特許第6893211号(P6893211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6893211基板生産管理装置および基板生産管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893211
(24)【登録日】2021年6月2日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】基板生産管理装置および基板生産管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20210614BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20210614BHJP
【FI】
   G06Q10/06 328
   G06Q50/04
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-530217(P2018-530217)
(86)(22)【出願日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2016071764
(87)【国際公開番号】WO2018020556
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】半戸 寛之
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩二
【審査官】 田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−273577(JP,A)
【文献】 特開2011−210190(JP,A)
【文献】 特開2007−280348(JP,A)
【文献】 特開2010−080675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理装置であって、
前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策を実施してよい作業者に設定された権限レベルである設定権限レベルを対応付けて記憶した解決策記憶部と、
前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証部と、
前記問題事象が発生したときに、前記実施権限レベル以下の設定権限レベルに対応する実施可能な解決策と、前記実施権限レベルを超えた設定権限レベルに対応する実施不能な解決策と、を分けて通知する解決策通知部と、
を備えた基板生産管理装置。
【請求項2】
前記作業者の要請に応じて、前記実施不能な解決策に対応する設定権限レベル以上の実施権限レベルを有する上位者に前記問題事象の発生を通知する上位者通知部をさらに備えた請求項1に記載の基板生産管理装置。
【請求項3】
前記作業者が前記実施不能な解決策を代行する申請をしたとき、前記実施不能な解決策に対応する設定権限レベル以上の実施権限レベルを有する上位者に前記申請を通知する代行申請部と、
前記上位者が前記申請を承認したとき、前記作業者が前記実施不能な解決策を代行することを許可する代行承認部と、
をさらに備えた請求項1または2に記載の基板生産管理装置。
【請求項4】
電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理装置であって、
前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策が前記問題事象の解消に寄与する効果率を対応付けて記憶した解決策記憶部と、
前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証部と、
前記問題事象が発生したときに、前記作業者の前記実施権限レベル、前記作業者によって実施された解決策、および前記実施された解決策によって得られた効果量を対応付けて収集する効果量収集部と、
前記作業者の前記実施権限レベルの高低に応じて学習係数の大小を設定し、前記得られた効果量に前記学習係数を乗じて前記効果率にフィードバックすることにより、前記実施された解決策の前記効果率を修正する効果率学習部と、
を備えた基板生産管理装置。
【請求項5】
子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理方法であって、
コンピュータ装置が、前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策を実施してよい作業者に設定された権限レベルである設定権限レベルを対応付けて記憶する解決策記憶ステップと、
前記コンピュータ装置が、前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証ステップと、
前記コンピュータ装置が、前記問題事象が発生したときに、前記実施権限レベル以下の設定権限レベルに対応する実施可能な解決策と、前記実施権限レベルを超えた設定権限レベルに対応する実施不能な解決策と、を分けて表示する解決策通知ステップと、
を備えた基板生産管理方法。
【請求項6】
子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理方法であって、
コンピュータ装置が、前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策が前記問題事象の解消に寄与する効果率を対応付けて記憶する解決策記憶ステップと、
前記コンピュータ装置が、前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証ステップと、
前記コンピュータ装置が、前記問題事象が発生したときに、前記作業者の前記実施権限レベル、前記作業者によって実施された解決策、および前記実施された解決策によって得られた効果量を対応付けて収集する効果量収集ステップと、
前記コンピュータ装置が、前記作業者の前記実施権限レベルの高低に応じて学習係数の大小を設定し、前記得られた効果量に前記学習係数を乗じて前記効果率にフィードバックすることにより、前記実施された解決策の前記効果率を修正する効果率学習ステップと、
を備えた基板生産管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板生産ラインまたは基板生産装置を管理する基板生産管理装置に関し、より詳細には、基板生産ラインまたは基板生産装置において発生した問題事象に対処する複数の解決策の運用に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電子部品が実装された基板を生産する装置として、はんだ印刷機、電子部品装着機、リフロー機、基板検査機などがある。これらの基板生産装置を連結して基板生産ラインを構成することが一般的になっている。基板生産ラインの稼動状況は、ホストコンピュータと呼ばれる基板生産管理装置によって管理されるのが一般的である。基板生産ラインでは、基板生産装置の動作異常や生産管理指標の低下などの問題事象が発生すると、作業者の対処作業が必要になる。この場合、ホストコンピュータは、問題事象の発生を通知して、対処作業の実施を要請する。
【0003】
ここで、対処作業の候補となる解決策は一般的には複数あり、問題事象に対応して適切な解決策を選択しないと効果的な対処作業とならない。例えば、経験の浅いオペレータは、問題事象の根本的な原因に気が付かず、効果的でない解決策をあれこれ試行することになりがちである。一方、熟練のエンジニアは、問題事象の発生状況を正確に把握して、精度の高い解決策を実施する。このように、問題事象を解消する対処作業に関し、作業者の熟練度に依存して実施する解決策の精度が異なる。
【0004】
また近年では、過去に発生した問題事象、実施された解決策、および解決策の効果量を収集および蓄積してナレッジ化する技術が普及しつつある。この種の技術は、学習システム、ナレッジシステム、人工知能などと呼ばれる。学習システムを、基板生産ラインの問題事象に適用することにより、過去の対処作業の経験が活かされて各解決策の効果率が向上し、適切な解決策の選択が容易になる。基板生産ラインの問題事象および解決策に関する技術例が特許文献1〜4に開示されている。
【0005】
特許文献1は、基板生産ラインにおける作業に従事するオペレータの作業意欲の向上を支援するシステムを開示している。このシステムは、オペレータの熟練度を特定する熟練度特定手段と、オペレータの作業効率の向上に資する情報をオペレータに提供する情報提供手段とを備え、情報提供手段が、オペレータの熟練度に応じて、提供する情報の類別を異なるものとする。これによれば、自身のスキルアップに役立つより高度な情報を得たいという欲求がオペレータに生じて、作業意欲の向上を支援できる、とされている。
【0006】
また、特許文献2のトラブル診断システムは、監視部と、データベースと、診断部とを具備する。監視部は、トラブル発生前の所定期間のデータの変化パターンをコード化してパターンコードを生成する。データベースは、パターンコードと、トラブルの発生原因と、同一パターンコードにおける同一トラブルの発生頻度とを蓄積する。診断部は、トラブル発生時のパターンコードをデータベース内で検索して、発生頻度の高い順にトラブルの発生原因を提示する。これによれば、トラブルの発生原因を短時間で発見できる、とされている。これは、学習システムの1種であり、基板生産ラインを対象とする学習システムの技術は、特許文献3、4にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−184884号公報
【特許文献2】特開平4−161823号公報
【特許文献3】特開2014−63286号公報
【特許文献4】特開平7−7262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、基板生産ラインの問題事象に対処する複数の解決策の候補の中には、実施できる条件が制約されている解決策や、動作条件を一度変更してしまうと元の動作条件に復帰することが困難な解決策がある。例えば、停止した基板の位置の基準となる座標系を求め直す再キャリブレーションの解決策は、製品用の基板が搬入されているときには実施できず、時間も長くかかり、再キャリブレーションの実施後に元の座標系に戻すことが困難となる。したがって、経験の浅いオペレータが軽率に再キャリブレーションを実施すると、別の問題事象を引き起こしてしまうおそれが生じる。つまり、解決策の候補の中には、実施に慎重を期すべき解決策がある。
【0009】
また、学習システムを基板生産ラインの問題事象に適用する場合に、熟練のエンジニアが実施した解決策は十分に参考となる。しかしながら、経験の浅いオペレータが実施した解決策、換言すると無駄になりがちな解決策を同等に評価して学習を行うと、精度の向上が見込めない。換言すると、各解決策の効果率の精度が向上しない。したがって、実施された解決策を基にして学習を行う際に、解決策を実施した作業者の熟練度を考慮することが望ましい。
【0010】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、基板生産ラインの問題事象に対処する複数の解決策を適切に運用することにより、問題事象の早期の解消に寄与できる基板生産管理装置および基板生産管理方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で開示する基板生産管理装置は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理装置であって、前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策を実施してよい作業者に設定された権限レベルである設定権限レベルを対応付けて記憶した解決策記憶部と、前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証部と、前記問題事象が発生したときに、前記実施権限レベル以下の設定権限レベルに対応する実施可能な解決策と、前記実施権限レベルを超えた設定権限レベルに対応する実施不能な解決策と、を分けて通知する解決策通知部と、を備えた。
【0012】
また、本明細書で開示する別の基板生産管理装置は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理装置であって、前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策が前記問題事象の解消に寄与する効果率を対応付けて記憶した解決策記憶部と、前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証部と、前記問題事象が発生したときに、前記作業者の前記実施権限レベル、前記作業者によって実施された解決策、および前記実施された解決策によって得られた効果量を対応付けて収集する効果量収集部と、前記作業者の前記実施権限レベルの高低に応じて学習係数の大小を設定し、前記得られた効果量に前記学習係数を乗じてフィードバックすることにより、前記実施された解決策の前記効果率を修正する効果率学習部と、を備えた。
【0013】
本明細書で開示する基板生産管理方法は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理方法であって、コンピュータ装置が、前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策を実施してよい作業者に設定された権限レベルである設定権限レベルを対応付けて記憶する解決策記憶ステップと、前記コンピュータ装置が、前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証ステップと、前記コンピュータ装置が、前記問題事象が発生したときに、前記実施権限レベル以下の設定権限レベルに対応する実施可能な解決策と、前記実施権限レベルを超えた設定権限レベルに対応する実施不能な解決策と、を分けて表示する解決策通知ステップと、を備えた。
【0014】
また、本明細書で開示する別の基板生産管理方法は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン、または前記基板生産ラインを構成する基板生産装置を管理する基板生産管理方法であって、コンピュータ装置が、前記基板生産ラインまたは前記基板生産装置で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、前記対処作業の候補となる解決策、および前記解決策が前記問題事象の解消に寄与する効果率を対応付けて記憶する解決策記憶ステップと、前記コンピュータ装置が、前記対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証ステップと、前記コンピュータ装置が、前記問題事象が発生したときに、前記作業者の前記実施権限レベル、前記作業者によって実施された解決策、および前記実施された解決策によって得られた効果量を対応付けて収集する効果量収集ステップと、前記コンピュータ装置が、前記作業者の前記実施権限レベルの高低に応じて学習係数の大小を設定し、前記得られた効果量に前記学習係数を乗じて前記効果率にフィードバックすることにより、前記実施された解決策の前記効果率を修正する効果率学習ステップと、を備えた。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示する基板生産管理装置において、解決策通知部は、問題事象が発生したときに、作業者の実施権限レベルと解決策の設定権限レベルとを比較して、作業者が実施可能な解決策と、作業者が実施不能な解決策とを分けて通知する。ここで、実施に慎重を期すべき解決策は、高い設定権限レベルが設定されている。したがって、経験の浅い作業者が実施に慎重を期すべき解決策を軽率に実施して別の問題事象を引き起こしてしまうおそれがなく、結果として問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0016】
また、本明細書で開示する別の基板生産管理装置において、効果率学習部は、作業者の実施権限レベルの高低に応じて学習係数の大小を設定し、得られた効果量に学習係数を乗じてフィードバックすることにより、実行された解決策の効果率を修正する。つまり、実施権限レベルの高い作業者が実施した精度の高い解決策に大きな学習係数を乗じ、実施権限レベルの低い作業者が実施した精度の低い解決策に小さな学習係数を乗じて、効果率を修正する。これにより、精度の高い解決策が重点的にナレッジ化されて効果率の精度が高められ、問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0017】
さらに、本明細書で開示する基板生産管理方法は、本明細書で開示する基板生産管理装置と同様の作用が生じて、問題事象の早期の解消に寄与できる。また、本明細書で開示する別の基板生産管理方法は、本明細書で開示する別の基板生産管理装置と同様の作用が生じて、問題事象の早期の解消に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の基板生産管理装置の構成を基板生産ラインと共に模式的に示した図である。
図2】問題事象の発生から解決策の実施までを示す基板生産管理装置の処理フローの前半の図である。
図3】解決策の実施以降から効果率の修正までを示す基板生産管理装置の処理フローの後半の図である。
図4】解決策通知部の通知内容の一例を表示した画面例の図である。
図5】効果率学習部の機能を模式的に説明する図であり、上位者が対処作業を実施した場合を例示している。
図6】効果率学習部の機能を模式的に説明する図であり、オペレータが対処作業を実施した場合を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1.実施形態の基板生産管理装置1および基板生産ライン2の構成)
本発明の実施形態の基板生産管理装置1について、図1図6を参考にして説明する。図1は、実施形態の基板生産管理装置1の構成を基板生産ライン2と共に模式的に示した図である。例示された基板生産ライン2は、6台の基板生産装置によって構成されている。具体的に、基板生産ライン2は、はんだ印刷機21、はんだ検査機22、第1電子部品装着機23、第2電子部品装着機24、基板外観検査機25、およびリフロー機26が列設されて構成されている。
【0020】
はんだ印刷機21は、基板の所定位置にペースト状のはんだを印刷する。はんだ印刷機21は、例えば、基板搬送装置、基板上に載置されるスクリーン、およびスクリーン上を移動してはんだを塗布するスキージなどで構成される。はんだ検査機22は、基板上のはんだの印刷状態の良否を判定する。はんだ検査機22は、例えば、基板搬送装置、印刷されたはんだを撮像して画像データを取得する撮像カメラ、および画像データを画像処理して良否を判定する画像判定部などで構成される。
【0021】
第1電子部品装着機23および第2電子部品装着機24は、電子部品を基板に装着する。電子部品装着機23、24は、同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。電子部品装着機23、24は、基板搬送装置、部品供給装置、部品移載装置、および部品カメラなどで構成される。部品供給装置は、例えば、複数のフィーダ装置がパレット上に列設されて構成される。各フィーダ装置は、多数の電子部品を保持したキャリアテープを巻回したリールを交換可能に保持する。部品移載装置は、電子部品を吸着する吸着ノズルを保持した装着ヘッド、およびヘッド駆動機構などを有する。部品移載装置は、部品供給装置から電子部品を吸着して、基板のはんだ上に装着する。部品カメラは、部品移載装置の吸着ノズルが電子部品を吸着した状態を撮像して画像データを取得し、画像データを画像処理して電子部品の吸着状態を確認する。
【0022】
基板外観検査機25は、基板に装着された電子部品の状態を検査する。基板外観検査機25は、例えば、基板搬送装置、電子部品を撮像して画像データを取得する撮像カメラ、および画像データを画像処理して良否を判定する画像判定部などで構成される。リフロー機26は、ペースト状のはんだを加熱して溶解させた後に冷却して、はんだ付けを確かなものにする。リフロー機26は、例えば、基板搬送装置、加熱装置、および冷却装置などで構成される。
【0023】
上記した基板生産ライン2の構成は変更可能であり、各基板生産装置の構造も変更可能である。基板生産ライン2には、ローリングタワー27が付設されている。ローリングタワー27は、基板生産ライン2において作業者による対処作業が必要になったことを表示する。すなわち、対処作業が必要になったとき、ローリングタワー27は、上部の回転灯28を点灯または点滅させつつ回転させる。基板生産ライン2と同じフロアにいるオペレータは、遠くからでも回転灯28の点灯または点滅を視認できる。
【0024】
実施形態の基板生産管理装置1は、基板生産ライン2の稼動状況を管理する。基板生産管理装置1は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置であり、ホストコンピュータとも呼ばれる。基板生産管理装置1は、各種の表示を行う液晶ディスプレイなどの表示装置11、各種の設定を行うキーボードやマウスなどの入力装置12、およびメモリ装置13などを具備している。基板生産管理装置1は、はんだ印刷機21、はんだ検査機22、第1電子部品装着機23、第2電子部品装着機24、基板外観検査機25、およびリフロー機26と個別に通信できるように接続されている。基板生産管理装置1は、ローリングタワー27にも接続されており、ローリングタワー27の表示を制御する。なお、基板生産管理装置1は、複数の基板生産ライン2をまとめて管理することもできる。
【0025】
メモリ装置13内には、解決策データベース14が構築されている。解決策データベース14は、本発明の解決策記憶部に相当する。解決策データベース14は、過去に発生した問題事象、およびその対処作業で実施された解決策に基づいて構築される。解決策データベース14は、問題事象、解決策、設定権限レベル、および解決策の効果率を対応付けて記憶している。
【0026】
問題事象とは、基板生産ライン2で基板を生産できない異常状態、または、基板生産ライン2で基板を生産できていても生産管理指標が低下した状態を意味する。異常状態の例として、電子部品装着機23、24で電子部品を吸着できない吸着エラーが継続した状態、はんだ検査機22や基板外観検査機25において検査を行えない状態、基板を搬送できない状態などがある。生産管理指標が低下した状態の例として、稼動率の低下や、電子部品装着機23、24における吸着エラー率の増加、はんだ検査機22や基板外観検査機25における不合格基板の発生などがある。
【0027】
解決策は、問題事象を解消するために実施する対処作業の候補となるものである。大多数の問題事象に対して解決策は複数有るが、どの解決策が効果的でどの解決策が無効であるかはケースバイケースである。設定権限レベルは、それぞれの解決策に設定されており、解決策を実施してよい作業者に設定された権限レベルである。本実施形態において、オペレータに設定された通常権限レベルL1、および上位者に設定された上位権限レベルL2の2種類がある。効果率は、解決策が問題事象の解消に寄与する割合を統計的にかつ定量的に評価した値である。効果率は、後述する効果率学習部57によって適宜修正される。
【0028】
基板生産管理装置1は、基板生産ライン2で問題事象が発生したときに動作する機能部として、権限認証部51、解決策通知部52、上位者通知部53、代行申請部54、代行承認部55、効果量収集部56、および効果率学習部57を有する。これらの機能部の詳細な機能ついては、後の動作および作用の説明で詳述する。
【0029】
また、基板生産管理装置1は、構内LAN3を経由して多数のパソコン31〜32と通信接続されている。第1パソコン31は、通常権限レベルL1が設定されたオペレータによって使用される。オペレータは、基板生産ライン2で基板を生産していると発生する通常作業を実施する。通常作業の例として、電子部品装着機23、24における電子部品の部品切れに応じた部品補給作業、はんだ印刷機21におけるはんだ補給作業、生産する基板の種類の変更に伴う段取り替え作業などがある。
【0030】
第2パソコン32は、上位権限レベルL2が設定された上位者によって使用される。上位者として、基板生産ライン2の責任者であるラインエンジニアや、当該の基板生産ライン2に加えて他の基板生産ラインを含むフロア全体の責任者であるフロアマネージャなどが該当する。基板生産管理装置1とパソコン31、32との間、およびパソコン31、32の相互間では、メールアドレスを指定した電子メールによる通知が可能になっている。オペレータおよび上位者は、入力装置12やパソコン31、32からログイン処理を行って、基板生産管理装置1にアクセスできる。
【0031】
(2.実施形態の基板生産管理装置1の動作および作用)
実施形態の基板生産管理装置1の動作および作用の説明に移る。図2は、問題事象の発生から解決策の実施までを示す基板生産管理装置1の処理フローの前半の図である。また、図3は、解決策の実施以降から効果率の修正までを示す基板生産管理装置1の処理フローの後半の図である。図2および図3に関する以降の記載は、実施形態の基板生産管理方法の説明を兼ねている。なお、解決策データベース14を予め構築しておくステップは、本発明の解決策記憶ステップに相当する。
【0032】
図2のステップS1で、基板生産管理装置1は、基板生産ライン2に問題事象が発生したか否かを判別する。基板生産管理装置1は、問題事象が発生していない間ステップS1を繰り返して行い、問題事象が発生すると処理フローの実行をステップS2に進める。ステップS2で、基板生産管理装置1は、問題事象の発生を通知する。この通知は、表示装置11に表示され、あるいは、電子メールで第1パソコン31に送信されて表示される。さらに、基板生産管理装置1は、問題事象の発生をローリングタワー37に表示する。オペレータは、問題事象の発生に気付くと、ステップS3でログイン処理を行う。これにより、基板生産管理装置1は、オペレータが対処作業を実施する作業者であると認識する。
【0033】
次の権限認証ステップS4で、権限認証部51は、オペレータの実施権限レベルを通常権限レベルL1と認証する。次の解決策通知ステップS5で、解決策通知部52は、オペレータの通常権限レベルL1以下の設定権限レベルに対応する実施可能な解決策と、通常権限レベルL1を超えた設定権限レベルに対応する実施不能な解決策と、を分けて通知する。図4は、解決策通知部52の通知内容の一例を表示した画面例の図である。図4の画面例は、表示装置11および第1パソコン31の少なくとも一方に表示される。
【0034】
図4の画面例の最上段には「電子部品が見つからない」という問題事象が表示され、2段目には問題事象の発生箇所として「第1電子部品装着機」が表示されている。これは、第1電子部品装着機23において、吸着ノズルがフィーダ装置から電子部品を吸着したはずであるのに、部品カメラの画像処理で電子部品が無いと判定されたことを表している。この問題事象に対応して、画面例の3段目以下に解決策が一覧表の形式で表示されている。
【0035】
一覧表は、No.、解決策の内容、設定権限レベル、および効果率の4欄からなる。No.1〜25の25種類の解決策は、効果率E1の大きなものから効果率E25の小さなものへと順番に並んでいる。効果率E1〜E25は、実際には数値、例えば1〜0の範囲で表される。No.1〜14およびNo.24の解決策は、設定権限レベルが通常権限レベルL1に設定されており、これを意味する「L1」が表示されている。したがって、No.1〜14およびNo.24の解決策は、オペレータにより実施可能である。
【0036】
No.15〜23およびNo.25の解決策は、設定権限レベルが上位権限レベルL2に設定されており、これを意味する「L2」が表示されている。したがって、No.15〜23およびNo.25の解決策は、通常は作業者により実施不能であり、上位者のみが実施できる。なお、設定権限レベルの欄を設けずに、各解決策の表示色の違いで設定権限レベルを表すようにしてもよい。
【0037】
No.1〜8の8種類の解決策は、フィーダ装置の動作状況の確認に関する解決策である。No.9の解決策は、フィーダ装置を交換する解決策である。No.10〜14の5種類の解決策は、吸着ノズルの動作状況の確認に関する解決策である。No.24の解決策は、部品カメラのレンズ汚れまたは落下部品の存在による撮像機能の低下に対処するという解決策である。通常権限レベルL1が設定されたこれらの解決策は、実施できる条件が制約されず、比較的短時間で容易に行え、解決策の実施前後で第1電子部品装着機23の動作条件が変更されない。
【0038】
一方、No.15〜17およびNo.20〜23の7種類の解決策は、第1電子部品装着機23の動作条件を編集して変更する解決策である。オペレータがこれらの動作条件の編集を試みても、上位権限レベルL2が設定されてないので、動作条件の変更は禁止される。No.18の解決策は、吸着ノズルを交換する解決策であり、例えば、ノズル径の変更を伴う。No.19の解決策は、キャリアテープが巻回されたリールを交換する解決策である。この解決策では、同一仕様の電子部品であっても、部品ベンダーの違いによって部品条件が微妙に変化する可能性が有る。No.25の解決策は、装着ヘッドをメンテナンスし、または交換する解決策である。
【0039】
上位権限レベルL2が設定されたこれらの解決策は、実施できる条件が制約されていたり、動作条件を一度変更してしまうと元の動作条件に復帰することが困難であったりする。したがって、上位権限レベルL2の解決策は、実施に慎重を期すべき解決策であり、通常はオペレータに実施不能となっている。ただし、本実施形態では、後述する代行申請の承認により、オペレータが上位権限レベルL2の解決策を代行する場合が有る。
【0040】
図4の画面例の最下段には、「上位者通知」というソフトウェアスイッチが設けられている。また、設定権限レベルの欄の上位権限レベルL2を意味する「L2」もソフトウェアスイッチとなっている。
【0041】
図4の画面例が表示された時点で、オペレータは3つの選択肢の採否を検討する。オペレータは、問題事象が難しく独力での解消が困難と思われるときに、第1の選択肢である「上位者通知」のソフトウェアスイッチを操作する。換言すると、オペレータは、入力装置12のマウスのポインタを「上位者通知」に重ねてクリックする。この操作は、上位者に助力を要請することに相当する。
【0042】
また、オペレータは、実施不能な解決策のいずれかが有効と思われるときに、第2の選択肢である「L2」のソフトウェアスイッチを操作する。換言すると、オペレータは、入力装置12のマウスのポインタをいずれかの「L2」に重ねてクリックする。この操作は、上位権限レベルL2が設定された解決策を代行する申請を行うことに相当する。なお、オペレータは、複数の「L2」のソフトウェアスイッチを操作することもできる。
【0043】
さらに、オペレータは、実施可能な解決策のいずれかが有効と思われるときに、第3の選択肢として解決策に着手する。換言すると、オペレータは、ソフトウェアスイッチを操作することなく、通常権限レベルL1が設定された解決策の実施に進む。
【0044】
図2のステップS6で、上位者通知部53は、「上位者通知」のソフトウェアスイッチの操作の有無を判定する。操作が有った場合のステップS7で、上位者通知部53は、オペレータの要請に対応して、上位権限レベルL2を有する上位者に問題事象の発生を通知するとともに、助力を依頼する。この通知は、電子メールで上位者用の第2パソコン32に送信される。
【0045】
要請を受けて、上位者が入力装置12または第2パソコン32からログイン処理を行うと、処理フローの実行はステップS3に戻される。2度目のステップS3で、基板生産管理装置1は、上位者が対処作業を実施する作業者であると認識する。2度目の権限認証ステップS4で、権限認証部51は、上位者の実施権限レベルを上位権限レベルL2と認証する。
【0046】
2度目の解決策通知ステップS5で、解決策通知部52は、上位権限レベルL2に見合った通知をする。上位権限レベルL2に見合った通知は、表示装置11および第2パソコン32の少なくとも一方に表示される。上位権限レベルL2に見合った通知でも、図4の画面例が表示されるが、「上位者通知」のソフトウェアスイッチおよび「L2」のソフトウェアスイッチは表示されない。また、上位者が対処作業を実施する場合、ステップS6からステップS12は不要となり、処理フローの実行は直ちにステップS13に進められる。
【0047】
ステップS6で「上位者通知」の操作が無かった場合のステップS8で、代行申請部54は、「代行申請」の操作、すなわち「L2」のソフトウェアスイッチの操作の有無を判定する。操作が有った場合の代行申請ステップS9で、代行申請部54は、オペレータが実施不能な解決策を代行する申請をした旨を上位者に通知する。この通知は、電子メールで上位者用の第2パソコン32に送信される。上位者は、代行を承認する否かの回答を電子メールで代行承認部55に返信する。
【0048】
ステップS10で、代行承認部55は、「代行申請」が承認されたか否かを判定する。「代行申請」が承認された場合の代行承認ステップS11で、代行承認部55は、操作した「L2」に対応するNo.の解決策の代行を許可する。この許可は、例えば、当該No.の解決策の「L2」に代えて「代行許可」と表示することで、オペレータに伝えられる。
【0049】
また、「代行申請」が承認されなかった場合のステップS12で、代行承認部55は、操作した「L2」に対応するNo.の解決策の代行を却下する。この却下は、例えば、当該No.の解決策の「L2」に代えて「代行却下」と表示することで、オペレータに伝えられる。ステップS12の後、処理フローの実行は解決策通知ステップS5に戻される。2度目の解決策通知ステップS5で、オペレータは、前述した3つの選択肢の採否を再度検討できる。
【0050】
上位者がログイン処理を行って2度目の解決策通知ステップS5が終了した後、および、ステップS8で「代行申請」の操作が無かった場合、および、代行承認ステップS11の後、処理フローの実行はステップS13に進められる。上位者またはオペレータは、図4に例示される解決策の一覧表を参考にして、解決策を順次実施する。このとき、複数の解決策の効果率が一目でわかるので、対処作業が効率的に実施される。対処作業の実施によって問題事象が解消されると、処理フローの実行は図3の効果量収集ステップS14に進められる。
【0051】
効果量収集ステップS14で、効果量収集部56は、対処作業を行った作業者の実施権限レベル、実施された解決策、および実施された解決策によって得られた効果量を対応付けて収集する。ここで、解決策は複数である場合が多く、効果量の大小に関係なく実施された全ての解決策が対象となる。また、効果量は、数値化されて評価される必要が有り、例えば、1から0の範囲で評価される。効果量が1である場合、当該の解決策だけで問題事象を完全に解消できたことを意味する。また、効果量が0である場合、当該の解決策は問題事象の解消に全く寄与しなかったことを意味する。効果量は、複数の解決策に分配されてもよい。
【0052】
次のステップS15で、効果率学習部57は、作業者の実施権限レベルの高低に応じて学習係数αの大小を設定する。次のステップS16で、効果率学習部57は、得られた効果量に学習係数αを乗じて解決策データベース14の効果率にフィードバックすることにより、実施された解決策の効果率を修正する。ステップS15およびステップS16は、本発明の効果率学習ステップに相当する。ステップS16の後、処理フローの実行は最初に戻される。
【0053】
図5および図6は、効果率学習部57の機能を模式的に説明する図であり、図5は上位者が対処作業を実施した場合を例示し、図6はオペレータが対処作業を実施した場合を例示している。図5および図6における問題事象は、図4に示された「電子部品が見つからない」である。
【0054】
図5に示されるように、上位者は、まずNo.4の解決策であるフィーダ確認(吸着位置のずれ確認)を実施し、次にNo.22の解決策である部品データの編集を実施して、問題事象を解消した。上位者は、有効なNo.4およびNo.22の解決策の各効果量を適宜決定する。効果率学習部57は、上位者の上位権限レベルL2に応じて、学習係数αを1に設定する。さらに、効果率学習部57は、有効なNo.4およびNo.22の解決策の各効果量に学習係数α(=1)を乗じ、解決策データベース14の効果率E4、E22にフィードバックする。
【0055】
また、図6に示されるように、オペレータは、1番目にNo.9の解決策であるフィーダの交換を実施し、2番目にNo.18の解決策であるノズルの交換について代行の承認を受けて実施した。それでも、問題事象が解消しないので、オペレータは、上位者に相談してNo.4およびNo.22の解決策を実施し、問題事象を解消した。このように経験の浅いオペレータは、無駄なNo.9およびNo.18の解決策を実施しがちである。
【0056】
オペレータは、無駄であったNo.9およびNo.18の解決策の各効果量を0と決定し、有効であったNo.4およびNo.22の解決策の各効果量を適宜決定する。効果率学習部57は、オペレータの通常権限レベルL1に応じて、学習係数αを0.1に設定する。さらに、効果率学習部57は、No.9、No.18、No.4、およびNo.22の解決策の各効果量に学習係数α(=0.1)を乗じ、解決策データベース14の効果率E9、E18、E4、E22にフィードバックする。
【0057】
効果率学習部57は、或る解決策について、過去に実施された複数回の効果量を平均化して効果率を求める。このとき、学習係数αを考慮した加重平均値が求められるので、上位者が実施した精度の高い解決策は、オペレータが実施した解決策の10倍の重みで効果率に反映される。これにより、精度の高い解決策が重点的にナレッジ化されて効果率の精度が高められ、問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0058】
例えば、今回有効であったNo.4およびNo.22の解決策の各効果率E4、E22は、上位者の実施によって大幅に高く修正され、オペレータの実施によってわずかに高く修正される。また、今回無駄であったNo.9およびNo.18の各効果率E9、E18は、オペレータの実施によってわずかに低く修正される。修正された各効果率E4、E22、E9、E18は、次回の解決策通知ステップS5に反映される。
【0059】
(3.実施形態の基板生産管理装置1の態様および効果)
実施形態の基板生産管理装置1は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン2を管理する基板生産管理装置1であって、基板生産ライン2で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、対処作業の候補となる解決策、および解決策を実施してよい作業者に設定された権限レベルである設定権限レベルを対応付けて記憶した解決策記憶部(解決策データベース14)と、対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証部51と、問題事象が発生したときに、実施権限レベル以下の設定権限レベルに対応する実施可能な解決策と、実施権限レベルを超えた設定権限レベルに対応する実施不能な解決策と、を分けて通知する解決策通知部52と、を備えた。
【0060】
これによれば、解決策通知部52は、問題事象が発生したときに、作業者であるオペレータの通常権限レベルL1と解決策の設定権限レベルとを比較して、オペレータが実施可能な通常権限レベルL1の解決策(No.1〜14およびNo.24の解決策)と、オペレータが実施不能な上位常権限レベルL2の解決策(No.15〜23およびNo.25の解決策)とを分けて通知する。ここで、実施に慎重を期すべき解決策は、高い上位権限レベルL2が設定されている。したがって、経験の浅いオペレータが実施に慎重を期すべき解決策を軽率に実施して別の問題事象を引き起こしてしまうおそれがなく、結果として問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0061】
さらに、実施形態の基板生産管理装置1は、作業者であるオペレータの要請に応じて、実施不能な解決策に対応する上位権限レベルL2を有する上位者に問題事象の発生を通知する上位者通知部53をさらに備えた。これによれば、オペレータは、問題事象が難しく独力での解消が困難と思われるときに、上位者に助力を要請できる。したがって、オペレータが難しい問題事象をひとりで抱え込むことがなくなり、問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0062】
さらに、実施形態の基板生産管理装置1は、作業者であるオペレータが実施不能な解決策を代行する申請をしたとき、実施不能な解決策に対応する上位権限レベルL2を有する上位者に申請を通知する代行申請部54と、上位者が申請を承認したとき、オペレータが実施不能な解決策を代行することを許可する代行承認部55と、をさらに備えた。これによれば、オペレータは、実施不能な解決策のいずれかが有効と思われるときに、上位者の承認を受けてその解決策を代行できる。したがって、上位者が現場に出向いてその解決策を実施する必要がなくなり、問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0063】
また、実施形態の基板生産管理装置1は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン2を管理する基板生産管理装置であって、基板生産ライン2で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、対処作業の候補となる解決策、および解決策が問題事象の解消に寄与する効果率を対応付けて記憶した解決策記憶部(解決策データベース14)と、対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証部51と、問題事象が発生したときに、作業者の実施権限レベル、作業者によって実施された解決策、および実施された解決策によって得られた効果量を対応付けて収集する効果量収集部56と、作業者の実施権限レベルの高低に応じて学習係数αの大小を設定し、得られた効果量に学習係数αを乗じて効果率にフィードバックすることにより、実施された解決策の効果率を修正する効果率学習部57と、を備えた。
【0064】
これによれば、効果率学習部57は、作業者の実施権限レベルの高低に応じて学習係数αの大小を設定し、得られた効果量に学習係数αを乗じてフィードバックすることにより、実行された解決策の効果率を修正する。つまり、実施権限レベルの高い上位者が実施した精度の高い解決策に大きな学習係数α(=1)を乗じ、実施権限レベルの低いオペレータが実施した精度の低い解決策に小さな学習係数α(=0.1)を乗じて、効果率を修正する。これにより、精度の高い解決策が重点的にナレッジ化されて効果率の精度が高められ、問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0065】
また、実施形態の基板生産管理方法は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン2を管理する基板生産管理方法であって、基板生産ライン2で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、対処作業の候補となる解決策、および解決策を実施してよい作業者に設定された権限レベルである設定権限レベルを対応付けて記憶する解決策記憶ステップ(解決策データベース14を予め構築しておくステップ)と、対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証ステップS4と、問題事象が発生したときに、実施権限レベル以下の設定権限レベルに対応する実施可能な解決策と、実施権限レベルを超えた設定権限レベルに対応する実施不能な解決策と、を分けて通知する解決策通知ステップS5と、を備えた。
【0066】
これによれば、実施形態の基板生産管理装置1と同様に、経験の浅いオペレータが実施に慎重を期すべき解決策を軽率に実施して別の問題事象を引き起こしてしまうおそれがないので、結果として問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0067】
また、実施形態の基板生産管理方法は、電子部品を実装した基板を生産する基板生産ライン2を管理する基板生産管理方法であって、基板生産ライン2で発生し得てかつ対処作業を必要とする問題事象、対処作業の候補となる解決策、および解決策が問題事象の解消に寄与する効果率を対応付けて記憶する解決策記憶ステップ(解決策データベース14を予め構築しておくステップ)と、対処作業を実施する作業者が有する権限レベルである実施権限レベルを認証する権限認証ステップS4と、問題事象が発生したときに、作業者の実施権限レベル、作業者によって実施された解決策、および実施された解決策によって得られた効果量を対応付けて収集する効果量収集ステップS14と、作業者の実施権限レベルの高低に応じて学習係数αの大小を設定し、得られた効果量に学習係数αを乗じて効果率にフィードバックすることにより、実施された解決策の効果率を修正する効果率学習ステップ(ステップS15、S16)と、を備えた。
【0068】
これによれば、実施形態の基板生産管理装置1と同様に、精度の高い解決策が重点的にナレッジ化されて効果率の信頼性が高められるので、問題事象の早期の解消に寄与できる。
【0069】
(4.実施形態の応用および変形)
なお、実施形態の基板生産管理装置1は基板生産ライン2の全体を管理するが、これに限定されない。すなわち、基板生産管理装置1は、基板生産ライン2を構成する一部の基板生産装置、例えば電子部品装着機23、24のみを管理する構成であってもよい。また、パソコン31、32は、無線通信によって接続される携帯端末とすることも可能である。
【0070】
さらになお、権限レベルは3段階以上とすることもできる。また、実施形態で説明した解決策通知部52の通知方法や、通知内容を表示した画面例は、適宜変更することができる。さらに、上位者の学習係数α(=1)およびオペレータの学習係数α(=0.1)は一例であり、上位者およびオペレータの熟練度に応じて異なる学習係数αを設定してもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:基板生産管理装置、 11:表示装置、 12:入力装置、 13:メモリ装置、 14:解決策データベース(解決策記憶部)、 2:基板生産ライン、 21:はんだ印刷機、 22:はんだ検査機、 23:第1電子部品装着機、 24:第2電子部品装着機、 25:基板外観検査機、 26:リフロー機、 27:ローリングタワー、 31:第1パソコン、 32:第2パソコン、 51:権限認証部、 52:解決策通知部、 53:上位者通知部、 54:代行申請部、 55:代行承認部、 56:効果量収集部、 57:効果率学習部、 α:学習係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6