異性体として純粋な」とは、本発明では、約85%よりも高いジアステレオ異性体純度として規定される。本発明の特定の実施形態は、(R)−および/または(S)−ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の単離を、85%よりもかなり高いジアステレオ異性体純度で達成する。したがって、上記の反応方法によって得られるゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸のエピマー、またはエピマーの各々は、約90%よりも高いジアステレオ異性体純度を有してもよい。本発明の方法によって得られるエピマーの1つ、またはエピマーの両方のジアステレオ異性体純度は、95%、98%、99%またはさらには99.5%よりも高くてもよい。
【0036】
本発明では、「ジアステレオ異性体が濃縮された形態」で得られるエピマーとは、得られたゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸のうち、出発混合物に存在したよりも高い比率のものがそのエピマーであることを意味するものとして規定される。通常、出発混合物は、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の最初の合成の生成物であろう。出発原料における(R)エピマー:(S)エピマーの比は、10:1から1:10の間としてもよい。(R)エピマー:(S)エピマーの比は、5:1から1:5の間、例えば3:1から1:3の間、または2:1から1:2の間であることが好ましい。
【0037】
ジアステレオ異性体のいくらかの分離は、試験したすべての溶媒で観測された。
【0038】
溶媒は、極性プロトン性溶媒および極性非プロトン性溶媒から選択される溶媒としてもよく、または溶媒混合液は、極性プロトン性溶媒および極性非プロトン性溶媒から選択される溶媒を含んでもよい。溶媒混合液に存在しうる他の溶媒としては、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、無極性溶媒および水が挙げられる。溶媒はトルエンとしてもよく、または溶媒混合液がトルエンを含んでもよい。溶媒は、C
2〜C
4アルコール、アセトニトリル(ACN)、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)およびそれらの混合液から選択される溶媒としてもよく、または溶媒混合液は、さらなる溶媒と共に上記の溶媒の1種または複数を含んでもよい。特定の場合においては、溶媒は、C
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、iso−プロパノール(IPA)、n−ブタノール)、アセトニトリルおよびそれらの混合液から選択される溶媒であるか、または溶媒混合液は上記の溶媒の1種または複数を含む。溶媒はC
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、IPA、n−ブタノール)としてもよく、または溶媒混合液はC
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、IPA、n−ブタノール)を含んでもよい。特定の好ましい実施形態においては、溶媒がIPAであるか、または溶媒混合液がIPAを含む。他の好ましい実施形態においては、溶媒がアセトニトリルであるか、または溶媒混合液がアセトニトリルを含む。
【0039】
溶媒はC
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、IPA、n−ブタノール)としてもよい。特定の好ましい実施形態においては、溶媒はIPAである。他の好ましい実施形態においては、溶媒はアセトニトリルである。
【0040】
「C
2〜C
4アルコール」および「C
3〜C
4アルコール」という用語は、直鎖アルコールおよび分岐鎖アルコールの両方を包含するよう意図するものである。したがって、念のために述べると、C
2〜C
4アルコールという用語は、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノールから選択されるアルコールを意味する。
【0041】
溶媒混合液は水を含んでもよい。溶媒と水の相対比率は、水と溶媒が混和性であるような相対比率としてもよい。この場合は、水は貧溶媒として作用して、溶媒系でのゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の溶解性を下げてもよい。水が存在する場合、水は、溶媒混合液の全体積(すなわち、溶媒の体積と水の体積を足したもの)の20%以下、例えば10%以下または5%以下としてもよい。水は、溶媒混合液の全体積の0.1%以上としてもよい。
【0042】
溶媒混合液は、別の極性プロトン性溶媒および/または極性非プロトン性溶媒を含んでもよい。溶媒混合液は、例えばアルカンまたはシクロアルカンなどの無極性溶媒を含んでもよい。アルカンおよびシクロアルカンの例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびシクロヘキサンが挙げられる。溶媒混合液が無極性溶媒を含む場合、その無極性溶媒は、溶媒混合液の50%未満の量で存在することが典型的な事例であろう。しかしながらこれは常に当てはまるわけではなく、無極性溶媒は、溶媒混合液の90%以下であることが考えられる。
【0043】
溶媒が混合液中に存在せず、微量不純物以外は実質的に純粋な(すなわち、95%超の、例えば99%超の純度を有する)溶媒を使用してもよい。
【0044】
溶媒は、実質的に純粋な(すなわち、95%超の純度を有する)C
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、IPA、n−ブタノール)またはアセトニトリルとしてもよい。特定の好ましい実施形態においては、溶媒は、実質的に純粋な(すなわち、95%超の純度を有する)IPAである。他の好ましい実施形態においては、溶媒は、実質的に純粋な(すなわち、95%超の純度を有する)アセトニトリルである。
【0045】
溶媒は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、PEG400(ポリエチレングリコール)、NMPおよびDMSOから選択されなくてもよい。溶媒混合液を使用してスラリーを形成させる場合、溶媒混合液は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、PEG400(ポリエチレングリコール)、NMPおよびDMSOから選択される溶媒を含まなくてもよい。
【0046】
後に続く分析などを容易にするため、1種または複数の同位体標識した溶媒を含むことが適切である状況があってもよい。
【0047】
上記の方法は、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を、ジアステレオ異性体として純粋な形態で提供する方法としてもよい。
【0048】
この場合、上記の方法は、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含む濾液から溶媒を除去して、固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で得るステップをさらに含んでもよい。
【0049】
溶媒を除去するステップは、例えば蒸留または減圧下での蒸発などの蒸発により、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸から、実質的にすべての溶媒を除去して、固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で得ることを含んでもよい。
【0050】
溶媒または溶媒混合液を除去するステップは、
例えば蒸留または減圧下での蒸発などの蒸発により、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含む濾液から、溶媒または溶媒混合液の一部を除去して、固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含む濃縮した濾液を得ること;
任意選択で、上記の濃縮した濾液を撹拌すること;および
上記の濃縮した濾液を濾過して、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で、固体として得ること
を含んでもよい。
【0051】
上記の濃縮した濾液は懸濁した固体を含有する。
【0052】
溶液を濃縮すると、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸は結晶化し、この結晶は多くの場合、第1の濾過ステップで得られる濾液と比較して改善されたジアステレオ異性体純度を有することを、発明者らは意外にも発見した。典型的には、溶液を濃縮後にかき混ぜることにより、より多くの結晶が生成して収率が向上する。(S)−エピマーは(R)−エピマーよりも溶けやすいので、(S)−エピマーがより高い純度で放出されることは意外なことである。
【0053】
上記の除去される溶媒の一部は、第1の濾過ステップで得られる体積の10%〜90%としてもよい。除去される溶媒の一部は、第1の濾過ステップで得られる体積の25%〜75%、例えば40%〜60%であることが好ましい。
【0054】
濃縮するステップおよび撹拌するステップ(もしあれば)は、各ステップの時間の少なくとも一部分の間、同時に行ってもよい。
【0055】
濃縮した濾液を撹拌する場合、7日間以下、例えば5日間以下かき混ぜてもよい。濃縮した濾液は1時間以上、例えば6時間以上、12時間以上または1日間以上撹拌してもよい。
【0056】
溶媒を除去するステップは、再結晶/濾過プロセスにより、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸から、実質的にすべての溶媒を除去して、固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で得ることを含んでもよい。これは、スラリー形成ステップおよび濾過ステップ中にスラリーを高温で維持した場合に特に好ましい。
【0057】
溶媒を除去するステップは、
ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含む濾液を冷却して、固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含む冷却した濾液を得ること;
任意選択で、上記の冷却した濾液を撹拌すること;および
上記の冷却した濾液を濾過して、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態で、固体として得ること
を含んでもよい。
【0058】
上記の冷却した濾液は懸濁した固体を含有する。
【0059】
上記の濾液は、約−10℃〜約45℃、例えば約5℃〜約40℃の温度に冷却してもよい。濾液は約15℃〜約35℃の温度に冷却することが好ましい。濾液は、徐々にまたは段階的に冷却してもよい。例えば、濾液をある温度(例えば、約25℃〜約35℃の温度)に冷却し、その温度で一定の時間(例えば、約1時間〜約2日間)維持し、その後、より低い別の温度(例えば、約15℃〜約25℃の温度)に冷却して、その温度でさらなる一定時間(例えば、約1時間〜約2日間)維持してもよい。
【0060】
上記の方法は、シード材料を濾液に添加するステップを含んでもよい。このステップは、濾液を冷却する前、濾液を冷却するとき、または濾液を冷却した後に行いうる。しかしながら、濾液を冷却した後に添加することが好ましい。シード材料は、典型的には、高いジアステレオ異性体純度(例えば、90%以上または95%以上)のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸の形態を取るであろう。シード材料は固体として添加してもよいが、より簡便には、スラリーまたは懸濁液として添加することができる。スラリーまたは懸濁液は、濾液と同じ溶媒または溶媒混合液を含んでもよい。濾液が溶媒混合液を含む場合、シード材料のスラリーまたは懸濁液は、それらの溶媒のうちの1種中にゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含んでもよい。あるいは、シード材料のスラリーまたは懸濁液は、濾液に存在しない溶媒中にゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を含んでもよい。
【0061】
上記の方法は、さらなる溶媒を濾液に添加するステップを含んでもよい。このステップは、濾液を冷却する前、濾液を冷却するとき、または濾液を冷却した後に行いうる。しかしながら、濾液を冷却した後に添加することが好ましい。さらなる溶媒の添加は、典型的には、未変性の濾液の溶媒または溶媒混合液での溶解性と比較して、変性させた濾液でのゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸の溶解性を下げる役割を果たすであろう。さらなる溶媒は水としてもよい。さらなる溶媒は、無極性溶媒、例えば、アルカンもしくはシクロアルカン、またはそれらの混合液としてもよい。濾液が溶媒混合液を含む場合、さらなる溶媒は、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸の溶解性が混合液中のそれ以外の溶媒での溶解性よりも低い、混合液中の溶媒のうちの1種または複数としてもよい。したがって、濾液が水と混合した極性プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒を含む場合、さらなる溶媒は水としてもよい。
【0062】
冷却した濾液を撹拌する場合、7日間以下、例えば5日間以下かき混ぜてもよい。冷却した濾液は1時間以上、例えば6時間以上、12時間以上または1日間以上撹拌してもよい。
【0063】
冷却するステップおよび撹拌するステップ(もしあれば)は、各ステップの時間の少なくとも一部分の間、同時に行ってもよい。
【0064】
上記の方法は、実質的にジアステレオ異性体として純粋な固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸を洗浄するステップをさらに含んでもよい。このステップは、典型的には、濾液を構成した同じ溶媒または溶媒混合液を用いて行うが、異なる溶媒を使用して固体を洗浄しうること、または濾液が溶媒混合液を含んでいた場合は、混合液中の溶媒のうちの1種のみを使用して固体を洗浄することが考えられる。この洗浄プロセスは典型的には、固体が濾過器上にある間に行う。洗浄ステップは典型的には、冷たい(例えば、約5〜約20℃の温度)溶媒または溶媒混合液を使用して行う。
【0065】
残留溶媒は、例えば真空下で固体を加熱することにより、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態の固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸から除去してもよい。
【0066】
上記の方法は、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−リン酸を、ジアステレオ異性体として純粋な形態で提供する方法としてもよい。
【0067】
この場合、上記の方法は、
第1の濾過より得られた固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸を、第2の溶媒または第2の溶媒混合液中で懸濁させて、第2のスラリーを形成させるステップ;および
上記の第2のスラリーを濾過して、実質的にジアステレオ異性体として純粋な固体のゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−リン酸を得るステップ
をさらに含んでもよい。
【0068】
第2の溶媒または第2の溶媒混合液は、第1の懸濁ステップにおいて使用したものと同じでも異なってもよい。
【0069】
第2の溶媒は、極性プロトン性溶媒および極性非プロトン性溶媒から選択される溶媒としてもよく、または第2の溶媒混合液は、極性プロトン性溶媒および極性非プロトン性溶媒から選択される溶媒を含んでもよい。第2の溶媒はトルエンとしてもよく、または第2の溶媒混合液はトルエンを含んでもよい。第2の溶媒混合液に存在しうる他の溶媒としては、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、無極性溶媒および水が挙げられる。第2の溶媒は、C
2〜C
4アルコール、アセトニトリル(ACN)、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)およびそれらの混合液から選択される溶媒としてもよく、または第2の溶媒混合液は、C
2〜C
4アルコール、アセトニトリル(ACN)、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)およびそれらの混合液から選択される溶媒を含んでもよい。第2の溶媒は、C
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、iso−プロパノール(IPA)、n−ブタノール)、アセトニトリルおよびそれらの混合液から選択される溶媒としてもよく、または第2の溶媒混合液は、C
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、iso−プロパノール(IPA)、n−ブタノール)、アセトニトリルおよびそれらの混合液から選択される溶媒を含んでもよい。第2の溶媒はC
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、IPA、n−ブタノール)であり、第2の溶媒混合液はそうしたものを含むことがあってもよい。特定の好ましい実施形態においては、第2の溶媒がIPAであるか、または第2の溶媒混合液がIPAを含む。他の好ましい実施形態においては、第2の溶媒がアセトニトリルであるか、または第2の溶媒混合液がアセトニトリルを含む。
【0070】
第2の溶媒はC
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、IPA、n−ブタノール)としてもよい。特定の好ましい実施形態においては、第2の溶媒はIPAである。他の好ましい実施形態においては、第2の溶媒はアセトニトリルである。
【0071】
第2の溶媒混合液は水を含んでもよい。溶媒と水の相対比率は、水と溶媒が混和性であるような相対比率としてもよい。この場合、水は貧溶媒として作用して、第2の溶媒系でのゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−リン酸の溶解性を下げてもよい。水が存在する場合、水は、第2の溶媒混合液の全体積(すなわち、溶媒の体積と水の体積を足したもの)の20%以下、例えば10%以下または5%以下としてもよい。水は、第2の溶媒混合液の全体積の0.1%以上としてもよい。
【0072】
第2の溶媒混合液は、別の極性プロトン性溶媒および/または極性非プロトン性溶媒を含んでもよい。第2の溶媒混合液は、例えばアルカンまたはシクロアルカンなどの無極性溶媒を含んでもよい。アルカンおよびシクロアルカンの例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびシクロヘキサンが挙げられる。第2の溶媒混合液が無極性溶媒を含む場合、その無極性溶媒は、第2の溶媒混合液の50%未満の量で存在することが典型的な事例であろう。しかしながらこれは常に当てはまるわけではなく、無極性溶媒は、第2の溶媒混合液の90%以下であることが考えられる。
【0073】
第2の溶媒が混合液中に存在せず、微量不純物以外は実質的に純粋な(すなわち、95%超の、例えば99%超の純度を有する)第2の溶媒を使用してもよい。
【0074】
第2の溶媒は、実質的に純粋な(すなわち、95%超の純度を有する)C
3〜C
4アルコール(例えば、n−プロパノール、IPA、n−ブタノール)またはアセトニトリルとしてもよい。特定の好ましい実施形態においては、第2の溶媒は、実質的に純粋な(すなわち、95%超の純度を有する)IPAである。他の好ましい実施形態においては、第2の溶媒は、実質的に純粋な(すなわち、95%超の純度を有する)アセトニトリルである。
【0075】
本発明はまた、第1の態様の方法によって得られうる(例えば、得られる)ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(R)−リン酸および/またはゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸に関する。
【0076】
本発明はまた、ゲムシタビン−[フェニル−ベンゾキシ−L−アラニニル)]−(S)−リン酸の結晶形であって、I形である、結晶形に関する。上記の結晶形(すなわち1形)は、K
α2/K
α1比が0.5のCu放射線を使用して測定した場合に、5.0、6.7、8.0、11.3、20.2および21.4から選択される2θで少なくとも2つのピーク(例えば、少なくとも4つのピーク)を含むXRPDパターンを上記の形態が有することを特徴としてもよい。上記の結晶形は、K
α2/K
α1比が0.5のCu放射線を使用して測定した場合に、5.0、6.7、8.0、11.3、20.2および21.4の2θでピークを含むXRPDパターンを有してもよい。上記の結晶形は、実質的に
図1に示されるXRPDパターンを有してもよい。上記の結晶形は、ヌジョール中の懸濁液として測定した場合に、実質的に
図2に示されるFTIRパターンを有してもよい。
【0077】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら、以下でさらに説明する。