特許第6893274号(P6893274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6893274
(24)【登録日】2021年6月2日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/38 20060101AFI20210614BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20210614BHJP
   H02K 15/10 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   H02K3/38 A
   H02K3/34 B
   H02K3/34 D
   H02K15/10
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-115648(P2020-115648)
(22)【出願日】2020年7月3日
【審査請求日】2020年7月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 聡
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−065423(JP,A)
【文献】 特開2010−239737(JP,A)
【文献】 特開2020−043677(JP,A)
【文献】 特開2014−207840(JP,A)
【文献】 特開2014−161212(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/003561(WO,A1)
【文献】 特開2015−039273(JP,A)
【文献】 特開2018−174674(JP,A)
【文献】 特開2004−064989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/38
H02K 3/34
H02K 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨーク部と、前記ヨーク部から半径方向に向けて延出し、周方向において互いに間隔を設けて配置される複数のティース部とを含み、互いに隣り合う前記ティース部の間にスロットを形成するステータコアと、
前記スロットに挿通され、前記ティース部に巻回される三相コイルとを備え、
前記三相コイルは、前記スロットから前記ステータコアのその軸方向における端面上に突出する、互いに異なる相のコイルからなり、前記ステータコアの周方向に並ぶ第1コイルエンドおよび第2コイルエンドを含み、
前記第1コイルエンドおよび前記第2コイルエンドは、それぞれ、互いに対向する第1対向部および第2対向部を有し、さらに、
前記第1対向部および前記第2対向部のうちの前記第1対向部にのみ設けられる相間絶縁体を備え、
前記第1コイルエンドおよび前記第2コイルエンドの各コイルエンドは、前記ステータコアの周方向に連続して並ぶ複数の前記スロットから前記端面上に突出する、互いに同じ相の複数のコイルからなり、
前記第1対向部は、前記第1コイルエンドを構成する複数の前記コイルのうちの全ての前記コイルに対応し、
前記第2対向部は、前記第2コイルエンドを構成する複数の前記コイルのうちの全ての前記コイルに対応する、モータ。
【請求項2】
前記ステータコアの軸方向における前記端面から前記第2対向部までの最大高さが、前記ステータコアの軸方向における前記端面から前記第1対向部までの最大高さよりも大きい、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1コイルエンドおよび前記第2コイルエンドの各コイルエンドを構成する前記コイルは、前記ステータコアの軸方向に見た場合に、前記ステータコアの周方向、かつ、半径方向に延びる、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記相間絶縁体は、前記コイルに巻かれる絶縁テープである、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2012−65423号公報(特許文献1)には、ステータコアと、分布巻き方式によりステータコアに配されるU相コイル、V相コイルおよびW相コイルとを備える回転電機が開示されている。ステータコアの軸方向端面から突出するコイルエンド部において、各相コイルを形成する集合線が絶縁層により覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−65423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示される回転電機においては、コイルエンド部における相間絶縁を確保するために、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルの全てに対応して絶縁層が設けられている。しかしながら、このような構成では、絶縁層を設ける箇所が多くなって、製造工程が複雑になったり、製造コストが増大したりする懸念が生じる。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、相間絶縁体を設ける箇所を少なくしつつ、コイルエンドにおける相間を確実に絶縁することが可能なモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の1つの局面に従ったモータは、環状のヨーク部と、ヨーク部から半径方向に向けて延出し、周方向において互いに間隔を設けて配置される複数のティース部とを含み、互いに隣り合うティース部の間にスロットを形成するステータコアと、スロットに挿通され、ティース部に巻回される三相コイルとを備える。三相コイルは、スロットからステータコアのその軸方向における端面上に突出する、互いに異なる相のコイルからなり、ステータコアの周方向に並ぶ第1コイルエンドおよび第2コイルエンドを含む。第1コイルエンドおよび第2コイルエンドは、それぞれ、互いに対向する第1対向部および第2対向部を有する。モータは、第1対向部および第2対向部のうちの第1対向部にのみ設けられる相間絶縁体をさらに備える。第1コイルエンドおよび第2コイルエンドの各コイルエンドは、ステータコアの周方向に連続して並ぶ複数のスロットから端面上に突出する、互いに同じ相の複数のコイルからなる。第1対向部は、第1コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応する。第2対向部は、第2コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応する。
この発明の別の局面に従ったモータは、環状のヨーク部と、ヨーク部から半径方向に向けて延出し、周方向において互いに間隔を設けて配置される複数のティース部とを含み、互いに隣り合うティース部の間にスロットを形成するステータコアと、スロットに挿通され、ティース部に巻回される三相コイルとを備える。三相コイルは、スロットからステータコアのその軸方向における端面上に突出する、互いに異なる相のコイルからなり、ステータコアの周方向に並ぶ第1コイルエンドおよび第2コイルエンドを含む。第1コイルエンドおよび第2コイルエンドは、それぞれ、互いに対向する第1対向部および第2対向部を有する。モータは、第1対向部および第2対向部のうちの第1対向部に設けられる相間絶縁体をさらに備える。
【0007】
このように構成されたモータによれば、第1対向部に相間絶縁体を設けることによって、第1コイルエンドおよび第2コイルエンドの相間を確実に絶縁することができる。この際、相間絶縁体は、第1対向部および第2対向部のうちの第1対向部に設けられるため、相間絶縁体を設ける箇所を少なくすることができる。
【0008】
また好ましくは、ステータコアの軸方向における端面から第2対向部までの最大高さが、ステータコアの軸方向における端面から第1対向部までの最大高さよりも大きい。
【0009】
このように構成されたモータによれば、第2対向部が第1対向部より隠れることがないため、相間絶縁体が設けられていない異なる相のコイル同士の接触をより確実に防ぐことができる。
【0010】
また好ましくは、第1コイルエンドおよび第2コイルエンドの各コイルエンドは、ステータコアの周方向に連続して並ぶ複数のスロットから端面上に突出する、互いに同じ相の複数のコイルからなる。
【0011】
このように構成されたモータによれば、第1対向部に相間絶縁体を設けることによって、互いに同じ相の複数のコイルからなる第1コイルエンドと、第1コイルエンドとは異なる相であって、互いに同じ相の複数のコイルからなる第2コイルエンドとの相間を確実に絶縁することができる。
【0012】
また好ましくは、第1対向部は、第1コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの第2コイルエンドと隣接するコイルに対応する。第2対向部は、第2コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの第1コイルエンドと隣接するコイルに対応する。
【0013】
このように構成されたモータによれば、第1コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの第2コイルエンドと隣接するコイルに対応する第1対向部に相間絶縁体を設けることによって、第1コイルエンドおよび第2コイルエンドの相間を確実に絶縁することができる。
【0014】
また好ましくは、第1対向部は、第1コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応する。第2対向部は、第2コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応する。
【0015】
このように構成されたモータによれば、第1コイルエンドを構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応する第1対向部に相間絶縁体を設けることによって、第1コイルエンドおよび第2コイルエンドの相間を確実に絶縁することができる。
【0016】
また好ましくは、第1コイルエンドおよび第2コイルエンドの各コイルエンドを構成するコイルは、ステータコアの軸方向に見た場合に、ステータコアの周方向、かつ、半径方向に延びる。
【0017】
このように構成されたモータによれば、第1対向部および第2対向部が対向する区間が長くなるため、相間絶縁体を設ける箇所を少なくする効果がより有効に奏される。
【0018】
また好ましくは、相間絶縁体は、コイルに巻かれる絶縁テープである。
【0019】
このように構成されたモータによれば、相間絶縁体を設ける箇所が少ないため、コイルに対する絶縁テープの巻き付け作業を簡易にできる。
【発明の効果】
【0020】
以上に説明したように、この発明に従えば、相間絶縁体を設ける箇所を少なくしつつ、コイルエンドにおける相間を確実に絶縁することが可能なモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施の形態1におけるモータを示す斜視図である。
図2図1中のモータを示す断面図である。
図3図1中のモータからフランジ、樹脂封止部および配線を取り除いたモータを示す斜視図である。
図4図3中の2点鎖線IVで囲まれた範囲を拡大して示す斜視図である。
図5図1中のモータにおいて、コイルの装着状態を説明するための図である。
図6図5中のVI−VI線上の矢視方向に見たモータを示す断面図である。
図7図5中のコイルの装着状態の変型例を説明するための図である。
図8】この発明の実施の形態2におけるモータにおいて、コイルの装着状態を説明するための図である。
図9図8中のコイルの装着状態の変型例を説明するための図である。
図10】この発明の実施の形態3におけるモータにおいて、コイルの装着状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるモータを示す斜視図である。図2は、図1中のモータを示す断面図である。
【0024】
図1および図2を参照して、本実施の形態におけるモータ100は、工作機械用である。モータ100は、たとえば、複合加工機の刃物台に内蔵され、刃物台に装着された回転工具を回転させるためのモータとして用いられる。
【0025】
モータ100は、ロータ(不図示)と、ロータの外周上に隙間(ギャップ)を設けて配置されるステータ20とを有する。ロータは、仮想線として示された中心軸101を中心に回転駆動する。
【0026】
図3は、図1中のモータからフランジ、樹脂封止部および配線(図2中の口出し線16および渡り線17)を取り除いたモータを示す斜視図である。
【0027】
図1から図3を参照して、ステータ20は、ステータコア21と、フランジ(筒体)12と、三相コイル31(31U,31V,31W)と、樹脂封止部14とを有する。
【0028】
ステータコア21は、磁性材料から形成されている。ステータコア21は、全体として、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。中心軸101の周方向が、ステータコア21の周方向に対応し、中心軸101の軸方向が、ステータコア21の軸方向に対応し、中心軸101の半径方向が、ステータコア21の半径方向に対応している。
【0029】
ステータコア21は、端面26(26m,26n)を有する。端面26は、中心軸101の軸方向におけるステータコア21の端部に配置されている。端面26は、中心軸101に直交する平面内で延在する。端面26mおよび端面26nは、それぞれ、中心軸101の軸方向におけるステータコア21の一方端および他方端に配置されている。
【0030】
ステータコア21は、その構成部位として、ヨーク部22と、複数のティース部23とを有する。ヨーク部22は、中心軸101を中心に環状に周回する形状を有する。ヨーク部22は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。ティース部23は、ヨーク部22から半径方向内側に向けて延出する形状を有する。ティース部23は、ヨーク部22から延出する先端において、ロータと隙間を設けて対向する。複数のティース部23は、中心軸101を中心とする周方向において互いに間隔を隔てて設けられている。周方向において互いに隣り合うティース部23間には、スロット24(後出の図5を参照のこと)が形成されている。
【0031】
フランジ12は、全体として、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。フランジ12は、金属から形成されている。フランジ12の内側には、ステータコア21が嵌合されている。
【0032】
フランジ12は、その構成部位として、冷媒通路形成部13と、鍔部15とを有する。冷媒通路形成部13は、フランジ12の外周面に設けられている。冷媒通路形成部13は、フランジ12の外周上に配置される筒部材(不図示)とともに、冷却水や冷却油などの冷媒が流通可能な冷媒通路を形成する。鍔部15は、中心軸101の軸方向におけるフランジ12の端部にて鍔状に広がって設けられている。鍔部15には、モータ100の固定用のボルト挿入孔が形成されている。
【0033】
三相コイル31は、ステータコア21に設けられている。三相コイル31は、スロット24に挿通されている。三相コイル31は、ティース部23に巻回されている。
【0034】
三相コイル31は、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wからなる。U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、多重に束ねられた導線(たとえば、銅線)からなる。
【0035】
U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、分布巻きにより、ティース部23に巻回されている。U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、少なくとも1つのスロット24を跨ぐように設けられている。U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、ステータコア21の周方向に離れて位置する2つのスロット24と、端面26(26m,26n)上とを通るように、ティース部23に巻回されている。
【0036】
U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、スロット24内において、中心軸101の軸方向に沿って直線状に延びている。スロット24内には、三相コイル31およびステータコア21の間を絶縁するためのスロット内絶縁体41が設けられている。
【0037】
中心軸101の半径方向外側から内側に見た場合に、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、端面26上において、略U字状に曲がって延びている。中心軸101の軸方向に見た場合に、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、端面26上において、中心軸101の周方向、かつ、中心軸101の半径方向に延びている。各スロット21内には、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wから選択される2組のコイルが、中心軸101の半径方向に並んで配置されている。各スロット21内に配置される2組のコイルは、互いに同じ相のコイルであってもよいし、互いに異なる相のコイルであってもよい。
【0038】
端面26上を通る三相コイル31(31U,31V,31W)によって、コイルエンド部36が構成されている。コイルエンド部36は、中心軸101の軸方向において、スロット24から端面26上に突出している。
【0039】
樹脂封止部14は、樹脂材料から形成されている。樹脂封止部14は、スロット24を充填するように設けられている。樹脂封止部14は、端面26上において、コイルエンド部36を覆うように設けられている。
【0040】
図4は、図3中の2点鎖線IVで囲まれた範囲を拡大して示す斜視図である。図5は、図1中のモータにおいて、コイルの装着状態を説明するための図である。
【0041】
図5中には、直線状に展開されたステータコア21の端面26と、端面26上に配置される三相コイル31(コイルエンド部36)とが、模式的に表わされている。図5中では、U相コイル31Uが実線により示され、V相コイル31Vが2点鎖線により示され、W相コイル31Wが1点鎖線により示され、後出の相間絶縁体51が、点線により示されている。
【0042】
図4および図5を参照して、端面26上において、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルは、中心軸101の周方向において4つのスロット24を跨ぐように設けられている。2組のU相コイル31Uが、中心軸101の周方向に連続して並び、2組のV相コイル31Vが、中心軸101の周方向に連続して並び、2組のW相コイル31Wが、中心軸101の周方向に連続して並んでいる。これら2組のU相コイル31U、2組のV相コイル31Vおよび2組のW相コイル31Wは、中心軸101の周方向において、挙げた順に繰り返し並んでいる。
【0043】
三相コイル31(コイルエンド部36)は、第1コイルエンド61と、第2コイルエンド71とを有する。
【0044】
第1コイルエンド61および第2コイルエンド71は、互いに異なる相のコイルからなる。第1コイルエンド61および第2コイルエンド71は、U相コイル31UおよびV相コイル31Vの組であってもよいし(順不同)、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの組であってもよいし(順不同)、W相コイル31WおよびU相コイル31Uの組であってもよい(順不同)。第1コイルエンド61および第2コイルエンド71は、中心軸101の周方向に並んでいる。第1コイルエンド61および第2コイルエンド71は、中心軸101の周方向において連続して並んでいる。
【0045】
第1コイルエンド61および第2コイルエンド71の各コイルエンドは、中心軸101の周方向に連続して並ぶ複数のスロット24から端面26上に突出する、互いに同じ相の複数のコイルからなる。
【0046】
第1コイルエンド61は、第1対向部62を有する。第2コイルエンド71は、第2対向部72を有する。第1対向部62および第2対向部72は、互いに対向している。第1対向部62および第2対向部72は、中心軸101の周方向、かつ、中心軸101の半径方向において、互いに対向している。
【0047】
第1対向部62および第2対向部72は、互いに隣り合っている。第1対向部62および第2対向部72の間には、第1対向部62および第2対向部72を除いた他のコイルが存在しない。
【0048】
第1対向部62は、第1コイルエンド61を構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応する。第2対向部72は、第2コイルエンド71を構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応する。
【0049】
モータ100は、相間絶縁体51をさらに有する。相間絶縁体51は、第1対向部62および第2対向部72のうちの第1対向部62に設けられている。
【0050】
相間絶縁体51は、端面26上のコイルエンド部36において、互いに異なる相のコイル同士を絶縁するために設けられている。相間絶縁体51は、第1対向部62を覆うように設けられている。相間絶縁体51は、第1対向部62および第2対向部72の間に介挿されている。相間絶縁体51は、絶縁テープからなり、第1対向部62に巻かれている。相間絶縁体51として、たとえば、ポリイミドフィルムであるカプトン(登録商標)を用いることができる。
【0051】
図5中においては、第1コイルエンド61が、中心軸101の周方向に連続して並ぶ2組のW相コイル31Wに対応し、第2コイルエンド71が、中心軸101の周方向において、その2組のW相コイル31Wと並んで配置され、中心軸101の周方向に連続して並ぶ2組のV相コイル31Vに対応している。第1対向部62は、第1コイルエンド61を構成する2組のW相コイル31Wに対応し、第2対向部72は、第2コイルエンド71を構成する2組のV相コイル31Vに対応している。
【0052】
相間絶縁体51は、第1対向部62に対応する2組のW相コイル31W、および、第2対向部72に対応する2組のV相コイル31Vのうちの、第1対向部62に対応する2組のW相コイル31Wに設けられている。相間絶縁体51は、第2対向部72に対応する2組のV相コイル31Vに設けられていない。
【0053】
なお、上記の第1コイルエンド61および第2コイルエンド71の組は、代表的な例として挙げたものであり、各組が、相間絶縁体51が設けられた第1対向部62を有する第1コイルエンド61と、相間絶縁体51が設けられない第2対向部72を有する第2コイルエンド71とからなる複数の組が、中心軸101の周方向に並んでいる。
【0054】
このような構成によれば、第1対向部62に相間絶縁体51を設けることによって、互いに異なる相のコイルからなる第1コイルエンド61および第2コイルエンド71の相間を確実に絶縁することができる。
【0055】
また、コイルエンド部36においては、端面26上の空間を占める導線の占積率が高いため、三相コイル31の全てのコイルに絶縁テープを巻くことが困難である。また、コイルエンド部36に絶縁テープを設けた後に、コイルをステータコア21に装着するという組み立て工程も想定されるが、この場合、絶縁テープが巻かれた導線が変形し難くなるため、コイルをステータコア21に装着する作業が非常に困難となる。これに対して、本実施の形態では、相間絶縁体51(絶縁テープ)が、第1対向部62および第2対向部72のうちの第1対向部62に設けられているため、相間絶縁体51を設ける箇所を少なくすることができる。これにより、コイルエンド部36に絶縁テープを巻く作業を容易に行なうことができる。また、相間絶縁体51(絶縁テープ)の消費量の削減も可能となるため、モータ100の製造コストを抑制することができる。
【0056】
図6は、コイルエンド部を示す断面図である。図6中には、図5中のVI−VI線上の位置に対応するモータ100(ステータコア21、三相コイル31および相間絶縁体51)の断面形状が示されている。図6中には、中心軸101を含む平面により切断された場合のモータ100の断面形状が示されている。
【0057】
図5および図6を参照して、中心軸101の軸方向における端面26から第2対向部72までの最大高さH2が、中心軸101の軸方向における端面26から第1対向部62までの最大高さH1よりも大きい(H2>H1)。
【0058】
第1対向部62および第2対向部72は、中心軸101の軸方向において互いにずれた位置に設けられている。第1対向部62は、端面26の直上に設けられている。第2対向部72は、端面26上において、第2対向部72に積み重なって設けられている。第2対向部72は、中心軸101の軸方向において、第1対向62よりも端面26から離れた位置に設けられている。
【0059】
コイルエンド部36においては、端面26上の空間を占める導線の占積率が高いため、コイルエンド部36を構成するコイルが上下に積み重なって設けられる場合がある。このような場合に、端面26の直上に設けられたコイルは、そのコイルに積み重なって設けられるコイルによって遮られるため、端面26の直上に設けられた異なる相のコイル同士が意図せずに接触して、相間が短絡する可能性がある。
【0060】
これに対して、本実施の形態では、上記のH2>H1の関係式により、端面26の直上に、相間絶縁体51が設けられた第1対向部62が設けられ、その第1対向部62に積み重なって、相間絶縁体51が設けられていない第2対向部72が設けられる。このような構成により、相間絶縁体51が設けられていない異なる相のコイル同士(図6中に示される断面位置においては、V相コイル31VおよびU相コイル31U)が接触することをより確実に防ぐことができる。
【0061】
図7は、図5中のコイルの装着状態の変型例を説明するための図である。図7を参照して、本変形例では、端面26上において、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルが、中心軸101の周方向において10個のスロット24を跨ぐように設けられている。4組のU相コイル31Uが、中心軸101の周方向に連続して並び、4組のV相コイル31Vが、中心軸101の周方向に連続して並び、4組のW相コイル31Wが、中心軸101の周方向に連続して並んでいる。これら4組のU相コイル31U、4組のV相コイル31Vおよび4組のW相コイル31Wは、中心軸101の周方向において、挙げた順に繰り返し並んでいる。
【0062】
図7中においては、代表的な例として、第1コイルエンド61が、中心軸101の周方向に連続して並ぶ4組のU相コイル31Uに対応し、第2コイルエンド71が、中心軸101の周方向において、その4組のU相コイル31Uと並んで配置され、中心軸101の周方向に連続して並ぶ4組のW相コイル31Wに対応している。第1対向部62は、第1コイルエンド61を構成する4組のU相コイル31Uに対応し、第2対向部72は、第2コイルエンド71を構成する4組のW相コイル31Wに対応している。
【0063】
相間絶縁体51は、第1対向部62に対応する4組のU相コイル31U、および、第2対向部72に対応する4組のW相コイル31Wのうちの、第1対向部62に対応する4組のU相コイル31Uに設けられている。相間絶縁体51は、第2対向部72に対応する4組のW相コイル31Wに設けられていない。
【0064】
本変形例に示されるように、中心軸101の周方向に連続して並ぶ同じ相のコイルの数は、特に限定されない。
【0065】
以上に説明した、この発明の実施の形態1におけるモータ100の構造についてまとめると、本実施の形態におけるモータ100は、環状のヨーク部22と、ヨーク部22から半径方向に向けて延出し、周方向において互いに間隔を設けて配置される複数のティース部23とを含み、互いに隣り合うティース部23の間にスロット24を形成するステータコア21と、スロット24に挿通され、ティース部23に巻回される三相コイル31とを備える。三相コイル31は、スロット24からステータコア21のその軸方向における端面26上に突出する、互いに異なる相のコイルからなり、ステータコア21の周方向に並ぶ第1コイルエンド61および第2コイルエンド71を含む。第1コイルエンド61および第2コイルエンド71は、それぞれ、互いに対向する第1対向部62および第2対向部72を有する。モータ100は、第1対向部62および第2対向部72のうちの第1対向部62に設けられる相間絶縁体51をさらに備える。
【0066】
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるモータ100によれば、相間絶縁体51を設ける箇所を少なくしつつ、コイルエンド部36における異なる相のコイル同士を確実に絶縁することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、ロータがステータ20の内側に配置されるインナーロータ型のモータ100について説明したが、本発明を、ロータがステータの外側に配置されるアウターロータ型のモータに適用することも可能である。本発明を、工作機械の主軸駆動用のモータや、テーブル旋回用のモータに適用することも可能である。
【0068】
(実施の形態2)
図8は、この発明の実施の形態2におけるモータにおいて、コイルの装着状態を説明するための図である。本実施の形態におけるモータは、実施の形態1におけるモータ100と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0069】
図8を参照して、図5に示される実施の形態1では、第1対向部62が、第1コイルエンド61を構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応しているのに対して、本実施の形態では、第1対向部62が、第1コイルエンド61を構成する複数のコイルのうちの第2コイルエンド71と隣接するコイルに対応している。図5に示される実施の形態1では、第2対向部72が、第2コイルエンド71を構成する複数のコイルのうちの全てのコイルに対応しているのに対して、本実施の形態では、第2対向部72が、第2コイルエンド71を構成する複数のコイルのうちの第1コイルエンド61と隣接するコイルに対応している。
【0070】
図8中においては、代表的な例として、第1コイルエンド61が、中心軸101の周方向に連続して並ぶ2組のV相コイル31Vに対応し、第2コイルエンド71が、中心軸101の周方向において、その2組のV相コイル31Vと並んで配置され、中心軸101の周方向に連続して並ぶ2組のW相コイル31Wに対応している。第1対向部62は、第1コイルエンド61を構成する2組のV相コイル31Vのうち、第2コイルエンド71と隣接する1組のV相コイル31Vに対応している。第2対向部72は、第2コイルエンド71を構成する2組のW相コイル31Wのうち、第1コイルエンド61と隣接する1組のW相コイル31Wに対応している。
【0071】
相間絶縁体51は、第1対向部62に対応する1組のV相コイル31V、および、第2対向部72に対応する1組のW相コイル31Wのうちの、第1対向部62に対応する1組のV相コイル31Vに設けられている。相間絶縁体51は、第1コイルエンド61における第1対向部62を除く他のコイル(1組のV相コイル31V)に設けられていない。相間絶縁体51は、第2対向部72に対応する1組のW相コイル31Wに設けられていない。
【0072】
図9は、図8中のコイルの装着状態の変型例を説明するための図である。図9を参照して、本変形例では、端面26上において、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルが、中心軸101の周方向において10個のスロット24を跨ぐように設けられている。4組のU相コイル31Uが、中心軸101の周方向に連続して並び、4組のV相コイル31Vが、中心軸101の周方向に連続して並び、4組のW相コイル31Wが、中心軸101の周方向に連続して並んでいる。これら4組のU相コイル31U、4組のV相コイル31Vおよび4組のW相コイル31Wは、中心軸101の周方向において、挙げた順に繰り返し並んでいる。
【0073】
図9中においては、代表的な例として、第1コイルエンド61が、中心軸101の周方向に連続して並ぶ4組のV相コイル31Vに対応し、第2コイルエンド71が、中心軸101の周方向において、その4組のV相コイル31Vと並んで配置され、中心軸101の周方向に連続して並ぶ4組のW相コイル31Wに対応している。第1対向部62は、第1コイルエンド61を構成する4組のV相コイル31Vのうち、第2コイルエンド71と隣接する1組のV相コイル31Vに対応している。第2対向部72は、第2コイルエンド71を構成する4組のW相コイル31Wのうち、第1コイルエンド61と隣接する1組のW相コイル31Wに対応している。
【0074】
相間絶縁体51は、第1対向部62に対応する1組のV相コイル31V、および、第2対向部72に対応する1組のW相コイル31Wのうちの、第1対向部62に対応する1組のV相コイル31Vに設けられている。相間絶縁体51は、第1コイルエンド61における第1対向部62を除く他のコイル(3組のV相コイル)に設けられていない。相間絶縁体51は、第2対向部72に対応する1組のW相コイル31Wに設けられていない。
【0075】
本変形例に示されるように、中心軸101の周方向に連続して並ぶ同じ相のコイルの数は、特に限定されない。
【0076】
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるモータによれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0077】
なお、実施の形態1におけるコイルの装着状態と、実施の形態2におけるコイルの装着状態とを比較した場合、実施の形態1におけるコイルの装着状態は、実施の形態2におけるコイルの装着状態よりも、相間絶縁体51が設けられていない異なる相のコイル間の距離をより大きく設定することができる。また、実施の形態2におけるコイルの装着状態は、実施の形態1におけるコイルの装着状態よりも、相間絶縁体51を設ける箇所をより少なくすることができる(中心軸101の周方向に連続して並ぶ同じ相のコイルの数が3以上である場合)。
【0078】
(実施の形態3)
図10は、この発明の実施の形態3におけるモータにおいて、コイルの装着状態を説明するための図である。本実施の形態におけるモータは、実施の形態1におけるモータ100と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0079】
図10を参照して、本実施の形態では、端面26上において、U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wの各コイルが、中心軸101の周方向において1個のスロット24を跨ぐように設けられている。U相コイル31U、V相コイル31VおよびW相コイル31Wは、中心軸101の周方向において、挙げた順に繰り返し並んでいる。
【0080】
図10中においては、代表的な例として、第1コイルエンド61が、W相コイル31Wに対応し、第2コイルエンド71が、中心軸101の周方向において、そのW相コイル31Wと並んで配置されるV相コイル31Vに対応している。第1対向部62は、第1コイルエンド61を構成するW相コイル31Wに対応し、第2対向部72は、第2コイルエンド71を構成するV相コイル31Vに対応している。
【0081】
相間絶縁体51は、第1対向部62に対応するW相コイル31W、および、第2対向部72に対応するV相コイル31Vのうちの、第1対向部62に対応するW相コイル31Wに設けられている。相間絶縁体51は、第2対向部72に対応するV相コイル31Vに設けられていない。相間絶縁体51が設けられたコイルと、相間絶縁体51が設けられていないコイルとが、中心軸101の周方向において交互に並んでいる。
【0082】
このように構成された、この発明の実施の形態3におけるモータによれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0083】
中心軸101の周方向に連続して並ぶ同じ相のコイルの数は、実施の形態1および2で説明したように、複数であってもよいし、本実施の形態で説明したように、1つであってもよい。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明は、たとえば、工作機械用のモータに適用される。
【符号の説明】
【0086】
12 フランジ、13 冷媒通路形成部、14 樹脂封止部、15 鍔部、16 口出し線、17 渡り線、20 ステータ、21 ステータコア、22 ヨーク部、23 ティース部、24 スロット、26,26m,26n 端面、31 三相コイル、31U U相コイル、31V V相コイル、31W W相コイル、36 コイルエンド部、41 スロット内絶縁体、51 相間絶縁体、61 第1コイルエンド、62 第1対向部、71 第2コイルエンド、72 第2対向部、100 モータ、101 中心軸。
【要約】
【課題】相間絶縁体を設ける箇所を少なくしつつ、コイルエンドにおける相間を確実に絶縁することが可能なモータ、を提供する。
【解決手段】モータは、ヨーク部22と、複数のティース部23とを含み、互いに隣り合うティース部23の間にスロット24を形成するステータコア21と、スロット24に挿通され、ティース部23に巻回される三相コイルとを備える。三相コイルは、スロット24からステータコア21のその軸方向における端面26上に突出する、互いに異なる相のコイルからなり、ステータコア21の周方向に並ぶ第1コイルエンド61および第2コイルエンド71を含む。第1コイルエンド61および第2コイルエンド71は、それぞれ、第1対向部62および第2対向部72を有する。モータは、第1対向部62および第2対向部72のうちの第1対向部62に設けられる相間絶縁体51をさらに備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10