【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成29年3月7日に、電子情報通信学会 2017年総合大会講演論文集にて公表 (2)平成29年3月22日に、電子情報通信学会 2017年総合大会講演会で発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「複数周波数帯域の同時利用による周波数利用効率向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
波動工学研究所,複数周波数帯域の同時利用による周波数利用効率向上技術 第5世代移動通信システム実現に関する研究開発,けいはんな情報通信フェア2016,2016年11月11日,Page 28
【文献】
塚本 悟司 Satoshi TSUKAMOTO,複数帯同時伝送無線LANにおけるセンシングチャネル数の検討,電子情報通信学会2017年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2017 IEICE GENERAL CONFERENCE,2017年 3月 7日,Page 480
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信方式、たとえば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化が行なわれた無線通信システムであるLTE(Long Term Evolution)リリース8(Rel-8)は、最大20MHzの帯域を利用して通信を行うことが可能である。
【0003】
さらに、LTEの発展版であるLTE−A(Long Term Evolution-Advanced)では、LTEとの後方互換性を確保しつつ、更なる高速伝送を実現するため、LTEでサポートされる帯域幅を基本単位としたコンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)を複数束ねて同時に用いるキャリアアグリゲーション(CA:Career Aggregation)技術が採用され、最大で5CC(100MHz幅)を用いて100MHz幅の広帯域伝送が実現可能である。ただし、このようなキャリアアグリゲーションは、近接する周波数バンドでの異なるチャネルを用いた伝送である。
【0004】
上記のような高速化が図られてはいるものの、近年、 スマートフォン等の高機能な携帯端末の普及に伴って、移動通信トラフィックの需要が急激に増大している。
【0005】
その結果、従来からの無線LAN(Local Area Network)の利用拡大に加え、スマートフォンの普及によるモバイルデータトラフィックの増大により無線LANへのオフロードが進展し、免許不要帯域(2.4GHz帯、5GHz帯)でのトラフィックが急増している。
【0006】
また、IoT(Internet Of Things)/M2M(Machine to Machine)社会の進展により、 上記周波数帯および920MHz帯の更なる逼迫が懸念され、これらの周波数帯の周波数利用効率向上は喫緊の課題となっている。
【0007】
ここで、無線リソースの利用状況は時間・場所・周波数帯や無線チャネル等によって変動するため、一部の周波数帯(や無線チャネル)のみが混雑する状況が発生し得る。
【0008】
しかしながら、既存の自営系無線システム(例えばIEEE802.11無線LAN)は単一の周波数帯を用いるか、予め使用する帯域をひとつ決めてから通信を行う。例えば、IEEE802.11nは2.4GHz帯と5GHz帯のいずれを使用するかを設定してから使用する。このため、既存の自営系無線システム全体として無線リソースに空きがある場合であっても、輻輳が発生するおそれがある。
【0009】
ここで、無線通信リソースの有効利用を図るためコグニティブ無線技術が注目されている。コグニティブ無線技術とは、無線端末が周囲の電波の利用状況を認識し、その状況に応じて利用する無線通信リソースを変えることをいう。コグニティブ無線技術には、異なる無線通信規格を状況に応じて選択して使うヘテロジニアス型と、無線端末が空き周波数を探し出して必要な通信帯域を確保する周波数共用型とがある。
【0010】
ヘテロジニアス型においては、コグニティブ無線機は、周辺で運用されている複数の無線システムを認識し、各システムの利用度や実現可能な伝送品質に関する情報を入手し、適切な無線システムに接続する。即ち、ヘテロジニアス型のコグニティブ無線は、周辺に存在する無線システムの利用効率を高めることにより、間接的に周波数資源の利用効率を高めるものである。
【0011】
一方、周波数共用型においては、コグニティブ無線機は、他の無線システムが運用されている周波数帯域において、一時的、または局所的に利用されていない周波数資源(これは、white spaceと呼ばれる)の存在を検知し、これを利用して信号伝送を行なう。即ち、周波数共用型のコグニティブ無線は、ある周波数帯域における周波数資源の利用効率を直接的に高めるものである。
【0012】
そして、上述したような免許不要帯域におけるトラフィックの増大の問題を解決する一手法として、使用周波数帯の異なる複数の無線LAN規格(例えば、2.4GHz帯無線LAN規格と5GHz帯無線LAN規格)を選択あるいは並行利用する、ヘテロジニアス型コグニティブ無線的アプローチが考えられる(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
【0013】
しかし、このヘテロジニアス型コグニティブ無線的アプローチでは送信データを適宜分割し、それぞれどの周波数帯で伝送するかを事前に振り分けておく必要がある。この結果、各周波数帯の混雑度合いによっては使用周波数帯によって伝送遅延が大きく異なったり、データが宛先に到着する順番が入れ替わる、等の問題が新たに発生してしまう。
【0014】
そこで、互いに大きく分離した複数の周波数帯、たとえば、2.4GHz帯無線LANと5GHz帯無線LANにおいて、既存システムと周波数を共用して、コグニティブな無線通信を実現することが望ましい。
(従来の無線LANの衝突回避技術)
ここで、従来の無線LANでは、ランダムアクセス制御における通信データの衝突の回避のために、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれる技術が用いられる。
【0015】
図11は、このような従来のCSMA/CA技術を説明するための概念図である。
【0016】
CSMAでは、通信開始前に伝送媒体(無線チャネル)上に、現在通信をしているホストがいないかどうかをキャリアセンスにより確認し、複数のホストが同じ伝送媒体を共有して、現在他のホストが通信していない場合は、通信を開始するという多重アクセスを実現する。
【0017】
ここで、無線チャネルが、ビジー状態からアイドル状態になれば、一般には、通信が可能になる。しかし、複数のホストが、アイドル状態を検知して、同時に通信を開始してしまうと、複数のフレームが同時に送信されることになり、衝突してしまう。
【0018】
そこで、CSMAでは、フレームの種別によって、無線チャネルがアイドル状態となってから、送信が可能になるまでの時間を変える構成としている。優先順位の高いフレームの待ち時間を短くすれば、優先順位が低いフレームが送信可能になったときには、優先順位の高いフレーム伝送によって無線チャネルがビジー状態となっていることになり、送信が実行されない。
【0019】
そこで、CSMAでは、無線チャネルがビジー状態からアイドル状態となって、次のフレームの送信を始めるまでの待ち時間(IFS:Inter Frame Space)として、SIFS(Short IFS)、PIFS(Point Coordination Function IFS)、DIFS(Distributed Coordination Function IFS)の3種類が定義されており、期間の長さは、SIFS,PIFS,DIFSの順で長くなる。一般に、データフレームの送信に成功すれば、その直後に必ず、受信完了通知(ACK)の送信を行うことが必要であるので、ACKには、SIFSが割り当てられる。これに対して、データフレームの送信には、DIFSが割り当てられる。
【0020】
ただし、データフレームの送信の場合は、正確には、ビジー状態からアイドル状態となってチャネルが空いた後、DIFSで規定される一定時間送信を待機し、さらにランダムなバックオフ時間(コンテンションウィンドウ(CW)と呼ばれる)のスロット数だけ送信を待機する。待機するコンテンションウィンドウのスロット数はコンテンションウィンドウサイズを上限として、ランダムに選択される。このようにして待機時間が最も短かった端末が送信権を獲得し、フレームを送信できることになる。
【0021】
これ以外にも、無線LAN固有のアクセス制御の仕組みとして、たとえば、隠れ端末対策のために考案された「RTS/CTS(Request to Send/Clear to Send)」がある。ここで、隠れ端末とは、自分からは電波圏外だが、通信相手の電波圏内にいる端末のことである。その存在を直接知ることはできないが、干渉を引き起こす。
【0022】
電波の到達距離をLmと仮定すると、無線端末Aの通信相手B(アクセスポイント)がLm先におり、さらにそのLm先に別の無線端末Cがいるという状況を考える。
【0023】
このとき、端末Cの電波は端末Aまで届かないため、端末Aがほかの端末が信号を送出しているか調べても(キャリアセンスしても)端末Cの存在がわからないことから、端末Cは端末Aの隠れ端末になる。何も対策をとらないと、端末CがアクセスポイントBに送信中であっても、端末AもアクセスポイントBにデータを送信してしまうことが起きてしまうことになる。これは、アクセスポイントBで衝突を引き起こし、スループットを下げる要因になる。
【0024】
RTS/CTSとは、すべての無線機器は送信前に「RTS(送信要求)」のパケットを出し、受信側も受信可能であれば「CTS(受信可能)」で応答する仕組みである。前述の例では、端末CはアクセスポイントBにまずRTSを送信する。ただし、このRTSは、端末Aには届かない。
【0025】
アクセスポイントBは、端末Cに対してCTSを送信することで受信可能なことを通知する。このCTSは、端末Aにも届くため、端末Aは通信が行なわれることを察知し、送信を延期する。RTS/CTSのパケットには、チャネルの占有予定期間が書かれており、その間通信を保留する。この期間を「NAV(Network Allocation Vector、送信禁止期間)」と呼ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムおよび無線通信装置の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
【0038】
なお、以下では、本発明の受信装置を説明する一例として、上述したような互いに大きく分離した複数の既存の免許不要帯域(たとえば、IoTなどに使用される920MHz帯、無線LANに使用される2.4GHz帯と5GHz帯)において、既存システムと周波数を共用して、コグニティブな無線通信を行うことが可能な無線通信システムにおける送信装置を例とする実施の形態を説明する。
【0039】
ただし、本発明の無線通信装置については、必ずしも、このような場合に限定されず、より一般的に、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、同一の無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う送受信装置に適用することが可能である。また、本発明の無線通信装置においては、後に説明するように、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、異なる無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う送受信装置に適用することも可能である。
【0040】
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムおよび無線通信装置の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
【0041】
なお、以下では、本発明の送受信装置を説明する一例として、上述したような互いに大きく分離した複数の既存の免許不要帯域(たとえば、IoTなどに使用される920MHz帯、無線LANに使用される2.4GHz帯と5GHz帯)において、既存システムと周波数を共用して、コグニティブな無線通信を行うことが可能な無線通信システムにおける送受信装置を例とする実施の形態を説明する。
【0042】
ただし、本発明の無線通信装置については、必ずしも、このような場合に限定されず、より一般的に、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、同一の無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う受信装置に適用することが可能である。また、本発明の無線通信装置においては、後に説明するように、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、異なる無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う受信装置に適用することも可能である。
【0043】
図1は、実施の形態の無線通信システムの構成を説明するための概念図である。
【0044】
図1を参照して、送信側では、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯の3つの周波数帯を使用することを前提に、各帯域で無線チャネルを1つずつ使用するものとして、送信フレームを構成する。
【0045】
なお、各周波数帯で、複数チャネルを使用することとしてもよいが、以下では、周波数帯ごとに1チャネルを使用するものとして説明する。
【0046】
実施の形態では以下の特徴を有する無線アクセス制御を行う。
【0047】
すなわち、まず、送信側では、複数周波数帯の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)を観測する。
【0048】
続いて、送信側では、あるタイミングで、1つ以上の未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケット(フレーム)を送信する。このとき、送信データを複数帯域にマッピングして送信する。
【0049】
一方で、受信側では複数帯域を一括受信してデータを統合する。
【0050】
送受信において、このような構成にすると、帯域間で混雑状況に偏りがあっても送信機会を確保できるため周波数利用効率の向上と伝送遅延の低減が期待でき、またデータの到着順番が入れ替わるような問題も発生しない。
【0051】
図2は、送信データを複数帯域にマッピングして一括して送信し、受信側で一括受信して統合するための具体例を説明するための図である。
【0052】
図2に示すように送信データを、送信系列を使用する各帯域の伝送レートRiに比例するシンボル数ずつ区切って各帯域に、シリアル/パラレル変換により割り当てる。
【0053】
例えば、(5GHz帯伝送レート:2.4GHz帯伝送レート:920MHz帯伝送レート)=(R1:R2:R3)=(3:2:1)ならば、送信データの系列を6シンボル毎に区切り、5GHz帯(ch1)、2.4GHz帯(ch2)、920MHz帯(ch3)にはその中の3シンボル、2シンボル、1シンボルを割り当てる。なお、送信系列を分割して割り当てる際には、このような場合に限定されず、より一般には、m個の周波数帯を使用する場合は、周波数帯の伝送レートの比を、(R1:R2:…:Rm)(比率は、既約に表現されるとする)とするとき、送信系列を(R1+R2+…+Rm)×n(m,n:自然数)シンボル毎に区切り、各チャネルには、(R1×n)シンボル、(R2×n)シンボル、…、(Rm×n)シンボルを割り当てるものとしてもよい。
【0054】
そのような割り当ての後に、各帯域ごとに、送信シンボルに対して物理ヘッダをつけて、パケットとし、これらのパケットを同一タイミングで同時並列的に送信する。
【0055】
送信側で各帯域に割り当てられたシンボル数については、この物理ヘッダ内に情報として格納される。
【0056】
受信側では、各帯域上の物理ヘッダを利用して同期と復調処理を行う。復調された各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合し、フレームの復号を行う。
(送信タイミングを周波数帯ごとのCSMA/CAで制御することの問題点)
上述のように、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、同一の無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行うにあたり、各周波数帯ごとに、従来からのCSMA/CA制御を行った場合の問題点について説明する。
【0057】
図3は、このように、各周波数帯ごとにCSMA/CA制御を行う場合のタイミングチャートである。
【0058】
すなわち、
図3に示した構成では、CSMA/CA方式によって無線帯域のアイドルを検出すると、DIFSとCWを使用したバックオフによってキャリアセンスを行い,データを送信することになる。
【0059】
ただし、このような従来のCSMA/CA方式は、周波数ごとに動作するため複数周波数帯でキャリアセンスして、同期したタイミングで同時並行的に分割したデータを通信することが不可能となる。
【0060】
また、CWサイズは、端末・トラヒックが多い環境において、必ずしも適した値に設定されているとはいえないため、パケット衝突が頻繁に発生する可能性がある。
【0061】
以下に説明するように、キャリアセンスとアクセスタイミングの制御とを実行する。
【0062】
i)複数周波数帯のビジー/アイドルの検出にあたり、ビジー検出用のスロットとバックオフ用の2種類のスロットを、複数の周波数帯で同期して使用する。
【0063】
このような所定数のチャネルがアイドルと判定された場合に、同時にデータを送信する。
【0064】
ii)複数周波数のビジー/アイドルをキャリアセンスで判定し、所定数のチャネルがアイドルになるまで、先にアイドルとなったチャネルを確保し、所定数のチャネルがアイドル後にデータを送信する。
【0065】
このような構成とすることで、最小限の同期送信処理を用いることで、無線帯域を有効に使用し、伝送効率を向上する効果がある。
【0066】
以下、上記i)を実施の形態1として、上記ii)を実施の形態2として説明する。
(実施の形態1)
[送信装置の構成]
図4は、実施の形態1の送信装置1000の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0067】
図4を参照して、送信装置1000は、送信系列のデータに対して、誤り訂正符号化処理を行うための誤り訂正符号化部1110と、誤り訂正符号化後のデータに対してインターリーブ処理を行うインターリーブ部1112と、
図1で説明したように各周波数帯域に割り当てる処理をするためのシリアル/パラレル変換(以下、S/P変換)部1010と、S/P変換後のデータに対して、周波数帯域ごとに、マッピング処理や物理ヘッダの付加など、所定の無線通信方式で通信するための無線フレーム(パケット)を形成するデジタル処理を実行するための無線フレーム生成部1020.1〜1020.3と、無線フレーム生成部1020.1〜1020.3からのデジタル信号に対して、それぞれ、デジタルアナログ変換処理、所定の変調方式への変調処理(たとえば、所定の多値変調方式のための直交変調処理)、アップコンバート処理、電力増幅処理などを実行する高周波処理部(RF部)1040.1〜1040.3と、RF部1040.1〜1040.3の高周波信号をそれぞれ送出するためのアンテナ1050.1〜1050.3とを含む。RF部1040.1〜1040.3の動作は、これらに共通に設けられた局部発振器1030からのクロックに基づいて制御される。
【0068】
なお、RF部1040.1〜1040.3で実行される変調処理については、その変調方式およびチャネル符号化率が、予めMCSのテーブルとして準備されており、各周波数帯の通信状況に応じて、MCSが適応的に選択されるものとしてもよい。
【0069】
さらに、送信装置1000は、RF部1040.1〜1040.3の受信機能を利用して各周波数帯(各周波数帯の中では1つ以上の無線チャネル)の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)を観測するチャネル利用状況観測部1060と、チャネル利用状況観測部1060の観測に基づいて、無線フレーム生成部1020.1〜1020.3の処理タイミングおよびRF部での送信タイミングを制御して、制御された同一の送信タイミングにおいて所定の期間につき未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケットを送信するように制御するアクセス制御部1080とを含む。
【0070】
ここで、チャネル利用状況観測部1060が、キャリアセンスおよびチャネルセンシングを実行する構成とする。
【0071】
そして、アクセス制御部1080は、送信時に候補となる対象帯域をキャリアセンスした結果に応じて使用可能であると判明したチャネルを選択し使用して、制御された同一の送信タイミングにおいて未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケットを送信することになる。
【0072】
このような構成の送信装置1000により、
図2で説明したように、データを複数帯域にマッピングして一括して送信し、受信側では複数帯域を一括受信してデータを統合する。
【0073】
図5は、送信装置1000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
【0074】
図5に示した機能ブロック図は、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う送信装置の構成を示す。
【0075】
すなわち、無線通信規格802.11aは、5GHz帯の無線LAN通信方式であるものの、
図5では、2.4GHz、920MHz帯でも、周波数帯が異なるだけで、それ以外は同様の構成の無線通信方式に従う送信部を使用するものとする。
【0076】
したがって、各周波数帯域において、パケットのプリアンブル部分の構成などは、複数の周波数帯について共通であるものとする。
【0077】
ただし、必ずしも、各周波数帯の無線通信方式が同様の構成を有していることは必須ではなく、周波数帯ごとに無線通信方式(信号形式、シンボル長やサブキャリア間隔など)が異なっていてもよい。この場合は、少なくとも単一の送信系列を各帯域に分割して同時に送信し、また、周波数帯が異なる以外は、RF部の構成が基本的に同一であればよく、パケットのプリアンブル部分の構成(プリアンブルの長さなど)が、複数の周波数帯ごとに異なっていてもよい。
【0078】
図5では、5GHz帯の送信に係る構成を代表して例示的に示す。無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式を想定しているので、伝送する信号は、OFDM(直交周波数分割多重)変調するものとする。
【0079】
図5を参照して、無線フレーム生成部1020.3は、S/P変換部1010から分配された送信データを受けて、マッピング処理を実行するためのマッピング部1122と、逆フーリエ変換処理を実行するためのIFFT部1130と、ガードインターバル部分を付加するためのGI付加部1140と、デジタル信号をI成分およびQ成分のアナログ信号に変換するためのデジタルアナログコンバータ(DAC)1150とを含む。
【0080】
高周波処理部1040.3は、DAC1150からの信号を所定の多値変調信号に変調するための直交変調器1210と、直交変調器1210の出力をアップコンバートするアップコンバータ1220と、アップコンバータ1220の出力を電力増幅しアンテナ1050.3から送出するための電力増幅器1230とを含む。
【0081】
その結果、RF部1040.3により、基底帯域OFDM信号は搬送帯域OFDM信号に変換される。
【0082】
さらに、高周波処理部1040.3は、局部発振器1030からの参照周波数信号を対応する周波数帯域の基準クロック信号に変換するためのクロック周波数変換部1310と、クロック周波数変換部1310からの基準クロックに基づいて、直交復調器1210での変調処理に使用するクロックを生成するクロック生成部1320と、クロック周波数変換部1310からの基準クロックに基づいて、アップコンバータ1220でのアップコンバート処理に使用するクロックを生成するクロック生成部1340とを含む。
【0083】
すなわち、局部発振器1030からの参照周波数信号は、このような基底帯域OFDM信号から搬送帯域OFDM信号への変換におけるクロック信号として使用される。なお、より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、局部発振器1030からの参照周波数信号は、基底帯域信号から搬送帯域信号への変換におけるクロック信号として使用される。
【0084】
図6は、実施の形態1のアクセスタイミングの制御を説明するためのタイミングチャートである。
【0085】
図6では、通信環境下で複数存在する端末のうち、端末#xの送信装置1000が実行する処理を示す。
【0086】
端末#xに対しては、
図6の下段に示すように、各周波数帯(5GHz帯、2.4GHz帯、920MHz帯)において、当初干渉波が存在するものとする。
【0087】
そして、端末#xのチャネル利用状況観測部1060は、各周波数帯で同期したタイムスロットで、対応する周波数帯のビジー状態を検出する。ここで、このビジー状態(干渉波の存在)を検出するためのタイムスロットを「ビジー検出用スロット」と呼ぶ。特に限定されないが、たとえば、「ビジー検出用スロット」は、5μsの間隔で継続的に繰り返されるものとする。
【0088】
ここで、「ビジー検出用スロット」は、複数の周波数帯で同期してアイドル状態を検知するために継続して繰り返されるものであるため、複数の周波数帯が全てアイドル状態となるまで受信状態を継続する。
【0089】
図6に示した例では、時刻TAにおいて、2.4GHz帯での干渉波がなくなり、ビジー状態からアイドル状態となったことが検知される。同様にして、920MHz帯では、時刻TBにおいて、5GHz帯においては、時刻TCにおいて、それぞれ、ビジー状態からアイドル状態となったことが検知される。
【0090】
アクセス制御部1080は、複数の周波数帯の全てにおいて、アイドル状態となったことが検知されると、所定のバックオフ用スロットの時間だけ、複数の周波数帯で共通に同期してバックオフを行って、送信を実行する。
【0091】
すなわち、アクセス制御部1080は、時刻TCにおいて、バックオフ用スロットに切り替えてバックオフし、バックオフ後にキャリアセンスして、他の端末による送信が行われておらず、アイドル状態であれば、データの送信を実行する。
【0092】
特に限定されないが、バックオフ用スロットは、単位としては、たとえば、9μsの期間として、バックオフするスロット数はランダムに設定されるものとし、
図6においては、たとえば、バックオフが1スロット分と設定されたものとする。
【0093】
また、上記の例では、3つの周波数帯の全てを使用して送信する場合を例として説明したが、通信状況によっては、2つの周波数を利用することとして、時刻TBの時点から、バックオフ用スロットに切り替えてバックオフしてもよいし、あるいは、1つの周波数を利用することとして、時刻TAの時点から、バックオフ用スロットに切り替えてバックオフしてもよい。いくつの周波数帯を利用することとするかは、通信状況等に応じて、送信データを生成する前に、予め決定されているものとする。
【0094】
図7は、
図6で説明したチャネル利用状況観測部1060およびアクセス制御部1080の動作を説明するためのフローチャートである。
【0095】
図7を参照して、チャネル利用状況観測部1060は、送信データがあることを検知すると(S100)、ビジー検出用のキャリアセンスを、複数周波数帯で同期して実施する(S102)。
【0096】
チャネル利用状況観測部1060は、いずれか1つの帯域がアイドル状態であることを検出すると(S104)、アクセス制御部108は、データ送信を実行するかを判断する(S106)。所定の複数個の周波数帯を利用する場合に、所定の個数の周波数帯までアイドル状態となっていないときは(S106でNo)、処理は、S102に復帰する。
【0097】
アクセス制御部108は、通信を行う複数の周波数帯の全てについてアイドル状態であることを検知すると、データ送信を行うものと判断して(S106でYes)、バックオフ用スロットに切り替えてバックオフをランダムに設定した期間実行し(S108)、バックオフが完了すると(S108でYes)、キャリアセンスを実行して、他の端末が通信を行っていなければ(S110でYes)、複数周波数帯でデータを分割して送信する(S112)。一方、キャリアセンスを実行して、他の端末が通信を行っているときは(S110でNo)、処理をステップS102に復帰させる。
【0098】
このような構成とすることで、複数周波数帯のビジー/アイドル情報を検出可能なため、複数周波数帯で同時にデータ送信が可能となる。
【0099】
また、各周波数ごとにビジー検出を行えるため、アクセスポイント(基地局)からのビーコン等で同期(情報共有)をとることなく、複数周波数帯での同時送信を実現できる。
(受信装置の構成)
以下では、
図4で説明した送信装置1000からの送信信号を受信する受信装置2000の構成について簡単に説明する。
【0100】
図8は、本実施の形態の受信装置2000の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0101】
図8を参照して、受信装置2000は、複数の周波数帯域(920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯)の信号をそれぞれ受信するためのアンテナ2010.1〜2010.3と、アンテナ2010.1〜2010.3の信号のダウンコンバート処理、復調・復号処理などの受信処理を実行するための受信部2100.1〜2100.3と、受信部2100.1〜2100.3に対して共通に設けられ、受信部2100.1〜2100.3の動作の基準となるクロックである参照周波数信号を生成する局部発振器2020と、受信部2100.1〜2100.3からの信号の各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合するためのパラレル/シリアル変換部2700とを含む。
【0102】
パラレル/シリアル(P/S)変換部2700からの統合されたフレームの出力は、上位レイヤーに受け渡される。
【0103】
受信装置2000は、受信した信号のプリアンブル信号から局部発振器2020の周波数オフセットの検出を行って、局部発振器2020の発振周波数を制御するための信号(発振周波数制御信号)を生成し、搬送波周波数同期処理を行い、また、受信した信号からデジタル信号処理におけるタイミング同期をとるための信号(同期タイミング信号)を生成する同期処理部2600を含む。
【0104】
受信部2100.1は、アンテナ2010.1からの信号を受けて、低雑音増幅処理、ダウンコンバート処理、所定の変調方式に対する復調処理(たとえば、所定の多値変調方式に対する直交復調処理)、アナログデジタル変換処理等を実行するための高周波処理部(RF部)2400.1と、RF部2400.1からのデジタル信号に対して、復調・復号処理等のベースバンド処理を実行するためのベースバンド処理部2500.1を含む。
【0105】
受信部2100.2も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.2ならびにベースバンド処理部2500.2を含む。また、受信部2100.3も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.3ならびにベースバンド処理部2500.3を含む。
【0106】
ベースバンド処理部2500.1〜2500.3およびパラレル/シリアル(P/S)変換部2700とを総称して、デジタル信号処理部2800と呼ぶ。
【0107】
デジタル信号処理部2800のP/S変換部2700からの信号は、デインタリーブ部4042で、デインタリーブ処理をされた後に、誤り訂正部4040で、誤り訂正処理が実行される。特に限定されないが、誤り訂正処理としては、たとえば、畳込み符号による誤り訂正を用いることができる。
【0108】
以上の説明のとおり、実施の形態1の送信装置1000の構成によれば、複数周波数帯のビジー/アイドル情報を検出でき、複数周波数帯で同時にデータ送信が可能であり、受信装置2000により、複数帯域を一括受信してデータを統合することができる。
(実施の形態2)
以下では、チャネル利用状況観測部1060およびアクセス制御部1080の動作の他の例について説明する。
【0109】
ただし、送信装置1000や受信装置2000の構成は、上記のチャネル利用状況観測部1060およびアクセス制御部1080の動作を除いては、実施の形態1の場合と基本的に同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0110】
図9は、実施の形態2のチャネル利用状況観測部1060およびアクセス制御部1080の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0111】
図9でも、複数存在する端末のうち、端末#xの送信装置1000が実行する処理を示す。
【0112】
端末#xに対しては、
図9の下段に示すように、各周波数帯(5GHz帯、2.4GHz帯、920MHz帯)において、干渉波が存在するものとする。
【0113】
そして、端末#xのチャネル利用状況観測部1060は、各周波数帯で同期したタイムスロットで、対応する周波数帯のビジー状態を検出する。ここでも、このビジー状態(干渉波の存在)を検出するためのタイムスロットを「ビジー検出用スロット」と呼び、たとえば、「ビジー検出用スロット」は、5μsの間隔で継続的に繰り返されるものとする。
【0114】
ここで、「ビジー検出用スロット」は、複数の周波数帯で同期してアイドル状態を検知するために継続して繰り返されるものであるため、それぞれ対応する周波数帯がアイドル状態となるまで受信状態を継続する。
【0115】
図9に示した例では、時刻TAにおいて、2.4GHz帯での干渉波がなくなり、ビジー状態からアイドル状態となったことが検知される。
【0116】
このとき、アクセス制御部1080は、2.4GHz帯に対して、ランダムなバックオフ時間を設定し、以後、設定されたバックオフ時間の経過が満了するまで時間をカウントする。
【0117】
そして、
図9の例では、時刻TBにおいて、920MHz帯でも、ビジー状態からアイドル状態となったことが検知される。そこで、アクセス制御部1080は、それ以後は、2.4GHz帯と920MHz帯とで同期して、バックオフのカウントを行う。ここで、このように複数周波数帯での一括送信前に、バックオフを同期して行うためのスロットを、「事前バックオフ用スロット」と呼ぶ。特に限定されないが、「事前バックオフ用スロット」の期間も5μsとして、最初に設定されたバックオフ時間が満了するまで、継続的に、「事前バックオフ用スロット」の数がカウントされるものとする。
【0118】
図9の例では、時刻TB´において、バックオフ時間が満了する。このとき、5GHz帯では、まだ、干渉波が存在してビジー状態のままである。
【0119】
そこで、チャネル利用状況観測部1060の検知結果により、アクセス制御部1080は、2.4GHz帯と920MHz帯との双方で、バックオフ時間の満了時点で、アイドル状態であって、送信装置1000が送信機会を得ることができ、かつ、送信機1000が、3つの周波数帯での一括送信を行うことが設定されている場合は、5GHz帯での送信機会が得られるまで、2.4GHz帯と920MHz帯とで獲得済みの送信機会を確保しておくために、アクセス制御部1080は、2.4GHz帯と920MHz帯とを送信禁止状態に保持する。送信禁止状態とする方法としては、たとえば、2.4GHz帯と920MHz帯とについて、ヌルデータの信号を発生して送信し、帯域を占有する構成とすることができる。ただし、送信禁止状態とする方法は、他の端末の送信を不可とするための方法であれば、従来のRTS/CTSなどと類似の方法として制御信号により送信禁止を通知するなど、他の方法であってもよい。
【0120】
次に、時刻TCにおいて、チャネル利用状況観測部1060が、5GHz帯もビジー状態からアイドル状態となったことを検知すると、アクセス制御部1080は、2.4GHz帯と920MHz帯との送信禁止状態を解除して、5GHz帯、2.4GHz帯、920MHz帯とにおいて、キャリアセンス用スロットで規定される期間で、これらの周波数帯がアイドル状態であることを確認してから、分割したデータを複数周波数帯で同期して、一括送信する。
【0121】
図10は、
図9で説明したチャネル利用状況観測部1060およびアクセス制御部1080の動作を説明するためのフローチャートである。
【0122】
図10を参照して、チャネル利用状況観測部1060は、送信データがあることを検知すると(S200)、アイドル状態であることが未検出の周波数帯に対して、ビジー検出用のキャリアセンスを、複数周波数帯で同期して実施する(S202)。
【0123】
アクセス制御部1080は、複数の周波数帯中でアイドル状態を少なくとも1つ検出済みであるかを判断し、複数の周波数帯のいずれでもアイドル状態であることを検出していない場合は(S204でNo)、処理をステップS202に復帰させる。一方、複数の周波数帯中でアイドル状態を少なくとも1つ検出済みであれば(S204でYes)、次に、アクセス制御部1080は、それが最初のアイドル状態の検出であるかを判断し(S206)、最初のアイドル状態の検出である場合(S206でYes)、バックオフ時間をランダムに設定して、バックオフカウンタを設定する(S208)。一方、最初のアイドル状態の検出でない場合は(S206でNo)、つまり、最初にアイドル状態を検出した周波数帯ではない周波数帯でもアイドル状態を検出した場合は、バックオフの残りがあれば、当該新たにアイドル状態であることが検出された周波数帯についても、事前バックオフスロットを同期させる(S212)。
【0124】
続いて、アクセス制御部1080は、バックオフカウンタを1だけデクリメントし(S214)、バックオフカウンタが0であるかを判断する(S220)。バックオフカウンタが0でなければ(S220でNo)、処理はステップS202に復帰して、アイドル状態が検出された周波数帯についてはバックオフを実行するとともに、残りの周波数帯については、ビジー状態の検出が実行される。
【0125】
一方、バックオフカウンタが0であれば(S220でYes)、アクセス制御部1080は、バックオフ対象の周波数帯は送信禁止状態であるか、あるいはアイドル状態であるかを判断する(S222)。
【0126】
バックオフ対象の周波数帯が、送信禁止状態またはアイドル状態のいずれでもない場合は、アクセス制御部1080は、バックオフ後に送信機会を取得できなかったものとして、アイドル状態の検出履歴をリセットして(S224)、処理をステップS202に復帰させる。
【0127】
バックオフ対象の周波数帯が、送信禁止状態またはアイドル状態のいずれかである場合は、アクセス制御部1080は、続いて、これまでに確保した複数の周波数帯で送信するかを判断する(S226)。これまでに確保した周波数帯だけでは送信をしない場合(S26でNo)、バックオフ対象の周波数帯を送信禁止とし(S228)、処理をステップS202に復帰させる。
【0128】
一方、アクセス制御部1080は、これまでに確保した周波数帯で送信をする場合(S26でYes)、送信禁止の設定を解除して(S230)、確保した複数の周波数帯でキャリアセンス用スロットによりキャリアセンスを実行し(S232)、分割したデータを複数の周波数帯で、一括して送信する(S234)。
【0129】
以上のような構成により、各送信データをランダムアクセス制御がされる複数周波数帯域にマッピングし、送信タイミングを調整してデータ伝送を行うことが可能である。その場合、最小限の同期送信処理を用いることで、無線帯域を有効に使用し、伝送効率を向上する効果がある。
【0130】
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。