特許第6893255号(P6893255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893255
(24)【登録日】2021年6月2日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】部品装着機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-558832(P2019-558832)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2017045119
(87)【国際公開番号】WO2019116540
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】大山 茂人
(72)【発明者】
【氏名】飯阪 淳
(72)【発明者】
【氏名】大西 通永
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/103413(WO,A1)
【文献】 特開2004−179636(JP,A)
【文献】 特開2007−235018(JP,A)
【文献】 特開2009−10177(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/068605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を採取して装着する部品装着具、前記部品装着具を保持する装着ヘッド、および前記装着ヘッドを水平方向に駆動するヘッド駆動機構を有して、部品供給装置から採取した前記部品を、基板搬送装置によって搬入および位置決めされた基板の所定の座標位置に装着する装着作業を行う部品移載装置と、
前記装着作業を制御するとともに、前記ヘッド駆動機構および前記装着ヘッドの少なくとも一方の温度変化に伴う熱変形が前記部品の装着精度に及ぼす影響を低減する熱補正処理を実施する制御装置と、を備える部品装着機であって、
前記制御装置は、
要求される前記装着精度の高低に基づいて、前記熱補正処理の実施時期を判定する実施時期判定部と、
前記実施時期判定部の判定結果にしたがって前記熱補正処理を実施する熱補正実施部と、を有する部品装着機。
【請求項2】
部品を採取して装着する部品装着具、前記部品装着具を保持する装着ヘッド、および前記装着ヘッドを水平方向に駆動するヘッド駆動機構を有して、部品供給装置から採取した前記部品を、基板搬送装置によって搬入および位置決めされた基板の所定の座標位置に装着する装着作業を行う部品移載装置と、
前記装着作業を制御するとともに、前記ヘッド駆動機構および前記装着ヘッドの少なくとも一方の温度変化に伴う熱変形が前記部品の装着精度に及ぼす影響を低減する熱補正処理を実施する制御装置と、を備える部品装着機であって、
前記制御装置は、
要求される前記装着精度の高低に基づいて、または、前記装着作業の実施状況が変化する変化時期であって前記装着精度が変化し得る前記変化時期を考慮して、前記熱補正処理の実施時期を判定する実施時期判定部と、
前記実施時期判定部の判定結果にしたがって前記熱補正処理を実施する熱補正実施部と、を有し、
前記実施時期判定部は、要求される前記装着精度が特に高い場合であって、第1の前記部品の上側に第2の前記部品を装着する多重装着作業を行うときが、前記熱補正処理の前記実施時期であると判定する
部品装着機。
【請求項3】
部品を採取して装着する部品装着具、前記部品装着具を保持する装着ヘッド、および前記装着ヘッドを水平方向に駆動するヘッド駆動機構を有して、部品供給装置から採取した前記部品を、基板搬送装置によって搬入および位置決めされた基板の所定の座標位置に装着する装着作業を行う部品移載装置と、
前記装着作業を制御するとともに、前記ヘッド駆動機構および前記装着ヘッドの少なくとも一方の温度変化に伴う熱変形が前記部品の装着精度に及ぼす影響を低減する熱補正処理を実施する制御装置と、を備える部品装着機であって、
前記制御装置は、
要求される前記装着精度の高低に基づいて、または、前記装着作業の実施状況が変化する変化時期であって前記装着精度が変化し得る前記変化時期を考慮して、前記熱補正処理の実施時期を判定する実施時期判定部と、
前記実施時期判定部の判定結果にしたがって前記熱補正処理を実施する熱補正実施部と、を有し、
前記実施時期判定部は、前記基板が複数の小片基板からなる多面取り基板であって前記装着作業の対象となる前記小片基板が切り替わる時期を前記変化時期とみなして、前記熱補正処理の前記実施時期であると判定する
部品装着機。
【請求項4】
前記熱補正実施部は、前記部品装着具の装着動作と次の採取動作の間の時間帯、または、前記基板搬送装置が前記装着作業の終了した前記基板を搬出して次の前記基板を搬入する時間帯に前記熱補正処理を実施する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項5】
前記実施時期判定部は、
要求される前記装着精度の高低を表す精度要求レベルを取得する精度要求取得部と、
前記熱変形が前記装着精度に及ぼす影響の大小を表す熱影響レベルを取得する熱影響取得部と、
前記精度要求レベルと前記熱影響レベルとを比較して、前記熱補正処理の前記実施時期を判定するレベル比較部と、を含む、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項6】
前記レベル比較部は、
前記精度要求レベルが高いときに、前記熱影響レベルが小さな時点で前記熱補正処理の前記実施時期と判定し、
前記精度要求レベルが低いときに、前記熱影響レベルが大きくなった時点で前記熱補正処理の前記実施時期と判定する、
請求項5に記載の部品装着機。
【請求項7】
前記精度要求取得部は、前記基板の種類ごとに予め設定された前記精度要求レベルを取得する、請求項5または6に記載の部品装着機。
【請求項8】
前記精度要求取得部は、前記部品の種類ごとに予め設定された前記精度要求レベルを取得する、請求項5または6に記載の部品装着機。
【請求項9】
前記精度要求取得部は、複数の前記部品の各前記座標位置および各大きさを用いて複数の前記部品の相互間の離間距離を求め、前記離間距離が小さいほど前記精度要求レベルを高く設定する、請求項5または6に記載の部品装着機。
【請求項10】
前記熱影響取得部は、前記装着作業の開始時または前回の前記熱補正処理の終了時から前記装着作業が継続する作業継続時間を計時し、前記作業継続時間が長くなるにつれて前記熱影響レベルを大きく設定する、請求項5〜9のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項11】
前記熱影響取得部は、前記装着作業が中断したときからの作業中断時間を計時し、前記作業継続時間および前記作業中断時間に基づいて前記熱影響レベルを設定する、請求項10に記載の部品装着機。
【請求項12】
前記制御装置は、前記装着精度の管理に関する測定処理を自動で実施し、または、オペレータが関与する前記測定処理を支援し、
前記実施時期判定部は、次回の前記熱補正処理の前記実施時期が到来するまでの余裕時間を算出する余裕時間算出部を含み、
前記制御装置は、前記測定処理に要する所要時間を算出する所要時間算出部と、前記所要時間が前記余裕時間よりも短い場合に前記測定処理を実施または支援する測定実施部と、を有する、
請求項10または11に記載の部品装着機。
【請求項13】
前記制御装置は、前記所要時間が前記余裕時間以上の場合に、前記測定処理の実施または支援を行わずに、前記部品移載装置を暖機運転する暖機運転実施部をさらに有する、
請求項12に記載の部品装着機。
【請求項14】
前記制御装置は、緊急性を要する事象が発生した場合、およびオペレータからの指令を受け付けた場合の少なくとも一方の場合に、前記所要時間と前記余裕時間との長短関係に関わらず前記測定処理を実施または支援する緊急時測定実施部をさらに有する、
請求項12または13に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板に部品を装着する装着作業を行う部品装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が装着された基板を生産する対基板作業機として、はんだ印刷機、部品装着機、リフロー機、基板検査機などがある。これらの対基板作業機を列設して基板生産ラインを構成することが一般的になっている。このうち部品装着機は、部品移載装置を備える。部品移載装置は、部品供給装置から採取した部品を、基板搬送装置によって搬入および位置決めされた基板の所定の座標位置に装着する。部品移載装置の稼働が継続すると、構成部材が温度上昇して熱変形し、部品の装着精度に影響を及ぼす。熱変形の影響を低減するために、熱補正処理が実施される。部品装着機の熱補正処理に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の部品装着機は、部品移載装置の構成部材の温度上昇値を段階的に表す温度ランクを設け、温度ランクに対応する許容時間だけ装着作業を実施した後に、熱補正処理を行って温度ランクを変更する。また、装着作業の中断時には、停止継続時間に応じて熱補正処理を行い、温度ランクを変更する。さらに、部品装着機に装備された2組の部品移載装置で、同時に熱補正処理を実施する。これによれば、熱補正処理の実施時期を適正化でき、かつ、熱補正処理の時間的なロスを減じて生産効率の低下を抑制できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/103413号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術において、温度上昇値の変化に応じて、熱補正処理を実施できる点は好ましい。しかしながら、部品に要求される装着精度は、一律でなく、その部品の大きさや種類などに依存する。一般的に、極小部品の装着精度は厳しく、大形部品の装着精度は緩やかに管理される。これに対して、特許文献1の技術は、部品に要求される装着精度の高低を考慮していない。このため、要求される装着精度が高い場合に熱補正処理の実施時期が遅れて装着位置エラーが発生したり、要求される装着精度が低い場合に熱補正処理の実施回数が過多となって生産効率が低下したりする。
【0006】
また、装着作業の実施状況が変化する変化時期には、装着精度が不連続に低下することがある。例えば、部品移載装置の装着ヘッドが交換して取り付けられたときに、装着ヘッドの個体差や取付状態の再現誤差などに起因して、その後の装着精度が大きく低下することがある。このような場合には、温度上昇値の変化に関係なく熱補正処理を実施することが好ましい。
【0007】
本明細書では、部品移載装置の構成部材の温度上昇による熱変形の影響の程度や、装着作業の実施状況の変化を考慮することにより、十分な装着精度と高い生産効率とを両立できる部品装着機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、部品を採取して装着する部品装着具、前記部品装着具を保持する装着ヘッド、および前記装着ヘッドを水平方向に駆動するヘッド駆動機構を有して、部品供給装置から採取した前記部品を、基板搬送装置によって搬入および位置決めされた基板の所定の座標位置に装着する装着作業を行う部品移載装置と、前記装着作業を制御するとともに、前記ヘッド駆動機構および前記装着ヘッドの少なくとも一方の温度変化に伴う熱変形が前記部品の装着精度に及ぼす影響を低減する熱補正処理を実施する制御装置と、を備える部品装着機であって、前記制御装置は、要求される前記装着精度の高低に基づいて、前記熱補正処理の実施時期を判定する実施時期判定部と、前記実施時期判定部の判定結果にしたがって前記熱補正処理を実施する熱補正実施部と、を有する部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する部品装着機において、実施時期判定部は、要求される装着精度の高低に基づいて、熱補正処理の実施時期を判定し、熱補正実施部は、判定結果にしたがって熱補正処理を実施する。これによれば、要求される装着精度の高低に基づいて、許容される熱変形の影響の大小が考慮され、熱補正処理の実施時期が適正化される。したがって、要求される装着精度に足りる十分な装着精度を得ることができる。さらに、熱補正処理の実施回数を必要最小限として、高い生産効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の部品装着機の構成を模式的に示す平面図である。
図2】制御装置の熱補正処理に関する機能構成を示すブロック図である。
図3】装着作業および熱補正処理を制御する制御装置の処理フローの図である。
図4】精度要求取得部の機能を説明する図である。
図5】熱影響取得部の機能を説明する温度上昇特性の図である。
図6】レベル比較部の機能を説明する判定ロジック表の図である。
図7】第2実施形態の制御装置の熱補正処理に関する機能構成を示すブロック図である。
図8】第2実施形態の制御装置の処理フローの図である。
図9】第3実施形態の制御装置の熱補正処理および測定処理に関する機能構成を示すブロック図である。
図10】第3実施形態の制御装置の処理フローの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1実施形態の部品装着機1の構成
第1実施形態の部品装着機1について、図1図6を参考にして説明する。図1は、第1実施形態の部品装着機1の構成を模式的に示す平面図である。図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側から紙面上側に向かう方向がY軸方向(前後方向)である。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置に相当する複数のフィーダ装置3、部品移載装置4、部品カメラ5、および制御装置6などが機台10に組み付けられて構成される。基板搬送装置2、各フィーダ装置3、部品移載装置4、および部品カメラ5は、制御装置6から制御され、それぞれが所定の作業を行う。
【0012】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、および基板クランプ機構などで構成される。コンベアベルトは、基板Kを載置した状態で、ガイドレール21、22に沿って輪転することにより、基板Kを装着実施位置まで搬入する。基板クランプ機構は、装着実施位置の基板Kを押し上げてクランプし、位置決めする。
【0013】
複数のフィーダ装置3は、機台10の上面のパレット台11上に並べて装備される。各フィーダ装置3は、本体部31の前側にテープリール32を保持する。本体部31の後側寄りの上部に、供給位置33が設定されている。テープリール32には、複数のキャビティ部にそれぞれ部品を収容したキャリアテープが巻回されている。図略のテープ繰り出し機構は、テープリール32からキャリアテープを引き出して供給位置33へと繰り出す。これにより、各フィーダ装置3は、それぞれの供給位置33で部品を供給する。
【0014】
部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に水平移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構40、装着ヘッド44、ノズルツール45、吸着ノズル46、および基板カメラ47などで構成される。ヘッド駆動機構40は、一対のY軸レール41、42、Y軸スライダ43、および図略の駆動モータを含んで構成される。Y軸スライダ43には、装着ヘッド44が設けられる。ヘッド駆動機構40は、装着ヘッド44を水平方向、すなわちX軸方向およびY軸方向に駆動する。
【0015】
ノズルツール45は、装着ヘッド44に保持される。ノズルツール45は、1本または複数本の吸着ノズル46を有する。吸着ノズル46は、部品装着具の一例であり、負圧を利用して部品を吸着採取する。装着ヘッド44、ノズルツール45、および吸着ノズル46は、人手作業または自動交換機能により交換可能となっている。基板カメラ47は、ノズルツール45に並んで装着ヘッド44に設けられる。基板カメラ47は、基板Kに付設された位置基準マークを撮像して、位置決めされた基板Kの正確な装着実施位置を検出する。
【0016】
部品移載装置4は、吸着ノズル46を用いてフィーダ装置3の供給位置33から部品を吸着し、位置決めされた基板Kの指定された座標位置に装着する。吸着動作および装着動作の1セットは、ピックアップアンドプレースサイクル(Pick up and Place cycle、以降PPサイクルと称す)と呼ばれる。部品移載装置4は、PPサイクルを繰り返して実行することにより、多数の部品を装着できる。部品の装着精度は、その部品に指定された座標位置と、実際に装着された座標位置との誤差の大小の程度を表す。
【0017】
部品カメラ5は、基板搬送装置2とフィーダ装置3との間の機台10の上面に、上向きに設けられる。部品カメラ5は、装着ヘッド44がフィーダ装置3から基板K上に移動する途中で、吸着ノズル46に吸着されている部品の状態を撮像する。制御装置6は、機台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置6は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置とされている。制御装置6は、予めメモリ61に記憶した装着シーケンス62にしたがって装着作業を制御する。
【0018】
2.制御装置6の熱補正処理に関する制御機能部
さらに、制御装置6は、熱補正処理の実施に関する制御を行う。図2は、制御装置6の熱補正処理に関する機能構成を示すブロック図である。制御装置6は、実施時期判定部71および熱補正実施部78を有する。実施時期判定部71は、要求される装着精度の高低に基づいて、熱補正処理の実施時期を判定する。熱補正実施部78は、実施時期判定部71の判定結果にしたがって、熱補正処理を実施する。
【0019】
ここで、熱補正実施部78が実施する熱補正処理の内容について説明する。部品移載装置4が稼働すると、構成部材間の摩擦によって摩擦熱が発生する。また、駆動モータでは、電気的な損失熱が発生する。これらの発熱により、ヘッド駆動機構40および装着ヘッド44は温度上昇して熱変形する。熱変形に起因して、部品を装着する際の座標位置に誤差が発生し、部品の装着精度が低下する。
【0020】
熱補正処理は、ヘッド駆動機構40および装着ヘッド44の少なくとも一方の温度変化に伴う熱変形が部品の装着精度に及ぼす影響を低減するために実施される。熱補正処理では、例えば、装着ヘッド44を部品カメラ5の上方に移動し、部品カメラ5により装着ヘッド44を撮像して、装着ヘッド44の位置の制御誤差を求める。また例えば、装着ヘッド44を機台10上の図略の位置基準マークの上方に移動し、基板カメラ47により位置基準マークを撮像して、装着ヘッド44の位置の制御誤差を求める。これにより、ヘッド駆動機構40で用いるX−Y座標系を較正して、高い装着精度を得ることができる。
【0021】
熱補正処理の具体的な方法として、例えば、本願出願人が取得した特許第4418014号の技術を用いることができる。この特許は、装着ヘッド44を交換したときの較正方法を開示しており、熱変形の影響を低減する熱補正処理にも応用できる。開示された熱補正処理では、ヘッド駆動機構40の基準となるX−Y座標系の原点補正やピッチ補正、ノズルツール45と基板カメラ47との離間距離の補正などが行なわれる。なお、ピッチ補正とは、駆動モータの回転量と、装着ヘッド44の移動量との換算関係を補正することである。
【0022】
実施時期判定部71は、精度要求取得部72、熱影響取得部73、およびレベル比較部74を含む。精度要求取得部72は、要求される装着精度の高低を表す精度要求レベルSを取得する。熱影響取得部73は、熱変形が装着精度に及ぼす影響の大小の程度を表す熱影響レベルHを取得する。本第1実施形態において、熱影響取得部73は、装着作業の作業継続時間T1を計時する作業継続時間タイマ76、および作業中断時間T2を計時する作業中断時間タイマ77を用いる。レベル比較部74は、精度要求レベルSと熱影響レベルHとを比較して、熱補正処理の実施時期を判定する。実施時期判定部71の詳細な機能については、動作の説明の中で詳述する。
【0023】
3.第1実施形態の部品装着機1の動作、作用、および効果
次に、第1実施形態の部品装着機1の動作、作用、および効果について説明する。図3は、装着作業および熱補正処理を制御する制御装置6の処理フローの図である。以降では、部品移載装置4が4本の吸着ノズル46を有し、3回のPPサイクルで1枚の基板Kに対する装着作業を終了するケースを例にして説明する。部品装着機1が稼働を開始すると、ステップS1で、熱影響取得部73は、作業継続時間タイマ76をスタートして、作業継続時間T1の計時を開始する。次のステップS2で、制御装置6は、基板Kを搬入する。次のステップS3で、制御装置6は、装着作業の内容として第1PPサイクルCy1を設定する。
【0024】
次のステップS4で、精度要求取得部72は、部品の種類ごとに予め設定された精度要求レベルSを、装着シーケンス62から取得する。精度要求レベルSとして、例えば、装着される座標位置の許容誤差が小さい高レベルSH、許容誤差が中程度の中レベルSM、および許容誤差が大きい低レベルSLの3レベルを用いることができる。図4は、精度要求取得部72の機能を説明する図である。
【0025】
図4に示される第1PPサイクルCy1において、3個のPA部品および1個のPB部品が装着される。PA部品の精度要求レベルSは、低レベルSLに設定され、PB部品の精度要求レベルSは、高レベルSHに設定されている。このように、PPサイクル内の複数の部品の精度要求レベルSが異なる場合に、精度要求取得部72は、最も高い部品の精度要求レベルSを当該PPサイクルの精度要求レベルSとする。したがって、第1PPサイクルCy1の精度要求レベルSは、高レベルSHとなる。
【0026】
また、第2PPサイクルCy2において、2個の低レベルSLのPA部品、1個の低レベルSLのPC部品、および1個の中レベルSMのPD部品が装着される。したがって、第2PPサイクルCy2の精度要求レベルSは、中レベルSMとなる。さらに、第3PPサイクルCy3において、2個の低レベルSLのPA部品、および2個の低レベルSLのPC部品が装着される。したがって、第3PPサイクルCy3の精度要求レベルSは、低レベルSLとなる。
【0027】
なお、精度要求取得部72は、基板Kの種類ごとに予め設定された精度要求レベルSを、装着シーケンス62から取得してもよい。この場合、生産する基板Kの種類が変更されるまで、精度要求レベルSは変化しない。また、精度要求取得部72は、複数の部品の各座標位置および大きさを装着シーケンス62から取得して、複数の部品の相互間の離間距離を求め、離間距離が小さいほど精度要求レベルSを高く設定してもよい。この場合、部品の装着密度が高い基板K上の領域で精度要求レベルSが高くなり、装着密度が低い基板K上の領域で精度要求レベルSが低くなる。また、精度要求レベルSは、図4の例と同様、PPサイクルごとに変化し得る。さらに、精度要求取得部72は、オペレータの任意設定にしたがって、精度要求レベルSを設定してもよい。
【0028】
次のステップS5で、熱影響取得部73は、熱影響レベルHを取得する。詳細には、熱影響取得部73は、作業継続時間タイマ76が計時した作業継続時間T1、および作業中断時間タイマ77が計時した作業中断時間T2を取得して、内部演算により熱影響レベルHを求める。熱影響レベルHとして、例えば、熱変形の影響が殆ど無い影響無しレベルH0、影響小レベルH1、影響中レベルH2、および精度要求レベルSに関わりなく熱補正処理が必要な影響大レベルH3の4レベルを用いることができる。図5は、熱影響取得部73の機能を説明する温度上昇特性の図である。
【0029】
図5には、ヘッド駆動機構40および装着ヘッド44の温度上昇特性が模式的に示されている。図5の横軸は時間t、縦軸は温度上昇値Aを表す。部品装着機1は、時刻t1に稼動を開始し、継続して稼動している。図示されるように、稼動の開始後に、温度上昇値Aは急峻な勾配で増加する。その後、稼動時間が長くなるにつれて温度上昇の勾配は徐々に緩やかとなって飽和傾向を示し、最終的に安定した温度上昇値Aendに落ち着く。一般的に、温度上昇特性は、発熱量および放熱条件が一定であれば、熱時定数を用いた数式によって表現することができる。したがって、熱影響取得部73は、作業継続時間T1を用いた内部演算により、図5に示された温度上昇特性を求めることができる。また、温度上昇特性は、実験的に求めることも可能である。
【0030】
ここで、ヘッド駆動機構40や装着ヘッド44の熱変形の大きさは、温度変化量の大きさに概ね比例する。したがって、熱影響取得部73は、定性的には、装着作業を開始した時刻t1からの作業継続時間T1が長くなるにつれて熱影響レベルHを大きく設定する。説明を簡明化するため、熱影響取得部73は、一定の温度変化量ΔAごとに熱影響レベルHを1つずつ増加させるものとする。これにより、熱影響取得部73は、時刻t1から時刻t2まで影響無しレベルH0を設定する。同様に、熱影響取得部73は、時刻t2から時刻t3まで影響小レベルH1を設定し、時刻t3から時刻t4まで影響中レベルH2を設定し、時刻t4以降には影響大レベルH3を設定する。
【0031】
影響大レベルH3では、無条件で熱補正処理が必要なため、時刻t5に熱補正処理が実施される。すると、熱変形の影響が解消されるため、熱影響取得部73は、時刻t5以降に影響無しレベルH0を設定する。この後、熱影響取得部73は、熱補正処理を終了した時刻t5からの作業継続時間T1が長くなるにつれて、熱影響レベルHを1つずつ増加させてゆく。ただし、温度上昇の飽和傾向があるため、2回目の影響無しレベルH0や影響小レベルH1などの継続時間は、稼動開始直後の1回目よりも長くなる。
【0032】
また、後述するように、精度要求レベルSが中レベルSMの場合には、熱影響レベルHが影響中レベルH2に増加した時点で熱補正処理が行われる。この場合、影響大レベルH3の時間帯は発生しない。さらに、精度要求レベルSが高レベルSHの場合には、熱影響レベルHが影響小レベルH1に増加した時点で熱補正処理が行われる。この場合、影響中レベルH2および影響大レベルH3の時間帯は発生しない。
【0033】
なお、何らかの原因で装着作業が中断されて、処理フローが一時停止する場合もある。この場合、ヘッド駆動機構40や装着ヘッド44の温度が下降して、熱変形の影響は逆方向に作用する。図3および図5には省略されているが、熱影響取得部73は、装着作業の中断時に作業中断時間タイマ77をスタートさせて、作業中断時間T2の計時を開始する。温度下降特性も、温度上昇特性と同様に、熱時定数を用いた数式によって表現することができる。したがって、熱影響取得部73は、作業継続時間T1および作業中断時間T2に基づいた内部演算により、熱影響レベルHを適正に設定することができる。
【0034】
次のステップS6で、レベル比較部74は、熱補正処理の実施時期を判定する。定性的には、レベル比較部74は、精度要求レベルSが高いときに、熱影響レベルHが小さな時点で熱補正処理の前記実施時期と判定する。また、レベル比較部74は、精度要求レベルSが低いときに、熱影響レベルHが大きくなった時点で熱補正処理の実施時期と判定する。具体的には、レベル比較部74は、熱補正処理の実施時期であるか否かを、図6に基づいて判定する。
【0035】
図6は、レベル比較部74の機能を説明する判定ロジック表の図である。図6には、精度要求レベルSの各レベル、および熱影響レベルHの各レベルが示されている。そして、両方のレベルが交差する各欄に、○印または×印が表示される。○印は、装着作業の継続可を意味し、×印は、熱補正処理の実施を意味する。
【0036】
精度要求レベルSが低レベルSLの場合、熱影響レベルHの影響中レベルH2まで装着作業が継続され、影響大レベルH3となってから熱補正処理が実施される。また、精度要求レベルSが中レベルSMの場合、影響小レベルH1まで装着作業が継続され、影響中レベルH2となってから熱補正処理が実施される。さらに、精度要求レベルSが高レベルSHの場合、影響無しレベルH0での装着作業のみとなり、影響小レベルH1で熱補正処理が実施される。
【0037】
ステップS6において熱補正処理の実施時期でない場合に、処理フローはステップS7に進められる。また、実施時期である場合に、処理フローはステップS8に分岐される。ステップS7で、制御装置6は、熱変形の影響が装着精度に支障を及ぼさない状況下で、PPサイクルを実行することができる。
【0038】
一方、分岐されたステップS8で、熱補正実施部78は、熱補正処理を実施する。したがって、熱補正実施部78は、PPサイクルの切れ目、換言すると吸着ノズル46の装着動作と次の吸着動作の間の時間帯に熱補正処理を実施することになる。次のステップS9で、熱補正実施部78は、作業継続時間タイマ76をリセットおよびリスタートして、作業継続時間T1の計時を再開する。ステップS9の後、処理フローはステップS7に合流される。これにより、制御装置6は、熱変形の影響が顕著に低減された影響無しレベルH0の状況下で、PPサイクルを実行することができる。
【0039】
ステップS7の次のステップS10で、制御装置6は、全部のPPサイクルを終了したか否か判定する。否の場合のステップS11で、制御装置6は、次のPPサイクルを設定して、処理フローの実行をステップS4に戻す。全部のPPサイクルを終了した場合のステップS12で、制御装置6は、基板Kを搬出して、処理フローの実行をステップS2に戻す。この後、制御装置6は、次の基板Kへの装着作業を繰り返す。
【0040】
第1実施形態の部品装着機1において、実施時期判定部71は、要求される装着精度の高低に基づいて、熱補正処理の実施時期を判定し、熱補正実施部78は、判定結果にしたがって熱補正処理を実施する。これによれば、要求される装着精度の高低に基づいて、許容される熱変形の影響の大小が考慮され、熱補正処理の実施時期が適正化される。したがって、要求される装着精度に足りる十分な装着精度を得ることができる。さらに、熱補正処理の実施回数を必要最小限として、高い生産効率を得ることができる。
【0041】
4.第2実施形態の部品装着機1A
次に、第2実施形態の部品装着機1Aについて、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態の部品装着機1Aは、第1実施形態と同様の構成であり、制御装置6Aの制御機能部が第1実施形態と異なる。図7は、第2実施形態の制御装置6Aの熱補正処理に関する機能構成を示すブロック図である。制御装置6Aは、実施時期判定部81および熱補正実施部78を有する。熱補正実施部78の機能は、第1実施形態と同じである。
【0042】
実施時期判定部81は、多重装着判定部82および変化時期判定部83を含む。多重装着判定部82は、要求される装着精度が特に高い多重装着作業を行うときが、熱補正処理の実施時期であると判定する。変化時期判定部83は、装着作業の実施状況が変化する変化時期が、熱補正処理の実施時期であると判定する。なお、実施時期判定部81は、多重装着判定部82および変化時期判定部83の一方のみを含んでもよい。
【0043】
図8は、第2実施形態の制御装置6Aの処理フローの図である。部品装着機1Aが稼働を開始すると、ステップS21で、制御装置6Aは基板Kを搬入する。次のステップS22で、制御装置6Aは、装着作業の内容として第1PPサイクルCy1を設定する。次のステップS23で、多重装着判定部82は、今回のPPサイクルに多重装着作業が含まれるか否か判定する。多重装着作業では、要求される装着精度が特に高い。このため、第2実施形態の処理フローでは、多重装着作業が含まれるPPサイクルを実行する直前に、熱補正処理を実施する。
【0044】
多重装着作業の例として、大形の第1部品の上面に小形の第2部品を装着する作業や、電磁界に影響されやすい部品を覆うようにシールド部品を装着する作業などがある。多重装着判定部82は、多重装着作業が含まれる場合に処理フローの実行をステップS26に分岐させ、多重装着作業が含まれない場合に処理フローの実行をステップS24に進める。ステップS24で、変化時期判定部83は、今回のPPサイクルに変化時期が含まれるか否か判定する。
【0045】
変化時期と見なす第1例として、PPサイクルの実施に先立ち装着ヘッド44、ノズルツール45、および吸着ノズル46のうち少なくとも一器具を交換する交換時期がある。これらの器具が交換されると、器具の個体差や取付状態の微妙な再現誤差などに起因して、装着精度が不連続に低下する場合がある。また、変化時期とみなす第2例として、基板Kが複数の小片基板からなる多面取り基板であって、PPサイクルの装着作業の対象となる小片基板が切り替わる時期がある。このときも、小片基板のローカルな座標系の誤差などに起因して、装着精度が不連続に低下する場合がある。このため、第2実施形態の処理フローでは、変化時期に熱補正処理を実施する。
【0046】
変化時期判定部83は、変化時期が含まれる場合に処理フローの実行をステップS26に分岐させ、変化時期が含まれない場合に処理フローの実行をステップS25に進める。ステップS25で、制御装置6は、熱変形の影響が装着精度に支障を及ぼさない状況下で、PPサイクルを実行することができる。
【0047】
一方、分岐されたステップS26で、熱補正実施部78は、熱補正処理を実施する。つまり、熱補正実施部78は、多重装着作業の直前や、新しい器具が取り付けられた直後、対象となる小片基板が切り替わった直後に、熱補正処理を実施することになる。ステップS26の後、処理フローはステップS25に合流される。これにより、熱変形の影響が顕著に低減された影響無しレベルH0の状況下で、制御装置6Aは、PPサイクルを実行することができる。
【0048】
ステップS25の次のステップS27で、制御装置6Aは、全部のPPサイクルを終了したか否か判定する。否の場合のステップS28で、制御装置6Aは、次のPPサイクルを設定して、処理フローの実行をステップS23に戻す。全部のPPサイクルを終了した場合のステップS29で、制御装置6Aは、基板Kを搬出して、処理フローの実行をステップS21に戻す。この後、制御装置6Aは、次の基板Kへの装着作業を繰り返す。
【0049】
第2実施形態の部品装着機1Aにおいて、実施時期判定部81は、多重装着作業の有無、および装着作業の実施状況が変化する変化時期を考慮して、熱補正処理の実施時期を判定し、熱補正実施部78は、判定結果にしたがって熱補正処理を実施する。これによれば、要求される装着精度が特に高い多重装着作業、および装着作業の実施状況の変化に伴う装着精度の不連続な低下のおそれが考慮され、必要に応じて熱補正処理が実施される。したがって、要求される装着精度に足りる十分な装着精度を得ることができる。さらに、熱補正処理の実施回数を必要最小限として、高い生産効率を得ることができる。
【0050】
5.第3実施形態の部品装着機1B
次に、第3実施形態の部品装着機1Bについて、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。第3実施形態の部品装着機1Bは、第1実施形態と同様の構成であり、制御装置6Bの制御機能部が第1および第2実施形態と異なる。図9は、第3実施形態の制御装置6Bの熱補正処理および測定処理に関する機能構成を示すブロック図である。制御装置6Bは、熱補正処理に関する制御機能部として、実施時期判定部91および熱補正実施部78を有する。制御装置6Bは、さらに、精度管理部93を有する。
【0051】
精度管理部93は、装着精度の管理に関する測定処理の実行を制御する。測定処理として、装着された部品の座標位置を実測して装着精度を確認する、という装着後実測処理(Place And Measure 処理、以降PAM処理と称する)を例示できる。座標位置の実測は、ヘッド駆動機構40および基板カメラ47を用いて装着された部品を撮像することにより、自動的に行われる。
【0052】
PAM処理は、例えば、ロット生産の最初の基板Kの装着作業が終了したときや、一定枚数の基板Kの装着作業が終了するたびに定期的に実施される。PAM処理は、また、オペレータからの指令にしたがって臨時に実施されてもよい。測定処理の結果は、ヘッド駆動機構40で用いるX−Y座標系の較正に用いられる。なお、測定処理は、オペレータが関与する処理であって、精度管理部93の支援により実施されてもよい。また、精度管理部93は、PAM処理以外の測定処理、例えばオートキャリブレーション処理の実行を制御することも可能である。オートキャリブレーション処理では、吸着ノズル46の傾斜取り付けの有無や取り付け高さの確認などが行われる。
【0053】
精度管理部93は、熱変形の影響が顕著に低減された影響無しレベルH0の状況下で測定処理を実施することが極力好ましい。さらに、精度管理部93が測定処理を制御している途中で、熱補正処理が開始されることは避けるべきである。さもないと、測定処理における測定精度が大幅に低下してしまう。第3実施形態の制御装置6Bは、測定処理における測定精度の低下を抑制すべく機能構成されており、以下に説明する。
【0054】
実施時期判定部91は、第1実施形態の実施時期判定部71の機能を包含する。実施時期判定部91は、さらに、余裕時間算出部92を含む。余裕時間算出部92は、次回の熱補正処理の実施時期が到来するまでの余裕時間T3を算出する。余裕時間算出部92は、前述した温度上昇特性や温度下降特性に基づいた内部演算により、次回の熱補正処理の実施時期を予測して、余裕時間T3を算出することができる。熱補正実施部78の機能は、第1実施形態と同じである。精度管理部93は、所要時間算出部94、実施判定部95、測定実施部96、暖機運転実施部97、および緊急時測定実施部98を含む。精度管理部93の詳細な機能については、動作の説明の中で詳述する。
【0055】
図10は、第3実施形態の制御装置6Bの処理フローの図である。部品装着機1Bが稼働を開始すると、ステップS41で、緊急時測定実施部98は、緊急時の測定処理の要否を判定する。緊急時の測定処理は、緊急性を要する事象が発生した場合、例えば、故障や異常が発生して復旧作業が行われた場合などに実施される。この場合、急いで測定処理を実施し、稼働を再開することが重要となる。緊急時の測定処理が必要でない場合、制御装置6Bは、処理フローの実行をステップS42に進め、1枚の基板Kに対する装着作業を実施する。装着作業の詳細は、図3に示される第1実施形態の処理フローに準じる。
【0056】
緊急時の測定処理が必要な場合、緊急時測定実施部98は、処理フローの実行をステップS43に分岐させ、所要時間T4と余裕時間T3との長短関係に関わらず、測定実施部96を始動させる。測定実施部96は、緊急時の測定処理を実施する。ただし、至近に熱補正処理が実施されていないため、実測される測定精度は、必ずしも保証されない。加えて、測定処理により担保される部品の装着精度も、保証されない。
【0057】
このため、次のステップS44で、緊急時測定実施部98は、精度回復フラグFRをセットする。精度回復フラグFRは、影響無しレベルH0の状況下で再度測定処理を実行して測定精度を回復すること、を要求するフラグである。ステップS44の後、処理フローはステップS42に合流される。これにより、部品装着機1Bは、装着作業を実施して、速やかに稼働を再開できる。
【0058】
ステップS42の次のステップS45で、実施判定部95は、測定処理を実施する要求が有るか否か判定する。実施判定部95は、次のケース1)〜4)が該当しない場合に、要求無しと判定して処理フローの実行をステップS41に戻す。また、実施判定部95は、ケース1)〜4)のいずれかが該当する場合に、要求有りと判定して処理フローの実行をステップS46に進める。
ケース1)ロット生産の最初の基板Kの装着作業が終了したとき。
ケース2)前回の測定処理の後に一定枚数の基板Kの装着作業が終了したとき。
ケース3)精度回復フラグFRがセットされているとき。
ケース4)測定処理を実施する指令をオペレータから受け取ったとき。
【0059】
ステップS46で、熱補正実施部78は熱補正処理を実施する。次のステップS47で、余裕時間算出部92は、前述した余裕時間T3を算出する。次のステップS48で、所要時間算出部94は、測定処理に要する所要時間T4を算出する。次のステップS49で、実施判定部95は、所要時間T4と余裕時間T3の大小関係を判定して、測定実施部96または暖機運転実施部97を選択的に始動させる。
【0060】
所要時間T4が余裕時間T3よりも短い場合のステップS50で、測定実施部96が始動して、測定処理を実施する。測定処理の結果は、ヘッド駆動機構40で用いるX−Y座標系の較正に用いられる。なお、ケース3)に該当する場合、実測される測定精度が保証され、測定処理により担保される部品の装着精度も保証される。測定処理の実施後、測定実施部96は、精度回復フラグFRをリセットする。ステップS50の後、処理フローの実行は、ステップS41に戻される。
【0061】
所要時間T4が余裕時間T3以上の場合のステップS51で、暖機運転実施部97が始動して、部品移載装置4を暖機運転する。ステップS49での判定により、測定処理の実行中に熱補正処理が実施されることを回避できる。暖機運転実施部97は、部品の装着を行わずにヘッド駆動機構40を駆動させて、構成部材の温度を上昇させる。この後、処理フローの実行は、ステップS46に戻される。ステップS46〜S49、S51で構成される処理ループの繰り返しにより、構成部材の温度上昇の飽和傾向化が進み、余裕時間T3が長くなる。結果として、ステップS49の条件が成立するようになり、暖機運転が終了する。この後、処理フローの実行は、処理ループを抜けてステップS50に進められる。
【0062】
第3実施形態の部品装着機1Bによれば、熱変形の影響が顕著に低減された影響無しレベルH0の状況下で測定処理が実行される。かつ、測定処理の実行中に熱補正処理が実施されることは生じない。したがって、測定処理の結果を用いた較正により、部品の装着精度を高く維持できる。さらに、故障や異常からの復旧時には、測定精度は保証されずとも、緊急時の測定処理が行われて迅速に稼働が再開されるので、高い生産効率が維持される。
【0063】
6.実施形態の応用および変形
なお、第1、第2、および第3実施形態は、1台の部品装着機で同時に実現することができる。また、図3に示された第1実施形態の処理フローと異なるが、熱補正実施部78は、精度要求レベルSが低レベルSLの場合に、装着作業の終了した基板Kを搬出して次の基板Kを搬入する時間帯に限り、熱補正処理を実施するようにしてもよい。これによれば、熱補正処理の処理時間が基板Kの入れ替え時間にオーバーラップするので、時間的なロスが発生せず、生産効率が低下しない。
【0064】
さらに、図3に示された第3実施形態の処理フローにおいて、ステップS46を省略することもできる。また、部品や基板Kに要求される精度要求レベルSが高レベルSHまたは中レベルSMである場合に、ステップS46を実施し、精度要求レベルSが低レベルSLである場合に、ステップS46を省略してもよい。第1〜第3実施形態は、他にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B:部品装着機 2:基板搬送装置 3:フィーダ装置 4:部品移載装置 40:ヘッド駆動機構 44:装着ヘッド 5:部品カメラ 6、6A、6B:制御装置 71:実施時期判定部 72:精度要求取得部 73:熱影響取得部 74:レベル比較部 78:熱補正実施部 81:実施時期判定部 82:多重装着判定部 83:変化時期判定部 91:実施時期判定部 92:余裕時間算出部 93:精度管理部 94:所要時間算出部 95:実施判定部 96:測定実施部 97:暖機運転実施部 98:緊急時測定実施部 K:基板 S:精度要求レベル SH:高レベル SM:中レベル SL:低レベル H:熱影響レベル H0:影響無しレベル H1:影響小レベル H2:影響中レベル H3:影響大レベル T1:作業継続時間 T2:作業中断時間
図1
図2
図3
図4
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図10