(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
人工構造物の天井に固定された固定部材に取り付けられる不燃材で成る基体と、前記基体に設けられたLED発光体と、前記基体に装着されて前記基体から垂下すると共に、前記LED発光体を光源として立面から光を射出させる矩形状の導光板を有する壁構成部材とを備えた防煙垂壁用ユニットであって、
前記LED発光体は、前記壁構成部材の上方に一列にて配置され、
前記壁構成部材は、前記基体を一部に含む不燃性の枠体により、上方、側方及び下方の全周が囲まれており、前記導光板が前記基体の短手方向に沿って2つ並設され、
前記2つの導光板は、それぞれ他方の導光板と対峙する面に、前記LED発光体から前記導光板内を通過してきた光を前記導光板内に向けて乱反射させる部位と、前記導光板内を通過してきた光を前記他方の導光板に向けて射出させる部位とを有し、
前記2つの導光板の間に前記第1の光拡散シートを介在させて、前記2つの導光板のうち一方の導光板から他方の導光板に向けて射出された光を前記第1の光拡散シートを通過する間に拡散させて前記他方の導光板内に入射させ、
透光性及び光反射性の双方を有する不燃性の第2の光拡散シートが前記2つの導光板のそれぞれに前記第1の光拡散シートが配置された側とは反対側に配置されて、前記導光板の立面を覆うと共に、前記第2の光拡散シートに、不燃性を有しつつ表示が施されていることを特徴とする防煙垂壁用ユニット。
人工構造物の天井に固定された固定部材と、前記固定部材に取り付けられる不燃材で成る基体と、前記基体に設けられたLED発光体と、前記基体に装着されて前記基体から垂下し、前記LED発光体を光源として立面から光を射出させる矩形状の導光板を有する壁構成部材と、を備えた防煙垂壁であって、
前記LED発光体は、前記壁構成部材の上方に一列にて配置され、
前記壁構成部材は、前記基体を一部に含む不燃性の枠体により、上方、側方及び下方の全周が囲まれており、前記導光板が前記基体の短手方向に沿って2つ並設され、
前記2つの導光板は、それぞれ他方の導光板と対峙する面に、前記LED発光体から前記導光板内を通過してきた光を前記導光板内に向けて乱反射させる部位と、前記導光板内を通過してきた光を前記他方の導光板に向けて射出させる部位とを有し、
前記2つの導光板の間に前記第1の光拡散シートを介在させて、前記2つの導光板のうち一方の導光板から他方の導光板に向けて射出された光を前記第1の光拡散シートを通過する間に拡散させて前記他方の導光板内に入射させ、
透光性及び光反射性の双方を有する不燃性の第2の光拡散シートが前記2つの導光板のそれぞれに前記第1の光拡散シートが配置された側とは反対側に配置されて、前記導光板の立面を覆うと共に、前記第2の光拡散シートに、不燃性を有しつつ表示が施されていることを特徴とする防煙垂壁。
【背景技術】
【0002】
矩形状の導光板と、前記導光板の縁に沿って設けられたLED発光体と、前記導光板を建築物の天井に固定する不燃材の枠体と、前記導光板の表示方向の表面に設けられた不燃材のシートを有して構成されると共に、前記導光板を前記枠体と前記シートとによって覆うことで、導光板をガラスよりも軽量で割れ難い透明なアクリルによって形成することを可能とし、更に、前記導光板又は前記シートの表示方向の表面に案内表示や装飾が施されている防煙垂壁について、特許文献1に示されるように、既に公知となっている。
【0003】
この特許文献1の防煙垂壁は、前記のように透明なアクリル製の導光板を有して構成されるところ、導光板の表示方向の両面自体又は導光板の表示方向の両面に配置された2つの透光性を有するシートの双方に、導光板から表示方向に向けての透光性を確保しつつ、案内表示や装飾を施した場合には、LEDを発光させて、導光板の表示方向の一方から見たときに、一方の案内表示や装飾等の表示が他方の案内表示や装飾等の表示に重なるように映り込むという現象が生ずる。
【0004】
このため、特許文献1の防煙垂壁では、導光板の表示方向の一方の面又は導光板の表示方向の両面に配置される2つの透光性を有するシートの一方にのみ、案内表示や装飾等の表示を施す必要があった。
【0005】
これに対し、特許文献2として開示された両面発光表示板は、防煙垂壁ではないが、2つの導光板と、導光板間の1枚の両面反射シートと、導光板の両面反射シートとは反対側に配置された2枚の光拡散シートと、導光板の一方の端側に配置されるもので、2列のLED及びこれらのLEDが設置された基板からなるエッジライトと、導光板、両面反射シートからなる部位の上側を覆う第1のアルミフレームと、導光板、両面反射シートからなる部位の下側並びに前記エッジライトを覆う第2のアルミフレームとで成り、導光板の両面反射シート側に光転換部が設けられた構成となっている。そして、特許文献2の両面発光表示板では、両面表示板の光拡散シートよりも外側となる表面と裏面との双方に透光性のある印刷物が貼り付けられたものとしても良いとされている。
【0006】
これにより、2つの導光板の間に光を通さない両面反射シートが配置されているので、一方の導光板の表示方向に記された案内や装飾が他方の導光板の表示方向から見た場合に映り込むことが防止される。よって、特許文献2の両面発光表示板は、一方の導光板の外側面に配置された光拡散シートに貼り付けられた透光性のある印刷物と、他方の導光板の外側面に配置された光拡散シートに貼り付けられた印刷物とで、それぞれ異なった案内や装飾等の表示を施すことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に示される両面発光表示板は、2つの導光板への光源として、2列のLED発光体を必要とする。このため、電気回路が異なる等して、一方の列のLED発光体と他方の列のLED発光体とで輝度等が異なる場合がある。これにより、両面発光表示板の表側と裏側とでは明るさが異なるという不具合が生ずるおそれがある。しかも、LED発光体を2列も必要とすることから、両面発光表示板の製造コストが高額化するという不都合もある。
【0009】
更に、特許文献2に示される両面発光表示板は、建物の天井から所定寸法(例えば、50cm(政令第28条第1項に掲げる防火対象物にあっては80cm))以上にて垂下する防煙垂壁として用いられることを目的としておらず、光拡散シートや、この光拡散シートに貼り付けられる印刷物について、建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材で形成されているとは明示されていない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、2つの導光板を用いながら、光源として一列のLED発光体で対応でき、LED発光体の発光時に、一方の導光板の側方外面に装着された不燃性のシートに施された文字や図等の表示が、他方の導光板の側方外面から見た場合に映り込むのを防止して、一方の導光板の側方外面に配置したシートと他方の導光板の側方外面に配置したシートとに、異なった表示を施すことを可能とした防煙垂壁用ユニット及び防煙垂壁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の防煙垂壁用ユニットは、人工構造物の天井に固定された固定部材に取り付けられる不燃材で成る基体と、前記基体に設けられたLED発光体と、前記基体に装着されて前記基体から垂下すると共に、前記LED発光体を光源として立面から光を射出させる矩形状の導光板を有する壁構成部材とを備えた防煙垂壁用ユニットであって、前記LED発光体は、前記壁構成部材の上方に一列にて配置され、前記壁構成部材は、前記基体を一部に含む不燃性の枠体により、上方、側方及び下方の全周が囲まれており、前記導光板が前記基体の短手方向に沿って2つ並設され、
前記2つの導光板は、それぞれ他方の導光板と対峙する面に、前記LED発光体から前記導光板内を通過してきた光を前記導光板内に向けて乱反射させる部位と、前記導光板内を通過してきた光を前記他方の導光板に向けて射出させる部位とを有し、
前記2つの導光板の間に前記第1の光拡散シートを介在させて、前記2つの導光板のうち一方の導光板から他方の導光板に向けて射出された光を前記第1の光拡散シートを通過する間に拡散させて前記他方の導光板内に入射させ、透光性及び光反射性の双方を有する不燃性の第2の光拡散シートが前記2つの導光板のそれぞれに前記
第1の光拡散シートが配置された側とは反対側に配置されて、前記導光板の立面を覆うと共に、前記第2の光拡散シートに、不燃性を有しつつ表示が施されていることを特徴としている。導光板は、例えばガラスよりも軽量のアクリル等の透光性に優れた透明樹脂で形成されていることが望ましい。
LED発光体から導光板内を通過してきた光を導光板内に向けて乱反射させる部位は、例えばシルク印刷により複数のドット(凸部)を導光板の面に形成
したものである。基体や第2の光拡散シートは、建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材で形成されている。すなわち、第2の光拡散シートは、例えば耐熱処理がされたガラスクロスのシートで
ある。
【0012】
請求項2に記載の防煙垂壁は、人工構造物の天井に固定された固定部材と、前記固定部材に取り付けられる不燃材で成る基体と、前記基体に設けられたLED発光体と、前記基体に装着されて前記基体から垂下し、前記LED発光体を光源として立面から光を射出させる矩形状の導光板を有する壁構成部材と、を備えた防煙垂壁であって、前記LED発光体は、前記壁構成部材の上方に一列にて配置され、前記壁構成部材は、前記基体を一部に含む不燃性の枠体により、上方、側方及び下方の全周が囲まれており、前記導光板が前記基体の短手方向に沿って2つ並設され、
前記2つの導光板は、それぞれ他方の導光板と対峙する面に、前記LED発光体から前記導光板内を通過してきた光を前記導光板内に向けて乱反射させる部位と、前記導光板内を通過してきた光を前記他方の導光板に向けて射出させる部位とを有し、前記2つの導光板の間に前記第1の光拡散シートを介在させて、前記2つの導光板のうち一方の導光板から他方の導光板に向けて射出された光を前記第1の光拡散シートを通過する間に拡散させて前記他方の導光板内に入射させ、透光性及び光反射性の双方を有する不燃性の第2の光拡散シートが前記2つの導光板のそれぞれに前記
第1の光拡散シートが配置された側とは反対側に配置されて、前記導光板の立面を覆うと共に、前記第2の光拡散シートに、不燃性を有しつつ表示が施されていることを特徴としている。導光板は、例えばガラスよりも軽量のアクリル等の透光性に優れた透明樹脂で形成されていることが望ましい。
LED発光体から導光板内を通過してきた光を導光板内に向けて乱反射させる部位は、例えばシルク印刷により複数のドット(凸部)を導光板の面に形成
したものである。基体や第2の光拡散シートは、建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材で形成されている。すなわち、第2の光拡散シートは、例えば耐熱処理がされたガラスクロスのシート
である。
【0013】
このような防煙垂壁用ユニット及び防煙垂壁とすることにより、2つの導光板の対峙する面のうち光の乱反射がされる部位(凸部)では、LED発光体から導光板内を通過してきた光を導光板内に向けて乱反射させることができる。一方で、2つの導光板は、導光板の対峙する面のうち光の乱反射がされない部位(凸部がない部位)では、一方の導光板内を通過してきた光を他方の導光板内に向けて射出させることができる。そして、LED発光体から射出された後、2つの導光板の対峙する面から射出された光が2つの導光板の対峙する面により反射される光よりも少なくても、第1の光拡散シートを通る間に光が拡散されつつ、他方の導光板内に入射されるので、LED発光体が一列でも光量を確保することが可能である。その一方で、2つの導光板の間に可視光に対し透明性の低い乃至半透明の第1の光拡散シートを介在させることで、2つの導光板の間に何も介在していない場合よりも、一方の導光板から他方の導光板に送られる光量は減衰させられる。
【0014】
また、防煙垂壁の壁構成部材は、不燃性の枠体により、上方、側方及び下方の全周が囲まれ、導光板の立面を不燃性の第2の光拡散シートで全面的に覆うようになっていると共に、第2の光拡散シートに不燃性を有しつつ表示が施されているので、導光板をアクリル樹脂等の建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材に該当しない材料で形成し、第2の光拡散シートに表示を施しても、防煙垂壁用ユニット及び防煙垂壁の全体としては、不燃性に対する適合が認められる。しかも、導光板をアクリル樹脂等のガラスよりも軽量で破損し難い透明樹脂で形成することにより、地震などの不測の事態で、壁構成部材が天井から落下した場合に、防煙垂壁の下にいる人に当たっても大きな怪我が生ずるのを防止することが可能であり、また、壁構成部材が床面に当たって飛散するのも防止することができる。
【0015】
更に、防煙垂壁用ユニットは、既に設置状態の防煙垂壁のガラス製の導光板と交換するかたちで取り付けることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べたように、本発明によれば、2つの導光板の対峙する面のうち光の乱反射がされる部位では、LED発光体から導光板内を通過してきた光を導光板内に向けて乱反射させることができる。一方で、2つの導光板は、導光板の対峙する面のうち光の乱反射がされない部位では、一方の導光板内を通過してきた光を第1の光拡散シートを通過させて、他方の導光板内に向けて射出させることができる。そして、一方の導光板から射出された光が第1の光拡散シート63を
通過する間に拡散されて他方の導光板内に入射されるので、LED発光体が一つでも光量を確保することが可能である。よって、導光板が2つでもLED発光体を導光板の境界上に一列に配置した構成とすることができるので、LED発光体を導光板の数に応じて2列とする場合よりも防煙垂壁用ユニット及び防煙垂壁の製造コストを抑制することが可能である。
更には、LED発光体は、第1の光拡散シートの真上に必ずしも配置されていなくても良く、第1の光拡散シートの真上から2つの導光板のいずれかにずれていても良い。
【0017】
そして、本発明によれば、2つの導光板の間に可視光に対し透明性の低い乃至半透明の第1の光拡散シートを介在させることにより、2つの導光板の間に何も介在していない場合よりも、一方の導光板から他方の導光板に入る光量は減衰する。よって、LED発光体から射出された後、2つの導光板の対峙する面で反射して第2の光拡散シートがある立面から射出される光の光量について、第1の光拡散シートを通過して一方の導光板から他方の導光板に入射して第2の光拡散シートがある立面から射出される光の光量よりも勝ったものとすることができる。しかるに、LED発光体が点灯しているときには、一方の第2の光拡散シートと他方の第2の光拡散シートとで、相互に裏映りして見難くなることが防止されるので、一方の第2の光拡散シートと他方の第2の光拡散シートとで、異なる表示を施すことが可能となる。
【0018】
また、本発明によれば、壁構成部材は、不燃性の枠体により、上方、側方及び下方の全周が囲まれ、導光板の立面を不燃性の第2の光拡散シートで全面的に覆うようになっていると共に、第2の光拡散シートに不燃性を有しつつ表示が施されているので、導光板をアクリル樹脂等の不燃材に該当しない材料で形成し、第2の光拡散シートに表示を施しても、防煙垂壁用ユニット及び防煙垂壁の全体としては、不燃性に対する適合が認められる。しかも、導光板をアクリル樹脂等のガラスよりも軽量で破損し難い透明樹脂で形成することにより、地震などの不測の事態で、壁構成部材が天井から落下した場合に、防煙垂壁の下にいる人に当たっても大きな怪我が生ずるのを防止することが可能であり、また、壁構成部材が床面に当たって飛散するのも防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。この発明に係る防煙垂壁1は、建物、地下街、地下鉄の駅構内等の人工構造物の天井Cに設置されることにより、防煙区画を構成するものである。
【0021】
図1から
図9で示される防煙垂壁1は、固定部材2と、基体3、側枠4、下枠5及び壁構成部材6から成る防煙垂壁用ユニットUと、防煙垂壁用ユニットUを固定部材2に固定するための吊り金具7とを少なくとも有して構成されている。更に、複数の防煙垂壁用ユニットUないし防煙垂壁1を連接して延長させる場合には、この実施例では、吊り金具8が用いられている。これらの固定部材2、防煙垂壁用ユニットUのうちの基体3、側枠4、下枠5及び吊り金具7、8は、建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材で形成されている。なお、壁構成部材6に関する材料並びに不燃性への適合に関しては後述する。
【0022】
固定部材2は、
図2や
図3、
図4に示されるように、人工建造物の天井Cに固定されるものであり、天井レール等とも称され、横方向に長尺の収容部21を有している。収容部21は、側壁部211、211と、これらの側壁部211、211間に架設された中壁部212とで基本的に構成されている。固定部材2の側壁部211、2111及び中壁部212により、防煙垂壁用ユニットUの特に基体3に該当する部位を収容することが可能な収容空間S1が内部に画成されている。
【0023】
収容空間
S1は、収容部21の軸方向の両側と下方とが開放されている。側壁部211、211は、中壁部212よりも下方において、下記する吊り金具7の掛吊部材71が挿入・載置される突出部211a、211aが対峙するかたちで収容空間S内に延出されている。側壁部211、211は、突出部211a、211aよりも下方、すなわち収容空間
S1の下方開放口端にも、突出部211b、211bが対峙するかたちで形成されている。
【0024】
そして、固定部材2は、収容部21の側方の両側に先端が上方に向けてL字状に折れ曲がったフランジ部22、22が形成されている。天井Cの開口部Hの周縁にフランジ部22、22の先端面が当接することで、固定部材2ひいては防煙垂壁1を支持している。もっとも、図示しないが、固定部材2をビス等で天井Cに固定するようにしても良い。
【0025】
防煙垂壁用ユニットUを構成する基体3は、例えばアルミニウム等の金属を材料として構成されており、壁構成部材6を囲む枠体の一部(上枠ないし天井側枠)として機能するものである。この基体3は、Cチャンネル等とも称され、特に
図5、
図6に示されるように、上枠部31と、上枠部31の短手方向の両側から下方に延びる側枠部32、33とで基本的に構成されている。すなわち、基体3は、断面が、下方(床面側)と側方とに開口した逆U字状をなしている。
【0026】
基体3の上枠部31の下面には、基板10が設けられ、この基板10には、
図2、
図5、
図6等に示されるように、光源として複数のLED発光体11が、基板10に1列の条状に取り付けられている。LED発光体11は、
図2等では、壁構成部材6の厚み方向の中心(第1の光拡散シート63の真上)に配置されているが必ずしもこれに限定されず、導光板63側又は導光板64側にずれていても良い。そして、
図3に示されるように、基板10から固定部材2の中壁部212に設けた通孔12を通って、固定部材2の上方に引き出されたコード13、14が、コネクタ15、16を介してスイッチグン電源等の電源機器17に接続されて、電気をLED発光体11に供給している。基体3には、光ムラをなくすためにLED発光体11の下方に所定の間隔を空けて壁構成部材6の上側部位が収容されるようになっている。壁構成部材6の上側部位は、この実施例では、特に
図5、
図6に示されるように、ブロック状の介在部材9、9を介して、基体3に固定されている。
【0027】
防煙垂壁用ユニットUを構成する側枠4は、例えばアルミニウム等の金属を材料として構成されており、2つの側板41、41と、図示しないが側板41、41間の中間板とで、断面が略コ字状ないし略H字状をなし、壁構成部材6の側方縁部に装着されることで、壁構成部材6を囲む枠体の一部として機能するものである。なお、この実施例では、図示しない中間板には、壁構成部材6の装着側の面に、吊り金具7の下記する連結棒73が収まる凹部ないし空間が形成されて、壁構成部材6に側枠4を装着した際に、吊り金具7の連結棒73が妨げにならないようになっている。更に、側枠4は、上方となる先端側に基体3と接続する天井側接続部(図示せず)と、下方となる基端側に下枠5と接続する床側接続部(図示せず)とが設けられている。
【0028】
防煙垂壁用ユニットUを構成する下枠5は、例えばアルミニウム等の金属を材料として構成されており、壁構成部材6を囲む枠体の一部として機能するものである。下枠5は、
図2から
図5に示されるように、2つの側板51、51と、側板51、51間の中間板52とで基本的に構成されている。すなわち、下枠5は、断面が、上方(天井側)と側方とに開口した略U字状をなしている。そして、下枠5の側板51、51には、突出部51a、51aが対峙するかたちで内側に向けて突出している。突出部51a、突出部51a間の寸法は、壁構成部材6の厚み方向寸法よりも若干大きくなっている。これにより、下枠5は、突出部51a、51aよりも下方に、吊り金具7、8の受け部材72、82が収容可能な空間S2が形成されている。
【0029】
吊り金具7、8は、吊り子等とも称されるもので、
図1又は
図3、4に示されるように、掛吊部材71、81と、受け部材72、82と、連結棒73、83とを有して構成されている。掛吊部材71、81、受け部材72、82及び連結棒73、83は、この実施例では金属製である。吊り金具7と吊り金具8との違いは、吊り金具7では、掛吊部材71、受け部材72が連結棒73と接続した位置から専ら一方に向けて突出している部位を有するのに対し、吊り金具8では、掛吊部材81、受け部材82が連結棒83と接続した位置から双方に向けて突出している部位を有する点である。
【0030】
掛吊部材71、81は、例えば板状の部材であり、連結棒73、83の一方端に螺合のかたちで装着されて、固定部材2の収容空間
S1に例えば固定部材2の軸方向から挿入され、突出部211a、211a上に載置されることで、固定部材2に取り付けられる。これにより、防煙垂壁用ユニットUは、固定部材2との組み合わせ時に、両端が吊り金具7の連結棒73、83の径方向寸法よりも引っ込んだ状態で固定部材2に組み付けられることとなる。
【0031】
受け部材82は、受け板821及びこの受け板821の短手方向の両側から上方に延びる側板822、822から構成されて、断面が略U字状をなしている。受け部材72も、図示しないが、受け板及びこの受け板の短手方向の両側から上方に延びる2つの側板から構成されて、断面が略U字状をなしている。これにより、受け部材72、82にて、壁構成部材6について、その下端部を下方から受けることができる。そして、連結棒73、83の下端にある図示しない頭部に工具を差し込む等して、連結棒73、8を所定方向に回転させることで、掛吊部材71、81の固定部材2への取り付け状態を強めたり緩めたりする調整をすることが可能である。
【0032】
壁構成部材6は、
図2、
図5、
図6及び
図7に示されるように、2つの導光板61、62と、第1の光拡散シート63と、第2の光拡散シート64、65とを有して構成されている。
【0033】
導光板61、62は、透光性を有する透明樹脂(例えば、アクリル樹脂やポーカネート樹脂)で形成された肉厚の薄い矩形状の板状体であり、従来と同じ規格の基体3に既存のガラス製の導光板と交換するかたちで装着することができるように、各導光板61、62の各厚みは、1つの導光板を用いる場合の当該導光板の厚みよりも半分以下となっているのが好ましい。各導光板61、62の厚みは、例えば3mmとなっている。導光板61、62は、前記アクリル樹脂を示すように、この実施例では、建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材でなくても良い。また、導光板61、62の材料としては、ガラスであっても、従来よりも軽量化が図られ、落下して床面に当たって割れて飛散することが防止されるものであれば、その使用を妨げない。
【0034】
そして、導光板61と導光板62とは層状に重ね合わされた構成となっており、導光板61、62の他方の導光板62、61と対峙する面(基体3に装着時に対峙する立面)61a、62aは、特に
図6に示されるように、シルク印刷により複数のドットを有する加工が施されて、他方の導光板62、61側に突出した複数の凸部611、621が形成されている。すなわち、導光板61と導光板62の相互に対峙する面61a、62aには、凸部611、621がある部位と凸部611、621がない部位とがある。なお、凸部611同士の間隔、凸部621同士の間隔は、
LED発光体11に近い位置(基体3側)から、
LED発光体11から遠い位置(下枠5側)に向かうに従い徐々に小さくなっている。または、凸部611の大きさ、凸部621の大きさは、
LED発光体11に近い位置(基体3側)から、
LED発光体11から遠い位置(下枠5側)に向かうに従い徐々に大きくなっている。そして、凸部611同士の間隔、凸部621同士の間隔と凸部611の大きさ、凸部621の大きさとについて上記の双方を用いてもよい。
【0035】
これにより、導光板61と導光板62とは、
図7に示されるように、導光板61、62の対峙する面61a,62aのうち凸部611、621がある部位では、LED発光体11から導光板61、62内を通過してきた光を凸部611、621にて導光板61、62内に向けて乱反射させることができる。また、導光板61と導光板62とは、
図8に示されるように、導光板61、62の対峙する面61a,62aのうち凸部611、621がない部位では、導光板61、62内を通過してきた光を導光板61、62外に向けて射出させることができる。なお、導光板61、62の他方の導光板62、61と対峙する面に、シルク印刷により複数のドットを有する加工を施すことで、導光板61、62の対峙する面61a,62aに乱反射を生じさせるとして説明してきたが、光の導光板61、62内への乱反射と光の導光板61、62外への射出の双方を可能とするものであれば、必ずしもこれに限定されない。
【0036】
導光板61、62の間に第1の光拡散シート63が介在されている。第1の光拡散シート63は、肉厚の薄いものであり、
図9に示されるように、一方の導光板61、62の対峙する面61a,62aから
射出された光を他方の導光板62、61に向けて通すことができる透光性を有すると共に、当該第1の光拡散シート63を通る間に光を拡散することができるものとなっている。第1の光拡散シート63は、導光板61、62側の面が導光板61、62で全面的に覆われ、且つ上下及び側方は枠体で囲まれることから、建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材でなくても良い。この実施例では、第1の光拡散シート63は、
図6に示されるように、2つの表面光拡散層63a、63aと、これらの表面光拡散層63a、63a間に介在させたポリエステル層63bとで、三層構造となっている。すなわち、第1の光拡散シート63は、可視光に対し透明性が低い、或いは半透明のものとなっており、例えば可視光の透過率が30パーセントから60パーセントの範囲となっている。そして、第1の光拡散シート63は、導光板61、62の対峙する面61a、62bの双方の全体を覆うかたちで配置されている。
【0037】
これにより、導光板61、62の対峙する面61a,62aから射出された光が導光板61、62の対峙する面61a,62aの凸部611、621により反射される光よりも少なくても、第1の光拡散シート63を通る間に光が拡散されつつ、他方の導光板62、61内に入射されるので、LED発光体11が一列でも光量を確保することが可能である。
【0038】
第2の光拡散シート64、65は、透光性及び光反射性の双方を有し、更に不燃性に対する適合が認められているもので、例えばシリコン樹脂を表面に塗布する
等して耐熱処理を施した
ガラスクロスのシートである。このように、第2の光拡散シート64、65がガラスクロスシートの場合には、透明な短ガラス繊維で形成されているので、透光性、光拡散性を有すると共に、光反射性も与えられたものとなる。なお、透光性及び光反射性の双方を有し、更に不燃性に対する適合が認められるものであれば、前記ガラスクロスシートに限定されない。
【0039】
これにより、
図7、
図8に示されるように、LED発光体11から導光板61、62内を通過してきた光を、その一部を導光板61、62内に反射し、その一部を当該第2の光拡散シート64、65内を通過する際に拡散させつつ、壁構成部材6の立面から側方に向けて射出させることができる。
【0040】
そして、第2の光拡散シート64、65は、建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材に該当する有色且つ多色の塗料又は顔料により、避難経路等の案内を表示するピクトグラム等の記号や和文、英文字等の文字の、単独若しくはこれらの組み合わせから成るサイン、その他の情報として機能する表示や、絵、図形、模様等の装飾として機能する表示が施されている。この実施例では、第2の光拡散シート64に施された表示と、第2の光拡散シート65に施された表示とが異なっている。
【0041】
このような壁構成部材6の構成としたことにより、導光板61、62の上方から導光板61、62内に入射したLED発光部11の光が、各導光板61、62内を
図7に示されるように、対峙する面61a、62aの凸部611、621での乱反射、第2の光拡散シート64、65での反射且つ拡散しつつ透過することで、壁構成部材6の外側の立面ひいては第2の光拡散シート64、65を、全体的に光のむらを生ずることなく発光させることができる。しかも、
図8及び
図9に示されるように、導光板61、62の間に配置された第1の光拡散シート63を拡散しつつ通過して、導光板61から導光板62に、又は、導光板61から導光板62に光が入射するので、LED発光体11が一列でも、導光板61、導光板62の対峙する面61a、62aとは反対側を発光させるための光量として充分である。LED発光体11の列は、一列であれば直線状であることに限定されない。
【0042】
一方で、2つで用いる導光板61、62は、上記したように、従来の単体で用いる導光板よりも肉厚が薄いところ、LED発光体11が点灯していないときには、導光板61をその外側の立面側から見た場合に導光板62の第2の光拡散シート65に施された表示が導光板61に映り込み、また導光板62をその外側の立面側から見た場合に導光板61の第1の光拡散シート64に施された表示が導光板61に映り込む現象が生ずる。
【0043】
ところが、LED発光体11が点灯しているときには、導光板61をその外側の立面側から見た場合でも、導光板62をその外側の立面側から見た場合でも上記のような映り込みの現象は生じない。LED発光体11が点灯しているときと、LED発光体11が点灯していないときとで現象に差異がある。このような映り込みの現象の発生の防止は、第1の光拡散シート63が介在することによるものである。
【0044】
すなわち、導光板61、62の間に第1の光拡散シート63が介在することから、導光板61、62の間に何も介在していない場合よりも、一方の導光板61、62から他方の導光板62、61に入る光量は減衰したものとなる。よって、LED発光体11から射出された後、導光板61、62の対峙する面61a、62aの凸部611、621で反射して第2の光拡散シート64、65がある立面から射出される光の光量を、第1の光拡散シート63を通過して一方の導光板61、62から他方の導光板62、61に入射して第2の光拡散シート64、64がある立面から射出される光の光量よりも勝ったものとすることができる。
【0045】
更に、凸部611、612を有することにより、導光板61、62の対峙した面61a、62aで、導光板61、62の外側の立面を見る者に向けての光の乱反射も生じている。
【0046】
しかるに、LED発光体11が点灯しているときの上記現象を利用して、第2の光拡散シート64、65に避難経路等の案内を表示するピクトグラム等の記号や和文、英文字等の文字の、単独若しくはこれらの組み合わせから成るサイン、その他の情報として機能する表示や、絵、図形、模様等の装飾として機能する表示が施されている場合に、かかる表示を見やすくすることができると共に、第2の光拡散シート64と第2の光拡散シート65とで異なる表示が施されていても、相互に裏映りして見難くなることも防止することができる。
【0047】
その一方で、導光板61、62は、防煙垂壁1の最も外周側となる周囲を不燃材でなる基体3、側枠4、4、下枠5で囲まれ、且つ壁構成部材6の外側となる立面が不燃性を有する第2の光拡散シート64、65で全面的に覆われているので、アクリル等の建築基準法施行令第108条の2で定める不燃材以外の材料としても、防煙垂壁用ユニットUないし防煙垂壁1としては不燃性についての適合が認められる。