(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LRFやカメラのような光学式のセンサを用いる場合、そのセンサに塵または埃が付着し堆積すると、AGVの現在位置の推定の精度が低下する。AGVが自己の現在位置を正しく認識できないと、所要の搬送経路に沿って搬送対象物を適切に搬送することができなくなる。従って、AGVに搭載しているセンサに付着する塵または埃を適時に除去する清掃作業が必要となる。
【0006】
LRFまたはカメラ以外にも、AGVには、その安全かつ確実な運用を実現するべく、構内に所在する作業者に対してAGVの存在を知覚させるための警報音出力装置や警告灯、AGVに接近した作業者またはその他の障害物を検出するための超音波ソナーや接触式センサ(リミットスイッチ等)等が実装されていることがある。これらが適正に機能しているかどうかを点検することも求められる。
【0007】
また、AGVの車輪は経年劣化として摩耗してゆく。車輪が顕著に摩耗すると、AGVに積載する搬送対象物の床面からの高さ位置が変化し、そのために搬送対象物の搬出入に支障を来す懸念が生じることも完全には否定できない。故に、車輪の摩耗の度合いを随時確認することが望ましいと言える。
【0008】
AGVの清掃や点検は、AGVに搭載した蓄電装置(バッテリ及び/またはキャパシタ)に充電を行う機会を捉えて実施することが考えられる。AGVを充電するための充電装置に、清掃や点検を実行するためのメンテナンス装置を付設しておけば、AGVの充電中に当該AGVを清掃し、または同AGVを点検することが可能となる。
【0009】
しかしながら、規模の大きな現場では、複数台のAGVが同時に運用され、設置するべき充電装置の数も増加する。それら充電装置に付随して多数のメンテナンス装置を設置することは、占有面積やコストの面で不利を招く。
【0010】
本発明は、以上の問題に初めて着目してなされたもので、可能な限り占有面積を縮小しまたはコストを抑制しながらも、AGVの機能を長期に亘り維持できるようにすることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、現場内の所定の搬送経路を自律走行しある場所から他の場所に向けて搬送対象物を搬送する無人搬送車の機能を維持するものであって、前記搬送経路外
で各々異なる場所に設置され、搬送経路から自律的に退出し当該設置場所に到達した無人搬送車に対する充電を行う
複数基の充電装置と、充電のために
前記搬送経路から自律的に退出した無人搬送車に対して当該無人搬送車の機能を維持するための所定の処理を実行する
前記充電装置よりも数の少ないメンテナンス装置とを具備
し、前記搬送経路からある前記充電装置の設置場所へと向かう退出経路またはある充電装置の設置場所から搬送経路へと向かう復帰経路の少なくとも一部を、搬送経路から他の充電装置の設置場所へと向かう退出経路または他の充電装置の設置場所から搬送経路へと向かう復帰経路の少なくとも一部と共通の経路とし、前記メンテナンス装置が前記共通の経路上に設置される無人搬送車のメンテナンスシステムを構成した。
並びに、本発明では、現場内の所定の搬送経路を自律走行しある場所から他の場所に向けて搬送対象物を搬送する無人搬送車の機能を維持するものであって、前記搬送経路外にある所定の場所に設置され、搬送経路から自律的に退出し当該設置場所に到達した無人搬送車に対する充電を行う充電装置と、前記搬送経路から前記充電装置の設置場所へと向かう退出経路上の所定の場所、充電装置の設置場所、または充電装置の設置場所から搬送経路へと向かう復帰経路上の所定の場所に設置され、充電のために搬送経路から自律的に退出した無人搬送車の本体に搭載されたセンサに付着した塵または埃を除去する清掃手段であるメンテナンス装置とを具備し、前記清掃手段が、同清掃手段の設置場所に到達した無人搬送車のセンサによる当該無人搬送車の現在位置の推定機能を妨げない位置に配置されている無人搬送車のメンテナンスシステムを構成した。
【0012】
特に、
前記共通の経路は、前記充電装置の各々の設置場所から前記搬送経路へと向かう前記復帰経路が合流する箇所にあり、前記メンテナンス装置は、前記充電装置を経て前記復帰経路から前記搬送経路へと向かう無人搬送車に対して所定の処理を実行する。
【0013】
前記メンテナンス装置の具体例としては、AGVの本体及び/またはその本体に搭載されたセンサに付着した塵または埃を除去する清掃手段が挙げられる。
【0014】
AGVに搭載されたセンサが、現場内における当該AGVの現在位置を検出するために働くセンサであり、前記清掃手段が、同清掃手段の設置場所に到達したAGVのセンサによる当該AGVの現在位置の推定機能を妨げない位置に配置されるならば、AGVを清掃する処理中も、当該AGVが自己の現在位置の推定を続行することが可能となる。これにより、清掃処理中及び/または清掃処理を完了した後のAGVの移動の制御が不安定とならない。
【0015】
なお、AGVに搭載されるセンサは、レーザ光を出射しその反射光を受光して反射物までの距離を計測するとともに当該レーザ光によって当該AGVの周囲を走査するLRFであることがある。この場合において、前記清掃手段は、同清掃手段の設置場所に到達したAGVのLRFによる当該AGVの周囲の走査を殆どまたは全く妨げない位置に配置される。
例えば、前記清掃手段は、前記センサに付着した塵または埃を吹き飛ばして除去するブロワを含み、前記ブロワは、前記清掃手段の設置場所に至る無人搬送車の上方かつ側方に所在し、前記センサに向けて伸びセンサに向けて圧縮空気を噴射するためのノズルを有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メンテナンス装置の設置数を削減して可能な限り占有面積を縮小しまたはコストを抑制しながらも、AGVに対するメンテナンス処理を適切に実施でき、AGVの機能を長期に亘り維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態のメンテナンスシステム3は、複数台のAGV1が運用される現場に設けられ、各AGV1の機能を長期に亘り維持する役割を担う。
図1に示すように、各AGV1は、現場内に設定された所定の搬送経路23に沿って自律走行し、複数の搬送元21の何れかから、複数の搬送先22の何れかに向けて、搬送対象物を搬送する。
【0019】
搬送元21は、例えばワークに対して何らかの前工程の処理を施す機械や装置等であり、搬送先22は、例えば同ワークに対して何らかの後工程の処理を施す機械や装置等である。搬送対象物は、ワークそれ自体であることがあり、複数個のワークを収めて保持しているトレーまたはパレット等であることもある。
【0020】
AGV1は、搬送対象物を積載して走行することが可能な既知のものである。
図2及び
図3に示すように、AGV1は、その本体に、走行のための車輪11、車輪11の回転駆動及び操舵を実行するためのモータ、各種のセンサ12、警報音出力装置や警告灯(または、回転灯)13、モータ等に必要な電力を供給する蓄電装置、並びにこれらを制御するコントローラを搭載している。
【0021】
AGV1に搭載するセンサは、光学式のセンサ、特にLRF12を含む。LRF12は、レーザ光を出射してその反射光を受光することにより、レーザ光が当たった反射物までの距離を計測するものである。さらに、LRF12は、AGV1の周囲の一定の領域121内で、レーザ光の光軸を少しずつ変位させながら、その都度レーザ光が当たり反射する物の存在の有無、及びAGV1から当該反射物までの距離を計測する走査を行う。
【0022】
AGV1のコントローラは、LRF12の走査領域121内に存在する一または複数の反射物またはその部分の位置を検出することを通じて、AGV1の現在位置を推定する。そして、AGV1が然るべき経路23、33、34に沿って走行するように、車輪11の回転数や操舵方位を調節し、AGV1の移動速度及び方向を自動制御する。因みに、LRF12により検出する反射物は、AGV1を運用する現場内の所要の複数箇所、例えば建屋の壁や柱等に予め設置した反射板であることがある。
【0023】
なお、LRF12に代えて、またはLRF12とともに、光学式センサの一種であるカメラセンサをAGV1に搭載してもよい。この場合、AGV1のコントローラは、カメラセンサで撮影した画像を解析することにより、AGV1の現在位置の推定を行う。
【0024】
LRF12及びカメラセンサ以外の種類のセンサとして、AGV1に近接している作業者またはその他の障害物を検出するための超音波ソナーや、接触式センサであるリミットスイッチ等を、AGV1の本体に設けていてもよい。AGV1のコントローラは、超音波ソナーによりAGV1が作業者または障害物から一定距離内に接近した事実を感知したり、リミットスイッチによりAGV1が障害物と接触した事実を感知したりしたときに、AGV1を制動停止し、またはAGV1をそれまでの進行方向とは逆方向に後退させる。
【0025】
警報音出力装置は、メロディやその他の警報音を発音して現場内に所在する作業者の聴覚に訴えかけ、AGV1の存在を知覚させる。警告灯13は、可視光を発光して作業者の視覚に訴えかけ、AGV1の存在を知覚させる。
【0026】
また、AGV1の本体に、搬送対象物の搬出入を助けるコンベア14や、搬送対象物を上げ下げするリフタまたはフォーク、搬送対象物を把持するロボットアーム等を実装することがあり得る。これらコンベア14、リフタ、フォーク、ロボットアーム等は、上下動してAGV1に積載する搬送対象物の床面からの高さ位置を調節可能なものであることがある。
【0027】
AGV1の本体に、作業者の手指により操作することのできる非常停止ボタンまたはスイッチ等を設置してもよい。作業者が非常停止ボタンまたはスイッチ等を操作した場合、AGV1のコントローラは、当該AGV1を制動し停止させる。
【0028】
各AGV1は、車載の蓄電装置に蓄えている電荷を消費して走行し、搬送対象物を搬送する。蓄電装置に蓄えている電荷が欠乏したならば、蓄電装置を再充電する必要が生じる。
図1に示しているように、本実施形態のAGV1のメンテナンスシステム3は、AGV1に対して充電を行う充電装置31と、充電前、充電中または充電完了直後のAGV1に対して所定のメンテナンス処理を実行するメンテナンス装置32と、それら充電装置31及びメンテナンス装置32を制御する制御装置35とを主たる要素とする。
【0029】
充電装置31は、搬送対象物の搬送経路23外にある所定の場所に設置する。現場内で複数台のAGV1を同時に運用する都合上、充電装置31は複数基設置することが好ましい。
【0030】
AGV1は、蓄電装置に蓄えている電荷量が下限閾値未満に減少したとき、または一定時間若しくは一定走行距離が経過した毎に、搬送経路23から自律的に一時退出して充電装置31の設置場所に到達し、充電装置31から電力の供給を受けて蓄電装置に電荷を蓄える。充電装置31は、AGV1の電源回路にプローブを接続または接触させて有線でAGV1に電力を供給する態様のものであってもよいし、コイルを介した電磁誘導または磁界共振等により無線でAGV1に電力を供給する態様(ワイヤレス電力伝送)のものであってもよい。
【0031】
充電を完了した、即ち蓄電装置に蓄えている電荷量が上限閾値以上に回復したAGV1は、充電装置31から自律的に離れて搬送経路23へと復帰、再び搬送対象物の搬送に従事することとなる。
【0032】
メンテナンス装置32は、搬送対象物の搬送経路23外であって、AGV1が搬送経路23から充電装置31の設置場所へと向かう際に経由する退出経路33上、充電装置31の設置場所、またはAGV1が充電装置31の設置場所から搬送経路23へと向かう際に経由する復帰経路34上にある所定の場所に設置する。
図1に示す例では、複数基の充電装置31の設置場所の各々から搬送経路23へと向かう復帰経路34が合流した場所に、メンテナンス装置32を設置している。だが、搬送経路23から複数基の充電装置31の設置場所の各々に向かって退出経路33が分岐する手前の場所331にメンテナンス装置32を設置しても構わない。また、充電装置31の設置場所にメンテナンス装置32を付設することを妨げない。この場合、例えば、一部の充電装置31に限りメンテナンス装置32を付設し、各AGV1は、複数回の充電を行う毎に一回は当該充電装置31及びそのメンテナンス装置32を利用するように走行制御される。
【0033】
充電装置31によるAGV1の再充電には、ある程度以上の時間、例えば数時間程度を要する。一方で、メンテナンス装置32が実行する処理は、それよりも短い時間で完遂することが可能である。つまり、一基の充電装置31が一台のAGV1に比較的長い時間拘束されるのに対して、一基のメンテナンス装置32が一台のAGV1に拘束される時間はそれよりも短く、一台のAGV1に対して充電する間に複数台のAGV1に対してメンテナンス処理を実施することが可能である。
【0034】
そこで、本実施形態では、充電装置31の設置数よりも少ない数のメンテナンス装置32を設置することとして、占有面積の縮小及びコストの抑制を図っている。なお、ここでは、充電装置31及びメンテナンス装置32のそれぞれの設置数につき、一度に一台のAGV1に対する充電を行い得る充電装置31を一基とカウントし、一度に一台のAGV1に対するメンテナンス処理を行い得るメンテナンス装置32を一基とカウントする。
【0035】
本実施形態にあって、メンテナンス装置32は、メンテナンス処理として、AGV1の運用中に駆動部分を含む本体及び/または本体に搭載したセンサであるLRF12に付着した塵または埃を除去する清掃を実施する清掃手段である。このものは、AGV1の本体及び/またはLRF12に付着した塵または埃を吹き飛ばして除去するブロワ32を含む。
【0036】
図2及び
図3に示すように、ブロワ32は、AGV1の本体及び/またはLRF12に向けて圧縮空気を噴射するノズル321を有している。そのノズル321は、特に
図3に示しているように、当該ブロワ32の設置場所に到達したAGV1に搭載しているLRF12による走査領域121の外にあるように、または走査領域121の極一部と重なるものの大部分には重ならないように配置する。
【0037】
これは、ブロワ32による清掃処理中にも、AGV1のコントローラがLRF12を介した周辺の走査を継続し、ひいてはAGV1の現在位置の推定を続行できるようにするためである。ノズル321がLRF12から出射するレーザ光の光軸と全く干渉せず、または干渉するとしても走査領域121内の限られた一部においてのみであるならば、ブロワ32のノズル321が支障ある外乱とならず、清掃処理中のAGV1の現在位置の推定の精度が高く保たれる。そして、清掃処理を完了した直後から、AGV1のコントローラが自己の位置を精確に把握することができ、その後ブロワ32から離反するAGV1の移動の制御が不安定とならない。
【0038】
また、AGV1の本体にカメラセンサを搭載している場合において、ブロワ32によりAGV1の本体及び/またはカメラセンサを清掃処理するときにも、ノズル321を当該カメラセンサによる撮影範囲外に、または撮影範囲の極一部と重なるが大部分には重ならない位置に配置することが望ましい。さすれば、撮影画像の解析を通じたAGV1の現在位置の推定の精度が高く保たれる。
【0039】
ブロワ32のノズル321は可動とし、AGV1における空気を吹き付ける箇所を可変としてもよい。あるいは、AGV1がブロワ32の設置場所を訪れ、またはブロワ32の設置場所から離れようとする際にその移動の妨げとならないようにノズル321を退避させ、AGV1がブロワ32の設置場所に来着した後にノズル321を清掃処理に適した位置に配置することも考えられる。
【0040】
復帰経路34上に設置したブロワ32は、充電装置31から離反し搬送経路23へと復帰しようとするAGV1、換言すれば充電装置31による充電を終えた直後のAGV1に対して清掃処理を実行する。翻って、ブロワ32を退出経路33上に設置しているならば、そのブロワ32は搬送経路23から一時退出して充電装置31の設置場所に向かうAGV1、換言すれば充電装置31により充電を行う直前のAGV1に対して清掃処理を実行することになる。充電装置31の設置場所にブロワ32を並設しているならば、充電装置31によるAGV1の充電中に当該AGV1に対する清掃処置を実行することができる。
【0041】
ブロワ32のノズル321からAGV1に空気を吹き付ける処理は、AGV1がブロワ32の設置場所に停止してから実行してもよく、AGV1がブロワ32の設置場所を通過する間、即ちAGV1が停止せず移動している間に実行してもよい。
【0042】
AGV1の本体及び/またはセンサ12に付着した塵または埃を除去する清掃処理を実施するメンテナンス装置32は、その除去される塵や埃を吸引して回収する吸引装置を含むことがより好ましい。
【0043】
本実施形態では、現場内の所定の搬送経路23を自律走行しある場所21から他の場所22に向けて搬送対象物を搬送するAGV1の機能を維持するものであって、前記搬送経路23外にある所定の場所に設置され、搬送経路23から自律的に退出し当該設置場所に到達したAGV1に対する充電を行う複数基の充電装置31と、前記搬送経路23から前記充電装置31の設置場所へと向かう退出経路33上の所定の場所331、充電装置31の設置場所、または充電装置31の設置場所から搬送経路23へと向かう復帰経路34上の所定の場所に設置され、充電のために搬送経路23から自律的に退出したAGV1に対して当該AGV1の機能を維持するための所定のメンテナンス処理を実行する、充電装置31よりも数の少ないメンテナンス装置32とを具備するAGV1のメンテナンスシステム3を構成した。
【0044】
本システム3によれば、メンテナンス装置32の設置数を削減して、可能な限りコストを抑制し、かつメンテナンス装置32が占有する空間を縮小することができる。しかも、それでいて、運用している複数台のAGV1に対するメンテナンス処理を適切に実施でき、各AGV1の機能を長期に亘り維持することができる。
【0045】
前記メンテナンス装置32は、AGV1の本体及び/またはその本体に搭載されたセンサ12に付着した塵または埃を除去する清掃処理を実施する清掃手段たるブロワ32であり、AGV1が当該センサ12を介して具現する機能を維持する役割を担う。当該メンテナンス装置32により、塵または埃の多い環境下においても、AGV1の走行の異常や誤動作の発生を抑止できる。加えて、AGV1の本体やその駆動部分に付着した塵または埃を除去することで、搬送経路23を内包する現場内に塵または埃を拡散させることを防止ないし低減できる。従って、AGV1による安定した信頼性の高い搬送を実現できる。
【0046】
AGV1に搭載されたセンサ12は、現場内における当該AGV1の現在位置を検出するために働くセンサであり、前記ブロワ32が有するAGV1の本体及び/またはセンサ12に向けて空気を噴射するノズル321は、同ブロワ32の設置場所に到達したAGV1のセンサによる当該AGV1の現在位置の推定機能を妨げない位置に配置される。AGV1に搭載されるセンサ12が、レーザ光を出射しその反射光を受光して反射物までの距離を計測するとともに当該レーザ光によって当該AGV1の周囲を走査するLRF12である場合には、前記ブロワ32が有するノズル321が、同ブロワ32の設置場所に到達したAGV1のLRF12による当該AGV1の周囲の走査を殆どまたは全く妨げない位置に配置される。これにより、ブロワ32がAGV1を清掃するメンテナンス処理中も、当該AGV1が自己の現在位置の推定を続行することが可能となる。即ち、メンテナンス処理を受けたとしてもAGV1による自己の現在位置の把握が断絶せず、メンテナンス処理が完了した後のAGV1の移動の制御が不安定とならない。
【0047】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、メンテナンス装置32たる清掃手段が、AGV1の本体及び/またはセンサ12に圧縮空気を吹き付けるブロワ32であった。だが、清掃手段32は、そのようなブロワ32には限定されない。AGV1の本体及び/またはセンサ12に付着した塵または埃を除去する清掃処理を実施する清掃手段32は、AGV1の本体及び/またはセンサ12を払拭する可動のブラシやワイパ等を有するものであることがある。
【0048】
メンテナンス装置32として、AGV1の警報音出力装置が発する警報音をマイクを介して検知し、警報音出力装置が正常に警報音を出力できるかどうかを検査する装置を設けてもよい。警報音出力装置が正常に警報音を出力できない場合、例えば音量や音の種類等が適正でない場合、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35が、当該AGV1に搭載された警報音出力装置が正常でない旨を、作業者の聴覚または視覚に訴えかける態様で報知する。このようなものであれば、各AGV1の安全性を担保する機能を維持し、その機能に異常が生じたAGV1の個体を速やかに発見して、当該AGV1の運用からの離脱や修理を促すことができる。
【0049】
メンテナンス装置32として、AGV1の警告灯13が発する可視光をセンサを介して検知し、警告灯13が正常に光を出力できるかどうかを検査する装置を設けてもよい。警告灯13が正常に光を出力できない場合、例えば光量や光色、点灯時間等が適正でない場合、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35が、当該AGV1に搭載された警告灯13が正常でない旨を、作業者の聴覚または視覚に訴えかける態様で報知する。このようなものであれば、各AGV1の安全性を担保する機能を維持し、その機能に異常が生じたAGV1の個体を速やかに発見して、当該AGV1の運用からの離脱や修理を促すことができる。
【0050】
メンテナンス装置32として、AGV1に実装された障害物との接触を検出するためのリミットスイッチ等が正常に機能するか否かを検査する装置を設けてもよい。当該メンテナンス装置32は、その設置場所にAGV1の接触式センサと敢えて接触する接触体を有するとともに、その接触体に接触したリミットスイッチ等が正しく信号を発しているかどうかを示す情報を、AGV1のコントローラから受信する。リミットスイッチ等が正しい信号を出力できない場合、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35が、当該AGV1に実装されたリミットスイッチ等が正常でない旨を、作業者の聴覚または視覚に訴えかける態様で報知する。このようなものであれば、各AGV1の安全性を担保する機能を維持し、その機能に異常が生じたAGV1の個体を速やかに発見して、当該AGV1の運用からの離脱や修理を促すことができる。AGV1が走行中に当該リミットスイッチ等の動作を検査する場合には、当該接触体への接触によりAGV1の走行が停止することを、カメラやセンサ等により検知することが望ましい。
【0051】
メンテナンス装置32として、AGV1に実装された非常停止ボタンまたはスイッチ等が正常に機能するか否かを検査する装置を設けてもよい。当該メンテナンス装置32は、その設置場所にAGV1の非常停止ボタンまたはスイッチ等と敢えて接触する接触体を有するとともに、その接触体に接触した非常停止ボタンまたはスイッチ等が正しく信号を発しているかどうかを示す情報を、AGV1のコントローラから受信する。非常停止ボタンまたはスイッチ等が正しい信号を出力できない場合、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35が、当該AGV1に実装された非常停止ボタンまたはスイッチ等が正常でない旨を、作業者の聴覚または視覚に訴えかける態様で報知する。このようなものであれば、各AGV1の安全性を担保する機能を維持し、その機能に異常が生じたAGV1の個体を速やかに発見して、当該AGV1の運用からの離脱や修理を促すことができる。AGV1が走行中に当該非常停止ボタンまたはスイッチ等の動作を検査する場合には、当該接触体への接触によりAGV1の走行が停止することを、カメラやセンサ等により検知することが望ましい。
【0052】
メンテナンス装置32として、AGV1に実装されたLRF12または超音波ソナー等の対象物までの距離の計測の精度を検査する装置を設けてもよい。当該メンテナンス装置32は、その設置場所に到着したAGV1のLRF12または超音波ソナー等に検出させる被検出体を有するとともに、そのLRF12等が計測した被検出体までの距離やLRF12等から見た被検出体の方位等の情報を、AGV1のコントローラから受信する。LRF12等による計測の誤差が一定以上に拡大している場合、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35が、当該AGV1に実装されたLRF12等が正常でない旨を、作業者の聴覚または視覚に訴えかける態様で報知する。このようなものであれば、各AGV1の移動及び搬送対象物の搬送の制御の精度を高く維持し、その機能に異常が生じたAGV1の個体を速やかに発見でき、当該AGV1の運用からの離脱や修理を促すことができる。
【0053】
あるいは、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35からAGV1のコントローラに対して、LRF12等による計測の誤差の情報を返信してもよい。これを受信したAGV1のコントローラは、自己に搭載されているLRF12等による計測の誤差を較正することが可能になる。
【0054】
メンテナンス装置32として、AGV1の車輪11の摩耗の度合いを検査する装置を設けてもよい。当該メンテナンス装置32は、例えば、その設置場所に到着したAGV1の所定部位の床面からの高さ位置(典型的には、コンベア14の高さ)を計測する手段を有する。そして、当該部位の高さ位置が、標準の高さ位置から一定以上低下している場合、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35が、当該AGV1の車輪11の摩耗の度合いが大きい旨を、作業者の聴覚または視覚に訴えかける態様で報知する。このようなものであれば、各AGV1による搬送対象物の搬送の精度を高く維持し、その機能に異常が生じたAGV1の個体を速やかに発見して、当該AGV1の運用からの離脱や修理を促すことができる。特に、搬送元21及び/または搬送先22とAGV1との間で搬送対象物を搬出入する際の、搬送対象物の高さの段差または落差が大きくなることを防止できる。
【0055】
あるいは、本システム3のメンテナンス装置32または制御装置35からAGV1のコントローラに対して、車輪11の摩耗の度合いの大きさの情報を返信してもよい。これを受信したAGV1のコントローラは、搬送対象物を支持するコンベア14、リフタ、フォーク、ロボットアーム等の高さ位置を調整することが可能になる。さらには、車輪11の交換のサイクルを延長することができる。
【0056】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。